誰でもわかるプロジェクトアドベンチャー(林 壽夫)

だれでもわかるプロジェクトアドベンチャー入門
(心を育て、かつ学びの環境をつくるあたらしい教育手法)
プロジェクトアドベンチャージャパン
林 壽夫
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だれでもわかるプロジェクトアドベンチャー入門
(心を育て、かつ学びの環境をつくるあたらしい教育手法)
第1章 新しい体験学習....................................................................................................... 4
「ここでやってはいけないことは三つしかありません」4
たとえ相手が小学生であってもその人格を尊重する。4
脳が活発に働く効果的な学習環境をつくる。4
知識を「直接」教えない。5
振りかえり(ディブリーフィング)5
振りかえりの方法 6
第2章 新しい冒険教育とはどんなものか....................................................................... 6
冒険教育と体験学習 6
アドベンチャーの価値を再発見 7
アドベンチャーを安全に 7
アドベンチャーの教育的効果 8
第3章 プロジェクト アドベンチャーの体験学習手法................................................... 8
教育現場とPA 8
今までの方法とはどこが違う。8
学校が楽しくなる。9
なぜアドベンチャーで心を育てることができるのか。9
自己を守る壁 10
どうすれば人の壁を下げることができるか。11
学びの環境
「心の安全」をつくるための具体的な手法 12
子どもたちに「心の安全」を伝える方法 13
自分たちのために、自分たちがつくる、自分たちの規範 15
こころを育てる。15
2つのアドベンチャー 15
「心の安全」をめざしたプログラムの構成 16
教科教育に向けて 17
振りかえりと体験学習サイクル 17
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まえがき
最近「人の器」という言葉を聞かなくなった。人の心の豊かさ、人物の大きさを評
価する言葉も聞かれなくなった。言葉が消えたのと一緒に「人の器」が小さくなっ
てしまったような気がする。器が大きくても評価されない社会になってしまったか
らかもしれない。大人の社会からも、子どもの社会からも「心の美しさ」を称える
言葉が消えてしまった。生きていて良かったと思える時代ではなくなってしまった
ような気さえする。今、子どもたちを取り巻く大問題の多くは子どもたちの器が小
さすぎることからくるのではないか。子どもの器は小さいものだ、といって安心で
きる程度ではない。果たして人の器は育てることができるのか。
私たちがここで紹介する新しい体験学習としてのプロジェクト アドベンチャー
プログラムは人の心を育てるための実践手法である。大げさかもしれないが、クラ
スの雰囲気を一変させることができる手法である。数ある体験学習法の中で何より
も他と違うというところは「おもしろい。
」ということである。これだけ娯楽があふ
れている現代社会では子どもたちを惹きつける力が第一に必要である。さらにアメ
リカで 30 年もの実績がある十分検討し尽くされた手法でもあり、
安心して使ってい
ただけるものとしてお勧めしたい。
プロジェクト アドベンチャー プログラムというものが理解しにくいという声を
聞くことがある。私の知る限りでは「PAプログラムとは……」という定義を見た
ことがない。そのような定義をしたところでたいして意味がないということなのか
もしれない。
使えるものは何でも使ってきたのがPAなのである。確かに定義をすれ
ばわかりやすいかもしれない。だが同時に自分たちに枠をはめてしまうことにもな
る。実用主義にはなじまない。
キーワードはたくさんある。自己概念、心の安全、信頼、アドベンチャー、チャレ
ンジ。どうもこれらが納得いく形で結びつかないのではないか。PAは実用主義的
方法である。したがって理屈の前に方法がある。いろいろ試してみてうまくいった
方法に後から理論がついてくる。また、臨床心理に関する基礎知識について、どう
もアメリカで教育系の大学を出た人たちの方が日本よりいくらか進んでいる。その
辺の理由からか、最初の基本的な部分の解説が省略されているような気がする。だ
からわかりにくいのだろう。
本書では、なるべくオリジナルの理論の趣旨を損ねないよう、かつ初めての人が
理解しやすいよう解説することにした。PAプログラムと深いつながりをもつ「体
