社団法人 電子情報通信学会 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS 信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE. アクティブ光アクセスネットワークにおける 2 系統の光ツリーによるプロテクション方式 佐藤 丈博† 芦沢 國正† 徳橋 和将† 石井 大介† 岡本 聡† 山中 直明† † 慶應義塾大学理工学部情報工学科 〒 223–8522 横浜市港北区日吉 3–14–1 E-mail: †[email protected] あらまし 我々は,PON (Passive Optical Network) に代わる次世代光アクセスネットワークとして,収容加入者数 の増加と伝送距離の伸長を目的とした,光スイッチを用いる新たなアクティブ型光アクセスネットワーク ActiON (Active Optical Network) を提案している.本研究では,ActiON の信頼性向上手法として,2 系統の ActiON の相互 接続によるプロテクション方式を提案し,稼働率および設備コストについて評価を行った. キーワード 光アクセスネットワーク,GE-PON,IEEE802.3av,稼動率,プロテクション A Protection Scheme with Double Optical Trees in Active Optical Access Network Takehiro SATO† , Kunitaka ASHIZAWA† , Kazumasa TOKUHASHI† , Daisuke ISHII† , Satoru OKAMOTO† , and Naoaki YAMANAKA† † Dept. of Information and Computer Science, Faculty of Science and Technology, Keio University 3-14-1 Hiyoshi, Kohoku, Yokohama, 223-8522 Japan E-mail: †[email protected] Abstract We study a novel optical access network with active optical switches, called ActiON (Active Optical Network), as a next generation access network to replace PON (Passive Optical Network). In this paper, we focus on the reliability of optical access networks and propose a protection scheme for ActiON by connecting two ActiON trees. Finally we discuss the availability and the component cost of the proposed architecture. Key words Optical Access Network, GE-PON, IEEE802.3av, Availability, Protection 1. ま え が き (IEEE 802.3av) [1] の標準化が 2009 年 9 月に完了し,今後の 実用化が予想される.PON の利点として,安価なパッシブデ 現在の FTTH (Fiber To The Home) では,PON (Passive バイスである光スプリッタを用いるため,低コスト,電源不要 Optical Network) と呼ばれるパッシブ型の光アクセスネット であることが挙げられる.一方で,光スプリッタで光パワーが ワークが用いられる.図 1 に PON のアーキテクチャを示す. 分岐するため,OLT の収容可能加入者数の増加や,OLT-ONU PON は局側装置である OLT (Optical Line Terminal),加入 間の伝送距離の伸長が困難などの欠点をもつ.また,OLT か 者側装置である ONU (Optical Network Unit),光スプリッタ ら送信されたすべての光信号が各 ONU に伝送されるため,加 から構成される.1 台の OLT が複数の ONU を収容するツリー 入者間の回線秘匿性に関して原理的限界がある. 型トポロジにより,専用線に対して経済的なアクセスネット 我々は PON における諸問題を解決するため,アクティブ ワークを実現する.