人口と感染症の数理∗ –Introduction to Population Dynamics– 稲葉 寿(東京大学大学院数理科学研究科) 1 はじめに: Population Dynamics 生物個体群はヒトや動物、植物、微生物、細胞など自己再生産する生命体の集合である。個体群ダイナミク ス (Population Dynamics) はこの個体群の個体数(密度)、サイズ、分布の時間変動や相互作用を記述・解析 することを目的にしているから、生命系のもつもっとも基本的な特性を数学的に理解しようとするものであ る。この分野での数学利用の歴史は古く、13 世紀におけるフィボナッチ(レオナルド・ピサノ)によるウサ ギの増殖モデルや、18 世紀のオイラーによる人口の差分方程式モデル、19 世紀におけるロジスティック方程 式の発見等に遡るが、数理モデルが盛んに利用されるようになったのは、1920 年代に数学者のヴォルテラ (V. Volterra) や数理人口学者のロトカ (A. J. Lotka) が、捕食者と被食者のダイナミクスを連立微分方程式によっ て記述して大きな成功を収めて以降のことであろう。この頃、後に述べるケルマックとマッケンドリックも個 体群における感染症流行の数理モデルを微分方程式によって定式化することを始めている。 ロトカ–ヴォルテラ以降、理論生態学では多種個体群の非線形相互作用モデルが、個体群密度に関する非線 形常微分方程式によるモデルとして盛んに研究されるようになった。一方、人口学においては 17-18 世紀の学 問的端緒から、ヒト個体数だけが問題となることはなく、年齢構造を考慮した人口モデルが考察されていた が、理論生態学とは対照的に個体群間の非線形相互作用を考えることは、 1970 年代までなかった。この状況 は、1970 年代後半から 1980 年代にかけて、性、年齢、サイズ、体重、空間分布、遺伝特性などの個体を特徴 付ける内的構造をもつ個体群に対する非線形個体群モデルが偏微分方程式によって定式化され、関数解析的 な手法によって研究されるようになって劇的に変貌し、今日では構造化個体群動態学 (structured population dynamics) として、数理生物学・応用数学における大きな研究領域として確立してきている [26]。本講演で は、Population Dynamics における代表的な例として、人口学における安定人口モデルとその非線形拡張お よび感染症流行のモデルを紹介する。 はじめに構造化個体群モデルの一般的な定式について述べておこう。いま何らかの内部構造をもつ個体群を 考えよう。各個体は年齢 a ∈ R+ とそれ以外の構造変数 x = (x1 , x2 , ..., xk ) ∈ Rk で特徴付けられているとす る。xi としては、例えば細胞 (cell population) であれば、DNA や RNA の含有量や細胞サイズ、重量等を構 造変数にとれる。構造変数 (a, x) の時間変化は一般に da = 1, dt dx = v(a, x, E) dt (1.1) という決定論的な法則性にしたがっていると仮定する。ここで v := (v1 , .., vk ) は(年齢以外の)構造変数の変 ∗ 2007 年数学公開講座「現象と数理」, 2007 年 12 月 16 日, 東京大学大学院数理科学研究科大講義室 1 化速度であり、個体の年齢 a、構造 x、環境 E などの関数である。環境変数 E としては個体群密度効果など のフィードバック等が考えられる。もし環境変数 E が定数(不変の環境)であれば、(1.1) は構造変数の運動 を完全に決定している。構造変数 (a, x) は個体レベルにおける特性を示すという意味で個体状態変数 (i-state variable) と呼ばれ、それが値をとる部分集合 R+ × Ω ⊂ Rk+1 を個体状態空間 (i-state space) という。 p(t, a, x) を時刻 t、年齢 a、構造変数(ベクトル)x をもつ個体群の年齢密度関数であるとしよう。すなわち ∫ a2 ∫ p(t, a, x)dxda a1 Ω0 は時刻 t において構造変数 (a, x) ∈ [a1 , a2 ] × Ω0 ⊂ R+ × Ω をもつ人口数を与える。その意味から p(t, ·, ·) は E := L1+ (R+ × Ω) に値をとると考えられるが、空間 E を個体群レヴェル (p-state level) における状態空間 (p-state space) という。 このとき一般に、個体群レベルにおける基礎方程式 (保存則:p-balance law) は以下のように表される: ∂p(t, a, x) ∂p(t, a, x) =− − 5(v · p) − µ(a, x, E)p(t, a, x) ∂t ∫ ∞ ∫∂a p(t, 0, x) = β(a, x, y, E)p(t, a, y)dyda 0 (1.2) Ω ここで µ(a, x, E) は年齢別・状態別死亡率であり、β(a, y, x, E) は年齢 a、状態 y の個体が状態 x の個体を生 む出生率である。