45 - 石川慎一郎

AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
---目
巻
頭
言
会長の一言随感
第 50 回例会報告
第 11 回年次大会報告
杉浦 悦子 1
奥津 文夫 2
橘 広司
3
根本 貴行
5
羽鳥 博愛
6
森住 衛
7
國廣 哲彌
9
鈴木 雅子
9
次---
第 11 回総会報告
事務局だより
東郷 多津
堀部 秀雄
拝田 清
奥津 文夫・村田 年・
池内 正直・馬場 千秋
馬場 千秋
11
12
13
14
16
21
共通言語としての文学
杉浦
悦子
ヘミングウェイが 1940 年に発表した For
は、自分の死でもある。英国国教会の司祭
Whom The Bell Tolls のタイトルは、17 世
でもあったダンは、このような暗喩で人の
紀のイギリスの形而上詩人ジョン.ダンの
つながりを説いた。
MeditationⅩⅦ からの引用であることは
ヘミングウェイの For Whom the Bell
よく知られている。ダンは、人の死を悼む
Tolls は、1930 年代のスペインのフランコ
教会の鐘の音が聞こえたからといって、
「決
政権に対するゲリラ戦に身を投じるアメリ
して誰が亡くなったのかと人に聞きに行か
カの青年の物語である。彼はゲリラ戦の中
せないように」とさとしている。なぜなら
で命を落す。アメリカの青年が他国の戦い
ば、人は孤立した島ではないからだ。(No
に参加し、危険な作戦に自ら巻き込まれて
man is an island, entire of itself.)
ゆくのはなぜなのか、タイトルはその理由
ダンは彼特有の比喩と暗喩を使って説明
を示唆している。彼にとってはスペインの
している。海に浮かぶ島が海底では大陸に
人々の苦しみは、他人事ではなかった。組
繋がっており、孤立してはいない。だから、
織的な軍隊をもたずに戦う人々を、彼もま
大陸のほんの一塊の土のような小さな島で
た個人の力と知恵だけを武器に、手伝いに
も、流されて失われれば、それはその部分
行かずにはいられなかった。
(決して集団自
の喪失では済まされない。大陸そのものの
衛権のことではない。)そして彼の死は、ま
減少を意味する。等しく神によって造られ
た、彼一人の死ではない。タイトルは、怒
た人間は孤島のように見えていて、実は大
涛のように世界を呑み尽くそうとする大戦
陸の一部なのだ。もし誰かが死ねば、それ
で失われて行く命が、自分に関わるもので
1
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August 18, 2015
あることを示そうとしており、ヘミングウ
ェイは多くの読者がそのことをタイトルか
ら理解してくれることを期待できたので
1960 年代にサイモン&ガーファンクル
が I am a Rock を発表したとき、この二人
ある。
このようなことが期待できたのは、当時
の若者はヘミングウェイとはまったく違っ
の西欧の多くの読者がダンの詩行を知って
たやりかたではあったが、やはりジョン・
いたからである。初版 75000 部がただちに
ダンの詩行にこだまを返したのだった。 I
完売、数か月で 50 万冊が売れたということ
am alone,/…I am a rock,/I am an island.
だが、50 万人すべてがダンの詩行を知って
と断固として自分の孤独を主張する彼らは、
いたわけではないにしても、かなり多くの
ダンの言葉を跳ね返し、それだけにその声
人にこのタイトルが訴える力を持っていた
は強い響きを生み出している。そして、ダ
ことは想像できる。言い換えると、ダンの
ンの詩行を知っていれば、その響きを十分
詩行が多くの人々の共有する教養の一部と
に理解し、味わうことができるのである。
なっており、その結果それが共通のシンボ
文学を書く者と受ける者との共通言語を
ル、あるいは共通の言語になりうる下地と
生み出すための文学教育は、やはり必要な
なっていたと思われるのである。
のではないだろうか。
(元多摩大学教授)
会長の一言随感 (No. 13)
J.シーザーの名言の数々
今年もはや前半が終り7月となった。7
る)と“The die is cast.”(さいは投げられた
月は英語では July という。古代ローマを代
=もう後戻りはできない)がある。さらに
表 す る 将 軍 ・ 政 治 家 ( Gaius ) Julius
エジプトに侵入し、クレオパトラを愛人に
Caesar(カエサル、シーザー、100?~44
し女王にしたのち、黒海南岸のポントスに
B.C.)が生まれた月であることから、この月
転戦したが、その時友人に送った手紙の中
を Julius と名付けたことに由来する。
でその戦果を知らせた言葉とされる“Veni,
vidi, vici.” ( I came, I saw, I won
シ―ザ―は極めて偉大な人物だったので、
次のような史実に基づいた名言や成句が数
[conquered]. 来た、見た、勝った)は簡潔
多く残されている。
な表現の手本とされている。またシ―ザ―の
シ―ザ―はガリアで強大な軍事力を把握
独裁に共和制の伝統を破壊されることを危
し、元老院と対立して、軍隊を解散せよと
惧した人々の手で彼は暗殺されたが、その
いう命令を無視してイタリアの境のルビコ
中にブルータス(M.J. Brutus, 85~42B.C.