現在広く利用される GE-PON (Gigabit 型の新たな光アクセスネットワーク ActiON (Active Optical Ethernet-PON) では,Ethernet フレームをデータ伝送に使用 Network) を提案している [2,3].図 2 に ActiON のアーキテク し,通信速度 1Gbps,最大収容加入者数 32,最大伝送距離 20km チャを示す.ActiON は PON と同様に OLT を頂点としたツ を想定する.また,10Gbps の通信速度を実現する 10GE-PON リー型トポロジをとり,光スプリッタの代わりに光スイッチを —1— 表1 OLT Trunk Fiber Splitter ONU1 ONU2 ONU3 Downstream: 1490 nm Upstream: 1310 nm OLT Optical Switch Unavailability OLT 0.00009 Optical Fiber Cable (/km) 0.0000048 Splitter 0.00000144 WDM Coupler 0.0000144 High-Speed Optical Switch (1:128) 0.00006 図 1 PON のアーキテクチャ Trunk Fiber 各コンポーネントの不稼働率 Component ONU ONU1 ONU2 ONU3 Downstream: 1490 nm Upstream: 1310 nm 0.00003 ている.また,SOHO (Small Office / Home Office) などの小 規模事業者においては,経済的理由から専用線の代わりに安価 な PON を用いて業務取引を行うことが考えられる.以上のよ うな状況下では,経路上において障害が発生した際に,サービ ス断により加入者が大きな損失を被る可能性がある.したがっ 図 2 ActiON のアーキテクチャ Down て,光アクセスネットワークにおいて,コンポーネントの冗長 化により稼働率を高める手法を検討する必要がある.PON に おいてはコンポーネントの二重化によるプロテクション方式が WDM Coupler ITU-T 勧告 G.983 シリーズ [5] で勧告されており,さらに費用 対効果の良い方式について様々な検討が行われている [6-8].本 High-Speed Optical Switch Up 論文では,ActiON の特長である加入者数の増加,伝送距離の 伸長を可能としながら,高い信頼性を達成可能な ActiON のプ 図 3 ActiON の光スイッチ部 ロテクション方式を提案する.不稼働率および設備コストにつ いて性能評価を行い,提案方式の有効性を示す. 用いて複数の ONU を収容する.光スイッチは同期メッセージ の送信により常に OLT と同期し,OLT の指示に従い放路の切 2. 前 提 条 件 り替えを行う.図 3 に光スイッチ部の詳細なアーキテクチャを 2. 1 コンポーネントの不稼働率および設備コスト 示す.光スイッチには 10nsec 以下で放路切替が可能な PLZT 本論文では不稼働率の性能評価において,表 1 に示す値を使 (Plomb Lanthanum Zirconate Titanate) 光スイッチの使用を 用した.不稼働率はシステムあるいはコンポーネントが利用不 予定している [4].下り通信と上り通信で独立した帯域割り当て 可能な状態にある時間の割合であり,1 から稼働率を引いたも を実現するため,1 系統の ActiON につき 2 台の光スイッチを のに等しい.本論文では [9] を参考に各コンポーネントの不稼働 設置する.ActiON では,データ送信に先立ち光スイッチの切 率を設定した.また,設備コストは,OLT :光ファイバケーブ り替え動作を予約し,電気信号への変換を介さずに OLT-ONU ル (/km) : 光スプリッタ : WDM カプラ : 光スイッチ (1:128) 間でデータ通信を行う.OLT は固定長のスロットと呼ばれる時 : ONU = 150 : 0.5 : 1 : 2 : 150 : 5 とした. 間単位で ONU に帯域を割り当て,複数のスロットから構成さ 2. 2 光アクセスネットワークの不稼働率および設備コスト れる周期単位で光スイッチの制御を行う.ActiON ではスイッ 本論文では,光アクセスネットワークを構成する各コンポー チングにより任意の ONU にのみデータの伝送を行うことが可 ネントがネットワーク全体におよぼす影響を考慮に入れるた 能であり,加入者間の回線秘匿性を改善可能である.また,原 め,各コンポーネントの不稼働率に対し,障害発生時に影響を 理的に光パワーの分岐による損失がなくなるため,収容加入者 受ける ONU の割合で重み付けを行った [10].光アクセスネッ 数の増加および伝送距離の伸長が可能となる.