マイコンカーラリーのための車両開発 A Development of Vehicle for the

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マイコンカーラリーのための車両開発
A Vehicle Development of the Micro Computer Car Rally
EC08 木村 匡宏
指導教員 冨田 雅史 准教授
1.はじめに
現在、ロボット技術が身近となり多くのロボット大
会が開催されるようになった。本研究で対象とする
マイコンラリー大会[1]は規定されたコースをいかに
速く走れるかを競う大会である。本論文では大会
参加のために開発した既存の車両を基に、より性
能向上を図る上で、必要となる要素について検討
する。さらに、特性分析を行ない、より性能の高い
車両を科学的に開発出来る環境を与える。
2.概要
図1に研究対象とす
る車両の外観を示す。
本論文では、後輪駆動
で開発を行っている。こ
図 1 車両の外観
の車両は4輪構造で後
(新ゆきかぜ)
輪駆動、車体重量980
[g]、前後重量バランス前47:後53である。車両が
走行するコースにはコーナーやクランク、レーンチ
ェンジがあり、これら障害を高速に通過することが
車両に要求される性能である。
3.車両の諸特性と検討
3.1車両性能の検討
車両が障害を走行する際、舵を切ると同時に制
動もしくは加速を行う。従って、車両に必要となる
性能は、良好なステアリング特性と駆動力および制
動力である[2]。これらの性能は車体と地面との間に
介在するタイヤのグリップ力が重要な要素であると
いえる。以下のことから、タイヤのグリップ力を中心
として各種車両の性能を表すデータを検討する。
3.2タイヤ材料の検討
一般的にゴムの摩擦係数は 1 である。対象とする
車両はシリコンシートをゴムタイヤに貼り付けること
で摩擦係数を大きくしている。図 2 にシリコン付タイ
ヤの摩擦係数を求めた実験結果を示す。横軸が
鉛直方向に加えた 荷重 N、縦軸が水平方向に加
えた力 F である。このグラフの傾きから、シリコン付
タイヤお摩擦係数は 1.4 であることがわかる。また、
N=0[N]において F=0.3334[N]という値になっている
が、若干の粘
着性があるこ
とも損失原因
となるため、最
高速度が下が
図2 シリコンタイヤの摩擦
ることになりマ
シンの性能低下につながるデメリットも併せ持つ。
F〔N〕
シリコ ン シー トの タイヤ
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
シ リ コ ン タイ ヤ の
摩 擦 係 数 μ
y = 1.358x + 0.3334
0
0.5
1
1.5
N〔N〕
2
2.5
3
3.3駆動力の検討
対象車両の条件における加速度と駆動輪加重
の関係についてシミュレーションした結果を図3に
示す。C 線が車両の荷重変化を示す特性である。
C 線を下回る荷重であれば車両はスリップ(空転)
することなく加速することが出来る。これらの特性か
ら、タイヤの摩擦係数と最大加速度および駆動輪
荷重の関係が得られる。その結果を表1に示す。
荷重変化による加速度限界
3500
駆
動
輪
荷
重
m
(a)
3000
2500
47:53の駆動輪荷重
(b)
(c)
2000
1500
摩擦係数1のとき必要
な駆動力
摩擦係数1.4のとき必
要な駆動力
[g] 1000
500
0
0
1
2
3
4
加速度α[G]
図3 加速度における駆動輪荷重の変化
表1 摩擦係数における加速度と荷重の変化
摩擦係数 μ
最大加速度 α[G]
駆動輪荷重 m[g]
1.0
0.9
886.3
1.4
2.0
1373.3
4.スリップ角の検討
図4 スリップ角の測定
表2 スリップ角の検討表
スリップ角
DUTY 比
回転半径
r[cm]
[°]
[%]
30
26.7
2.33
60
28.3
2.73
90
29.0
3.80
100
30.0
5.22
図 4 に舵角に対する走行ラインのずれであるスリ
ップ角の実験の様子を示す。舵角 43[°]で走行し、
任意の一定速度となるようにモーター電圧のデュ
ーティー比の制御を行った。表 2 に実験で得られ
た速度に対するスリップ角の関係を示す。車両の
旋回時に外乱となるスリップ角を考慮することは精
度の高い旋回制御を行うために重要である。
5.今後の発展
本研究では、車両の特性を実測とシミュレーショ
ンにより定量的に得る方法を構築した。これらの特
性について分析を行なうことで、より性能の高い車
両開発を効率的に実施できる環境が整ったといえ
る。今後はこの環境を活かした車両開発を実行し
てより高い大会結果を得たいと考える。
文 献
[1]Micom Car Rally ホームページ http://www.mcr.gr.jp/
[2]宇野 高明, “車両運動性能とシャシーメカニズム,” グラン
プリ出版, pp53-74, (Oct.2001)