ユニバーサル園芸について ∼農業高校におけるその取組と発信∼ 農業・水産部会 Ⅰ はじめに 1 「ユニバーサルデザイン」とは? 現在、少子高齢化・国際化が進む中で、すべての人々が暮らしやすい地域にするために、静 岡県は「ユニバーサルデザイン」の実践を推奨している。 「バリアフリー」の考え方は、障害の ある方や、高齢者などの生活に不便な障害を取り除こうという考え方から生まれたものだが、 「ユニバーサルデザイン」は、人間の持つ様々な違いを超えて、すべての人が利用しやすいよ うにデザイン(構想、計画、設計)していこうとする考え方である。身近なところで例を挙げ れば、建物の自動ドアなどは代表的な「ユニバーサルデザイン」だといえるし、交通機関でも 低床式バスはみんなが乗りやすいようにデザインされたものである。また、日用品でもシャン プー容器には側面に凹凸をつけて、洗髪する際にリンス容器と区別できるようにしてあったり、 歯磨き粉容器のキャップは、片手で開閉できるように工夫がされている。 このような考え方や取組は、まちづくりやものづくりを進めるときに大切なことであり、静 岡県では「感性豊かな人々が様々な分野で活躍し、住む人も訪れる人も快適と感じる『快適空 間静岡の創造』」を目標として掲げ、その実現を目指している。この「ユニバーサルデザイン」 の考え方が浸透するためには、日常生活の中で互いに相手を尊重する意識が大切であり、静岡 県では「まちづくり、ものづくり」の視点に「人間の特性を互いに理解して、互いに思いやる 心を持つ人づくり」を加え、県全体で取り組む重点事項としている。 学校教育の中でも、この「ユニバーサルデザイン」の考え方を取り入れ、様々な人々との交 流活動を通して、それぞれの個性を尊重し、思いやりの心を育てる教育を進めており、 「ユニバ ーサル園芸」もその一環として提唱されている。 2 「ユニバーサル園芸」とは? 「ユニバーサル園芸」とは農業(園芸活動等)を通じて、心身の健康や豊かな地域社会づく りを進めようとする活動であり、園芸療法や高齢者の生き甲斐作り、障害のある人の就業、子 ども達への情操教育、コミュニティづくり、生活の質の向上などといった分野(表1参照)で、 年齢や性別、障害の有無に関係なく園芸活動などを通じて、すべての人が幸せになろうという 活動を総称している。 一般的には「ユニバーサル園芸」とは「園芸福祉」のことである。静岡県では前述のとおり、 「ユニバーサルデザイン」を推進しており、 「園芸福祉」の活動はまさに「ユニバーサルデザイ ン」の思想と合致する。そのため、静岡県としてこの活動を進めていく上で、 「園芸福祉」より、 親しみやすい言葉として、「ユニバーサル園芸」を使っている。 - 21 - 3 なぜ、農業(園芸等)なのか? 今まで、農業は効率的な食料生産を主たる目的としていた。無論、現在でもそれは最も大切 なことだが、さらに、環境問題への対応や生活科学の分野まで、農業の果たすべき役割が拡大 してきた。特に心身が健康で、人が人らしく生きていくためには、動植物とのかかわりが大切 であることがクローズアップされてきた。 本来、動植物が人間に与える心理的効果は個人的な感情として処理され、それを評価するこ とは難しい。しかし、小動物を飼育したり、植物を育てたり鑑賞したりしている時の安らぎ感・ 和み感などは、人によい影響を与えてくれる感情であることは間違いない。 人は「育てる」ということを、動物や植物など生き物とかかわることを通して学んでいく。 動物や植物は人を差別しない。愛情を注ぐことで誰でも「育てる」ことができる。 そして、このことを教え、学ばせることは子どもたちの成長や人間形成に大きな影響を与え る。植物の生長は変化の少ない時期もあり、自分の思うようにはなかなか生長してくれない。 しかし、植物や動物とかかわっている子どもたちは、言葉ではなくその表情から必要な支援を 感じることができるようになる。辛抱強く継続してかかわる過程こそが大切なのだということ を体験から学んでいく。そして、その経験を人間同士のかかわりの中に生かしていける。情緒 が安定し、相手を思いやりながら行動ができるようになっていく。 4 農業高校の果たす役割 農業高校では農業経営者や農業技術者の育成を主に教育が行われてきた。