産業組織論b 第4回

産業組織論b 第4回
講義について
• 暫定版の講義資料を、できる限り、講義当日の午
前0時までにホームページにアップするので、必要
に応じて各自ダウンロードすること。
• URL:
http://tomoinoue.web.fc2.com/index.html
2010/10/20
2
前回の復習
• プレイヤーが逐次的に行動を決める状況は、展開
形ゲームを使って表現することができる。
• 展開形ゲームでは、ゲームの木を使ってゲームを
表現する。
» 点
 手番:各プレイヤーが行動する順番に対応
 終点:ゲームの結果に対応
» 枝:
 各プレイヤーの選ぶ行動に対応
2010/10/20
3
終点に到達したときの
各プレイヤーの利得
ゲームは初期点か
ら終点へと進む
参入 独占
高価格
5, 10
独占企業
低価格
参入する
参入企業
-5, 0
高価格
参入しない
独占企業
0, 20
低価格
0, 0
2010/10/20
4
前回の復習
• それぞれの手番でプレイヤーが選ぶ「行動」は戦
略形ゲームの「戦略」とは異なる。
• ゲームを始める前に決めておくプレイヤーの「行
動計画」が「戦略」に値する。
» 自分より前に行動するプレイヤーがとるそれぞれの行
動ごとに、自分がとる行動を決めたものが行動計画。
» 行動計画を戦略として見ることで、展開形ゲームを戦略
形ゲームとして表現することができる。
2010/10/20
5
前回の復習
• 展開形ゲームの戦略形表現
独占
高高
高低
低高
低低
(5,10)
(5,10)
(-5,0)
(-5,0)
参入しない (0,20)
(0,0)
(0,20)
(0,0)
参入
参入する
• ただし、この利得行列から求められるナッシュ均衡
には、不合理なものも含まれてしまう。
» 信憑性のない脅し
2010/10/20
6
前回の復習
• 展開形ゲームの解を求めるために、バックワード・
インダクションを用いる。
高価格
5, 10
独占企業
低価格
参入する
参入企業
-5, 0
高価格
参入しない
独占企業
0, 20
低価格
0, 0
2010/10/20
7
確認問題
• 次のゲームの解を求めよ。
4, -4
S
A
F2
F
R
G
G
B
2010/10/20
-10, -10
B2
-5, -5
0, 0
8
本日の内容
• 情報集合
• 部分ゲーム完全均衡
• 寡占市場分析とゲーム理論
2010/10/20
9
戦略形ゲームの展開形表現
• これまでの展開形ゲームでは後手は先手の行動
を見てから行動を決定するとしていた。
• 後手が先手の行動を観察できない場合について
も、ゲームの木を使って表すことができる。
» 後手が先手の行動を観察できないということは、先手と
後手が同時に行動するのと同じことである。
2010/10/20
10
モデル6
• コンビニS社とコンビニF社は、それぞれ、A駅とB駅のどち
らか1つの駅前に出店しようと考えている。
• A駅にコンビニができれば1日に600人、B駅にコンビニが
できれば1日に400人が利用する。
• それぞれのコンビニが違う駅前に出店すれば、その駅の
利用客はすべて獲得できるとする。
• 同じ駅前に出店すれば、両社は客を半分ずつ分け合う。
» A駅→S社:300人、F社:300人。B駅→S社:200人、F社:200人。
• S社が先にどちらの駅に出店するかを決めるが、F社はそ
の選択結果を知らずに出店する駅を決める。
2010/10/20
11
• 単純に、S社を先手、F社を後手としてゲームの木
をかくと・・・
» これだと、F社はS社の行動を見てから自分の行動を決
めることになる。
A駅
300,300
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
F社
A駅
S社
B駅
F社
2010/10/20
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• F社は、自身が上の手番にいるか下の手番にいる
かがわからないという状態を示す必要がある。
» 上の手番と下の手番を情報集合でまとめる。
情報集合
F社
S社
A駅
300,300
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
A駅
B駅
2010/10/20
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情報集合
