PI2-258 ストレッチポールエクササイズが抗重力肢位での肩甲骨・胸腰椎

PI2-258
■ 運動器理学療法 26
ストレッチポールエクササイズが抗重力肢位での肩甲骨 ・ 胸腰椎アライメント
に与える影響
石川 大輔 1),佐藤 史子 1),山崎 肇 2)
1) 札幌円山整形外科病院,2) 羊ケ丘病院
key words ストレッチポール・姿勢・肩甲骨アライメント
【目的】
過去の報告から杉野らは立位矢状面脊椎のリアライメント効果や秋山らは
ストレッチポール(以下 SP)の効果として、
胸郭拡張機能改善など姿勢変化に関する報告が散見している。
臨床上、round shoulder posture( 以下 RSP) を呈しているケースを多く観察する。この不良姿勢は、頭部前方姿勢や上腕骨頭
の前方偏位を導き、さまざまな疼痛や症状を誘発する可能性がある。
SP を用いて肩甲骨のアライメント変化について、山口らが背臥位において SPex 後に床と肩峰間距離が変化したと報告し
ているものの、日常生活動作の主な場面である座位や立位などの抗重力肢位での SP エクササイズ(以下 SPex)前後における
肩甲骨のアライメント変化に関係する報告はみられない。そこで、我々は SPex 前後で、抗重力肢位での肩甲骨 ・ 胸腰椎のリ
アライメントに与える影響を調査した。
【方法】
対象は現在肩に痛みのない健常成人、11 名(男性 7 名 ・ 女性 4 名、平均年齢 28.6 ± 6 歳)とした。 測定時肩に疼痛を有す
るもの及び、肩は除外した。
方法は SPex 前後に安静立位姿勢で肩甲骨と胸腰椎アライメントを計測した。
SP 課題には、日本コアコンディショニング協会が推奨しているベーシックセブンを使用した。
肩甲骨アライメントの計測は、矢状面からの評価として、Charles らの方法に準じ Forward shoulder angle(以下 FSA)
、前
額面からの評価として、Jack らの方法に準じ Total scapular distance(以下 TSD)の計測を行なった。
FSA の測定にはデジタルカメラを使用し、C7 と肩峰を結んだ線と床に対し下ろした垂線との成す角を FSA とした。TSD
の計測にはメジャーを使用し、T3 棘突起と肩峰下角を結ぶ距離を TSD とした。また肩峰下角から肩甲骨内側縁を結ぶ距離
を肩甲骨長とし、正規化するために肩甲骨長と TSD で除した値を肩甲骨脊柱間距離とした。
胸腰椎アライメントの計測には、脊柱カーブを曲線定規:
(Flexicurve ruler)を用いて評価し、Lindsey らの方法に準じてラ
ウンドマークは C7 棘突起と L5-S1 棘突起間とした。胸腰椎カーブを紙にトレースし、C7 から L5-S1 に直線を引き交わる点
を交点とした。C7 から交点まで thoracic length(以下 TL)とし、
胸椎カーブの頂点から TL に下ろした垂線を thoracic width(以
下 TW)とした。TW を TL で除した値に 100 をかけたものを胸椎アライメント Kyphosis index( 以下 KI) を求めた。また、肩甲
骨アライメント及び胸腰椎アライメントの計測は、熟達した同一検者(検者内信頼性は検証済み)が行った。
各項目 3 回行いその平均値を採用した。
統計処理として、SPex 前後で各項目を比較し t 検定をおこなった。
(p<0.05)
【説明と同意】
本研究への参加について説明書および同意書を作成し、研究の目的、進行および結果の取り扱いなど十分な説明を行った
後、研究参加の意思確認を行った上で同意書へ署名を得た。
【結果】
SPex 前後で FSA は 52.71° から 50.66°、肩甲骨脊柱間距離は 1.51 から 1.49 と有意に減少した。胸腰椎アライメント KI には
有意差はみられなかった。
【考察】
本研究の結果、SPex は FSA、肩甲骨脊柱間距離を減少させた。このことから、肩峰が前方から後方へ偏位し、肩甲骨が内
転方向へリアライメントされたことが示唆された。
山口らは同様の結果を背臥位にて報告しており、我々は抗重力肢位でもリアライメントされることを証明した。しかし、
肩甲骨はリアライメントされたことが示唆されたが、胸椎アライメントには、有意差は見られなかった。原因として、今回の
対象者が健常者であることで、SPex 前の段階で胸椎後弯が強かったものが減少した者、胸椎後彎が弱かったものが増加した
者などのさまざまな脊柱アライメントが混在していたことが考えられる。
今後の課題は、対象の脊柱アライメントを事前評価しグループ分けをしてから解析するこが必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】
現代社会における生活様式の変貌から、姿勢不良を呈している人々が多くなっており、その姿勢を修正することは、障害
予防の観点からも重要である。今回の結果は、臨床上有益なものであると考える。
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