験学習」との関係。他の冒険教育プログラムとの相互関係などにも触れている。また
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なによりもPAプログラムの専門の解説書である「アドベンチャーグループカウン
セリングの実践」を読むための予習編としても活用できるものと考えている。
本文では最初に体験学習についての新しい考え方に触れ、つぎに一般的な冒険教
育について、またその可能性について、そして最後にプロジェクト アドベンチャー
がこれらの特徴をどうとらえ、どのように利用しているかについて書いている。
林 壽夫
(2000 年 1 月)
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第1章 新しい体験学習
「ここでやってはいけないことは三つしかありません」
「それは、ひとつは火事を出してはいけない。つぎに死んではいけないというこ
とです。それから人に頼ってはいけない。ここでやってはいけないことはこの三つ
だけです。
」
静岡県立朝霧野外活動センターの渡邊佳洋元所長は当時入所オリエンテ
ーションで子どもたちにこう語りかけた。子どもたちはそう言われても「へえ」と
思うだけで何を言われているかわからない。渡邊所長は続けて「やってはいけない
ことは他にありません。私たちはこの施設の中に、どこに何があるかということを
教えません。みんなは自分たちでこの施設を見てきてください」という。子どもた
ちはそこで初めて「なんかへんだな」と気がつく。
「ここではどうやら何をやっても
いいらしい」
。
「この施設の中では入ってはいけないところはきっとないのだな、死
ななければいいのだから」
。そして施設の中に一斉に散らばって行くと、ここがトイ
レだとか、ここに食堂があったなど自分たちでいろいろなものを発見していく。
たとえ相手が小学生であってもその人格を尊重する。
すごい事を言う人がいるものだ。ここでは死ななければ何をしても良いと言いき
ってしまう。とてもではないが今までの公立の野外活動施設では考えられなかった
ことである。これまでは毛布のたたみ方から食事の後始末まで事細かに決められて
いるというのが普通であった。ところがこの施設ではやってはいけないことは三つ
だけだ。普通、どこの施設でも借りた炊事道具を返すときは職員が立ち会って、良
く洗ってあるか厳しくチェックされるのが一般的であった。ところがここではそれ
もやらない。自分たちできれいにしたと思ったらそれで良い。数も調べない。無く
なったら買えば良いという。そこには相手が小学生であってもその人格を尊重する
という態度が貫かれている。体験学習(experiential learning)のヒントはこんな
ところにあるのではなかろうか。
脳が活発に働く効果的な学習環境をつくる。
一般的に体験学習というものは、積み重ねた体験の中からある種の法則性を自分
たちの力で発見していくということだ。そうすることにより脳の各所にある今まで
の知識や経験と今の体験との間にネットワークができて、断片的な知識ではなく、
意味のある使える知識を獲得することができる。
「あっ、そうか!」という気づきの
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瞬間に人は頭の中に見事なネットワークを構築する。こうして得た知識はなかなか
忘れない。このときに大事なことは脳にストレスがかかっていないということであ
る。あれをやってはいけない、これをやってはいけないという制約ばかりでは脳が
活発に動かないのでネットワークが広がらない。
「こんなことを言うと人にバカに
されるかもしれない」と思ったら発想に制約ができてしまう。Caine&Caine は
「Making Connections」という本の中で強迫観念のないところで、いろいろなこと
に挑戦して、何でもやってみるということが使える知識を身につけるために大事な
ことだと述べている。たとえそれが失敗であっても、その失敗の中からも多くのこ
とを学べる。
体験学習とは従来の学習にただ体験する機会を増やせば良いとする単純なことで
はない。
「人間の脳は体験をどのように消化しているか」
「学習を効果的に行うため
にはどのような環境を設定すれば良いか」ということを体験学習理論は問題として
いる。
知識を直接教えない。
..
学習を効果的に行うため、例えば「知識を直接教えない」というカナダのマクマス
ター大学の医学部で実践されている考え方がある(
「読むクスリ」上前淳一郎、週刊
..
文春 1996.8.1)
。ここでは知識を直接教えないという制限を教師の側に課している。
..
