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平成23年度 高等学校授業力向上研修 実践記録
「生徒が
生徒が主役」
主役」の授業を
授業を!
ペアワークを
ペアワークを基軸に
基軸に生徒が
生徒が活動する
活動する授業
する授業をめざして
授業をめざして
~英語Ⅰ
英語Ⅰの指導を
指導を通して~
して~
県立村上高等学校教諭
冨岡 郁子
Ⅰ 指導構想
本単元における「研究テーマ」に迫るための視点
1)
課題解決のための指導方針、授業構想等
英語の授業を通じて、自分の考えを発表する機会・他者と関わる機会を多く持たせたいと
以前から思ってはいたものの、その前提となる内容理解や基礎事項の確認に時間をとられ、
思うように実践できていなかった。そこで今回の研修では、日頃の授業で感じていた以下の
3点を課題として取り上げた。
① 全員に発問し、全員が考える授業
教師の一方的な講義だけでは、眠くなる生徒や注意を払わない生徒が出てくることがある。
また、ひとりの生徒を指名して返答を待つ授業だと、それ以外の生徒たちはただ答えを待
ち、時には時間だけが過ぎてしまう。英語は「使う」もの、つまり「実技」である以上、
全ての生徒が主体的に授業に参加し、考え、英語を使ってみる機会を多く設定すべきだと
考えた。「聞くだけ(耳)
・見るだけ(目)」ではなく、「手も口も動かす」授業で定着をは
かりたい。
② 意見の発表・他者との共有
多感な10代の高校生が約40名集まる授業。教科書を読んで訳して終わり、ではなく、
そこから生徒たちが何を感じ、どんな意見を持っているのかを、全体で共有したい。また、
読んだことに対してしっかりと自分の意見を持ち、他生徒の意見にも耳を傾ける共感の気
持ちを育みたい。
③ 英語による指導
英語でのアウトプットを目標とするからには、英語でのインプットが欠かせない。それを
教科書だけに頼るのではなく、日常の授業でも英語に触れる機会を増やすため、教師自身
が英語を使う。教師が一方的に英語を話すのではなく、生徒の英語使用を促すような発話
を心がけたい。
2)
新学習指導要領との関連
① 外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深めること。
② 外国語を通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成すること。
③ 外国語を通じて、情報や考えを的確に理解したり適切に伝えたりする能力を養うこと。
(第1部「外国語編」第1章「総説」第2節「外国語科の目標」
)
新しい学習指導要領のもとでは、英語を理解することだけではなく、
「英語を習得し、伝える
ために使うこと」が今まで以上に重要になっていくと考える。この研究では、教科書の英文
を理解すること(上記①)にとどまらず、理解したことを様々な活動により確実に習得させ
ることを試みている。たとえば英文を読んで概要をとらえたり情報を整理する作業、読んだ
内容が聞き手に伝わるような音読練習、などである(③)。さらに、理解したことを元に自分
の意見をまとめ意見交換する活動などを通じて、「伝えたい」「分かりたい」という気持ちの育
成を試みている(②)。
3)
実際の授業の展開(具体的な工夫とその目的)
上記の課題に取り組むため、以下の3点を工夫した。
① ペアワークの活用
生徒全員が授業に積極的に参加できるよう、授業ではほぼ全ての活動においてペアワーク
を活用している。本文に関する質問も、教師はまず全員に向けて発問し、ペアで話し合う時
間を与え、その後に数名の生徒に意見を発表させる。新出単語や和訳の確認、音読活動、表
現活動などもペアワークを中心に据えて行った。
② 音読指導
内容を理解した英文を繰り返し音読することで、英語表現の習得・定着をはかる。音読用の
プリントを工夫し、段階的に負荷をかけて音読させる。この音読活動で身につけた英語表現
はその後の自己表現の素地となるので、徹底して指導する。また学期に一度、個別の音読テ
ストを実施している。普段の音読練習は、それに向けた練習も兼ねている。
③ 授業の最後に表現活動を設定
自己表現と発表活動を行うために、生徒が「伝えたい」と思うような場面の設定を心がけた。
また、表現内容が単一にならず様々な意見が出てくるよう、設定を工夫した。今回の単元で