さらに 5(v · p) := k ∑ ∂vi (a, x, E)p(t, a, x) ∂xi i=1 である。環境変数 E が個体状態に依存して変化する場合には、(2.2) は非線形方程式である。 保存則 (1.2) は形式的には以下のように導かれる。いま Ω0 を滑らかな境界 ∂Ω0 をもつ Ω 内の領域としよ う。J(a, x) を個体群の流れ (flux) のベクトル、n を Ω0 の外向き法線ベクトルとすれば、(a, x) における外向 きの流れは n · J(a, x) で与えられる。このとき同時出生集団(コーホート)上の個体群密度のバランスを考え ると ( ∂ ∂ + ∂t ∂a )∫ ∫ ∫ n · Jdσ = − p(t, a, x)dx + Ω0 ∂Ω0 µ(a, x, E)p(t, a, x)dx. Ω0 ここで σ は ∂Ω0 の面積要素である。ガウスの発散定理から、 ∫ ∫ n · Jdσ = ∂Ω0 であるから、 [ ∫ Ω0 5Jdx Ω0 ] ∂p(t, a, x) ∂p(t, a, x) + + 5J(a, x) + µ(a, x, E)p(t, a, x) dx = 0. ∂t ∂a ここで Ω0 は任意であったから、 ∂p(t, a, x) ∂p(t, a, x) + + 5J(a, x) + µ(a, x, E)p(t, a, x) = 0 ∂t ∂a を得る。さらに流れは密度と速度の積で与えられるから、J = v · p とすれば (1.2) の偏微分方程式を得る。 (1.2) のような方程式は、輸送方程式や反応拡散方程式に似た性質をもっており、1980 年代から状態空間 (関数空間)の発展方程式として、関数解析的な研究が大きく進歩を遂げた。しかし現在でも環境からのフィー ドバック(非局所的な非線形性)がある場合に関して個体群状態方程式の適切に処理できるような一般的な理 2 論があるわけではない。自由なモデル構築の立場からすれば、可積分関数だけではなく、デルタ関数のような 測度を分布関数として扱ったり、環境から個体群へのフィードバックとしては必ずしもリプシッツ連続ではな いような写像を扱えることが望ましいが、そうした場合に (1.2) のような微分方程式モデルが、初期条件に対 して連続的に依存する一意的な非負解を持つという意味で数学的に「適切」(well-posed) な問題を提供すると は限らない。そのような困難は、たとえ広義においても微分可能性という条件の扱いが難しいためであろう。 この分野をリードしてきた Diekmann, Gyllenberg, Metz, Thieme 等のグループは、微分方程式に依存しな い、すなわち瞬間的変化率を用いないで個体群の発展を記述・解析する方法の開発を試みている ([5])。 2 年齢依存人口(個体群)成長モデル 個体群の記述に年齢構造を導入するということは、個体の加齢と出産のプロセスを年齢をパラメータとして モデル化して、その集計として人口(個体群)のダイナミクスを考えることに他ならない。その際、個体の加 齢・再生産法則が個体群密度や環境から影響を受けないのであれば線形のモデルが導かれる。そうではなく て、両者の間にフィードバックがあれば、モデルは非線形となる。 例題 2.1 (ヒト集団の再生産:安定人口モデル) 構造化個体群モデルとして最初にもっとも成功した古典的な モデルは人口学における安定人口モデル (stable population model) であろう。安定人口モデルは、年齢構造 をもつ単性の封鎖人口の時間発展を記述するモデルであり、以下のような簡単な線形モデルである: ∂p(t, a) ∂p(t, a) =− − µ(a)p(t, a) ∂t ∫ ∞ ∂a p(t, 0) = β(a)p(t, a)da (2.1) 0 p(0, a) = p0 (a) ここで p(t, a) は時刻 t における年齢密度関数であり、p0 (a) は初期人口分布、β(a) は年齢別出生率、µ(a) は 年齢別死亡率である。システム (2.1) を数理物理などでおなじみの変数分離法で解こうとすると、以下のよう な固有値問題に出会う: ) ( d − µ(a) ψ(a) = λψ(a) − da ∫ ∞ ψ(0) = β(a)ψ(a)da (2.2) 0 (2.2) の微分方程式の左辺は年齢分布の時間推進演算子で、人口作用素と呼ばれる。この微分方程式の解は ψ(a) = ψ(0)e−λa `(a) であるから、これを境界条件に投入すれば、固有値 λ は以下の方程式(Euler–Lotka の 特性方程式)の根でなければならないことがわかる: ∫ ∞ e−λa β(a)`(a)da = 1 (2.3) 0 Euler–Lotka の特性方程式の左辺は実数 λ の単調減少関数であるから、ただ一つの実特性根が存在することは すぐにわかるが、それを λ0 (内的成長率と呼ばれる)としたとき、対応する固有関数 ψ0 (a) = e−λ0 a `(a) は 安定人口分布 (stable age distribution) とよばれる。