2011 年 6 月 29 日発行

第 29 号(2011 年 6 月 29 日発行)
Q:当社に勤務するパートタイム労働者から、通常の労働者と同様に更衣室を利用させて
欲しいという要望がありました。パートタイム労働者にも更衣室の利用の機会を与える必
要があるのでしょうか。
A:職務内容及び人材の活用の仕組み、運用等が通常の労働者と同一で、期間の定めのな
い契約のパートタイム労働者は、通常の労働者と同様の福利厚生施設の利用機会を与える
必要があります。この対象にならないパートタイム労働者への福利厚生施設の中で給食施
設、休憩室、更衣室は、利用の機会を与えるよう配慮しなければならないとされています。
1.差別的取り扱いの禁止(パートタイム労働法第8条)
平成 20 年4月1日に改正パートタイム労働法が施行されました。同法では、以下の3つ
の要件を満たすパートタイム労働者については、差別的取り扱いが禁止されています。
①職務の内容が当該事業所で雇用される通常の労働者と同一である。
②人材の活用の仕組み、運用等が当該事業所で雇用される通常の労働者と同一である。
③事業主と期間の定めのない契約をしている。
(反復更新により期間の定めのない労働契約
と同視することが社会通念上相当と認められる期間の定めのある労働契約を含む。)
この差別的取り扱いの禁止は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その
他の待遇について行う必要があります。従って、上記の要件を満たすパートタイム労働者
については、福利厚生施設について通常の労働者と同様に行う必要があります。
2.給食施設、休憩室、更衣室の取扱いは配慮が必要
上記の対象にならないパートタイム労働者の福利厚生施設の取扱いですが給食施設、休
憩室、更衣室は、パートタイム労働者も利用の機会を与えるよう配慮する必要があります。
ここでいう配慮とは、施設の定員の関係等で労働者全員に施設の利用の機会を与えられ
ない場合、通常の労働者と同じ利用規程を適用したり、利用時間帯に幅を設けてパートタ
イム労働者にも利用の機会を拡大させる措置を講ずる等の具体的措置を求めるものです。
なお、あるパートタイム労働者の従事する業務には更衣室が必要なく、当該業務に従事
している通常の労働者も同様の実態であれば、他の業務に従事している通常の労働者が更
衣室を利用していたとしても当該パートタイム労働者に更衣室の利用の機会を与えること
までは、通常必要ないと考えられます。
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パート就業規則は、坂本直紀 社会保険労務士法人にお任せ下さい。
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1.T社事件(東京地裁平 23.1.18 労判 1023‐91)
(1)事件の概要
被告X社の社員Aが女性社員に対して、セクハラ発言をしたことにより、X社より譴責
処分を受けましたが、この譴責処分は無効であるとして争われた事件です。
(2)裁判のポイント
1.一般に、セクシャルハラスメントとは「相手方の意に反する性的言動」と定義される
ところ、本件全証拠をもってしても、原告が本件発言をした際、J女性社員に対し、性的
な嫌がらせをする意図ないし故意を有していたものとまでは認めるに足りないから、本件
発言(「腹ぼて」、「胸が大きくなった」)は、少なくとも原告の主観においては、J女性社
員が妊娠しているとの事実及び妊娠によるJ女性社員の身体の変化を指摘したにすぎない
と見るのが相当である。その意味では、仮に、本件譴責処分が原告の故意による性的嫌が
らせ行為があったことを理由とするものであるとすれば、失当と言うほかはない。
2.しかしながら、原告は、世田谷事業所に配属されて以後、女性従業員から、女性従業
員に対しては厳しい対応をする人であるとか、高圧的な印象があるといった否定的な評価
を受けていたと見られるところ、特に、J女性社員については、その業務上のミスについ
て強い口調で注意をし、J女性社員がトイレに逃げ込むといった出来事が発生した直後で
あったのであるから、原告に嫌がらせの意図等がなかったとしても、原告の本件発言を受
けたJ女性社員が性的な不快感を覚えることは当然というべきであり、原告においても、
自らの不用意な発言によりJ女性社員に不快感を覚えさせないよう配慮する義務があった
というべきである。
3.にもかかわらず、原告は、J女性社員に対し、配慮を欠いた発言をし、J女性社員に
性的な不快感を覚えさせたのであるから、原告による本件発言は.J女性社員に対し性的
な嫌がらせをする意図ないし故意を有しないものであったとしても、相手方の意に反する
性的言動、すなわち、セクシャルハラスメントに該当すると評価するのが相当である。
4.以上のとおり、原告による本件発言は存在し、かつ、本件発言はセクシャルハラスメ
ントに該当するというべきである。
(3)裁判から学ぶこと
セクハラに関する裁判です。
今回の裁判で特徴的なことは、強い口調での叱責の直後にセクハラと捉えられるような
発言をして、性的な不快感を与えますと、セクハラに該当するリスクが生じることです。
いわば、
「パワハラと思える内容+セクハラと思える内容=セクハラに該当する可能性が
高い」ともいえます。
従って、日々、社員に対して不快感を与える発言をしていますと、場合によってはハラ