そうすることによって、教師は伝えたい知識を直接教えない方法を考えなければなら
ない。それは工夫すれば必ず見つかるはずである。大学の医学部で教えなければなら
ない程の情報量でもこれができているのである。この方法を実施した結果、学生はそ
の課題への取り組みに興味を持つ。学生だって楽ではない。それでもさんざん悩み考
えた結果、最後に「あっそうか!」という気づきを起こすのである。このときに脳の
中にネットワークが形成されるのである。
丸暗記した知識ではなく、生きるために使える知識を学ぶための方法である。こう
した知識は、単にそのひとつの知識を身につけただけではなく、自分が今まで持って
いたさまざまな知識と関連付けられているので必要なときにすぐに取り出せるし、そ
の記憶はなかなか失われない。またこのプロセスで、今までの知識も活性化されるの
で複合的な効果が得られる。
知識を直接教えてしまうと「気づき」は起きにくい。自分で考えるということをし
なくなるからである。「気づき」の芽をつぶさないためには、直接知識を教えないと
いう方法をとる。この場合、見ていて直接教えたくなっても我慢する必要がある。そ
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の時だめでも体験学習は繰り返されるので、この次にはきっと気がついてくれる。生
徒を信頼しなければ待てない。
振りかえり(ディブリーフィング)
体験学習では体験をそのままにしておくのではなく、それを振り返る機会を積極
的につくっていくことが必要である。体験のなかにはいろいろな素材が埋もれてい
る。これを見つけやすくしてあげるのがファシリテーター(援助者)の重要な役割
である。ただこれも直接的に指摘したのでは効果的ではない。
「気づき」が起きるよ
うな問いかけが必要である。いま何が起こったか。どうしてそうなったのか。何が
良かったのか。何が悪かったのか。目標は達成できたか。いまの自分の気持ちに引
っかかりはないか。自分に正直であったか。目標に変更を加えなくて良いか。今の
体験から学んだことは何か。問いかけの方法はいろいろある。
振りかえりの方法
振りかえりにはさまざまなアプローチの方法がある。ファシリテーターはみんな
が活動している間、
何を見ていたかが重要である。
その間に起こった小さな出来事、
小さな一言も見逃さないよう観察していなければならない。
「振りかえり」
ではなる
べくみんなが発言する機会を持てるようにする。でも発言は強要しない。チャレン
ジ バイ チョイスである(後述)
。
「振りかえり」の中で出てきた重要なことは、な
るべく深く掘り下げてみる。せっかくいいテーマが出かかったのに、みんなが気づ
かずにその意見を無視して進んでしまいそうなときは、良く聞こえなかったふりを
してもう一度聞いてみたり、
「それは、こういうこと?」など言い方を変えて同じ事
をもう一度繰り返して聞いてあげ、みんなの注意をひく。自然に議論が展開するよ
うに。自分たちの力で考える習慣をつけるために、押し付けにならないように、フ
ァシリテーターは常に中立の立場を保つようにこころがける。子どもたちはファシ
リテーターの意図を読もうとするが、こちらが期待する答は無いのだということを
随所でほのめかす。意図が読まれるぐらいだったら意図はもたないほうがよい。こ
ちらの意図が読まれるとそのように動こうとする。それでは自然の気づきが生まれ
ない。だれも何も言わない沈黙の時が流れても、しばらくそのまま平気でいること
も大事である。きっと、その間も何か考えていてくれているはずである。
「振りかえ
り」は強引に進めないことが大切である。何も話が出なければ次に進めば良い。
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第2章 新しい冒険教育とはどんなものか
冒険教育と体験学習
一方で、冒険教育という手法がイギリス、アメリカ等で注目されている。冒険活
動をグループで行うことで、達成感や成功体験を重ねていき、自尊感情を高めてい
こうとするものである。
冒険教育と体験学習とは多くの部分が重なっているが、
元々
は別のものである。現在では冒険教育を効果的に進めるために体験学習の手法を利
用している。また、体験学習を効果的に行うには冒険教育を取り入れると良いこと
もわかっている。
アドベンチャーの価値を再発見
「アドベンチャー」とは未知の世界に挑戦することである。
一般に「アドベンチャー」というものは山や海などの自然の中で命がけで行うもの
だというイメージを多くの人が持っている。そしてほとんどの人がアドベンチャー
は自分とは関係の無いものだと信じている。
ところが「アドベンチャー」は人を育てる上で大変な価値がある宝物であるとい
うことがわかってきた。とりわけ人と人との関係で最も大切な「人を信頼する心」
は、アドベンチャーをベースとする環境では容易につくり出すことができる。この
「信頼関係」こそが今の子どもたちに最も必要なものである。しかし「信頼関係」
はつくろうと思ってもできるものではない。その「信頼関係」が容易に出来てしま
うのがアドベンチャーの特徴である。
アドベンチャーには更に自己との対峙、
葛藤、
自分自身に対する挑戦、仲間との協力、成功体験、達成感、至高体験など人間の成
長に役立つ性質がたくさんある。いくら新しいメディアが発達してもこれだけのこ
