tower property について

2013 年度「ファイナンス保険数理特論」
補足2
— tower property について —
2013 年 5 月 31 日, 高岡浩一郎∗
【このファイルは2頁分です.
】
本稿では,有限確率空間(つまりシナリオ数が有限)かつ情報分割 F1 の
各セル(アトム)の確率が正という設定下で,tower property(反復条件
付けの性質)
¯
[
]
¯
E E[X|F2 ] ¯ F1 = E[X|F1 ]
を証明します.講義の命題 6.3 の (5) です.講義でもお話したように,F1 が
No Information のケースである
[
]
E E[X|F2 ] = E[ X ]
を示せば十分です.
記号の準備
総シナリオ数は N, 情報分割 F2 のセル数は K とします.各セル Ak に含
∑K
k=1 n(k) = N です.ま
まれるシナリオ数を n(k) と記すことにします.
た,セル Ak に含まれるシナリオを,2種類の添字を用いて
ωk,1 , ωk,2 , · · · , ωk,n(k)
と記し,各シナリオ ωk,i に与えられている確率を p(ωk,i ) と記すことにし
ます.
N 個のシナリオについて和をとることは,ωk,i の添字 k = 1, 2, · · · , K と
i = 1, 2, , · · · , n(k) について
K n(k)
∑
∑
k=1 i=1
という形の2重和を取ることと同じになることに注意しましょう.
∗ 一橋大学大学院商学研究科.E-mail:
[email protected]
1
証明
条件付き期待値の定義より,確率変数 E[X|F2 ] はセルごとに値が定まる
ので,E[X|F2 ](ωk,i ) は i = 1, 2, · · · , n(k) に依らない値,つまり
E[X|F2 ](ωk,i ) = E[X|Ak ]
(1)
です.よって
[
]
E E[X|F2 ]
=
K n(k)
∑
∑
E[X|F2 ](ωk,i ) p(ωk,i )
k=1 i=1
=
K n(k)
∑
∑
E[X|Ak ] p(ωk,i )
【式 (1) より】
k=1 i=1
=


n(k)
K 

∑
∑
E[X|Ak ]
p(ωk,i )


i=1
k=1
=
 n(k)
∑



X(ωk,j ) p(ωk,j ) n(k)


K
∑
∑  j=1
k=1






∑
n(k)
p(ωk,j )
i=1







p(ωk,i )






j=1
【条件付き期待値 E[X|Ak ] を計算した】
=
K n(k)
∑
∑
X(ωk,j ) p(ωk,j )
k=1 j=1
=
E[ X ]
2
となって,証明完了です.
2