多職種参加型 高齢者整容・美容ケアマネジメントガイド

多職種参加型
高齢者整容・美容ケアマネジメントガイド
A-Ⅰ.日常生活について
1 排便・排尿
P-1
排尿・排便の間隔・回数・性状・尿意・便意の有無を施設スタッフに確認する。
P-2
施術前に用を足してもらうようにする。
P-3
トイレまでスムーズに行けるように途中に障害物がある場合は取り除くなど工夫する。
<介助の必要がある場合>
P-4
トイレに誘導する際には、周囲に気付かれないようにさりげなく行う。
P-5
バルーンなどチューブ類がついている場合は、引っかけないように注意する。
P-6
施術場の脇にポータブルトイレの設置を依頼する。
(解説)トイレの心配は、施術中に会話などを楽しんでもらう上での阻害要因となる。また、失
禁は、利用者のプライドを傷つけることになりかねないため、プライバシーには十分な配慮が必
要である。
2 便器の使用
該当なし
3 洗顔に関連して、3-1、3-2、3-3 を列記
3-1 洗顔
<自分で洗顔ができる場合>
P-1
上手な洗い方やマッサージ法を教える。
P-2
洗顔前、洗顔中には声かけをする。
P-3
洗い残しがないか、かゆいところなど違和感が残っていないか確認する。
<意識障害があるなど自分で洗顔できない場合>
P-4
温かいタオルで拭くなど洗顔以外の方法で行う。
(解説)洗顔は身だしなみの基本である。また、さっぱり感が残るようにきれいに洗顔をする。
3-2 整髪
P-1
整髪がしやすい髪型を提案する。
(解説)自分で整髪ができることの重要性を認識し、整髪しやすい髪型を提案するとよい。ただ
し、整髪のしやすさだけにこだわると、利用者・家族の好みに合わないこともあるので、十分に
コミュニケーションをとりながら施術する。
3-3 髭そり
<自分でひげを剃れる場合>
P-1
上手な剃り方を教える。
P-2
かみそりが清潔かどうかを確認する。
P-3
剃り残しを確認する。
<自分でひげを剃れない場合>
P-4
ひげを剃る前に、声かけをする。
(解説)毎朝、きれいにひげを剃ることで、1日の生活にリズムが生まれる。日常的に上手に剃
るための方法をアドバイスしておくとよい。
4 手と腕を使って物を移動・操作
該当なし
5 基本的な姿勢の変換
P-1
座位を修正する場合は、背中に手を入れて身体を起こす。
6 姿勢の保持
P-1
お尻の下に円座などをあてがい端座位を維持しやすくする。
7 移乗困難の存在
P-1
顔色や呼吸状態を観察しながら、利用者のペースに合わせてゆっくり起座・移乗を行う。
P-2
施術場に移動しますよ、などと声を掛けることで安心してもらう。
P-3
起き上がる時に必要に応じて背中を支える。
P-4
利用者のすぐそばに立って、いつでも援助できるようにベッド上の動作を見守る。
P-5
両手両足およびカテーテル類をベッド柵などにひっかけないように十分に注意する。
P-6
無理をすることは避け、助けが得られそうなら複数人で行うことを心がける。
P-7
麻痺があるなどの場合は、施設スタッフと一緒に介助する 。
(解説)転倒など不測の事態に即応できるような心の準備が必要である。起き上がりの一連の動
作のどこで失敗するかわからないので、注意して見守る。無理をすると転倒やけがの原因となる
ので、移乗技術の習得をしておくことや施設スタッフと連携することが望ましい。
8 歩行
P-1
歩行可能かどうか確認する。
<歩行が不安定な場合>
P-2
せかさず、安心感を与えるような声かけをする。
P-3
時間がかかっても自分の足で歩いて移動してもらうようにする。
P-4
歩行時の疲れ具合を見ながら休憩を取るようにする。
P-5
歩行時に転倒しないように体を支える。
P-6
障害物を取り除くなどして、歩行しやすい環境を整備する。
P-7
麻痺・痛み・しびれがある場合は、利用者の患側に立って援助する。
(解説)転倒は重大な事故であり、歩行中や移動中は決して目を離してはいけない。いつでも支
えられるように準備しておく。一方、安全面に配慮しすぎると歩行する機会を失ってしまう恐れ
がある。施設の許可があり、本人が歩行に前向きな場合は、安易に車椅子を使用しない。
<車椅子の場合>
P-1
車椅子移乗時は転倒が多いため、特に注意し、安心感を与えるような声かけをする。
P-2
施術からの帰りには、行く方向を利用者に確認する。
P-3