内的成長率が正となるか負となるかは、人口学的な基本 再生産数(純再生産率) ∫ R0 = ∞ β(a)`(a)da 0 3 (2.4) が1より大きいか小さいかに対応している。R0 は一人の女性(男性)が生涯にもつ平均女児(男児)数であ る。2005 年の日本人口では R0 = 0.61, λ0 = −0.016 である。 内的成長率は実部が最大の固有値 (dominant eigenvalue) であって、安定人口モデルの任意の解は漸近的に 安定人口分布に比例するようになる。すなわち出生率、死亡率が不変な人口においては初期データに無関係な ただ一つの持続的な年齢分布が存在して、任意の分布はそこへ収束する(強エルゴード定理): p(t, a) ψ0 (a) lim ∫ ∞ = ∫∞ p(t, x)dx ψ0 (x)dx 0 0 t→∞ (2.5) これが古典的な人口論の基本定理であるが、線形の構造化個体群モデルの漸近挙動の典型例である 加齢過程をあらわす (2.1) の一階偏微分方程式はマッケンドリック方程式とよばれるが、A. G. McKendrick によって 1926 年に導入された [25]。マッケンドリック方程式は特性線に沿って簡単に積分できて、 { B(t − a)`(a), (t − a > 0) p(t, a) = `(a) p0 (a − t) `(a−t) , (a − t > 0) (2.6) と書ける。ここで B(t) := p(t, 0) は単位時間あたりの出生数であり、 ( ∫ `(a) = exp − ) a µ(σ)dσ 0 は年齢 a までの生残率である。この解を境界条件式に適用すれば、安定人口モデルは境界値 B(t) に関する再 生方程式 ∫ t β(a)`(a)B(t − a)da B(t) = G(t) + (2.7) 0 と同値であることがわかる。ただし、 ∫ G(t) := ∞ β(a + t) 0 `(a + t) p0 (a)da `(a) は初期人口から単位時間あたりに生まれる子ども数である。出生率の積分方程式モデル (2.7) はシャープと ロトカによって 1911 年に提案され、その漸近挙動を調べることで強エルゴード定理を示した。モデル (2.3) とその強エルゴード定理は人口学において安定人口モデル (理論)とよばれる。彼らの証明は不十分なもので あったが、後にフェラー [8] によって厳密に示された。ロトカはその後 1949 年のその死に至るまで、多くの 論文、著書のよってその結果を人口分析に応用して、近代人口学の基礎の基礎を築いた。1980 年代になって、 ウェブ [31] は、マッケンドリック方程式の初期値・境界値問題 (2.1) を可積分関数の空間上の抽象的なコー シー問題として扱って、漸近挙動に関する定理(強エルゴード定理)に新しい証明を与えた。ウェブの結果は 年齢構造をもつ非線形の個体群状態方程式を発展方程式として、関数解析的な枠組みで取り扱おうという試み の端緒となった。 例題 2.2 (非線形年齢依存人口モデル) 安定人口モデルは、いわゆる人口の指数関数的成長を表すマルサスモ デルの年齢構造化版であったが、マルサス的な成長は長期的には持続不可能である。外的な環境の変動を無視 したとしても、個体群成長それ自体が生存条件、環境条件を修正する要因になることを考慮せねばならない。 そのようなフィードバック効果を考慮した一般的な非線形人口モデルは、以下のように定式化される: ∂p(t, a) ∂p(t, a) =− − G(a, p(t, ·)) ∂t ∂a p(t, 0) = F (p(t, ·)) p(0, a) = p0 (a) 4 (2.8) ここで G は死亡過程、F は出生過程を表す非線形関数である。人口が年齢以外の内部構造パラメータをもつ 場合には、p(t, a) を年齢以外のパラメータに関する可積分関数のなす空間 L1 (Ω) に値をとるベクトル値関数、 G は状態空間 E = L1 (R+ ; L1 (Ω)) からその中への写像、F は E から L1 (Ω) への作用素とみなせば、(2.8) は 状態空間 E 上の半線形のコーシー問題とみなせる: dp(t) = Ap(t) + G(p), dt p(0) = p0 (2.9) ここで (Aφ)(a) = −dφ(a)/da であり、生成作用素 A の定義域は D(A) = {ψ ∈ E : ψ ∈ W 1,1 , φ(0) = F (φ)} となる。このとき作用素 A の作用は線形でも、その定義域 D(A) は非線形の境界条件を含んでおり、必ずし も稠密に定義されてもいないから古典的な Hille–Yosida 理論は適用できない。こうした無限次元力学系の半 群解を構成して定常解の線形化安定性や分岐を研究するために、必ずしも稠密な定義域をもたない生成作用素 に対して、解を線形半群の摂動として構成する一般化された定数変化法の公式に関心がもたれた。 1980 年代 から 90 年代にかけて、摂動論的な方法が様々に提案され、半群理論の発展に対するひとつの動機付けを提供 した ([32], [26], [3], [29])。 例題 2.3 (ペア形成モデル) 個体群におけるもうひとつの典型的な非線形性は、男女(雌雄)のペアリングで ある。