• F社の手番2つが、1つの情報集合にまとめられて
いることに注目。
• このモデルでは、F社はS社の行動を観察できな
いから、自分が上の手番で行動を選択するのか
下の手番で行動を選択するのかはわからない。
• このことを表現するために、2つの手番を1つの情
報集合でまとめる。
2010/10/20
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情報集合
• 同じ情報集合に入っている手番においては、プレ
イヤーは、自分がどちらの手番にいるのかはわか
らない。
• ただし、プレイヤーは、自分がどの情報集合にい
るのかは、わかる。
• 手番が1つだけの情報集合もある。
» 初期点のS社の手番が含まれる情報集合
2010/10/20
15
• 初期点のS社の手番も、1つの情報集合に含まれ
る。
情報集合
F社
S社
A駅
300,300
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
A駅
B駅
2010/10/20
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情報集合
• 情報集合は、プレイヤーが行動を選択するときに
利用できる情報を表す。
» すべての手番は、必ず1つの情報集合に含まれる。
» 反対に、1つの情報集合は、1つ以上の手番を含む。
» プレイヤーは、自分がどの情報集合にいるのかを知る
ことができる。
» 1つの情報集合内に複数の手番が含まれるとき、プレ
イヤーは、自分がどの手番にいるのかはわからない。
2010/10/20
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• 参入阻止ゲームで示したゲームの木は、正確に
はこのようになる。
高価格
独占企業
参入する
低価格
参入企業
-5, 0
高価格
参入しない
独占企業
2010/10/20
参入 独占
5, 10
0, 20
低価格
0, 0
18
モデル5:
後手は、先手の行動を見
てから、行動する。
モデル6:
後手は、先手の行動を見
ないで、行動する。
上と下で情報集合が分かれている
ので、後手は自分がどちらにいる
のかわかっている。
→ 先手の行動がわかる。
→ 順番に行動を決めている。
上と下で同じ情報集合なので、後
手は自分がどちらにいるのかわか
らない。
→ 先手の行動がわからない。
→ 同時に行動を決めている。
2010/10/20
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• すべての情報集合が、手番を1つだけ含む場合に
は、そのゲームを完全情報ゲームとよぶ。
完全情報ゲーム
手番の数(3つ)と情報集合の数
(3つ)が等しく、それぞれの情報集
合に手番が1つずつ含まれる。
2010/10/20
不完全情報ゲーム
手番の数(3つ)>情報集合の数(2
つ)であり、後手の情報集合には手
番が2つ含まれる。
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部分ゲーム完全均衡
• バックワード・インダクションでゲームの解を求めら
れるのは、完全情報ゲームだけ。
• 完全情報ゲームにおいて、バックワード・インダク
ションを使って求めたゲームの結果は、部分ゲー
ム完全均衡とよぶ。
2010/10/20
21
部分ゲーム
• 部分ゲームとは、元の展開形ゲーム全体の一部
分であり、それ自身も展開形ゲームとしてみなせ
るものである。
独占
高
5, 10
低
する
参入
-5, 0
高
しない
独占
2010/10/20
0, 20
このゲームには、3つ
の部分ゲームがある。
低
0, 0
22
独占
高
5, 10
低
する
参入
-5, 0
高
しない
独占
独占
0, 20
低
0, 0
高
参入
-5, 0
高
しない
独占
独占企業が高価格か
低価格かを選択する、
独占企業の一人ゲーム
5, 10
低
する
独占企業が高価格か
低価格かを選択する、
独占企業の一人ゲーム
0, 20
もともとの参入企業と独
占企業のゲームも、1
つの部分ゲームとなる
低
0, 0
23
独占
高
5, 10
低
する
参入
-5, 0
高
しない
独占
独占
0, 20
低
0, 0
高
5, 10
• この3つが元のゲー
ムの部分ゲーム
低
する
参入
-5, 0
高
しない
独占
0, 20
低
0, 0
24
• では、このゲームの部分ゲームはどうなるか?
