サボイ事件

最 新判 決情報
2012 年
〔12 月 分 〕
〇サボイ事 件
知 財 高 裁 H24.12.5 H24(行 ケ)10277 審 決 取 消 請 求 事 件 (土 肥 章 大 裁 判 長 )
「SAVOY」の文 字 及 び図 形 からなる登 録 商 標 (右 図 )が、不 使 用 取 消 審 判 により、第 14
類 「身 飾 品 、宝 玉 及 びその模 造 品 、時 計 」について登 録 が取 り消 されたので、当 該 審 決 の
取 消 しが求 められた事 案 である。争 点 は、使 用 証 拠 として提 出 された「ロゴチャーム」と呼 ば
れる商 品 が、指 定 商 品 「身 飾 品 」に含 まれる「チャーム(鎖 用 宝 飾 品 )」か、それとも「バッグ
の装 飾 品 」かである。「 チャーム」とは、携 帯 電 話 やバッグなどに取 り付 ける鎖 などのついた
小 さな飾 りである。
判 決 では、第 14 類 「身 飾 品 」を、おしゃれを目 的 として直 接 身 体 や衣 服 等 につける装 飾 品 であると定 義 し
た。次 に、原 告 使 用 の「ロゴチャーム」を、時 計 やブレスレットの鎖 部 分 やバッグのほか、洋 服 につけたり、それ
自 体 をブレスレットやネックレスとして使 用 することができる商 品 であり、おしゃれを目 的 として使 用 される装 飾
品 である「身 飾 品 」であると認 定 した。
これを審 決 は、「バッグの装 飾 品 」であるので「身 飾 品 」には含 まれないと判 断 したのだが、判 決 はバッグに
も使 えるが、「身 飾 品 」としても使 用 できる点 を評 価 したことになる。これまでも、1 つの商 品 が 2 つのクラスや
商 品 概 念 に属 すると判 断 されたことがあることは周 知 の通 りである。
〇セルフリペア事 件
知 財 高 裁 H24.12.5 H24(行 ケ)10281 審 決 取 消 請 求 事 件 (土 肥 章 大 裁 判 長 )
第 9 類 「電 気 通 信 機 械 器 具 の、自 己 修 復 機 能 を有 する部 品 及 び附 属 品 (自 分 自 身 で修 繕 ・修 理 するため
の商 品 を除 く)」を指 定 商 品 とする出 願 商 標 「セルフリペア」(標 準 文 字 )が識 別 性 なしとして拒 絶 されたため、
当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。
判 決 は、「セルフリペア」という一 連 の語 は一 般 的 な辞 書 には掲 載 されていないが、「セルフ」も「リペア」もよ
く知 られた語 であり、人 が物 を自 分 自 身 で修 理 する、自 己 修 復 の意 味 を想 起 させる。また電 気 通 信 機 械 器 具
の分 野 で自 己 修 復 機 能 や自 己 修 復 型 商 品 がある。そうすると、本 願 商 標 はまさに指 定 商 品 の記 載 のように
自 己 修 復 機 能 という品 質 を表 しているとして、原 告 の請 求 を棄 却 した。
〇地 域 ブランド「博 多 織 」事 件
福 岡 地 裁 H24.12.10 H23(ワ)1188 商 標 権 侵 害 差 止 等 請 求 事 件 (山 之 内 紀 行 裁 判 長 )
地 域 ブランドに関 する初 の商 標 権 侵 害 事 件 判 決 である。原 告 博 多 織 工 業 組 合 は、
地 域 団 体 商 標 「 博 多 織 」 の 商 標 権 者 で あ り、 組 合 員 の 製 品 に は「 博 多 織 」 の 証 紙
(右 上 )が貼 られている。
他 方 被 告 は 地 元 のメーカー 株 式 会 社 はかた 匠 工 芸 とそ の親 会 社 である日 本 和
装 ホールディング株 式 会 社 、そして被 告 ら製 品 に貼 られる証 紙 (右 下 )を制 作 してい
る博 多 織 物 協 同 組 合 の 3 社 である。