しかし、農業関係 以外の進路を選択する生徒たちが増え、今までの指導体制では現状と合わなくなっている。こ れからは、農業科目の中で学んだ知識や技術を、自分の生活の中でどのように生かしていくこ とができるのかを考えていくことが大切である。つまり、農業関係の仕事に就かなくても、農 業高校で学んだことを生かせる場が、多方面にあることを教えることである。 そして、その手段として様々な人々との交流活動が効果的である。農業高校の農場を利用す れば、幅広い年代の人々が同じ立場で参加できる活動がいろいろ考えられる。そこで植物や動 物と接することによって、栽培・飼育する楽しみや、収穫する喜びを共有することができる。 (今後、農業高校以外の学校でも、このような取組が今まで以上に必要になると思われる。) 交流活動などの実践的な授業の中で、正しい飼育方法を知っていれば、動物と触れ合う活動 をするときに役に立つこと、作物の栽培技術や食品加工技術を習得することで、園芸の楽しさ を伝えたり、収穫した物を材料として加工してみんなで味わうことができることを生徒達は学 んでいく。 動物や植物とのかかわりの効用を積極的に活用しながら、人間が人間らしく幸せに暮らすこ とを推進していく活動が「ユニバーサル園芸」ととらえ、これから農業教育分野で、この活動 をどのように実際の教育活動と結び付けていけばよいのかを考えていきたい。 - 22 - Ⅱ 研究主題 「ユニバーサル園芸」の分野は表1のように、障害者や高齢者に対しての園芸療法の分野や、 その人たちの働く場の提供や生き甲斐づくりといったことから、一般家庭における生活改善や、 地域社会のコミュニティづくりまでもが範囲となる。 今回の研究では、教育分野における「ユニバーサル園芸」を取り上げ、その意義を考える。 主として、農業高校における活動を取り上げ、植物だけでなく動物との触れ合いを通して行わ れている事例も紹介する。また、活動の中で使われている教材について、その作り方や利用方 法などを紹介する。 分 野 園芸療法 障害者の就業 高齢者の生き 対 象 概 心身に障害 ・医療や福祉の現場における園芸療法 のある人 ・治療やリハビリ、心身の健康回復など 心身に障害 ・授産施設等での自立支援 のある人 ・農業分野での障害者の雇用、新たな農業経営の展開 高齢者 ・ガーデニングや市民農園などによる高齢者の生き甲斐 甲斐づくり 教 育 要 づくり 子供∼大人 ・教育機関における情操教育から生涯教育まで ・園芸活動を通じた世代間の交流など コミュニティ 地域住民 ・花壇づくりや緑化運動などの共同作業を通じた づくり コミュニティづくり 生活の質の すべての人 向上 表1 ・グリーン・ツーリズムによる都市と農村の交流など ユニバーサル園芸の分野 静岡県教育委員会 Ⅲ ・園芸活動を通じたストレスの解消、豊かな生活環境 「本県職業教育の推進計画 資料4」より抜粋 研究の経過 第1回の部会では、研究の年間計画、研究テーマが決められ、研究主題を追究していくため に各学校の現状等を話し合った。その結果、二年計画で研究を進めていくこととし、本年度は 他方面からの情報収集による内容把握と、各学校の取組についてまとめていくこととした。 第2回の部会では持参した資料の検討と、画像選択及び写真等の使用許諾について話し合っ た。個人情報保護や著作権について、考える機会となった。また、新聞に記載されている関連 記事などを取り扱う場合の許諾方法を、実際に許諾申請を行いながら学んだ。 第3回の部会では、紹介事例の検討と掲載案の作成を行った。本来ならば、県下の農業関連 高校すべての活動事例を紹介したいとの意見も出たが、本年度は二年計画の中間発表という形 なので、委員が所属する学校の事例報告に留めることとした。そして、来年度にその内容を研 究成果にまとめ、Web 上に配信できる形にする計画とした。最後に、発表用の資料作成及び発 表時の役割分担を決めた。 - 23 - Ⅳ 研究の成果 1 農業高校における取組 以下の実践事例は、いずれも総合的な学習の時 間において行われたものである。 交流活動を通して学校以外の人々と触れ合う機 会を持つ。(図1参照) 高齢者や子供、障害者の心身の不調を日常生活 の中でいやしていくために、園芸(植物栽培)や 動物との触れ合いや飼育体験を活用していく。 