Journal Club 2014.4 Journal Club 2014.4 Sandwich Assay for Tacrolimus Using 2 Antitacrolimus Antibodies Tie Q. Wei1,*, Yi F. Zheng1, Michael Dubowy1 and Manoj Sharma1 Author Affiliations 1 Siemens Healthcare Diagnostics Inc., Newark, DE 19714. * Address correspondence to this author at: Siemens Healthcare Diagnostics Inc., P.O. Box 6101 M/S 707, Newark, DE 19714. Fax 302-631-7478; e-mail [email protected]. ジャーナルクラブ 2 つの抗タクロリムス抗体を使用するタクロリムスのサンドイッチアッセイ ■概要 背景:サンドイッチアッセイ形式での抗ハプテン抗体による自然界のハプテンの検出は、理論上、高度な分析特 性と感度の利点を持っているが、このタイプのアッセイは 2 つの結合間の立体障害という、一見克服できない課 題があるために報告されてこなかった。これは特に、環を形成する疎水性のハプテンに言える。マクロライド系 薬剤のタクロリムス(FK506, Prograf®, 804 Da)は、そのようなハプテンである。ここで我々は、2 つの抗タク ロリムスモノクローナル抗体を用いたサンドイッチアッセイでのタクロリウムの検出について述べる。 方法:両方の抗体は、10 個の炭素原子によって分けられた 2 つの異なった部位に対して、キャリアタンパク質 に共有結合した完全なタクロリムス分子の使用によって開発された。薬物アナログ結合を基盤としたエピトープ 分析は、2 つの異なったエピトープとなった 10 のカーボン数の間隔を持つことで、2 つの抗体の結合部位の間で オーバーラップせずに使用された。その薬物に対する異なったエピトープは、2 つの離れた部位の抗体によって 結合しやすくなるかもしれないことを示し、サンドイッチ形式として同時結合の可能性を示唆した。 結果:この予測は、サンドイッチ ELISA とアフィニティカラムによる免疫分析フォーマットで確かめられた。そ のアッセイは低不正確さを示し、競合アッセイよりも著しく低い代謝産物交差反応を示した。移植患者からの 55 全血サンプルを使用した、タクロリムス濃度域 0.9-29.5ng/mL の LC-MS/MS との比較は、直線回帰を示した (sandwich = 0.99 × LC-MS/MS + 0.10 ng/mL, r = 0.991, Sy|x = 1.08 ng/mL) 結論:この検討は、2 つの高い特異性を持つ抗ハプテン抗体を使用するサンドイッチアッセイが、ハプテン薬の 測定に適していることを示した。 タンパク質と結合するハプテンが、1 対1の現象であることは一般的に受け入れられた定説である。これは結合 ハプテンが、結合タンパク質の表面の空洞にほとんど埋め込まれ、立体障害のためにその他のタンパク質分子と 2 次的な結合反応にアクセスできない傾向があるからである。従って、ハプテンの検出のためのほとんどの免疫 分析は、競合形式を使用する。これは 1 つの抗ハプテン抗体だけが使用され、検出されるハプテンはその抗体に 結合するラベル化されたハプテンと競合する。ハプテンの検出に使用されるわずかなケースにおいて、サンドイ 1 Journal Club 2014.4 ッチアッセイ形式が、2 次的な結合がオープンサンドイッチアッセイ形式でのハプテン抗体複合体を認識する抗 メタタイプ抗体、もしくはα-Aid のような抗イディオタイプ抗体、またはラベル化された VH 鎖によってのみ可 能となる。今までに、実際のサンドイッチアッセイが報告した最も小さい天然分子は、1048 Da の分子量の直鎖 非ハプテンオクタペプチドであるアンジオテンシンⅡであった。このサンドイッチアッセイで使用された 2 つの 抗体は、各々C 末端と N 末端の分子フラグメントに対して作成された。最近また、個々の抗体にリンカーによっ て結合した 2 つのハプテンから成る低分子合成物質を用いたサンドイッチアッセイが報告されていた。サンドイ ッチ形式を許す 2 つのハプテン間の最も短いリンカーは、5Åの長さと決定された。 タクロリムス(FK506, 804 Da)は、Steptomyces tsukubaensis 菌の発酵産物から単離されたマクロライドラクトン である。それは免疫システムを抑制することで、同種臓器移植での移植片拒絶を低減するために、一般的によく 他の免疫抑制剤と一緒に使用されている。その治療濃度域が狭いために、最適な有効性のために血液中の薬物濃 度をモニターすることは重要である。薬物のモニタリングに、1 つの抗体を用いた競合免疫分析は一般的に有効 である。その小さなサイズのために、タクロリムスに関するサンドイッチ免疫分析の報告はまだない。