而 して本 件 は、被 告 商 標 が原 告 登 録 商 標 に類 似 し、商 標 権 を侵 害 することを理 由
に、被 告 に対 してその使 用 差 止 と 1 億 5 千 万 円 の損 害 の賠 償 を求 めた事 案 である。
争 点 は、被 告 商 標 の使 用 が、商 標 法 第 26 条 1 項 2 号 の商 標 権 の効 力 の及 ばな
い範 囲 に属 するか否 かである。
判 決 は、地 域 団 体 商 標 の登 録 制 度 が新 設 された趣 旨 を、地 域 外 の事 業 者 が地 域 ブランドを便 乗 使 用 す
ることによる弊 害 を排 除 することにあり、地 域 ブランド商 品 を販 売 する特 定 の事 業 者 のための制 度 ではなく、
地 域 事 業 者 全 体 のための制 度 であるとした。
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その上 で、地 域 団 体 商 標 のかかる表 示 は、地 域 に属 する者 が広 く使 用 を欲 する商 標 であり、権 利 者 である
団 体 に属 さない他 の事 業 者 ( アウトサイダー)による取 引 上 必 要 な表 示 に対 して、その効 力 は過 度 に及 ばな
いようにする必 要 があるので、商 標 法 26 条 1 項 2 号 又 は 3 号 が適 用 されるとした。
また権 利 者 たる団 体 の資 格 として、団 体 への自 由 加 入 が可 能 であることを原 則 としているところ、何 らかの
事 情 で団 体 への加 入 が制 限 され、または自 らの判 断 で団 体 へ加 入 しない場 合 あっても、地 域 団 体 商 標 やこ
れに類 似 する商 標 を使 用 することは妨 げられるべきではないとした。
そこで本 件 被 告 商 標 「博 多 帯 」は、取 引 上 必 要 な情 報 である自 らの産 地 及 び帯 の製 法 等 を表 すためのも
のであり、法 26 条 1 項 2 号 に該 当 するとして、原 告 の請 求 を棄 却 した。
そして、本 判 決 においてもっとも注 目 すべき点 は、地 域 団 体 商 標 に類 似 する商 標 の使 用 が、商 標 権 侵 害 と
なる得 るケースを例 示 していることである。地 域 団 体 商 標 は、そもそも地 域 名 と商 品 名 から成 る文 字 商 標 であ
るところ、アウトサイダーの商 標 も当 然 これに類 似 することになる。そこで、アウトサイダーの使 用 商 標 が、地
域 団 体 商 標 権 者 が使 用 している特 有 のロゴ等 に類 似 しているなどの事 情 がある場 合 には、商 標 権 侵 害 とな
り得 ると判 示 している。
本 件 でいえば、もし被 告 証 紙 の態 様 が原 告 証 紙 の態 様 に類 似 するものであれば、需 要 者 は被 告 商 標 を原
告 地 域 団 体 商 標 権 者 の一 員 であるかのように誤 認 して商 品 を購 入 するおそれがあるからである。しかし、本
件 において、被 告 証 紙 は原 告 証 紙 とは態 様 がまったく異 なり、原 告 証 紙 に便 乗 しようとするものでないことは
明 らかである。
ただし、問 題 点 としては、本 来 商 標 権 侵 害 は登 録 商 標 と被 告 商 標 とを比 較 すべきであるところ、そこに登 録
地 域 団 体 商 標 とは別 に、その使 用 商 標 との比 較 を必 要 とした点 である。しかし、実 際 の判 断 基 準 としては、
地 域 団 体 商 標 の商 標 権 の効 力 を規 制 する基 準 として好 感 が持 てるものであり、意 義 があると思 う。
本 件 とは直 接 関 係 はないが、聞 くところによると、地 域 団 体 商 標 制 度 が地 域 内 の仲 間 外 しやいやがらせに
利 用 されることがあるという。地 方 では昔 からの村 意 識 が依 然 として強 く、古 くからの顔 見 知 りであるがゆえに、