ターゲットとし トワークの不稼働率 U(weighted) は,OLT-ONU 間のコンポー て,10GE-PON と互換性を保ちつつ,最大収容加入者数 128, ネント i の不稼働率を Ui ,重みを αi として ∏ 最大伝送距離 40km を目指している.一方で,アクティブデバ イスである光スイッチを用いることにより電源が必要となる点 U(weighted) = 1− i αi (1−Ui ) ≈ ∑ αi U i (Ui ≪ 1) (1) i や,全 ONU へのブロードキャスト送信が不可能などの課題が ある. αi = 本論文では,ActiON における信頼性向上のためのプロテク ション方式について研究を行った.現在,PON の普及および 広帯域化に伴い,多様なサービスが PON を介して加入者に提 供されている.一般家庭においては,IP 電話や地上デジタル 放送の再送信,あるいはインターネットバンキングなどのサー ビスが提供され,PON のライフラインとしての重要性が増し (i の障害により通信不能となる ONU 数) (ネットワーク全体の ONU 数) (2) で表す. また,設備コストについては,ONU1 台あたりに換算した上 で評価を行った.ONU1 台あたりの設備コスト C は, C= (全コンポーネントの設備コストの総和) (ネットワーク全体の ONU 数) (3) で表す. —2— Primary Path Backup Path Splitter ONU1 ONU2 OLT ONU3 (a) Type A ONU1 OLT ONU2 OLT’ ONU3 (Spare) (b) Type B 図 5 10GE-PON の不稼働率 ONU1 ONU1’ (Spare) OLT ONU2 ONU2’ (Spare) OLT’ ONU3 ONU3’ (Spare) (Spare) (c) Type C ONU1 ONU1’ (Spare) OLT ONU2 ONU2’ (Spare) OLT’ ONU3 ONU3’ (Spare) (Spare) (d) Type D 図 4 ITU-T G.983 による PON プロテクション 図 6 10GE-PON の ONU1 台あたり設備コスト 3. PON におけるプロテクション A から Type D の順に不稼働率が減少し,信頼性の高いネット 3. 1 コンポーネントの不稼働率に対する考察 備系のコンポーネントの設置によりネットワークの設備コスト 表 1 より,OLT,光スイッチなどのアクティブデバイスは, が増大する.加入者は必要とする稼働率と許容可能な設備コス ワークの構築が可能である.しかし,トレードオフとして,予 光スプリッタなどのパッシブデバイスと比較して不稼働率が高 トから,適切なレベルのプロテクション方式を選択する必要が いことが分かる.光ファイバケーブルはパッシブデバイスであ ある. るが,長距離化した場合に不稼働率が高くなる.また,PON に 3. 3 費用対効果の良い PON プロテクション おいては,OLT,幹線ファイバ,光スプリッタなど,全 ONU PON プロテクションにおいて設備コストを削減する方法の で共有するコンポーネントで障害が発生した場合,全加入者 1 つとして,予備系のコンポーネントを複数の PON に対して が一斉にサービス断に陥る.以上の理由から,PON では OLT 1 台設置する方式が提案されている.例として,Type H と呼 および幹線ファイバを優先的に冗長化する必要があると考えら ばれるプロテクション方式が挙げられる [6].図 7 に本方式の れる. アーキテクチャを示す.本方式では複数の PON に対して 1 台 3. 2 ITU-T 勧告によるプロテクション の割合で予備系の OLT を設置し,光スイッチを介して各 PON ITU-T 勧告 G.983 シリーズ [5] では,予備系の設置により の光スプリッタに接続する.任意の PON において OLT ある 系の一部あるいは全体の二重化を行う PON プロテクション方 いは幹線ファイバに障害が発生した場合,光スイッチの切り替 式を提案している.本勧告では二重化区間に応じて,Type A, えを行うことで,配下の ONU を予備系の OLT が収容する. B,C,D の 4 種類のプロテクション方式を規定している.図 4 ITU-T 勧告によるプロテクション方式,および Type H の欠 に各プロテクション方式のアーキテクチャを示す.Type A で 点として,通常時に予備系の OLT が使用されないことが挙げ は幹線ファイバ,Type B では OLT および幹線ファイバを二 られる.予備系専用の OLT の設置は,帯域利用効率および基 重化の対象とする.Type C および Type D では,光スプリッ 地局における設置面積の点で問題がある.