しかしな がら、一般的なサンドイッチ免疫分析は競合形式よりも分析感度と特異性が高く、幅広いダイナミックレンジを 示す。例えば、1 つの抗体だけが用いられた競合フォーマットと比較して、サンドイッチ形式は 2 つの抗体によ って同時に認識される薬物分子が必要なため、より低い薬物代謝交差反応を持つ傾向がある。結果として、構造 的に異なった代謝産物は両方の抗体によって形成された親薬物のすべての結合ポケットに一致する可能性は低い。 一般的な薬物代謝産物はターゲットとされた生物学的効果の欠如のため、より低い、もしくは代謝産物との交差 反応がないことは、治療的薬物モニタリングにとって極めて重要である。 今回私たちは、タクロリムスがサンドイッチ免疫分析法で、2つの抗タクロリムスモノクローナル抗体、14H04 と 1E2 によって同時に結合されることを報告する。私たちの知る限りでは、これは天然のハプテンと 1000 Da 以 下の天然の分子にとって、真のサンドイッチ形式の最初の報告である。ここで記述されている 2 つの抗体の各々 は、以前に個別の競合アッセイでシングル抗体として使われていた。 ■材料と方法 同時結合に用いられた 2 つのマウスモノクローナル抗体は、14H04 と 1E2 であった。14H04 は 1 つのオキシム官 能基を持った C22 を介して、KLH と結合したタクロリムスを用いて開発された(Fig. 1A)。1E2 はコハク酸官能 基を持ったタクロリムスの 3 つの位置異性体の混合物(C32、C24、もしくは C32 と C24 の両方を同時に介して KLH と結合したタクロリムス)を用いて開発された。BALB/c マウスは各々のタクロリムス-KLH 複合体で免疫さ れ、標準的な融合法はタクロリムスに特異的な抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株を使用した。C24 位の修飾 コハク酸化合物(Fig. 1A と Table 1)と結合しないという事実に基づいて、私たちは 1E2 クローンを産生する イムノゲンが C32 を介して KLH と結合したタクロリムスであることを決定した。 2 Journal Club 2014.4 図 1. 同時結合のエピトープ分析と予測 (A), タクロリムス代謝産物と合成類似化合物の 2-D 構造 (B), 同じ化合物の 3-D 構造。炭素原子は灰色のボー ル、酸素原子は赤いボール、窒素原子は青色のボールとして示されている (C), 14H04 と 1E2 のための減少し たタクロリムスエピトープ (D), 左の 3-D 構造のスピニングは右側の 3-D 構造を生み出す (E), 2 つの抗体に タクロリムスが同時結合したときの予想図 表 1. ACMIA サンドイッチアッセイで予測、測定されたものと比較して、2 つの競合アッセイで測定された代謝 産物と合成類似化合物の交差反応の比率 Table 1. Percentage cross-reactivity of metabolites and synthetic analogs measured by 2 competitive assays in comparison to that predicted and measured by the ACMIA sandwich assay.a Metabolite/analog Competitive Competitive Sandwich Sandwich assay nameb assay using assay using assay measured, % 14H04, % 1E2, % predicted, % Tacrolimus 100 100 100 100 13-O-desmethyl 28 0 0 0 tacrolimus (MI) 31-O-desmethyl 0 19 0 0 tacrolimus (MII) 15-O-desmethyl 0 15 0 23 tacrolimus (MIII) 12-O-hydroxyl 26 104 27 20 tacrolimus (MIV) 15,31-O2 0 0 0 didesmethyl tacrolimus (MV) 13,31-O2 0 0 0 didesmethyl tacrolimus (MVI) 3 Journal Club 2014.4 13,15-Odedesmethyl tacrolimus (MVII) MVIII C22 oxime tacrolimus C24 succinate tacrolimus C32 succinate tacrolimus a b 10 42 4 4 2 207 0 0 0 0 0 0 25 0 0 0 0 197 0 0 サンドイッチ交差反応の予測は、1E2 の交差反応によって 14H04 の交差反応を増やすことで得られた。 各々のサンプルは、40ng/mL の代謝産物もしくは 10ng/mL の合成類似物でスパイクされた。 