医薬発明の審査基準の改訂と取る べき対応

医薬発明の
医薬発明の審査基準の
審査基準の改訂と
改訂と取る
べき対応
べき対応
原謙三国際特許事務所
弁理士 藤田けんじろう
本日の
本日の講義概要
1.審査基準改訂の背景
2.改訂後の審査基準
・産業上利用することができる発明(一般審査基準)
・新規性・進歩性・サポート要件(医薬関連発明)
・欧米との簡単な比較
・事例等に基づく対応策
・今後予想される改訂の方向性
= 審査基準改訂の
審査基準改訂の背景 =
医薬関連の
医薬関連の審査基準の
審査基準の構造
1.特許・実用新案審査基準(一般審査基準)
第Ⅱ部 特許要件
・産業上利用することができる発明(改訂)
・新規性・進歩性(用途発明)
2.特定技術分野の審査基準
(1)生物関連発明
(2)医薬関連発明(改訂)
(3)・・・・・・・
= 審査基準改訂の
審査基準改訂の背景 =
■ 2010年問題
年問題
ブロックバスターの特許期間満了のピーク
■ 新薬創出の困難性増大
臨床試験等の厳格化
新規医薬のターゲットの枯渇
= 審査基準改訂の
審査基準改訂の背景 =
医薬関連発明の
医薬関連発明の保護体系の
保護体系の変遷
昭和34年改正法
医薬及び医薬の製法の発明は保護対象外(特32条)
昭和50年改正法
物質特許制度の導入。用途発明の導入。
(直近の改訂は平成18年6月)
平成17年4月
医薬発明の審査基準を新設
平成21年11月~
医薬発明の審査基準を改訂(今回の改訂)
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(一般審査基準)
一般審査基準) =
産業上利用することができる
産業上利用することができる発明
することができる発明
2.1.1.2 「人間を手術、治療又は診断する方法」に該当しないものの
類型
(3) 人間の身体の各器官の構造・機能を計測するなどして人体から
各種の資料を収集するための以下の方法は、医療目的で人間の
病状や健康状態等の身体状態若しくは精神状態について、又は、
それらに基づく処方や治療・手術計画について、判断する工程を
含まない限り、人間を診断する方法に該当しない。・・・
(a) 人体から試料又はデータを収集する方法、人体から収集された
試料又はデータを用いて基準と比較するなどの分析を行う方法。
(b) 人間の各器官の構造・機能の計測のための予備的処置方法。
ただし、人間を手術する方法に該当する工程、又は人間を治療
する方法に該当する工程を含む方法は、人間を手術する方法、又
は人間を治療する方法に該当する。・・・
= 主要
主要な
な改訂点の
改訂点の概要(
概要(一般審査基準)
一般審査基準) =
人体から
人体から各種
から各種の
各種の資料を
資料を収集するための
収集するための方法例
するための方法例
〔事例20-1〕 磁気共鳴撮像方法
(特許請求の範囲 ): 磁気共鳴撮像装置による磁気共鳴撮像方
法において、撮影対象領域に対して、スライス方向の傾斜磁場
を発生させながら90°パルスを照射し、所定量の位相エンコー
ド方向の傾斜磁場を発生させ、スライス方向の傾斜磁場を発生
させながら180°パルスを照射し、リードアウト方向の傾斜磁場
を発生させながら当該領域から磁気共鳴信号を検出することに
より実行されるパルスシーケンスを、位相エンコード方向の傾
斜磁場の強度を低次から高次に順次変えながら繰り返し実行
する、磁気共鳴撮像方法。
(補足):本事例は、改訂前には、「医療機器の作動方法に該当せ
ず、かつ人間を診断する方法に該当する」と判断。
「産業上利用することができる
産業上利用することができる発明
することができる発明」
発明」が改訂
された意義
された意義
■ 医療方法の形態でしか表現できない医療発明が、
発明対象となる契機となる。医療方法の形態でしか
表現できないDDSなど。
■ ただし、いわゆる医師の行為としての医療方法自
体が、特許法の保護対象となることは、当面ないと考
えられる。
= 保護対象
保護対象に
に関する米欧
する米欧との
米欧との比較
との比較 =
米国
In re Schoenwald, 22 USPQ2d 1671 (Fed.