たとえば、ヒト集団では、出産のためには何らかの意味での安定的なペア形成が必要であるし、近代社 会では一夫一婦制結婚制度が一般的に成立している。したがって、女性の出生力は男性パートナーの供給に依 存している。Fredrickson [9] は初めて以下のような年齢構造と両性のペア形成を考慮した偏微分方程式モデ ルを定式化した: ∫ (∂t + ∂a )pm (t, a) = −µm (a)pm (t, a) + ∫ (∂t + ∂b )pf (t, b) = −µf (b)pf (t, b) + ∫ ∞ pc (t, a, b)[σ(a, b) + µf (b)]db − ρ(t, a, b)db 0 0 ∫ ∞ ∞ pc (t, a, b)[σ(a, b) + µm (a)]da − ρ(t, a, b)da ∞ 0 0 (∂t + ∂a + ∂b )pc (t, a, b) = −(σ(a, b) + µm (a) + µf (b))pc (t, a, b) + ρ(t, a, b) ∫ ∞∫ ∞ pm (t, 0) = γ β(a, b)pc (t, a, b)dadb, 0 0 ∫ ∞∫ ∞ pf (t, 0) = (1 − γ) β(a, b)pc (t, a, b)dadb, 0 0 pc (t, 0, b) = pc (t, a, 0) = 0. (2.10) ここで pm (t, a) は時刻 t における a 歳の独身男子人口密度、pf (t, b) は時刻 t における b 歳の独身女子人口密 度、pc (t, a, b) は時刻 t における a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の密度、µm (a)(µf (b)) は a(b) 歳の男子(女子) の死亡力、σ(a, b) は a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の離婚率、β(a, b) は a 歳の男子と b 歳女子の夫婦の出生率、 γ は新生児における男児の割合、ρ(t, a, b) は単位時間あたり生成される男子 a 歳、女子 b 歳の夫婦の密度であ る。ρ(a, b) は結婚関数 (marriage function)Ψ(u, v)(a, b) によって以下のように与えられる: ρ(t, a, b) = Ψ(pm (t, ·), pf (t, ·))(a, b). (2.11) ここで結婚関数 Ψ(u, v)(a, b) は独身男子人口 u(a)、独身女子人口 v(b) から単位時間に発生する新郎 a 歳、新 婦 b 歳のペア密度を表す非線形関数であり、以下の条件(結婚関数の公理)をみたすものと考えられている: 1. (u, v) ≥ 0 であれば Ψ(u, v) ≥ 0, 2. Ψ(u, 0) = Ψ(0, v) = 0, 5 3. (u, v) ≤ (u0 , v 0 ) であれば ∫∞∫∞ 0 0 Ψ(u, v)(a, b)dadb ≤ ∫∞∫∞ 0 0 Ψ(u0 , v 0 )(a, b)dadb 4. k > 0 であれば Ψ(ku, kv) = kΨ(u, v) 5. a 6= c, b 6= c であれば ∂Ψ(u,v)(a,b) ∂u(c) ≤ 0, ∂Ψ(u,v)(a,b) ∂v(c) ≤0 ここで条件 1-3 は自明であろうが、条件 4(一次同次性の条件)は必ずしも必須のものではない。一次同次 性は単位人口あたりのペア形成頻度が人口スケールに独立になるという仮定を反映しており、大規模な人口に おける「出会いの可能性」が飽和することを意味している。Fredrickson のモデル (2.10) は例えば、出生、死 亡、離婚などのパラメータが年齢に依存しない場合は常微分方程式系に還元されて、その性質はよくわかって いる [10]。結婚モデル (2.10) は、さらにペアの持続時間を変数として導入することでよりリアルなモデルに なる。実際、ペアの解消率や出生率は年齢よりも結婚持続時間に強く依存しているからである。しかしいず れにせよ、年齢構造のあるペア形成モデルの数学的研究は 1990 年代に至るまでほとんどなにも進歩がなかっ た。現在でも解の存在定理や指数関数的成長軌道の存在などはわかっているが、それ以外の性質は未解明であ る ([14], [33], [16], [12])。 3 個体群の非線形相互作用:感染症流行の数理モデル 感染症の数理モデルは 20 世紀初頭のロス卿によるマラリア流行に関する閾値定理の発見や、ケルマックと マッケンドリックによる 1920 年代から 30 年代の一連の仕事によってその基礎が築かれた。1980 年代にエイ ズの世界的流行が明らかになった頃から、その進歩は著しい。それまで、スペイン風邪のようなA型インフル エンザの世界的流行やマラリアなどの熱帯・亜熱帯地域での感染症の脅威はよく知られていたが、一方で、天 然痘の根絶ににられるように、公衆衛生とワクチン等の発達によって早晩、感染症の制御に成功するであろう という楽観的な見通しがもたれていた。