とは疑似体験では絶対できないはずである。それに何よりもおもしろい。現代社会
では教育プログラムで効果をあげるにはテレビやゲーム機に負けてはならない。そ
れよりおもしろくなければ生徒は興味を示してくれない。
アドベンチャーを安全に
アドベンチャーの唯一の問題点は「危ない」ということである。
アドベンチャーは安全ではないからアドベンチャーなのである。ただ、アドベンチ
ャーを教育の手法として使う場合、本当に危険である必要はない。それがアドベン
チャーであると感じられればそれでよいのである。そこで子どもたちにとっては大
冒険と思えるようなことを安全に行う方法が求められてきた。
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アドベンチャーを安全に行う方法にはいくつかある。OBS(Outward Bound
School=後述)はインストラクターの技術と知識でこれを解決している。徹底した
インストラクターへのトレーニングを行いプログラムを安全に行えるようにしてい
る。また、YMCA やボーイスカウトなどの野外活動団体ではプログラムを工夫し
て小規模なアドベンチャーを実施して教育的効果を得ている。
アドベンチャーの教育的効果
アドベンチャーは安全にさえできればそれだけで十分意味のあるプログラムとし
て成立する。アドベンチャーは未知の世界に挑戦する。だからアドベンチャーであ
る限り新しい世界なのである。その中で人間がさまざまなことを学ぶということは
たしかである。しかし、これらの効果を客観的に証明する手段が乏しい。アドベン
チャーがたとえ短期間であっても確実に教育的な効果があるということは、経験的
には明らかである。しかし短期間では統計的有意差が現れるまでには至らない。長
期であればある程度客観的に評価できるだけの効果があらわれるであろう。
しかし、
今の日本の現状ではアドベンチャーだけを長期間行うのは人的、また費用的な問題
があって難しいことも事実である。
第3章 プロジェクト アドベンチャーの体験学習手法
教育現場とPA
PA(プロジェクトアドベンチャー) の手法は冒険教育をベースにして、体験学
習の手法を取り入れたものだということができる。それぞれの長所を活かし、冒険
教育で学習者の心を開き、体験学習法でこころを育てる。人間の心の成長と学習効
果を高めるという両方に効果がある、今の学校にとって、たいへん好都合な教育手
法である。
ただ、この方法は教師にとっても大冒険である。それは教師が生徒の人格を尊重
しなければならないからである(詳細は後述「心の安全」をつくるための具体的な
手法)
。ただ気持ちの上で尊重しているだけでなくそのことを生徒に認識してもらわ
なければならない。それも形で示さなければならない。極端に言えば、
「学校の中で
やってはいけないことは何もありません」と宣言するようなものである。これでは
学級崩壊に拍車をかけるのではないかと思われるのも当然である。
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今までの方法とはどこが違う。
この方法が今までの方法と違うのは生徒の側で規範をつくり、生徒が自発的に動
くように働きかける手法があるということである。これを実行すると生徒も先生を
尊重するようになる。尊敬するのではない。尊敬されることはこの場合それほど重
要ではない。ひとりの人間として尊重されればよい。この方法は先生にとっても一
番楽な方法なのである。怒ったり怒鳴ったりしなくて済む。普通に人間性を表に出
して生徒と接すれば良い。先生がどこまでこれを信じることが出来るかである。現
代のように価値が多様化してくると、生徒にあわせて規則を変えていくという方法
では子どもたちの変化には追いつけない。子どもたちが自分たちで納得する規範を
決めていけば良いのである。
学校が楽しくなる。
この手法を取り入れることで、多くの子どもたちが毎日の学校が楽しくてしょう
がないと思えるようになるはずである。あのアメリカでうまくいった方法なのであ
る。学級崩壊はとっくの昔に体験した国である。ナイフの持込みを禁止するのでは
なく拳銃の持込みを規制しなければならない学校もある国である。また、日本でも
すでに実施して成果が上がっている学校もある(学事出版「新しい体験学習」シリ
ーズ参照)
。
この手法は極めて実用主義的なもので国民性とか文化の違いは考慮する
必要はあるが、これを乗り越えるだけの力をもった手法である。現在の日本の学校
教育でも十分利用できるものである。この理論を正しく把握して実践していけばよ
い。特別な技術や能力は必要としない。
なぜアドベンチャーで心を育てることができるのか。
こんな仮説が考えられる。
「人は身に危険が迫ってきたとき、
仲間同士が協力し合
うという本能が働く」
というものである。そうでなければこんなに弱い人類という生
き物がこんなに長い間生きつづけてこられたはずがない。
ところが今の私たちの生活は現代文明に守られているので、日常生活の中で身の
危険を感じることはほとんどない。つまりお互いが協力し合うという本能も使われ
ることがなくなってしまっている。でも、それは本能だから、まったく消えてしまっ
たわけではない。身に危険が迫ってくる状況をつくりだせばきっと人はお互いに協
力し合うのではないか。
アドベンチャー活動はそんな状況をつくりだすことができる。身の危険を感じる