Cir. 1992)
既知の化合物に関して、引用例に開示され
ていない重要な用途を発見した場合でもク
レームの新規性は喪失する。
⇒ 治療方法等の特許取得は可能
= 保護対象に
保護対象に関する米欧
する米欧との
米欧との比較
との比較 =
欧州①
欧州① EPC53 条 特許性の
特許性の例外
欧州特許は,次のものについては,付与されない。
(a) (b)
省略
(c) 手術又は治療による人体又は動物の体の
処置方法及び人体又は動物の体の診断方法
この規定は,これらの方法の何れかで使用す
るための生産物,特に物質又は組成物には適
用しない。
= 保護対象に
保護対象に関する米欧
する米欧との
米欧との比較
との比較 =
欧州(
)
欧州(拡大審決G
拡大審決G1/04 2005/12/16)
■ データ収集を行う検査工程のみからなる発
明は、「人体又は動物の体の診断方法」では
なく,特許の保護対象から除外されない。
= 保護対象に
保護対象に関する米欧
する米欧との
米欧との比較
との比較 =
欧州(
欧州(拡大審決G
拡大審決G1/07 2010/2/16 )
「人体への物理的な介入(intervention)を含む診断のための
撮像方法」が特許性の例外(特許の保護対象からの除外)に
あたるとする審決
極性化したキセノンガスを被験者へ供給するステップは,極性
化したキセノンガスを心臓へ注入するという人体への物理的な
介入を包含するもの。
1.撮像方法が実施される時に被験者の生命や健康の維持が
重要であって,実行されるために専門的な医療の技能を必要
とし,要求される専門的なケアと技能を伴って行われる時にお
いても実質的な健康のリスクを伴う,人体への実質的に物理的
な介入を意味する侵入的なステップからなる又は包含する撮
像方法のクレームは,EPC53 条(c)に従い「手術による人体又
は動物の体の処置方法」であるとして特許性から除外される。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
「医薬発明」
医薬発明」の定義①
定義①
(改訂前)
改訂前)
医薬発明とは、「第Ⅱ部第2章 新規性・進歩性」において定義
された用途発明のうち、医薬分野に属する「物の発明」を意味
する。
(改訂後)
改訂後)
ある物(注1)の未知の属性の発見に基づき、当該物の新たな
医薬用途(注2)を提供しようとする「物の発明」である。
⇒ 今回
今回の
の改訂により
改訂により、
により、医薬発明の
医薬発明の独自性が
独自性が明確に
明確に。
今後、「
今後、「用途発明
、「用途発明」
用途発明」の枠に囚われない改訂
われない改訂がおこな
改訂がおこな
い易くなる。
くなる。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
「医薬発明」
医薬発明」の定義②
定義②
(注1) 「物」とは有効成分として用いられるもの
を意味し、化合物、細胞、組織、及び天然物か
らの抽出物・・それらを組み合わせたもの。
(注2) 「医薬用途」とは、(1)特定の疾病への適
用、又は、(2)投与時間・投与手順・投与量・投
与部位等の用法又は用量が特定された、特定
の疾病への適用を意味する。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
新規性の
改訂後)
新規性の判断(
判断(改訂後)
(3-3-2) 用法又は用量が特定された特定疾患
への適用
化合物が相違せず、かつ適用する疾病が相
違しない場合でも、・・・「特定の用法又は用量」
で「特定の疾病に適用」するという医薬用途が
異なれば、新規性あり。
⇒ QOFの向上, 副作用低減等
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
今回の
今回の新規性判断の
新規性判断の改訂の
改訂のポイント
1.成分・分量(物)
↓
