なぜ・なに ADR? - 栃木県北原発被災者弁護団

平成26年10月 ver2
なぜ・なに ADR?
この冊子は、那須塩原市・那須町・大田原市の方々が、原子力損害
賠償紛争解決センターにおける和解仲介手続(ADR)を通じて、
東京電力に対して原発事故による損害賠償を求めることの意義と目
的について知ってもらうためのものです。
栃木県北原発被災者弁護団
栃木県北 ADR を考える会
目次
➊
➋
➌
➍
いま、なぜ私たちは原発事故の賠償を求めるのか?
那須塩原市・那須町・大田原市の放射能汚染の状況
原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続とは?
今回の ADR について
❻
栃木県北原発被災者弁護団のご紹介
いま、なぜ私たちは原発事故の賠償を求めるのか?
平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、那
須塩原市、那須町、大田原市は、福島県と同様、放射能に汚染されました。この地域
の豊かな自然が放射能により汚染されたことで、山菜やきのこなどの自然の恵みや家
庭菜園で採れる野菜なども被害を受けています。子どもたちは、除染もままならない
状態で部活動や屋外活動を再開しました。私たちは、事故前の日常を奪われ、放射能
に不安を感じ、放射能に汚染されていない水や食料の購入、除染といった苦痛と負担
を強いられました。
それにもかかわらず、東京電力は、事故後3年半が経過しても、私たちに対し、精
神的苦痛にともなう慰謝料や生活費の増加分の賠償を一切していません。栃木県の健
康調査や除染は、福島県と異なり、自治体の独自予算で限定的に行われてきたにすぎ
ません。栃木県は、原発事故子ども・被災者支援法の支援対象地域にも含まれておら
ず、放射能被ばくに対する適切な支援も受けていません。
私たちが、原発事故による被害を乗り越え、子どもたちの健康をしっかりと守り、
魅力ある地域として再生するためには、その第一歩として、栃木県北の住民も原発事
故の被害者であることを東京電力に認めさせ、被害の賠償をさせることが必要です。
そこを出発点として、栃木県北住民全員に対する健康調査、徹底的な除染、その他の
生活支援等の実施を求めていかなければなりません。私たちは、原子力損害賠償紛争
解決センターにおける和解仲介手続を通じて、東京電力にこのことを訴えていきます。
栃木県北のひとりでも多くの住民が申立人となり、原発事故によって被った被害の実
情を訴えることが、東京電力や国を動かす力になります。
子どもたちの未来のために立ち上がりましょう。
呼びかけ団体
表紙出典
栃木県北 ADR を考える会
原子力規制委員会 放射線モニタリング情報より、H23.8.30「文部科学省による放
射線量等分布マップ(放射性セシウムの土壌濃度マップ)の作成結果を踏まえた航
空機モニタリング結果(土壌濃度マップ)の改訂について」(別紙 3-1)
1
那須塩原市・那須町・大田原市の放射能汚染の状況
那須塩原市・那須町・大田原市(以下「三市町」といいます)は、福島県中通りの中南部
と同程度に放射能汚染の被害を受けています。平成 23 年 7 月に文部科学省が実施した航空モ
ニタリング測定結果によれば、三市町内の複数の地域で 100kBq/㎡を超える放射性セシウム
が土壌に付着したと推定されます(表紙の地図をご覧ください)。
農作物や山菜も放射能に汚染され、チチタケに代表されるキノコ、タラノメ、コシアブラ、
筍、栗などの自然の恵みは今でも国の基準 100Bq/kg を超える放射性物質が検出されています。
置き去りにされてきた栃木県
(1)被ばくに対する健康調査
福島県では、外部被ばく線量を推計するための基本調査が行われているほか、特に子ども
たちの健康を守るため、甲状腺検査などが県民健康調査として実施されています。
一方、三市町では、健康調査については、ホールボディーカウンタ測定や甲状腺検査など
の助成が、町民や市民に対し、各市町独自の事業として限定的に実施されているにすぎませ
ん。
(2)放射能に汚染された土地の除染
三市町は、汚染状況重点調査地域に指定され、除染実施計画に基づいて除染が始まりまし
た。しかし、福島県であれば認められている除染メニュー(放射線量の低減に有効な表土剥
ぎ取りなど)が三市町村では認められてきませんでした。そのため放射線量が未だに高い場
所が各所に残されています。表土剥ぎ取りは、三市町が独自事業として限定的に実施してき
ましたが、東京電力は三市町が負担した除染費用すら支払おうとしません。
(3)原発事故の被災者に対する生活支援
原発事故子ども・被災者支援法は、原発事故の被災者への生活支援等を目的として平成 24
年に成立した法律です。この法律に基づいて、子どもの保養への支援等が行われています。
栃木県は、放射能汚染の被害を受けているにもかかわらず、この法律の支援対象地域に指定
されていません。そのため法律に基づく支援をほとんど受けていません。
文責
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栃木県北 ADR を考える会
原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続とは?