ン川を渡りローマに進軍した。その時の言
古代ローマの政治家、シ―ザ―暗殺の首謀
葉に“cross the Rubicon”(ルビコン川を渡
者)がおり、“Et tu, Brute?(And you,
る、思いきって踏み切る、重大な決意をす
Brutus? ブルータス、お前もか)が彼の最
2
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後の言葉となった。
日本の政治家などは、何か不祥事を起こ
シーザーが妻ポンペイアを不義の疑いか
したり、国民に疑惑をかけられても、秘書
ら離縁した時に言った言葉に由来すること
や他人のせいにして責任逃れに走る卑怯な
わ ざ に は “Caesar’s wife must be above
人間が多いが、誠に恥ずかしいことである。
suspicion.”(シーザーの妻たるもの、疑惑
昔の日本人のほうが責任とか恥というもの
を招くようなことがあってはならない)が
を常に強く意識していたと思う。武士であ
あるが、これは公人として指導的立場にあ
れば、人に疑いをかけられたら自らの不徳
る人の配偶者や関係者は常に清廉潔白で、
として弁明もせずに切腹したものである。
他人に疑いをかけられるような行動をとっ
なお、“Caesar or nobody.”(シーザーか
てはならない、という意味である。日本に
無名人か=毒にも薬にもならないような中
は「李下に冠を正さず」ということわざが
途半端な人間になるな)という言葉もある。
あるが、これは「スモモの木の下で手を上
また、シーザーは開腹手術によって生まれ
げると、スモモを盗むのではないかと疑わ
たという伝説に基づき、その分娩法は
れるかもしれないから、冠が曲がっていて
Caesarean section [operation](C-section,
も、その場では手を上げて直すべきではな
帝王切開)と呼ばれることになったとも考
い」という戒めである。また「瓜田(かで
えられている。
ん)に履(くつ)を納(い)れず」という
シ―ザ―にちなむ言葉の多さには驚くば
ことわざもあるが、これは「瓜畑で履が脱
かりである。
げても瓜を盗むかと疑われるので、かがん
(奥津文夫)
で履き直すな」という同意の戒めである。
第 50 回例会報告
2015 年 4 月 11 日(土) 14:30-17:00
於:明治大学駿河台校舎 リバティータワー 1064 教室
研 究 発 表 1
Englishes の通用性問題と異文化間リテラシー
-米国学生への「日本英語」アンケートから見えるもの-
橘
広司
今、人や英語が越境する時代にあって、
「英米の英語=正統な英語」とする言語観
諸英語(Englishes)の存在を認める言語観
は根強いし、また、諸英語や「日本英語」
が必要である。英語教育においても、諸英
を語る際に避けては通れない通用性の問題
語をモデルとし、
「日本英語」を創り出すよ
もある。そこで、本発表の目的を以下の 2
うな柔軟性がほしい。しかし、実際には、
点に設定した。1 点目は、Englishes におけ
3
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August 18, 2015
る通用性の問題を異文化間リテラシーの観
を A(正解)
、B(ほぼ正解)、C(部分的に
点から考察し、
「日本英語」の可能性を考察
正解)
、D(不正解/不回答)に分類したと
すること、2 点目は、米国学生へのアンケ
ころ、全 20 項目の正解率は、A:44%、B:
ートを通じて「日本英語」の通用性を分析
7%、C:6%、D:45%という結果になった。
することである。
A と B を足すと 51%で、20 の表現のうち
異文化間リテラシーとは、異文化間接触
約半分は、おおむね通用していることが分
の際に、自分の文化を的確に伝達すると同
かった。正解率が比較的高い慣用句は、似
時に、相手のそれを十分に理解する意志と
た表現がアメリカ人の使う英語にもあるケ
能力である(本名 2013)
。また、ここで言
ースが多かった。また、正解率の低い慣用
う「日本英語」とは、劣等感から生まれる
句は、文脈からの意味の推測がやや困難で
「日本語なまりでもいいではないか」とい
ありそうなものが目立った。
う類のものではない。むしろ日本語母語話
今回のアンケートから発表者が得た最も
者一人ひとりが、より豊かな自己表現をす
大きな気付きは、回答者の英語表現である。
るために自ら創造・選択しデザインしてい
というのも、回答を「アメリカ英語」の慣
く新たな英語の形である。その例として、
用句で返してきたケースが少なくなかった
本発表では、橘(2014)で挙げた「日本語
のである。例えば、I heard from the wind
慣用句の英訳」のいくつかを紹介した。例
that ~(風の便りに聞く)は A little bird
えば、make one’s neck long(首を長くする)
、
told me ~、tears of a sparrow(スズメの
太っ腹(have a thick stomach)
、
(居眠り
涙)は a drop in the bucket、come to one’s
をして)舟をこぐ(row a boat)
、などであ
head(頭に来る)は get under one’s skin
る。
というようにである。これがアンケートで
発表者は、19 名のアメリカ人高校生を対
はなく実際のコミュニケーション上で起こ
象に、
「慣用句の英訳」
(全 20 種類)の通用
っていたとしたら、まさに異文化間リテラ
性を確認するためのアンケートを実施した。
シーを育む文化の学び合いの場となってい
それぞれの慣用句は対話文の文脈の中で登
るはずである。あらためて、諸英語および
場する。例えば、A: “I want to quit this
「日本英語」の通用性を高めるために、文
project.”、B: “It’s too early to throw your
脈の存在と異文化間リテラシーの育成が重
spoon.”(さじを投げる)という対話におい
要であると考えた次第である。
て、斜体で示されている慣用句の意味を自
(関東国際高等学校教諭)
分の英語で説明してもらうのである。回答
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研究発 表2
日英語母語話者の文法発達過程における
疑問詞疑問文の獲得時期について
根本 貴行
日英語母語話者が母語を習得する過程で、
みると、目的語疑問詞疑問文では日英語間の
疑問詞疑問文をどのような段階で身に付けら
獲得時期に大きな差があり、日本語の場合が
れるかについて考察した。
言語の習得過程は、
MLU1.99、英語の場合が MLU2.76 の段階で
言語の違いに関係なく類似した段階を経る上、
習得されている。その一方、主語疑問詞疑問
言語習得過程において、英語母語話者は不規
文の場合は、習得段階が英語で MLU2.19 と
則変化動詞を規則変化とし過剰生成するなど、
日本語の疑問詞疑問文の習得段階に近い値で
大人には見られない発話エラーが観察される。
ある。同一言語におけるこの差は、パラメー
こうした事実から、言語習得は模倣や強化だ
タの違いに還元することでは説明がつかない。
けではなく、人に内在する言語機能が関わっ
根本(2014, 2015)では、母語獲得過程にお
ていると考えられる。
ける経済性の原理を仮定している。経済性の