2.効能(用途1)の新規性
↓
3.用法・用量(用途2)の新規性(今回の改訂)
↓
1.~3.の何れも新規性なければ×、一つで
も新規性あれば○
用法・
用法・用量特許の
用量特許の意義
出願後、開発を断念した医薬について、再度
権利化の道を開く。
基本特許を実質的に延命させる。
基本特許切れ後も、後発品との差別化が可能
になる。
治療態様に特徴点を有する医薬発明を保護す
るという観点では、将来的に再生医療等の保
護強化につながりうる。
= 参考 =
新規性の
改訂前)
新規性の判断(
判断(改訂前)
(3-3)投与間隔・投与量等の治療の態様
‥引用発明と投与間隔・投与量等の治療の
態様の点で相違する場合‥以下の(a)又は
(b)を満たせば新規性の要件を充足。
(a)対象患者群の区別
(b)適用範囲(適用部位等)の区別
= 欧州との
欧州との比較
との比較 =
欧州(
欧州(拡大審決G
拡大審決G2/08
2010/2/19)
)
(発明内容)
睡眠前に一日一回、経口投与される高脂血
症の治療に使用する徐放性薬剤を製造する
ためのニコチン酸の使用。
(拡大審決のポイント)
① 既知の投与法(用法・用量)とは異なる投与
法に、医薬用途発明として新規性を認める。
② スイスタイプクレームは、今後認められない。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
進歩性の
改訂後)
進歩性の判断(
判断(改訂後)
(4) 特定の用法又は用量で特定の疾病に適用すると
いう医薬用途に特徴を有する医薬
特定の疾病に対して、薬効増大、副作用低減、服
薬コンプライアンスの向上といった当業者によく知ら
れた課題を解決するために、用法又は用量を好適化
することは、当業者の通常の創作能力の発揮である。
したがって、・・・・進歩性は否定される(事例6)。
しかし、引用発明と比較した有利な効果が、出願時
の技術水準から予測される範囲を超えた顕著なもの
である等、他に・・・は、請求項に係る医薬発明の進歩
性は肯定される(事例4~5)。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
進歩性[有
(審査基準 事例4
進歩性 有](
事例4)
(請求項1)30~40μg/kg体重の化合物Aが、ヒトに対して3ヶ月あ
たり1回経口投与されるように用いられることを特徴とする、化
合物Aを含有する喘息治療薬。
(先行技術) 1μg/kg体重の化合物Aを毎日経口投与することで、
喘息の症状が軽減。副作用Bが高頻度で発現。
(実施例)化合物Aを、喘息患者群(体重30kgから90kg)に対して、
30μg/kg体重、35μg/kg体重、40μg/kg体重でそれぞれ1回
経口投与するたびに、各投与群において喘息症状が少なくとも
3ヶ月にわたり軽減されたことが、また、体重により有効性に明
らかな差がなかったことが、さらにまた、この試験での副作用B
の発現は各投与群においてほとんど認められず、従来使用され
ている1日につき1μg/kg体重で化合物Aを毎日経口投与する
場合の副作用Bの発現頻度と比べて有意に低かったことが薬
理試験結果として記載されている。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
進歩性[有
(審査基準 事例5
進歩性 有](
事例5)
(請求項1)1回あたり100~120μg/kg体重の化合物Aが、ヒトの
脳内の特定部位Zに投与されるように用いられることを特徴と
する、化合物Aを有効成分として含有する卵巣癌治療薬。
(先行技術)化合物Aがヒトへの静脈投与により卵巣癌に対して増
殖抑制効果を示すこと、及び、肝毒性という副作用を示すこと
は公知。
(実施例)化合物Aをヒトの脳内の特定部位Zに投与することにより、
脳下垂体から分泌されるホルモンYの血中濃度が変化すること、
及び、その結果、従来の静脈投与による治療に比して、卵巣癌