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と「お互いが協力する」という本能がゆっくり動き出す。アドベンチャーで本能を揺
り動かすのである。この種の本能は使われないと錆付いてしまう。だが、いちど動
き出した本能は次からはずっと動きやすくなっている。だからアドベンチャーはと
きどきやればよい。その間で信頼関係を深めるためにコミュニケーションが必要な
活動をしていく。「信頼関係」はこの後で述べるように人が成長する為に最も大切な
土台である。
「信頼関係」をベースに人は新しい自分を発見する。そして、人の意見
がこころに届いてくるのである。アドベンチャー活動は信頼関係作りの「きっかけ」
になりうる。
「信頼関係」をつくることは大変なことなのである。ところがアドベンチャーで
は比較的容易に信頼関係をつくることができる。お互いが協力する関係が、信頼を
生む。それはアドベンチャー活動のもっている特質なのである。だからアドベンチ
ャー活動は宝物だということができる。
自己を守る壁
人間にはそれぞれ Self Defense Barrier (自己防衛の壁)という心の壁があると考
えられる。この壁は自分自身のイメージや自分の考え方、価値観を守ろうとする砦
の壁のようなものである。人はこわがりで、自分が傷つきたくないので壁をはりめ
ぐらす。ここで大切なことは、この壁は自分では下げられないということである。た
だし、自分で自分の壁を下げることはできないのだが人の壁は下げてあげることが
できる。つまり、
自分がその人を傷つけたりしないということを相手に認識してもら
えばよい(詳細は後述)。この「自分では下げられないが、人の壁を下げることはで
きる」という性質を利用して、グループの仲間は自分の壁を下げることができる。
つまりただひたすら人の壁を下げることだけに集中していればよい。みんなが他者
の壁を下げようと努力していると、気がついてみると自分の壁が他の人によって、
下げられている。このからくりに気づくことがプロジェクト アドベンチャーの理解
にはもっとも必要である。
壁を高くしたままだと自分にとって必要な、外部からの情報が壁にはね返されて
入ってこない。例えば、自分は絵が下手だと思いこんでいる人が上手な絵を描いて
人から褒められることがある。でもそんなときには普通
「たまたまうまく描けただけ
だ」とか、
「きっとお世辞で人が褒めてくれているだけだ」と考え、偶然とか、例外
とかで片付け、自分は絵が下手なのだという考えを曲げようとはしない。たしかに
それは何年もかかって築きあげられたものだから、そう簡単に変更するわけにはい
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かないのである。
このように自分にとって良いことを指摘されても人は自分の思い込みを変えよう
とはしない。これが逆に自分を非難することであったら更に強く反応する。つまり
周りの人の言葉はその壁にはね返されてしまいその人の心には届かないということ
である。
自分というものがそうかんたんに人の言うなりに、右に左に意見を変えてしまう
ようでは、
何が自分かわからなくなって混乱してしまう。つまり精神的な安定を保つ
ため、他者の意見を取り入れないようにしているのではないだろうか。
こころの不安
というものは、それほど怖いのであろう。
ここで問題としている「自分に対するイメージの全体」を心理学者は「自己概念
(セルフコンセプト)
」という言葉で言い表している(「自己概念」については有斐閣
新書 ロジャース クライエント中心療法などを参照。)
どうすれば人の壁を下げることができるか。
相手の壁を下げるにはその人に自分の心が傷つけられることがないという認識を
もってもらうことであるというのは前述した。それには相手のことを尊重しようと
することが一番である。この人は自分のことを尊重しようとしてくれていると感じ
ると安心してその人の前で失敗することも平気になる。壁が下がるのである。もっ
と具体的に言うと、人の話を一生懸命聞くこと、陰で悪口を言わないこと、相手の
立場を一生懸命理解しようとすることなどである。実はこれらはカール・ロジャース
という心理学者が長い時間をかけてたどり着いた、
「カウンセラーにとって必要か
つ十分な態度要件」* とまったく一致する。つまりグループのみんながカウンセラ
ーとしての要件を備えるということである。
人の壁を下げることは容易ではない。
ただプロジェクト アドベンチャーではアド
ベンチャー活動で「お互いが協力をする」という本能が動き始めている。きっかけ
は整っている。あとはお互いが仲間を尊重するという態度を示すことができればよ
い。そうすれば仲間の壁が下がる、最終的には自分の壁が下がるのである。
*
クライアントが変わるために必要かつ十分な要件は①自己一致(Congruence) ②
無条件の肯定的配慮(Unconditional Positive Regard) ③共感的理解(Empathic
Understanding)であるとするもの。
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学びの環境
お互いが仲間の壁を下げようと努力することにより自分の壁も下がり、結果的に
全員の壁が下がる。そこに「こころが安全」な環境が生まれる。
「こころの安全」が