疑問詞疑問文では、英語は疑問詞が義務的
原理は文を派生する際にコストのかからない
に文頭に現れ、日本語ではその限りで無いこ
操作が適用されるとするもので、これを母語
とから、一般的に英語は[+wh 移動]の言語、
習得過程に適用したものである。経済性の原
日本語は[-wh 移動]の言語として扱われてい
理には、例えば「先延ばしの原理」
(可視移動
る。この発表では疑問詞疑問文の習得につい
は 不 可 視 移 動 よ り 高 コ ス ト )( Chomsky
て、それぞれの言語をパラメータの違いに還
1995)や、
「外的融合」
(無料操作)
(Chomsky
元するだけでは説明できないことを指摘し、
2004)などが挙げられる。一語期の子供にと
母語獲得過程における経済性の原理 (根本
って利用可能な操作が無料操作の外的融合で
2014,2015) に基づき事実がとらえられるこ
あり、故に二語期の状態へと進むことになる
とを主張した。
わけである。
原田 (2003) によると、疑問詞疑問文の習
母語習得過程における経済性の原理によれ
得時期は日本語母語話者が 1 歳 11 カ月、英
ば、可視移動を必要とする英語の目的語疑問
語母語話者が 2 歳 2 か月としている。原田
詞疑問文が不可視移動の日本語の疑問詞疑問
(2003) は、文法の初期状態が [-wh 移動] と
文より後発することが予想される。また、
仮定され、英語母語話者はこのパラメータを
Chomsky (1986) や Agbayani (2006) など
[+wh 移動]へ設定する必要があるため、疑問
も仮定しているように、英語の主語疑問詞疑
詞移動の必要がない日本語母語話者より獲得
問文において、疑問詞が主語位置に留まると
が遅れると考えている。
仮定すると、主語疑問詞疑問文の習得が日本
しかし、CHILDES データベースで日英語
語に近い段階で行われることが予測される。
母語話者の子供3名による発話データを見て
疑問詞疑問文の習得段階について、母語習
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得過程における経済性の原理で説明がされ、
れる可能性が考えられるということを主張し
帰結として英語は[-wh 移動]の言語ではなく、 た。
疑問詞の位置により統合操作が適切に習得さ
講
(東京家政大学准教授)
演
英語学力の再検討
羽鳥
Ⅰ
今後の英語学力を示すものとして次
精読中心→速読中心
博愛
例えば、速
読は週 2 時間、精読は週1時間
の式を提案した
一字一句を訳して内容を理解する
(大意・環境把握力×語法観得力)+異文化
のは実用的でない
[速読の練習]
応接力+自学力
[この式の表すこと]
1.
2.
3.
4.
ある長さ(150 語~300 語)の
大意・環境把握力は、文の大意を
英文を与え、読み終わるのに何
取るとき、それと同時にその文が
分かかったかを調べる
使われている環境(どんな文脈、
あと true or false の設問で内
どんな状況)を見て取る力
容理解度を調べる
その
語法観得力は、文中にある或る語
速読力=[読む速さ
法(使い方)に気がつきその語法
(wpm)×内容理解度]
を使おうとする力で、近年話題に
[すべての単語が分からなくて
なっている focus on form とか「気
も、文意はとれる根拠]
づき」に相当する。これは教師の
盲点補充現象
手を離れたあと自分で学習すると
は、一字一字拾って読んでいる
き重要
のではない、目立つ字だけに眼
異文化応接力は、普段日常的にな
をつけあとは推測している
じんでいる文化や単語とは違う新
未知語は 20~30 語に1語なら
しい文化(単語はその 1 部)に、
推測できる
理解を示す能力である
したがって、未知語が多い文で
自学力は、上記の 1, 2, 3 を自分な
は 20~30 語以上の未知語は説
りに工夫して身につける能力であ
明してやってから、文を読ませ
る
る
Wednesday
「例」1 ページに 200 語あり、
未知語が 15 語あるとこれでは
Ⅱ この式に留意して英語指導を考える
と
速読はできない
1.
大意把握力重視は
8 語は説明
してやり、残りは文中で推測さ
6
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せる
導者がいないので、自分で新しい
(推測は、速読の大切な基礎)
表現などを見つけそれになれるこ
と
2.
5.
語法観得力で、未知の用法に気づ
きその用法を覚えることが大切
自己表現は、今後要求される大切
な能力で、自学力の重要な要素.
これは文法を帰納的に教えるこ
この力を伸ばすことは大切
とに通じる
のためには、書く練習には和文英
いくつかの文を見
てその用法を考えるのが帰納的
そ
訳はよくない
cf. 演繹的では、規則を教えてか
和文英訳では、内容は与えられ
ら例文をしめすので、講師がい
ているので、自分の考えではない
ないと成立しない
したがって、自由英作文や、与え
られた単語を使って文を作ること
3.
異文化応接力は、これがないと国
を練習させるのがよい(発想は、
際理解は不可能
単語から出てくる)
外国語の単語も異文化の 1 つと
(東京学芸大学名誉教授・
考える
4.
元英語検定協会会長)
自学力は、学校を出てからは、指
10 周年記念大会(第 11 回年次大会)報告
2015 年 6 月 13 日(土)10:15―17:10
於:明治大学駿河台校舎 リバティータワー 1124 教室、1125 教室
基
調
講
演 1
異文化コミュニケーションを考える視点
-- 12 の二項対立を中心に -森住
衛
異文化コミュニケーションは、そのあり
方によって、自己の練磨とよりよい人間関
Ⅰ. 呼称や定義の確認
係の構築に役立つか、自己主張と抗争の連
1.「文化」「異文化」「コミュニケーシ
鎖を進めてしまうかのどちらかになる。本
ョン」の意味
講演では前者にするためにどうしたらよい
「文化」=「心を耕すこと、武力を使
かを12の二項対立の視点から考える。全体
わずに人間や社会を変えていくこと」
は2つに大別されるが、内容を目次風に列挙
2.「異文化コミュニケーション」等の呼
して、一口解説を試みる。
称
7
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異文化理解が最も著名であるが、「受
グローバリゼーションの2つのベクト
信」を予想させる。「国際理解」は文科省
ルのうち、多様化を目指すべき。
用語。
8. 浅さ vs 深さ
異文化コミュニケーションには4段階
3.「異文化コミュニケーション」の定義
のレベル(程度)の差がある。
(1)異質な存在と共存できること。
9. 受信 vs 発信
(2)すべての国や地域あるいは人種や民
族が互いにその存在価値を認め合うこと。
日本の発信文化としてのサブカルチャ
(3)人種・民族・言語・政治・思想・宗教・文
-。
化上の偏見や差別をなくすこと。
10. 集団 vs 個
比較文化論の相対性。普遍化はできな
(4)地球上の「持てる人たち」と「持た
ざる人たち」とが対等につき合うこと。
い。
11. 善 vs 悪
Ⅱ. 12の二項対立
真善美の価値観、信条は相容れない場
以下の1〜4は、上記の定義(1)〜(4)に連
合がある。
動している。
12. Difference is beautiful. vs
1. 類似点 vs 相違点
Difference is acceptable.