がより縮小することを示す薬理試験結果が記載。また、脳内の
特定部位Zへ投与する場合、化合物Aは肝臓には移行せず、
肝毒性を示さない薬理試験結果も記載。
= 主要な
主要な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
進歩性[無
(審査基準 事例6
進歩性 無](
事例6)
(請求項1) 1回あたり400~450μg/kg体重の化合物A
が、ヒトに対して1日1回経口投与されるように用いら
れることを特徴とする、化合物Aを含有する鎮咳薬。
(実施例)1回あたり160μg/kg体重の化合物Aを1日3回
経口投与するよりも、鎮咳効果が向上することを示す
薬理試験結果が記載。また、1日あたりの投与回数が
減少するため、服薬コンプライアンスが向上することも
記載。
(先行技術調査の結果)1回あたり160μg/kg体重の化
合物Aを1日3回経口投与することで、鎮咳効果が得ら
れることは公知。本願の発明の詳細な説明に記載され
ている鎮咳効果や服薬コンプライアンスの向上の程度
は、出願時の技術水準から予測可能な範囲内。
改訂後の
改訂後の進歩性の
進歩性の判断に
判断に関する私見
する私見
■ 用法・用量発明の多くは、①薬効増大、②副
作用低減、③服薬コンプライアンスの向上の
何れかを目的に改良がなされる。
⇒ 進歩性主張のハードルは非常に高い。
⇒ 単剤として見た場合、上記①~③の中
では、③服薬コンプライアンスの向上が最も進
歩性を主張し易い?(後述の特許第3479780
号等)
特許例1
号
特許例1: 特許第3479780号
特許第
・骨粗しょう
骨粗しょう症治療薬
しょう症治療薬
・食道等の
食道等の炎症招来という
炎症招来という副作用
という副作用(
副作用(副作用防止のため
副作用防止のため、
のため、服用後少なくとも
服用後少なくとも30
なくとも30分
30分
は横になれない)
になれない)
・従来投与:
mg/日
従来投与:5mg/
mg/日
⇒ 新投与:
mg/週
新投与:35mg/
mg/週、副作用増大無
⇒ 患者の
向上
患者のQOL向上
・用法・
用法・用量に
用量に関して進歩性等
して進歩性等が
進歩性等が争われ、
われ、進歩性欠如という
進歩性欠如という理由
という理由で
理由で特許無効に
特許無効に
行ケ)10378 )
(知財高裁平成18年
知財高裁平成 年(行
【請求項1
請求項1】: アレンドロネート,
アレンドロネート,薬剤として
薬剤として許容
として許容できるその
許容できるその塩
できるその塩およびこれらの混
およびこれらの混
合物より
合物より成
より成る群の中から選択
から選択される
選択されるビスホスホネート
されるビスホスホネートを
ビスホスホネートを,アレンドロン酸活性
アレンドロン酸活性
体基準で
体基準で約35~
35~約70mg
70mg含
mg含み,週一回の
週一回の投与間隔を
投与間隔を有する連続
する連続スケ
連続スケ
ジュールに
ジュールに従う経口投与に
経口投与に用いるための,
いるための,哺乳動物における
哺乳動物における骨粗鬆症
における骨粗鬆症を
骨粗鬆症を治
療または予防
または予防する
予防する薬剤組成物
する薬剤組成物。
薬剤組成物。
特許例1
号
特許例1:特許第3479780号
特許第
知財高裁平成18年
行ケ)10378
知財高裁平成 年(行
引用例の
引用例の記載:
記載: 効力の
効力の強い経口ビスホスホネート
経口ビスホスホネートの
ビスホスホネートの,高いコストと
コストと副作用を
副作用を引き下げるためのひ
とつの方法
とつの方法は
方法は,1週間に
週間に2回または3
または3回しか投与
しか投与しないことだろう
投与しないことだろう。
しないことだろう。
・・・ヒト
・・・ヒトにおいては
ヒトにおいては,
においては,アレンドロネートを
アレンドロネートを1日あたり5
あたり5mgと