薬物代謝産物と類似物 タクロリムスは、肝臓のチトクローム P-450 システムで代謝される。この研究のすべてのタクロリムス代謝産物 (図 1)は、コロラド大学の Uwe Christians 博士から購入した(23,24)。タクロリムス-C24 とタクロリムスC32 のコハク酸塩は、2 つのすでに特許化された工程を使用して調製された[Niwa et al. (20), US patent US 5,532,137; Steven (25), US patent US 5,164,495] 14H04 でコートされた二酸化クロム磁気粒子の調製 二酸化クロム磁気粒子は、リン酸緩衝液(10 mmol/L phosphate; 300 mmol/L NaCl, pH 7.0)で十分に洗浄後、25% グルタルアルデヒド溶液を用いて 14H04 がコートされた。詳細なコーティング方法は、以前に報告された[Lau (26), US patent US 4,661,408] 抗タクロリムス抗体-β-ガラクトシダーゼ複合体試薬 モノクローナル抗体 1E2 は、標準 heterobifunctional succinimidyl trans-4-(N-maleimidylmethyl) cyclohexane-1carboxylate linker (27)を用いてβ-ガラクトシダーゼと結合した。14H04 クローンを用いた抗体-β-ガラクトシダ ーゼ複合試薬は、同じ方法で作られた。 ■溶血前処理試薬 試薬は 5.5 μmol/L of rapamycin, 20 mmol/L PIPES™ (piperazine-N, N′-bis[2-ethanesulfonic acid]), 1.5 mmol/L sodium salt, 1 mmol/L EDTA disodium, and 2.4 mmol/L saponin, pH 6.5 を含む。 単一抗体を使用してタクロリムス測定をする免疫分析ための競合アフィニティカラム 2 つの競合アフィニティカラムを介した免疫分析(ACMIAs)、すなわち、1つは 1E2、もう1つは 14H04 を使 用した分析は、先に示されたように実施された。両アッセイは、EDTA 全血サンプルを用いて Siemens Dimension® RxL Max® Integrated Chemistry System で行われた。同じ前処理試薬が反応槽に分注された。その後、 EDTA 全血サンプルは、超音波をかけながら混合され、同じ反応槽に添加された。前処理試薬とサンプルをイン キュベーション後、1E2、もしくは 14H04 抗体-β-ガラクトシダーゼ複合試薬をそれぞれ反応槽に添加し、溶血 後の全血サンプルと一緒に混合された。このステップで、抗体-β-ガラクトシダーゼ複合体で遊離したタクロリ ムスの複合形成がなされる。次に、二酸化クロム粒子試薬でコートされたタクロリムス類似体が、その反応混合 物に添加された。14H04 抗体が二酸化クロム粒子にコートされる際の類似体は、タクロリムス-C22-オキシムで 4 Journal Club 2014.4 あった。1E2 抗体に使用された類似体はタクロリムス-C32-コハク酸塩であった。二酸化クロム粒子でコートさ れたタクロリムス類似体に、タクロリムスと結過剰の抗体-β-ガラクトシダーゼ複合体を除去するためのインキ ュベーション後、二酸化クロム粒子は磁気によりその槽の反応混合物から分離され、タクロリムス:抗体-β-ガ ラクトシダーゼ複合体を含む上清が、反応槽から CPRG を含む光度計キュベットに移された。CPRG から CPR への 変換速度は、577 と 700nm で二色性的に測定された。この速度はそのサンプル中のタクロリムスの濃度と比例し た。 ■サンドイッチ ACMIA を用いたタクロリムス測定 サンドイッチ ACMIA を用いたタクロリムス測定は、ディメンションシステムで EDTA 全血サンプルを使って測 定された。50-μL サンプルは初めに溶血処理試薬とインキュベートされ、それから 1E2-β-ガラクトシダーゼと 二酸化クロム磁気粒子をコートした 14H04 とインキュベートした。磁気粒子はその後洗浄され、その粒子のガラ クトシダーゼ活性が既報の検出システムを用いて測定された(28)。濃度依存曲線は、タクロリムスキャリブレ ーターを用いて作成された。 ELISA を用いたサンドイッチアッセイ ELISA プレートは、タクロリムスに続けて 14H04、もしくは 1E2 でコートされ、最終的には 1E2、もしくは 14H04 を結合したβ-ガラクトシダーゼでコートされた。その酵素反応は CPRG 基質を用いて測定され、20 分間 で 1 分間の間隔で読まれた。 LC-MS/MS を用いた全血サンプル中のタクロリムスの測定 Siemens Clinical Specimen Acquisition Group, Glasgow, DE は移植患者から全血サンプルを収集した。LC-MS/MS の結 果は、先に報告された方法によりメリーランド大学医療センターの臨床検査室で得られた(28)。 ■パフォーマンス特性研究 ANOVA 研究は、CLSI によって発行された EP15-A2(セクション 8.4)プロトコールをベースに行われた。各サ ンプルは 5 日間で 5 回繰り返して測定された。ANOVA を使ったサンプルは、WBP4(タクロリムスを添加した、 薬を使わない非移植患者からの WB プール)(Table 2)を除いて、タクロリムス薬を服用している移植患者から の WB プールであった(アステラス製薬)。 5 Journal Club 2014.4 この表参照 表 2. タクロリムスサンドイッチアッセイのパフォーマンス特性 Precision by ANOVA based on CLSI EP15-A2 Samples WBP1a WBP2a WBP3a WBP4b ng/mL (nmol/L) 2.8 (3.4) 7.7 (9.5) 11.2 (13.9) 29.1 (36.1) Repeatability, CV 5.80% 1.60% 2.10% 5.10% Intralab, CV 6.30% 2.30% 2.20% 5.10% LOB, LOD, and LOQ based on CLSI EP17-A2 Metric LOB LOD LOQ ng/mL (nmol/L) 0.4 (0.5) 0.8 (1.0) 1.3 (1.6) WB sample Sample 1 Sample 2 WB samplec No spike Spike Spike Spike recovery Recovered ng/mL (nmol/L) 4.9 (6.1) 10.3 (12.8) Physiological interferences Expected ng/mL (nmol/L) 5.0 (6.2) 10.0 (12.4) [Tacrolimus]/substanced/%interference Triglyceride (1000 mg/dL) Cholesterol (400 mg/dL) 5.0 ng/mL (6.2 nmol/L) −9.4% −6.5% 20.0 ng/mL (24.8 nmol/L) −2.2% −7.9% % Recovery 98% 103% Bilirubin (60 mg/dL) −4.5% unconjugated; −5.1% conjugated 2.3% unconjugated; −3.1% conjugated Total protein (12 g/dL) −7.6% −2.3% WBP1-WBP3、WB プールは移植患者から WPB4、WB プールはタクロリムス粉末を添加した非移植患者から c 移植患者からの 5 つの全血サンプルは、それぞれその研究に使われた。 d 示された物質濃度はスパイク濃度を示す。ビリルビンを除いてそのサンプル中での最終濃度になる。 a b LOB、LOD、LOQ 研究は、CLSI プロトコール EP17-A2 をベースに実施された。LOB においては、移植患者から の 5 つのタクロリムスフリー全血サンプルが使われた。LOD と LOQ においては、移植患者からの 5 つのタクロ リムスフリー全血サンプルに、タクロリムスが 0.8、0.9、1.0、1.1、1.3ng/mL のそれぞれの濃度で添加されたも のが使われた。 6 Journal Club 2014.4 回収率は、その薬物を非移植患者からのタクロリムスフリー全血サンプルに終濃度で 5.0 と 10.0ng/mL となるよ うに添加することで評価された。回収率は予測値に対して測定値を割ることで得られた。その回収率は添加され た測定値とコントロールプールの間の差分である。 そのアッセイ精度を保証するために生理的妨害因子の検討が行われた。トリグリセリド(高濃度トリグリセリド 画分、Lee Biosolutions)は終濃度で 1000mg/dL になるように、おおよそ 5、もしくは 20ng/mL タクロリウスを含 む WB プールに添加された。同じように、コレステロール、ビリルビン(抱合型と非抱合型)、総蛋白は終濃度 で各々、400mg/dL、60mg/dL、12g/L になるように添加された。コレステロール溶液は Lee Biosolutions から購入 した 75%ヒト LDL と 25%ヒト HDL の混合品であった。総蛋白は Sigma-Aldrich から購入した 50%ヒト IgG と 50%ヒ トアルブミンの混合品であった。抱合型と非抱合型ビリルビンは Frontier Scientific Inc から購入した。 ■薬物類似体の交差反応による抗体結合部位の予測 この報告に使用された薬物類似体は、8 つの代謝産物と 3 つの合成類似体(表 1)である。それらの交差反応は 薬物抗体結合に関連して、類似体抗体結合に反映する。類似体と親薬物間の抗体結合の違いは、その薬物による 類似体の構造的変異の機能である。これはもしもその変異が抗体結合部位で起こったならばきわめて望ましい。 