しかしながら、最も感染制御に関しては進んだ体制をもつ先進諸国に おいて、エイズの流行を阻止できずに多数の犠牲者をだしたことは関係者に非常な衝撃を与えた。現在でもエ イズの全世界的流行が続いており、ワクチン開発も成功していない。その後、SARS、エボラなどのような新 たな感染症が出現するとともに、結核やマラリアなどの古くからある感染症でも薬剤耐性の進化などによって 流行が再燃するようになってきている。ウィルスの進化は、感染症抑止を難しくしている最大の要因の一つで ある。近年では鳥インフルエンザの変異の危険性がたかまり、新型インフルエンザの出現による世界的流行 (パンデミック)の再来が危惧されるようになってきている。感染症の流行と制御は、実験室的観測には限界 があるから、数学的モデルによる研究は非常に重要である。また感染症数理モデルは体内におけるウィルス、 細胞、免疫系の相互作用を記述するためにも適しており、抗ウィルス剤などの投与計画を考えるための理論的 枠組みを提供してきている。以下でいくつかの典型的なトピックスを例として挙げよう: 例題 3.1 (Kermack–McKendrick モデル) ケルマックとマッケンドリックの最も有名な第一論文 [20] に おいて提起された感染症流行モデルは、局地的な封鎖人口における伝染病の急速かつ短期的な流行に関するモ デリングであった。この論文の含意は長い間必ずしも十分理解されなかったが、1970 年代末に至って数学的に 詳しく再検討されてようやくその全貌が明らかとなった。オリジナルのケルマック・マッケンドリックモデル は実は偏微分方程式で記述され、複数のヴァリエーションをもつ複雑なものであるが、以下では最も単純な場 合を考えよう。病気の流行期間が短いためホスト人口の出生、死亡等の人口動態は無視できると考えよう。こ れは人口学的な変動を無視できるようなタイムスケールを想定しているということに他ならない。S(t), I(t), R(t) をそれぞれ感受性人口 (susceptibles:感染する可能性のある人口)、感染人口 (infected/infectious:感 6 染していてかつ感染させる能力のある人口)、隔離された人口 (recovered/removed:病気からの回復による免 疫保持者ないし隔離者・死亡者)とする。このときケルマック–マッケンドリックの提起したモデルは、その 最も単純なケースにおいては、以下のような常微分方程式システムによって表される: dS(t) = −βS(t)I(t), dt dI(t) = βS(t)I(t) − γI(t), dt dR(t) = γI(t). dt (3.1) ここで β は感染率、γ は隔離率である。βI(t) は感染力 (force of infection) であり、単位時間あたり単位人口 当たりの感受性人口感染率を表す。一般にこのように人口を病気の状態に従って三つのコンパートメントに わけた感染症モデルを SIR モデルという。感染しても感染性のない状態 (latent period / exposed class) や 感染後症状の発症しない状態 (潜伏期間:incubation period) などを考慮する場合には、I− 状態はさらに分 割されて、4つの部分人口からなるモデル (SEIR モデル)を得る。免疫性の獲得が恒久的なものでなければ R → S という状態変化が可能となり、そうした場合は SIRS モデルなどと呼ばれる。 感染症流行モデルの解析の最初のステップは、ホストの人口に感染者が少数発生した場合に、流行(感染人 口の持続的増大)が発生する条件(侵入条件)を明らかにすることである。モデル (3.1) において初期の感受 性人口のサイズを S(0) とする。そこに少数の感染者が発生したとすると、流行初期においては感染人口の成 長は以下の線形化方程式で記述される: dI(t) = (βS(0) − γ)I(t). dt (3.2) したがって流行初期においては感染者人口は I(t) = I(0)e(βS(0)−γ)t というマルサス法則に従って増加する。 すなわち病気が集団に侵入可能となる条件はこのマルサス径数が正になる条件 βS(0) − γ > 0 にほかならず、 これは R0 = βS(0) >1 γ (3.3) と書き直せる。もしも R0 < 1 であれば、感染人口は自然に消滅する。このパラメータ R0 は基本再生産数 (basic reproduction number) と呼ばれる。βS(0) はサイズ S(0) の感受性人口集団において一人の初期感染 者が単位時間あたり生産する 2 次感染者数であり、1/γ は感染者の感染状態にある平均滞在時間であるから、 R0 は感受性人口集団に侵入した感染者が一人あたり生産する 2 次感染者の総数に他ならない。したがって 直観的にいえば、R0 > 1 であれば病気の流行が発生して感染者人口は初期には指数関数的に増大するが、 R0 < 1 であれば流行はおこらず感染者人口は自然に減衰すると考えられる。このようにパラメータの値に よって、解の定性的挙動が変化する現象を閾値現象 (threshold phenomena) とよぶ。 