角を曲がる、方向転換する、スロープを乗り越える、小さな段差(ドアの敷居、コードな
ど)を乗り越える、エレベーターを乗り降り、ブレーキの掛け外し、フットレストの上げ下
げする際は声かけをしながら行う。
P-4
正しい座位を保持できているか移動中も確認する。
P-5
車椅子がスムーズに移動できるように通り道の障害物を取り除く。
P-6
タイヤで手や肘をこすったり、床で足をこすることが多いので、手足の安全に注意する。
9 更衣
P-1
毛布を掛けるなどして寒さや暑さへの気配りをする。
P-2
着替えが必要な場合は、声かけをしながら手伝う。
P-3
違和感なく衣服が着られているか確かめる。
P-4
声かけをしながら衣服を整える。
(解説)着衣援助時に骨折など事故が発生することがあるので、苦痛を与えていないかどうか、
無理な力が加わっていないか常に声かけと観察をしながら援助することが重要である。
10 入浴
該当なし
11 電話
P-1
電話機の使い方がわかるかどうか確認する。
<電話機の使い方がわからない場合>
P-2
電話の使い方を教えたり、円滑にできるようにアドバイスする。
P-3
はがきやファックスなど他の連絡方法を検討する。
P-4
家族や施設スタッフに伝言を頼む。
<電話をかけられないが電話を取れる場合>
P-5
こちらから連絡をするようにする。
(解説)電話が使えない理由を考え、トラブルがないように連絡方法を検討する。
12 移動・外出
該当なし
13 金銭の管理
P-1
家族や施設スタッフに、受け取った料金などを領収書とともに伝える。
P-2
口頭は危険であることを認識しておく。
(解説)金銭に関することは、トラブルを起こしやすいので、記録に残すなど注意深い対応が必
要である。
14 物品とサービスの入手
P-1
中長期的な施術プランを作成し、できるだけ家族など代諾者に承諾をもらっておく。
P-2
施術が必要な時期にこちらから連絡をいれる。
A-Ⅱ.整容・美容について
1 髪
1-a
髪の毛がベタベタしている。
P-1
週 2 回以上洗髪をする。
P-2
すすぎが足りないとベタベタするので、よくすすぐ。
1-b
髪の毛が多い。
P-1
「しっとり」系のシャンプー剤を使う。
P-2
ドライヤーをかけるときは、弱風で上から髪の毛の流れに平行に風を当てる。
1-c
髪の毛が尐ない。
P-1
「さらさら」系のシャンプー剤を使う。
P-2
ドライヤーをかけるときは、髪の毛を持ち上げて髪の根元に弱風でかける。
1-d
P-1
1-e
カラーリングをしている。
髪が傷んでいることが多いので、トリートメントをする。
尐なくなっている
或いは
禿げている。
P-1
髪型の整え方を工夫する。
P-2
部分かつらの装着を提案する。
P-3
好みに合った帽子を提案する。
2 頭皮
2-a
フケがある。
P-1
シャンプー剤のすすぎ残しに注意する。
P-2
週 2 回以上は洗髪をする。
2-b
P-1
乾燥している。
尐量のベビーオイルで頭皮をマッサージする。
P-2
刺激の強いシャンプー剤(トニックシャンプーなど)は避ける。
P-3
頭皮と合っていないことがあるので、シャンプー剤の種類を変えてみる。
2-c
脂性である。
P-1
洗髪をするときは、泡をしっかり立てて、よく洗い、よくすすぎ、よく乾かす。
3 肌(顔)
3-a
むくんでいる。
P-1
3-b
リンパの流れが悪いことがあるので、マッサージをする。
ひげが濃い。
P-1
3-c
タオルで蒸してひげを柔らかくしてから剃る。
乾燥している。
P-1
保湿クリームを塗る。
P-2
部屋の中が乾燥しないようにする。
3-d
湿疹がある。
P-1
ベビー石鹸を使う。
P-2
入浴の際には、髪を先に洗ってから顔や体を洗う。
(リンス剤やトリートメント剤が触れた皮膚を石鹸で洗い流さないと湿疹になり易い)
P-3
できものの場合は触らないで、医師・看護師に相談する。
4 眉
4-a
眉毛が伸びている。
P-1
切ってほしいかどうか確認してから切る。
5 耳
5-a
耳毛が伸びている。
P-1
5-b
切る。
耳の後ろが汚れている。
P-1
5-c
石鹸で洗う。
耳垢がある。
P-1
耳の入り口は濡れタオルで拭く。
P-2
耳の奥は、自分でやらずに看護師に相談する。
6 鼻
6-a
鼻毛が伸びている。
P-1
鼻から出ている場合は切る。
7 唇
7-a
乾燥している。
P-1
リップクリームを塗る。
8 爪
8-a
筋がある。
P-1