mgと10mg
10mg投与
mg投与した
投与した場合
した場合でほとんど
場合でほとんど違
でほとんど違い
がなく,
って理論的には
理論的には,
には,・・・・・・40
・・・・・・40mg
40mgの
mgの投与を
投与を1週間に
週間に1回行えばよいことになる
回行えばよいことになる。
えばよいことになる。
がなく,従って理論的
原告(
原告(権利者)
権利者)の反論:
反論: 引用例には
引用例には週
には週1回40mg
40mgの
mgのアレンドロネート投与
アレンドロネート投与の
投与の記載あり
記載あり。
あり。ただし、
ただし、用
法・用量に
臨床的意義についての説明
についての説明もなく
説明もなく列挙
もなく列挙されているにすぎず
列挙されているにすぎず、
されているにすぎず、理論的な
理論的な根拠や
根拠や
用量に関し、臨床的意義についての
実験による
実験による裏付
による裏付けもない
裏付けもない。
けもない。
判決:
判決: 引用例は
引用例は,原告の
原告の主張通り
主張通り,上部消化管障害の
上部消化管障害の軽減との
軽減との関連
との関連において
関連において,
において,週1回40mg
40mgの
mgの
アレンドロネート投与
アレンドロネート投与の
投与の有用性に
有用性に係る,理論的根拠の
理論的根拠の明示的な
明示的な記載や
記載や実験的な
実験的な裏付けを
裏付けを伴
けを伴うも
のではない。
のではない。
しかしながら,
しかしながら,・・・・消化管障害
・・・・消化管障害の
消化管障害の副作用は
副作用は,消化管と
消化管と接触する
接触する薬剤
する薬剤の
薬剤の量が多く,接触する
接触する時
する時
間が長いほど,
いほど,また,
また,接触頻度が
接触頻度が高いほど生
いほど生じやすく,
じやすく,悪化しやすいことは
悪化しやすいことは容易
しやすいことは容易に
容易に理解される
理解される。
される。
したがって,
したがって,投与間隔を
投与間隔を長くする(
くする(毎日投与から
毎日投与から・・・
から・・・週
・・・週1回投与とする
回投与とする)
とする)間欠投与の
間欠投与の提案は
提案は,それ
自体として
自体として,
として,上部消化管障害軽減の
上部消化管障害軽減の理論的根拠を
理論的根拠を示唆するものであり
示唆するものであり,
するものであり,少なくとも,
なくとも,当業者がこ
当業者がこ
れを試
れを試みる動機付
みる動機付けとなる
動機付けとなる・・・・
けとなる・・・・。」
・・・・。」
特許例2
号
特許例2: 特許第3763360号
特許第
・下痢型過敏性腸症候群の治療薬
・当初は、下痢型過敏性腸症候群に対しては充
分な有効性が認められず開発中止に
・従来投与:0.1mg/日
⇒ 新投与:5μg/週(1/20)で顕著な効果
⇒ 患者のQOL向上
特許例2
号
特許例2: 特許第3763360号
特許第
出願時: 【請求項1 】
1日量として0 . 0 0 2~ 0 . 0 2 m gの塩酸ラモセトロン又は
これと等モル量のラモセトロン若しくは製薬学的に許容される
その他の塩を有効成分として含有する下痢型過敏性腸症候
群治療剤。
登録時:【請求項1】
日本人の成人患者に対する1 日1 回投与量として、
(a)0.005~ 0.01mgの塩酸ラモセトロン、又は
(b)0.005~ 0.01mgの塩酸ラモセトロンと等モル量のラモセト
ロン若しくは製薬学的に許容されるその他の塩を有効成分と
して含有する経口投与用下痢型過敏性腸症候群治療剤。
進歩性に
進歩性に関する特許例
する特許例1
特許例1及び2の分析
■当業者によく知られた基本課題(進歩性基準)
①薬効増大、②副作用低減、③服薬コンプライアンス
の向上
■特許第3479780号は、服薬後の行動規制を伴い、上
記③に非常な困難性がある案件。
⇒ 実質的な投与量削減効果等が少なくとも進歩性
は肯定されやすい?