生徒はこの活動において、「ユニバーサル園芸」 の意味を理解し自主的に取組み、子供やお年寄り、 障害を持つ人達と直接触れ合うことの楽しさや、 図1 校外での交流活動 命の大切さを学んでいる。 (1) ア 対象別 高齢者福祉施設との取組 県内農業高校のうち数校で、生徒が校内で飼育 している動物とともに高齢者福祉施設に訪問し、 交流活動を行っている。(図2参照) 高齢者は動物や生徒と直接触れ合うことで、心 にゆとりや生きがいを感じることができ、体力・ 気力の衰えを回復し、生き生きとした表情になる。 生徒は高齢者の喜ぶ姿を見て、一緒に活動した充 実感や満足感が得られ、人間的成長につながって いる。 図2 イ 高齢者介護施設にて 養護学校との取組 互いの学校を行き来し、作物栽培などの交流活 動を行っている。(図3参照) 植物の栽培では、誰が育てても芽を出し実を結 ぶので、健常者、障害者の区別なく「生命を大切 にする」気持ちがあれば、同じ成果を上げること ができる。こうした活動では、障害を持つ人に対 し、「何かをしてあげる」のではなく、「一緒に何 かをする」ことが可能になる。 一緒に何かを作り上げ、お互いに喜びを分かち 合うことで、相互の理解も深まり、相手を思う気 持ちがはぐくまれる。 - 24 - 図3 児童を招いて栽培実習 ウ 幼稚園・保育園との取組 農業高校では、総合的学習の時間において、 保育体験実習を導入している。(図4参照) この高校では、午前中に幼児を学校に招き、 作物の収穫やお菓子作りを行った後、幼稚園に 出向き、一緒に食事会を実施した。最初はお互 いに緊張していたが、すぐに打ち解けて、生徒 も幼児も生き生きとした表情で参加することが できた。 (2) ア 材料別 図4 近隣の幼稚園との交流 動物での取組 動物を扱った取組では、動物介在活動(アニ マル・アシステッド・アクティビティ)が行わ れている。(図5参照) これは、高齢者福祉施設や病院、教育施設に 動物を連れて訪問し、動物と触れ合う喜びを与 えることで、孤独や寂しさをいやし、生活の質 を向上することを目的にしたものや、保育園や 幼稚園、小学生を学校に招き、動物と触れ合い ながら、動物に対する正しい知識をつけ、命あ るものに対する心構えや優しい気持ちを伝える ことを目的としたものである。 図5 飼育している動物とのふれあい これらの動物は、授業で飼育管理しているもので、良好な健康管理やきちんとしたしつけが 求められ、地元の保健所や獣医師会などと協力して行われる。 実施内容は、対象(高齢者・小学生など)によって大きく変わり、様々な方法がとられるが、 高校生は普段あまり接することのない世代や障害を持つ方々と、動物を介在したコミュニケー ションを楽しんでいる。 イ 植物での取組 植物を扱った取組は、園芸療法の原点とも言えるものであり、植物に関連する活動を通して、 様々な人たちの心と体を健康にし、生活の質を高めることができる。 具体的には、授業等で栽培している農作物を利用した取組が多い。初歩の段階としては「花壇 作り」が挙げられる。対象者と一緒に花を植えるという比較的取組みやすい内容で、短期的な計 画で実施できる。その他にも「ハーブの栽培・加工」 「芋ほり」などがある。長期的な取組では 野菜類の栽培(種まき∼収穫)を実施している。また、ただ収穫するのではなく、 「焼き芋」 「カ レーライス」 「豚汁」など収穫したものを利用して、調理・加工などに発展させることもできる。 さらに、「みかん狩り」を実施している学校もある。 実施内容については、多くのプログラムが考えられ、今後さらに発展し充実していくと思わ れる。交流先としては、幼稚園、養護学校、高齢者福祉施設など様々である。 - 25 - ウ 食品での取組 食品を扱った取組も様々であるが、これからは「食育」の観点からも小学校や幼稚園等との 交流が必要ではないかと考えられる。しかし、現段階では「ユニバーサル園芸」としての取組 に限定して考えたい。 この「食品」での取組は、施設・設備の面から高校側で実施することが多い。具体的な内容 については「クッキー作り」 「ケーキ作り」などが多く見られるが、この取組についてもさらに 発展すると思われる。 (3) 交流活動の展開 交流活動は、活動を提供する側にも、提供される側にも対人関係作りがもっとも大切である。 ア 期間 期間限定活動 その期間に 1 回で完結する形で行われる活動。比較的参加人数も多く、イ ベント的に行うこともできる。 継続活動 月に何回というように継続して行われる活動。少人数で課題研究やクラブ 活動で取り組む場合が多い。 イ 活動時間 準備や片付けなどの時間も考えてプログラムを作成する。 ウ 参加人数 教員が一度に掌握できる人数には限りがある。何人配置できるか考える。 エ 活動場所 学校農場 作業材料、農具などはそろっていて活動はやりやすい。生徒は安心感もあ るが、逆に緊張感は薄れる。 学校外 移動時間を考慮する。交通安全にも配慮が必要。場所の下見(広さ・日当 たり・水管理等)が必須。道具の運搬なども必要になる。生徒の自覚は高く なる。 オ 活動目的 活動目的をしっかりたてる。交流参加者側と提供者側で同じであること。その目的に沿って プログラムがたてられる。 カ 活動事例 農業高校で行われている活動事例(表2、表3参照)を挙げる。時期や対象者によって、適 当な内容を計画すること、危険箇所のチェック、怪我防止のために道具の取扱いに注意するこ となどが大切なポイントである。共通する内容をあげる。 ① 安全であること。 ② 誰もができること。 ③ 活動が楽しいこと。 ④ 準備、片づけが煩雑でないこと。 ⑤ 生徒が主体で活動できること。 - 26 - 活動内容 対象者 作業内容 作業効果 野菜の栽培 幼稚園児 種まき・定植・ 屋外での活動を通して ・栽培指導 保育園児 誘引・収穫等の 適度な運動になり、リラ ・栽培体験 小中学生 様々な作業を行 クゼーション効果が得ら ・収穫体験 養護学校 う。 れる。 ・プランター 生 配慮事項 安全管理・安全 教育を徹底する。 活動後の作業・効果 収穫に至るまでの 栽培管理を行う。 農業高校圃場を 植物の生長を観察 使用する場合と、 することができる。 植物の栽培によって生 生徒が出向き、学 収穫する楽しみが や肥料袋 き物への親しみや愛情が 校外で栽培指導を を利用し 生まれる。 行う場合があるの た栽培 で、作物や作業内 ある。 環境教育・食育に つながる。 容によっての対応 を細かく検討して おく必要がある。 ハーブの 幼稚園児 プランター等 ハーブの香り等の特性 利用法について 植物の生長を観察 栽培と利用 保育園児 を用いて栽培体 を体感し、感動を得るこ は、なるべく簡単 することができる。 ・栽培管理 小学生 験活動をする。 とができる。また、リラ なもので感動でき 収穫や加工など利 ・ハーブクッキー 養護学校 クゼーション効果が得ら るものを用意す 用する楽しみがあ ・ポプリ 生 れる。 る。 る。 ハーブの利用 としてクッキー ・ハーブティー 作りやポプリ作 ・ラベンダースティ りを行う。 ック クッキーなどへの利用 環境教育・食育に によって興味関心がわ つながる。 き、活動意欲が高められ る。 餅米の栽培 保育園児 保育園のビオ (年配者) ト ー プ で 餅 米 を 栽培する。ボラン 土(泥) ・水に触れるこ とで自然に親しむ。 日本の伝統的な米栽培 収穫までに苗作 餅に加工すること り、田植え、水張 で、食育教育につな り、水抜きなどの がる。 ティアにも手伝 を学ぶことができる。 専門的作業が必要 田の役割を知り、 ってもらい精米 異世代交流になる。 となり、管理者が 環境教育につなが 必要である。 る。 し餅に加工する。 芋掘り 幼稚園児 芋掘りを体験 季節感を感じながら作 栽培指導に関し ・サツマイモ 保育園児 し、それを加工し 物の収穫を体験できる。 ては、テキスト作 ・ジャガイモ 小学生 て、試食する。 植物についての親しみ りと指導内容の検 みかん狩り 養護学校 が生まれ、リラクゼーシ 生 ョン効果が得られる。 討が必要となる。 農業高校のみ 季節感を感じながら作 対象者ごとの危 保育園児 かん園にて収穫 物の収穫をし、屋外で収 険箇所の点検と、 小学生 体験を行う。 穫したみかんをその場で 収穫場所・方法の 養護学校 食べることによって、リ 検討を行う。 生 ラクゼーション効果が得 高齢者 られる。 