“来日公演プログラムの聴きどころ” これほどまでに甘美なミサ曲が 他にあるだろうか。 ジョン・タヴァナー : 王のキリエ (ルロイ・キリエ) タヴァナー作品集 : ルロイ・キリエ、 「西風のミサ曲」 *「ミサ・グロリア・ティビ・トリニタス」(*旧録音 ) CDGIM 004 この世でもっとも美しい「キリエ」 と言われます。 たおや かさの中に漂う浮揚感は、 まさに‘天上の声’という形容が ぴったりです。 タリス・ スコラーズだからこそ表現し得る音 宇宙が展開します。 この曲だけでもタリスの生演奏を聴く 価値があるでしょう。 ジョン・タヴァナー : 「西風のミサ曲」 「西風のミサ曲」 タヴァナー、タイ、シェパード、3人の作曲家による 「西風のミサ曲」を収録。 CDGIM 027 春の訪れとともに、 恋人を求めあえぐ官能的な歌詞による イギリス民謡ふうの旋律 「西風の歌」 が原曲です ( 一説には、 もと歌を作ったのは英国王ヘンリー八世とも)。 作曲された 当時の慣習にしたがって 「グローリア」 から歌い始められま す。 タリス・スコラーズの歌唱は、 悠然とした力強さにあふ © Eric Richmond れています。 ソプラノとテノールのデュオはとりわけ甘美な 味わい。 音程の跳躍をはじめソリスティックな技巧が必要 とされる作品であり、 独唱者としての力量も大いに愉しめ るミサ曲です。 一人一人が醸し出す清澄な空気感はタリス・ スコラーズの独擅場でしょう。 「クレド」 はソプラノの美しさが際立っていますが、 重唱 と独唱が絡み合いながら微妙な色彩感を生み出します。 そ の色合いは極上 ! ルネサンス時代にフレスコ画が描かれた と き 瞬間が目に浮かぶようです。 「サンクトゥス」。 ここでもソプラノのけなげな美しさが胸 に迫ります。 ソプラノとテノールの二重唱はことのほか美し く、 後半にもソプラノとアルト、 テノールとバスの二重唱な ど聴きどころが満載です。 全体を支配する複雑なリズムは、 造形美をも感じさせます。 「アニュス・デイ」 は、 ソプラノのさらなるトレブル ( 高音) が聴きものです。 ソプラノとテノールのデュオやソプラノ独 唱のシーンは、 ミサ曲でありながら官能すら漂わせます。 弛緩することのない見事な歌唱が続きます。 「西風のミサ曲」 がタリス・スコラーズの過去の来日公演で 取り上げられたのは1997 年 6月でした。 それもツアー 中 1 日 のみ。 今回、 18年ぶりに歌われます。 また、 東京公演で 「ミゼレーレ」 が取り上げられるのも 2009 年以来 6 年ぶりです。 この機会にどうぞお聴き逃しなく。 現代にも息づく アレグリの「ミゼレーレ」 この曲はシスティーナ礼拝堂の門外不出の秘曲として歌い継がれてきました。 14 歳のモーツァルトがこ の曲を聴いた後に記憶のみで正確に楽譜に記したという逸話はとても有名です。 そして、タリス ・スコラー ズがこの曲を十八番としていることも。 1994年、 世紀の大修復と言われたシスティーナ礼拝堂の壁画、 天 ? ちょっ と興味深い話 ?? 井画の修復完了を記念して礼拝堂で行なわれたコンサ ート(右写 真) では、 付属の合唱団があるにもかかわらず、 タリス・ スコラー ズが 「ミゼレーレ」 を演奏しています。 そのクオリティの高い 歌唱は他のグル ープを寄せ付けず、 C D は発売当時15 万セット あるコンサートホールの事業担当者 ものセールスを記録し、 今ではタリス盤の存在が大きくて C D から聞いた話をご紹介します。タリス・ が出せない ! とまで言われています。 スコラーズの公演終了後、お客さまが また、 アレグリの 「ミゼレーレ」 は、 あのあまりにも有名な 会場を出られたあとにホール係員が場 ミュージカル 「サウンド ・ オブ・ミュージック」 の音楽と関係があ 内チェックをするのですが、担当者い るのをご存知でしょうか。 日本でもジュリー ・ アンドリュース わく「タリスの公演後は、ゴミひとつ 主演の映画が大ヒットしましたが、 作曲をしたリチャード ・ ロ 落ちていない !? 」というのです。実は ジャースは、 「映画の冒頭、 ジュリー ・ アンドリュース演じるマ この話、業界では以前からけっこう有 リアが、 山から降りて修道院に帰ってくるシーン。 教会の中で 名な のです。通常、チラシやチケット は聖歌隊による厳かで美しい讃美歌が歌われている。 実はこの の 半券な ど が 必ず椅子の下などに捨 音楽は、イタリア ・ ルネサンス期の名曲、アレグリの“ミゼレーレ” てられているものなのですが‥。 をベースにした」 と自ら語っています。 よ~く聴き比べてみてください。 確かに、 なるほど ! と タリスの 公 演 に来てくださるお客 様は、マナーがスゴ∼く良いのだそう です。 思われるはずです。 ミュージカルの話をもう一つ。 レナード ・ バーンスタインが作曲したミュー ジカル 「ウエスト・ サイド ・ストーリー」 の中の有名曲 “マリア” のイントロ部分も、 実は 「ミゼレー レ」 をイメージして作られたとか‥‥。 いやはや、 ブロードウェイの著名なミュージカルにも、 ルネサンスの秘曲はひそかに息づいているようです。 企画・招聘: http://www.allegromusic.co.jp/
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