線形代数とは 線形代数は、理系なら大学1回生で必ず学習する科目の1つである。さっそく、線形代数とは何か を説明すると、線形代数とは「ベクトル関数」のうち、「線形性」をもつものだけを扱う数学である。 ここではまず、「ベクトル関数」と「線形性」とはそれぞれ何かということについて解説しよう。 ベクトル関数 これまでに習った関数は、y= f0x1 のような、数を数に写す関数であった。ベクトル関数とは、こ れを拡張した、ベクトルをベクトルに写す関数 y =f0x1 である。具体的にどのようなものがあるか ⾒てみよう。 [具体例 ] x = x 89 y とする。 f0x1 = たとえば、 x = 1 89 3 x 2+ y 2 8 xy 9 、g0x1 = 8 x + 2y 9 2x + 3y というベクトルは、f0x1によって、y = 、h0x1 = 1 2 +3 2 8 1・3 8 sin 0 x +y 1 cos 0 x - y 1 10 9 89 = 3 9 ・・・など。 にうつることになる。 上の例では2次元ベクトルの関数のみを扱ったが、3次元ベクトルを3次元ベクトルに写すベクト ル関数も同様に作ることができる。しかしここでは話が複雑になるのをさけるために、2次元ベクト ルの関数だけを考えていくことにする。(3次元以上のベクトル関数については、大学の線形代数を 参照して下さい。) 線形性 上でベクトル関数について説明したが、⾒ればわかるように、「これまでの」関数y = f0x 1 よりも 事情は複雑である。(成分が2つあるため。)そこで思い切って、考察の対象を、次の形をしたもの に限ってしまう。 f0x1 = 8 ax +by cx+ dy 9 (a,b,c,dは定数) …(*) 要するに、成分が1次式のものだけを扱おうということである。上に挙げた具体例の中では、g0x1だ けがこの形でかかれている。 v このような特殊なものだけしか扱わないことに、不満と不安を覚えるかもしれない。もちろん、 この形で表わせないベクトル関数の方が多い。しかし数学と物理学の長い歴史の中で結局、この形の ベクトル関数についての理論を整備すれば、十分役に立つということがわかってきたのである。ただ その歴史は複雑であり、簡単に解説できることではない。つまり、役に立つ理由が説明しにくい。こ のあたりが線形代数を学ぶ動機の難しさの1つである。線形代数の歴史については、「数学史」の記 事を参照して下さい。 さて、重要なのは、次の定理が成り⽴つということである。 f0x1 が (*) の形でかかれる。 C 任意の x 1、x 2 と任意の実数 s,t について、f0sx + ty1= sf0x 1+tf 0y1 が成り⽴つ。 -1- とても大事な定理なので絶対に覚えておいてほしい。f0x1 が線形性をもつとは、この定理の後者の 命題「任意の x 1、x 2 と任意の実数 s,t について、f0sx + ty1= sf0x 1+tf 0y1 」が成り⽴つことなので る。線形性をもつベクトル関数のことを、1次変換という。次回以降は、この1次変換およびそれを 簡潔に表現する方法である⾏列が主役になる。定理の証明の概略を書いておこう。 "(E)実際に代入することにより確かめられる。 (D)もし、f0x1の成分に1次式以外の項が含まれていると、その項のせいで線形性が成り ⽴たなくなる。 ■ つづく -2-
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