は、前の時間に「アラスカから手紙を受け取った筆者の気持ちを英語で書く」というテーマ
で表現活動を行った(資料1)
。短い英文ではあるが、筆者の気持ちになりきって書かれた英
文はどれも高校1年生ならではの表現であり、生徒たちも食い入るように他生徒の作品を読
んでいたのが印象的であった。
それを受けてこの研究授業では、
「アラスカに到着した筆者と、
出迎えた村長は、
どんな言葉を交わしただろう」
というテーマで表現活動を行う予定とした。
教科書の英文を読むだけでなく、それについて生徒たちが考えを深め、表現することで、
生徒がどんなことに心を動かしているのか、またどのような表現が使える(使えない)のか、
がわかり教師としても大変参考になる。また、
自己表現したものをペアやグループで発表し、
さらに全員分を印刷して配付することで、他生徒の意見に触れることができ、お互いに刺激
を受けている。
Ⅱ 学習指導案
1 科目名
単元名
英語Ⅰ
英語Ⅰ
POLESTAR English Course I (数研出版)
Lesson 6 The Trip That Changed My Life
2 対象クラス
対象クラス
1年2組 (男子21名 女18名 合計39名)
3 指導目標
(1)
(関心・意欲・態度)
アラスカの自然や人々、あるいは星野道夫氏の著作について関心を持つ。
内容に関する質問に積極的に答えようとする。
(2)
(表現の能力)
学んだ文法事項を使って、正しい英文を書くことができる。
学習した内容に関して、英語で要約を書いたり英文で再現できる。
(3) (理解の能力)
星野さんがアラスカに興味を持ったきっかけや、アラスカの生活で得たものを理解できる。
各パートの脚注の質問に対し、本文の流れを的確に把握して答えることができる。
(4)
(言語や文化についての知識・理解)
文法・語彙・重要表現を理解している。
どれがパラグラフの主題文であるかを理解している。
アラスカ・シシュマレフ村について知識がある。
4 指導と
指導と評価の
評価の計画(
計画(全10時間
10時間)
時間)
時
1
2
3
4
5
学習内容
Part 1
Part 2
Part 2
Part 3
Part 3
(本時)
6
Part 4
学
習
活
動
評
価
と
方
法
・本文に関するQ&A
理解①③
:ハンドアウト
・本文解説
理解②
知識①②:ハンドアウト
・音読練習
関心①
表現①
・自己表現活動・ペアで意見交換
表現②③
・単語・表現の学習
関心①
:観察
・本文に関するQ&A
知識①
:観察
・文法項目解説、演習
表現③
知識①:ハンドアウト
・単語小テスト
知識①:テスト
・本文解説
理解②
知識①②:ハンドアウト
・音読練習
関心①
表現①:観察
・自己表現活動・意見交換
表現②③
・単語・表現の学習
関心①:観察
・本文に関するQ&A
知識①:観察
・文法項目(分詞構文)解説、演習
表現③
・単語小テスト
知識①:テスト
・本文解説
理解②
知識①②:ハンドアウト
・音読練習
関心①
表現①
・自己表現活動・意見交換
表現②③
・単語・表現の学習
知識①:観察
・本文に関するQ&A
理解①③:ハンドアウト
:観察
関心①:ペアワーク、提出
関心①:ペアワーク、観察
知識①:ハンドアウト
:観察
関心①:ペアワーク、観察
7
・重要表現の解説、演習
表現③
・単語小テスト
知識①:テスト
・本文解説
理解②
知識①②:ハンドアウト
・音読練習
関心①
表現①
・単語・表現の学習
知識①
:観察
・本文に関するQ&A
知識①
:観察
・重要表現の解説、演習
表現③
:ハンドアウト
・本文解説
理解②
知識①②:ハンドアウト
・音読練習
関心①
表現①
Part 1~Part 5
・本文の要約
表現①②
知識③:ハンドアウト
「私だったら…」
・自分の考えを書き、意見交換
関心①②
:観察・ハンドアウト
Comprehension
・本文に関する問題
表現③
Exercises
・文法・重要表現に関する章末問題
知識①
Part 4
8
Part 5
9
Part 5
10
:ハンドアウト
:観察
:観察
理解①③
5 本課の
本課の評価規準
I
①
関心・意欲・態度
ペアワークにおいて、
Ⅱ
①
表現の能力
本文の要約を書くこと
Ⅲ
①
理解の能力
教科書で読んだ情報を
Ⅳ
①
知識・理解
語彙・重要表現・文法
言語活動に積極的に取り組
