スマートコミュニティ実現に向けた NTTコムウェアの取り組み

研 究 開 発 部
技 術 レ ポ ート
ていくと考えました。
スマートコミュニティ実現に向けた
NTTコムウェアの取り組み
∼次世代社会システム「スマートコミュニティ」を支える
通信技術IEEE1888の活用∼
地球温暖化問題や東日本大震災の影響による電力危機を背景とし、夏だけでなく、冬に向けてもウォームビズなどの節電対策
が取られるようになってきました。NTTコムウェアは、
EMS(Energy Management System)向けに標準化された通信規格で
あるIEEE1888を活用することで、
家庭やオフィスをつないだ地域全体の効率的なインフラ管理のための取り組みを進めています。
そこでまず、NTTコムウェアが有する家庭向
けサービスの研究開発知識・ノウハウをベース
として、家庭内の機器を遠隔から制御するゲー
トウェイを開発しました。このゲートウェイは、
■図 2 IEEE1888 スマートコミュニティシステム例
レジストリ
アプリケーション
空調
IEEE1888に準拠すると共に、OSGiTM*2フレーム
③データを蓄積している
ストレージの検索
ワーク上で動作し、
機器の設置・追加時等にはネッ
トワーク経由で必要なプログラムを受信すること
発想の起点/着眼点
• 昨今の電力危機により、ICTによるEMSの必要
性が急激に高まってきているが、ビル施設など
のエネルギーを管理するBEMS(Building
and EMS)だけでなく、家庭内のエネルギーを
管理するHEMS(Home EMS)にも複数の通
信規格が使われており、スマートコミュニティ実
現のための連携が容易にできなかった。
• BEMS向けに標準化された新しい通信規格IEEE1888を、NTTコム
ウェアが得意とするホームネットワーク分野へ適用することにより、
電力を含むさまざまなインフラを効率的に管理できるようにしたい。
• スマートコミュニティは大量の機器で構成されるため、例えば利用
者宅へのセンサ設置時の通信先設定あるいは変更等が煩雑であ
り、これを簡単な操作や設定で実施できるようにして普及を加速
させたい。
ゲートウェイ
プリンタ
ネットワーク
(図1)
。
家庭
また、大量の機器で構成されるスマートコミュ
ニティでは、一部の機器変更がシステム全体に
ストレージ
照明
ストレージ
②データの蓄積
影響するという問題に対して、NTTコムウェア
ゲートウェイ
冷蔵庫
して、機器の通信先の設定・変更作業の自動化
を実証しました
(図2)
。これらにより、スマートコ
ミュニティ化等における自由な機器選択と導入作業の短縮化が
INTEROP TOKYOのGUTPブースにて展示を行い、利便性
実現できました。
を多くの方に実感していただきました。今後も、展示会などを
通じて多くの皆さまにスマートコミュニティ実現に向けたNTT
GUTPでの活動
コムウェアの取り組みをご紹介していきたいと思っています。
IEEE1888の有効性をアピールする活動の1つに、GUTPが
定期的に主催している相互接続検証があります。これは企業・
方、
スマートコミュニティはこれらのBEMSやHEMSの連携によっ
①データを蓄積
するための
ストレージの検索
④データの取得
から、機器側での煩雑な設定を不必要としました
はIEEE1888のレジストリ機能の重要性に着目
市場の背景/ニーズ
ビル・オフィス
機器やシステムの情報とデータの場所を
自動的に一元管理
見える化や
電源制御など
今後の取り組み
団体が開発したIEEE1888準拠の機器やアプリケーション同
スマートコミュニティを実現するためには、安定した運用やユー
士を接続して動作と有効性を確認するイベントです。2012年
ザの快適性向上とプライバシ配慮の両立などの課題をクリア
て実現されますが、通信規格が異なるなどの理由で、導入はあ
3月の相互接続検証では、NTTコムウェアが開発したゲートウェ
する必要があります。NTTコムウェアは、これらの課題をIEEE
まり進んでいません。
イとレジストリが各社・各団体の機器やシステムと正しく連携
1888を用いて解決し、省エネと生活利便性が共存できるスマー
ICTによるEMSを推進する際の大きな課題の1つとして、
「既
このような背景のもと、
東京大学を中心とした産学連携団体
「東
することを確認し、
またレジストリを用いたシナリオの検証によ