スメントのトラブルにつながりかねませんので、注意が必要です。
― ハラスメント対策は、坂本直紀 社会保険労務士法人にお任せ下さい。 ―
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2.M社事件(前橋地裁平 22.10.29 労判 1024‐61)
(1)事件の概要
財務経理部長(残業手当の支給対象外として取り扱っていた地位の社員)であった社員
Aがうつ病で自殺した件で、会社の安全配慮義務違反の有無等について争われました。
(2)裁判のポイント
1.平成 16 年1月からAが本件うつ病を発症した平成 16 年7月までの6か月におけるA
の時間外労働時間数は、平成 16 年2月から3月の時間外労働時間を除き、いずれも 100 時
間を超えており、特に5月から6月は 228 時間を超えたものとなっている。前記の専門的
知見によれば、月 100 時間を超える時間外労働に従事した労働者には、精神医学的配慮が
必要であるといわれていることからすれば、これを超えるAの時間外労働時間数は、Aに
とって極めて大きな肉体的・心理的負担であったといえる。
また、Aは、平成 16 年4月は休みが1日も取れず、5月及び6月は、それぞれ休みが2
日しか取れていないのであるから、上記のとおりの極めて長時間にわたる労働による疲労
を回復するための休息は、十分には取れていなかったといわざるを得ない。
以上からすれば、Aの時間外労働数は、Aにとって極めて大きな肉体的・心理的負荷で
あったことは明らかである。
2.前記認定事実のとおり、平成 16 年4月以降、Aの業務の負担は、質及び量ともに増加
し、さらに被告会社の職場環境としては、Aを支援する体制が整えられていなかったこと
が認められる。そのような中で、Aは、被告会社の存続に必要不可欠な資金繰りの心配や、
投資会社との折衝など、精神的な緊張を強いられる業務に携わり、平成 16 年 7 月にはうつ
病を発症し、精神的に疲弊していた中で、平成 16 年8月には、自らが折衝していた投資会
社からの投資を断られたり、被告代表取締役丙川からメールで叱責されるなど、大きな精
神的負担が加わったことが認められる。
3.以上の事情に照らすと、Aには、平成 16 年4月以降、業務内容自体の過重性により肉
体的・心理的負荷があったと認められる。
最終的には、会社の安全配慮義務違反が認められました。
(3)裁判から学ぶこと
本件では、財務経理部長として残業手当の支給対象外としていた社員について過重労働
による企業の安全配慮義務違反が問題となった点が注目されます。
このように労基法上の管理監督者としている場合は、労働時間管理がなじまないとして、
あえて時間外労働管理をしていない会社もあるかもしれません。
しかし、管理監督者も安全配慮義務の観点から時間外労働時間数の把握は、とても重要
になります。この裁判でも長時間の時間外労働について問題視しています。
― 長時間労働対策は、坂本直紀 社会保険労務士法人にお任せ下さい。 ―
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<社内風土・業務改善の提案
-⑥整理の4つのステップ->
以下のアンケート調査結果があります。
「1日に仕事で書類や文具などを探す時間はどれくらいですか?」
→ 平均値は 1 日 30 分でした。
例えば1か月の出勤日を 22 日、社員一人当たりの時給が 2,000 円、30 人の社員とします。
30 分×22 日=660 分=11 時間・・・毎月の探す時間
11 時間×12 か月=132 時間・・・1年間の探す時間
その結果、132 時間×2、000 円×30 人=792 万円が探し物にかける年間コストです。
いかがでしょうか。探し物のコストも積もり積もれば大きくなることがわかりますね。
そこで、今回は整理について解説します。整理において次の4つのステップが有効です。
STEP1「外に出す」
:片付けたい場所のものを、とにかく一箇所に出すことです。
STEP2「分ける」
:減らす基準をつけて、
「要」
、
「不要」に分けます。
STEP3「減らす」
:STEP2で、「不要」とした物を減らします。
STEP4:
「しまう」
:手元に残ったものをしまいます。
ここで、
「しまう」ときは、元にあった場所に戻すことが有効です。片付けが得意な人は、
ここで整頓(使いやすいように配置すること)まですると良いのですが、片付けが苦手な
人は、整頓までしますとかなり時間がかかってしまい、だんだん嫌になってきます。
従って、まずは、物を減らす、すなわち「整理」を徹底的に行うことが良いと考えます。
<坂本直紀 社会保険労務士法人のミッション>
○会社と社員の間に愛と感動の架け橋を創造するコンサルティング業務の中心的な存
在になる。
○企業の人事労務トラブルを防止できる体制を確立し、経営者、人事担当者等が本来行
うべき業務に集中できる環境を生み出すコンサルティング業務の中心的な存在になる。
○クライアントの社員のスキルアップを図ることで、社員の職業能力を高め、社員のモ
チベーションを向上させる人財育成事業の中心的な存在になる。
坂本直紀 社会保険労務士法人
代表社員
坂本直紀
住所:〒154-0012 東京都世田谷区駒沢 1-17-13
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