キャラクターに対する嗜好度 辻 幸 恵

〔論 文〕
キャラクターに対する嗜好度
辻 幸 恵
Ⅰ 緒言
キャラクターと聞けば、何を想起するのか。ある者は人気コミックの主人公
を想起するであろうし、ある者は昔から世の中に知られているスヌーピーやミッ
キーマウスを想起するかもしれない。子供の頃に大好きであったドラえもんや
アンパンマンを想起する若者もいる。それらのキャラクターをあしらったキャ
ラクターグッズ(商品)は女性のみならず誰にとっても身近な持ち物のひとつ
である。
一般的にキャラクターは「①性質。性格。②漫画(マンガ)・小説・映画など
に出てくる人物・動物。」と説明されている。そしてキャラクター商品は「人気
のあるキャラクタ-②をえがいたり、かたどったりした商品」1)とされている。
人気のあるキャラクター②というのは、漫画・小説・映画などに出てくるキャ
ラクターのことであるが、それらは、容姿だけではなく、その性格も多くの人々
に受け入れられている。そのように解釈すれば、「人気のあるキャラクター」は
その時代に求められている性質や性格をあらわしていることになる。また、定
番となっているキャラクターは時代をこえて、人々に愛される要素をもってい
ることになる。
近藤(2006)は、「長く愛されるキャラクター」「100年愛されるキャラクター」
をつくるためには、テーマをしっかり決め、伝えたいことを伝える工夫が必要
1)見坊豪紀・金田一京助他編(2008年)『三省堂国語辞典(第6版・小型版)』331ペー
ジ引用。
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であると述べている。そこには、女性に受け入れられることの重要性も述べら
れている。もちろん、男子大学生も昨今はキャラクターグッズを所持している。
彼らの時計、Tシャツ、帽子、財布等には人気キャラクターがあしらわれてい
る。また、シャープペンシル、キーホルダー、眼鏡ケース、ペンケースにもキャ
ラクターを配したものが多い。そのような品物を使用していても誰も批判はし
ない。世間がキャラクターをあしらった商品、いわゆるキャラクターグッズを
認めているからである。たとえば、ユニクロがワンピース(ONE PIECE)と
コラボTシャツを販売したことは有名である。ワンピースのみではなく、現在
までにドラゴンボール、ガンダム、マジンガーZなどの人気アニメとのコラボ
Tシャツを発売している。アニメのキャラクターがファッションとなるのであ
る。ワンピースの主人公(モンキー・D・ルフィ)がファッション雑誌である
メンズ non・no の表紙を飾ったことも話題になった。このように女性だけでは
なく、男性にも好まれるキャラクター、あるいはキャラクターグッズは存在し、
それらは彼らのファッションにも影響を及ぼすのである。
一方、地域活性化のためにもキャラクターたちは一役かっているのである。
『全日本ゆるキャラ公式ガイドブック』(2009)には180体ものゆるキャラが都道
府県別に紹介されている。そこには癒し系とよばれるキャラクターも多く存在
している。この本の前書きにゆるキャラが次のように定義されていた。「全国各
地で開催される地方自治体主催のイベントや、村おこし、名産品などの PR の
ために作られたキャラクターのこと、特に着ぐるみとなったキャラクターを指
す」である 2)。現在、人気の高い滋賀県の「ひこにゃん」は、ゆるキャラの代
表格でもあるし、また、地域活性化に役立つ有名なキャラクターと言えよう。
また、2009年10月に神戸市長田区若松公園に鉄人28号のモニュメント像がつく
られた。鉄人28号は1956年から雑誌に掲載された。ロボットを中心にしたストー
2)みうらじゅん(2009年)『全日本ゆるキャラ公式ガイドブック』34ページ引用。この
本によると、ゆるキャラ界のスーパースターは「ひこにゃん」とされている。「ひこ
にゃん」は滋賀県彦根市と井伊直弼と開国150年祭キャラクラーである。「ひこにゃん」
以外にも「カモンちゃん」、「やちにゃん」「しまさこにゃん」「いしだみつにゃん」な
どが彦根市にはいる。「カモンちゃん」以外はすべて猫のキャラターである。
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リーの漫画である。このように、キャラクター自身がその地域のシンボルマー
クになることもある。
さて、上記の例のようにキャラクターは、単なるブームではなく、広く人々
の生活の中に存在している。このような中で、本報告は、キャラクターに対し
て心理的効果の測定をしたり、キャラクターグッズの所持状況を調査し、明ら
かにすることを目的とする。キャラクターに対して良い感情を抱くこと、ある
いはキャラクターが好きだと感じることを、本報告ではキャラクターへの嗜好
度とよぶ。つまり、キャラクターが好きであれば嗜好度が高く、嫌いであった
