金融業務の基礎知識 - 農林中金アカデミー

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中
金
ア
カ
デ
ミ
ー
系統内限
JAバンク職員必須の
金融業務の基礎知識
〈初級講座〉
株式会社 農林中金アカデミー
目
CONTENTS
次
第1章
1
JAバンクと利用者
利用者のいろいろ …………………………………………… 2
1.利用者を「知る」ことの重要性 …………………………………
2
2.利用者の種類 ………………………………………………………
2
(1)個人と法人
(2)個人
(3)法人
①会社
②社団法人・財団法人
③公益法人
④特別法に基づく法人
⑤地方公共団体・地方公営企業
⑥農事組合法人
(4)法人格のない団体
①権利能力なき社団
②民法上の組合
③法人格のない団体の分類の実務
2
3
4
法人と代表者 ………………………………………………… 6
1.法人代表者の権限確認 ……………………………………………
6
2.代表者の名称 ………………………………………………………
6
マネーローンダリングの防止等 …………………………… 7
1.貯金口座開設時の取引時確認 ……………………………………
7
2.マネーローンダリング ……………………………………………
7
3.取引時確認等 ………………………………………………………
7
4.貯金支払時の本人確認の方法 ……………………………………
8
5.印鑑の働き …………………………………………………………
9
個人情報 ……………………………………………………… 10
1.「個人情報の保護に関する法律」 ………………………………… 10
2.個人情報の取扱いの留意点 ……………………………………… 10
第2章
1
貯金業務
いろいろな貯金目的 ………………………………………… 12
1.貯金の目的 ………………………………………………………… 12
2.四つの貯金目的 …………………………………………………… 12
(1)お金の安全な保管
(2)利殖
(3)貯蓄
(4)お金の受払いの委託
1
2
JA貯金の種類 ………………………………………………… 14
1.JA貯金の分類 ……………………………………………………… 14
2.当座性(流動性)貯金と定期性貯金 …………………………… 14
3
それぞれの貯金の機能 ……………………………………… 16
1.普通貯金 …………………………………………………………… 16
(1)普通貯金取引の重要性
(2)窓口における取引
①口座開設
②通帳の交付
③受入れ
④払戻し
(3)口座解約
①口座解約の受付
②口座解約申出時のチェック事項
(4)普通貯金利息の計算
①付利単位・付利最低残高
②1年の日数
③利息決算日
④利息計算方法
⑤利息支払方法
2.スーパー定期 ……………………………………………………… 18
(1)スーパー定期取引の重要性
(2)定期貯金の基本事項
①新規受入れ
②預入期間と満期日
③据置期間
④書替継続と自動継続
⑤期限前解約
(3)定期貯金の利息計算
①貯金利息計算の基礎知識
②定期貯金の利息の計算と支払い
(4)スーパー定期の商品内容
3.総合口座 …………………………………………………………… 21
(1)総合口座とは
(2)商品内容
(3)総合口座の通帳
4.定期積金 …………………………………………………………… 23
(1)定期積金取引の重要性
(2)法律的性格
(3)商品内容
(4)取扱い上の留意点
5.JAの貯金の種類一覧 ……………………………………………… 25
4
貯金取引と法律 ……………………………………………… 26
1.取引は契約に基づいて行われる ………………………………… 26
(1)JA取引と契約書
(2)契約のしかた
(3)契約書の形態
2.貯金契約の性格 …………………………………………………… 27
(1)貯金契約の性格
(2)消費寄託契約
2
3.貯金規定の内容 …………………………………………………… 27
(1)貯金の受入れに関する規定
(2)貯金の払戻しに関する規定
(3)免責約款とJAの注意義務
(4)暴力団排除条項について
第3章
1
手形・小切手の知識
手形・小切手の要件 ………………………………………… 32
1.手形・小切手の役割 ……………………………………………… 32
2.手形用紙と小切手用紙 …………………………………………… 32
3.約束手形要件と小切手要件 ……………………………………… 33
(1)約束手形要件
(2)手形の有効性
(3)小切手要件
2
