HFC23 回収・破壊プロジェクト

© 財団法人地球環境センター(Global Environment Centre Foundation)
COP11&COP/MOP1 レポート
HFC23 回収・破壊プロジェクト
HFC23 は、HCFC22 製造過程において副生産物として排出され、温室効果指数が 11700 と高く、
京都議定書で削減対象とされている6つのガスのひとつである。温室効果が高いため HFC の回収
は必要とされる一方、CDM として実施する際にいくつかの問題があげられていた。
例えば、発生するクレジットが大量であるため、市場の CER 価格を低下させてしまう点が指摘さ
れていた。また、プロジェクトを実施したいためにホスト国が不必要な HCFC22 を増加生産するので
はないか、ということが懸念された。HCFC の生産凍結はオゾン層に関するモントリオール議定書に
より規定されており、HFC 破壊プロジェクトのあり方によってはモントリオール議定書の達成を阻害
する可能性があることが懸念されていた。
背景
EB10(2003 年 6 月)において、初めての CDM の方法論として HFC23 回収・破壊するプロジェク
トに使用する方法論(AM0001)が承認された。しかし、リーケージなどの指摘があったため、EB は
当該方法論を修正することにした。修正の一環として、EB17(2004 年 12 月)で、AM0001 は「既存」
の HCFC22 生産施設からの HFC23 破壊プロジェクトが対象であることを適用条件に追加した。
また EB は、モントリオール議定書などの他の国際環境条約との整合性に関して議論したものの、
合意に達するこができなかったため、COP にガイダンスを要請した。この問題は、COP10 で議論さ
れたが、特に「新規」の HCFC22 生産施設からの HFC23 ガス破壊プロジェクトについてどのような
対応をとるかについて合意できなかったため、この問題を引き続き科学的及び技術的助言に関す
る補助機関(SBSTA)で協議を続けることとした。
その一方で、EB では AM0001 に関する適用条件の修正作業が続けられ、EB19(2005 年 5 月)
でその方法論使用の条件を「既存の HCFC 生産施設から排出されている HFC23 に適用可能であ
り、プロジェクト活動が実施される施設は、2000 年はじめから 2004 年末までの期間に最低 3 年間
の稼動実績があり、排出される HFC23 の総量の破壊を義務付ける法令が存在しないこと」と修正
し、AM0001 ver3 として修正を承認した。
SBSTA23 での議論及び結論
SBSTA23(COP11 期間中にモントリオールで並行開催)では、2005 年 8 月に提出された各国の
意見を基に、コンタクトグループで具体的な議論が進められた。中国、カナダ、日本は(増産を防ぐ
形で)新設でのプロジェクトを支持した。他方で、インドやブラジルなどラテンアメリカを中心とする途
上国は HFC23 破壊プロジェクト自体がホスト国の持続可能な発展に寄与しないため、新設でのプ
ロジェクトは CDM として適格でないと反対した。EU は、モントリオール議定書の達成に負の影響を
与えないことを原則とすることを何度も確認した上で前向きな姿勢を示した。
議論の当初は、コンタクトグループの議長案として、「新規施設」の定義、及び HCFC22 の増産を
阻止するいくつかの条件をつけ、新規施設からのガス破壊プロジェクトの実施を認めるものであっ
た。しかし、非公式協議後の結果、「新規 HCFC22 施設」の定義は合意に達したが、新設でのプロ
ジェクトを CDM として認めるかどうかに関しては、COP/MOP2 で EB にガイダンスを与えるように
SBSTA で引き続き協議を続けることとした。
また、COP/MOP は新規 HCFC22 施設からの HFC23 破壊プロジェクトに関しては、余計な
HCFC22 や HFC23 を増産させてしまう可能性があることを確認し、また、CDM 以外で非附属書Ⅰ
国での HFC23 破壊ができるように附属書Ⅰ国及び多国間基金に資金を提供することを支持した。
なお、今回決定された「新規 HCFC22 施設」の定義は以下の通りである。
a) 2000 年から 2004 年末までに最低 3 年間稼動していた施設で、その 5 年のうちの直近の 3 年
における最大年間生産量を超えた HCFC22 生産量を指す
b) 2000 年から 2004 年末までに 3 年未満しか稼動していない施設から製造される HCFC22 の総
生産量を指す
1
© 財団法人地球環境センター(Global Environment Centre Foundation)
COP11&COP/MOP1 レポート
サイドイベント
COP/MOP1 期間中に開催されたサイドイベントにおいて、特に HFC23 破壊プロジェクトのみを対
象にしたイベントはなかった。しかしながら、CDM の改革の議論の中で HFC23 破壊プロジェクトそ
のものを問題視する声は大きかった。同時に、近日プロジェクト登録された N2O 破壊プロジェクトで
も同じようなことがいえることを指摘した。また、そのようなプロジェクトは、ホスト国の持続可能な発
展に寄与しないことを懸念する意見が多くの NGO や研究機関から出された。
2