り、あるいは興味がなければ嗜好度は低い。
本報告の意義は、調査結果から、現在の人気キャラクターの要因を分析でき
ることである。そこには時代が求めている要素が含まれていると考えられる。
現在、何が求められているのかを明らかにすることは、新しい商品開発のヒン
トにもなると考える。
Ⅱ 好まれるキャラクターの共通点
1 キャラクター市場と背景
最初に、キャラクター市場の状況から説明をする。1980年代後半では人々の
好みの多様化により、大衆から「分衆」の時代と呼ばれるようになった。雑誌、
テレビ、ラジオをはじめ多くの情報が発信されるようになった。その情報によっ
て、人々は自分に合致した生活を模索するようになった。また、他者との違い
を楽しむという気持ちの余裕もあらわれてきた。それまでは「人並み」という
言葉に代表されるように、世間体などを気にすることもあったが、ここからは
自分の好みを堂々と主張できる時代となってきた。その中で多くのキャラクター
グッズも市場に出回るようになっていった。それまでは、ディズニーやサンリ
オなどの定番商品が市場を押さえていた。それらの定番商品群に対して、様々
な分野からのキャラクター進出がみられるようになった。さらに、消費者ニー
ズの細分化がすすむと、年齢、職業、居住地などの基本属性ではなく、個人のラ
イフスタイルや価値観に合わせたキャラクターグッズが登場するようになった。
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キャラクターというと一般的には女性や子供が好みそうなイメージがあるが、
最近はそうでもない。男子大学生もキャラクター商品に対しては好感度が高い。
だからこそ、ユニクロも ONE PIECE(以降はワンピースと表記する)とコラ
ボしたTシャツを発売している。もちろん、女子が好むキャラクターと男子が
好むキャラクターには違いがある。同時にグッズも同様で、何でもキャラクター
を商品に付ければ売れるというものでもない。そこには話題性やストーリー性
が必要になってくる。
話題性やストーリー性の重視は、最近のマーケティングでも着目されている。
広告手法のひとつでもある。たとえば、ツイッターやブログに好意的にとらえ
られると、その口コミ効果は、はかりしれないものがある。ストーリーは、そ
のキャラクターやキャラクターグッズにまつわるものばかりでもない。地域を
代表するゆるキャラたちは、それぞれに地域の何かを伝えるために生まれてき
ているのだ。その何かには、かならず背景があり、そこに歴史や地域の特徴が
含まれているのである。
2 大学生たちが好むキャラクターに関する調査
ここでは、大学生たちが好むキャラクターに関する調査を実施した。最初に
7つの質問を男子大学生100名に実施した。男子大学生たちは2回生~4回生で
19才~22才であった。また、すべて関西圏在住で、私立大学に在籍している。
7つの質問は以下のとおりである。
①あなたはキャラクターグッズを所持していますか。
「はい」の方は具体的に書いて下さい
「いいえ」の方は所持していない理由を書いて下さい。
②あなたの好きなキャラクターを教えて下さい。いない場合は「なし」と回
答下さい。(好きなキャラクターは複数回答でも可とした)
好きなキャラクターを書いた方はそのキャラクターがなぜ好きなのか理由
も横にお書き下さい。「なし」の方は「ない」理由を回答下さい。
③ワンピースのキャラクターの中で好きなキャラクターをひとりだけ回答下
さい。また、好きな理由をお書き下さい。
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④ゆるキャラを知っていますか?「はい」の方は具体的に書いて下さい
⑤キャラクターグッズを販売している店を知っていますか? はい、いいえ
の選択。
⑥どのようなキュラクターが好きですか?以下から選択して○を付して下さ
い。○はいくつでもかまいません(複数回答可)
全体的な形
丸い 三角 四角 楕円 細長い
サイズ
小さい 大きい
色
白 黒 赤 青 黄 桃 橙 緑 茶 紫
種類
動物 植物 魚類 鳥 昆虫 人物 架空の物
食器 野菜 くだもの
⑦人気のあるキャラクターグッズの条件は以下の中でどれが一番大事でしょ
うか? ひとつだけ選択して下さい。
値段が安い かわいい いやされる 持っていて元気が出る
自慢できる 珍しい 役にたつ おもしろい 話題性がある
皆が知っている 新しい 流行している
以上の質問に対する回答は以下のとおりであった。 ①あなたはキャラクターグッズを所持していますか。「はい」78名「いいえ」
22名
「はい」の具体例は以下のとおりである。複数回答があるので78名を超え
ている。数字はすべて人数(名)を表す。
携帯ストラップ25,キーホルダー20,Tシャツ10,シャープペンシル8,
靴下6,筆箱5,消しゴム4,タンクトップ4,財布3,ぬいぐるみ3,