さまざまな感 情 や利 害 関 係 が入 り乱 れ、なかなか一 枚 岩 とは行 かないようである。確 かに、法 律 上 は団 体 へ
の加 入 は自 由 ということになっているが、それは建 前 論 であり、実 際 に団 体 への加 入 を拒 否 し、地 域 ブランド
を使 用 させないようにするための手 段 として、地 域 団 体 商 標 の登 録 を利 用 することができるという。
本 件 の場 合 、前 提 事 実 として、被 告 匠 工 芸 は、その前 身 である訴 外 匠 工 芸 が解 散 したことで、その事 業 と
従 業 員 を引 き継 いだ者 である。訴 外 匠 工 芸 は原 告 の組 合 員 であったが、その事 業 を引 き継 いだ被 告 匠 工 芸
が、大 企 業 である日 本 和 装 の子 会 社 であったことからか、被 告 匠 工 芸 の組 合 への加 入 申 込 みに対 して明 確
な回 答 をせず、逆 に原 告 証 紙 を使 用 することが商 標 権 侵 害 である旨 の警 告 を行 なった。そこで被 告 はやむな
く「博 多 織 」の使 用 に代 えて被 告 商 標 「博 多 帯 」の使 用 を開 始 した旨 が書 かれている。
この点 を判 決 では、被 告 匠 工 芸 は先 使 用 権 も引 き継 いでいるので、原 告 の本 件 請 求 は権 利 濫 用 であると
判 断 されている。このことも、地 域 団 体 商 標 制 度 の弊 害 を垣 間 見 るようである。
〇ユニキューブ事 件
大 地 判 H24.12.13 H21(ワ)13559 損 害 賠 償 請 求 事 件 (谷 有 恒 裁 判 長 )
建 物 の断 熱 ・防 音 工 法 「デコスドライ工 法 」について子 会 社 が特 許 権 を有 する原 告 が、同 工 法 を用 いたデ
ザイナーズ戸 建 賃 貸 住 宅 ブランド「ユニキューブ」の設 計 施 工 事 業 について、被 告 に対 して非 独 占 権 を与 えた
ところ、被 告 が同 工 法 を用 いた建 築 工 事 のほか、外 観 は同 じであっても同 工 法
が採 用 されていない建 築 工 事 も請 け負 ったため、原 告 が有 する登 録 商 標 「ユニ
キューブ」(右 図 )の商 標 権 侵 害 を理 由 に損 害 賠 償 を求 めた事 案 である。
原 告 登 録 商 標 の指 定 商 品 は第 36 類 「建 物 の管 理 」ほかであり、第 37 類 「建 築 工 事 」は含 まれていなかっ
たため、まずはこの点 が争 点 になった。しかし、判 決 は、被 告 が請 け負 った建 築 工 事 は、指 定 役 務 中 の「建 物
の売 買 」と密 接 な関 係 があり、誤 認 混 同 のおそれがあるとして、類 似 する役 務 であると判 断 した。第 36 類 の
「建 売 住 宅 」と第 37 類 の「注 文 住 宅 」とは一 応 区 別 されているので、まずこの点 は批 判 の対 象 になるであろ
う。
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次 に被 告 が、デコスドライ工 法 を使 用 しない住 宅 の請 負 工 事 について原 告 商 標 を使 用 した点 について、両
者 間 の販 売 契 約 は例 外 を許 さない趣 旨 ではなく、施 主 に対 して同 工 法 を標 準 仕 様 として提 示 した結 果 、施 主
が同 工 法 を採 用 しなくなった場 合 を含 むとした。つまり、建 築 請 負 契 約 について施 主 との話 し合 いの過 程 で本
件 商 標 を使 用 することは許 諾 の範 囲 に含 まれるものであり、結 果 として同 工 法 が採 用 されなかったことは契
約 違 反 にはならないと判 断 した。
しかし、原 告 の商 標 権 には第 37 類 「建 築 工 事 」は含 まれていなかったのであるから、そもそも原 告 は商 標
権 の範 囲 外 について被 告 に使 用 許 諾 したのであって、これに違 反 したとしても商 標 権 侵 害 の問 題 は初 めから
