光の屈折と虹. 光線の逆進性

「アートとしての数学」http://haniu.a.la9.jp/nuas/index.html
光の屈折と虹. 光線の逆進性
光の屈折は, プリズムやレンズをあつかうときの基本原理なので, およそ知っ
ているだけでも, 映像関係の制作にはとても役立ちます. また, 光線の逆進性
は光をあつかう制作に大きなヒントになると私は思っています.
(1) 光の屈折
空気→水の場合
水→空気の場合
水面の法線
空気
水面の法線
大
空気
水面
大
水面
水
小
水
小
光線が進む方向が, 空気→水, 水→空気, のいずれでも, 光線と法線のなす
角度は, 水の側の方が小さなる.
このことは, 上図の水を, ガラスやアクリルに替えても同じ. (ただし, 屈
折の度合いは変わる)
(2) 屈折の度合いは色によって変わる
白色光 (日光など) は, 多くの色の光からなっており, 光の波長の長い方か
ら書くと, 赤, オレンジ, 黄, 緑, 青, 紫 の順である.
屈折で光が進路を曲げられる度合いは, 光の色によって違う. 図のように,
赤よりも紫の方が, 曲がりかたの度合いが少しだけ強い. (図では, 曲がり
かたの違いを実際より大きく描いている)
赤と紫以外の色の光線の進路は, 波長の順に, 赤と紫の間の方向である.
1
空気→水の場合
水→空気の場合
赤
水面の法線
紫
空気
空気
水面
水面
水
水
赤
紫
(3) 光源→水槽→スクリーンの場合の光線進路
(1)(2) のことから, 光源, 水槽, ス
クリーンを図のように配置した場
合の, 光線 1 本の進路もわかる.
図のように赤から紫まで光が分か
れることが虹色の原因であるが,
図は, 光線 1 本についての進路で,
実際の光は, 光線の束であり, 幅
を持っている. その結果, 少しず
れた光線同士から生まれた赤や黄
や緑や紫などの光は混じり合い,
色は白っぽくなり, 両端にだけ赤
と紫が見えたりする. 実際の虹色
の見えかたは, 他の要因もあって
さまざまである.
赤
紫
ス
ク
リ
ン
水
光源
(4) 光線の逆進性
[例 1] 図のように, A にある光源からの
光線の 1 本が, 水中に入り屈折し B に至
るとする. このとき, 逆に, B に光源を置
くと, 光線の 1 本は, 逆コースを通って A
に至る.
A
空気
水
B
2
[例 2] 図のように, C にある光源からの光
線の 1 本が, 鏡で反し D に至るとする.
このとき, 逆に, D に光源を置くと, 光線
の 1 本は, 逆コースを通って C に至る.
洗面所で鏡に誰かの顔が見えたら, 相手
からも自分の顔が見えるはずである.
C
D
例 1, 例 2 のように, 「ある光線の進路があるとき, そのスタートとゴール
を逆にして, 逆向きにたどるような光線も可能である」ことを, 光線の逆
進性という.
光の直進, 反射, 屈折は, いずれも, 光線の逆進性を持つので, 直進, 反射,
屈折をどのように組み合わせた形の光線でも, 逆進性をもつことになる.
前ページの (3) の虹のようなときは光線の束なので, 光の逆進をきちんと
実現するには虹の光源を作らなければならないので, やめておく. しかし,
もっとおおまかに考えると, 虹があるあたりに, 光源を置くと, およそ逆
向きの光線が進むので, 元の光源があったあたりに虹ができるはずだ, と
わかる. これは簡単に確かめられる.
たとえば, カメラは, 外からの光を入れて記録する機械として使われるが,
光線の逆進性から, 内側に光源を入れると, 外に光が出て行くはずである.
これでどんなことができるだろうか?
授業で見せた万華鏡のピンホールふたつきは, ピンホールカメラについて,
光を内から外へ出す使いかたをしていたわけである. ピンホール式プラネ
タリウムというのがあり, 箱に星空の配置の穴を開けて内側に強力光源を
入れて, 外に星空を映し出す.
他にも, どんな可能性があるだろろうか ?
3