時計3,パスケース2,帽子2,鞄2,靴1,アクセサリー1,眼鏡1
「いいえ」の主な理由は「子供っぽい」「以前は持っていたが今は持ってい
ないだけ」「持っていても似合わない」「わざわざほしいとは思わない」「特
に理由はない」「今さらバカみたいで嫌だ」「この歳ならばブランド品の方
がよい」等であった。
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②「あなたの好きなキャラクターを教えて下さい」に対して好きなキャラク
ター記載者95名、記載していない者5名となった。この場合、好きなキャ
ラクターは複数回答でも可とした。以下に10位までを挙げたが、好きなキャ
ラクターの1位はワンピースの主役モンキー・D・ルフィで回答数は27で
あった。圧倒的な人気と言える。2位以下もワンピースに登場しているポー
トガス・D・エース、シャンクス、ロロノア・ゾロ、ナミ、トニー・ト
ニー・チョッパーが挙げられ、ここでもワンピースの人気がうかがえた。
2位以下は以下のような結果となった。
2位:ポートガス・D・エース、3位:シャンクス、
4位:うずまきナルト、5位:ロロノア・ゾロ、5位:ナミ 7位:トニー・トニー・チョッパー、8位:リラックマ、
9位:くまモン、10位:涼宮ハルヒ、10位:ハローキティ
また、好きなキャラクターの理由は、1位のモンキー・D・ルフィに関して
は「元気がある」「やる気がある」「明快だ」「友達思いだ」「勇気がある」「強い
者に負けない」「気持ちよく生きている」「目標がある」「あきらめない」等があ
げられた。2位のポートガス・D・エースに関しては「信条がある」
「仁義があ
る」「強い」「優しさがある」「男の生き様がある」「最後までぶれない」
「前をみ
ている」等であった。3位のシャンクスに関しては「男らしい」「判断力があ
る」「いつも何が正しいのかを知っている」「頼りになる」「グローバルな視点が
ある」「何者に対してもびびらない」等であった。
③ワンピースのキャラクターの中で好きなキャラクターをひとりだけ回答を
してもらったが、上記②にランキングされたキャラクラーがここでも同様
に挙げられていた。
1位:モンキー・D・ルフィ- 2位:ポートガス・D・エース 3位:ロロノア・ゾロ 4位:シャンクス 5位:ナミ
6位:エドワード・ニューゲート(白ひげ) 7位:トニー・トニー・チョッパー 8位:サンジ
9位:ニコ・ロビン 10位:フランキ-
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「好きな理由をお書き下さい」に対する回答を以下に例示した。
1位:モンキー・D・ルフィ-
元気、勇気がでる、すかっとする、わかりやすい、未来がある 2位:ポートガス・D・エース
心いき、仲間思い、男らしい、男の優しさがある、かっこうよい
3位:ロロノア・ゾロ
かっこうよい、行動力がある、信念がある、脇役にてっしている
4位:シャンクス
リーダーにふさわしい、かっこうよい、頼りになる、信念がある
5位:ナミ
かわいい、魅力的、しっかりしている、美人だ、頼りになる
6位:エドワード・ニューゲート
男だ、リーダーにふさわしい、大物、逃げない、偉大だ
7位:トニー・トニー・チョッパー
かわいい、けなげだ、優しい、仲間思い、やる時にはやる
8位:サンジ
クールだ、知的だ、料理ができる、ひとりでもさまになる
9位:ニコ・ロビン
賢い、美人だ、クールだ、知的、大人の魅力がある、能力がある
10位:フランキ-
いちず、力強い、あきらめない、負けない、単刀直入、男らしい
④「ゆるキャラを知っていますか」に対して「はい」つまり知っていると回
答した者は99人であった。ほとんどの大学生が知っていることになる。
「はい」の方は具体的に書いて下さいという質問に対する回答は以下のとお
りであった。ただし、1位のひこにゃんが75名の記述があり、また、2位
のくまモンも60名の記述があったので、この2つのゆるキャラが知名度が
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高いことがわかる。また、アンケートをとった地域が関西圏なので、以下
のキャラクターは兵庫県、奈良県、大阪府など、その地域のキャラクター
が多くを占めた。
1位:ひこにゃん 2位:くまモン 3位:せんとくん
4位:なーむくん 5位:はばタン 6位:じーも 7位:パパたこ
8位:ぼっくりん 9位:トリピ- 10位:まんとくん
⑤「キャラクターグッズを販売している店を知っていますか」の質問に対し
て「はい」と回答した者は68名、「いいえ」は31名、無回答は1名であっ
た。
⑥「どのようなキュラクターが好きか」を調べるために選択枝から選んでも
らった結果は以下のとおりとなった。ただし、ここでは複数回答をしてい
るので合計は100にはならない。単位は人数(名)である。