感染症の流行がモデル (3.1) で記述される場合には、最終的に初期の未感染人口のどのくらいの割合が最終 的に感染してしまうかが一意的に決定される点が重要である。感受性人口は単調に減少するから、その極限値 を S(∞) とおき、初期の感受性人口のなかで最終的に感染してしまう人口の割合を p=1− S(∞) S(0) とすれば、p は考えている感染症の「流行の強さ」を表していている。p は以下の最終規模方程式 (final size equation) をみたすことが証明できる: 1 − p = e−R0 p−ζ 7 (3.4) ただしここで、ζ := βI(0)/γ である。p は最終規模方程式 (3.4) の正の根として与えられるが、R0 が 1 を超 えると急激に大きくなるという特性がある(図 2.1)。現実には大規模なホスト集団における初期の感染人口の 相対的大きさはほとんどゼロであるから、ζ → 0 という極限を考えることで、R0 > 1 であれば、p は R0 か ら一意的に決定される。この場合、流行は感染者の消滅によって終息するが、感受性人口のうちで一定の割合 1 − p は必ず未感染で残存する。このような流行の特性は、感染力が感染人口規模に比例しているという仮定 に依存しているが、モデル (3.1) から導かれる流行曲線(dR/dt の曲線)はケルマック、マッケンドリックに よれば 20 世紀初頭のインドのペスト流行のデータを非常に良く再現している。このモデル (3.1) を、潜伏期 間や隔離などの効果をいれて拡張したモデルは、現在でも基本再生産数や流行初期の感染人口成長率を推定す る基礎となっている。 例題 3.2 (ワクチンによる根絶条件) 多くの感染症の場合、閾値条件 (3.3) は、感染症流行が一時的な突発 (outbreak) でおわらずに、長期的に人口に定着して風土病化する条件でもある。そうした長期的な感染症の 定着状態 (endemic state) は、出生、移民によって、あるいは罹患経験のある人口の免疫力が加齢による自然 減衰やウィルスの突然変異等によって失われたりすることによって、ホスト人口に新たな感受性人口が補充さ れる場合に出現する。モデル (3.1) に人口学的効果とワクチン接種の効果を導入してみよう。ワクチンを感受 性人口への流入人口に接種すると、接種された人口は免疫化されて回復人口へ移動すると想定すると、モデル (3.1) は以下のように書き換えられる: dS(t) = (1 − v)b − µS(t) − βS(t)I(t) dt dI(t) = βS(t)I(t) − (µ + γ)I(t) dt dR(t) = vb − µR(t) + γI(t) dt (3.5) ここで b はホスト人口の出生率であり、µ は死亡率である。v は新生児ないし感受性移民におけるワクチン接 種割合である。このとき感染者のいない定常状態では、S ∗ = (1 − v)b/µ となっているから、そのような感受 性人口への侵入した感染人口の増加は、線形化方程式 dI(t) = (βS ∗ − (µ + γ))I(t) dt (3.6) で記述される。したがって、v に依存する実効再生産数は Rv = (1 − v)b = (1 − v)R0 µ(µ + γ) (3.7) と計算される。そこで、システム (3.5) に関しては、Rv < 1 であれば感染人口は自然減衰して流行が消滅す るが、Rv > 1 であれば、常に感染者が存在するエンデミックな定常状態が大域的に安定になる。すなわち、 Rv < 1 が流行の根絶条件である。Rv < 1 という条件はワクチン接種率の条件として書き直せば v >1− 1 R0 (3.8) であるから、R0 が推定されれれば、流行を根絶するために必要なワクチン接種割合が推定できる。このモデ ルでは R0 は v = 0 の場合のエンデミックな平衡状態における感染人口割合の逆数に等しい。たとえば、麻疹 (measles) などでは基本再生産数は 10 以上になると推計されているから、根絶するためには 90 パーセント以 上のワクチン接種率が必要となる。根絶条件をクリアすることによって人口レヴェルで達成されるのが集団免 疫 (herd immunity) である。 8 ただし、モデル (3.5) が表現するような生涯免疫を誘導する典型的な感染症である麻疹や水疱瘡などでは、 流行発生データに周期性が観測されるが、(3.5) はエンデミックな定常解の近傍で減衰振動を示すが、周期解 をもたない。周期的な流行現象を説明するためには、パラメータの周期性やホストの年齢構造、感染過程にお ける時間遅れなどの効果を考慮に入れる必要がある。年齢構造の入った SIR モデルに関しては [13], [16] 等を 参照していただきたい。 例題 3.3 (再感染と劣臨界流行) もし、ワクチンの接種の効果が自然減衰して必ずしも永続的な免疫を誘導し ないか、そもそも部分的な免疫しか誘導しない場合、あるいはウィルス変異によって既存の免疫が無効化され るという状況では、ワクチンによるコントロールが常に可能であるとは限らない。