手形・小切手の受入れと支払い …………………………… 38
1.手形・小切手の受入れ …………………………………………… 38
(1)貯金への受入れ
(2)受入れ時の要件確認
(3)受入れと支払呈示期間
①手形の支払呈示期間
②小切手の支払呈示期間
(4)受入れと裏書の連続
(5)線引小切手
(6)記名式小切手の受入れ
(7)手形・小切手の資金化
①他店券の場合
②当店券の場合
2.手形・小切手の支払い …………………………………………… 40
(1)統一手形・小切手用紙の使用
(2)支払呈示期間内の支払呈示
(3)要件の不備
(4)印鑑照合
(5)裏書の連続
(6)事故届の有無
(7)線引小切手の現金払い
(8)手形の現金払い
3
手形交換制度 ………………………………………………… 43
1.制度のあらまし …………………………………………………… 43
2.手形交換所規則 …………………………………………………… 43
(1)交換できる手形・小切手類の範囲
(2)不渡り
(3)不渡届
(4)不渡手形の返還
(5)異議申立制度
(6)制裁措置
3
第4章
1
貯金業務の関連知識
残高照会・残高証明 ………………………………………… 48
1.残高照会とJAの守秘義務 ………………………………………… 48
2.残高証明 …………………………………………………………… 48
(1)残高証明とは
(2)残高証明書発行時の本人確認
2
貯金の相続 …………………………………………………… 49
1.相続の順位と相続分 ……………………………………………… 49
2.貯金相続の手続 …………………………………………………… 49
(1)本人死亡を事由とする取引制限のためのコードの設定
(2)正当な権利者(法定相続人)の確認
(3)相続関係の届出書の受理
(4)相続貯金の処理
3
貯金利息と税金 ……………………………………………… 51
1.利子課税制度 ……………………………………………………… 51
(1)源泉徴収制度と税の種類
(2)課税方法
①源泉分離課税
②総合課税
(3)税率と税額計算
2.非課税扱いの利息 ………………………………………………… 51
①非課税公共法人等からの貯金
②障害者等の利子非課税制度の適用を受けた預貯金
③金融機関からの貯金
④納税準備貯金
⑤勤労者財産形成住宅・年金貯蓄
3.障害者等の利子非課税制度 ……………………………………… 52
(1)利子非課税制度のあらまし
(2)非課税貯蓄の種類
①貯金
②合同運用信託
③有価証券
(3)非課税貯蓄の限度額
4
セーフティネット …………………………………………… 54
1.貯金保険制度 ……………………………………………………… 54
(1)貯金保険制度とは
(2)貯金者保護の方法
(3)貯金保険の対象はどう決まる
①金融機関の種類
②貯金などの種類
③金額
(4)貯金保険機構
2.破綻未然防止システム …………………………………………… 55
4
5
預貯金者保護法 ……………………………………………… 56
1.預貯金者保護法の成立 …………………………………………… 56
2.偽造カード等による払戻しの場合 ……………………………… 56
3.盗難カード等による払戻しの場合 ……………………………… 56
(1)補てん請求と請求対象額
(2)補てん責任が減免される場合と金融機関の立証責任
4.預貯金者の過失・重過失とは …………………………………… 57
(1)過失がある場合の例
(2)重過失がある場合の例
5.盗難通帳による払戻しの場合 …………………………………… 57
6
「振り込め詐欺」被害防止 …………………………………… 58
1.振り込め詐欺救済法 ……………………………………………… 58
2.金融機関に求められる対応 ……………………………………… 58
第5章
1
為替業務
為替業務の基礎知識 ………………………………………… 60
1.為替とは …………………………………………………………… 60
2.為替の種類 ………………………………………………………… 60
(1)自行為替と他行為替
(2)送金為替と取立為替
(3)電信扱と文書扱
3.為替の当事者 ……………………………………………………… 61
(1)「振込」・「送金」の当事者
(2)「取立」の当事者
4.当事者間の関係 …………………………………………………… 61
(1)「送金」・「振込」の当事者間の関係
(2)「取立」の当事者間の関係
2
振込 …………………………………………………………… 64
1.振込のしくみ ……………………………………………………… 64