得られると気持ちがオープンになる。そうすると今まで無視したり、考えないよう
にしていたことに耳を傾け始める。
「気づき」はこうして生まれる。
この環境では全員の壁が下がっている。つまり全員のこころが開かれた状態にあ
る。
(この状態ではすべての人が傷つきやすい状態であるということにも注意が必
要である)人の話を落ち着いて聞くことができて、仲間の力に支えられて自分を変
えようとするアドベンチャーに挑戦する準備も整っている。みんながそうなのであ
る。そこではグループの人数分の学びの資源があるということである。それだけ効率
がよいということでもある。クラスが 40 人なら 40 人の先生がいるようなものであ
る。
お互いがお互いから学びあうことができる。今までにない「学びの環境」が出来上
がる。ここではどんどんコミュニケーションをしていくことでみんながどんどんい
ろんなことに気づいていき、どんどん変わっていく。そして、どんどん成長してい
く。これまでの学校では 1 人の先生対 40 人の生徒だったものが1人の生徒に 40 人の
先生がいるようなものだ。今の子どもたちのおかれている状況を考えると使えるも
のは何でも使わなければならない。子どもたちの教育の資源に「子どもたち」その
ものを使うということである。
「心の安全」をつくるための具体的な手法
グループに信頼関係ができると安心感が生まれる。これを積極的につくり出して
いくための手法が二つある。
1.フルバリューコントラクト
一つはフルバリューコントラクトである。フルバリューコントラクト(Full Value
Contract)はプログラムを始める前にしてもらう約束である。これはプロジェクト
アドベンチャーがつくった言葉なので英語の辞書にはきっとまだ載っていない。フ
ルバリューという言葉は Less Value という「人を低く評価する」という言葉の反
対語としてつくられた言葉なのである。「お互いの人格を最大限に尊重する」という
約束である。プログラムをはじめる前に約束をしてもらうというのは、いささか姑
息なやり方ではある。単に「お互いの人格を最大限に尊重しましょう」という約束
なのであまり考えもしないで「ハイハイわかりました」と思わず言ってしまう。とこ
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ろが実はこれがそう簡単なことではないということにあとで気がつく。だからいさ
さか姑息なやり方なのである。でもこんな方法でもとらないことにはこちらが有利
な立場に立つ方法がない。
いずれにしろ、
やろうとしていることは良いことである。
だから手段は姑息でも赦してもらえる。
(…と思う)フルバリュー コントラクトが
ねらいとしているのはお互いが安心していられる環境をみんなでつくりましょう、
ということである。
プログラムの進行中フルバリュー・コントラクトに対する約束違反がみられたら
みんなでそれについて話し合う。違反をした人を非難するのではなく、そのときグ
ループの仲間は見ていただけだったのか、他にすることがなかったのか、どうして
そうなったのか、どうすればお互いが安心できる環境を整えることができるかを何
度でも話し合うようにする。
2.チャレンジ バイ チョイス
もう一つの方法はチャレンジ バイ チョイス(Challenge by Choice)という。こ
れはプログラム中、
「人からは何も強制されない」ということである。外部からの強
迫観念を排除することで自分との戦いを明白にする。自分の意志で選択をするとい
う、選択の自由を保障するという方法である。冒険活動は身体的にも精神的にも負
荷がかかる。この負荷に対する強さは人によって大きく異なる。とくに内面の傷つ
きやすさはその時の状態によっても大きく変わってくる。そこで自分ではこれ以上
は無理だと感じたら、いつでも中止して構わないことになっている。それが個人を
尊重するということである。ただし、気持ちは参加していてくださいとお願いして
おく。そうでないとグループの他のメンバーに影響してしまう。個人の選択の意志
をお互いが最大限に尊重するということで
「心の安全」
を築こうというものである。
また自由意志を尊重するということは、そこで得た体験が自信につながるという側
面もある。人から強制された結果できた体験では、つぎに同じような場面に出会っ
たときにまた誰かに強制されないとできないかもしれない。自分に対する自信には
なりにくい。誰にも頼らずに自分の意思で挑戦することのほうが自尊感情を高める
には有効である。
子どもたちに「心の安全」を伝える方法
フルバリューコントラクトなどと言っても子どもたちにはピンとこない。そこで
プロジェクト アドベンチャーでは「ビーイング(Being)
」という方法を使ってい
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る。
「ビーイング」はなるべく大きな模造紙に人間のかたちや、樹のかたちなど何か
象徴的なかたちの輪郭をみんなで描く。そしてその輪郭の中に「自分たちが安心で
きる学級にするために、自分ができること、友達にして欲しいこと」を書き出して
もらう。
たとえば、
「人の話をよく聞く」
、
「困っているときは助けてほしいとハッキ
リ言う」
、
「すぐに怒らない」など何でも構わない。書き出すときは自由に書いても
らう。不都合なものがあったら、後でみんなで話し合って表現を変えたり、削除す
.