互いに「違う」という前提でつき合う
最終的には「和解なき理解、友情なき
べき。
共生」(厭だけど一緒にいるのは我慢する)。
2. 欧米理解 vs 異文化理解
異文化理解が欧米理解ではいけない。
このような二項対立の視点はまだある。
3. 知識・技能 vs 観点
たとえば、<大文化 vs.小文化>、<対立 vs
知識・技能があっても反国際的な人。
和>、<自然 vs 人工>などである。いずれ
4. 与える vs 貰う
にしても、文化をいかに捉えるかの視点や
異文化コミュニケーションは庇護主義
観点を、いわば「文化観」を、学校の言語
であってはならない。
教育(特に、外国語教育)において本格的に
5. 外なる異文化 vs 内なる異文化
取り上げる必要がある。そうすれば、外国
異文化は海外だけではない。「外」を
語教育の究極の目的である「人格形成」と「
みた場合のわが身を振り返る姿勢が必要。
恒久平和」に接近できる。
6. 見聞 vs 生活
(関西外国語大学客員教授)
いまや国際結婚、長期滞在の時代。
7. 統一化 vs 多様化
8
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基
調
講
演 2
心的視点と表現構造のあり方
國廣 哲彌
心的視点のあり方に従って言語表現がど
法)
のように変わってくるかを日英両語を材料
これは日本語では、時の視点が発話時と
として考えてみる。
過去を行ったり来たりしているが、英語で
(1) 指示詞「こ・そ・あ」は一般には話
は間接話法を用いることによって発話時一
し手を基準にして「近・中・遠」の距離の
つにまとめていることを示すものである。
違いを示す 1 本の尺度のように考えられて
日本語の視点:流動的。
いると思われるが、
「そ」の社交的用法から
英語の視点:固定的。
出発して考えると、むしろ話し手と聞き手
紀行文でも、日本語の場合は時間的視点
のどちらを基準にしているかを考えるべき
は執筆時と旅行中の両方を行ったり来たり
であることになる。
「こ・あ」は話し手を基
することが多いが、英語では執筆時に一定
準とした《近・遠》を差し、
「そ」は聞き手
しているのが普通である。
を基準とした表現であると言えそうである、
(3)
川端康成の『雪国』の原文と
Seidensticker による英訳の違いは視点の
という見解をここで提出したい。
英語の‘this’と‘that’にも基準を聞
あり方に基づくものである。川端では汽車
き手に移すことによって社交的配慮を表わ
に乗って移動中の人物の内部にあり、英訳
す用法があることをここで示したい。この
では人間を離れてその時の風景全体を視野
ことは今までの英文法では触れられること
にいれている位置にある。
「ここはどこですか」対 Where am I?
が無かたのではないか。
(4) 日本語における「主観形容詞」と「客
(2) 時間の流れの捉え方。
「彼はすぐ行くと言っていましたよ」
(直
観形容詞」の問題。
接話法)
(東京大学名誉教授)
He said he would come soon. (間接話
研 究 発 表
英和辞書におけることわざ記述の通時的研究
鈴木 雅子
現在、辞書の編纂にコーパスは欠かせな
かし、コーパスがあらゆる種類のデータを
い。コーパスのデータにより、ネイティブ
提供できるわけではなく、コーパスにおけ
スピーカーの直感ではなく、証拠で裏付け
る出現頻度数が少ないものもある。そのひ
された情報が記載されるようになった。し
とつがことわざである。辞書においてコー
9
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August 18, 2015
パスに基づく修正が難しいと思われる記載
at a straw で立項されている。ただし、英語
事項としてことわざを取り上げ、その記述
においても本来は catch という動詞が使用
がどのように変化しているのか研究を進め
されており、1800 年代後半に日本で出版さ
た。
れた文献においても catch が確認できるこ
ここ 100 年の間に出版された日本人のた
とから、日本へも catch という動詞で紹介さ
めの英和辞書、中でも主に、使用者を特定
れたことは確実であろう。しかしコーパス
しない大辞典 18 種類を調査対象とした。ま
を参照すると、ことわざにおける catch 使用
ずは、ことわざが英和辞書に通時的に記述
の用例は 1900 年までであり、以降は clutch
されていることを確認するために、予備調
など他の動詞となっていた。つまり、ここ
査として西洋起源とされる 9 個のことわざ
100 年の間に英語のことわざ自体が姿を変
についてこれらの辞書を調べた。その確認
えたものの、そのことが現在の英和辞書に
後、全体像をつかむために、研究対象とす
反映されていないと言える。また他にも、
ることわざの数を増やした。時代による変
英和辞書編纂の初期に起こった「間違い」
化をみるため、改版を行っている大辞典の
と思われる記載がそのまま踏襲されている
初版を始点とし、辞書全体の概観をつかむ
ものも見られた。
ために、A から Z まで全ページにわたって
今回の研究はケーススタディでしかない
表現を収集した。辞書記述の変化や疑問点
が、100 年以上が経った今でも、1887 年に
に関して、調査対象の英和辞書 18 種類、及
東京で出版された James M. Dixon による
びその他の辞書やコーパスを参照した表現
Dictionary of Idiomatic English Phrases や、当
は全部で 68 個であった。
時の英和辞書編纂に大いに参照された
英和辞書におけることわざの記述には、
Concise Oxford Dictionary 初版(1911)の影
スペル等の表記や文体、ことわざが収録さ
響を確認することができた。ことわざは古
れる見出し語など、ことわざそのものの変
くから存在する表現形式であり、そのため
化とは直接関係していない修正点もあった。
その形が固定していると思われがちである。
しかし、改善されるべき点は、英和辞書に
だが実際の使用にはバリエーションがあり、
おいて変更されるべき記述が修正されてい
また時代と共に意味や形にも変化が起こる。
なかった点である。例えば「溺れる者は藁
英和辞書におけることわざの記を改善する
をもつかむ」ということわざは、調査対象
には、それまでの版や他の辞書を参考する
の英和辞書全てにおいて A drowning man
だけでは不十分であり、日本語そして英語
will catch at a straw と、catch という動詞が用
のことわざ自体の研究成果を反映していく
いられているが、現在の主だった英語のこ
必要があるだろう。
(昭和女子大学非常勤講師)
とわざ辞典では A drowning man will clutch
10