たとえば A 型インフルエ ンザでは、抗原ドリフトによって既存の免疫は絶えず減衰しており、それが再帰的流行の要因として考えられ る [15]。簡単のため以下のようなシステムを考えてみよう: dS(t) = b(1 − v) − µS(t) − βS(t)I(t) dt dI(t) = −(µ + γ)I(t) + β(S(t) + σR(t))I(t) dt dR(t) = bv − µR(t) + γI(t) − βσR(t)I(t) dt (3.9) ここで回復者ないしワクチン接種者は σβ という感染率で再感染する。すなわち σ ≥ 0 は再感染率の相対的な 強さを示す尺度である。このとき感染者のない定常状態は (S ∗ , I ∗ , R∗ ) = ( (1 − v)b bv , 0, µ µ ) (3.10) であるから、実効再生産数をワクチンの接種割合 v の関数として書けば、 β R(v) = µ+γ ( (1 − v)b σbv + µ µ ) (3.11) である。R(v) は単調減少関数であり、R(0) = R0 であるから R(1) < 1 < R0 である場合は v > v ∗ とすれ ばワクチンによる流行抑止が可能である。ただし v ∗ は R(v ∗ ) = 1、v ∗ ∈ (0, 1) となる根である。一方、もし R(1) > 1 であれば、言い換えれば、R0 > 1/σ であれば、乳幼児に対する一回の集団接種によっては根絶はで きないことになる。 再感染のないモデルでは R0 ≤ 1 であれば、また部分的免疫化にあるモデルでは根絶条件が満たされれば、 感染のない平衡状態は大域安定であるから、どのような侵入も起こりえない。それは流行途中の実効再生産数 Rt = βS(t) µ+γ (3.12) が常に基本再生産数よりも小さいからである。しかしながら、マラリアやシャガス病などのように感染を媒介 する生物(中間媒介者:ベクター)が存在する場合や、HIV/AIDS のように長大な潜伏期の故にホストの人 口構造との相互作用が無視できない場合においては、感染による超過死亡率を考慮すると実効再生産数が基本 再生産数を上回って、R0 < 1 であっても流行が発生する場合がある [17] [18]。そのような場合は、正の定常 解が R0 = 1 を境に劣臨界(後退)分岐 (subcritical/backward bifurcation) を起こしている。実は再感染モ デル (3.9) においても、再感染率が感受性の感染率よりも大きく、σ > 1 + (µ/γ) となる場合には後退分岐が 起きる。ただしそのような状況はあまり現実的ではないであろう。 9 劣臨界分岐が起きる場合、R0 < 1 であれば、感染のないホスト人口は局所安定なので、少数の感染者によ る初期侵入は防げるが、既にエンデミックとなった感染症は R0 を1以下にコントロールしても根絶するには 不十分である。あるいは、大量の感染者が一度に出現すれば、R0 < 1 でも、とつぜん大規模で安定なエンデ ミック状態を導いてしまう可能性がある。こうした分岐メカニズムは、ある種の感染症の制圧が困難である根 拠であるかもしれない。 例題 3.4 (HIV/AIDS の流行: リスクベースモデル) 上記の例で見たように、古典的な感染症流行モデルに おいては、初期の感染人口の増加は指数関数的であると予測される。このことは日本のエイズ流行データなど では当てはまるが、アメリカでは、累積エイズ患者数が時間の3乗に比例して増加するという驚くべき結果が 現れた [4]。初期の感染人口増加が、指数関数的増加法則からはずれる要因は、ホスト人口が感染リスクに関 して非常に異質な部分人口からなっていて、リスクの高い部分人口から流行がはじまって、順次よりローリス クのグループへと拡大していったためであり、べき乗の増加法則はリスク別の人口がべき乗の分布法則に従っ ている結果であると考えられる。リスクベースモデル (risk based model) は、このような HIV 流行の特性を 反映させるために開発された。ここではリスク分布の基本再生産数への影響を見てみよう。 いま連続的な感染リスクパラメータを ζ 、その状態空間を Ω = [0, ∞) として、時刻 t のリスク別の感染人 口密度を I(t, ζ) としよう。このときリスクは単位時間あたりの性的パートナー数であると想定すれば、定常 的な感受性人口密度 S(ζ) に対して、初期流行における感染人口の線形ダイナミクスとして以下のモデルを考 えることができる: ∂I(t, ζ) = λ(t)ζS(ζ) − (µ + γ)I(t, ζ) ∂t (3.13) ここで、S(ζ) は感染者のない定常状態での感受性人口密度分布、µ は自然死亡率、γ は隔離率であり、感染力 λ(t) は以下のように与えられる: ∫∞ ζI(t, ζ)dζ λ(t) = β ∫0 ∞ ζS(ζ)dζ 0 (3.14) ここで、β は接触あたりの感染率であり、分数の部分はパートナーが感染者である確率に相当している。