8-b
爪の根元をマッサージする。
硬くなっている。
P-1
伸びている場合は、爪を温めると切り易いのでお風呂上がりなどに切る。
9 手
9-a
むくんでいる。
9-b
冷たい。
P-1
マッサージする。
10 皮膚(身体)
10-a 乾燥している。
P-1
保湿クリームを塗る。
P-2
肌着に配慮する(綿素材などの肌着を提案する)。
<入浴できる場合>
P-3
尿素配合の入浴剤を使う。
P-4
ベビー石鹸を使う。
P-5
ナイロンタオルを使わない。
P-6
擦り過ぎない。
B.集団生活について
1 思いやりや敬意を他人に示す
2 社会的ルールと慣習に従う
P-1
社会的ルールから逸脱した困った言動があった場合、「やめてください」「困ります」な
どと制止せず、「・・・して頂けたら助かります」などと自尊心を傷つけない言葉を用いる。
3 地域活動
4 あらゆるレクリエーションとレジャー
<参加できる場合>
P-1
会話の中で利用者の趣味などを聞き出し、理美容師として支援できることはないか検討す
る(例:おしゃれをしての外出を支援する)。
<参加できない場合>
P-2
受動的なレクリエーションを検討する(例:やっとかメールを活用する)。
(解説)地域活動やレクリエーションは、QOL の重要な要素である。趣味は一人ひとり違うので、
その人にあったレクリエーションについて一緒に考える姿勢が大切である。
5 コミュニケーション
<会話ができる場合>
P-1
好みなどを開かれた質問(どのような感じがお好みですか?など)で行い、自己決定をひ
きだす。
<会話ができない場合>
P-2
閉じられた質問(はい、いいえで回答できる質問)を行い、自己決定をひきだす。
P-3
返答がなくても、共感の姿勢でできるだけ話しかけるようにする。
P-4
契約など後にトラブルになりそうな内容については、家族などにも確認をしておく。
P-5
イラストや写真などを用いて髪の好みなどを聞き出す。
(解説)コミュニケーションは自己決定の基本である。コミュニケーション能力の低下がある場
合は、開かれた質問と閉じられた質問を上手に使いながら、コミュニケーションを促していくこ
とが重要である。また、会話が難しいようなら、非言語的コミュニケーションを行うとよい。
C.環境について
1 婚姻状態
該当なし
2
経済状態
<経済的にゆとりがある場合>
P-1
カラーなどオプションの希望を聞く。
<経済的にゆとりはないが家族からの支援が受けられる場合>
P-2
オプションの希望を聞く。
<経済的にゆとりがなく家族からの支援も受けられない場合>
P-3
オプションの希望は聞かない
。
P-4
継続支払いが可能な利用額を相談する。
(解説)オプションを勧める場合には、押し付けにならないように十分配慮する必要がある。希
望には多様性が大きいため、利用者だけでなく家族ともサービス内容について機会を見つけて話
し合うようにするとよい。ニーズがあるとは言っても、支払い能力や家庭の事情を考慮すること
なく、施術を行うことは適切ではない。利用者の自尊心を傷つけることがないように、さりげな
く事情を把握することが重要である。
3 家族関係・状況
P-1
(家族関係が親密でない場合)話し相手になる。
P-2
楽しめる娯楽について一緒に考える。
P-3
地域のサークルやクラブなどへの参加を検討する。
P-4
デイサービスやデイケアの利用を勧める。
P-5
デイサービスやデイケアでの感想を聞いてみる。
P-5
おしゃれの支援やレクリエーションなどを通じて、家族との関係作りを支援する。
(例:おしゃれをして外出する機会を提案する、やっとかメールを利用するなど)
(解説)理美容の視点から、家族と利用者とのコミュニケーションを図ることもできる。また、
話し相手になることで、孤独感を癒すことができる。ただし、家族にしかわからない事情を抱え
ていることもあるので、プライベートなことを聞くときには、慎重であるべきである。
4 生活歴
該当なし
D.身体の状態について
1 視力
P-1
文章を代わりに読む。
P-2
施術前には、自分の所属と名前を述べるなど挨拶をきちんとする。
P-3
施術後にも、きちんと声かけをする。
P-4
移動時に必要に応じて誘導する。
P-5
通路や施術場の周囲には、障害物は置かない、危険な物を取り除くなど環境の整備を行う。
P-6
字をみてもらう必要がある場合、虫眼鏡、拡大鏡などの視力補助器具を活用する。