ができる。ヒントを手がか
用いて、本文に関する質問
事項の用法を知っている。
む。
りに、本文の内容を再現す
に答えることができる。
②
ることができる。
②
れが主題文かわかる。
、星野氏の活動について関
②
本文を読んで、自分の
味を持ったきっかけやアラ
③
心を持ち、意見を交換しよ
考えを表現することができ
スカで得たものを理解でき
子について知識がある。
うとする。
る。
る。
②
アラスカの自然や生活
③
学習した文法事項を用
③
星野氏がアラスカに興
パラグラフの中で、ど
アラスカの生活の様
本文やそれに関する質
いて、正しい英文を書くこ
問を聞き、理解することが
とができる。
できる。
6 本時の
本時の計画(
計画(5/10時
10時間)
(1) ねらい
・写真家の星野道夫氏が初めてシシュマレフ村に到着した時の様子を想像することができる。
(星野氏の胸の高まり、村長さんのホスピタリティー、村人たちの好奇心、等々)
・アラスカの人々と日本人の外見が似ていることを理解する。
・分詞構文を含む英文を理解する。
・星野氏の気持ちを理解して音読することができる。
(2) 本時における「研究テーマ」に迫るための指導の構想
内容・表現ともに平易な英文であるため、生徒にとっては読みやすい内容である。このパートでは、
星野氏が10代(=生徒とほぼ同年代)で初めてアラスカへ渡った時の様子が描写されている。星野
氏の気持ち、村長の人柄、村人たちの反応、星野氏が気づいたこと、などをペアワークを通じて読み
解いていきたい。
その答えは一つである必要はなく、
多様な意見が出てくるよう仕掛けを工夫したい。
単元の最後に表現活動(書く・意見交換)を設定することで、普段の授業内での活動(読むこと・
聞くこと・考えること・意見交換)に意義を持たせ、各授業間につながりを持たせたい。
(3) 展開
学習活動
活動の目的
指導者
学習者
(時間)
5分
単語テスト
指導上の留意点・評
価の観点
新出単語の定着確認
パート 3 の新出単語の
英語の定義を聞
ゆっくりはっきりと
定義を、英語で言う。
き、それに当ては
定義を2回言う。
まる単語を書く。
ペアで答え合わせ。
最後に全員で発音確認
全員で発音。
20
Part 3
パート3の内容を聞く
聞いた後に質問一つす
パート3の内容を予
分
Listen to
区切り(チャンク)を
ることを予告。
想しながら、聞く。
the CD
意識する
「星野さんはどうやっ
ペアで意見交換。
(知識②③)
(理解①③)
て村へ行った?なぜ?」
チャンク
全体で確認する前に、 明確な指示
予習内容の確認
ペアで協力して確認
訳確認
ペアで疑問解消。
ペア活動を援助
分からなかったと
しているか。
(関心
全体確認の準備
ころの確認
①、理解①)
-As S+V
教師の発問や指示
予習した内容を全員
訳確認
-from all around
に従って、ペアで
で読み進めることで
(全体)
-came running up
やりとりをしなが
深める。
-Opening the door of
ら内容理解を進め
(ペア)
チャンク
内容確認
the plane, I smelled
ていく。
the sea.(分詞構文)
-Before S+V,
積極的に意見を交
-by my side
換する。
-with a great smile on
his face.(付帯状況)
-shook hands
-I managed to thank
-thank A for B
-lit up
-the Eskimos
-my own
-they would be
-all the same
15
音読活動
発音・抑揚・区切りの
モデル音読
分
①(全体)
確認
星野さんの気持ち
音読活動
声出しと口慣らし
②(ペア)
音読活動③
音読と重要表現確認
(ペア)
リピート
(表現②)
活動の指示
チャンクごとにリ
(関心①、表現②)
勝 英→○
負英
○
ピート。1 行ずつ。
活動の指示
日本語箇所を英語
机間指導。
重要箇所が日本語にな
にしながら、英文
(関心①、表現②)
ったハンドアウトを用
を読む。
いて、英文音読。時間制
時間を計る。
限あり。
ペアで、一人が読み、も
う一人はチェック役。
発問
・村人たちが、星野さん
ペアで相談、発表
の到着を心待ちにして
(関心①、理解③、
知識②③)
いたことが分かる文は
どれ?