1 つの結合部位が、もしもその部位での構造的変異のみで、その部位以外は薬物の基本形を保持した状態であれ ば、結合しないようになる。類似体との抗体結合と、親薬物との抗体結合の比率を評価するために、類似体交差 反応はディメンションシステムでの競合 ACMIA を用いて測定された。それは添加された類似体濃度によって測定 されたタクロリムス濃度を割ることで比率として表現される。 ■交差反応結果をベースとした 14H04 と 1E2 のエピトープ分析 14H04 のイムノゲンは、C22 を介して KLH と結合したタクロリムスで、1E2 のイムノゲンは C32 を介して KLH と結合したタクロリムスであった。2 つの結合間には 10 個の炭素原子の隔離があった。抗体結合領域は通常、 薬物 KLH 結合から離れているので、我々はこの空間的隔離が 2 つの全く、もしくは最少の重複するエピトープ となるかもしれないと予測した。我々はさらに空間的に隔離されたエピトープが、タクロリムス分子に同時に 2 つの抗体の結合する結果となるかもしれないと仮定した。 この仮説と有用な交差反応データを基盤として、我々はそれら結合部位間の重複を除外するために、抗体におけ るエピトープを決める分析を行った。抗体薬物複合体のX線共結晶構造の結果がないので、我々は 1 つの抗体の 結合部位を推測するために、タクロリムス上の反応基を変化させることで結合親和性の変化を試みた。もしもあ る変化が十分に抗体結合を低下、もしくは消失させたならば、その変化がその薬物の基本的な分子形を変形させ ないという事を示し、この反応基がその結合に関連があったことを推測することは理解されやすい。 これらの変化は、C12 上のヒドロキシル化、C13、C15、C31 上のジメチル化、C24 と C32 のサクシニル化、C22 上のオキシム基添加によって成し遂げられた。ヒドロキシル化とジメチル化産物は先に報告された肝ミクロソー ム酵素とともに、タクロリムスのインキュベーション混合物から精製されたタクロリムス代謝産物であった(23、 24)。オキシムとサクシニル化合物は、我々の研究室で化学合成することで得られた。これらの化合物の構造は 図 1A に示されている。交差反応によって示された結合変化は、ディメンション臨床的化学システムの競合 ACMIA によって測定された(Table 1)。 分子形状のゆがみを除外するために、3-D 構造が CambridgeSoft® (Version Chem 3D Pro 12.0.2 1706)による CS Chem 3D Model ソフトウエアを使用した。分子幾何学的外形は、溶媒露出の表面の使用で強調された。図 1B は 図 1A から強調された 3-D 分子構造を示している。新しい環の形成のためにタクロリムスの代謝産物から大きく 逸脱した 3-D 構造の代謝産物Ⅷ(MVⅧ)を除いて、その化合物の残基が様々なアングル(1 つのアングルは図 1B 7 Journal Club 2014.4 に示されている)から見られる基本 3-D 構造を保っているようにみられた。タクロリムスのこれらからの 3-D 形 のわずかな曲りは、ジメチル化、ヒドロキシル化、サクシニル化、オキシム複合が起こる位置で見られた。これ らの構造変化は、結果として交差反応によって定量化され、変形した抗体結合となった。 親薬物の基本形は、MVⅧと比べて薬物代謝産物と類似形で保存されているので、我々はアフィニティ結合の変化 が構造的な変化を起こしていることを想定した。これは抗体結合部位を見つけるために交差反応データを用いる ことを条件とした。MVⅧは極端な変異のためにエピトープ解析に使われなかった。二次代謝産物(2 つ、もしく はそれ以上の変化した化学基)は、その結果の複合的な解釈のをする可能性があるため、エピトープマッピング には使われなかった。予想通りに、イムノゲン類似体、14H04 における C22-オキシムタクロリムス、1E2 におけ る C32-タクロリムスコハク酸エステル塩は、それらの各々の抗体にタクロリムスよりも高い結合力を示した (表 1)。 14H04 において、タクロリムス C32 コハク酸エステル塩(表 1 と図 1A)との交差反応の欠如は、C32 上のヒドロ キシ基とあるいは隣接原子がエピトープの不可欠な要素であることを示した。同様に、C31 メチル基(交差反応 0%)と C15 メチル基(交差反応 0%)ともに、エピトープの一部としてマップされた。28%、26%、25%の交差反応 は、各々13-O-デスメチル、12-O-ヒドロキシ、C24 コハク酸エステルタクロリムス化合物との反応の欠如という わけではないが、結合の減少を示した。その減少は C13 メチル基と、C12 と C24 ヒドロキシ基と、それらに隣接 する原子がその結合部位に補助剤として機能を有しているかもしれないことを示した。 1E2 において、タクロリムス-C22-オキシム、C24 コハク酸エステル塩、もしくは 13-O-デスメチルタクロリムス における交差反応の欠如は、C22 ケト基、C24 ヒドロキシ基、13-O-メチル基がエピトープの不可欠な要素である ことを示した。