なかったのである。
損 害 額 の計 算 においても判 決 は、平 成 19 年 以 降 、被 告 が同 工 法 を施 主 に説 明 せずに本 件 商 標 を使 用 し
た点 を商 標 権 侵 害 と認 めた。しかし、この点 も的 外 れの認 定 であることは、上 記 の通 りである。
その上 、商 標 法 38 条 3 項 の使 用 料 相 当 額 の損 害 を認 めているが、原 告 が主 張 するように、原 告 は指 定
役 務 である「建 物 の管 理 、建 物 の売 買 」他 の役 務 については本 件 商 標 を使 用 していないのである。それにも
拘 らず判 決 は、原 告 の使 用 実 績 を踏 まえると本 件 商 標 の顧 客 吸 引 力 がまったくないとはいえないとしている
が、しかし、それも登 録 商 標 の顧 客 吸 引 力 ではなく、未 登 録 商 標 のそれに過 ぎず、本 件 商 標 が周 知 性 を獲 得
しているなどの事 情 がない限 り、保 護 の対 象 となるような性 質 のものではない。
本 件 は、商 標 法 の基 礎 を見 失 った判 決 であり、被 告 に気 の毒 というほかはない。
〇いなば和 幸 事 件
知 財 高 裁 H24.12.13 H23(行 ケ)10344 審 決 取 消 請 求 事 件 (芝 田 俊 文 裁 判 長 )
第 43 類 「飲 食 物 の提 供 」を指 定 役 務 とする登 録 商 標 「いなば和 幸 」(右 上 )
に対 して、先 登 録 商 標 「とんかつ和 幸 」(右 中 下 )ほかを引 用 した無 効 審 判 請 求
が不 成 立 とされたため、当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。
元 関 係 会 社 であったなどの事 情 があるが、争 点 は、本 件 商 標 「いなば和 幸 」
から「ワコウ」のみの称 呼 が生 ずるか否 かである。
判 決 は、本 件 商 標 中 の「いなば」は氏 の「稲 葉 」、地 名 の「因 幡 」を容 易 に想 起 させる。またウィ
キペディアには、「豚 カツ屋 の名 称 として、3 つあり、別 会 社 である」と記 載 され、原 告 の「とんかつ
和 幸 」、協 和 の「とんかつ和 幸 」、被 告 の「とんかついなば和 幸 」と記 載 されていることなどから、本
件 商 標 は需 要 者 らに「いなば」と「和 幸 」とを結 合 したひとまとまりのものとして認 識 されているの
で、「イナバワコウ」の称 呼 が生 ずるとした。
つ つみの おひな っこや 事 件 最 高 裁 判 決 の 要 部 観 察 の 判 断 基 準 に ついて は、 本 件 商 標 中 の
「いなば」は平 仮 名 で書 かれ、「飲 食 物 の提 供 」について一 般 的 ではなく、また他 方 の「和 幸 」の
語 についても、これを含 む店 名 が全 国 に多 数 あることから、「和 幸 」だけでは特 定 の事 業 主 体 を認 識 すること
ができないなど、強 い識 別 力 を有 するものではないとした。
その結 果 、本 件 商 標 は「イナバワコウ」の称 呼 しか生 じないので、引 用 商 標 とは非 類 似 であるとして、原 告
の請 求 を棄 却 した。
なお関 連 する事 件 として、本 件 商 標 に対 する異 議 事 件 であるいなば和 幸 事 件 (知 財 高 裁 H22.3.29)と
同 じ当 事 者 間 の和 幸 食 堂 事 件 (知 財 高 裁 H22.5.12)がある。
〇シャンパンタワー事 件
知 財 高 裁 H24.12.19 H24(行 ケ)10267 審 決 取 消 請 求 事 件 (土 肥 章 大 裁 判 長 )
第 43「飲 食 物 の提 供 」外 を指 定 役 務 とする登 録 商 標 「シャンパンタワー」が、公 序 良 俗 違 反 を理 由 とする