形:丸い85 三角25 四角27 楕円54 細長い10
サイズ:小さい84 大きい16
色:白68 黒55 赤19 青17 黄54 ピンク61 橙28 緑20 茶8 紫5
種類:動物76 植物30 魚類22 鳥36 昆虫12 人物24
架空の物17 食器8 野菜23 くだもの48
⑦「人気のあるキャラクターグッズの条件は以下の中でどれが一番大事か」
という質問に対する回答結果は以下のとおりであった。(単位は人数・名)
合計で100になる。
値段が安い2 かわいい34 いやされる18
持っていて元気が出る12 自慢できる3 珍しい3 役にたつ2
おもしろい7 話題性がある5 皆が知っている10 新しい2
流行している2
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3 先行研究結果との比較
最初に幼稚園の年長組に所属する園児を対象に調査をした結果3)と今回の男
子大学生たちから得た結果を比較する。幼稚園の年長組に所属した園児たちの
多くは5才であった。調査の結果、5才児たちの好きな形は丸型が83%の支持
を集めた。本報告の調査は男子大学生が調査対象であるが、どのようなキャラ
クターが好きかという質問の回答に丸い形は85%の者が支持をした。つまり丸
型を好むという結果は5歳児でも大学生でも変わらなかった。ただし、色につ
いての結果は5歳児と大学生とでは異なっていた。5才児たちは赤を支持した
が、男子大学生たちは、キャラクターの色としては白、ピンク、黒、黄などが
上位を占めた。5歳児に人気の赤は、男子大学生たちからは100名中19名という
支持しか得られなかった。
次に、女子中学生を対象に調査をした結果4)と今回の男子大学生たちから得
た結果を比較する。女子中学生たちの平均年齢は14才であった。調査の結果、
女子中学生たちの好きなキャラクターの特徴は「流行」「新しさ」「なごみ」の
要因を含むということであった。「なごみ」とは、見ているとほほえましく思っ
たり、ほっこりとした気持ちになったりする状態のことである。この代表例と
して「リラックマ」が挙げられていた。これに対して、今回の調査対象である
男子大学生たちは「かわいい」「いやされる」「持っていて元気が出る」 等は
高得点であったが、「新しい」「流行している」などは低い点数となり、好みの
キャラクターの要因にはなっていないことが明らかになった。ただし、女子中
学生たちが要因としてあげた「なごみ」については、男子大学生たちも「いや
される」という要因に対して高得点であることから、どちらも「なごみ」ある
いは「いやされる」という心にほっとするような感じを与えるキャラクターを
好んでいることが明らかになった。
3)2005年7月に大阪府にある私立幼稚園に訪問した。訪問回数は2回、学生たち8名
を動員して、調査を実施した。
4)2002年5月、昭和女子大学で開催された日本家政学会第54回年次大会で筆者が口頭
研究発表をした結果を引用している。調査期間は2001年10月中旬から下旬で、大阪府、
兵庫県での私立中学在籍者を個人塾などを中心に実施。有効回答数は847となった。
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最後に、男子大学生たちに受け入れられるアートキャラクターの条件5)と今
回の調査結果とを比較する。ここではアート性をおびたキャラクターを想定し
た。世の中ではユニクロが作家とのコラボジーパンを発表したりしていた。そ
こでマンガ、すなわちコミックの主人公などのキャラクターではなく、アート
キャラクターと呼ばれるものに対して大学生たちはどのような時に、なぜそれ
らを支持するのかを調査した。その結果、マンガを脱していないような子供向
けキャラクターとは異なり、そこにはデザイン性や、希少価値を求めているこ
とがわかった。今回の結果、
「珍しい」「話題性がある」などはあまり高くはな
い評価点であった。よって、アートと名が付いた場合と、単純なキャラクター
グッズとでは、差異があることが明らかになった。アートと名が付くことによっ
て、大人の感覚になることが調査から明らかになった。また、「かわいい」より
も「かっこうよい」というイメージが強くなる。さらに、一点もの、作家もの
というように希少価値を求める気持ちも強くなることが明らかになった。
これらの3つの先行研究と、今回の調査結果を比較してみたが、それ以外の
研究成果は注釈の6に示した6)。
5)2006年6月、日本繊維製品消費科学会の年次大会で筆者が口頭研究発表をした結果
を引用している。発表タイトルは「大学生に受け入れられるアートキャラクター」で
あった。
6)筆者(辻幸恵)のキャラクターに関する先行研究は以下のとおりである。
①「キャラクター商品に対する購入基準とその魅力の要因分析-女子中学生とその母親