■一方、特許第3763360号は、投与量削減という点が
主要なポイント。
特許例1
号
特許例1: 特許第3479780号
特許第
用量に
用量に関するサポート
するサポート要件
サポート要件の
要件の検討
(請求項1): ビスホスホネートを,アレンドロン酸活性
体基準で約35~約70mg含み
(明細書の記載): 週一回の投与の場合、経口単位用量は、
ア レンドロン酸活性体重量を基準にして約17.5~約70mg
の・・・。・・・例としては、約35mgのアレンドロネート化合物を含
む骨粗鬆症の予防に有用な単位用量、および約70mgのアレ
ンドロネート化合物を含む骨粗鬆症の治療に有用な単位用量
がある。
(実施例の記載):
・ イヌモデル。毎週一回40mgのアレンドロネートを4週間投与
し、食道組織を観察。
・ 調剤例(約35mg~70mg含む)。ヒトへの投与例の記載有。
特許例2
号
特許例2: 特許第3763360号
特許第
用量に
用量に関するサポート
するサポート要件
サポート要件の
要件の検討
(請求項1): 0.005~ 0.01mgの塩酸ラモセトロン
(試験例1): 塩酸ラモセトロン0 . 0 0 5 m g又は0 . 0 1 m gの1
日1 回経口投与試験。下痢型過敏性腸症候群患者に対して男
女を問わず有効。
(明細書の記載):
・0 . 0 0 5 m g投与により0 . 0 1 m g投与と変わらない顕著
な治療効果を得たことから、更にこの半量程度でも有効性が期
待できる。
・試験例2 は日本人の成人患者であり、小児の至適用量は更
に少量である可能性が示唆され、一方で欧米人の至適用量が
日本人の倍量であることもよくあることである。従って、塩酸ラモ
セトロンの特に好ましい投与量は1 日量0 . 0 02~ 0 . 0 2 m g
の範囲であるが、患者の年齢や民族の相違により、1 日量0 . 0
0 1~ 0 . 0 5 m gの範囲で下痢型過敏性腸症候群或いは過敏
性腸症候群の下痢症状を改善できると考えられる。
用量による
用量による限定
による限定
用法又は用量(審査基準)
投与時間・投与手順・投与量・投与部位等・・
クレーム限定の順序
① 投与量による限定
② 投与量、及び投与部位による限定(現実的な範囲)
※ 投与部位により限定する場合は、製剤として新
規性を担保できないかも検討
③ 投与対象(対象患者を限定)による限定
④ 投与時間、又は投与手順等を限定
投与対象(
投与対象(対象患者)
対象患者)の限定方法の
限定方法の例①
①患者の遺伝的背景から投与対象を分類する方法
例) α型の遺伝子型を有する○○病患者(改訂前事例)
「下記のアミノ酸配列:・・・・・・から成るペプチドを唯一の医薬活
性成分として含んでなる、HLA-DR2ハプロタイプを有する患者に
おける多発性硬化症の治療のための医薬組成物。」
(特許第4173557号)
(留意すべき点)
→ 一般的に遺伝子型で患者を分類することは困難(事例からも
削除されている)。成立例も現状は極少数。
→ 対象患者が特定の遺伝子型を持つ一部患者に限定される虞
がある。
改訂により
改訂により削除
により削除された
削除された一事例
された一事例
〔事例 8〕 特定の投与間隔・投与量の採用によ
り特定の患者群に顕著な効果が奏されるもの
【請求項1】
初回に5.0mg/kg~10.0mg/kg の量で投与
し、その後一回当たり0.3mg/kg~0.5mg/kg
の量で隔日投与されることを特徴とする、α
型の遺伝子型を有する患者を治療するため
の、化合物Aを含有するC型肝炎治療薬。
投与対象(
投与対象(対象患者)
対象患者)の限定方法の
限定方法の例②
② 患者の症状等により対象患者を細分化
・発症タイミング・・・例) 遅発型/早期型
「製薬学的に許容できる担体中に、抗IgE抗体 を含
遅発型喘息反応を減少させるための製薬
んでなる、遅発型喘息反応
遅発型喘息反応
組成物。」(特許第4153560号)
・既往歴の有無・・・例) 初回/再発性
「ヒト宿主における再発性陰部ヘルペスの再発の抑制
のための医薬組成物であって、組成物がバラシクロ
ビールまたはその薬学上許容可能な塩を含んでな
り・・・医薬組成物。」(特許第4097698号)
・その他
= 主要
主要な
な改訂点の
改訂点の概要(
概要(医薬関連発明)
医薬関連発明) =
サポート要件
サポート要件の
要件の判断(
判断(審査基準)
審査基準)
1.2.1 実施可能要件
「医薬発明は、一般に物の構造や名称からその物をどのよう
に作り、又はどのように使用するかを理解することが比較的困
難な技術分野に属する発明であることから、・・・、出願時の技