2.利用者から受け付ける場合の振込の種類 ……………………… 64
(1)電信扱の振込
(2)文書扱の振込
(3)ATM等による振込
3
代金取立 ……………………………………………………… 66
1.代金取立のしくみ ………………………………………………… 66
(1)代金取立の対象
(2)依頼人の範囲
(3)代金取立のしくみ
2.集中取立と個別取立 ……………………………………………… 68
5
4
全国銀行内国為替制度 ……………………………………… 69
1.全国銀行内国為替制度とは ……………………………………… 69
2.内国為替制度における為替取引の種類 ………………………… 69
3.全銀システム ……………………………………………………… 69
4.系統為替オンラインシステム …………………………………… 70
5.為替決済のしくみ ………………………………………………… 71
5
為替業務の留意点 …………………………………………… 72
1.送金・振込 ………………………………………………………… 72
2.代金取立 …………………………………………………………… 72
6
貯金・為替関連機能 ………………………………………… 73
1.クレジットカード ………………………………………………… 73
(1)クレジットカードのしくみ
(2)クレジットカードの種類
2.インターネット(モバイル)バンキング ……………………… 73
3.デビット・カード・サービス …………………………………… 74
4.マルチペイメント ………………………………………………… 74
7
年金・年金受取 ……………………………………………… 75
1.年金とは …………………………………………………………… 75
2.年金取引の内容 …………………………………………………… 75
(1)年金受取りの手続
(2)年金の受取り場所・方法
(3)請求手続
(4)支払開始
(5)年金の支払月日
第6章
1
融資業務
融資の基本原則 ……………………………………………… 78
1.融資業務の重要性 ………………………………………………… 78
2.JA融資業務の特色 ………………………………………………… 78
3.融資の基本原則 …………………………………………………… 78
(1)安全性の原則
(2)流動性の原則
(3)成長性の原則
(4)収益性の原則
(5)公共性の原則
2
融資の種類 …………………………………………………… 80
1.資金の性格による分類 …………………………………………… 80
(1)普通融資(プロパー融資)
(2)要綱融資
(3)制度融資
6
2.勘定科目(または貸出方式)による普通融資の分類 ………… 81
(1)証書貸付
(2)手形貸付
(3)当座貸越
(4)手形割引
(5)債務保証
3.その他の分類 ……………………………………………………… 82
(1)担保別分類
(2)貸出期間別分類
(3)貸出先別分類
(4)資金使途別分類
4.証書貸付について ………………………………………………… 83
(1)証書貸付の法律的性質
(2)利息の計算と徴収の方法
(3)証書貸付の主な返済方法
3
担保と保証人 ………………………………………………… 84
1.担保の意義 ………………………………………………………… 84
2.担保権の種類と内容 ……………………………………………… 84
(1)約定担保権
(2)担保をとる場合の注意事項
3.保証の種類と内容 ………………………………………………… 85
(1)保証と保証人
(2)保証内容の種類
(3)保証形式の種類
(4)保証を受ける場合の留意点
4
融資事務の基本的な流れ …………………………………… 88
1.融資申込の受付 …………………………………………………… 88
2.審査 ………………………………………………………………… 89
(1)借入資格の調査
(2)信用調査
(3)借入申込内容の検討
(4)稟議書の作成・起案
(5)貸出実行の事務
(6)事後管理の事務
(7)回収の事務
7
第1章
JAバンクと
利用者
1
利用者のいろいろ
1.利用者を「知る」ことの重要性
JAには、毎日多くの利用者(お客さま)が来店しますが、取引の相手方である利
用者がどんな方であるかを正しく理解したうえで取引することはとても大切です。
利用者を正しく知ることは次の二つの観点から必要です。
第1は法律的観点です。金融機関取引はすべて法律行為ですから、取引の相手方が
その取引を有効に成立させるに足る行為能力や権利能力がある者かどうかを確認し、
トラブルなどの発生を未然に防止することが必要です。JAでは法律関係が複雑な一