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August 18, 2015
研 究 発 表
学習者主体の英語ライティングクラスでの学びについて
東郷 多津
主体的な学びをもたらす授業を設計する
プロジェクトとして配すことで、学生が求
には、学習者の学びに着目する必要がある
める知識だけではなく、社会人基礎力とし
(望月ら 2014)
。予測困難な時代に向けて、
てまとめられる学習スキルをも習得できる
生涯教育社会を見据えた大学授業への要請
よう教材を工夫している。
が強まる昨今では、自律した学習者の育成
学生が主体的に学習を進めるために、教
が教科に関わらず求められている。それに
材や授業の進め方にも工夫がある。開発授
伴い、教師主導型授業から学生主体の授業
業において、最終的な英語力は、まとめの
設計を求められるようになった。それに伴
英作文で判定する。英作文を読む者すべて
い、学習者は、知識の習得だけではなく、
(学習者、クラスメイト、教師)は、教師
自分で求めたり、探したり、協働するなど
が作成し、予め公開されている判定基準を
の知識を活かす力(社会人基礎力や学士力)
使って評価することとなる。評価項目は、
の習得も必要となっている。
メッセージ性、語彙、文法、分量、構成の
本研究は、2006 年以降継続している学習
5 項目を、それぞれ 3 点満点で採点し、学
者主体の英語ライティング授業開発に関す
生はその点数の根拠を説明する。
る研究の一部であり、一連の研究は、教育
年度末の振り返りシートに書かれた評価
工学における教育実践研究(西之園ら
根拠を分析した結果、まとめの英作文の自
2012)に依っている。教育実践研究におい
己評価項目において、学生は比較的道理の
ては、学習理論や方法論の適用と検証から
通った理由を説明していることがわかった。
授業を設計するのではなく、まず学習者の
しかしながら、学生の根拠説明とまとめの
学ぶ意味から授業を設計してきた。
英作文を照合した結果、その関連性をより
本研究が対象とする授業は、英語を専門
近づけるための修正が可能であるとわかっ
としない学部生に対する必修の英語クラス
た。メッセージ性を高めるにはフリーライ
であり、対象学生は、英語を得意としない
ティングを強化によって、構成は過去に教
リメディアル学習者である。これまで英語
材化したテンプレート使用によって、語彙
学習における成功体験が少ない学習者が多
は辞書を使う課題の追加と辞書の使い方ガ
いため、学習者の多くは、
「なぜ英語を学ぶ
イドの作成によって、工夫できる見通しが
必要があるのか」という問いに、答えをみ
たつ。分量は数値化できるので、今回修正
つけられないでいる。しかしながら、伝え
は加えない。最後に残る文法に関しては、
たい何かを持つことは、英語の得意不得意
学習者の学びの実態に即した文法説明が必
や好き嫌いとは関係がない。筆者らは、
「思
要であることがわかったので、今後も協同
いが伝わる喜びと達成感」を中心に、学生
研究を継続していくこととなる。
が何を学べばそれらが得られるかを、その
(京都ノートルダム女子大学准教授)
実態分析と経験から得られた知見をもとに
11
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
研 究 発 表
「日本文化」は英語でどう表現できるか?
~『坊ちゃん』の三種類の翻訳における翻訳方略についての一考察~
堀部
「日本文化」――日本固有の事物・事象、
秀雄
ている。前者は原文の文化の「異質性」と
概念、発想法など――は英語でどのように表
そこから派生する「違和感」を重視した翻
現できるか。例えば、
「袴」や「羽織」、
「義
訳法であり、後者は訳文としての「自然さ」
理」や「恩」を英語ではどう言えばいいだ
「流暢さ」を重視し、異文化を訳文の文化
ろうか。このような問題を考える大きな手
に還元する翻訳法である。例えば、「彼は
掛かりは、日本文学の翻訳の中に求められ
羽織・袴という出で立ちだった」という一
よう。伝統的な日本文学の文豪たち、例え
文を翻訳する場合、前者の方略では、
“He
ば夏目漱石、谷崎潤一郎、川端康成等の小
wore a haori (formal coat over kimono)
説の多くが、D. Keene や E. Seidensticker
and a hakama (pleated skirt).”という訳
等の日本文学研究家・翻訳家によって英訳
文が考えられ、後者の方略では“He wore
されており、これらの翻訳作品は通常英語
a tuxedo.”という訳文が考えられる。さら
になりにくいとされる日本語をどのように
に私の見解では、ここに“neutralization”
英語で表せばいいかという問いに貴重な範
(中和化)という第三の方略を加えることが
例と示唆を与えてくれるものである。
できる。これは文化的特徴を捨象して、一
夏目漱石の『坊ちゃん』には、U. Sasaki、
般的・抽象的・中間色的な表現で代替する
A. Turney、J. Cohn の三人の翻訳者による
方略で、これによれば上の文は“He was in
翻訳書が出版されている。本発表は、この
formal attire.”と表現することが考えられ
三種類の翻訳を、上に述べた「文化の翻訳」
る。本発表ではこの三つを分析の基準にし
の観点から比較検討し、それぞれの翻訳者
た。
がどのような工夫を凝らし、どのような方
一般に、英語に訳された翻訳作品におい
略を駆使しているか、そしてそこにどのよ
ては、原文への忠実さよりも、英語として
の自然さを、つまり英語の文学作品として
うな理論的な傾向が見出されるかを考察し
の自立性を重んじる “domestication”の傾
たものである。
向が強いと言われる。本発表では『坊ちゃ
L. Venuti (1995) は、The Translator’s
ん』の3種類の翻訳について、様々な日本
Invisibility: A History of Translation に
的事物・事象・概念および日本語において
おいて、翻訳の方略を“foreignization”(異
特徴的なオノマトペの訳を比較検討した結
化)と“domestication”(同化)に大別し
果、Sasaki に“foreignization”、Turney
12
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
に
“
domestication”
、
Cohn
に
の傾向が強いのは、やはりそれが日本人の
“neutralization”の傾向があるという結論
手によるものだからであろうと推測される。
を示した。Sasaki の訳に“foreignization”
(広島工業大学教授)
研 究 発 表
help 構文における to の出没に関する一考察
― 学習英文法への貢献を視野に入れて―
拝田 清
本研究は help 構文,
特に help O to do...