ればよい。これができたら今度は輪郭の外側の地の部分に「自分たちが安心できる
グループにするために、自分がされるといやだなと思うこと」を書き出す。
「人の意
見を途中で遮る」
、
「悪口を言う」
、
「無視する」などである。これを書いた紙を活動
の現場に常に持っていく。そして活動の振りかえりのときなどを利用して、みんな
がこの約束を守れたかどうかを話し合う。そんな中で、もし新しく「ビーイング」
に書き込んだ方がよいと思われるものが出てきたらすぐに書き足す。こうして「ビ
ーイング」はどんどん変わっていくのである。
「ビーイング」
はこのほかグループの目標を達成するためにも使うことができる。
学園祭や運動会で実行の役員などがみんなでこれをやってみるのもよい。目標を達
成するために自分たちができること、仲間にはこうしてほしいということ、こうい
うことはしないでほしいということをみんなで書き出してみる。こういう会は疲れ
てくると、小さなことでもめることがある。そんなときに「ビーイング」を見なが
らみんなで話し合ってみる。そんな対立を成長に生かしていくことが必要ではない
だろうか。
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ビ ー イ ン グ
「自分たちが安心できる学級にするために、自分ができること、
友達にして欲しいこと」を書き出してもらう。
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自分たちのために、自分たちがつくる、自分たちの規範
規範となる目標設定を自分たちでつくる。
「ビーイング」
は人から決められた目標
ではなく自分たちが決めた目標である。そしてこれはいつでも変えて良いことにな
っている。あくまでも目標なのですぐにこの通りに実行することはできないが、目
標から外れた行動が見られたらチャンスである。なぜ、そのようなことが起こった
のかみんなで話し合う。起こした人を非難するのではなく、これから起きないよう
にするために自分たちに何ができるかを一人ひとりが考えて話し合う。このような
振りかえりを繰り返すことで、少しずつこれが体にしみついてくる。自然に規範が
できあがるのである。
「ビーイング」
は安心できる環境を作り出すための手法である
が、同時に自分たちの行動の規範としても重要なの役割も果たす。
「ビーイング」の
とおりに本当になったら「いじめ」は無くなる。
こころを育てる。
こころが育つということはどのようなことか。こころが育つのだからこころが大
きくなるに違いない。こころの大きさを計る適当な尺度が無いので、主観的に捉え
てみるしかないのだが、明らかに今の子どもたちのこころは小さくなっていると思
われる。こころを育てる教育が目指す目標は「大きなこころ」あるいは「豊かなこ
ころ」ということであろう。
人にはそれぞれこれまでの人生で作り上げてきた考え方の柱があると考えられる。
こころを成長させるためには新しい考え方を取り込んでいかなければならない。と
ころが自分とは異なる考え方を受け入れるには相当の勇気が必要である。もしかす
ると、自分の柱とする考え方の土台をいじらなければならなくなるからである。そ
の土台を入れ替えて、もう一度自分の考え方を組みたて直さなければならないから
である。本当に組みたてなおせるかどうかわからない。もし、組みたてなおすこと
が出来なければ、
こころが不安定になってしまう。
これを人は無意識のうちに嫌う。
人間が人の話を聞かないのは自分を守るための反応なのである。
二段階のアドベンチャー
心のアドベンチャーには2段階ある。自分では下げることができない「自己防衛の
壁」をグループの仲間たちと一緒に下げ、自分自身の心の扉を開ける。これが第1の
チャレンジである。
一方、お互いの壁が下がって、それぞれが人の意見を受け入れる準備が整ったと
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ころで、自分の意見を外に向けて率直に表現するということが第 2 のチャレンジで
ある。こころが開かれているとはいっても、もしかすると自分の言った言葉で相手
が傷つくかもしれない。そこにはやはり未知のこわさがある。しかし、そのために言
葉を控えてしまっては自分自身を尊重したことにならない。
フルバリュー コントラ
.....
クトは自分を含め、仲間を尊重するということである。日本人には自分を尊重する
のが得意ではない人たちが多いのだが、
お互いのこころを育てるという観点からは、
これは文化だといって片付けてはならない問題であろう。お互いが成長するために
は自分のこころに引っかかったことは言葉で表現していくことが必要である。
ただ、
そこには信頼関係がなくてはならない。表現をするにあたっても相手を最大限に尊
重するというフルバリューの精神は必要である。そうでないとただのケンカになっ
てしまう。
「心の安全」をめざしたプログラムの構成
プログラムの構成としては、いきなりリスクの伴う活動に入るのではなく、簡単
なものから少しずつ身体的、精神的な負荷のかかるものへと移行していく。グルー
プの状況に応じてどの段階に時間をかけるかを判断するのはファシリテーターの重
要な役割である。これも「心の安全」が判断基準となる。
アイスブレイカー
初対面の固さを揉みほぐすために、軽い動きの伴ったゲームなどを行う。お互いの
心の壁を下げるために、名前を覚えるゲームやお互いの体が触れ合うようなゲーム
を行う。
信頼関係構築を重視したプログラム
お互いの信頼関係を築いていくためのプログラム。やさしいものから徐々に難しい
ものに移行していく。目をつぶって後ろに倒れる人を他のメンバーが支えるトラス
トフォールなどもこの種の活動である。
コミュニケーション
信頼関係がある程度できあがったところで、次にお互いのコミュニケーションを深
めるためのプログラムに移っていく。
作られつつある信頼関係を確認していく段階。
