4−4 展開形ゲーム これまでのゲーム : 1回のみ プレーヤーが同時に行動 (戦略形) 利得表による分析 but 現実的には、より複雑な状況が考えられる 展開形ゲーム : 意思決定が多期間にわたる プレーヤーの行動に順序がある 「ゲームの木」による分析 (例) 参入の問題 最後から遡って考えていくと 答えが見つかる! 1 例 「チェーンストアパラドクス」 新規 A地区 A店 Bマーケット 参入 値下げして競争? 黙認して共存? ある地域に唯一の既存企業が存在しているとき、新規企業の 参入が計画されているならば、新規企業は参入に成功し、 既存企業は結局、協調することになる 2 ※ 伊藤元重 「はじめての経済学(上)」 (日経文庫)p181-194より抜粋 参入する A B A 参入しない ※ 値下げ競争 (−2,−2) 共存 B (5,5) (10、0) : node(ノード)… 各プレーヤーの意思決定の場所 分岐点 : path(パス)… プレーヤーの行動の選択肢 枝 展開形ゲームの場合、ある1部分だけを取り出しても、それ自体を1つの 独立したゲームとして分析できる 「部分ゲーム」(サブゲーム) 考え方 後から前に逆戻って行動を確定していく → 「バックワード・インダクション」 3 ① 後のA店 についての反応を切りとって考える (B店が参入するとき) 値下げ (−2 共存 (5 ) A A店にとって最適なのは? ) ② B店の行動に戻って考える 参入する A B 共存 参入しない ( ( 5) 0) ③ このゲーム全体のナッシュ均衡は? ※ 最後の部分ゲームから順に最初の分岐点まで遡って 各プレーヤーが選択した 戦略を考えると、すべてのそれぞれの部分ゲームにおいて、各プレーヤーが ナッシュ均衡を選択 4 すべてにおいてナッシュ均衡となる 戦略の組み合わせ=ゲーム全体での均衡 (「部分ゲーム完全均衡」) サブゲーム・パーフェクト この例のゲームの場合、 「厳しい価格競争をしかける」というA店の脅しは効果があるのか? → 空脅しでは参入を阻止できない 結論 合理的な判断の結果として、新規企業は参入に成功し、 既存企業は結局、協調することになる 現実の直感とは異なる?? (ゼルテンによって指摘) 5 参入を阻止するためにはどのようにすればよいか? コミットメント (自分の将来の行動を先に決めておく) 相手の行動よりも先に自分が行動を変えることによって、 相手の行動に影響を与え、自分にとって有利な方向にする A店はBマーケットが参入する前に 「店舗を拡大するか」、「店舗を維持するか」 を検討する 店舗維持の場合 : これまでと同様のゲーム Bが参入 店舗拡大の場合 : A店は店舗拡大のために大きなコストがかかる but Bマーケットが参入してきても Bマーケットに勝てる魅力的な店舗 に変えることができる Bが打撃 6 A B 共存 参入しない A A B (-2, -2) 参入 店舗維持 店舗拡大 競争 (5, 5) (10, 0) 競争 (2, -3) 参入 共存 参入しない (0, 3) (7, 0) このとき、部分ゲーム完全均衡は? 7 Aは 「一見無駄に見える大型店舗を持つという行動をとることにより、 Bが参入したときに競争することが合理的になるような体質に 変わっていることを見せつけ、Bの参入をくじき、自らの利得を 上げることが実現」 (伊藤元重 p193より) コミットメントによる参入阻止 ※(配布資料) 伊藤元重 「ビジネス・エコノミクス」P185-189 現実には? 地方のショッピングセンターには大きな規模のものが 多い? ライバルの進出を阻止する効果 小 大 (参考) チキンゲームの応用例 (ビルの建替え競争の例) 現状維持 現状維持 大 建替え 小 展開形ゲームで考えると? (先手の利益) 建替え (4,8) 現状維持 大 建替え (2,10) (6,6) (1,4) ※ 「図解雑学 ゲーム理論」より 8
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