2.パターン ①歴史は繰り返す 下の二つのグラフを見てください(図2−1

2.パターン
①歴史は繰り返す
下の二つのグラフを見てください(図2−1)。一見これら二つのグラフは同じ形に見
えると思いませんか。
図2−1
ところが、左は87年3月から87年9月までの半年間のニューヨーク・ダウの日
足のチャート(一目均衡表というチャート)。右は97年3月から97年9月までの同
じく半年間のニューヨーク・ダウの日足チャートです。
この二つのチャートはこの後どのように動いたと思いますか。
1ヵ月後を見てみましょう(図2−2)。
図2−2
実は同じように大きく下落しています。右側の97年の方は87年のと比べて下落幅
が小さいようにも見えますが、幅にしてみれば97年の方が下落幅は大きいのです。
何故なら、87 年のニューヨーク・ダウは 2000 ドル台なのに対して、97 年のニューヨ
ーク・ダウは 8000 ドル台で推移していたのです。つまり、値段の水準が違うので 87
年の方が大きな下落に見えるのです。
『歴史は繰り返す』とよく言いますがこのチャートを見る限り10年経って歴史は繰
り返されたのです。
余談になりますが、なぜ歴史は繰り返すのでしょうか?
私見ではあるのですが、「知性は本能を超えられない」と考えています。どんなに文明
が発達しても古より人間の欲望だけは変わらないのです。ですから、人間に欲望があ
る限り、程度の差こそあれ歴史は繰り返されてしまう、と考えています。
②パターンの形成(三尊天井)
チャートの世界にも上げ下げの歴史を繰り返すことによって、
『このパターンになれば
次ぎにこうなるであろう』というパターンが出来あがってきます。前述したニューヨ
ークのグラフのように「あの形になるとその多くが株価を大きく下げる」というので
あれば次第にその形は下落パターンとして確立されていくわけです。
ここではそういう過去からの歴史の中で確立されてきた代表的なパターンをいくつか
紹介したいと思います。まずは図2-3を見てください。これは82年11月からの日
経平均の月足です。
図2−3
36,000
31,000
26,000
21,000
16,000
11,000
6,000
82/11
85/11
88/11
91/11
94/11
97/11
00/11
82年の11月というのはそれまでの低迷相場から日本を代表するハイテク企業を
中心にいよいよ日経平均 10000 円突破を目指し、ひいては 20 世紀最後の大相場のスタ
ートとなった月なのです。その後 87 年のブラック・マンデー、89 年の 38915 円の大天
井と向かっていきます。
ちなみに、テクニカル分析の世界ではよく株価は、上げ・下げ・上げ・下げ・上げと
上昇3回、下落(調整)2回で一つの大きな動きを出すといわれています(図2−4)。
36,000
31,000
26,000
21,000
16,000
11,000
6,000
82/11
85/11
88/11
91/11
94/11
97/11
00/11
図2−4
換言しますと株の世界にも、ホップ・ステップ・ジャンプがあるのです(この考え方
の基本となるのはエリオット波動といわれています)。89 年の大天井の後は 90 年の 10
月に瞬間 20,000 円を割ったものの 91 年 3 月に戻り天井をつけにいきます。その水準
は 27100 円です。ここでそれらの動きに合わせて線を引いてみます(図2−5)。
36,000
31,000
26,000
21,000
16,000
11,000
6,000
82/11
85/11
88/11
91/11
94/11
97/11
00/11
(図2−5)
実はこの図2−5の形を“三尊天井”と言って典型的な天井を打った場合に出るパタ
ーンと呼んでいます。ちなみに、三尊とは真中にお釈迦様その左右にそれぞれ普賢(ふ
げん)、文殊(もんじゅ)のことをいいます。
海外ではこのパターンのことを“ヘッド・アンド・ショルダー”言っています。つま
り真中に頭、両脇が肩に見立ててこのように呼んでいます。もちろん、意味するとこ
ろは同じように典型的な天井のパターンのことです。
三尊天井
文殊
お釈迦様