の場合-」(2002年3月)京都学園大学経営学部論集第11巻第3号、37-64ページ。
②「キャラクター商品に関する女子大学生の嗜好と選択尺度」(2002年5月)日本家政学
会第54回全国年次大会口頭発表、昭和女子大学
③「キャラクター商品の選択背景-経験と心理との関係-」(2002年9月)第15回繊維連
合研究会発表会、福井大学
④「キャラクター商品の購買心理-女子大学生のケース-」(2002年11月)日本商業学会
2002年度関西治部11月例会、大阪第4ビル
⑤「キャラクター商品に期待する付加価値」(2003年5月)日本家政学会第55回全国年次
大会口頭発表、お茶の水大学
⑥「キャラクターTシャツの選択心理」(2005年6月)日本繊維製品消費科学会、2005年
全国年次大会口頭発表、金城学院大学(愛知県、名古屋市)
⑦「キャラクター商品とヤング市場」(2005年9月)日本経営学会第79回年次大会口頭発
表、九州大学
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これらの先行研究の結果と今回の結果から好まれるキャラクターの条件とし
て、以下のことが考えられる。形としては丸い形がよい。色は、白やピンクな
どの色はだれにでも受け入れられやすい。男子大学生になると好みに黒色など
も入り、5歳児になると赤色が入ってくる。動物や果物を原型にしたモチーフ
はわかりやすいため、誰にでも多くの世代に受け入れられやすい。もちろん、
着ぐるみの製作などを考えると、動物型の方が魚や昆虫などよりも手足が明確
で製作しやすいこともある。
キャラクターから受ける印象としては、かわいらしく、いやされて、元気に
なるようなものが好まれる。これらの条件にすべてあてはまるキャラクター例
として、「ひこにゃん」が挙げられる。全体的に丸みをおびた形であり、色は白
である。猫をモチーフにしており、白くてかわいらしい。つぶらな瞳にいやさ
れて、元気になれるようなキャラクターである。
⑧「キャラクター商品に対する幼稚園児の選好」(2006年5月)日本家政学会第58回全国
年次大会口頭発表、秋田大学
⑨「大学生に受け入れられるアートキャラクター」(2006年6月)日本繊維製品消費科学
会、2006年全国年次大会口頭発表、神戸女子大学教育センター
⑩「丸形キャラクターが好印象をつくる要因」(2007年6月)繊維学会、平成19年度繊維
学会年次大会口頭発表、タワーホール船堀
⑪「大学生が好むキャラクターTシャツの条件」(2008年6月)繊維学会、平成20年度繊
維学会年次大会口頭発表、タワーホール船堀
⑫『キャラクター総論-文化・商業・知材-』(2009年)白桃書房303ページ。これは共
著(梅村修、水野浩児)
⑬「若者のキャラクター服に対するニーズ」(2009年6月)繊維学会、平成21年度繊維学
会年次大会口頭発表、タワーホール船堀
⑭「ゆるキャラから感じるゆるさの度合い」(2010年6月)繊維学会、平成22年度繊維学
会年次大会口頭発表、タワーホール船堀
⑮「キャラクタ-志向度とその要因」(2011年6月)繊維学会、平成23年度繊維学会年次
大会口頭発表、タワーホール船堀
⑯「若者が支持するキャラクターの要因-ワンピースのケース-」(2011年11月)日本消
費者行動研究学会第43回消費者行動研究コンファレンス口頭発表、関西大学高槻ミュー
ズキャンパス
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4 キャラクターを知る情報源
キャラクターを知る情報源のひとつに口コミがある。口コミにはブログやツ
イッターも含まれる。顔を知っている友人からの口コミは見知らぬ人たちから
の情報よりも信頼度が大きい。口コミ以外には、他人が持っているものを実際
に見ることがある。これは他人からのビジュアルな情報である。鞄にかわいら
しいキャラクターが付いていれば、それに着目するようなことは誰にでも経験
がある。もとより同年代の人の持ち物には関心が高くなる。また、店頭のディ
スプレイなどもキャラクターを知る情報源である。たくさんのぬいぐるみ等が
店頭に並んでいると、目にはいりやすい。店頭ではなくても車内の吊り広告も
貴重な情報源である。東北大震災への応援キャンペーンのポスターには、「せん
とくん」をはじめ、多くのキャラクターが並んでいた。また、企業の宣伝のポ
スターにも企業キャラクターが活躍している。
キャンペーンポスターからも理解できるが、キャラクターを認知してもらう
ためには露出度が大切である。つまり、いかに人目にふれるのかが大切になる。
くまモン(熊本県)は最近、もっとも露出度が高いキャラクターである。比較
的に新しく出来たキャラクターではあるが、その露出度の高さから認知度が高
い。ボディが黒で、顔の部分に白い部分があり、ほっぺは赤い。くまモンとい
う名前からわかるが、熊をモチーフにしている。オフィシャルサイト(http://