無 効 審 判 により無 効 とされたので、当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。無 効 審 判 請 求 人 (被 告 )は、
フランスの「シャンパン」保 護 団 体 である「シャンパーニュ地 方 ぶどう酒 生 産 同 業 委 員 会 」である。
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「シャンパン」については、原 産 国 であるフランスにおいて法 的 保 護 の対 象 になっており、世 界 的 にも周 知 著
名 であり、その名 称 には多 大 の顧 客 吸 引 力 が備 わっている。
そのため、本 件 商 標 「シャンパンタワー」からは「シャンパン」の称 呼 、観 念 が生 ずるので、「シャンパン」の位
置 付 けを考 慮 すると、本 件 商 標 を、飲 食 物 の提 供 や発 泡 性 ぶどう酒 という飲 食 物 に関 連 する本 件 指 定 役 務
に使 用 することは、フランスの国 民 感 情 を害 し、国 際 信 義 に反 するものであるとして、判 決 も審 決 を支 持 した。
なお「シャンパン」自 体 については、商 標 法 4 条 1 項 17 号 が適 用 されるが、本 件 は第 43 類 「飲 食 物 の提
供 ほか」を指 定 役 務 としたため、7 号 の公 序 良 俗 の規 定 が適 用 された。
〇自 動 車 用 ホイール形 態模 倣 事 件
大 地 判 H24.12.20 H24(ワ)3604 不 正 競 争 行 為 差 止 等 請 求 事 件 (山 田 陽 三 裁 判 長 )
自 動 車 用 ホイールの形 態 の模 倣 が争 われた事 案 である。しかし、原 告 が主 張 する両 商 品 に共 通 する最 大
の特 徴 は、同 種 商 品 に見 られる構 成 であり、保 護 の対 象 となる形 態 ではないので、実 質 的 に同 一 の形 態 で
はないとして、2 条 1 項 3 号 該 当 性 が否 定 された。
また 2 条 1 項 1 号 の周 知 商 品 等 表 示 の点 についても否 定 され、原 告 の請 求 が棄 却 されている。
〇プリント生 地 形 態 模 倣 事 件
大 地 判 H24.12.25 H23(ワ)5010 不 正 競 争 行 為 差 止 等 請 求 事 件 (谷 有 恒 裁 判 長 )
プリント加 工 した綿 織 物 の生 地 の形 態 の模 倣 に関 して、原 告 適 格 が問 題 になった事 件 である。被 告 は、原
告 の元 従 業 員 であり、退 職 後 、在 職 当 時 の取 引 先 からの注 文 を受 け、当 時 と同 じデザインの製 品 を製 造 し、
当 該 取 引 先 に納 品 したことが、形 態 の模 倣 になるとして原 告 より損 害 賠 償 の支 払 いが求 められた。
判 決 では、形 態 の模 倣 より保 護 を受 けるべき者 は、商 品 を商 品 化 して市 場 に置 く際 に、費 用 や労 力 を投 下
した者 であると定 義 し、本 件 においては、原 告 商 品 のデザインなどの商 品 形 態 を決 定 したのは、取 引 先 リーグ
社 であって、原 告 はリーグ社 から注 文 があった数 量 だけ製 造 し、すべてをリーグ社 に納 入 し、原 告 商 品 をリー
グ社 以 外 に販 売 することは予 定 されていなかった。またデザイン料 やプリント加 工 費 用 も代 金 の支 払 いという
形 でリーグ社 が実 質 的 に負 担 していたので、原 告 を商 品 の開 発 主 体 ということはできないとして原 告 の請 求
が棄 却 された。
〇ゲーム機 用 タッチペン形 態 模 倣 事 件
東 地 判 H24.12.25 H23(ワ)36736 不 正 競 争 行 為 差 止 等 請 求 事 件 (大 鷹 一 郎 裁 判 長 )
「ニンテンドーDS LITE」本 体 に収 納 可 能 なコイル状 ストラップ付 タッチペンの形 態 の模 倣 に関 する事 案 で