表現活動
14
分
発問A
全体に問いかけ
ペアで意見交換(3
ハンドアウト
「ホストに会った星野
発表、板書
分)、発表。
発問Aは、口頭で意
氏、どんな言葉で感謝
A:星野氏の立場
見交換、発表。
の気持ちを述べた?」
になって感謝の気
持ちを表現する。
・村長になりきって返事
発問Bは、ペアで相
「そのとき、ホストは
を考える。ペアで活動。 B:遠路はるばる
談し、書く。→全体
どんな言葉をかけた
生徒A、記録。生徒B、 やってきた日本の
で発表。
だろう?」
発表。
青年に向かって、
・5 分で合図、終了
村長はどんな言葉
机間指導
・いくつかのペアに発表
をかけたのか。想
ペア活動援助
してもらう。
像して書いてみ
(理解③、知識③)
発問B
(5 分)
る。
1分
まとめ
写真鑑賞
・星野氏の写真集より、 星野氏の写真を鑑
アラスカの人々や自然・
(関心②、理解③)
賞
動物の写真を紹介。
(4) 本時の評価規準
I
①
②
関心・意欲・態度
仲間と協力して学習を
Ⅱ
①
表現の能力
本文に関する質問に対
Ⅲ
①
理解の能力
Ⅳ
知識・理解
語彙・文法知識を元に、 ①
分詞構文の仕組みと
進めている。
して、適切な表現を用
本文の内容を自分で正
使い方を理解してい
当時の様子を想像して
いて答えることができ
しく聞き取る・読み取
る。
意見を交換している。
る。
ることができる。
②
星野氏の気持ちを音読
②
分詞構文を理解でき
②
アラスカの小さな村
の様子を想像し、意見
で適切に表現できる。
③
る。
交換することができ
筆者が初めてアラスカ
る。
を訪れた時の様子を理
解できる。
③
登場人物の心情につ
いて自分の意見を持
ち、他生徒の意見も受
容することができる。
Ⅲ 授業の
授業の実際
研究授業では、生徒はいつも通り大きな声を出して活発にペア活動していた。参観した先生方か
らも「ペアで活発に音読している姿が印象的だった。」との感想をいただいた。
最初の単語テストでは、前時に学習した単語の定義を教師が英語で読み上げ、生徒はそれを聞き
取って当てはまる英単語を書く、という形で行った。単語の意味と綴りをきちんと覚えるだけでなく、
説明を英語で聞いてどの語か判断するという難しい活動であったが、繰り返しやってきたせいか生徒
はスムーズに活動していた。最後に全員で発音確認をし、単語テストを終えた。しかし予定時間をオ
ーバーしてしまった。
本文の内容確認では、訳すだけではなく「考え、想像する」ことを体感させる目的で、文面には
表れていない内容に関する質問を投げかけた。生徒はペアで相談しながらお互いの意見を出し、主体
的に考えていたようである。和訳の確認も「ペアで→全体で」と段階を踏むことにより、不安な生徒
も自信を持って発言できるよう工夫した。参観者からは「和訳するだけでなく内容を考えさせようと
した点はよい」
「内容に関する質問も、英語で投げかけて生徒から英語による答えを引き出してはどう
か」との意見をいただいた。
音読活動では、全体で教師の後についてリピート(英語・英語)→ペア音読(英語・英語)→重
要箇所が空欄になっている音読シートを用いてペア音読、と合計3回行った。4月当初から様々な形
で音読練習を行っているため、生徒は活発に音読していた。参観していた先生方からは「タイマーを
使っての音読練習は目標が明確でよい。」
「発音が正しくない語や、読み方が分からない箇所があった
ようだが、生徒はそのまま音読を続けていた。どのようにチェックするのか。」などの指摘があった。
ペア活動に任せることによって教師の目が行き届かなくならないよう、今後は①全体でより徹底して
指導する、②ペア音読のあとでいくつかのペアに発表させて正しく読めているか確認する、③音読テ
ストをより頻繁に実施して個別に確認する、などの形で今まで以上に丁寧に指導したい。
理解した内容を繰り返し音読したあとで表現活動(登場人物のセリフを考えて書く)を行う予定
であったが、時間がなくなってしまったため翌日の授業で行った。参観した先生方からは「一番の見
せ場がなかった」
「多くの活動を盛り込みすぎ。内容を精選して、表現活動の時間を捻出すべき」との