kumamon-official.jp/profile)の自己紹介欄をみると、誕生のきっかけは2011
年3月の九州新幹線前線開業とある。くまモンの仕事は「熊本だけではなく、
関西や関東にも出張して、熊本のおいしいものや大自然を熱烈アピール」する
ことである。広報が仕事といえよう。くまモンのグッズは公式サイトで紹介さ
れている。衣類、食品、雑貨のカテゴリーがある。たとえば、エプロンや帽子、
クッキー、クッションなどが掲載されている。
このように露出度の高さから、世間への認知度を高め、そのキャラクターの
ファンをつくっていく手法は広告の手法ではオーソドックスではあるが、成功
させることはたやすいことではない。ただし、最近はブログなどで画像も紹介
ができる。キャラクターは名前だけではどのようなものか、理解しがたいので、
画像を見せることは大事なことである。
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口コミやポスターやブログに登場してくるキャラクターはそれぞれの個性や
来歴によって、あるいは彼らの形状によって、どのような情報発信がふさわし
いのかが決まってくる。たとえば、くまモンのように、ご当地キャラクターで
あれば、地域のイベントには必ず参加したり、その地域の駅などの交通機関に
は、ポスターなどの手段によって、キャラクターを認知してもらう工夫も必要
である。和歌山県の駅には「たま」という猫の駅長がいる。これは実在の猫で
あるが、その猫をモチーフにしたキャラクターの猫グッズは広く販売されてい
る。企業のキャラクターであれば、企業のホームページに登場するだけではな
く、商品の販売促進に役立つように、好感度をあげなくてはならない。不二家
のペコちゃんのように、やがては企業の顔になるようにキャラクターを育てな
ければならない。
キャラクターの情報源は、紙媒体からの情報、インターネットからの情報、
店頭からの情報、口コミからの情報の4つが代表的である。これらは化粧品の
情報源と同じである。つまり、キャラクターも化粧品も現在のところは、広告
での認知や普及という面において大きな差異はないということである。
Ⅲ キャラクターグッズに対する意識
1 キャラクターグッズの所持に対する感情
キャラクターグッズの所持への賛否を調査した。所持に関しては圧倒的に男
子大学生よりも女子大学生の方が多い。そこで2011年12月上旬にK女子大学、
S女子大学、M女子大学、B女子大学の4つの女子大学(合計166名)に調査依
頼をした。回収率は69.3%(小数点以下第4位を四捨五入)115名からの回答を
得た。記述ミスはなく、有効回答数も115となった。調査の結果、女子大学生が
キャラクターグッズを所持することに対して賛成は102、反対は10、無回答は3
となった。女子大学生は自分たちがキャラクターグッズを所持することを肯定
的にとらえていることがわかった。一方、男子大学生がキャラクターグッズを
所持することに対して賛成は52、反対は50、無回答は13となった。自分たちが
所持することに賛成した女子大学生たちではあるが、男子大学生がキャラクター
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グッズを所持することに対しては、賛成と反対が約半数ずつとなった。
興味深いことに、男子大学生が友人であったり、知り合いであったりした場
合は、キャラクターグッズを所持していることを否定はしないが、男子大学生
という一般論にした場合は前述のとおり、賛否が半数ずつになってしまった。
無回答の中には、男子大学生といわれても、持っていても似合っている男子大
学生ならば、賛成するが、所持していることが似合わない男子大学生には所持
してほしくはないという反対意見になった。また、ワンピースのキャラクター
グッズを男子大学生が所持していても認められるが、アンパンマンやハローキ
ティのような類のグッズを所持していることには違和感を覚えると言う意見も
あった。男子大学生にはその人物が所持していることに対して、似合うこと、
あるいは違和感がないキャラクターグッズであることなど条件が付されている。
2011年12月に女子大学生のメイクアップ化粧品に対する選択基準としては31項
目を考案した7)。この選択基準の元は中川早苗の選択基準を参考にした。今回
は化粧品からキャラクターグッズの所持意識を知るために以下のように項目を
設定した(図表1)。
30の項目を使用して、それぞれをどの程度、選択基準として重視するのかを
5段階尺度で回答をしてもらった。1:まったく思わない、2:やや思わない、
7)辻幸恵(2012年)「女性の化粧品へのこだわり」『経済経営論集』神戸国際大学、第
32巻第1号、11-31ページの中に表1女子大学生のメイクアップ化粧品に対する選択基
準としてあげた。
