~茶っとサロン(玉露生産者)トーク内容~ ●市長 こんにちは。本日は、大変お忙しい中、茶っとサロンにお越しいただきありがと うございます。 京田辺では昔から玉露が特産ということできましたが、最近は担い手等の問題も あります。そのような中、今日はお若い皆さんにお越しいただき、ざっくばらんに お話をさせていただきたいと思います。 京田辺市の特産品・玉露を新しく市民になった方に知っていただこうと、転入者 への茶器プレゼントを実施していますが、皆さんに大変喜んでいただいています。 ●玉露生産者(以下、皆さんの発言は「生産者」と表記) [自己紹介] 西川さん 米田さん 小林さん 出嶋さん ●生産者 品評会で主流となっている「さえみどり」は、京田辺では芽が出て来るのが早い。 霜が入らないように注意してやっていきたい。玉露以外に、てん茶にも力を入れて いるので、そちらでもいい成績が穫れるように頑張っていきたい。 昨年、八女市に視察に行きました。ライバルはかなり手強いというのが事実です。 よほどのことをしないと勝利は難しいです。出品茶に限ってですが、八女はかなり 努力をしています。1~1.5 反の茶園から出す出品茶は 2 点か 3 点です。 そして、行ってわかりましたが、九州といえど標高が高く京田辺より寒いんです。 摘みが 5 月 7 日、8 日頃と下手したら我々より遅い。京田辺は暖かく、早く芽が出 て、霜の恐れがあります。発芽後、冷えることによって人間でいう霜焼けのように なってすぐ駄目になります。 八女からは 60 点ほどの出品茶が出てきます。全部「さえみどり」で、つや・形 状が明らかに異なります。京田辺では量が取れないのでしんどいです。 ●市長 その「さえみどり」は、京田辺市の地勢、気候には合うのですか。 ●生産者 我々には合わないと思います。八女は、中山間というか谷間にあるので湿気が多 いと思うんです。土も粘土質で保水力が良い土壌。それに日もあたりにくい。 京田辺では、砂地が良いということでやってきましたが、「さえみどり」には保 水力のある土壌の方が良いのではないでしょうか。 ●市長 外観は、数多く出品した産地の茶葉の特徴が審査に反映されると聞きますが、や はり量が取れないというのは不利ですか。 ●生産者 絶対数がやはり八女市に比べて少なすぎて出品点数が揃わないんです。 「ごこう」 でやっていけば何とかなりますが、今の品評会は「ごこう」では難しいところがあ ります。「さえみどり」も細かい芽で摘んだら「覆い香(※海苔様の香り)」が出 てきません。覆い香が出ているというのは疑問です。 ●市長 昨年の全国茶品評会の上位入賞茶はほとんど「さえみどり」でしたね。 ●生産者 「さえみどり」の品種が、覆い香と勘違いするんだと思います。実際、覆い香で はないのに、そう感じてしまい、「さえみどり」が上位に来ていると私は解釈して います。 「さえみどり」は「あさつゆ」と「やぶきた」をかけあわせています。「あさつ ゆ」を親にして、もう少し遅手の品種をかけあわせたら、似たようなお茶が出来な いかなと考えています。例えば「おくみどり」とか。 要は形状と水色です。玉露本来の水色を出していると駄目なんです。「さえみど り」が出す色が求められている水色です。ちょっとかぶせば水色が出ます。味は、 茶自体に旨味は結構あると思います。香気に関しては、出品茶でなければそんなに 良い茶とは思いません。 ●市長 見た目が重要ですか。京田辺市の玉露の 味が一番だと自慢に思っています。 ●生産者 きっちりと覆いをして、覆い香があって、 滋味があってというような今までやってき た玉露のやり方で出品茶が出来たら我々も 何もいうことはないんですが、今は形状重 玉露茶園(覆下園) 視です。 かぶせ茶と玉露の差はどこにあるのかと思います。玉露の定義は 20 日以上ちゃ んと棚に覆いを掛けて、覆い香をつけてというものです。覆い香味なんて最初の段 階で度外視されていますし、光っていないと駄目、細くなかったら駄目、水が淡く なかったら駄目では、玉露の元の作 り方からちょっと逸脱していると 思います。 一回、誰か賞を獲ってもらって、 賞をもらったがこんなのは玉露と 違うと返してほしい。 ●市長 【参考/緑茶の表示基準(社団法人日本茶業中央会) 煎 茶:茶葉(自然光下で栽培し、摘採した茶葉)を蒸熱、揉 捻、乾燥して製造したもの 深蒸し煎茶:煎茶と同様な製造であるが、茶葉の蒸し時間を煎 茶の2倍以上の時間で製造したもの 玉 露:一番茶の新芽が伸び出した頃からよしず棚などに藁や 寒冷紗などで茶園を 20 日前後覆い、ほぼ完全に日光を 遮った茶園(「覆下園」)から摘採した茶葉を煎茶と同様 に製造したもの かぶせ茶:摘採前7日前後に藁や寒冷紗などで覆った茶園から 摘採した茶葉を煎茶と同様に製造したもの 思い切ったことをしないと、いつ までたっても産地日本一は奪還できません。品種も含めて、ころっと変えて試験的 にやってもらえたらいいと思うのですが。 ●生産者 まず、寒さ対策が一番ですね。設備を整える必要があります。私は寒冷紗を東西 にかけていましたが、南北につけかえました。去年も、ある寒い日に昼から飯岡の 茶園に覆いをかけて、その後河川敷の茶園は 21 時頃にきせおわったのですが、河 川敷の茶園は全滅でした。飯岡と河川敷でこの差があります。温度管理は難しい。 ●市長 出品茶園として、1 反程度確保してしっかり管理していけばどうでしょう。 ●生産者 それらしいことをすればいけるでしょうね。 八女市では、1 本の茶の木から、立ちの本数を制限して出過ぎてるものは全て剪 定しており、びしっと高さが揃っています。やり方がまるで異なります。 ただ、入選上位は別にして、取引価格には反映していません。京田辺玉露は、は るかに高額に取引されます。ちゃんと玉露の作り方をした方が値段は高くなります。 早摘みをしすぎて、かぶせ茶っぽいものは安いのが現実です。 今、言っても負け犬の遠吠えですので、産地賞を獲ってのことですが、玉露の定 義を審査員に考えてほしい。これは産地から提唱していかないと駄目だと思います。 てん茶では、京都の茶はどこの産地にも負けません。ちゃんとした製造方法を経 てますから、旨味・滋味・覆い香全てがあります。てん茶は、形がないから良いも のを出したらそれなりの評価をもらえます。玉露も、かつてはそうでしたが、最近 は煎茶の評価に変わってきたようです。 ●市長 収穫量の問題もあり、一般の人が玉露を手にするのはやはり少ないものでしょう か。 ●生産者 少ないと思いますね。 京都府内でも玉露を売る問屋は限られています。特に京田辺の高級玉露は量があ りませんので。 玉露は甘いでしょう。東京の店では、淹れ方が難しいと客からクレームがあるこ ともあるようです。そうなったら扱わない方がましということにもなるのでしょう。 ●市長 最近は、ゆっくりとお茶を飲むという習慣 がなくなってきましたから残念ですね。 市では、色んな場面で玉露の普及に努めて います。また手軽に水出ししても美味しいと いうこともPRしているのですが。 昨年フランスで玉露をPRしてもらったの ですが、結構、人気だったんですよ。甘みが あっても口に残らないのが良いようです。 市職員出前講座(玉露の飲み方教室) お茶の生産には、土も重要だと思いますが、京田辺の土質はどうですか。 ●生産者 やはり砂地がいいと思います。産地によっては、茶が赤いものがあります。そう いうものは土質が悪いのではないでしょうか。やはり、良い砂地の場所を選定して やっていきたいと思います。 「さえみどり」であれば、そこまで砂地で無くても良いとは思います。 ●市長 山とかはどうですか。 ●生産者 山は逆に向かないと思います。寒すぎる と思います。やはり平地の方が良いと思い ます。ふーと抜けるような感じで香気もよ くなります。 ●市長 難しいですね。実際、どちらがいいので しょうね。 ●生産者 「ごこう」は砂地ですね。うちの茶園でも7:3ぐらいが砂地です。その茶園の ものが上位に入賞してきています。 普賢寺川の流域あたりは良いと思います。 茶園管理の上で、扇風機は有効ではないでしょうか。あれば霜対策になります。 ただ扇風機では凍えには対応できないので、暖める施設・設備があれば良いかと思 います。 ●生産者 扇風機は地形が重要ですね。平地で回しても温度が下がるだけです。扇風機は山 上の暖かい空気を下にさげるのに意味があります。 京田辺では、一気に温度が下がる日が毎年 1 回ぐらいありますので、その時は温 風機を茶園に持って行って回そうかなと思っています。 ●市長 温度差が激しい場合は管理も大変ですね。 ●生産者 上がったとたんに下がるのが大変です。昔の方が良かったのでしょうね。「やぶ きた」や「ごこう」はまだ芽吹かないですが、今のはすぐに芽が出てきます。 ●生産者 言い訳してもしょうがないですので、まずは日本一を奪回しないと。 綾部ではI(アイ)ターンして茶農家を始めた方がいると聞きました。 手摘みを残すには、摘み手の確保が課題です。