部の取引(当座勘定取引、貸出取引など)については、取引を開始する時点で利用者
を詳しく調査します。通常の貯金取引の開始時点においても、「犯罪による収益の移
転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」)」により取引時確認を行う必要が
あります。また、「貯金保険法」により、利用者の情報を整備することが義務づけら
れています。
第2は事業推進の観点です。たとえば、利用者の職業、勤務先や役職などを知るこ
とによって、利用者をめぐるお金の流れを予測し、貯金の勧誘などの事業推進活動に
活かすためです。JAは、新規取引の段階ではこの観点の情報をあまり持っていない
のが普通です。この種の情報は、反復・継続される取引の中から一つ一つ拾い集める
ことができ、その結果として、次第に精緻な情報が形成されていきます。そのため
に、JAは不断の努力を行っています。
利用者に関する情報(「顧客情報」といいます)には、利用者ご本人の属性(どん
な方か)に関する情報と、利用者の行動(何をしようとしているのか)に関する情報
とがあります。情報の集め方としては、まず属性に関する情報を集め、次いで行動に
関する情報を集めるという順序が普通です。行動にはお金の流れがついて回ることが
少なくありません。お金の流れには「入る」流れと「出る」流れとがありますが、
「入
る」場合には貯金が、「出る」場合には融資の可能性があります。店頭での何気ない
利用者との会話の中から得た情報が、後日大きな取引に結びついた例は沢山ありま
す。自ら情報アンテナを張って、利用者に関する情報を拾い集めてください。一方
で、社会的信用を基盤とする JAとしては、これら情報の取扱いには十分留意する必
要があります。特に個人情報については、2005年に「個人情報の保護に関する法律」
が全面施行され、その保護が法律的にも図られています(
「4.個人情報」を参照)
。
2.利用者の種類
(1) 個人と法人
取引の相手方である利用者を分類すると、①個人、②法人、③法人格のない団体に
分けることができます。
(2) 個 人
個人は、法律的には自然人と呼ばれ、法人と対比されます。JAと取引のある個人
には、農業を営む個人のほか、家計性の取引が主体の個人(自ら事業を営まない会社
員、主婦、学生、年金受給者等)、営業性の取引が主体の個人事業主等があります。
2
第1節 利用者のいろいろ
これは、個人に関わるお金の流れに事業資金として循環しているものがあるか、単に
消費生活に充当されるものに限られるかという観点からの分類です。
JA が、当座勘定取引や貸出取引を開始するにあたって、取引の相手方である利用者
を調査するのには、取引の相手方がJA取引等の法律行為を行うことが法律上認められた
者であることを確認する(これを「行為能力の確認」といいます)意味も含まれています。
個人は通常、単独で取引(法律行為)をすることができます。
しかし、なかには単独では取引ができない人がいます。たとえば、未成年者とか精
神に障がいがあって自己の利害を正しく判断できない人は、金融機関取引等の法律行
為を行うことができないのが普通です。民法では、そのような人を制限行為能力者と
して、それらの人の行う行為については特別の規定を設けています。制限行為能力者
であるかどうか、法定代理人等の制限行為能力者を援助する者が誰であるかというこ
とは、戸籍簿(未成年者の場合)や登記事項証明書によって確認できます。民法にお
いて制限行為能力者とされるのは、①未成年者(婚姻している場合や法定代理人から
営業を許可されている場合を除いて満 20歳未満の者をいう)、②成年被後見人(精神
上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であって、家庭裁判所による後
見開始の審判を受けた者)、③被保佐人(精神上の障害により事理を弁識する能力が著
しく不十分な者であって、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者)、④被補助人
(精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者であって、家庭裁判所による
補助開始の審判を受けた者)の 4 者です。後見・保佐・補助の各制度は本人の判断能
力が不十分になった場合に家庭裁判所の審判によって保護を図るもので「法定後見制
度」と呼ばれています。一方、本人が十分な判断能力があるうちに、契約(公正証
書)によって任意後見人の選任を行い、本人に保護が必要になった時点から任意後見