(a) Ellen helped Jeff to win the match
と help O do...における to の出没に関する
by cheering him on.と(b) Ellen helped
取り扱いを学習英文法の視点から考察す
Jeff win the match by cheering him on.
るものである。学習参考書や英文法書,英
ではどちらを使うかというアンケートを
和辞典では,help 構文における to の出没
行っている。その結果は図1のとおりであ
理由を説明しているものは少ない。説明は
る(数値は%)。
あっても,主語の関与の程度によって決ま
このような help 構文の分析に対して,
るとする説明と,地域差や文体差であると
拝田(2008)では,help の持つ意味に注目
する説明に分かれる。
すると同時に,ネクサスの関係も視野に入
前者では『ジーニアス英和大辞典』(小
れて分析をする必要があると問題提起し
西 2003)が「(1) to の出没は, リズムや文
た。help の意味とは,
「助ける」と一口に
体にもよるが,S が直接「手を貸して」
言っても,助けられる側にある行為をする
を含意するときに多く省略される…」とい
能力がなく,直接的な援助が必要な場合の
う説明をしている。さらに,『ジーニアス
「助ける」と,助けられる側に最低限の能
英和辞典 第 5 版』(南出 2014)では,意味
力があり,声援などによって後押しすると
のうえで to do は間接的な援助に,do は
いう間接的な援助で済む場合の「助ける」
直接的な援助に用いるという傾向は見ら
があるということである。また,ネクサス
れるが,わずかな違いなのでほぼ同義と考
の関係とは,ここでは,help O to do [do]...
えて差し支えない」
の目的語(O)と to do / do の間には主述の
(下線は本稿筆者による) という記述が加
関係が存在するということである。
わった。
検証方法としては看護・介護の専門書か
ら help の用例を抽出し,主語が有生か無
一方,後者の例では 『オーレックス英
和辞典 第 2 版』
(野村・花本・林 2013)
生か,そして医療関係(者)かそうでないか,
の「PLANET BOARD 34」
(p.910)によ
さらに目的語(O)が do / to do の表す動作
ると,アメリカとイギリスの母語話者に
を行える自立・自発性があるかないかで,
13
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
それぞれ点数化を試みた。看護・介護の専
性があれば原形不定詞が優勢であり,自
門書を選んだ理由は,援助する側とされる
立・自発性がなければ to 不定詞が優勢と
側の関係性が明確に出ていると想定した
いう結果を得た。ごく限られたテキストに
からである。仮説では,点数が高ければ高
よる検証ではあるが,不定詞ネクサスの関
いほど原形不定詞が選ばれる可能性が高
係が help 構文における to の出没に関与し
く,点数が低ければ to 不定詞が選ばれる
ている可能性は無視できないと考えられ
とした。
る。
検証の結果は,目的語(O)に自立・自発
(四天王寺大学准教授)
図1
両方使わ
(a) を使う
(b) を使う
両方使う
USA
6
71
21
2
UK
12
37
49
2
ない
シ ン ポ ジ ウ ム
AJELC 10 周年記念 課題と展望
奥津 文夫
村田 年
池内 正直 馬場 千秋
本シンポジウムは、AJELC10 周年を記
1)会員は少数であっても、様々な分野の
念して、本学会の発起人のうち 4 名がパ
人、幅広い年齢層の人達 2)例会ではラ
ネリストとなり、過去 10 年を振り返ると
イト二ングトーク、シンポなどなるべく多
ともに、これからのあり方について、各専
くの会員が参加できるプログラムを多く
門分野の観点からの意見を述べた。下記に
する。3)会費はできる限り安くする。例
それぞれの要旨を記す。
会参加費も。4)情報交換と友好を深める
<日英比較文化>
ために懇親会を大切にする。5)研究発表
日本に数多くある学会の中で「小規模で
や紀要投稿には投稿規程、編集委員会の調
あっても特色豊かな、魅力ある学会、特異
整のみとし、査読審査などは不要。業績作
な学会」としての存在価値を高めていきた
りの学会ではなく、互いの研究発表から、
い。次のような特色を考えている。
レベルの高い低いなどは関係なく、様々な
14
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
示唆や情報を交換し、親しく話し合える友
ができる、3)すなわち、英語のテキスト
好的な学会を目指したい。
はあまねく英語コミュニケーションの教
(奥津文夫:和洋女子大学名誉教授)
材でもあり得る、といった点についても、
<英語学>
更に多くの研究と教材研究が進められる
特に「語学」面について 10 年間を概観
ことが望ましい。
した。当学会の紀要・研究発表・講演等を
(池内正直:明治大学名誉教授)
眺めると、語彙・言語表現・文法の分野に
<英語教育>
おいては多彩な、活発な発表がなされ、今
過去 10 年を振り返ると、英語教育関係
後も期待できるが、音声面についてはやや
の講演、発表が最も多い。英語教育全般が
少なく、今後増えることを期待したい。日
最も多く、ことばや文化という観点から見
英語の比較の観点から言えば、比較に重点
た英語教育という、本学会ならではのトピ
をおいた学術研究から英語教育への応用
ックがその後に続く。 一方で、考えなく
にポイントをおいた発表まで様々だが、こ
てはならないのは、研究発表の質の向上で
の線はこれでよいと思った。学会役員の若
ある。紀要にそのまま投稿できるレベルの
返りをはかり、若い会員も年配の人ももっ
発表が望ましいが、根拠のない、机上の空
と気軽に発表できる雰囲気にしたい、また
論の発表が時折見られる。また、専門外の