31-O-デスメチル(19%)、もしくは 15-O-デスメチルタクロリムス(15%)での相対的なマイルド な交差反応の減少は、C31 と C15 メチル基が結合部位に補助剤として機能を持っているかもしれないことを示し た。 2 つの抗体の結合部位のオーバーラップの検討が、さら行われた。図 1C に示されたアングルから時計回りに図 1D の右側に示したアングルへの分子スピニングによって、1E2 の結合部位は上左側に並び、14H04 抗体の結合部 位は下右側に並んだ。図 1D に示されるように、オーバーラップは 2 つの抗体(図 1E)による同時結合の可能性 を予測することで、1E2 と 14H04 の結合部位間にみられなかった。1E2 結合補助部位と 14H04 結合部位(C15 と C31)の間のオーバーラップと、14H04 結合補助部位と 1E2 結合部位(C13 と C24)の間のオーバーラップもまた、 観察された。我々はこれらのオーバーラップに結合部位間の空間的隔離が存在するため、いまもなおサンドイッ チ形式を認めるかもしれないことを理論化した。しかしながら、それらは同時結合中のハプテンと、各々の抗体 の結合アフィニティを減少するかもしれない。 ■結果 上記の仮説は、ACMIA と ELISA 法でテストされた。両方の方式ともにタクロリムスの用量依存性を示した。 ELISA 法において、14H04 が捕捉抗体としてマイクロプレートに固定され、1E2 がタグ抗体としてβ-ガラクトシ ダーゼに結合させたとき、良い結果が得られた。正確なサンドイッチ形式を確かめるために、いくつかのコント ロールが採用された(図 2)。研究 1 と 2(図 2A)、5 と 6(図 2B)はサンドイッチアッセイシグナルが、2 つ のうち 1 つの抗体が捕捉抗体とタグとしての他の抗体として使われるときだけに得られることを示した。しかし ながら、14H04、もしくは 1E2 はそれ自身で対になった場合、研究 3 と 4(図 2A)、研究 7 と 8(図 2B)で示さ れているように、測定可能なシグナルは観察されなかった。この実験は疎水性吸着のような非特異的結合を無視 し、その同時結合シグナルが 3 つのすべての成分である 14H04、1E2 抗体ならびにタクロリムスが存在したとき にだけに生まれることを示した。3 つの成分のうちどれか 1 だけ欠けても、測定できる結合シグナルを生じなか った。 8 Journal Club 2014.4 図2 ELISA によるサンドイッチ法の確認 (A)サンドイッチは 1 分あたりミリ単位で結果を得る[タクロリムス(Tacro)有無で、捕捉として 14H04、タ グとして 1E2、もしくは 14H04 を使用] (B)タクロリムス有無で捕捉として 1E2、タグとして 14H04、もしく は 1E2 を用いた結果 Ab、抗体 サンドイッチ ELISA の分析感度は 100 ng/mL (124 nmol/L) から 0.4 ng/mL (0.5 nmol/L)のタクロリムスの滴定試験 によって調べられた。捕捉として 14H04、タグとして 1E2 を使用することで、0.9 ng/mL (1.1 nmol/L)のタクロリ ムスが、PBS にエタノール溶解タクロリムス含有保存溶液を加えたサンプルにて検出された。 サンドイッチ法の予測は、ACMIA 法によってさらに立証された。二酸化クロム粒子でコートされた 14H04 と 1E2β-ガラクトシダーゼ複合物を使用することで、タクロリムスの用量依存曲線が得られた(図 3A)。この方法は 期待される回収率と、移植患者の全血中のタクロリムス薬物の測定の予期された不正確さを明らかにした。 ACMIA サンドイッチアッセイによるタクロリムス測定との比較は、タクロリムスを服用している患者の全血サン プルを使用した LC-MS/MS 法とのスプリット患者相関関係研究で評価された(図 3B)。LC-MS/MS での腎臓と肝臓 移植患者からの 55 検体の全血サンプルは、ACMIA サンドイッチアッセイで測定された。その結果、サンドイッ チアッセイは LC-MS/MS と同じタクロリムス薬物濃度である、0-30ng/mL(0-37nmol/L)のアッセイ範囲の全血マ トリックスで評価した。0-7、0-20、20-30ng/mL(0-9、0-25、25-37nmol/L)の範囲において、LC-MS/MS に対し てのサンドイッチアッセイのバイアスは、各々、-0.19、0.15、-0.54ng/mL(-0.24、0.19、-0.67nmol/L)であ った(図 3、C、E)。 9 Journal Club 2014.4 図3 ACMIA サンドイッチアッセイと HPLC-MS/MS の比較 (A)用量反応性曲線 (B)そのアッセイと HPLC-MS/MS の方法比較 (C-E)0-7、0-20、20-30ng/mL でのバイ アスと、HPLC-MS/MS のブランドアルトマンプロット サンドイッチアッセイのパフォーマンス特性は、さらに ANOVA、LOB、LOD、LOQ、回収率、干渉研究で評価され た(表 2)。