P-7
声かけ、感触、臭い、音など視覚以外の方法でコミュニケーションを図る。
(解説)視力は、コミュニケーションにとって重要である。また、視力低下は転倒事故などを招
きやすい。視力が低下している高齢者の支援には、声かけを行い不安を和らげるような配慮が必
要である。
2 聴力
P-1
相手から見える場所に立ち、ゆっくり、はっきり、低音で話しかける。
P-2
筆談、手話、指文字を使用する。
P-3
表情、身ぶり手ぶり、優しく触れるなど、非言語的コミュニケーションを意識する。
P-4
補聴器がある場合は、装着してもらう。
(解説)高齢者全般にいえるが、非言語的コミュニケーションが重要である。笑顔などしっかり
練習しておくことが重要である。
3 痛み・しびれ
P-1
痛み・しびれがいつもよりひどくないか確認する。
P-2
痛み・しびれのために施術が困難な場合、決して無理をせず、中断する旨を伝える。
P-3
痛み・しびれが強い場合は、同部のマッサージや屈曲・伸展は控えるもしくは中止する。
P-4
いたわりの気持ちを言葉や表情で伝える。
(解説)痛み・しびれが強い場合は、決して無理をしないことが重要である。高齢者は関節の変
形(特に首の変形)がみられることが多いため、無理な姿勢などによりけがをしやすい。声かけ
をしながら、安全第一を心がける必要がある。
4-1 認知症(中核症状について)
P-1
カレンダーや時計などを見ながら、日付・時間を一緒に確認し、質問はしない。
P-2
同じことを繰り返して言う場合は、根気よく笑顔で毎回同じ対応をする。
「さっきから何回も言っているように・・・」と言わない。
P-3
誤ったことを思い込んでいる場合は、その認識を否定せず傾聴し、話題をさりげなく変え
ていく。
P-4
話を合わせ、話が途切れないようにする。
P-5
会話の内容より、会話そのものを楽しむ姿勢を持つ。
P-6
笑顔やタッチなど非言語的コミュニケーションを積極的に活用する。
P-7
更衣に問題がある場合は、自尊心を傷つけないようにさりげなく支援する。
P-8
利用者が話しにつかえたり、回りくどい話をしたりする際には、言葉を補ってあげて、話
を続けられるようにする。
P-9
会話の内容が明らかに現実離れしている場合には、「あれ」「それ」など代名詞を多用す
ると会話がスムーズに進む。
P-10 費用の心配をする場合には、「ご家族や施設スタッフと負担にならないように一緒に考え
ています。心配はいりません」などと応じる。
<施術に協力をしてもらえない場合>
P-11 「今日はとびきり奇麗にしますよ、さっぱりしますよ、あなたが奇麗になると私もうれし
いです」などと応じ、こちらからお願いするような姿勢がよい。
P-12 無理強いはしない。
P-13 家族や施設スタッフから勧めてもらったり、付き添ってもらうようにする。
P-14 終わったらゆっくりお茶でも飲みましょう、とその後にゆったりとした楽しい時間を用意
していることを伝える。
P-15 時間を空けて利用者の心境の変化をみて、再度勧めてみる。
(解説)相手の立場に立って接すれば、気分は良くなり、認知症の進行を遅らせることは可能で
ある。叱ってしまったりしては、暴言や暴行など周辺症状を引き起こすことにもつながる。施術
を止め、話題を変えることでこだわりが消えることもある。
4-2 認知症(周辺症状について)
P-1
妄想がみられる場合、正しいことを説得しようとしても妄想が修正されることは稀である
ため、聞くことに徹する。
<物とられ妄想>
P-2
同じ感情を共有して、一緒に探そうとする。
P-3
たとえ探し当てても利用者が見つけられるように仕向ける。
P-4
犯人にされる恐れもあるので気をつける。
P-5
貴重品がある場合、トラブルを避けるためにその取扱について施術前に利用者・家族・施
設スタッフと確認しておく。
P-6
幻視(例:いるはずのない人や、犬、猫、蛇などの動物が見える)があり、怖がっている
場合、本人の話を否定せず、話を合わせるようにする(具体的には「○○さんには△△が見
えるんですね」など)
また部屋を変えることも選択肢に入れる。
<暴言・暴力がある場合>
P-7
早めに施設スタッフに相談する。
P-8
決して自力で解決しようとしない。
P-9
刃物など危険なものを遠ざける。
P-10 (不安や恐怖など)思いを受け止める。
P-11 部屋を変える。
