2003年 第1号 【1/24∼3/19/2003】 ∼本号のメイントピックス∼ 《国内》 目立った動きなし 《国際》 CERUPT落札案件にインド、中国案件あり 《特集》 京都メカニズムとは? もくじ Monthly News 国内動向 経済産業省 産構審・地球環境小委員会の状況 産構審・市場メカニズム専門委員会の状況 環境省 中環審・地球環境部会の状況 地球温暖化対策税制専門委員会の状況 排出量取引試行の動向 国際動向 京都議定書批准状況 CERUPTの落札結果 CDM理事会情報 特集 京都メカニズムとは? 国内動向 (制度・政策) Points ・第2約束期間に対する外交戦略を検討開始。(経済産業省) ・CDM/JI支援として事業費の1/4補助を目的に19億円が予算化。(経済産業省) ◎経済産業省 産構審・地球環境小委員会の状況 (1月24日) 第13回会合が開催され、ポスト京都議定書(2013年以降の削減目標等の枠組)交渉にお ける日本の外交戦略について委員から説明が行なわれた。また、日本政府の承認手続きな どが追加された京都メカニズム利用ガイドV3.2が配布された。2月25日、第14回会合が開催 され、第13回に引き続き、将来の枠組についての議論が行なわれ、日本の国益を反映させ た枠組とすべきという意見が多数出された。 産構審・市場メカニズム専門委員会の状況 (3月13日) 第4回会合が開催され、同省が来年度実施する「京都メカニズムの活用に対する支援とイ ンフラ整備」について説明、審議を行なった。大きく分けてCDM/JI支援と国内排出量取引試 行からなり、CDM/JI支援としてはNEDOを通じて19億円の予算で事業費用の1/4補助を行な うというもの。排出量取引・移転試行事業は、プロジェクトによる削減に対して認証を経て仮 のクレジットを発行し、国の登録簿上で取引・移転を行なうベースライン&クレジット方式であ り、OEの育成と登録簿システムのデバッグを目的にしている。参加企業に対しては削減プロ ジェクト補助(5億円)、削減認証費用(20社程度)の負担を政府が行う。 国内動向 (制度・政策) Points ・60億円の使途を検討。3億円はCDM/JI事業の設備費1/3補助に充当。(環境省) ・エネルギー特別会計の見直しなど、大綱の第1ステップが順調であることを確認。(環境省) ・排出量取引試行はキャップ&トレード方式で。約30社の参加を予定。(環境省) ◎環境省 中環審・地球環境部会の状況(1月29日) 第7回会合が約1年ぶりに開催された。エネルギー特別会計の見直しにより環境省の共 管分として割当てられた60億円を財源にした各種CO2排出抑制策等を含め、地球温暖化 対策の最近の状況について報告が行なわれた。60億円の中にはCDM/JI支援策(トータ ル11億円)として設備費1/3補助(3億円)が含まれる。委員からは、原子力の状況から第 1ステップの結果は明らかであり、検証を待たずに第2ステップの検討を開始すべきとの 意見が多く出されたが、環境省は大綱のスケジュール通り進める旨説明した。 地球温暖化対策税制専門委員会の状況(2月25日) 第11回会合が開催された。エネルギー特別会計の見直しで税のグリーン化が行なわれ、 大綱の第1ステップでのスケジュールが順調に進んでいるとして、第2ステップの検討を WGを設置して温暖化対策税の具体案の検討を行なうことが決定された。WGは今年夏を 目途に最終報告をとりまとめる予定。 排出量取引試行の動向 環境省は今年度実施した三重県「CO2排出量取引シミュレーション」を踏まえて、来年 度からキャップ&トレード方式の排出量取引試行を約30社の企業の参加を得て行なう計 画で、業界団体や企業への説明を行っている。 国際動向 Points ・ヨルダン、チュニジア、ラオスが批准も、議定書発効のための条件には未到達。(UNFCCC) ・CDMに非協力的であったインド、中国もオランダの入札に参加。(オランダ) ◎京都議定書批准状況(3月19日現在(最新)の国連情報) 前回報告以降、ヨルダン、チュニジア、ラオスが批准したため京都議定書批准国の総数は105カ 国となった。批准した附属書Ⅰ国のCO2排出量合計の割合は43.9%で変わらず、京都議定書発効 にはロシア(排出量割合17.4%)の批准を待つばかりである。 ◎CERUPTの落札結果 3月13日、オランダ政府のCER(CDMによるクレジット)入札制度CERUPTの落札結果が公表さ れた。78件の応札から18件が選ばれ、合計約1600万t-CO2の削減量に相当する。特筆すべきは、 今までCDMに非協力的と言われており世銀PCFの契約にもこれまでなかったインド案件(4件)、 中国案件(1件)が含まれていることである。契約価格は未公開。落札案件は、この後DOEの指定 を待ってCDM化手続きを行なうことになるが、CDM理事会に登録されない場合は契約解除となる。 CDM理事会情報 CDM理事会とは? CDM理事会は、 COP/MOP注1,2)の権限と指導の下に、CDMを監督するための機関である。 COP7(2001年開催) において、その設置が決定した。主な役割は、COP/MOPへの活動報告、 CDMプロジェクトのベースライン・モニタリング新方法論の承認、運営機関(Operational Entity: OE) 注3)の認定などであり、3つの専門家パネルを設置して活動を行っている。 COP/MOP COP/MOP CDM CDM 理事会 理事会 CDM認定 パネル (CDM-AP) 申請組織(Applicant Entity:AE)が提出した申請 書を審査し、理事会にOEの認定決定に関する提 案を行う。