また,予備系の OLT タ,支線ファイバ,ONU を含めた,PON 全体を二重化する. は通常時にコールドスタンバイ状態であり,障害の発生が検出 ITU-T 勧告によるプロテクション方式を 10GE-PON に適 されてから起動するため,通信回復時間が長くなることが予想 用した場合の不稼働率を図 5 に,設備コストを図 6 に示す. OLT-ONU 間の光ファイバケーブルの距離は 20km とし,その される. 予備系専用の OLT が不要な方法として,2 系統以上の PON うち支線は 2km とした.また,ONU 数は 32 台とした.Type —3— Splitter Optical Switch ONU1-1 ONU1-2 ONU1-3 OLT2 ONU2-1 ONU2-2 ONU2-3 OLT2 ONU2-1 ONU2-2 ONU2-3 OLTN ONUN-1 ONUN-2 ONUN-3 OLT’ (Spare) Splitter n:2n 㵺 OLT1 㵺 OLT1 ONU1-1 ONU1-2 ONU1-3 OLT3 ONU3-1 ONU3-2 ONU3-3 OLT4 ONU4-1 ONU4-2 ONU4-3 Optical Switch 図9 図 7 Type H [6] Optical Switch Splitter OLT1 ONU1-1 ONU1-2 ONU1-3 OLT2 ONU2-1 ONU2-2 ONU2-3 複数系統を接続する PON プロテクション [8] 図 8 2 系統を接続する PON プロテクション [7] を相互に接続し,障害発生時に 1 台の OLT が複数系統分の ONU を収容するプロテクション方式が提案されている. 図 8 に,光スプリッタおよび光スイッチを用いて 2 系統の PON を接続するプロテクション方式を示す [7].本方式は,OLT 図 10 ActiON の不稼働率 で発生した障害にのみ対応可能である.障害が発生していない 状態では,2 台の OLT は配下の ONU を半分ずつ収容し,独 立した 2 系統の PON として動作する.一方の OLT に障害が 発生した場合,光スイッチを切り替え,他方の OLT が全ての ONU を収容する. また,図 9 に,大規模な光スイッチを用いて複数の PON を 接続するプロテクション方式を示す [8].任意の OLT に障害が 発生した場合,正常な OLT の中で配下の ONU への割り当て 帯域が最も小さいものが,ONU を代わりに収容する.幹線ファ イバは PON ごとに二重化し,幹線ファイバ切断時には光スイッ チの放路を予備ファイバに切り替えることで通信を回復する. 図 8,図 9 のプロテクション方式の利点として,予備系の OLT を排除することで設備コストを削減可能であることが挙げ られる.一方,欠点としては,複数系統の PON を常にまとめ て制御する必要が挙げられる.また,障害発生時には,OLT の 収容 ONU 数の増加により,加入者あたりの帯域の減少,DBA (Dynamic Bandwidth Allocation) における OLT の負荷の増 大が考えられる. 4. ActiON におけるプロテクション 用した場合を選択する. Type B をアクティブ型の光アクセスネットワークに適用し た場合,以下の 2 点の問題がある.1 点目は,光スイッチの使 用に関する問題である.表 1 より,アクティブデバイスである 光スイッチは,パッシブデバイスである光スプリッタと比較し て不稼働率が高いことが分かる.一方,Type B で規定される 二重化範囲は OLT と幹線ファイバのみであり,光スイッチは 含まれない.ITU-T 勧告によるプロテクション方式を ActiON に適用した場合の不稼働率を図 10 に,設備コストを図 11 に示 す.OLT-ONU 間の光ファイバケーブルの距離は 40km とし, そのうち支線は 2km とした.また,ONU 数は 128 台とした. Type B を ActiON に適用した場合,10GE-PON と比較して 稼働率の改善が小さく,ターゲットである稼働率 99.999%を達 成不可能である.そこで,本研究では,OLT,幹線ファイバに 加え,光スイッチの冗長化を行うことにより,稼働率の改善を 図る.2 点目は,予備系専用の OLT の設置に関する問題であ る.前述の通り,Type B では予備系の OLT を通常時に有効 利用することが不可能である.そこで,本研究では,図 8 に示 した方式を参考に,2 系統の ActiON の接続により予備系専用 4. 1 ターゲットの設定 本研究では,固定電話回線ネットワークに要求される稼働率 99.999%(ファイブナイン)をターゲットとし,ActiON に対 するプロテクション方式の設計を行う [11].