指摘をいただいた。
全体として、一時間にたくさんのことをやろうとしすぎたため時間切れになってしまった点が大
きな反省点である。ひとつのパートを指導する際に、「一時間目に単語・表現と内容、二時間目に単語
テスト・音読・表現活動」と時間の割り振りを工夫すべきであった。指導内容を精選して計画を立てる
ことの大切さと難しさを実感した研究授業であった。またビデオで自分の授業を振り返ると、英語で
指示や説明はしているものの、それにより生徒が英語で活動することに効果を与えているのか疑問が
残る場面があった。授業での英語によるインプットは、生徒の理解と英語によるアウトプットに役立
つよう配慮されるべきであり、教師の自己満足に終わってはいけない。
「自分(教師)が何をやりたい
か」だけではなく、「生徒にどんな力をつけたいか」を主眼に指導を組み立てていきたいと改めて思っ
た。
研究授業翌日の授業で行った自己表現活動の生徒作品例(資料 2)
Ⅳ 実践の
実践の考察とまとめ
考察とまとめ
この研修では、前述の通り以下の3点を課題解決のための指導方針とした。
① 全員に発問し、全員が考える授業
② 英語による指導
③ 意見の発表・他者との共有
授業において以下の3点を工夫した。
① ペアワークの活用
② 音読指導
③
授業の最後に表現活動を設定
以上のことに関して研究授業後、生徒にアンケートを実施した。
① ペアワークについて
ペアワークについて
1) ペアワークは英語学習に役立っていると思うか。
(はい64%
いいえ36%)
2) ペアワークがあることで、英語の学習意欲は高まっているか。(はい82%
いいえ18%)
3) 自由意見
・ペアだと自分が分からないと相手に迷惑をかけるので、ちゃんと予習するようになった。
・質問の答えをペアで確認する時間があると、自信のない答えでも安心して確かめられる。
・ペアだと、授業中にやることが多くて寝てられない。
・気の合うペアならいいが、そうでないと気まずい。
・ペアと力の差がありすぎて、つまらない時がある。
・ペアワークだからと言って学力が伸びたとは思わないが、やらなきゃ、とは思うようになった。
中にはペアワークが好きではない生徒もいるが、
「相手に迷惑をかけられない」という意識が働く
結果、学習意欲が高まっている生徒が多いようである。内容に関する質問をする際も、全体に投げか
けると沈黙が続くが、ペアで相談させるとほぼ全員が活発に意見を出し合う。
「ペア→全体」と段階を
ふむことにより生徒の心理的負担を減少させることと、活発な活動を増やすことをねらっていたが、
アンケートの結果からもその効果が読み取れる。ペアの組み合わせは今のところ座席に基づいたペア
だが、今後は生徒の学力差や交友関係も考慮したペアも取り入れていきたい。
② 音読について
音読について
1) 音読練習は英語学習に役立っているか。
(はい77%
いいえ23%)
2) 家庭学習で音読練習をしているか。
(はい46%
いいえ54%)
3) 自由意見
・最初は意味がないと思っていた。でも何回も音読すると、知らないうちに覚えているところが増
えていた。
・CDをまねして一緒に読む練習をしたら、すらすら読めるようになった。
・ペアでやる英語→日本語の音読練習を繰り返したら、自然に内容が頭に入っていた。いつもこれ
をやっていたら定期考査でもいけるんじゃないかと思う。
・普段は予習で余裕がないから音読はしていない。音読テストの前だけ必死で音読練習をする。
・やるといいんだろうな、とは思うけどやってない。
授業で音読練習の仕方を様々指導してきたが、音読をくりかえすことにより英文を暗記し、定期
考査でその効果を実感した生徒もいたようである。練習を重ね、自然に英語が口をついて出るくらい
まで高めることで、考査だけでなく自己表現活動にもつなげることができると考えている。ただし音
読の必要性を感じていない生徒もいるせいか、普段から家庭学習で音読している生徒は少なかった。
音読の必要性を生徒にきちんと伝え、家庭学習でもCDを聞く、音読するなどの音声を介した学習を
さらに促したい。
③ 自己表現活動(
自己表現活動(筆記)
筆記)について