既に審査の募集は始まっており、現在 多くのAEが申請を行っている。 CDM方法論 パネル 提出されたベースライン・モニタリング新方法論に 対して、専門家による審査を行い、理事会に推薦 状を提出する。一回目の新方法論の提出期限 (ラウンド1)は2003/4/15。 小規模CDM パネル 小規模CDMプロジェクトの簡素化された手続きの 具体案を作成し、CDM理事会に答申する。具体 的には、複数のプロジェクトのバンドリングや、ベー スライン・モニタリング計画の簡素化などを行う。 注) 1. COP: 気候変動枠組条約締約国会議(Conference of Parties)の略。 2. MOP: 締約国会合(Meeting of the Parties)の略。 3. OE: 運営機関(Operational Entity)の略。CDMプロジェクトの第三者認証を行う機関。CDM理事会が 認定(accreditation)し、COPが指定(designation)する。 CDM理事会情報 Point ・運営機関(OE)に立候補した10企業のうち、日本企業は6社。 2003年2月時点で、運営機関(Operational Entity:OE)に立候補した企業(AE)は、日本企業6社を含 む計10社であった。OEとして認定されるためには、まずCDM認定パネル下にある評価チーム (CDM-AT)の審査を受け、次にCDM理事会の認定を得なければならない。認定後にCDM理事会が COP/MOPに推薦し、COP/MOPにおいて正式に指定を受ければ、DOE(指定運営機関)になること ができる。 AE 機関名 国名 BVQI Holdings Ltd. 英国 SGS UK Ltd. (SGS = Société Générale de Surveillance) 英国 朝日監査法人 日本 日本プラント協会 (JCI) 日本 トーマツ審査評価機構 (TECO) 日本 結論の報告・推薦の準備 TÜV Süddeutschland Bau und Betrieb GmbH (TÜV Süddeutschland) ドイツ 報告 中央青山PwCサステナビリティ研究所 (CSRI) 日本 COP/MOP COP/MOP 推薦 認定 指定 CDM CDM 理事会 理事会 CDM-AP CDM-AP 申請 調整 CDM-AT CDM-AT AE AE DOE指定までの道のり(CDM理事会HPより作成) Det Norske Veritas Certification Ltd. (DNV Certification Ltd) ノルウェー 日本環境認証機構 (JACO) 日本 日本品質保証機構 (JQA) 日本 2003年2月末現在 特集 京都メカニズムとは? Point ・1997年12月京都においてCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が開催さ れ、先進国の具体的な温室効果ガス削減目標が定められた。同時に「京都メカニズム」 と呼ばれる柔軟な目標達成手段が提案され、2001年に具体的な合意に至った。 京都メカニズムとは(柔軟な目標達成手段) 排出権取引(ET:Emissions Trading) 温室効果ガス排出量の数値目標が設定されている附属書I国間で、排出権の獲得および移 転を行うことができる制度。これにより、市場メカニズムを利用でき、目標達成のための全体 費用を削減することが可能である。 共同実施(JI:Joint Implementation) 附属書I国どうしが共同で排出削減(吸収増大)などのプロジェクトを実施し、その結果生じた 排出削減量(または吸収増大量)に基づいて発行されたクレジットの一部または全てをJIプロ ジェクト関係国間で分け合う方法である。 クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism) 附属書I国が、非附属書I国に対して技術を提供して(資金提供を伴うことが多い)排出削減 (または吸収増大)などのプロジェクトを実施し、その結果生じた排出削減量(吸収増大量)に 基づいて発行されたクレジットをCDMプロジェクト関係国間で分け合う方法である。 特集 市場取引の仕組み Points ・京都メカニズムを皆が利用することで、市場参加者全体の削減限界コストでのクレジット調 達が可能になる。 ・京都メカニズムを上手に活用することで、自社への負担を最小に抑えることが可能となる。 CO2削減 限界費用 前提条件 A社:削減義務量 40万t-CO2 (特徴)削減の 限界費用の傾き大きい 互いにWin-Winになるために、 互いにWin-Winになるために、 A社とB社のCO2削減限界コストが A社とB社のCO2削減限界コストが 一致するところでバランスする 一致するところでバランスする B社は削減義務量よりも20万t追加 B社は削減義務量よりも20万t追加 して削減し、利益を載せてA社に して削減し、利益を載せてA社に 売却する 売却する (売却額:1万×20万=20億円) (売却額:1万×20万=20億円) B社:削減義務量 50万t-CO2 (特徴)削減の 限界費用の傾き小さい 2万円 A社が得をする額(費用抑制) 20万×1万円/2=10〔億円〕 1万円 5/7万円 B社が得をする額(利益) 2/7万円×20万/2 ≒2.9〔億円〕 移転 50万t 20万t −20万t B社追加削減量 40万t A社削減義務量 B社削減義務量 万トンCO2
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