ある。原 告 商 品 は、被 告 商 品 が発 売 されるまでに 18 万 本 以 上 が販 売 されたヒット商 品 である。被 告 商 品 は、
タッチペンを構 成 するペン先 、ペン胴 、ペン尻 、コイル状 ストラップのコイル、接 合 部 の形 状 や材 質 等 多 様 な選
択 肢 があり得 るところ、商 品 形 態 全 体 が原 告 商 品 に依 拠 して作 られた実 質 的 に同 一 の形 態 であり、原 告 商
品 の形 態 を模 倣 したものと認 められ、損 害 の賠 償 を命 じられた。
なお不 競 法 第 5 条 の損 害 の推 定 規 定 は、原 告 商 品 と被 告 商 品 とが市 場 において代 替 性 がある場 合 に限
られるとして、原 告 商 品 の一 部 については、第 5 条 の適 用 はないとされた。
〇元 祖 ラーメン長 浜 家 事 件
知 財 高 裁 H24.12.25 H24(行 ケ)10142 審 決 取 消 請 求 事 件 (飯 村 敏 明 裁 判 長 )
第 43 類 「ラーメンを主 とする飲 食 物 の提 供 」を指 定 役 務 とする登 録 商 標 「元 祖 ラーメ
ン/長 浜 家 」(右 図 )に対 して、商 標 法 第 3-1-4 号 、同 6 号 、法 4-1-8 号 を理 由 に無 効
審 判 を請 求 したが、これが不 成 立 とされたので、当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案
である。
判 決 では、上 段 の「元 祖 ラーメン」は識 別 性 がないが、「長 浜 」に語 は滋 賀 県 長 浜 市
や福 岡 県 中 央 区 長 浜 地 区 を認 識 されることはあっても、「長 浜 家 」は 3 文 字 と短 く、称 呼 「ナガハマヤ」も 5 音
に過 ぎないから一 体 不 可 分 に認 識 されるとして、3-1-6 号 該 当 性 を否 定 した。
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法 3-1-4 号 のありふれた名 称 の点 についても、「長 浜 家 」の使 用 例 を示 す証 拠 は 2 件 のラーメン店 に過 ぎ
ず、またこれらが著 名 であるとの証 拠 もインターネットの検 索 結 果 のみであるので、法 4-1-8 号 にも該 当 するも
のではないとされた。
「長 浜 ラーメン」といえば、「博 多 ラーメン」と並 ぶ福 岡 の名 物 であり、また「家 系 ラーメン」に始 まり「○○家 」
というラーメン店 が多 数 存 在 することに鑑 みると、本 件 商 標 は識 別 性 を欠 くとの印 象 である。しかし、原 告 より
提 出 された証 拠 が極 めて僅 かであって、福 岡 空 港 、福 岡 県 下 のコンビニやデパートにおける「『長 浜 』ラーメ
ン」の写 真 、屋 台 の写 真 、電 話 帳 の検 索 結 果 等 であったことを考 えると、裁 判 所 もこのように判 断 せざるをな
いであろう。
〇トゥルーホワイトハイ事 件
知 財 高 裁 H24.12.25 H24(行 ケ)10179 審 決 取 消 請 求 事 件 (芝 田 俊 文 裁 判 長 )
登 録 商 標 「TRUE WHITE Hi(図 形 )」(右 図 )の第 11 類 の指 定 商
品 中 「LED ランプほか」について不 使 用 取 消 審 判 が請 求 されたが、不
成 立 とされたので、当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。原 告 (審 判 請 求 人 )は、「表 面 実 装 型 LED」
は、発 光 ダイオード、すなわち電 流 を流 すと発 光 する半 導 体 素 子 の一 種 であるので、照 明 器 具 ではなく、第 9
類 「電 子 応 用 機 械 器 具 及 びその部 品 」に含 まれると主 張 したが、判 決 は、日 本 電 子 機 械 工 業 会 規 格 の