活動事例1 - 27 - 栽培管理を行う。 食育の一環とな り、食べ物の大切さ を知る。 幼稚園児 表2 収穫に至るまでの 食育の一環にもな る。 活動内容 対象者 ネイチャー 幼稚園児 蔓(つる)など 子供にとっては工作と 自然資材の調達 作った物を室内に クラフト 保育園児 を使ったリース して取り組め、自然の材 をするときの安全 飾ることができる。 ・リース作り 小学生 作りなど、自然の 料を使うため、環境学習 管理を徹底する。 ・かご 養護学校 ものを利用して、 にもつながる。 (対象者によって により、個人でも作 ・松ぼっくり 生 生活の中で楽し 高齢者・養護学校生は は、調達段階から れるようになり、そ 高齢者 める小物作りを 手先を使うため、身体能 活動するため。) の後の活動につなが 行う。 力向上につながる。 のクリス マスツリ 作業内容 作業効果 配慮事項 活動後の作業・効果 一度体験すること る。 ー等 ジョーカー 小学生 ズ・ランタン (低学年) を使い、ハロウィ 作り 保護者 西洋カボチャ ン飾りを作る。 刃物の使い方を覚え る。 ため、取扱いに注 カボチャの内部構造や 種などを覚える。 親子共通の会話ができ る。 手作りこん 保護者 にゃく作り 刃物を使用する 外国文化の理解に つながる。 意する。 完成品を配置す る時の飾り付けな どを工夫する。 生のイモを材 手作りすることによっ 料にして、こんに て、材料や食品の本質や ゃく作りに挑戦 特性を知り、食に対する する。全ての製造 理解が深まる。 工程を手作りで 衛生面に関する 講習を行う。 凝固剤などの事 文化祭で実演・販 売する商品として、 利用する。 前準備が必要とな る。 行う。 動物ふれあ 幼稚園児 農業高校に来 動物に触れ、かわいが 事前に、動物に い活動 保育園児 てもらい、飼育し ることにより優しい気持 接するときの注意 小学生 ている動物と触 ちになる。 を必ず行う。 養護学校 れ合う。 生 犬の散歩などは適度な 運動になる。 高齢者 振り返りシート 命に触れる事の大 切さを学ぶ。 異世代交流にな る。 を活用し、対象に あった交流プログ ラム作りを行う。 動物ふれあ 幼稚園児 学校で飼育し 動物に触れ、かわいが 事前に、動物に い訪問 保育園児 ている動物を連 ることにより、優しい気 接するときの注意 小学生 れて、学校や施設 持ちを持つことができ を必ず行う。特に 養護学校 に訪問する。 る。 場所を変えること 生 高齢者 犬の散歩などは適度な 運動になる。 で動物が興奮する ため、注意する。 対象にあった交 流プログラム作り を行う。 表3 活動事例2 - 28 - 命に触れる事の大 切さを学ぶ。 異世代交流にな る。 2 教材作成 活動を進める中で使われた教材がある。それぞれに有効に使われている。その効果と作成手 順を以下に示す。 (1) 芝生小僧 使い古しのストッキングに園芸用培養土と芝 の種を入れ、水を入れたコップに浸しておくも のである。(図6参照) 作成後しばらくすると、芝の芽がストッキン グを通り抜けて、あたかも髪の毛が生えてきた かのように伸びてくる。芝の成長する過程が直 接観察できるほか、芝の生長による芝生小僧の 顔の変化を毎日のように楽しむことができる。 <作り方>(概要) 図6 芝生小僧の完成図 ① 使い古しのストッキングを準備する ② ストッキングの底部に芝の種を適量入れた後、園芸用培養土を入れる。このとき、芝の種 が培養土の中に入らないように注意する。顔の大きさは、コップの大きさに合わせる。 ③ ストッキングの先端をしばり、水を入れたコップの上に置く。先端は、常に水に漬かって いるよう水の量を調整する。 (2) 動物クッキー 子供たちとの交流活動の中で、お菓子作りは 大きな効果がある。子供たちは、食べる楽しみ を抱きながら、夢中になって自分の思うままに クッキーの生地を動物の形に変えていく。 (図7 参照) 焼きあがったクッキーは、できばえをみんな で見た後、幼稚園に持ち帰る。高校生は、クッ キーの作り方を「教える」ことによって、授業 で得られた知識や技術を自信という形に変える 図7 ことができる。 完成した動物クッキー <作り方>(概要) ① 材料の準備(バター、小麦粉、砂糖、卵など) ② 材料を混合し、クッキーの生地を作る。 (スタンダードな生地と、チョコレートなどを入れ た着色されたものがあるとよい。) ③ 幼児と一緒に、生地を動物の形に作り上げる。 ④ 出来上がった生地を家庭用オーブンで焼く。 - 29 - (3) 肥料袋を利用したジャガイモ栽培 肥料袋を利用して、いろいろな野菜栽培がで きる。(図8参照) 幼稚園など畑が無い場合でも取り組める内容 であり、比較的手間はかからない。収穫時に袋 を切ってジャガイモが出てくる瞬間がとても感 動的である。(図9参照) 植え付け時期は、春ジャガは3月上旬、秋ジ ャガは9月上旬。収穫時期は、春ジャガが6月 下旬、秋ジャガが 12 月中旬。子供たちの教材と して考えると、時期的なことから秋ジャガの方 が利用しやすい。 図8 肥料袋によるジャガイモ栽培 図9 袋の中から出てきたジャガイモ <作り方>(概要) ① 園芸店等で種芋を購入する。 肥料分の効いた土を用意する。 ② 肥料袋の下の隅を3cm ほど切り取り、他に 数箇所直径 1cm の穴を開ける。 (これが排水用の穴となる。穴を開けすぎ ると破けるので注意すること。しばらく土 が流れ出すが、3日ほどで収まる。) ④ 種芋を深さ5cm の穴に埋める。 ⑤ 植えてから2週間位は軽く水をやるが、後 は本当に乾燥してきたらやる程度。(与える 水を意識して減らさないと根ぐされしてしま う可能性がある。) ⑥ 後は収穫を待つだけ。(その後は、あまり作業 がない。) ※この方法でジャガイモだけでなく、その他の野菜についても取り組むことができる。 Ⅴ 今後の課題 私たちは植物や動物を食料として生産してきた。そして、経済的視点に立ち、より効率的に 生産性を上げていくことを目指してきた。しかし、自然や環境破壊の問題がクローズアップさ れ、今までの効率至上主義が反省されるようになり、心身共に健康で過ごすことこそ一番大切 であることが、改めて見直されるようになった。 今までは、あまりにも日常的で見過ごされてきたことが、 (例えば、草花や野菜の栽培や、小 鳥や犬、猫などの小動物を飼育)生き甲斐のある暮らしの実現や、豊かな人間性の回復に大き な意味を持つのではないかと考えられるようになった。 現在、植物や動物とのかかわりを積極的に教育分野や福祉分野に取り入れていこうとする活 - 30 - 動が各地で見られる。心身の不調を日常生活の中でいやしていくために、園芸(植物栽培)や、 動物とのふれあいや飼育体験を活用していこうとする試みである。これらの活動は、私達が生 きていく日常生活の中で、いろいろな場面で活用することができ、その活動を通して人々の暮ら しにゆとりやいやしを与え、心身の健康を回復させ、幸せ感の達成につなげていける。そして、 この考え方は、まちづくりなどの具体的な活動を推進する基盤となり、生涯学習社会の形成に 役立っていくと考えられる。 先に動物や植物とのかかわりの効用を積極的に活用しながら、人間が人間らしく幸せに暮ら すことを推進していく活動が「ユニバーサル園芸」だと述べた。生徒は、自分が学んだ「農業」 の知識・技術を、社会の様々な人々との交流活動の中でしっかりと活用していき、相手の「幸 せ探し」に協力することができる。そして、その活動を通して逆に生徒自身も豊かな人間性を はぐくむことができる。農業高校で「ユニバーサル園芸」を進めていく意義がそこにある。 今後は、農業高校で行われている「ユニバーサル園芸」についての取組を、他の学校でも実 践できるよう、その手順等を Web 化してインターネット上で発信したり、いつでもこのような 活動ができるように、ユニバーサル園芸に関する研修施設を農業高校内に設置することを課題 として取り組んでいきたい。 Ⅵ 委員名簿 番号 委 1 滝 宏行 静岡県立静岡農業高等学校 部 会 長 2 望月 康弘 静岡県立磐田農業高等学校 副部会長 3 飯田 英毅 静岡県立田方農業高等学校 助言者 員 名 所 属 校 備 鈴木 和男 静岡県教育委員会 大塚 忠雄 静岡県総合教育センター 宮田 治幸 静岡県総合教育センター - 31 - 高校教育課 考
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