表1 女子大学生のメイクアップ化粧品に対する選択基準
1)持っていると自慢できる 2)容器のデザインが好き 3)匂いが好き
4)色が好き 5)価格が手頃 6)長持ちする 7)飽きがこない
8)センスが良い 9)素材が好き 10)服にあう 11)上品さがある
12)大きさが良い 13)皆が持っている 14)流行している 15)お洒落である
16)軽い 17)シンプルだ 18)ゴージャスだ 19)日常用である 20)無難である
21)ブランド名が有名 22)売れ筋である 23)変わっている 24)個性的である
25)アクセサリーのように目立つ 26)高価格 27)雑誌に載っている
28)ブランドだから安心できる 29)今まで使い慣れている
30)話題の人が持っている 31)定番である
(筆者作成)
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図表1 キャラクターグッズの所持意識に対する理由
1)持っていると自慢できる 2)デザインが好き 3)形が好き 4)色が好き
5)価格が手頃 6)長持ちする 7)飽きがこない 8)センスが良い 9)素材が好き 10)原作が好き 11)上品さがある 12)大きさが良い
13)皆が持っている 14)流行している 15)お洒落である 16)軽い 17)シンプルだ 18)ゴージャスだ 19)日常用である 20)無難である 21)キャラクター名が有名 22)売れ筋である 23)変わっている
24)個性的である 25)アクセサリーのように目立つ 26)高価格 27)雑誌に載っている 28)所持しつづけている 29)話題の人が持っている
30)定番である
(筆者作成)
3:どちらでもない、4:やや思う、5:つよくそう思う、の5つの中から1
つを対象者である115人の女子大学生たちから選択してもらった。なお、アン
ケート自体は、この30の選択項目以外に記述での回答や複数回答を認める質問
などもした。
30の項目からの回答結果は図表2に示した。
表2をみると、平均値が4.00以上の項目は、3)形が好き、4)色が好き、
図表2 30の項目からの回答結果
質問項目
平均値
1)持っていると自慢できる
3)形が好き
5)価格が手頃
7)飽きがこない
9)素材が好き
11)上品さがある
13)皆が持っている
15)お洒落である
17)シンプルだ
19)日常用である
21)キャラクター名が有名
23)変わっている
25)アクセサリーのように目立つ
27)雑誌に載っている
29)話題の人が持っている
3.02
4.20
3.80
3.75
3.70
3.05
3.90
4.40
2.80
3.03
4.12
3.50
3.08
3.20
3.60
質問項目
2)デザインが好き
4)色が好き
6)長持ちする
8)センスが良い
10)原作が好き
12)大きさが良い
14)流行している
16)軽い
18)ゴージャスだ
20)無難である
22)売れ筋である
24)個性的である
26)高価格である
28)所持しつづけている
30)定番である
平均値
3.90
4.10
2.51
3.68
4.20
3.84
3.60
3.00
3.18
2.88
3.50
3.85
2.60
3.70
3.42
(筆者作成)
- -
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10)原作が好き、15)お洒落である、21)キャラクター名が有名の5項目であっ
た。これらの項目は5段階評価で肯定的にとらえられていることがわかる。つ
まり、キャラクターグッズの所持意識に対する理由として、これらの5つは有
効な理由であることを示している。特に好きという言葉がキーワードになって
いることがわかる。形や色という形状に対しても好悪がある。また、キャラク
ターの登場している物語(ここでは原作という)が好きだからという理由もあ
げられている。
一方、平均値が3.00未満の項目は、6)長持ちする、17)シンプルだ、20)無
難である、26)高価格であるの4項目であった。これらの項目は5段階評価で
否定的にとらえられていることがわかる。つまり、キャラクターグッズの所持
意識に対する理由として、これらの4つは関係がない理由であることを示して
いる。
30項目の中で標準偏差が1.0以上の大きな数値を示した項目は、11)上品さが
あると19)日常用であるの2項目であった。つまり、平均値は3.0に近いが、上
品さがあることを理由にあげる者とあげない者との差があり、日常用であるこ
とを理由とする者としない者とに分かれたことを意味している。
今回は母数が115であること、化粧品の選択基準の質問項目を流用しているこ
とから、この数値データを用いた因子分析などの分析はおこなわない。キャラ
クターグッズの所持意識の傾向をみることにとどめる。
2 キャラクターグッズへのこだわり
キャラクターグッズを収集している学生たちがいる。たとえば、ある学生は
