曲がり直しの技法

曲がり直しの技法
はじめに
組立現場で、あまり使われなくなった技能の一つに曲がり直しがあります。
機械加工精度が上がり、部品精度良いものができるようになったので通常の作業の
中では、ほとんど見ることはないと思います。
しかし、稼動中の変形やイレギュラーな事故により曲がり直しをすれば、復活できて
使用可能になることもあります。
本編では、組立現場で可能な曲がり直しについて記載しています。
しかし、曲がり直しは理屈で理解できても、実務には経験と技能が必要です。
すこしづつ練習をして、この技能を身に付ければ、現場で貴重な存在になると
確信します。
特に、最終ページのコーキングの技能を身につければ、匠に近づけると思います。
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曲がりの測定1
曲がり直し作業は、慎重に行わないと曲がりが複雑になって取り返しのつかない事になる。
曲がり直し作業のポイントは、曲がりの状態を正確に把握することである。
測定
1) Vブロックで受ける時、ベアリング等が取り付く回転起点を受ける。
2) 回転起点のない軸類は、両端部を受ける
3) Vブロックで直に受けず、幅狭のアルミ板・真鍮板・焼きなまし
銅管をV字に曲げたものの上で受ける。これは、軸に傷をいれ
ないためと、幅を狭く受けたほうが回転変動が少ない。
グリスを塗ると軽く回転できる。
4) 軸類は、中央部だけの測定では曲がりの状態を正確に判断
できないので最低3ヶ所行う。
左記の場合、最大曲がり箇所は、
中央部の+10でなく、+5と+7の
間を7:5で分割した位置となる
曲がりの測定2
5) 振れを測定した時に、最大・最小をマークすると
同時に数値を記入する。
6) 振れの測定時、円周上の数字を検討し被測定体が
真円か否か判断する。
中空ロール類の場合特に大切である。
7) ロール類の場合は、軸の首部が曲がりやすいので注意する。
8) 複数曲がりの場合は、測定箇所を増やし曲がりの状態を把握する。
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曲がり測定3
角材の場合
1) 角材の場合は、定盤の上又はストレッチ上で、スキミゲージで調べる。
2) 定盤に赤ペンを塗りその上で角材を動かす。
最大曲がり箇所に赤ペンがつく
曲がり直し時の注意事項
1) 曲がり直しは、最大位置を処置する。
2) 受け台は、最大曲がり位置から等間隔に出来るだけ離して位置する
受け台の位置をいいかげんにすると曲がりの数が増えて元に戻らない。
曲がりの詳細に調査するのは、受け台の位置を決めるためである。
3) 材料によって加熱や溶接すると材質に影響でるので、図面で材質を調査して行うこと。
(焼入れ品、高炭素鋼などは、基本的に加熱できない)
4) 溶接する場合は、母材と溶接棒の材質に注意する。
5) プレスする場合は、製品に傷がはいるので当金を使用して傷が入らぬようにする。
6) 肉厚の薄い中空物をやいと(局部加熱)すると凹むので注意する。
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各種曲がり直し(プラス位置)
1) 鉛ハンマ、中ハンマー等で叩く
2) プレスで押して曲げる
3) 局部的に赤く熱し、水をかけ収縮力で曲げる
4) ドリルで穴を明け、電気溶接しその収縮力で曲げる
各種曲がり直し(マイナス位置)
5) 片手ハンマーで数多く叩き、表面を伸ばして曲げる
6) 軸の下からジャッキで押しながら、片手ハンマで叩く
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コーキング
機械を運転中に、異物の噛み込みや焼きつき等により、ロールに振れが
発生することがあります。
特に、ロールの首部が曲がり振れが発生することが多くある。
この首部が、曲がったときに活用できる曲がり直しに“コーキング”があります。
コーキングによって、組織が延びて振れが修正できます。
振れの量が多い場合は、プレスで強制的に曲げて(プラス位置)、大きな曲がりを修正し
0.1mm以下の振れになったら、コーキングで0.01~0.02mmを目標に修正して
いきます。(マイナス位置)
角部の組織が延びて、軸が
赤印の方向に曲がります。
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