ゴルフボールの打撃力 ゴルフ打撃時の衝撃力はボール飛距離に関係します。 従来、加速度計や高速ビデオカメラを用いて打撃状況 の計測が行われていますが、ショット時にボールに作 用する力そのものを計測した例は見当たりません。そ こで、中古の 5 番と 9 番アイアンにパッドセンサを取 り付けて打撃実験を行ってみました。 センサを取り付けたアイアンを図1に示します。セン サはヘッド表面より小さ目ですが、上手な人であれば、 センサ表面にボールを当てることができます。 数回、強めにショットをお願いしました。各回の荷 重波形はそれほどばらつきませんでした。9 番アイアン ではボールがかなり上向きに飛ぶように(すくうよう に)打ってもらいました。図3に 5 番と 9 番アイアン の各 2 回の衝撃波形を示します。微小な重畳波が少し 乗っていますが、概略綺麗な波形が計測されました。 センサはアイアンフェイスの表面に置かれ、3mm 厚 のアルミの保護板で押さえた構造ですので、フェイス に垂直方向の力成分を計測します。 表1は打撃衝撃時間(荷重が作用開始から終了に至 る時間)、ピーク荷重(衝撃力の最大値)、衝撃波形 の力積(波形の面積を数値積分したもの)、および(1) 式で計算したボール初速度(ヘッドスピード)を示し ます。(1)式で m はボール質量(m=0.046kg)、V はボー ル初速度(m/sec)、F(t)は荷重(N)、t(sec)は時間です。 mV = ∫ F (t )dt (1) ∆t 図 1 センサを取付けた 5 番と 9 番アイアン 打撃実験は図2のように、校庭の芝生に練習用ネッ トを置き、上級のアマチュアに Tee を用いて打っても らいました。ゴルフボールは重さ 46g の市販品です。 クラブの握り部分に回路付ケーブル(1uF)を接続し約 7m 引き出して、高速電圧記録計(サンプリング速度 50kHz)で記録しました。 表1から、 衝撃時間は 5 番アイアンで約 0.43 ミリ秒、 9 番アイアンで約 0.48 ミリ秒でした。また、最大荷重 は 5 番で約 6.7kN(=680kgf)、9 番で約 4.8kN(=490kgf) でした。力積から推定したボール初速度は、5 番で約 36m/sec、9 番で約 28.5m/sec でした。センサとアルミ 保護板が極軽量なため、通常のショットと比べてスイ ングの違和感はほとんど無いようでした。 表1 アイアン 5番1回目 5番2回目 9番1回目 9番2回目 衝撃時間 (msec) 0.42 0.44 0.48 0.48 図 2 打撃テストの様子 図3 5 番、9 番アイアンの打撃波形 打撃波形のまとめ ピーク荷重 (kN) 6.75 6.56 4.85 4.75 力積 (N・sec) 1.61 1.70 1.33 1.29 初速度 V(m/sec) 35.1 37.0 28.9 28.1
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