コグニティブ無線の研究課題と その将来像 - AWCC

コグニティブ無線の研究課題と
その将来像
藤井 威生
電気通信大学
先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター(AWCC)
電子情報通信学会2006年ソサイエティ大会パネル討論
2006年9月19日~22日
The University of
Electro-Communications
Takeo FUJII
2006年ソサイエティ大会
Sept. 20, 2006
目次
1.コグニティブ無線とは?
2.コグニティブ無線の技術的研究課題
3.コグニティブ無線の将来像
4.おわりに
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1. コグニティブ無線とは?
コグニティブ無線技術に関する研究に注目
¾ 通信方式
¾ 変調方式
¾ 周波数
¾ データレート
などの通信パラメータを周囲の無
線環境を認知して自律的にパラメ
ータの設定を行う無線システム
周波数資源不足の問題に対する抜本的な対策として期待
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コグニティブ無線の分類
さまざまな人がさまざまなコグニティブ無線を検討
大きく分けると2つのシステムに分類可能
• マルチモードシステム
複数の無線システムの間を適応的に渡り歩くシステム
• ダイナミックスペクトルアクセス
既存システムに影響を与えないように周波数をフレキシブ
ルに2次利用できるシステム
• 既存システムユーザ → プライマリーユーザ
• 2次利用ユーザ → セカンダリユーザ
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•マルチモードシステム
• 複数の通信ステム(周波数割り当ては既存と同じ)
に対して環境に応じたシステムの使い分けを行うシ
ステム
• 端末はマルチモード端末を利用
電波利用料プロジェクトなどで検討
例
802.11a (WLAN)
データ
802.11g (WLAN)
802.16 (WiMAX)
無線環境によって切替
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•ダイナミックスペクトルアクセス
• 既存システムとして割り当てられている帯域を、別
のコグニティブ無線システムが2次的に利用
• 既存システムの利用率は最大でも20%
• 既存システムへの干渉を抑えることで自由な周波
数利用が可能
• 究極的には自由な周波数、自由な方式で1次シス
テムに影響を与えなければ通信を許可
FCC、IEEE 802.22などで検討
例
テレビ周波数
無線環境によって
利用周波数を選択
セルラー周波数
マイクロ波中継周波数
コグニティブシステム
アカデミックな立場ではこちらがいろいろ出来そう
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•過去に自由な周波数利用の考えはあったのか?
スペクトル拡散の初期の検討
拡散信号は雑音より小さくなるので、どこの周波数でも自由に
利用して通信できる
UWBにおける検討
インパルス発生による超広帯域信号は既存システムにとって
雑音以下になるため、自由に通信ができる
しかし、
無線環境の認知が出来ないがために送信電力および
送信可能帯域に大幅な制限
自由に周波数を活用するシステムにはなっ
ていない
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•コグニティブ無線は?
無線環境の認知による与干渉回避が可能
既存システム側からの了解が得られやすい?
うまい仕組みが作れれば長年の周波数利用の制約
を解消できる可能性あり
技術的な課題と法的な課題双方を解決する必要あり
既存システム側からの了解を得られるフェール
セーフの機能を備えたシステムを構築する必要
あり
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2. コグニティブ無線の技術的研究課題
• スペクトル検出技術
• 周波数共用技術
• 資源割り当て手法
– DCA, power control, scheduling
• スペクトル管理技術
• コグニティブ無線のためのMACプロトコル
• コグニティブネットワークを用いた情報共有手法
• スペクトルポリシー
• 免許不要システム構築手法
• 複数周波数帯域の活用手法
• コグニティブ無線のためのハードウェア
– SDR, multi-band system, wide-band antenna,
– Sensing device
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スペクトル検出技術 (Spectrum sensing technology)
いかにして第一次ユーザ(プライマリユーザ)を確実に検知するか
特に通信中のプライマリユーザの受信機への影響回避は重要な問題
プライマリユーザを優先させるための手法の分類
プライマリユーザによる プライマリユーザによる干
干渉管理あり
渉管理なし
セカンダリが許容範
囲内で通信
セカンダリが自律的
に注意
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Markets
(プライマリが制御)
UWB,SS
(セカンダリが拡散)
Denials
Opportunistic
(プライマリが干渉ユー (セカンダリがプライマリを
ザに停止命令)
認識)
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プライマリユーザを確実に検知するにあたっての課題
•フェージングやシャドウィングによる隠れ端末問題
•雑音レベル以下にもなる微弱信号検知の必要性
•広い帯域に渡ってのスペクトル観察
検知手法の種類
• 受信エネルギーによる検知
•個別端末による検出手法
•周囲の端末との協調検出手法
(フェージング、シャドウィング対策に有効)
• コヒーレント検波、その他信号解析による検知
(マッチドフィルタの利用、FFTの利用、独立成分分析の活用)
• 相互検出可能なMACの利用
(セカンダリとプライマリの間での意思交換、RTS/CTSなど)
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フェージングやシャドウィングによる隠れ端末問題
テレビ帯域を利用してコグニティブ無線による通信を行う場合な
ど受信機がさまざまな場所に存在する場合などに問題
(ビルや山の陰でテレビ放送は受からないが、受信機は見通しと
いう環境でのコグニティブ無線利用手法)
干渉
検出不可能
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スペクトル管理 (Spectrum management)