人が本人のために対応する「任意後見制度」が「任意後見契約に関する法律」によっ
て制定されています。任意後見人を相手とする取引に際しては、任意後見契約の内容
を登記事項証明書によって確認する必要があります。
(3) 法 人
法人とは、社会的活動を営む団体が、取引の主体となれるよう、法律上の人格(権
利能力)を与えられた場合に呼ばれる名称です。
法人は、法律の規定によって設立されるので、法人との取引においては、その法人
がどの法律に基づいて設立されているかを確認しておくことが必要です。法人の分類
の仕方はいろいろありますが、ここでは主に設立の目的によって分けてみます。
① 会 社
会社は会社法に基づく法人で、構成員の利益を目的として営利事業を行ない、その
営利事業によって得た利益を構成員に何らかの形で分配することを目的とした法人で、
営利法人といわれます。
② 社団法人・財団法人
社団法人とは、人の集合である団体に法人格が認められたものです。これに対し
て、財団法人とは、一定の目的のために提供された財産の集合に法人格が認められた
ものです。“ジェイエイバンク支援協会”“全国農協保証センター”は前者の例、“全
国農林漁業団体共済会”は後者の例です。
3
第1章 JAバンクと利用者
社団法人・財団法人については、従来、民法が公益を目的とした公益法人を主な対
象に規定していました。しかし、2008年 12月、「一般社団法人及び一般財団法人に関
する法律(以下、一般法人法)」及び「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関
する法律(以下、公益法人認定法)」等の施行によって、制度の抜本的な改革が図ら
れ、民法の規定は大幅に削減されました。
一般法人法によって、剰余金の分配を目的としない社団・財団について、非営利法
人として登記することにより、法人格(一般社団法人・一般財団法人)を取得するこ
とができるようになりました。
③ 公益法人
一般社団法人・一般財団法人は、公益法人認定法に従って、公益を目的とする団体
として行政庁から認定を受けることによって、公益社団法人・公益財団法人となり、
税制上の優遇措置を受けることが可能となります。既存の旧民法に基づく公益を目的
とした社団法人・財団法人(特例民法法人)は、2013年 11月 30 日までの間に認定を
受けて公益社団法人・公益財団法人に移行されています。
④ 特別法に基づく法人
特別法に基づく法人としては、医療法人・学校法人・社会福祉法人・宗教法人等が
ありますが、それぞれ医療法、私立学校法、社会福祉法、宗教法人法に基づいて設立
されています。
また、農業協同組合、水産業協同組合、中小企業等協同組合、消費生活協同組合
は、それぞれ農業協同組合法、水産業協同組合法、中小企業等協同組合法、消費生活
協同組合法に基づいて設立される法人です。
⑤ 地方公共団体・地方公営企業
地方公共団体には、都道府県および市町村といった普通地方公共団体と、特別区・
地方公共団体の組合、財産区および地方開発事業団といった特別地方公共団体とがあ
ります。また、地方公営企業とは、地方公共団体が自ら管理し、独立採算的に経営する
事業のことをいい、水道事業・ガス事業・病院事業・自動車運送事業などがあります。
地方公共団体のほかに、公共団体として、土地改良区・土地区画整理組合、健康保
険組合、国民健康保険組合といった公共組合といわれるものがあります。
⑥ 農事組合法人
農事組合法人とは、農業を共同で営むための、農業協同組合法に基づく法人です。
組合員の農業生産についての協業を図ることにより、その共同の利益を増進すること
を目的としています。
(4) 法人格のない団体
① 権利能力なき社団
権利能力なき社団とは、代表の方法、総会の運営、財産の管理など社団としての実
態的な組織が規約その他によって確立しているが、法律上法人格を有していないもの
をいいます。たとえば、一般法人でない同窓会・同好会・ PTA・研究団体といった
ものが該当します。
貯金取引にあたっては、代表者個人の名義にするか、「○○会代表者××××」と
して取引することとなります。
4
第1節 利用者のいろいろ
② 民法上の組合
民法上の組合は、2人以上の者が共同の事業を営むために出資して作る団体で、法
人格を持たず、また団体としての性格も弱いものといえます。商店会等にこの形態が
みられます。
貯金取引にあたっては、
「○○商店会会長××××」として取引することになります。
③ 法人格のない団体の分類の実務
実務では、法人格のない団体については区分を設けず、割り切って個人色の強いも
のを「個人」、法人色の強いものを「法人」に分類している場合があります。
5