「Community As Partner」モデルを用いた地域アセスメントによる地域活性モデルの構築 氏名 高松 和幸(獨協大学) Keyword: 高齢化社会、地域アセスメント、地域包括支援事業 【背景】 報を共有することで、PC やタブレット端末で閲覧できるよ 高齢化と人口減少が同時進行し、支え手の不足、医療費・ うになり、介護現場や市職員の事務負担が軽減される。介 介護費の増加など、さまざまな課題に直面している。認知 護認定審査会の審査状況もリアルタイムでわかるため、サ 症高齢者や単独世帯のさらなる増加が想定され、現在の医 ービス開始の予定が立てやすくなるなど、介護現場の評価 療・介護の提供体制では十分に対応できないと見込まれて も高い。 いる。限られた医療・介護資源を有効に活用し、必要なサ また要支援・介護者の容態が悪化して救急車が出動した ービスを確保するため、地域包括支援事業の構築が求めら 場合にも、救急隊員が対象者の健康情報や介護状況、緊急 れている。 連絡先などの基礎情報を事前に把握した上で、医師に症状 わが国は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行し ている。65 歳以上の人口は、現在 3,000 万人を超えており を伝えられるようになり、救急医療の質的向上にも寄与す ると期待されている。 (国民の約4人に1人) 、2042 年の約 3,900 万人でピーク さらに保健師は以前からレセプト情報を活用し、同じ疾 を迎え、その後も、75 歳以上の人口割合は増加し続けるこ 患での重複受診を防ぐ地道な活動を行ってきている。レセ とが予想されている。こうした状況の中、団塊の世代(約 プト情報の電子化に伴って、市町村では住基ネットで紐付 800 万人)が 75 歳以上となる 2025 年(平成 37 年)以降は、 けされていることも強みである。こうした地域アセスメン 国民の医療や介護の需要が、さらに増加することが見込ま トに必要な情報、とくに統計データの多くは自治体から得 れている。このため、厚生労働省では、2025 年を目途に、 られる。しかし、どの自治体も保険部門や介護部門、健診 高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可 データ部門など縦割りのため地域アセスメント上支障が生 能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最 じる。そこで、 「Community As Partner」モデルを用いた地 期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サ 域アセスメント表を提起している。地域包括支援事業では、 ービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進し 高齢者が可能な限り住み慣れた自宅や地域で安心して自立 ている。 した生活を営めるよう、医療・介護・予防・住まい・生活 本稿では、地域高齢化に伴う施策として、介護保険法第 支援サービスなど地域の包括的な支援やサービスを提供す 115 条に規定されている、いわゆる「地域包括支援事業」 る体制が望まれている。ここで重要なことは、この地域包 に着目し、 その狙いの一つは、 国民医療費の抑制であるが、 括支援の概念自体は共通だが、事業自体は地域の実情に応 同じ疾患での重複受診、重複した薬、こうしたレセプト情 じて大きく異なるため、各自治体は、地域の特性に応じて 報は保健師が活用できる状況にあるにも拘らず、地域の健 構築する必要がある。 康課題やニーズを把握するまでには至っていない現状と、 有効な地域診断がないことを問題意識としている。 そこで、地域包括支援事業を構築するには、まず、地域 の高齢者のニーズや医療・介護・生活支援の現状を把握す こうした状況は全国国民健康保険診療施設協議会(国診 ることが必要となる。そして、めざすべき目標(あるべき 協)が既に 2010 年に指摘している。その要因の一つはビッ 姿)を示し、地域で共有するとともに、目標と現状とのギ グデータを十分に活用できないことにあるという。行政保 ャップを明らかにし、目標達成のための仕組みを作ること 健師の優先順位や地域住民の協力体制をいかに担保するか が重要となってくる。 が地域包括支援事業の鍵となろう。 【研究・調査・分析結果】 【研究方法】 たとえば、要介護認定結果などの情報をケアマネジャー 「Community As Partner」モデルを用いた地域アセスメ ント表は、以下のカテゴリーから成る。 が閲覧する場合、これまでは市役所の窓口や高齢者宅に出 1. 人口構成 向いて入手していましたが、 「介護健診ネットワーク」で情 2. 健康 3. 家族 る介護者の増加、それに伴っての支援者の不足、健康長 4. 労働 寿実現へ向けてのサポート必要性から、地域の「事前予 5. 歴史と文化 防」を切り口に地域包括支援システムを構築した。地域 6. 物理的環境 の中に新たな組織形態として、様々な専門家を取り込ん 7. 経済 だハイブリットな仕組みと、地域連携を視野に入れた医 8. 政治と行政 療連携、さらに行政は旗振り役を地域活性につなげる活 9. 教育 動が成功要因である。また、 「困難問題」もあることも事 10. 安全と交通 実である。 11. 情報 12. レクリエーション 13. ソーシャル・キャピタル 14. 保険医療と社会福祉 上記カテゴリーの下に、サブカテゴリーが 50 項目以上 あり、さらにデータ項目として 100 項目以上ある。 