干渉回避および周波数共存による 周波数帯域確保の可能性

BP-4-5
干渉回避および周波数共存による
周波数帯域確保の可能性
-コグニティブ無線技術-
藤井 威生
電気通信大学
先端ワイヤレスコミュニケーション研究センター(AWCC)
電子情報通信学会2007年総合大会パネル討論
2007年3月20日~23日
The University of
Electro-Communications
Takeo FUJII
2007年総合大会
March 22, 2007
1.コグニティブ無線の現状
コグニティブ無線技術とは
¾ 通信方式
¾ 変調方式
¾ 周波数
¾ データレート
などの通信パラメータを周囲の無
線環境を認知して自律的にパラメ
ータの設定を行う無線システム
電波環境を取得し、自律的に通信パラメータを最適化する無線
究極的には?
他のシステムに影響を与えない範囲であれ
ば周波数は自由に利用可能!!
周波数資源不足の問題に対する抜本的な対策として期待
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コグニティブ無線の種類
•マルチモードシステム
• 複数の通信ステム(周波数割り当ては既存と同じ)に対して環境に
応じたシステムの使い分けを行うシステム
• 端末はマルチモード端末を利用
例
データ
802.11a (WLAN)
5GHz
802.11g (WLAN)
2.4GHz
802.16 (WiMAX)
2.5GHz?
無線環境によって切替
既存の電波法の枠内で対応可能:ただし周波
数利用効率改善効果はさほど高くない
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•ダイナミックスペクトルアクセス
• 既存システムとして割り当てられている帯域を、別のコグニティブ無
線システムが2次的に利用
• 既存システムへの干渉を抑えることで自由な周波数利用が可能
• 究極的には自由な周波数、自由な方式で1次システムに影響を与え
なければ通信を許可
例
テレビ周波数
無線環境によって
利用周波数を選択
セルラー周波数
マイクロ波中継周波数
コグニティブシステム
セカンダリコグニティブシステムを新たに構築
現状周波数が割り当てられているシステムと周波数共用
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現状の周波数利用状況
都市部でも時間・空間的な瞬間では8割の周波数が有効に
使われていないといわれている
White space spectrum
これを有効活用しない手は無い
既存の通信を行っているプライマリシステムに影響を
与えない範囲で
スペクトルの2次利用を行う技術が必要
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コグニティブ無線標準化、研究プロジェクトの現状
•2001年~2006年 DARPA XG Program
The Next Generation Program
米国DARPA (Defense Advance Research Project Agency)に
よる次世代スペクトル利用プログラム
•現状の周波数資源の不足
•現状の周波数管理手法の限界
次世代のスペクトルアクセス手法の検討
•2004年 FCCが地上波テレビ周波数における免許不要局の周波数
利用に関する意見募集、要求条件決定開始
IEEE802.22における標準化へ展開
•米国における地上波テレビ放送用周波数の利用
•帯域幅6~8MHz
•半径30km程度のエリアをカバー
•伝送速度18Mbps程度
2008年標準決定予定
•固定P-MP通信
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•2004年 E2R (End to End Reconfigurability) プロジェクト
EUの研究資金援助IST (Information Society Technologies)の1つ
E2RはBeyond 3G (第三世代携帯電話の次の世代)の無線通信シス
テムとして、通信するノードとノードとの間を状況に応じて再構築し、
最適化する目的のプロジェクト
セルラーシステム、802.xxシステム、放送などをレイヤーを超えて最
適化することを考えている
Phase 1 2004-2005 、 Phase 2 2006-2007
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2005年 日本の総務省が電波利用料を元にした周波数有効利用に関
する委託研究プロジェクトで「コグニティブ無線」の検討開始
電波利用料を財源にする受託研究
コグニティブ無線の端末に関する研究
⇒NICT(情報通信研究機構)
コグニティブ無線ネットワーク関する研究
⇒KDDI,KDDI研究所,三菱電機、日立製作所、ATR
2006年 ITU-R(国際電気通信連合 無線通信局)で検討開始
新研究課題として
“Cognitive radio system in mobile service”を設定
ITU-R M.[8A/CR]
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2006年 コグニティブMIMOメッシュネットワーク
4大学連携総務省委託研究(SCOPE)プロジェクト
東京工業大学・電気通信大学・東京理科大学・東京農工大学
若手研究者が集まってコグニティブ無線とアンテナ信号処理技術
を活用した新たな無線ネットワーク作りのためのプロジェクト
2006年度~2008年度の3年間
・伝搬環境認知
・ネットワーク認知
マルチストリーム
(MIMO)・マルチル
ート(メッシュネット
ワーク)構成
・無線パラメータ(
周波数、変調方
式など)自律決定
・MIMOパラメータ
決定
相互間干渉
回避
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2.コグニティブ無線の次世代移動通信での活用
<次世代移動通信における活用形態の例>
•単一オペレータによる環境適応マルチシステム切替
•複数オペレータ設備の環境適応マルチ切替
•自オペレータ利用周波数での複数システム共存
•既存システム利用の周波数を貸し出し
•空き周波数の適応利用
実現困難度大
しかし
周波数利用効率改善
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•単一オペレータによる環境適応マルチシステム切替
周波数の割り当て自体は既存のシステムを活用
トラヒックや所望信頼度に応じて利用システムを切替
適切なネットワーク選択により負荷の分散および品質の
確保を行う