学会の事業として「セミナー」を提案した
方が英語教育について発表をすることも
いと述べた。
あるが、先行研究などに触れることもなく、
(村田 年:千葉大学名誉教授)
持論だけを述べることもある。本学会の場
<英米文学>
合、データを使った実証研究だけでなく、
この 10 年の文化・文学関係の研究と発
フィールドワークや文献研究もあるのが
表に関しても、多種多様で内容の濃いもの
魅力であるし、中高教員の方も会員におら
も少なくなかったが、言語学・教育学関連
れるので、実践報告を充実させると同時に、
の成果に比べると、量的にもう一歩の感が
専門分野の人との共同研究などを進めて
する。今後は、含蓄豊かな文化・文学関係
いくとよいのではないか。
のテキストは、1)学習者が楽しみながら
(馬場千秋:帝京科学大学准教授)
読解力と教養の増進に赴くことができる、
2)実は、コミュニケーション能力の養成
の面でも大変多くのものを学び取ること
15
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
第 11 回 会員総会
報告
馬場
千秋
2015 年 6 月 13 日(土)10 時 15 分より明治大学駿河台校舎リバティータワー1125 教室にて,
第 11 回会員総会を開催いたしました。議長として,大澤美穂子氏が選出されました。
☆ 活動報告
2014 年 4 月~2015 年 3 月まで
<例会>
回
年月日
講演・発表
講演者・発表者
タイトル
第 44 回
2014.4.12
講演
坂内 正
日本人の名づけの意識の変化について―
近年の女児の名づけへの欧米の文化
の影響に関する一考察―
杉本 一潤
シェイクスピア劇の文化的背景―ギリシ
ャ・ローマ神話を中心に ―
第 45 回
2014.5.10
講演
石川 慎一郎
日本人英語学習者を科学する―国際学習者
2014 年 2 月に
コーパス ICNALE の挑
予定していた
戦―
内容
研究発表
永山 悦子
高校における英語教育の行方―彼らの
Writing から―
鈴木 雅子
False Friends-英語とデンマーク語を例
に
第 46 回
2014.8.18
講演
池内 正直
へミングウェイの短編 “ Ten Indians”に
ついて—その手法や主題をめぐって、教室
でまた原稿用紙の前で
研究発表
鈴木 政浩
楽しさの要因をふまえた望ましい英語授
業の枠組み
白鳥 金吾
英語学習者の意欲を高める実践的工夫
—イングリッシュキャンプの可能性を探
る—
第 47 回
2013.12.14
講演
中野 美知子
早稲田大学・グローバル・エジュケーショ
ンセンターでの英語教育について
研究発表
高津 友理子
公立小学校5年生初心者レベル 英語授
業の提案
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AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
第 48 回
太田 辰幸
言語と文化のある体験的比較論
講演
湯澤 伸夫
英語音声の特徴と教育への応用
研究発表
外山 徹
2013.12.14
英語の授業は英語で―実践から見た意義
と課題
高橋 みゆき
発信力を高めるための Post-reading 活
動―教科書の内容を発展させたタスクの
工夫―
第 49 回
2015.2.21
講演
平野 靖雄
教育実践の反省と目指す方向性
三宅 美鈴
眼球運動から見る小学生の読み能力と AR
技術を用いた音・文字・意味を結び付ける
教材開発について
<年次大会>
回
年月日
講演・発表
講演者・発表者
タイトル
第 10 回
2014.6.14
講演
田地野 彰
これからの英語教育を考える―小学校英
語教育から大学英語教育まで―
研究発表
勝又 恵理子
個人主義と集団主義的価値観の差違につ
いて-日本とアメリカ文化の比較
根本 貴行
説明的妥当性から考える日英語における
母語の発達過程上に見られる削除現象
吉野 康子
長文読解問題における言語・文化・教育に
関する題材―英語教員の資質を問う教員
採用試験か―
馬場 千秋
スローラーナーの書く英作文の量と英語
力の関係
特別講演
行方 昭夫
文学に見る英国人のバランス感覚
<Newsletter>
号数
刊行日
巻頭言
号数
刊行日
巻頭言
第 42 号
2014.8.8
森住 衛
第 44 号
2014.3.31
吉野 康子
第 43 号
2014.12.10
伊藤 満里
17
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
☆ 活動計画
2015 年 4 月~2016 年 3 月
<総務委員会>
・ 2015.6.13 理事会・評議員会、総会の実施
・ 会員数 98 名
<財務委員会>
会費は一般会員 4,000 円 学生会員 1,000 円
賛助会員 8,000 円である。
<例会委員会>
2015 年 4 月以降の例会
回
第 50 回
年月日
講演・発表
講演者・発表者
講演
羽鳥 博愛
英語学力の再検討とその指導案
研究発表
根本 貴行
日英語母語話者の文法発達過程における
2014.4.11
タイトル
疑問詞疑問文の獲得時期について
橘
広司
Englishes の通用性を解決する異文化間リ
テラシー
第 51 回は 8 月 19 日に、第 52 回は 10 月 10 日、第 53 回は 12 月 12 日、第 54 回は 2016
年 2 月に開催予定である。
<大会委員会>
回
年月日
講演・発表
講演者・発表者
第 11 回
2015.6.13
基調講演
森住 衛
異文化コミュニケーションを考える視点
― 12 の二項対立を中心に ―
1
基調講演
タイトル
國廣 哲彌
心的視点と表現構造のあり方
鈴木 雅子
英和辞書におけることわざ記述の通時的
2
研究発表
研究
東郷 多津
学習者主体の英語ライティングクラスで
の学生の学びについて
堀部 秀雄
日本文化」は英語でどう表現できるか?