1) 自己表現活動は英語学習に役立っているか。
(はい85%
2) 表現活動があることで、英語の学習意欲は高まっているか。(はい72%
いいえ15%)
いいえ28%)
3) 自由意見
・書くのは大変だけど、人が書いたのを読むのはおもしろい。
・教科書の英文と違って、クラスの人が書いた英文のほうが自分と似た状況で身近に感じる。
・英文を和訳するだけではなくて、自分で考えたことを英語で書けるとうれしい。
・ペアやグループで発表すると、同じテーマでもいろんな意見があることが分かる。
・力がないから英文なんて書けないと思っていたけど、他の人が書いたのを読んだらこないだ習っ
た熟語を使って書いていた。意外とシンプルな表現でも使えるんだなと思った。
・正しい英語を書けないから書くのは嫌いだったが、間違いを指摘されないから気が楽。
・とにかく英文が組み立てられない。読むのはいいが、書くのは苦痛。
・「自分の意見を」と言われても、考えたこともないことに対してそう簡単に意見なんて書けない。
これまで取り組んだ自己表現活動(筆記)の例:
・好きな食べ物を紹介しよう
・訪ねてみたい場所
・登場人物のその時の気持ちを英語で書こう(資料1)
・登場人物のせりふを考えて書こう
(資料2)
・悩みを抱えた人にアドバイスを書こう
(資料3)
アンケートでは、こちらの想像を超える多くの生徒が自己表現活動に好意的な意見を寄せていた。
ある程度まとまりのある英文を書くことに慣れていない生徒も多かったが、この活動においては「正
確さよりも内容」を重視して指導してきた。同時に、
「楽しんで書き、また読んで楽しむ」ことを伝え
てきた。
自己表現活動の意義は以下のようなことだと考える。
・教師と生徒および生徒同士のコミュニケーションがとれる
・生徒の自己理解および他者理解により「学びあう雰囲気」作りができる
・学習した英語を実際に使う場面を設定する
生徒自身が書いたものを読むことにより、生徒の思いや個性を理解することができる。時には「あ
の生徒がこんなことを考えているのか。」と意外な発見があることもある。また自分の意見を言葉にし
て表現することで、改めて自己を客観的にみつめる機会になる。お互いに意見を交換することはクラ
スメイトを理解することにもつながる。結果として、自分と異なる考え方が存在することを知り、自
分の意見同様に他者の意見も尊重することの大切さを知る。アンケートの結果からも、生徒がクラス
メイトの意見を読むことを楽しんでいることがうかがえる。さらに教科書で学んだ表現を実際に使う
ことで、
「こんなことを伝えてみたい」という思い、表現できた時の達成感やうまく伝わらなかった時
の悔しさなど、本当のコミュニケーションを体験することができる。英語授業という限られた環境の
中ではあるが、学んだことを実際に使ってみる場面の設定を今後も心がけたい。
研修全体を通じて、これまでの自分の指導を振り返るとともに多くの先生方と授業について語り
合うことができた。それまで習慣的に行っていた指導なども、「何のためにやっているのか」「この活
動でどんな力がつくのか」
「力がついたことをどう確かめるのか」と立ち止まって考え、時には他の先
生に相談することで前に進むことができた。この研修で得た経験と課題をもとに、今後も生徒の力に
なる授業を目指して努力していきたい。
Ⅴ 参考文献
・門田修平、野呂忠司、氏木道人(2010)
『英語リーディング指導ハンドブック』大修館書店
・田尻悟郎(2009)『(英語)授業改革論』教育出版
・田中武夫、田中知聡(2003)
『自己表現活動を取り入れた英語授業』大修館書店
・土屋澄男(2004)『英語コミュニケーションの基礎を作る音読指導』研究社
・三浦孝、中嶋洋一、池岡慎(2006)
『ヒューマンな英語授業がしたい!』研究社
資料 1
(1-2、1-4)
LESSON 6 <Part 2>
◆ “Suddenly Alaska was in the palm of my hand.” (p.69,l.18)
When Mr. Hoshino received a letter from Mayor of Shishmaref,
what did he think?