本稿では、ミクロなデータ収集による地域アセスメン トを実施することにした。さらに。地域課題を見つけ出 すために、個別課題整理シートを作成した。 事例) 地域診断を実施することで、とくに効果があったと思 われることは、これまでできなかった複数の情報を収集 し、データの分析を行うことができたという点にある。 また、地域包括支援センターと一緒にデータを検討する ことができ、データに基づいて健康教室を実施すること で、その評価も一緒に行うことができた。 データ共有、生活習慣病対策を話し合うことで受診率 の低かった特定健診のあり方を住民にグループインタビ ューを行うことで住民が望む特定健診ついて意見交換を 行うことができた。 地域ニーズとしては、「まつり」と「普段のイベント」 の中間の位置づけで、かつ住みよい町会としての「作業」 偏重ではない活動に高い関心が寄せられた。 まつりなどの年間行事を通して、踊り手の不足、高齢 化に伴う老人会組織の解散など、町会として危機感があ る本町会以外でも同様なケースが見られる。 そのため老人会に代わる新組織を模索検討する中で、 発展的に老人会解消を請け負う組織の必要性を認識する に至る。「町会組織の維持を側面から支援するための仕 組みづくりの促進」が結果的に必要との判断に至る。 その後、コミュニティカフェ方式のオープンな施設を 以下は、H 地域の1町会を事例に上記のようなアセスメ 運営することで、町会支援のための団体を発足させる。 ントを行い、その結果、老人会が解散したことに起因す 発足当初の目的は、高齢社会が叫ばれて久しい中、楽し く「生きる力」を共に育む、地域の「地域による地域の ための」組織を目指すとして、「伝えたいヒト」「想い 「いまの 90 歳は 10 年前の 79 歳。高齢者はこの 10 年 で 11 歳も若返っている。」 のあるヒト」と、「学びたいヒト」「貢献したいヒト」 が、町会というフィールドと世代を超えて、体験しなが 東京都老人総合研究所の研究結果の中に、少なくとも ら事業を実現し、課題解決につなげるための、多世代交 歩行速度で見るかぎり、高齢者の肉体年齢は 1992 年から 流型プラットフォームとしているのが特徴である。 2002 年の 10 年で 11 歳若返っているという。歩行速度は 多世代交流型プラットフォームの活動の柱は、以下のよ 人の体の若さを示す代表的な数値の一つ、80 歳以下は支 うな特徴を持っている。 える側に回ろうという視点が実現可能であるということ のひとつの根拠である。 <健康> 健康増進 → 医療費・介護費用の低減 仮に700万人が年150万円の労働を行えば、 なんと10.5 兆円になる。この規模は GDP の 2%に相当する。1991 年 から 2010 年までの平均経済成長率は 0.9%、10 兆円規模 <収入> の成長はいかに困難かがわかる。社会保障費が 100 兆円 収入 → 年金支給額の低減 も超える現実を考えれば、こうした視点の到達するのは、 当然の帰結であるといえよう。ゆえに社会が元気なうち <カフェ> はチャンスでもあり、社会的コーズがあり、 コミュニティカフェの運営 いまこそ高齢者は自分が培ってきた力を活かして社会 貢献したいという方向にもっていくことが重要である。 <ボランティア> つまり、新たなことに挑戦したい人を糾合し、社会側に、 高齢者がボランティアで社会貢献するということは、地 その方の能力を十分活かして高い労働生産性を実現する 域の人々の生活を支える役割を高齢者が担うことにつな 仕組みを整備することが求められている。 がる しかし、それどころか、その仕組みがどういうもので あるべきか、それすらまだよくわかっていないというの <見守り> が現実である。 高齢者の見守り機能は、たんに虚弱な高齢者が倒れたこ とを機械的に感知する形ではなく、日常的に接する中で 【考察・今後の展開】 体調の変化を早めに把握し、早期に適切に対処すること を可能にする 住民が変わるためには、まず行政側が変らければなら ない。それを実行に移した自治体がある。長野県下条村 である。調査した地域では、それは期待できないが、地 <コミュニティビジネス> 域住民の内発力がある。 ビジネスの感覚で生きがいを創出すると同時に、コスト の削減につなげる その内発力を生み出すために、地域包括支援センター と協働して、フレイルの検査を行っている。それによる 認知症の早期発見、さたには民生委員との連携、行政と の連携を改善し、社会貢献を通じた新しいことに挑戦す る土壌が耕されてきている。高齢者の能力を十分に生か せる仕組みづくりとして、以下のような結果が求められ ている。 1. 生きがい就労の効果・今後の展望 2. 生きがい、自己実現の場を見出し、体と心の健康増 進につながった(健康状態の測定) 3. 地域との関わりが増え、自分が生活する地域や自己 の関心が以前よりも高まった 4. 地域としては、地域の労働力の拡大、健康増進(健 たとえば、「空き家」→「◯◯家」に!空き家を「資源」 康長寿)、消費拡大、社会的孤立改善につながった に変えるには?「一級建築士x福祉」で空き家を福祉転 用する。 