―『坊ちゃん』の三種類の英訳における翻
訳方略についての一考察―
拝田 清
18
help 構文における to の出没に関する一考
察―学習英文法への貢献を視野に入れて
―
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
シンポジ
奥津 文夫
ウム
村田 年
AJELC10周年記念 課題と展望
池内 正直
馬場 千秋
<広報通信委員会>
2015 年度の発行時期:7,11,3 月の 3 回とする(4 か月に 1 回)。
<紀要委員会>
(1) AJELC Journal については、2 年に 1 回の発行とする。2016 年 7 月に 10 周年記念
号を発行予定である。原稿募集を間もなく開始する。
(2) 今年度は 10 周年記念随想集を発行する。原稿締切を 7 月末日とする。
<その他>
(1) 2015 年度人事について
今年度は、任期の 2 年目なので、大幅な変更はない。
理事を務められた石田雅近氏が退会されたので、理事が 1 名減となった。
(2) 2016 年度人事について
現在、幹部会および運営委員会で話を進めているが、会長および事務局が交代する予定
である。
<2014 年度決算報告および 2015 年度予算案>
2014 年度決算報告および 2015 年度予算案が提示され、承認されました。
2014 年度決算
収入の部
1,048,499
前年度繰越金
2014 年度年会費(¥4,000×60 名)
240,000
2014 年度年会費(¥3,000×2 名)
6,000
過年度分年会費(¥4,000×4 名)
16,000
2015 年度年会費(¥4,000×5 名)
20,000
2014 年度年会費(¥8,000×1 社)
8,000
例会参加費(非会員¥500×16 名)
8,000
年次大会参加費(非会員¥1,000×5 名)
5,000
57
銀行利息
1,351,556
計
19
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
支出の部
71,280
会場使用料(明治大学へ)
324
振込手数料
203,299
紀要・封筒印刷代金
216
振込手数料
講演料
50,000
講演者交通費
37,940
事務局経費
5,000
通信費
1,305
コピー代
2,640
懇親会補助 (¥5,000×15 名+¥4,000×2 名)
83,000
計
455,004
収入 - 支出
896,552
2015 年度予算案
収入の部
前年度繰越金
896,552
2015 年度年会費(¥4,000×70 名)
280,000
過年度分年会費(¥4,000×10 名)
40,000
例会参加費
5,000
年次大会参加費
5,000
計
1226,552
支出の部
83,000
会場使用料
随想集
800,000
講演料
50,000
講演者交通費
40,000
事務局経費
5,000
通信費
2,000
50,000
懇親会補助
計
1030,000
196,552
収入-支出
20
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August 18, 2015
事 務
局
だ
1.会費納入・名簿整理について(重要)
既に多くの方から会費をお納めいただい
ておりますが、まだの方もおられますので、
納入についてご案内申し上げます。会費は
次の通りです。
一般会員
4,000 円
学生会員
1,000 円(2015 年度より)
賛助会員
8,000 円
リバティータワー11454 教室(14 階)
JR 中央線・総武線
御茶ノ水駅
御茶ノ水橋口下車
徒歩 5 分
内容:
14:30-14:35 会長挨拶
14:40-15:10 研究発表 1
(質疑応答 10 分を含む)
利用いただくことも可能です。
「英語教育と人権教育」
銀行口座:三菱東京 UFJ 銀行
普通
り
場所:明治大学駿河台校舎
この他に,銀行への振込,郵便振替をご
国分寺支店
よ
和田 聖奈(桜美林大学 学生)
0132870
口座名:
日英言語文化学会事務局
馬場千秋
15:10-15:15
休憩
15:15-15 : 45
研究発表 2
(質疑応答 10 分を含む)
郵便振替:00190-2-418526
「 Could/Can/Would/Will you? ― 実 際 の
加入者名:日英言語文化学会
使用場面から見た法性の働き」
会費納入が 2 年間ない方については,会
テーボルト,ジョセフ
員資格を失いますので,ご注意ください。
(明海大学 大学院生)
15 : 45-15 : 55 休憩・情報交換
2.名簿について(重要)
15 : 55-16 : 55
名簿記載事項に変更がある方は,事務局
講演
(質疑応答 10 分を含む)
までお知らせください。特に E-mail が変わ
「『英語教育学』確立へのこだわりをめぐ
られている場合は,すぐにお知らせくださ
って ―34 年間の研究を振り返る―」
い。事務局から例会のお知らせや
石田 雅近(清泉女子大学名誉教授)
Newsletter をお送りするたびに,アドレス
16 : 55-17 : 00
が変わっているために戻ってきてしまうメ
諸連絡
ールが多数ございます。ご本人からお申し
4.例会での発表者・講演者募集
出がない限り,新しいアドレスにお送りす
2015 年 10 月以降の例会での発表者お
ることができません。どうぞご協力のほど
よび講演者を募集しております。自薦他薦
よろしくお願い申し上げます。
は問いませんので,事務局までお知らせく
ださい。なお,発表は会員の方に限ります。
3.第 51 回例会
第 51 回例会の詳細は次の通りです。
日時:8 月 19 日(水)
14:30-17:00
21
AJELC Newsletter No. 45
August 18, 2015
編集後記
前期試験等でご多忙の中、原稿をお寄せいただいた先生方に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
本学会は 10 周年を迎え、10 周年記念大会(第 11 回年次大会)の他にも記念事業として随想集、紀要が発
行されます。 Newsletter もますます充実化を期したいと意気込んでおります。
残暑が続きます。皆様どうぞご自愛専一にお過ごしなさいますようお祈りいたします。
AJELC Newsletter 第45号
2015年8月18日 発行
発行人:奥津文夫
編集:日英言語文化学会(AJELC)事務局 馬場千秋・伊藤満里・小川貴宏・長谷川修治
発行所:日英言語文化学会
(〒409-0193 山梨県上野原市八ツ沢2525 馬場千秋研究室内)
連絡先:Tel/Fax: 0554-63-6942 E-mail: [email protected]
22
(M.I.)