干渉回避というよりも適切なネットワーク選択
総務省電波利用料R&Dなどで検討
厳密な意味でのコグニティブ無線に分類されるかは議論があるが
電波法上の問題も少なく、次世代移動通信の
一部として使われる可能性大
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•複数オペレータ設備の環境適応マルチ切替
周波数の割り当て自体は既存のシステムを活用
複数オペレータの設備をまたがって利用
B社ネットワーク
混雑や基地局までの距離
などに応じて利用基地局
やネットワークを切替利用
移動
A社ネットワーク
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相互接続
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イメージは銀行ATMの相互利用のようなもの
コグニティブ無線といえるかは微妙であるが、
空間的な周波数利用効率の向上および有効利用は可能
電波法上の問題も少ないが、オペレータの戦
略により利用されるかどうかは不確定
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•自オペレータ利用周波数での複数システム共存
自オペレータに割り当てられている周波数を共有して複数システムを実現
所望品質やトラヒックでシステムを切り替え
同一オペレータが自分のシステムとして割り当てている周波数を活用
相互接続
セルラーシステムとWLANを同一周波数で運用
自オペレータ内での周波数有効利用策、フレ
キシブルな運用は可能、複数システム混在
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•既存システム利用の周波数を貸し出し
他システムに割り当てられている周波数を既存システム管理下でコグ
ニティブ無線システムが共用
コグニティブ無線システムに対しての利用許可を与える
利用を許可
既存システム
コグニティブ無線システム
余裕のある周波数を他システムに貸し出す手法、
自オペレータの管理下で周波数を有効利用可能
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•空き周波数の適応利用(究極の形)
ダイナミックスペクトルアクセス:新規周波数の適応開発
コグニティブ無線システムが最適な周波数を探索して適応利用
既存システムへの影響を最小限に利用周波数選択
•非常にフレキシブルな周波数利用が可能
•周波数割り当てという概念が変わる
•既存システムへの干渉回避技術は非常に重要
•利用する周波数を限定することは可能:余分な与干渉は回避可能
•8割の利用されていない周波数(white space)を有効活用
干渉回避や環境認知手法などすぐの実現が可能
とはいえないが、大きな可能性を持っている
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3.次世代移動通信システムとして
コグニティブ無線を活用するための技術課題
•クロスレイヤー最適化
•自オペレータが複数周波数でのマルチシステム切り替え
•自オペレータが同一周波数でマルチシステムを運用
複数システム間での最適化が必要
特にコグニティブ無線システムでは
物理層からネットワーク層にいたるまでのクロスレイヤー
での適応的な動作が必要となってくる
•ダイナミックスペクトルアクセス
コグニティブ無線システムのネットワークについてマ
ルチレイヤーの認知情報を活用した最適化が重要
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•最適周波数探索技術
スペクトルの状況を認識:周囲の無線通信の状況を電波
の状況から認識
既存システムの信号+雑音
この2つを見分ける必要
雑音
既存システムの存在を検知した場合は送信を回避
さらに周囲の端末との協調:協調検出(Cooperative detection)
の利用も検討
特にダイナミックスペクトルアクセスでは
どの周波数帯域で、どのような通信方式で、どの
ようなタイミングで通信を行なうのかを確実に決定
する必要がある
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•既存システムへの与干渉回避技術
セカンダリシステムの既存システムへの与干渉回避手法としては以下
のような手段が考えられる
•周波数選択
•電力制限
•時空間信号処理
•MAC活用
どれを活用するかは既存システムに合わせせることも重要
既存システムとしてどのようなシステムが存在しているの
かを理解できれば与干渉回避も格段にやりやすくなる
非常に難しいのは受信中の既存システムに対する与干渉
回避:存在自体を検出するのが困難
既存システムの特徴をつかんだ上での与干渉回
避技術が重要
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•スペクトルマネージメント技術
一例、周波数帯がどのようなシステムがどのように使っているのかを通知
テレビ放送に含まれる
情報を元にして通信
このエリアでコグニティブ無
線通信可能
• f0,f3,f5の周波数
• 最大送信電力○dBm
• 利用可能な変調方式
• 緊急時:停止信号
コグニティブ端末
基地局のような集中制御サーバがスペクトル割り当て情報をもちコ
グニティブ無線に対して周波数の割り当てを行う
•利用可能周波数を通知する仕組みづくり
•誰がその仕組みを作り、管理し、運営するのか
•電波環境のモデル化
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•マルチホップネットワークの活用
地域毎の環境認知および最適化
ゲートウェイ
AP
端末
既存システム
インターネット
マルチホップネットワークによる低送信電力通信の活用
•干渉の影響を地域毎に限定させることが可能
•マルチホップで干渉回避したルート構築
コグニティブ無線実現のために有効活用可能
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4. おわりに
• 次世代移動通信システムに向けてコグニティブ無線の可能
性について紹介
• 現行の電波法の枠内、もしくは自オペレータの管理の下で
行なうことの可能な
•マルチモード端末によるコグニティブ無線
•スペクトルの貸し出し
は実現の可能性高い
• 本当の周波数有効利用のためにダイナミックスペクトルアク
セスが有効
• 研究課題はさまざまであり積極的な研究活動が必要
• 将来の活躍は期待できる
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