国際極年(IPY) 南極や北極で起こっていることは私たち皆に影響を及ぼし

国際極年(IPY)
南極や北極で起こっていることは私たち皆に影響を及ぼしている
気象と気候
地球が熱帯で受け取る熱と極地域で失う熱のバランスの上に気候が成り立ってい
る。赤道から極点への気温の勾配により、風や湿度など大気のパターンが決まる。
海流は莫大な熱を極地へ向かって運んでいる。陸上・海上の氷は地球の冷却に役立
っている。極地で生成される冷たい海水は海洋深層循環を駆動している。地球が暖
められると、これらのシステムに変化が生じる。その結果、農業、林業、工業、輸
送、娯楽に影響が及ぶ。
氷と海水面
海氷、氷床、山岳氷河、永久凍土が、暖かい大気や海水と接触する場所に地球温暖
化の兆候が見られる。山岳氷河は後退し、質量を減らしている。この変化は、諸処
で水資源枯渇の前兆となっている。海氷は上下から加熱され急速に消滅している。
その結果海洋表面は黒っぽくなり、太陽光を反射しなくなる。海洋は以前以上に熱
を吸収することになる。高温の大気と接触する永久凍土は表面から下へ向かって融
ける。北極海海底の永久凍土が融解すると、影響力の大きい温室効果ガスの放出に
つながる。グリーンランドと南極の巨大な氷床はすでに質量を減らしていて、地球
全体の海面を上昇させている。
極地の生物多様性
極地の生物には北極のクマや南極のペンギンが含まれるが、それだけではない。繊
細なツンドラ植物、すばらしい海洋性甲殻類、極地で繁殖をする渡り鳥なども極地
の生物である。このような生物系は、低温、氷、長い暗黒期間に驚くほど適応して
いる。温暖化により快適な生息地が消滅すれば、極地の生物系全体が退化する。氷
に適応した種の消滅は、熱帯雨林やサンゴ礁の消滅と並んで、生物多様性の深刻な
衰退である。
極地の社会
北極に住むヒトは環境、社会、政治の急激な変化に直面している。魚、森林、原野
などの極地の自然資源は、北極圏外から見た価値が高まれば高まるほど、重圧にさ
らされる。北極住民は、難題に答えるために、伝統的な知識、教育、技術を活用し、
地球の他の地域の人々の協力を求めている。南方から持ち込まれた商品やサービス
に競合して、北極共同体は既存の地域経済を維持できるのだろうか? 開発の適正
なパターンを見出すために、北極住民は地方政府や中央政府とどのように協力すれ
ばよいのか? 経済的社会的な重圧に面したとき、伝統的文化をどのように適応さ
せればよいのか? 誰が北極生態系の価値を定め、保護すべきなのか?
www.ipy.org で
国際極年のことをもっと調べてみよう
国 際 極 地 週 間
私たちが海氷や永久凍土に自ら遭遇する機会は少ない。山岳氷河を見たり、
野生のペンギンに出会ったりすることも稀である。それでも、極地の変化が
地球全体のシステムに及ぼす影響を認識することは可能である。世界の気象
や気候、それに、地球上のあらゆる地域の住民は南極や北極で起こっている
ことの影響を受けている。極地域における様々な変化について学ぶ機会とし
て国際極地週間が企画された。
2010 年3月 15~19 日の国際極地週間における活動
極地に関連する事項を調べて見よう。様々な活動が国際極年のウェブ
www.ipy.org の Polar Week のページに提案されている。いくつかの活動を
紹介する。活動の名称を「 」で示すが、ウェブを見るときの参考に英文表記
を添えておく。
・世界の「公開講演会シリーズ」Public Lecture Series に参加しよう:ロ
ータリークラブ、4-H、ボーイスカウト、ガールスカウト、教会、学校、
自治体、大学などで、極域環境の講演会を開き、極地の面白さを沢山の人に
伝えよう。
2010 年3月 16~19 日に北極の現況についてのコンファレンスが開催
され、発表がウェブで実況中継される。プログラムを見て、様々な「北極科
学」Arctic Science の進展について学ぼう:
http://soa.arcus.org/program
「オゾンに錐揉み」A Spin On Ozone:極渦の正体とそれが南極上空の
オゾン層破壊に及ぼす影響について学ぼう。北極でも同じようなことが起こ
っているのであろうか?
「ペンギン再会」Penguin Reunion:騒がしい大群の中で、一度別れてし
まったペンギンの親子は、どのような手段で再会できるのか、不思議に思っ
たことはないだろうか? この愉快な活動を通して、過酷な南極で、ペンギ
ン親子が再会する様子を学ぼう。
「氷が融けると・・・」When Ice Melts…:氷山や海氷が融けると、海面
はどうなるだろう? 氷床や氷帽が融けると? 海面上昇の原因や影響につ
いて学ぼう。
「食物連鎖に沿って―北極の汚染」Up The Food Chain-Pollution In The
Arctic:生体集積、生体濃縮、生体拡大、地球規模蒸留について学ぼう。生
態系の中で、汚染物がどのように集積されるのかを知ろう。北極におけるこ
のような高濃度汚染物は、環境やヒトの健康にどのような影響を与えるであ
ろうか?
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上記の活動は以下の国際極年関連書籍からの抜粋である:
「極域科学と地球規模気候― 教育・アウトリーチのための国際的な資料」
B.カイザー編、ピアソン、2010 年
IPY国際計画事務局 製作
www.ipy.org
写真提供:D. Carlson, Ilulissat (Greenland)