稼働率 99.999%は 図 5 における不稼働率 10−5 にあたる.したがって,本研究の 開始点として,10GE-PON に Type B のプロテクションを適 の OLT の排除を図る. 4. 2 提案方式の概要 図 12 に提案する ActiON プロテクション方式のアーキテク チャを示す.本アーキテクチャでは,同じ基地局に属する 2 系 統の ActiON を光スイッチ部において相互接続する.具体的に は,図 13 に示すように,出力ポート数が通常の ActiON の 2 —4— ONU1-1 Optical Switch Trunk Fiber ONU1-2 OLT1 ONU1-3 OLT2 ONU2-1 ONU2-2 ONU2-3 (a) ㅢᏱᤨ䈱േ ONU1-1 Optical Switch Trunk Fiber ONU1-2 ONU1-3 OLT1 Failure 図 11 ActiON の ONU1 台あたり設備コスト OLT2 ONU2-1 ONU2-2 ONU1-1 Trunk Fiber Optical Switch ONU2-3 ONU1-2 OLT1 ONU1-3 OLT2 ONU2-1 (b) 㓚ኂ⊒↢ᤨ䈱േ 図 14 Splitter 図 12 提案方式の動作 ONU2-2 2,ONU2-3 とデータ通信を行い,独立した 2 系統の ActiON ONU2-3 として動作する. 提案方式のアーキテクチャ 続いて,障害が発生した場合の通信回復方法について述べる. 2 系統の ActiON のうち一方において,OLT,幹線ファイバ, Down WDM Coupler 光スイッチのいずれかに障害が発生した場合を想定する. 最初に,基地局側において障害の発生を検出する必要がある. OLT において障害が発生した場合,当該 OLT を収容する基地 High-Speed Optical Switch 局において障害の発生を検出する.幹線ファイバあるいは光ス Up 図 13 提案方式の光スイッチ部 イッチにおいて障害が発生した場合,配下の複数の ONU から のメッセージが一斉に断絶するため,OLT において障害の発 生を検出することが可能である. 倍となる光スイッチを用い,半分の出力ポートをプロテクショ ン用に割り当てる.プロテクション用の出力ポートと,他方の 光スイッチから延びる支線ファイバを,スプリッタを用いて接 続する.各 OLT から延びる幹線ファイバは別々の経路を通り 光スイッチ部において再び近接するように敷設することで,同 時にファイバ切断が発生する確率を低減する. 本提案方式の利点として,OLT,幹線ファイバ,光スイッチ の 3 点のコンポーネントを冗長化可能であり,全加入者が一斉 にサービス断に陥る確率を低減可能であることが挙げられる. また,本提案方式では通常時に 2 台の OLT が常に稼働してい るため,障害発生時には,ONU への帯域割り当て方式を変更 し通常時と同様に光スイッチの制御を行うだけで,短時間で障 害回復が可能と考えられる. 4. 3 提案方式の動作 図 14 に提案する ActiON プロテクション方式の具体的な動 作を示す. 障害が発生していない状態では,図 14(a) に示すように,2 台 の OLT は実線で示す光ファイバケーブルで接続された ONU の みを収容する.OLT は配下の光スイッチに対して,図 13 の実 線で示す出力ポートのみに放路を向ける制御を行う.OLT1 は ONU1-1,ONU1-2,ONU1-3 と,OLT2 は ONU2-1,ONU2- 続いて,障害が発生したコンポーネントの下流に位置する ONU の通信を回復する.2 系統の ActiON のうち一方の系統 において障害を検出した場合,他方の系統の OLT は配下の光 スイッチに対して,図 13 の破線を含めたすべての出力ポートに 放路を向ける制御を行う.そして,障害により通信不能に陥っ た ONU を代わりに収容する.すなわち,図 14(b) に示すよう に,通常時の 2 倍の ONU を収容する大規模な ActiON とし て動作する.以上の手順で,障害発生時に ONU の通信を回復 する. 4. 4 提案方式の性能評価 本性能評価では,図 10 および図 11 と同様に,OLT-ONU 間の光ファイバケーブルの距離は 40km とし,そのうち支線は 2km とした.また,ONU 数は ActiON 1 系統あたり 128 台と した.提案方式では 2 系統の ActiON を接続するため,ONU 数は 256 台とした.1:256 の光スイッチの不稼働率および設備 コストは,光スイッチを構成する 1:2 のエレメントの数に比例 すると仮定し,2. 