F社
S社
A駅
300,300
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
A駅
B駅
2010/10/20
25
F社
S社
A駅
300,300
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
A駅
B駅
2010/10/20
• これは部分ゲームとは
みなせない。
• F社は自分がこのゲー
ムを行っていると知る
ことはできないので、
これを部分ゲームとみ
なすことはできない。
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F社
S社
A駅
300,300
A駅
B駅
600,400
A駅
400,600
B駅
200,200
• このゲームの部分ゲ
ームは、元の展開形
ゲームだけである。
B駅
2010/10/20
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部分ゲーム完全均衡
• 完全情報ゲームでは、バックワード・インダクション
によって、部分ゲーム完全均衡を求めることがで
きる。
» 部分ゲーム完全均衡では、どの部分ゲームにおいても
ナッシュ均衡が成立している。
 つまり、各プレイヤーはそれぞれの手番において、最も利得が
高くなるような行動を選択する。
 バックワード・インダクションで選ばれる行動と同じ。
 モデル5では、(参入する、高高)が部分ゲーム完全均衡であ
る。
2010/10/20
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演習問題
• 次の展開形ゲームの部分ゲームを求め、部分ゲーム
完全均衡を求めよ。
3,0
1
Y
N
2
1
x2
2,2
y2
6,1
x2
1,3
y2
5,4
x1
y1
2
2010/10/20
29
ゲーム理論のまとめ
• プレイヤーが同時に行動する場合には戦略形ゲ
ームで考える。
» 同時ではなくても、相手がどのような選択をしたかを知
らずに行動する場合も、戦略形ゲームで考える。
• 戦略形ゲームでは、ナッシュ均衡が解となる。
» 各プレイヤーが相手のそれぞれの戦略に対して最適反
応戦略を取り合っている状況がナッシュ均衡である。
» 最適反応戦略とは、相手の戦略1つ1つに対して、自分
の利得を最も大きくする戦略のことである。
2010/10/20
30
ゲーム理論のまとめ
• プレイヤーが順番に行動する場合には展開形ゲ
ームで考える。
• 先手の選択を知った上で後手が行動を決める場
合、部分ゲーム完全均衡が解となる。
» バックワード・インダクションを使い、ゲームの木の終点
に近いほうの部分ゲームから、各プレイヤーの利得が
最も大きくなる行動を選択する。
2010/10/20
31
寡占市場分析とゲーム理論
• 寡占市場における企業間競争をゲーム理論を使
って記述する。
» プレイヤー
» 戦略
» 利得
→
→
→
企業
生産量 or 価格
利潤
• 各企業は、利潤を最大化するように戦略を決定す
る。
2010/10/20
32
寡占市場分析とゲーム理論
• 当面は、複占市場(企業が2つ)について考える。
» プレイヤーは2つの企業
• 企業が同時に意思決定を行う場合と交互(逐次)
に行う場合を分けて考える。
» 同時の場合には戦略形ゲーム、逐次の場合には展開
形ゲームで考える。
2010/10/20
33
寡占市場分析とゲーム理論
• 企業の戦略は、財・サービスの数量(生産量また
は販売量)か価格とする。
» 企業が同時に数量を決める競争のモデルは、「クール
ノー競争(Cournot competition)」とよばれる。
» 企業が同時に価格を決める競争のモデルは、「ベルトラ
ン競争(Bertrand competition)」とよばれる。
» 企業が先手と後手に分かれて戦略決定を行う競争のモ
デルは、「シュタッケルベルグ競争(Stackelberg
competition)」とよばれる。
2010/10/20
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寡占市場分析とゲーム理論
• これまでのゲーム理論で扱ってきたモデルとの最
大の違いは、各プレイヤーの戦略が明確な形で分
かれていないこと。
» これまでは、「A駅」と「B駅」や、「参入する」と「参入しな
い」というように、明確に分かれていた。
» 企業の生産量や価格は、厳密には、連続的な変数であ
るため、これまでのように1つ1つの戦略に対する最適
反応戦略を求めることはできない。
» 利潤を自身の生産量や価格で偏微分することによって
最適反応戦略を求める。
2010/10/20
35
次回
• 複占市場における企業の最適反応戦略の求め方
» 偏微分の計算方法
» 偏微分を使った最適反応戦略の求め方
2010/10/20
36