FOCUS 千代田システムテクノロジーズ 計装システムの設計に特化するCST IoTへの参入方法は模索中 千代田システムテクノロジーズ(CST)は、2012年10月に旧千代田計装とITエンジニアリン グの合併により発足した。計装エンジニアリングでは、旧千代田計装時代を含め半世紀以上の実 績がある。この豊富な経験と蓄積されたノウハウが有力な武器だ。その豊富な実績を武器にCS Tはプラントのライフサイクルを対象としたサービスを提供する。そのCSTが目下、検討して いるのがIoTへの参入だ。IoTには、計装システムに蓄積されたデータの有効活用が必要に なるが、考えるべきはその参入方法だ。まだ模索中だが、近い将来、花開く可能性もある。 プラントライフサイクルに 対応 2012年10月に、旧千代田計装と旧I Tエンジニアリングが合併した千代 田システムテクノロジーズ(CST)。 現在、エネルギー・社会インフラ、計 装・電気、IT製品・ITサービスの 主に3分野で事業を展開している。 これら3分野のうち、計装・電気 は、旧千代田計装が半世紀に以上に 渡って蓄積してきた高度な技術で、顧 客ニーズに最適なシステムを提供する 事業だ。 CSTは、PLE(プラント・ライフ サイクル・エンジニアリング)を基本 姿勢として、顧客ニーズに対応してい る。この基本姿勢により、「計画」「設 計」「調達」「施工」「運転」「保守」か ら「廃棄」に至る、各エンジニアリ ングサイクルでのデータを蓄積・共有 し、効率的で信頼性の高いエンジニア リングサービスを提供している。 PLEへの対応に取り組むCSTが 提供するのは「EPC&M」。プラント 建設のEPCに「M」(メンテナンス) を加えたもので、計装システムの構築 から、そのメンテナンスまでライフサ イクルに渡ってサービスを提供する。 計装システムのEPC&Mを手掛ける CSTだが、千代田化工建設が国内で受 注したプラントの電気・計装システムを 一括して請け負う仕事が事業の中心だ。 42 ENN 2016.9.25 同時に海外向けプロジェクトの計装シ ステムの設計にも対応している。 対応分野は、石油・石油化学プラン ト、化学プラント、電力・エネルギー プラント、医薬品工場、食品工場、省 エネルギー関連設備、環境関連設備、 産業設備、半導体工場、電子・ファイ ンケミカル工場、備蓄設備、LNGプ ラントなど。ほぼすべての産業プラン トに対応している。 CSTは国内に西日本事業所(水 島)、中部事業所(四日市)、関東事業 所(千葉)、東日本事業所(鹿島)の4カ 所に事業を持つが、これら事業所はメ ンテナンスを手掛けるうえで、重要な 事業所になる。 CSTが対応する計装システムは、 大規模ユニットについては、千代田 化工建設が受注したプラント建設に伴 うもの。電気・計装システムのEPC をCSTが担当する。ただ、最近は千 代田が受注するような大型プラントの 建設プロジェクトは国内では減少して いる。このため、CSTは小回りの効 く各事業所を活用して、小規模のプラ ントの改造や増設については、直接、 エンドユーザーから受注することもあ る。 半世紀以上の経験が武器 CSTの電気・計装システム事業の 強みは、旧千代田計装の時代に培っ 中曽根裕幸社長 た、半世紀以上に渡る経験と実績によ り培われた技術ノウハウがあること だ。 計装制御の顧客ニーズ解決のカギ は、計装制御の上流設計にあたるプロ セス設計・プロセス特性・流体の理解 や設備運用の理解にある。同時に、配 管や回転機械など、それを取り巻く周 辺設備も含めた総合的知識ベースが必 要になる。各専門分野の解決には、千 代田グループのバックアップ機能を有 効利用し、他分野で集積された計装制 御専門技術をベースにしたソリュー ションを目指す。千代田グループの知 見を結集して総合的計装制御エンジニ アリングを提供できるところが、CS Tが単なる、計器、制御、電気、工事 の専門会社ではない所以だ。 