1 節の前提条件をもとに設定した. 4. 4. 1 不 稼 働 率 提案方式および ITU-T 勧告によるプロテクション方式を ActiON に適用した場合の不稼働率を,図 15 に示す.提案方 式では,ActiON に Type B のプロテクションを適用した場合 と比較して稼働率を大きく改善し,ターゲットとする稼働率 —5— を保持しつつ設備コストを抑制する方法について検討する必要 がある. 謝 辞 本発表内容は,総務省が進めるフォトニックネットワークに関 する研究の一環である,(独) 情報通信研究機構の委託研究「集 積化アクティブ光アクセスシステムの研究開発」の成果である. また,グローバル COE プログラム「アクセス空間支援基盤技 術の高度国際連携 GCOE C-12)」および科研費 19360178(B) の助成を受けたものである. 文 図 15 図 16 提案方式の不稼働率 提案方式の ONU1 台あたり設備コスト 99.999%以上を達成可能である.また,10GE-PON に Type B を適用した場合(図 5)と比較して,2 倍の距離で高い稼働率 を実現可能である. 4. 4. 2 設備コスト 提案方式および ITU-T 勧告によるプロテクション方式を ActiON に適用した場合の ONU1 台あたりの設備コストを,図 16 に示す.提案方式では,ActiON に Type B のプロテクショ ンを適用した場合と比較して設備コストが約 24%増加する.ま た,10GE-PON に Type B を適用した場合(図 6)とほぼ同等 の設備コストを実現可能である.これは,ActiON は PON と 比較して収容可能な ONU 数が多く,光スイッチの大規模化に よるコスト増を多人数で分割可能であるためと考えられる. 5. む す び アクティブ型光アクセスネットワーク ActiON は,光スイッ 献 [1] IEEE 802.3av 10G-EPON Task Force, “Part 3: Carrier Sense Multiple Access withCollision Detection (CSMA/CD) Access Methodand Physical Layer Specifications,” IEEE P802.3av/D3.4, 2009. [2] 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明, “アク ティブ光スイッチを用いた光アクセス網の一検討,” 電子情報通 信学会技術研究報告, vol.108, no.183, PN2008-22, pp.49-54, 2008. [3] 芦沢國正, 徳橋和将, 菊田洸, 石井大介, 荒川豊, 岡本聡, 山中直明, “アクティブ光アクセスネットワークにおける TCP スループッ トを考慮したパラメータ設計および動的スロット割当,” 電子情報 通信学会技術研究報告, vol.108, no.476, PN2008-85, pp.7-12, 2009. [4] エピフォトニクス株式会社, http://epiphotonics.com/index jp.html. [5] ITU-T recommendation G.983.1, “Broadband optical access systems based on Passive Optical Networks (PON),” 1998. [6] Dexiang John Xu, Wei Yen and Elton Ho, “Proposal of a New Protection Mechanism for ATM PON Interface,” IEEE International Conference on Communications, vol.7, pp.2160-2165, 2001. [7] 小原一歩, 堀内幸夫, “予備系を必要としない PON 冗長方式,” 電子情報通信学会技術研究報告, vol.108, no.309, OCS2008-97, pp.71-74, 2008. [8] W. T. P’ng, S. Khatun, S. Shaari and M. K. Abdullah, “A Novel Protection Scheme for Ethernet PON FTTH Access Network,” IEEE International Conference on Networks, vol.1, pp.487-490, 2005. [9] An Vu Tran, Chang-Joon Chae and Rodney S. 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