ローエレメントのロープスコースやイニシアティブなども使われる。
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深い部分での複合活動
十分なコミュニケーションができてくると、ある程度「心の安全」が築かれてくる。
この段階においてはお互いが遠慮するのではなく自己を主張しあってリスクを感じ
ながらもグループのメンバー同士が対峙していけるようディブリーフィングに注意
を払う必要がある。
教科教育の中でも体験学習理論を実践していく。
可能であれば、
教科の統合なども試み、知識が断片的にならないよう、異なった分野との関連付け
が行われ、使える知識となるようにサポートする。またこれらの知識を吸収する場
合にも「あ、そうか」という気づきが体験できるような配慮が必要である。
振りかえりと体験学習サイクル
PAプログラムでは 1 章で述べた体験からの気づきを重視する。この効率を高め
るためには、まず環境を整える。脳がリラックスできるようにすることである。こ
れがフルバリュー コントラクトによって作られる「こころの安全」である。また体
験学習のサイクルが示す循環性に注目する。これはひとつの体験からではなく、
人間
は体験を重ねることにより、しっかりした法則性を見出し、抽象概念を形成してい
くのだとする考え方である。いま、見つからなくてもこの次の体験も含めて何らか
の法則性にたどりつくこともある。また自分の古い体験を思い出して、
今の体験の意
味に気がつくこともある。 あわてることはない体験は消えることはないのだから。
大事なのは 1 章で述べているように、今までの知識や経験と今の体験とを結びつけ
るために脳が活発に元気よく動くような環境を整えるということである。その意味
で「こころの安全」はなによりも重要なのである。
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体験学習サイクル
目標設定
フルバリュー
コントラクト
実社会
実 体 験
観察と振りかえり
試験適用
抽象概念の形成と
一 般 化
かか化
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教科教育に向けて
アドベンチャーが持っている性質というものが心を育てるためにたいへん効果的
であることは前述した。実はこれらの心を育てる上で大切な要素が教科教育の効率
を最大限に高めるために必要な要素と共通している。米国オハイオ州コロンバス市
の小学校でこれを実践して、画期的な成果をおさめた Marry Henton はこれを「刺
激」
「意味」
「サポート」であるとしている。「刺激」は子どもたちの興味をひきつけ
るために必要である。また子どもたちは、自分にとっての「意味」がなければ興味
を示さない。
「サポート」
はこれまでPAの手法が最も大切に考えている信頼関係を
示している。
これは安心できる環境をつくるためにたいへん有効である。安心できる
環境をつくることによって脳が活発に動くための環境を整えることができるのであ
る。つまりこれらをまとめると、
教科教育で効果を上げるにはPAの基本的な手法を用いて、みんなが安心していら
れる環境をつくり、
「刺激」
「意味」
「サポート」を念頭においた教材や手法を開発
すればよいということになる。
これは簡単なことではないが次のような方法が考えられる。
..
例えば前述の「知識を直接教えない」というカナダのマクマスター大学の医学部
で実践されている考え方はこの条件を満足しているといえる。
また教科統合という手法も有効である。生徒たちは自分にとって意味がないと思
っている教科には興味を示さない。そこで教科を統合して少しでも意味のあるもの
として捉えられるような工夫が必要となる。これには場合によっては年間の授業計
画の順序を変えなければならなくなる。年度をまたいでまで変えるということでは
ない。
可能な範囲で順序を変えて、
できる限り教科間のテーマに共通性を持たせる。
これにはそれぞれの各教科の担当の知恵を集めなければならない。
またグループ学習という手法も有効である。この方法でサポートの環境を作り出
すことができる。これらの手法は組み合わせて使うと更に効果を高めることができ
る。またここにあげた手法以外にも使えるものは積極的に取り入れていくべきであ
る。念頭におかなければならないのは「刺激」
「意味」
「サポート」である。
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アドベンチャーの価値
もともと「アドベンチャーには人を育てる不思議な力がある」ということに、多
くの実践者たちは経験的に気づいていた。
これを最初に教育に生かそうとしたのは、
おそらくOBS(Outward Bound School)を創設した Kurt Harn 博士であったと
思われる。PAはこのOBSから生まれた。つまり理論より先に実践があったわけ
だ。実践によって出た結果に後から理論をつけたようなところがある。もしかする
と違う理論がつくかもしれない。しかし、それがどういう理論であろうと、アドベ
ンチャー活動に価値があるということは変わらないと思うのである。
参考文献
Henton, Mary, 1996, Adventure in the Classroom, Kendall/Hunt Publishing
Company
Johnson, David W., Johnson, Frank P., 1994, Joining Together Fifth edition,
Caine, R.N., and G. Caine, 1994, Making Connections: Teaching and the Human
Brain, Addison-Wesley Publishing Company
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