原子力損害賠償紛争解決センターとは
原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」といいます)とは、原発事故により
被害を受けた方々の東京電力に対する損害賠償請求について、円滑、迅速、かつ公正に紛争
を解決することを目的として設置された公的な紛争解決機関です。原子力損害賠償に関する
法律に基づき、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会のもとに設置されました。あくまで
も和解仲介手続であり、訴訟ではありません。非公開が原則ですので、申立人の個人情報が、
申立人の同意なく第三者に明らかになることはありません。
手続きはどのように進むか
① 申込みから受任まで
着手金をお振込みいただき、申込書類とアンケートにご記入ください(詳しくは『申込
書の書き方』をご確認下さい)
。必要書類を弁護団にご郵送ください。必要書類と着手金の
振込を弁護団で確認し、申込みの条件を満たしている方に対して、弁護団から申込を受け
つけた旨の通知をお送りします。申込は平成 26 年 12 月 25 日まで受け付けいたします。
② 申立て
弁護団が、三市町での原発事故の被害実態調査を行うなどし、申立書を作成した上で代
理人として平成 27 年 3 月頃を目途にセンターに申立てをします。
③ 口頭審理
弁護団が、申立人代理人として、仲介委員に対して、皆様の被害実態について主張立証
します。口頭審理はセンターの東京事務所で行います。口頭審理に申立人が出席する義務
はありません(ご出席いただくことも可能ですので、その場合には弁護団にご連絡くださ
い)
。
④ センターからの和解案の提示
センターが、原発事故による損害の有無や金額等を審理し、申立人と東京電力に対して
和解案を提示します。
⑤ 和解案に対する意思確認
弁護団から、申立人である皆さまに対し、書面にて和解案を通知します。和解案を受け
入れるか否かを書面により確認します。書面にて和解案を受け入れるか否かを回答期間中
に必ず弁護団にご連絡ください。
⑥ 和解案の成立または不成立
申立人及び東京電力の双方が和解案を受け入れた場合に和解が成立します。いずれか一
方でも和解案を受け入れなかった場合には、和解は成立しません。納得がいかない場合に
は、再度センターに申立てをするか、訴訟を提起することができます。
3
今回の ADR について
請求内容
今回のADRでは、東京電力に対しセンターを通じて以下のことを請求します。
① 精神的苦痛に対する慰謝料と生活費増加分の支払い
② 那須塩原市・大田原市・那須町に放射能汚染をもたらしたこと等に対する謝罪
③ 健康調査、除染の実施のための基金の設立
 慰謝料等の損害賠償請求(①)について
放射線被ばくへの不安(精神的苦痛)に対する慰謝料と、放射線被ばくによって増加した
生活上の負担(生活費の増加)などの被害の賠償を東京電力に求めます。請求金額は、下表
のように、子ども・妊婦の方とそれ以外の大人で異なります。この金額は、文部科学省の原
子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針追補の金額等を参考にしたものです。
今回のADRでの請求金額
請求額
平成 23 年分
子ども・妊婦*の方で平成 23 年中
60 万円
に避難された方
上記以外の子ども・妊婦*の方
追加賠償分
12 万円
40 万円
その他の方
8 万円
合計
72 万円
52 万円
4 万円
12 万円
※子ども・妊婦の方は、以下の期間中に 18 歳以下または妊娠していたことが必要です。
・平成 23 年分 :平成 23 年 3 月 11 日から平成 23 年 12 月 31 日まで
・追加賠償分 :平成 24 年 1 月 1 日から平成 24 年 8 月 31 日まで
(一部の期間において 18 歳以下または妊娠していれば対象となります。
)
※今回の ADR での請求は、原発事故による東京電力に対する損害賠償のうち、自主的避難
等対象区域と同様の損害内容・金額のものに限られます。
※事業損害や除染費用など個別の損害は請求しません。
※今回の申立に参加したとしても、必ず賠償を受けることができるとは限りません。
 謝罪(②)
、基金設立(③)について
東京電力は、三市町に放射能汚染をもたらしたにもかかわらず、三市町の住民に対して謝
罪もしていません。健康調査や除染も三市町の独自予算で限定的に実施している状況です。
このような状況に対する申立人の想いを東京電力に訴えます。ただし、センターで解決でき
る紛争は、損害賠償に限られているため、損害賠償以外の請求は和解の対象とはなりません。
②、③の請求は、あくまでも三市町に住む皆様の想いを、東京電力に届けることを目的とし
ています。
4
放射線被ばくへの不安(精神的苦痛)の慰謝料はいくら?
A さんが事故を起こして B さんに被害を与えたことで、
B さんは心に傷を負い、不安な日々を過ごさなければな
らなくなってしまいました。A さんは B さんの心の傷
や不安を癒すためにいくら支払わなければならないで
しょうか?
 交通事故の場合
交通事故の場合は、弁護士会が『損害賠償額算定基準』(表紙が赤いので「赤い本」と
呼ばれています)という本を出していて、この本の中に心の傷や不安を癒すために加害者
がいくら支払うべきかという基準が書かれています。たとえば、一か月入院した場合の慰
謝料は 53 万円です。むちうち(後遺障害等級 14 級)の場合は 110 万円です。ちなみに、
B さんが病院に通うためにタクシーを使わなければならなくなり、生活上の負担が増えて
しまった場合には、A さんはタクシー代の実費を支払わなければなりません。
 原発事故の場合
それでは、原発事故で放射能に被ばくし、皆さんが不安な日々を過ごさなければならな
くなってしまったという場合に、東京電力はいくら慰謝料を支払うべきでしょうか?
