代数学序論演習(担当:酒井)

代数学序論演習(担当:酒井)
2009年12月21日配布
記号の説明など
• 集合 R は和 + と積 · の 2 の演算が定義され,次の 3 つの条件を満たすとき環という.
(1) R は和 + に関して可換群になる.和 + に関する単位元を R の零元と呼び,0 で表す.
(2) R は積 · に関して結合法則を満たす.つまり,任意の a, b, c ∈ R について次が成り立つ.
a · (b · c) = (a · b) · c
(3) 任意の a, b, c ∈ R について次の分配法則を満たす.
a · (b + c) = a · b + a · c
(a + b) · c = a · c + b · c
さらに,環 R は積 · に関して交換則を満たすとき可換環と呼ばれる.
• 体は環である.Z は体ではないが環になり,特に整数環と呼ばれる.
• 環は積に関する単位元をもつとは限らない.
• R は単位元をもつ環とし,その単位元を 1 と表す.R の元 a は積に関する逆元が存在すると
き,すなわち a · a−1 = a−1 · a = 1 を満たす a−1 ∈ R が存在するとき,単元または正則元と
呼ばれる.
• 環 R において,ab = 0, b ̸= 0 であるとき,a ∈ R を左零因子といい,ab = 0, a ̸= 0 である
とき b ∈ R を右零因子という.両方を合わせて R の零因子という.単位元をもち 0 以外に零
因子をもたない可換環を整域という.
演習問題
(11-1) Z[i] := {a + bi | a, b ∈ Z} は整域になることを示せ.Z[i] はガウスの整数環と呼ばれる.
(11-2) 環 R の元を成分とする n 次正方行列の全体を Mn (R) と表す.Mn (R) は行列の和と積によっ
て環になることを示せ.Mn (R) を R 上の n 次全行列環と呼ぶ.
Z 上の n 次全行列環 Mn (Z) は整域になるか?
(11-3) 環 R の元を係数とする多項式全体の集合を R[X] と表す.R[X] は多項式の和と積によって
環となることを示せ.R[X] を R 上の多項式環と呼ぶ.
√
√
(11-4) Z[ −2] は整域になることを示せ.また,Z[ −2] の正則元を全て求めよ.
(11-5) R の閉区間 [a, b] で定義された実数値関数全体の集合を R とする.R は関数の和と積によっ
て単位元をもつ可換環になることを示せ.
(11-6) 体は整域になることを示せ.
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