この モデルは初期時点を −∞ として常微分方程式の定数変化法の公式を用いれば、以下のように書き直せる: ∫ ∫ e−(µ+γ)(t−τ ) Λ(S)(ζ) βηI(τ, η)dηdτ −∞ Ω ∫ ∞∫ = Λ(S)(ζ) e−(µ+γ)τ βηI(t − τ, η)dηdτ t I(t, ζ) = 0 (3.15) Ω ここで、 ζS(ζ) Λ(S)(ζ) := ∫ ∞ ζS(ζ)dζ 0 である。(3.15) は無限次元の積分方程式であるが、I(t, ζ) = ezt Λ(S)(ζ) という関数を代入してみると、 ∫ ∞ ∫ 1= 0 e−(µ+γ)τ βηe−zτ Λ(S)(η)dηdτ (3.16) Ω という成長率 z に関する方程式を得る。(3.16) の右辺を f (z) と書けば、実数 z が −∞ から +∞ へ動くとき、 f (z) は +∞ から 0 まで単調減少するから、f (z) = 1 を満たす実根 z = z0 は唯一つ存在して、f (0) < 1 であ れば、z0 < 0 であり、f (0) > 1 であれば、z0 > 0 となる。このようにして得られる特殊解 ez0 t Λ(S)(ζ) によっ 10 て、I(t, ζ) の t → ∞ での挙動は記述されることが証明できる。そこで、流行が起きる閾値条件は f (0) > 1 で あり、 ∫ ∞ ∫ −(µ+γ)τ f (0) = R0 = e 0 Ω β βηΛ(S)(η)dηdτ = µ+γ ∫ ηΛ(S)(η)dη (3.17) Ω が基本再生産数になる。そこでいま、平均パートナー数を m、その分散を σ 2 とすれば、 ∫ ∞ S(ζ) ζ∫∞ dζ S(η)dη 0 0 ∫ ∞ ∫ ∞ S(ζ) S(ζ) (ζ − m)2 ∫ ∞ dζ = ζ2 ∫ ∞ dζ − m2 σ2 = S(η)dη S(η)dη 0 0 0 0 m= であり、一方、 ∫∞ 2 ∫∞ ζ S(ζ)dζ (m2 + σ 2 ) 0 S(ζ)dζ 0 ∫∞ ζΛ(S)(ζ)dζ = ∫ ∞ = ζS(ζ)dζ ζS(ζ)dζ Ω 0 0 ∫ であるから、以下を得る: [ ( σ )2 ] βm R0 = 1+ µ+γ m (3.18) この結果 (3.18) は感染リスクの分散(個体の異質性)が基本再生産数に対してもつ劇的な効果を表してい る。もしも人口行動が同質的でパートナー数の分散がゼロであれば、R0 = βm/(µ + γ) であるが、リスク分 布がべき法則に従う場合 (ケールフリーネットワーク)には、べき指数に応じて分散が発散する場合がある。 例えば、性的パートナー数をリスクパラメータと考えると、合衆国のデータでは平均以上のパートナー数を もつ人の分布はパートナー数の3乗に比例して減少している [4]。そこで、S(ζ) ∝ ζ 3 とすれば、a, b をべき 法則に従うリスクの下限、上限とすれば、 ∫b a ζ 2 S(ζ)dζ ∝ log b a となる。上限が +∞ か下限が 0 に近づけば、 R0 = ∞ となって、感染症は常に侵入可能となる。実際にはホスト集団は有限であるから発散はしないが、そ の分散のおかげで R0 は非常に大きくなる。すなわち、大多数を占める平均以下のアクティビティをもつ人々 から少数の非常に性的にアクティブなコアグループに至る高い異質性によって基本再生産数は非常に大きくな り、性的感染症の侵入に対して非常に脆弱な構造を持っていると考えられる [24]。このようなネットワーク構 造がある場合、個体の平均的行動だけをみて、同質的な人口を前提にモデル化をおこなうと実態と大きく乖離 してしまう危険がある。突出した高い感染力をもつ感染者(スーパースプレッダー)の存在が感染過程におい て重要であることは、SARS の流行において再認識された。上記のようなスケールフリー特性をもった感染 ネットワーク構造は、コンピュータウィルスの拡散などでも見られる現象であり、近年その研究が急速に発展 してきている。 4 研究ガイド 個体群の数学モデル全般に関しては、数学的予備知識も含めて Brauer and Castillo-Chávez [2], Thieme [30] 等が役に立つ。標準的な数理人口論に関する結果は主に Lotka [23], Keyfitz [21], [22], Pollard [27], Smith and Keyfitz [28] などの著作にまとめられている。稲葉 [19] は最近の数量的な人口学の展望を与えてい る。非線形の構造化個体群ダイナミクス全般に関してはに関しては Metz and Diekmann [26] が古典である。 年齢依存モデルに関しては Iannelli [11], [12], Webb [32] が詳しい。感染症数理モデルに関しては Anderson and May [1], Diekmann and Heesterbeek [6] が代表的なテキストである。拙著 [16] では、前半で人口学的モ デルを紹介し、後半では感染症モデルを扱っている。 11 参考文献 [1] R. 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