井深陽子研究会 ― 医療経済学 ― 1. 研究分野 医 療 経 済 学 は 、 英 語 対 訳 の Health Economics という呼称が示す通り、人間の 経済活動と健康の関わりについて学ぶ経 済学の一分野です。 経済は個人や企業、政府の活動から成り 立っています。これまで皆さんが学んだ経 済の動きを学ぶ理論において、健康という 要素を明示的に扱うことは無かったかも しれませんが、実際の経済活動の多くの部 分で健康という要素が様々な形で関わっ てきます。 例えば、ミクロ経済学で学んだ労働と余 暇にそれぞれどれだけの時間を投入する かという問題を考えてみましょう。ジムな どで体を動かすことに時間をあてるのか (余暇)、それともその時間をアルバイト にあてるのか(労働)、というような意思 決定は、日常的に行われていることでしょ う。この様な意思決定は、経済活動と個人 の健康状態の両方に影響を及ぼします。す なわち、健康状態と経済活動は相互依存関 係にあるわけです。 国家は個人の集合体からなりますから、 このような個人の単位での健康と経済活 動の依存関係は、国の経済政策や医療保健 政策を考える上でも重要になります。 本研究会では、医療経済学の諸課題をデ ータを用いて実証的に分析することを目 指します。経済学は人間の意志決定や経済 の動きを精緻な理論を用いて分析するこ とが大きな特徴です。同時に、構築された 経済理論が妥当であるのかについて、デー タを用いて検証する実証研究が、1990 年前 後を境にますます重要になってきている ことが専門の学会誌においても指摘され ています。 政策の議論において、Evidenced-based という言葉がよく聞かれますが、実際に行 われた政策の有効性を評価する政策評価 の分析は実証分析の一つの形態です。実証 分析の一つの魅力は、ある政策の効果を評 価する場合に、効果があったかどうか、だ けではなく、その効果がどの程度の大きさ であったか、を定量的に評価することがで 2. 3. きる点です。 本研究会では、実証分析に必要な計量経 済学の手法を学んだ上で、その手法を利用 した医療経済分野の研究を学びます。 学生への要望 医療経済学(HealthEconomics)は、経 済学においては、比較的新興の分野であり、 未だ解明されていない問題がたくさんあ ります。最近では、日本でも科学的根拠を 提供するのに十分な質の高い個票(主に個 人レベル)のデータが入手可能となり、こ の様な諸問題を分析する能力を有する人 材の必要性が一層高まっています。研究分 野の内容に加え、この様な点に魅力を感じ る方を歓迎いたします。 研究会は少人数で学ぶことの出来る貴 重な機会です。少人数であるということは、 どの場においても、一人一人の果たす役割 が非常に重要になってきます。個人の果た す役割の重要性を十分に理解して、研究会 活動を行っていただける方を希望します。 また、積極的であることは、研究会活動 を自分にとって、また担当教員を含めたメ ンバー全員にとって充実したものにする ために重要です。ただし、積極性のあり方 には色々ありますので、必ずしもリーダー シップを取ることを得意とすることを求 めるわけではなく、自分にあった積極性を 追求して下さることを期待しています。 最後に、本研究会は新規開講ですので、 もし新規開講のゼミの魅力があるのであ れば、それは何かを考えて頂けると活動の 一つのモチベーションになるかと思いま す。 選考について ① 募集人員:10 名程度 ② 選考内容:A)ミクロ経済学、統計学、 英語の筆記試験(合計で 90 分),B)面 接,C)成績表 ③ 選考基準:A)から C)より総合的に判断。
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