<性的問題行動(セクシャルハラスメント)に遭った場合>
P-12 怒らずに、その場は「ごめんなさいね。触られると施術ができませんので、やめていただ
けますか」などと応じ、施設スタッフや本部に報告する。
(解説)周辺症状は、間違った対応をすると悪化することがある。あらかじめ、対応の仕方につ
いて勉強していくか、施設スタッフから聞いておくとよい。
5 抑うつ状態
P-1
不満や悩みは話を聞いてもらうと軽減される場合があるのでじっくりと我慢強く相手の話
を聞く。
P-2
自分の意見・考えは言わない(傾聴する)。
P-3
本人の話を否定しない。
P-4
励まさない。
P-5
会話を盛り上げない。
P-6
相手の調子に合わせる。
P-7
落ち込んでいるときは落ち込んだトーンで話す。
P-8
他人と交流することで気が紛れることがあるので希望者にはレクリエーションを提案する
が無理強いをしないように注意する。
P-9
安心してもらえるように「会話の内容は漏らしたりしないので、安心して話して下さい」
と伝える。
P-10 軽いマッサージや熱いタオルで清拭などをして、リラックスできるように心がける。
P-11 気分が落ち着くような雰囲気づくりをする。
P-12 家族との連携を支援する(やっとかメールなど)。
P-13 カットが終わったら、施術者以外からも「きれいになりましたね」とほめてもらう。
(解説)うつは、デリケートな問題なので、対応は慎重に行う。決して励ましてはいけない。施
術者のエネルギーも落とした方がよい。相手の気持に寄り添うことが大事である。
6 心機能・呼吸機能・肝機能
P-1
息切れがみられたり、病状が安定していないようなら、施設スタッフに施術の可否につい
て確認する。
(解説)施術による身体的負担は小さいと思われ、特に制限はないが、病状が安定していないよ
うなら、確認するとより安全性が高まる。
7 内服
P-1
アスピリン、ワ―ファリンを内服している場合、止血しにくいので、出血した場合は、あ
せらず長めに圧迫する。
(解説)施術による問題となるほどの出血は想定しにくいが、出血の際には長めに抑える(圧迫
止血)のが基本である。ほとんどの場合はこれだけで止血する。
8 感染症(感染予防)
P-1
慢性的な咳がある場合、手指消毒・手洗いに加えて、うがい・マスクの着用を徹底する。
P-2
血液や体液の付着がある場合には物理的に洗い流すことが重要であるので、流水下手洗い
を行う。
P-3
施術の前後に必ず手指消毒か手洗いをする。
P-4
書類に記載する前には手指消毒か手洗いをする。
P-5
血液・体液、傷のある皮膚、粘膜に触れるときは必ず手袋を着用する。
P-6
手袋をしたまま物品に触れない。
P-7
手袋をはずす時に完全に汚染を防ぐことは難しいので必ず直ちに手指消毒か手洗いを行う。
P-8
咳、痰はもちろんのこと、血液や体液が飛び散る場合においても、必ずマスクをする。
P-9
使用したかみそりなどでけがをした場合、直ちに流水で血液を絞りながら十分に洗浄し、
その後 10%ポビドンヨードか消毒用エタノールで消毒する。
P-10 利用者の血液・体液が目に入った場合、直ちに十分に洗眼する。
P-11 口の中に入った場合、直ちに多量の水で十分にうがいをし、その後ポビドンヨードを水で
薄めてうがいをする。
P-12 何より迅速に対応する。
P-13 責任者への連絡と周りの人に現場を確認してもらう(労災認定の際に必須)。
(解説)
・肝炎ウイルスには、B 型と C 型がある。血液を介して感染するため、普通の生活や施術では感
染の心配はない。施設では事前に検査していることが多いため、確認しておくとよい。ただ、刃
物でけがをする恐れがある場合には、手袋を使ったほうがよい。
・梅毒(ワ氏)は、性行為による感染が主だが、対応は肝炎に準じる。
・MRSA は、抗生物質が効きにくいブドウ球菌の仲間であり、病院や施設でよくその感染者に遭
遇する。病原性は弱い。病院では隔離の必要があることが多いが、介護施設・在宅では必要がな
い。MRSA を理由にサービスの提供を拒否すべきでない。
・疥癬は、ヒゼンダニ(疥癬虫)によっておこる皮膚感染症で、肌から肌への直接感染、温もり
の残る寝具等を介する間接感染が主な感染経路である。免疫力が落ちている高齢者に多くみられ
るため、病院や高齢者介護施設で流行していることがある。流行の確認が必要である。予防とし
ては、手洗いと予防衣の着用が重要である。