CSTの計装・電気事業は、千代田 の総合力のバックアップを受けながら 実現されるエンジニアリング事業であ る。このため、上流のエンジニアリン グに最大のウェイトがあり、計装工事 のような力仕事は協力会社に外注され ている。 また計装・電気関連の資機材の調達 も千代田のバックアップを受けながら 行われている。計装・電気関連の資機 材の調達は、基本的にCSTが行う。 基本的に国内ベンダーから調達する が、集中購買による効率化や海外ベン ダーからの調達では、千代田グループ の総合力を利用している。グループの 海外拠点であるシンガポールおよび海 外特約ベンダーとの綿密な連携によ り、低コストな資材調達を実現してい る。 施工については、実際の計装工事は 協力会社に外注するものの、施工計 画・施工管理はCSTが実施する。施 工中の事故の発生を最小限にするた め、安全ツールの実用化、計装工事施 工資格認定制度による工事品質の向上 などを積極的に推進している。また、 検査・試運転を実施して、エンジニア リング全体の妥当性の確認も行ってい る。 メンテナンスについては、稼働中に 日常的な点検・整備・修理を行うオ ン・ストリーム・メンテナンスからS DM(シャットダウンメンテナンス)ま で、対応している。 IoTへの対応は検討中 旧千代田計装で培った電気・計装シ ステムとITという二つの技術を軸 に展開するCSTだが、中曽根裕幸社 長は「電気・制御とITに境界が無く なってきているように思う」と言う。 たしかに、最近はIoT(インター ネット・オブ・シングス)が話題だ。 IoTがメディアで取り上げられな い日がないくらい、日常的に接する用 語になっている。こうした時代になっ て、CSTの主力の顧客である石油・ 石油化学業界も今、IoTをどのよう に導入すべきか検討段階にある。この ため、電気・計装とITを分離して考 える必要もない。CSTにある電気・ In Depth プラントライフサイクルを支える計装工事 総合的計装制御エンジニアリングのイメージ 計装とITの技術が融合することで、 顧客に対して、新たなソリューション を提案できる可能性も広がる。中曽根 社長は「お客様も効果を見極めたうえ で投資判断してくると思う」と予測す る。 IoTを考えた場合、配電盤にケー ブルをつなぐような仕事が無くなる可 能性は少ない。このため、計装工事を 考えた場合、ビジネスチャンスが無く なるとは考えにくい。しかし、CST のように電気・計装のエンジニアリン グとITという、二つの技術の軸を持 つ場合、いかにビジネスに参入するか が課題になる。 中曽根社長は今後、CSTが成長 するには、「計装・電気のエンジニア リング、ITソリューションに加え、 社会インフラ事業がCSTの3本柱だ が、事業の境目がはっきりしない時代 になっているので、シナジーを発揮し ながら進めたい」と語る。これを実現 するうえで、何よりも重要なことは顧 客の声を聴くこと。顧客の問題意識に 耳を傾け、そのうえで適切なソリュー ションを提案し、実際のジョブにつな げることが何よりも重要になってく る。 新しい分野への関心を示しつつも、 中曽根社長は「ITソリューションを 事業化している企業ですし、新しい技 術を活かしてビジネスにつなげたいと いう考えは当然あるが、その中でも安 全にきちっと納期を守って仕事を終わ らせることが大事なポイント」とも付 け加える。 新分野に出るからと言って、そこで 事業の基本を忘れてはならない。現場 の安全と納期の確保はエンジニアリン グ企業にとっての生命線でもある。こ こを軽視してしまえば、CSTの事業 そのものが危うくなる可能性もある。 新分野への進出においても、外せな い一線がある。中曽根社長は、CST の基本を踏まえたうえで、新分野の可 能性を考えている。 2016.9.25 ENN 43
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