星野さんの気持ちになって、彼が感じたであろう事を英語で書いてみよう。
●I want to take pictures! ● I’m very happy. I want to hunt!!
●I’m so happy because I received a letter. ●I want to go there soon.
● I persuaded him! I want to go to Alaska. ●I want to develop technology!
● Oh my god! I can go to Shishmaref! I can stand there and see that view.
● I’m glad to go to Shishmaref.
I can’t wait until June. ●My dream has come true.
● I want to go soon. I am happy to find Shishmaref on a map for the first time.
●Shishmaref is very cold but has a good view.
I want to take pictures.
● Alaska is near. I’m lucky. ● I can visit Shishmaref.
I am great! And I am wonderful!
● Unbelievable!!!! I’m very happy!! ●I’m the happiest man in the world now!!
● Thank you, Shishmaref! ●I want to research village life.
●I’m so happy!
I’m looking forward to going to Alaska.
●Oh, beautiful!! It’s cold.
But I can’t hunt…
Alaska is mine!!! Alaska food is mine!!!!
I want to know
more about Alaska.
●I want you, Shishmaref!
Shishmaref?
I need you, Shishmaref!
No,no,no. I LOVE Shishmaref!
I love you, Shishmaref!...I like
資料 2
LESSON 6 <Part 3>
(1-2、1-4)
When Mr. Hoshino met his host for the first time, what did they say…
say…?
① Thank you for answering my letter.
② Nice to meet you.
③ I think you are wearing nice lenses. I like bear. Because it’s yummy.
④ Thank you for waiting.
⑤ Thank you for letting me visit your house. Nice to meet you.
⑥ Thank you for existing.
①
Welcome to Shishmaref! Are you hungry? Let’s eat whale!
②
〃
You will enjoy Shishmaref life./Please enjoy our
③
〃
I’m glad to see you. You are tired, aren’t you?
④
〃
I was waiting for you for a long time. Let’s go
〃
Shishmaref is very exciting.
village.
hunting!
⑤
⑥
Welcome to my village. Thank you for coming. I was looking forward
to you coming.
⑦
Thank you for coming. We are glad to see you.
⑧
Michio? Please, come in!
⑨
We have waited for you.
⑩
You must be very tired. So you should rest and enjoy my village.
⑪
Nice to meet you, too. You are strong!!!
⑫
I have a lot of money! I’m rich! I’ll give you a lot of money!!
⑬
I’m surprised because you are so young!
⑭
Sorry for the delay. I’m so glad to see you.
⑮
Have a good night’s sleep.
⑯
Thank you for coming to our village. Nice to meet you, our new family!
Have a nice day!!
⑰
Are you cold? Don’t catch cold. I like Japanese! I like Sushi!