トコミュニティの実現に向け今後も取り組んでいきます。
存の機器の通信規格がそれぞれ異なる」
ということが挙げられ
*1
大グリーンICTプロジェクト
(GUTP)
」
は、BEMSに用いる機器
ます。例えば、
ビルにおいては、電気設備を構築する事業者など
やアプリケーションが相互接続するための通信規格IEEE1888
しました*3。このことは、IEEE1888機器を整備する上で不可欠
が設備管理に必要な通信規格を用いてBEMSを構築しています
の制定を行い、2011年に国際標準化されました。
だった、複数機器による相互接続がレジストリを用いることで
し、家庭においても家電メーカなどが制定した、機器が相互に接
IEEE1888では、
他の通信規格の差異を吸収する仕組み
(ゲー
自律的に可能であることを実証したという点で画期的であり、
続するための通信規格を用いてHEMSが構成されています。一
トウェイ)
が規定され、通信規格が異なる電流センサや電源制御
GUTP内外にレジストリの有効性を証明しました。さらに家庭
を行うスマートタップなどの機器を連携可能にし
内機器を容易に接続・連携する仕組みについて、2012年度の
ICTによるエネルギーマネジメントの必要性と
それを実現する通信規格
■図 1 家庭内での IEEE1888 ゲートウェイの仕組み
う機能
(ストレージ)
や扱う方法、機器やデータの一
元管理と通信先のアドレス解決を行う仕組み
(レジ
NTTコムウェアが開発
照明
プロ
グラム
プログラム
新しい機器が接続される
とネットワークを介して
プログラム配信
機器とデータの管理が必要なスマートコミュニティ
空調
ゲート
ウェイ
ストリ)
などにも特長があります。これによりBEMS
にも幅広く活用していくことが可能であり、すでに
複数の施設に適用されて節電効果が実証されて
プロ
グラム
電源制御
(スマート
タップなど)
います。
電化製品
NTTコムウェアのアプローチ
OSGiTMフレームワーク
プログラム配信
サーバ
…IEEE1888通信
PC
IEEE1888の他のプログラム部品やレジストリとの通信に必要な機能を補完
NTTコムウェアは、メーカ各社から機器商用化
が相次いでいることもあり、今後のエネルギー利
用効率化に対するニーズは市場規模と共に高まっ
15
NTTコムウェア株式会社
品質生産性技術本部
研究開発部
赤井 和幸
だけでなく、さまざまな通信規格が混在し大量の
センサ
(電流センサ
など)
ネットワーク
*1 東大グリーンICTプロジェクト:東京大学を中心としたICTによる省エネとICT自
体の省エネを目指した産学連携団体。
日中協同によるIEEE1888の標準化や、
東大2号館を初めとした各種施設へのエネルギーマネジメントシステムの導入・
実証実験などを実施。
*2 OSGiTM:Javaベースのモジュール化を実現するためのフレームワークの規格。バ
ンドルと呼ばれるソフトウェア部品を配備し、
組み合わせて実行させることが可能。
*3 出典:
「『電力管理に便利なIEEE1888通信規格』
の相互接続実験を実施」
(東
京大学 平成24年3月26日記者発表)
ます。また、見える化などに必要な大量データを扱
レジストリ
制御センタ
り、
システムの大規模かつ高信頼な運用が可能であることを示
2010年入社。品質生産性技術本部研究開
発部にて、
ホームICTおよびエネルギーマネジメ
ントに関する研究開発に携わる。
IEEE1888はEMSだけでなく、さまざまなM2Mサービス
の基盤となりえます。そのため、活用用途を制限しないよ
うに、仕様ではあえて規定をしていない部分が多く、その
部分の扱い方を工夫することで新しい使い方ができると
考えられます。私はIEEE1888を利用した新しいサービ
スの基盤と必要な技術の研究に取り組み、社会に貢献し
ていく所存です。
国際標準化されたオープンなプロ
トコルであるIEEE1888により、多
様な事業者によるさまざまなスマートコミュニティサー
ビスの展開が期待されます。
IEEE1888は、本レポートで紹介した電力情報だけでなく、
気温情報や花粉情報などさまざまなセンサ測定情報をクラ
ウド上のストレージに収
集・蓄積可能です。これら
のデータを管 理・統 合・
活用することで、今の私
たちが想像もしていない
ようなユニ ークなM2M
サービスが出現してくる
Interop 2012 展示
可能性が広がります。
16