普賢
逆に、底を打った時にでるパターンとして“逆三尊”というのがあるのですが、どう
いう形かというとご想像できていると思いますが、単に“三尊”の形を逆さまにすれ
ばよいのです。
逆三尊
また、三尊天井の場合は 3 回高値をつけた後に
下落をして形成されるのですが、3 回ではなくて
2 回で天井をつける時もあります。
これを「ダブル・トップ」と呼んでいます。
また、三尊天井に逆三尊があったように、
ダブルトップにもダブル底といわれる
底を形成する形があります。
そして、この 4 パターンにおいて
その形が完成したと考えられるのは
破線のポイントをそれぞれ値段が
超えたときです。
ということは、この破線を越えた瞬間
売りでも買いでも動きが活発になることが考えられます。
<例>
③パターンの形成(ペナント、トライアングル)
「もちあい」という言葉があります。一定の値幅の間を行ったり来たりしている状態の
ことをいいます。株式というものは余程のことがない限り、長期間(かなりの期間)
に亘って一定のレンジ間で推移するということは考えにくいものです。いずれ、上昇
ないし下落があって新たな株価の位置を形成するものです。火山の噴火の前に頻繁に
微震動が続いた後に大きな爆発があったり、緊迫した投手戦やテニスのラリーの後に
ちょっとしたきっかけからどちらかのワンサイド・ゲームになったりするのに似てい
ます。このように、どちらかのもちあいから離れて株式が上昇ないしは下降する前に
エネルギーが溜まっていく時に形成されるパターンをここでは勉強していきましょう。
イ.トライアングル
図2−6を見てください。太い線で囲まれた部分です。通常、一定の幅で推移してい
るうちの上値を結んで引かれている線(a 線)を抵抗(レジスタンス・ライン)線、下
値を結んで引いてある線(b 線)を支持線(サポート・ライン)と呼んでいます。
a線
図2−6
b線
ここで、レジスタンス・ライン、サポート・ラインの説明をしておきましょう。
抵抗線(レジスタンス・ライン)というのは株価の上値を結んで線を引きます。今ま
でと同じように株価が動くのであれば株価が上昇してもこの線の周辺でその上昇は止
まるであろうと予想されるわけです。もし、この線を越えて株価が上昇するのであれ
ば今までの流れ(トレンド)とは違ったエネルギーが必要とされ、抵抗線を越えた場
合には相場は新たな展開局面に入ったと判断されます。
また、支持線(サポート・ライン)というのは株価の下値を結んで線を引きます。解
釈・考え方は抵抗線の逆で、今までの株価の動きが続くのであれば株価が下落してき
てもその線の周辺で下落は止まるであろうと考え、その線を下に抜ければ新たな下落
局面に入ったと考えるのです。
これらの線(簡単に引けるでしょ!)については意外に多くの投資家が気にしている
(気を配っている=気配)ので線を越えて上昇、線を抜けて下落したりするときに「い
よいよ大きく上昇だ」とか「もうだめだ」という意識が働いてその方向に拍車がかか
ることがよく見受けられます。
さて、話をペナントに戻しましょう。トライアングルとは今説明しました抵抗線と支
持線を引いた時に形成される形が三角形の形をしているところから名前がついている
のです。始めのうち開きのあった二つの線も徐々にその幅が縮まってきて、典型的な
ところでは前章で勉強しました同時線が現れるようになってくるのです。つまり、尖
っている先に向かうにしたがってエネルギーが溜まっていく状態になり、変化の兆し
を表す同時線が出てきたりするのです。他の教科書を見れば,これらのパターンが形成
される形、位置等によって“上昇型”とか“下降型”と書いてありますが、上昇型、
下降型と厳格に区別するのではなく、これらのパターンはいずれどちらかの方向に動
くのであろうと考え、抵抗線ないしは支持線をブレイクして(超えて)からその方向
についていくということでも遅くはないと考えています
ロ.ペナント
ペナントは前項で説明したペナントの考え方は同じです。形が若干違うだけなのです。
下図を見てください。これらがトライアングルのパターンです。いずれどちらかに動
くのでしょうが、動き始めてからついていっても遅くはないと考えています。