摘みの斡旋をしてもらえれば新規 就農もあるかもしれません。 ●生産者 出品茶で 20-25 日間、毎日 50 人を手配できるなら 生産量を伸ばせます。 私のところでは多い時で 20 人、 通常は 10 人程度に来ていただいています。 地元のほか、加茂町からもきてもらっています。 普段は他のパートをされている方が多いので、人数 確保が難しいです。 ●市長 現在、出品茶支援隊ということでボランティアを 募集しています。 やはり、慣れている方は摘みも上手く、早いんで しょうね。 茶摘みボランティア募集チラシ ●生産者 そうですね。上手い方に来ていただくのが良いですが、まずは人数確保が重要で す。 ●市長 今、八女茶を配らせていただきました。どうぞ。 やはり味が違いますね。 ●生産者 正直にどちらがおいしかったですか。 ●市長 淹れ方にもよりますが、私はやはり先ほどの京田辺(飯岡)産が良いですね。 ●生産者 私個人の好みは八女です。宇治茶会館で八女茶の出品茶を飲みましたけど、旨い と思いました。 ●生産者 「ごこう」は品種のにおいが強いんですよ。もっとおいといた方がいいと思いま す。「ごこう」の方が市場の評価が高いです。品評茶では「さえみどり」ですが、 販売されている玉露では、「ごこう」が断然おいしいです。 私は「さえみどり」は良いと思いません。全国で獲るために「さえみどり」なん です。 ●市長 審査員の好みに合わせて作っていかなければ 駄目だということですね。 玉露を維持していこうと思えば何かをしなけ ればいけません。これからではなく、今、皆さん の年代でやっていかないと。 ●生産者 八女市でも出品茶以外で「さえみどり」はあま りありませんでした。普通の機械摘みは「やぶき た」が多かったのではないでしょうか。「ごこう」は少なかったですね。 茶研で開発した玉露品種の鳳春(ほうしゅん)や、てん茶の展茗(てんみょう) などはどうでしょうね。 ●市長 米と同じで色々と品種があって難しいですね。 ●生産者 新品種が出てきても、やはり売れてこそです。米は 1 年ですが、茶はそういうわ けにはいきません。 ●市長 同じ茶園でも1年目、2年目と味が変わっていきますか。何年目ぐらいがいいの でしょう。 ●生産者 8年目まででしょうね。若い方がいいです。そ のため幼木の茶園が必要となってきます。 改植も 色々問題があります。4年間収入が途絶えるわけですし。 遊んでいる茶園を活用すれば、荒廃対策にもなるので良いのですが、これ以上面 積を増やすのは難しいですね。一農家が上手く回せるのは1町ぐらいがちょうどい いと思います。何といっても摘み手の確保が大変です。 ●市長 そういったことを考えたら組合方式が良いのでしょうか。 案があればご提案ください。踏み出さないと駄目だと思います。お茶を飲む人も少 なくなってきています。飲んでもらうように何か行動を起こさないと。改植も色々と 難しいでしょうし。 ●生産者 これからは、組合方式でしょうね。このあ たりではお茶の機械は17-19㎏のもの です。これは機械摘みをする気がないからで す。他産地では45㎏や60㎏が普通です。 京田辺のお茶に関しては私は全く悲観し ていません。いい値段で売れています。全国 で手摘み玉露が4~4.5tですが、うち3 tが京田辺です。お茶屋としても店頭に置い ておかなければならないので、高額取引され ます。 ●生産者 沢山作ったら市場バランスが崩れます。京 田辺の高級玉露は現状の量を確保しつつ、そ の下のランクを増やしていけばよいと思います。そこは手摘みに拘らず、はさみで もいいと思います。 価格も崩さず、利益を確保していくことを考えていく必要があります。 ●市長 そのあたりのバランスを取れるような取組みを率先して進めてください。お茶の 土台・玉露の土台をしっかりと作っていかなければいけません。 ●生産者 摘み手の手配ができれば、生産拡大は可能です。地元からは近い人も参加しても らえますが、やはり高齢化は進んでいます。 ●市長 茶摘みは座ってやりますし、高齢の方も活躍できる場としてもっと関わっていた だける方を増やさないといけませんね。 市は、どんどんと玉露のPRをしていきますので、こうしたい、こうすればどう だろうと色々とご意見・ご要望をお寄せください。一緒になって頑張っていきまし ょう。 本日は、どうもありがとうございました。 以上
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