Who Participates in Decisions? Who Should Participate? Topic Typical Participants Needed Participants Steps in a Community Self-Assessment Process Members of local stakeholder groups should evaluate past or ongoing efforts at shared stewardship Of common resources relevant to one or more key decision points or 2 topical areas, Facility administrators Physicians & Professionals Community Service Orgs Government Officials Employers Insurers 1 DELIVERY OF CARE: Care Transitions, Chronic care,EFacility administrators records, Hospice, Mental health Physicians & Professionals care, Primary care, Quality improvements Community Service Orgs Government Officials Employers Insurers Individuals 3 And ask themselves how many of the facilitating conditions (prerequisites, processes, results) have been satisfied in those examples. 4 Then use these answers to identify missing ingredients, or gaps in their preparation for the even more difficult tasks ahead. FINANCIAL ASPECTS: Insurers Insurance coverage, Pay for Employers performance, Wellness programs, Facility administrators Access to care Physicians & Professionals Community Service Orgs Government Officials PUBLIC HEALTH: Built environment, Emergency preparedness, Environmental safety, Food deserts Physicians & professionals Insurers Individuals PHYSICAL FACILITIES: Consolidation, Construction of new facilities Government Officials Community Service Orgs Facility administrators Employers 今後は、具体的な事業に着手するなど、地域社会に対 Overall lesson: Ultimately, all parties need to be involved in all issues. するインパクトを期待する。 【引用・参考文献】 Elizabeth T.A., Judith M. (2010) Community As 課題は、健康長寿を推進し、高齢者共創の地域活性モ Partner, Theory and Practice in Nursing 5th Edition, デルを構築することである。以下では、その視点を取り pp.217-264. 上げる。 Bradshaw, J., G. McLachlan(ed.)(1972) Problems and Progress in Medical Care, Oxford University Press. (1)あたまで考える ーロジカル・シンキング Michael D. McGinnis, Towards Local Stewardship of a 「何故?」と聞かれて、「何故なら!」と答えられる Health Commons, ReThink Health, Fannie E. Rippel か?「論理的」思考で、「共感を生む考え」を探求する。 Foundation, and the Vincent and Elinor Workshop in たとえば、「サザエさん」三河屋さんは究極の CRM を実 Political 践していた。 University, Organizing for Health Distance Learning Theory and Class, March 22, 2012 (2)こころと考える ークリティカル・シンキング 「当たり前」って、本当に「アタリマエ」なんだろう か?「批判的」思考で、「自らの考え」を育む。たとえ ば、NHK の人気番組白熱教室。「ドラえもんは生物か?」 「ルフィはヒーローか?」など、身近なテーマを題材に、 議論を掘り下げる。 (3)からだが考える ークリエイティブ・シンキング 「理屈じゃない!」、「からだが勝手に動いちゃう!」 ことはありませんか?「創造的」思考で、「ワクワクす る考え」を産み出す。たとえば、「異業種コラボレーシ ョン」異業種による「掛け算(アーティスト×医者)」 で、顧客を創造する。 (4)地域を考える ーコミュニティ・シンキング 「地域」の課題は「私たち」の課題ではありませんか? あらゆる思考を総動員して、地域課題を解決する。 Policy Analysis, Indiana
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