原発事故の損害に関しては、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」
といいます)が、被ばくへの不安について賠償の範囲や金額の基準を決めました。この基
準の中で、自主的避難等対象区域(福島市、郡山市などのほか、平田町、玉川村なども含
む区域)に住んでいた人たちについて、被ばくによる健康影響への恐怖・不安への慰謝料
や生活費の増加分および避難費用として、子ども・妊婦の場合は1人あたり 40 万円、そ
れ以外の大人の場合は 1 人あたり 8 万円支払うべきとしました。このうち、子ども・妊婦
の場合は 20 万円、それ以外の大人の場合は 4 万円が慰謝料だと考えられています。
このほか、東京電力は追加賠償分として子ども・妊婦に 1 人当たり 12 万円、それ以外
の大人に 1 人当たり 4 万円を支払っています。
 今回の ADR の請求金額
このような賠償金額は、皆さんが受けた被害を考えると、実態とかけ離れた不十分なも
のです。本来、東京電力は、福島県の人たちにも栃木県北の人たちにもきちんとした被害
の実態に見合った賠償をしなければなりません。ですが、栃木県北の人たちが、福島県の
人たちが受けている賠償金額を超えて実態に即した賠償を東京電力に求めるには、高いハ
ードルがあり、これを ADR で実現することは容易ではありません。
そこで、今回の ADR では、東京電力が栃木県北に対して全く賠償をしていないという
現状を踏まえ、栃木県北地域でも放射能被害が生じたことを認めさせることを一番の目的
として、少なくとも那須塩原市、那須町、大田原市の人たちに対しても、最低限の賠償と
して自主的避難等対象区域内の人たちと同等の慰謝料や生活費の増加分を支払うよう、東
京電力に求めます。
5
栃木県北原発被災者弁護団のご紹介
栃木県北原発被災者弁護団は、「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク」(SAFLAN)
に所属する弁護士と「東日本大震災による原発事故被災者支援弁護団」
(原発被災者弁護団)
を中心とし、那須塩原市・那須町・大田原市の住民が原発事故による損害賠償を東京電力に
対して請求するために特別に結成された弁護団です。
団
長
弁護士
粟 谷
し の ぶ (第二東京弁護士会 所属)
東京都港区新橋4-25-6 ヤスヰビル2・6階
コスモス法律事務所
事務局長
弁護士
水
橋
孝
徳 (第二東京弁護士会
東京都千代田区九段北1-4-5
所属)
北の丸グラスゲート5階
早稲田リーガルコモンズ法律事務所
事 務 局

早稲田リーガルコモンズ法律事務所 内
福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(略称:SAFLAN)
政府指示による避難区域の外側に居住する方や避難する方(自主的避難者)の支援を目的
として結成された法律家のネットワークです。政府指示による避難と比較して、区域外避難
への支援が遅れていることを懸念した東京や福島の子育て世代の弁護士を中心に、原発事故
後の平成 23 年 7 月に結成されました。ホームページ
http://www.saflan.jp/
弁護士費用について

着
手 金
弁護団に対して一世帯あたり2000円の着手金を申込時にお支払いいただきます。世帯数
は、住民票の世帯とします(現在の住民票1枚の中に書かれているご家族を1世帯とします)。
着手金は、請求が認められるかどうかにかかわらず返還いたしません。
 報
酬
東京電力から賠償金の支払いを受ける際には、報酬金として、支払いを受けた額の10%を
弁護団にお支払いただきます。
福島県境を越えた!宮城県丸森町筆甫地区での勝利
宮城県最南部に位置する丸森町筆甫地区の住民及び避難者が集団でセンターに損害
賠償の和解仲介手続きを申し立てました。センターが自主的避難等対象区域と同等の賠
償を認める和解案をセンターが提示し、平成26年6月17日に申立人全員と東京電力
の双方が和解案を受諾しました。福島県外ではじめて、福島市や郡山市などの自主的避
難等対象区域と同程度の賠償が行われることになりました。
6
お 問 合 せ 先
〒102-0073
栃木県北原発被災者弁護団
東京都千代田区九段北1-4-5
北の丸グラスゲート5階
早稲田リーガルコモンズ法律事務所内
栃木県北原発被災者弁護団事務局
電話番号
050-3691-3715
ホームページ http://www.tochihoku-adr.net
E-mail
[email protected]
電話番号
栃木県北 ADR を考える会
栃木県那須塩原市槻沢420-22
アジア学院 ベクレルセンター内
090-7013-0330
E-mail
Facebook
Blog
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https://www.facebook.com/northtochigiadr
http://northtochigiadr.blog.fc2.com/
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〒329-2703
アクセス 那須塩原駅より車で20分
セミナーハウス内1階
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