術常識から、当業者が化合物等を製造又は取得することがで
き、かつ、その化合物等を医薬用途に使用することができる場
合を除き、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。
そして、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結
果の記載が求められる(第Ⅰ部第1章3.2.1(5)参照)。」
(1) 薬理試験結果についての記載の程度
・・・また、用いられる薬理試験系としては、臨床試験、動物
実験あるいは試験管内実験が挙げられる。
= 参考 =
サポート要件
サポート要件に
要件に関する重要判例
する重要判例
平成21年(行ケ)第10134号(H22/1/20判決)
※ 薬理試験自体を行っていなくともサポート要件が満たされ
得る可能性を示唆した判例
■請求項: 「・・・の成分組成を有する組成物からなる活
性酸素によって誘発される生活習慣病に対して有効
であるヒドロキシラジカル消去剤。」
■具体的な活性データ: 「組成物が、ヒドロキシラジカ
ル消去活性を有することを示すインビトロデータ」のみ
■明細書中の記載: 「・・・組成物は、従来公知である、
焼酎粕の液体分を卓越した極めて強力なヒドロキシラ
ジカル消去活性からなる抗酸化作用を有するので、活
性酸素によって誘発される老化や動脈硬化等の種々
の生活習慣病の予防に極めて好適・・」
その他
その他の改訂点①
改訂点①
■細胞の分化誘導方法等が、「人間を手術、治療又は診断する
方法」に該当しないことを明記。事例の追加もあり。
「産業上利用することのできる発明」
2.1.1.3 人間から採取したものを処理する方法について
(1)人間から採取したものを原材料して医療材料(・・・細胞医薬)
製造するための方法。(3)人間から採取したものを原材料とし
て、医薬品又は医療材料の中間段階の生産物を製造するた
めの方法(例:細胞の分化誘導方法、細胞の分離・純化方法)
(4)人間から採取したものを原材料として製造された医薬品又は
医療材料
その他
その他の改訂点①
改訂点①の背景
※ 先端医療特許検討委員会 資料より抜粋
※ 採取したものを採取した者と同一人に治療のために戻すことを前提としている
「採取したものを処理する方法」は、特許対象外となることが原則(上記①)のため、
上記②の技術がその例外として特許対象となるのか分かり辛かったという背景。
その他
その他の改訂点①
改訂点①の事例
■ 事例23-1 細胞を分化誘導する方法
「ヒト誘導多能性幹細胞を、無血清培地中、X細胞増殖因子
存在下で培養することを特徴とする、ヒト誘導多能性幹細胞を
神経幹細胞に分化誘導する方法。」
■ 事例23-2 細胞を分離、純化する方法
「ヒト誘導多能性幹細胞から分化誘導された神経幹細胞を
含む細胞集団から神経幹細胞を分離、純化する方法であって、
(a)分離膜Mを用いて、神経幹細胞を分離する工程;および
(b)(a)で分離された神経幹細胞を、成分Pを含む培地中で培
養する工程; を包含する、該方法。」
その他
その他の改訂点②
改訂点②
■組合せ物(物理手段と生化学手段との組合せ、生体由来材料
と足場材料との組合せ、生体由来材料と薬剤との組合せ等)の
事例を追加。
■アシスト機器関連技術の事例を追加。
■細胞等の生体由来材料の用途に特徴のある発明の事例を追
加。
■製造方法で特定された細胞の医薬用途に特徴のある発明の
事例を追加。
→ 何れも、既に特許法の保護対象である発明を具体的に示す
という目的で追加されたもの。
その他
その他の改訂点②
改訂点②の事例
■ 事例26-2 パワーアシスト機器の制御方法
「作業者の負担を軽減するために作業者に装着するパワーアシスト機器の制御方法
であって、パワーアシスト機器に設けられたセンサによって作業者の腕又は脚の筋電
位を測定する工程、測定された筋電位に基づいてパワーアシスト機器に設けられた
モータを駆動し、作業者の腕又は脚を動かす工程の各工程を行うパワーアシスト機
器の制御方法。」
■ 事例14-2 軟骨再生用移植材料
「生体親和性高分子材料Zで形成されたゲル中にA細胞が包埋されており、ヒトの関
節内に移植されるように用いられることを特徴とする、生体親和性高分子材料Z及び
A細胞からなる軟骨再生用移植材料。 」
■ 事例22-2 遺伝子治療のための細胞製剤の製造方法
「人体から取り出されたW細胞に、Xタンパク質をコードするDNAとYタンパク質をコー
ドするDNAを含むZベクターで遺伝子を導入する、癌治療用細胞製剤の製造方法。」
ご清聴ありがとうございました