周波数資源をどのように管理するかを議論
特に無線免許不要なセカンダリユーザへの周波数資源の配分法の検討
管理手法は大きく分けて2種類
管理手法は大きく分けて2種類
• デバイス主体の分散スペクトル管理手法
• スペクトルサーバを利用した集中スペクトル管理手法
研究課題
•プライマリユーザへの干渉回避
•周波数利用効率改善
•セカンダリユーザ間の公平性
•セカンダリユーザへの課金制度の検討(特に、既存システム
との共用を既存システムが制御するときに重要)
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コグニティブ無線のためのMACプロトコル (MAC protocol)
コグニティブ無線においてフレキシブルなスペクトルの活用を行うには
複数の周波数を有効に活用するには物理層以下の検討に限らずレイヤ
ーの高いプロトコルに関する議論が重要
研究課題
• プライマリーユーザとの間での相互干渉低減のため
のMACプロトコル
• 複数のMACプロトコルをコグニティブ無線適用時に
使い分けるMACプロトコル
• 複数の端末間で認知情報を共有するためのMACプ
ロトコル
• 複数の帯域で送受信する際の受信待ちうけ周波数
の決定手法
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コグニティブネットワークを活用した情報共有手法
(Information sharing)
複数の無線機で構成されるコグニティブ無線
•マルチホップ通信を行うことで送信電力を抑えて既
存システムへの影響を低減
•マルチホップ通信により通信距離を確保
プライマリユーザを確実に検知し、与干渉を回避する手法
周囲の端末との認知情報の共有が有効
コグニティブネットワークの活用
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交換情報の量
ネットワークにおけるオーバヘッド
トレードオフ
最低限必要な情報を効率よく交換することがポイント
研究課題
•大量の情報の選別手法、必要な情報のみを交換
•交換用のMACプロトコル
•周囲の端末の認識手法
•クロスレイヤー制御手法(上位レイヤーも含めた
検討)
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複数周波数帯域を活用した伝送手法
(Multi-band communication)
コグニティブ無線では複数の離れた周波数帯域を活用可能
従来の無線通信技術
時間、周波数、空間を活用して大容量高速通信を達成してきた
OFDMに代表されるように複数の周波数を活用する
技術は従来から盛んに研究
しかし、コグニティブ無線では
帯域の離れた複数バンドを同時もしくは選択して利用す
る技術はいまだ未知数
無線伝搬、アンテナなどの影響で伝送品質は大きき異な
るためこれらの帯域をどのように活用するのかは今後の
課題
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3. コグニティブ無線の将来像
コグニティブ無線の行き着く先の姿はなんだろう?
交通システムにたとえると
無線通信におけるマイカー革命!?
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現状の通信システムは
国の認可によって管理されているシステムが主流
携帯電話、業務用無線、中継回線など
• 鉄道
• バス
• 航空
公共交通機関に相当
一般の人が自分の意思で動くことのできるものは
無線LAN、微弱無線など
自転車、徒歩に相当
コグニティブ無線システム
自由な周波数(道路)を自由に通行できるシステム
マイカーに相当
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マイカーに相当するコグニティブ無線は
交通ルールをまもれば自分の意思で自由に移動することができる
ここが普及への重要なポイント
交通システムでは
交通ルールが定められておりそれに従った通行が必要
違反した場合は警察の取り締まりにより反則切符をきら
れペナルティを受けることになる
コグニティブ無線システムにおいても
•交通ルールに相当する周波数利用ルールの策定
•警察官に相当する監視体制の必要
•道路や制限速度に相当する周波数利用と送信電力制
限など策定
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物では無い周波数という存在にどのように交通ルールを作り、それ
を一般化するのか?
コグニティブ端末を制御する手法(共通制御チップの利用?)
コグニティブ端末を制御する手法(共通制御チップの利用?)
勝手な利用を出来なくするため、一意のIDの入ったチップ
を備えた無線機が必要であり、さらにその無線機を違反時
に無効にできる手段が有効?
周波数利用ルールの伝達法の必要性
周波数利用ルールの伝達法の必要性
道路の標識にあたるもの
既存システムを活用した情報提供
デジタル放送網の活用
セルラーネットワークの活用
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デジタル放送を活用したコグニティブ無線
テレビ放送に含まれる
情報を元にして通信
このエリアでコグニティブ
無線通信可能
• f0,f3,f5の周波数
• 最大送信電力○dBm
• 利用可能な変調方式
• 緊急時:停止信号
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コグニティブ端末
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コグニティブ無線は地方と都心の通信網配備の格差を埋めるか?
マイカーの普及率
地方都市が高い
道路の混雑度の違いによる
コグニティブ無線についても
周波数の混雑度は都心が問題
地方での利用には非常に効果が期待できる
周波数の余裕度から、コグニティブ無線を利用した高速、大容量中
心の実現は地方から進む可能性も
フレキシブルで斬新な無線通信システムの構築に期待
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4. おわりに
• コグニティブ無線の研究課題および将来像について紹介
• コグニティブ無線はまだ実態があいまい
•マルチモード無線機
•ダイナミックスペクトルアクセス無線機
• 法律や実現性を考えた場合、問題はさまざまである
• アカデミックな立場では現状の法律にあまりとらわれないで
研究を進める必要があるのでは?
• 競争原理に基づくアカデミックな提案と、それを基にした日
本全体の協調体制が必要(米国DARPA、欧州ISTなどのプ
ロジェクトの日本版は?)
• 日本における積極的な研究と成果の世界への発信が必要
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