資料 3
Function 3
課題「
課題「人にアドバイスする
アドバイスする」
する」 生徒作品例
(1 - 2 、 1 - 4 )
…3つの相談を英文で提示し、生徒はその中からひとつ選んで返事(アドバイス)を書く。
◆ケース1
ケース1 「部活と
部活と勉強の
勉強の両立、
両立、そして父
そして父からのプレッシャー
からのプレッシャーに
プレッシャーに悩む17歳男子
17歳男子」
歳男子」
① I’ll give you two pieces of advice. First, do you want to be a professional player? If you don’t,
you should just give up handball. Second, you had better study early. It is often said that
“time flies like an arrow.(光陰矢のごとし)”
② I’ll give you four pieces of advice. First, I suggest you should use the time while going to
school. Second, it’s a good idea to study with friends at school. Because you can teach study
each other with friends. Third, I suggest you should get up early to study. Last, it’s a good
idea to stop playing handball if you want to go to university at all cost(なんとしても).
③ I’ll give you three pieces of advice. First, you should tell your father about your love for
handball. Second, if you have any free time, you should put it on study. Third, it is a good
idea to stick printed sheets of English words to the desk(英単語プリントを貼る).
④ I will give you some advice. First, you should stop playing handball. It is difficult for you to
do both playing handball and studying. Then, you should study hard every day till you can
get good scores in the test. While you are studying, you must forget handball. If you don’t
study, you can’t go to university.
⑤ I will give you three pieces of advice. First, I suggest you should decide study time. Second,
it’s a good idea to consult (相談する)with a member of the club. I think that good advice is
given by someone in the same conditions(同じ状況). Last, you don’t have to stop playing
handball. It is needed for change of air(気分転換) to study.
◆ケース2
ケース2 「私が好きなのはリュウタ
きなのはリュウタ。
リュウタ。でもケンタ
でもケンタからの
ケンタからの告白
からの告白…
告白…!」
① I am envious(うらやましい) of you. I will give you three advice. First, you should talk with
them. Because you can know them better. Second, you don’t have to take it that seriously.
Last, you should choose only one boy at last. Good luck.
② First, choose either Ryuta or Kenta. You must not go out with both boys. If you go out with
both boys, they are not pleased. Second, you should ascertain(確かめる) which boy you like. I
don’t answer which boy is nice. So, you should ascertain. I’m looking forward to hearing
your report.
③ Don’t be foolish! Kenta loves only you, but you want to get two boys. I’ll give you some
advice. First, you should ask your mind whether your love to Ryuta is true or not. Be
honest. Second, if it is true, you had better declare(打ち明ける) your love for Ryuta. Last,
never give up. You will regret(後悔する) when you give up.
④ I’ll give you only one advice. You should go out with Kenta. It’s impossible to go out with
both. Kenta loves you. But Ryuta might not love you. Kenta will make you happy. But
Ryuta might give you the cold shoulder(冷たい態度をとる). It is no use waiting that Ryuta loves
you. So you should go out with Kenta.
◆ケース3
ケース3 「オーストラリア出
オーストラリア出身のALT。村上周辺
ALT。村上周辺でお
村上周辺でお勧
でお勧めの場所
めの場所は
場所は?」
① I will give you some advice. First, you had better go to the sea. Because Murakami is near
the Sea of Japan.
It’s very beautiful view at evening.
It’s a good idea to take photos.
Second, I suggest you should visit Shiomisou, a hot spring hotel. I often go there. I also like
it very much. Last, you had better eat salmon. It is the Murakami’s specialty(自慢料理).
It’s very delicious. Enjoy your winter vacation!
② I’ll give you four pieces of advice. First, you had better visit Kikkawa. Because you can buy
salt salmon. Second, you should eat Sakabitashi. It is often eaten at Murakami festival.
Third, you had better see Murakami Mayor(市長). Because he is a famous person.
③ I’ll give you three pieces advice. First, you had better drink green tea. Because it is good and
Murakami is the most northern point to make tea. Second, you should eat salt salmon
because it is delicious. Last, I suggest you should visit Senami Spa because it warms your
body and mind. Please come to Murakami for travel.
④ I’ll give you some advice. First, this city is famous for sake. You can see it in Iyoboya Hall.
Second, this city is very cold in winter. Because Murakami city has much snow. Third, you
should have a lot of money. You’ll buy many goods and many food.