赤方偏移z ~ 2.2 Lyα輝線銀河のガス速度構造

赤方偏移 z ~ 2.2 Lyα 輝線銀河のガス速度構造
澁谷隆俊
大内正己
中島王彦 *
橋本拓也
小野宜昭
(宇宙線研究所)(宇宙線研究所/東京大学) (カリフォルニア工科大学)(リヨン天文台)(宇宙線研究所/東京大学)
RAUCH, Michael
(カーネギー天文台)
GAUTHIER, Jean-Rean
(カリフォルニア工科大学)
嶋作一大、後藤亮介
(東京大学)
森 正夫、梅村雅之
(筑波大学)
これまでの遠方銀河研究で、Lyα 輝線銀河(Lyα Emitter;
4 個の LAE から検出することに成功した(図 2)。それらの
LAE)は遠方星形成銀河における重要な銀河種族であるこ
(アウトフロー速度にのみ敏感な)Δv IS は −200 ~ −300 km/s
とが認識されると共に、宇宙再電離を探るプローブとして
で あ り、LAE も Lyα 等 価 幅 が 比 較 的 小 さ な 銀 河 種 族
用いられている。しかし、Lyα 光子は星間物質内の中性水
(Lyman break galaxies; LBGs)と同様に強いアウトフローを
素ガスやダストにより複雑に散乱・吸収を受けるため、そ
起こしていることが明らかになった(図 1 左)。このことか
の放射機構は完全には理解されていない。さらに、Lyα 光
ら、小さな Δv Lyα を持つ LAE は「小さなガス アウトフロー
子の銀河からの脱出は、銀河周辺ガスの速度構造(ガスアウ
速度を持っている」というよりは寧ろ、「中性水素 柱密度
トフローなど)にも密接に関係していると考えられている。
NHI が低く Lyα 光子が抜け出し易い環境にある」ことが分
遠方銀河のガスの速度構造は、中性水素ガスに対して光
かった。
学的に薄い「星雲線」をその銀河の系統的速度(基準)とし
て、Lyα 輝線または金属吸収線との速度差 (Δv Lyα, Δv IS) を測
定することで調べられる。Hashimoto et al. (2013) では Δv Lyα
と Lyα 等価幅の間に逆相関があることを示したが、Δv Lyα
は中性水素柱密度 NHI とガスアウトフロー速度の両方に敏
感な物理量であるため、この関係の起源が分からない状況
にあった(参考 図 1 右)[1]。
図 2.LRIS 分光観測により紫外線連続光が検出された LAE の静止波長紫
外線スペクトル [2].
多数の金属吸収線が検出されているのが分かる.
参考文献
図 1.Lyα /金属吸収線 速度差 Δv Lyα,Δv IS の Lyα 等価幅に対する依存性
[2].赤いシンボルが今回観測した z ~ 2.2 LAE.
[1] Hashimoto, T., et al.: 2013, ApJ, 765, 70.
[2] Shibuya, T., et al.: 2014, ApJ, 788, 74.
[3] Nakajima, K., et al.: 2012, ApJ, 745, 12.
Lyα 光子放射機構と周辺ガスの速度構造の関係について
探るべく、我々はケック望遠鏡 /LRIS、マゼラン望遠鏡 /
IMACS、すばる望遠鏡 /FMOS を用いて z~2.2 LAEs の可視
/近赤外分光観測を行った。その中の 12 天体について Lyα
輝線と星雲線([O III] λ5007 など)の両方を検出した [2,3]。
その結果、これまでの Δv Lyα が測定された LAE サンプルを
2 倍に増やすことができ、提案されていた Δv Lyα -Lyα 等価幅
逆相関を高い有意性で確認することができた(図 1 右)。
さらに、LRIS の長時間分光観測により今までは検出が
困難であった暗い紫外線連続光、及び多数の金属吸収線を
* 論文発表時は国立天文台所属.
I Scientific Highlights
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