「LED」分 類 表 に照 らし、「表 面 実 装 LED」は LED チップから放 射 された光 により蛍 光 体 が励 起 され白 色 発 光
を生 ずる、発 光 ダイオードを使 用 した光 源 としての LED ランプであり、単 体 で照 明 用 器 具 としての機 能 を有 す
る商 品 であるとして、審 決 を支 持 した。
〇カラーラインメモ事 件
知 財 高 裁 H24.12.26 H24(行 ケ)10253 審 決 取 消 請 求 事 件 (土 肥 章 大 裁 判 長 )
第 16 類 「カレンダー」を指 定 商 品 とする登 録 商 標 「カラーラインメモ」(標 準 文 字 )に対 して、商 標 法 4-1-10
号 及 び同 15 号 を理 由 に無 効 審 判 が請 求 されたが、周 知 性 が認 められないとしてこれが不 成 立 とされたので、
当 該 審 決 の取 消 しが求 められた事 案 である。
原 告 (無 効 審 判 請 求 人 )は、カレンダー制 作 会 社 であり、翌 年 度 版 カタログを前 年 の 4 月 頃 から販 売 代 理
店 に頒 布 し、営 業 活 動 を行 なっている。カレンダーは、販 売 代 理 店 から広 告 主 又 は小 売 店 に販 売 し、最 終 消
費 者 に販 売 するという流 通 経 路 をとっている。
原 告 カレンダー「カラーラインメモ」は、平 成 12 年 度 版 以 降 毎 年 制 作 され、本 件 商 標 が出 願 された平 成 22
年 までには合 計 で 115 万 部 が販 売 された。これは全 国 連 合 会 に所 属 する全 カレンダー283 種 類 中 、5 番 目 に
位 置 する多 い売 上 であった。またその間 、「カラーラインメモ」の名 称 をカレンダーに使 用 した者 はいなかった。
これらの事 実 より、判 決 は原 告 商 標 の周 知 性 を認 めて審 決 を取 り消 した。
〇マルチプログリーンズ事 件
知 財 高 裁 H24.12.26 H24(行 ケ)10187 審 決 取 消 請 求 事 件 (土 肥 章 大 裁 判 長 )
第 30 類 「小 麦 ・大 麦 ・オート麦 ・スピルリナ・クロレラ・花 粉 ・緑 茶 ・海 草 ・種 子
類 ・ほうれん草 ・朝 鮮 人 参 ・アルファルファ等 を主 成 分 とした粉 末 状 の加 工 食 料
品 」 を 指 定 商 品 と する 登 録 商 標 「 MultiProGreen /マル チプログリーン」( 右 上
掲 )に対 して、その使 用 商 標 (右 下 掲 )が被 告 (審 判 請 求 人 )の引 用 登 録 商 標
「PROGREEN」「プログリーン」と混 同 を生 ずるおそれがあるとして、法 51 条 1 項
変 更 使 用 による取 消 審 判 により登 録 が取 り消 されたので、当 該 審 決 の取 り消
しが求 められた事 案 である。
判 決 では、法 51 条 1 項 の取 消 審 判 の趣 旨 が、登 録 商 標 の不 当 な使 用 により一 般 公 衆 の利 益 が害 される
ことを防 止 するという公 益 的 性 格 にあることを、ユーハイム事 件 最 高 裁 判 決 を引 用 して確 認 した。その上 で判
決 は、登 録 商 標 と使 用 商 標 の類 似 性 、使 用 商 標 と引 用 商 標 の類 似 性 、両 商 標 の商 品 の関 連 性 、需 要 者 の
共 通 性 、引 用 商 標 の独 創 性 と周 知 著 名 性 等 から出 所 混 同 のおそれを検 証 し、さらに原 告 (商 標 権 者 )の故
意 については、被 告 より商 標 権 侵 害 の通 知 を受 けた後 も、使 用 商 標 を用 いた宣 伝 を行 なったことから認 定 す
るというように丁 寧 な事 実 認 定 と判 断 が行 なっている。
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