そのアッセイは 2.8-29.1ng/mL(3.4-36.1nmol/L、n=25)の範囲で<6.3%の検査ラボ内 CV を示した。 LOB、LOD、LOQ(35%の許容される総分析誤差を用いて)は各々、0.4、0.8、1.3(0.5、1.0、1.6nmol/L)を示し た。回収率は±5%の予測値で、<10%の干渉は高トリグリセリド(1000mg/dL)、コレステロール(400mg/dL)、 ビリルビン(60mg/dL)、総蛋白(12g/L)でみられた。サンドイッチ法が高い特性に達することができることを 実証するために、サンドイッチ法で測定された代謝産物と類似体の交差反応比率が、競合アッセイで測定された ものと比較された(表 1)。予想通り、サンドイッチアッセイは両抗体によるタクロリムスとの結合が必要なた めに、一般的にはより低い交差反応を示した。定量的に、サンドイッチアッセイによって測定された合成類似体、 もしくは代謝産物との交差反応比率は予測することができた。なぜならば、産物の交差反応比率が 1E2 と 14H04 に対して等しくなるべきであるからである。これはサンドイッチが、各々の交差反応の比率で捕捉抗体とすでに 結合したハプテン分子と、結合するタグ抗体によって形成されるためであった。すべての代謝産物と類似体は代 謝産物 MⅢを除いて、その予測物と同じであるか、もしくはとても似ている交差反応比率を示した。更なる研究 が、予測される MⅢの交差反応比率よりも高いものであることを明らかとするために必要とされた。予測と実測 の交差反応比率の一貫性は、サンドイッチが 1E2-ハプテン-14H04 複合体であることで示され、ELISA の結果に 従った真のサンドイッチ法によるその他の証明は図 2 に示されている。 ■考察 研究者により 2 つのハプテン特異的レセプターによって、同時に結合することができるハプテンの分子量と分子 形の限界が探求されている(1、15、16、29)。今まででベストな我々の知見において、タクロリムスはそのよ うな結合を持つ一番の自然ハプテンである。タクロリムスと構造的な類似物のシロリムスによって、我々はシロ 10 Journal Club 2014.4 リムスのこれらのタイプの抗体が同じように開発されるかもしれないと考えている。我々の結果は、治療薬のよ うなハプテンマーカーの真のサンドイッチアッセイが、適切な技術を使用することで開発されることを明らかと した。分析的感度に加え、これらのアッセイは、このレポートで述べられた薬物代謝産物と合成類似体を用いた より低い交差反応など、もう一方の競合アッセイよりも高い特異性を実現することができる。 さらに、いくつかのその他の観察結果が興味深いかもしれない。第一に、エピトープ分析の基本において、 14H04(C15)と 1E2(C13)の 2 つの結合部位間でみられた最短距離は、より近いとは言わないまでも(C14 での アングルが無視された)、3 炭素原子、もしくはおおよそ 3Åである。この距離は線状合成分子における真のサ ンドイッチ法を可能にした 2 つの小さいハプテン間(ヒスタミンとホモバニリン酸)の最も短い結合のように、 先に観察された 5 炭素原子、もしくは 5Åよりも短い(16)。X 線共結晶学のようなより高度な技術を用いる更 なる研究は、構造的に原子レベルに結合するサンドイッチを明らかにするかもしれない。第二に、1 つのハプテ ンに対して、非オーバーラッピング結合部位に対する抗体が、小さな分子のフラグメントを使用するのと対照的 に、キャリアタンパク質への異なった結合部位で結合した正常ハプテンの使用によって開発されることをこの研 究は証明した(15、16)。第三に、タクロリムスは 2 つの抗体によってマクロライド環を介して結合され、小さ な直鎖状分子におけるサンドイッチ法で先に報告されたように、1 分子の 2 つの反対側に結合することとは異な る(15、16)。その薬物の抗体エピトープ領域、および/または 3-D 形の調整における立体構造変化は、サンド イッチ法での両抗体を調整するために誘導されるかもしれない。誘導された立体構造変化は、サンドイッチ法で MⅢ(15-デスメチルタクロリムス)における測定されたパーセント交差反応がなぜ、予測パターンを追えなかっ たかを説明するかもしれない。 タクロリムス、環状構造を持った疎水性ハプテンが、そのオッズに対する抗タクロリムス抗体によってサンドイ ッチされるという事実は、そのような分子間相互作用がヒトの介入なしで自然に起こるかもしれないことを示し ている。シロリムス-FKBP12-mTOR(ラパマイシンの哺乳類標的)のケースと同様に、ハプテン-タンパク質複合 体が in vivo で他のタンパク質と結合できることを報告されたが、それは個々にハプテンリガンドと結合する 2 つのタンパク質レセプターが、生体系において同時に結合することができることを示していない。そのような結 合の存在と機能を探求することは興味深いであろう。 (訳者 小治健太郎) Acknowledgments We thank C. Schaible and J. Fallon for suggestions and reviewing the manuscript, S. Janas and C. Clark for assistance in experiments, and F. Celano for providing method parameters for the fully automated Dimension RxL Max Integrated Chemistry System. Footnotes 2 Nonstandard abbreviations: KLH, keyhole limpet hemocyanin; ACMIA, affinity column mediated immunoassay; WB, whole blood; CPRG, chlorophenol red-β-d-galactopyranoside; CPR, 11 Journal Club 2014.4 chlorophenol red; LC-MS/MS, liquid chromatography–tandem mass spectrometry; LOB, limit of blank; LOD, limit of detection; LOQ, limit of quantification; MVIII, metabolite VIII. (see editorial on page 575) Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for intellectual content; and (c) final approval of the published article. Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest: Employment or Leadership: None declared. Consultant or Advisory Role: None declared. Stock Ownership: None declared. Honoraria: None declared. Research Funding: Siemens HDX R&D funding. Expert Testimony: None declared. Patents: T.Q. Wei, United States patent US 8,586,322; 2013 Nov 19. Role of Sponsor: The funding organizations played no role in the design of study, choice of enrolled patients, review and interpretation of data, or preparation or approval of manuscript. Received for publication August 14, 2013. Accepted for publication December 18, 2013. © 2014 The American Association for Clinical Chemistry References 1. Abuelzein EFan M, He J. Recent progress in noncompetitive hapten immunoassays: a review. In: Abuelzein E, ed. 12 Journal Club 2014.4 Trends in immunolabelled and related techniques. 1st ed. Rijehka: InTech; 2012. p 53–66. 2. Jackson M, Ekins P. Theoretical limitations on immunoassay sensitivity. Current practice and potential advantages of fluorescent Eu3+ chelates as non-radioisotopic tracers. J Immunol Methods 1986;87:13–20. 3. Jeffery PD, Schildbach JF, Chang CY, Kussie PH, Margolies MN, Sheriff S. Structure and specificity of the antidigoxin antibody 40–50. J Mol Biol 1995;248:344–60. 4. Tanaka F, Kinoshita K, Tanimura R, Fujii I. 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