ワンピースというアニメに出てくるトニー・トニー・チョッパーを収集してい
る。トニー・トニー・チョッパーは、ご当地キャラクターではないのだが、京
都、大阪、神戸、横浜など多くの都市に帽子の色や服の色が変わった形で販売
されている。これらをこまめに集めているという。その理由をたずねると、単
純にトニー・トニー・チョッパーが好きだからだという。トニー・トニー・
チョッパーが様々なバリエーションで販売されていたら、それらを集めたくな
るのは本能のような者だと彼女は言う。さらに、トニー・トニー・チョッパー
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16
のハンカチや文具、フィギュア、時計も収集しており、彼女のへやには、様々
な大きさや種類のトニー・トニー・チョッパーがあふれている。彼女はもとも
とワンピースというアニメを知らなかったが、映画の宣伝でその内容に興味を
おぼえた。今では映画を見るだけではなく、原作である単行本も全巻を揃えて
いるという。ワンピースは、2012年8月現在も日曜日の朝にアニメとしてテレ
ビ放映がなされている。また、新作の映画も発表されている。ただし、コミッ
クとしてはジャンプという雑誌に掲載されてから、年数がたっており、男子に
は流行というよりも、むしろ定番に近い存在である。グッズも登場人物にちな
んで様々なバリエーションがある。たとえばポートガス・D・エースのウォレッ
ト、トニー・トニー・チョッパーの時計、ロロノア・ゾロの傘などがインター
ネットで購入可能である。
別の女子大学生はハローキティのファンである。彼女は小学生の頃からキティ
が大好きで、グッズを集めているという。ぬいぐるみ、クッション、鞄、時計、
財布、文具、食器など幅広く集めている。ハローキティとの出会いは誕生日プ
レゼントに友人からハローキティのメモ用紙と鉛筆をもらったことだという。
彼女たちはトニー・トニー・チョッパーやハローキティに何を求めているの
だろうか。彼女たちに何故、そのキャラクターグッズを集めているのか、また、
キャラクターグッズを見ているとどう思うのかなどをインタビューした結果、
両者の共通点は以下のとおりとなった。「見ているといやされる」「たくさんあ
ればあるほど、自分が元気になる」「囲まれていると幸せな気分になる」「一緒
にいると落ちつける」「嫌なことがあっても顔をみると忘れることができる」「自
分も彼らの仲間だと感じることができる」「キャラクターたちが自分を応援して
くれているように思える」であった。これらは収集者に、気持ちが明るくなっ
たり、落ち着いたり、いやしなど、キャラクターたちが心の支えになっている
ことがうかがえる。
キャラクターの収集には、2つのパターンが考えらえる。以下にそれを図示
した。
A線のように急激に人気が出て、購入者が増加し、すぐに飽きられてしまう
パターンとB線のようにじわじわと人気が出て、購入者が少しずつ増加し、長
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図表3 キャラクターの収集の2つのパターン
A✢
B✢
ᤨ㑆
く販売機会があるというパターンである。
A線の例としては、イベントや博覧会などの期日が限定されたシーンで使用
されるマスコットキャラクターがあげられる。そのイベントが開催期間中は、
多くの来場者たちがお土産として、購入してくれるが、期間が終了してしまえ
ば、販売場所もなくなり、急激に購入者が減少してしまう。B線の例としては
定番となっているスヌーピー、ハローキティ、ドラえもんなどのキャラクター
が例示できる。徐々に認知が広まって、時間をかけて浸透していき、文具やイ
ンテリアなどに取り入れられるようになる。食品のパッケージなどにも使用さ
れるようになって、多くの世代に受け入れられるようになる。もちろん、キャ
ラクターも時間がたてば、その時代のニーズに合致するように、すこしずつデ
ザインも変化していく。たとえば有名なミッキーマウスは誕生した頃と現在と
では、デザインが異なっている。誕生した頃は、黒いねずみという印象がつよ
く、現在のような愛らしさには欠けている。
こだわりを感じで収集してくれやすいのはB線にのるキャラクターたちであ
る。いつの時代になってもそのキャラクターのグッズが販売していれば、おの
ずと収集しやすくなるからである。特に、長い時間、販売されている状況は、
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18
そのキャラクターに人気があることを示しているのである。
Ⅳ まとめ
人気のあるキャラクターがその時代に求められている性質や性格をあらわし
ている。昨今人気があるワンピースのキャラクターたちは勇気をもって未来を
切り開いていくキャラクターである。よって、今は勇気を持つことや未来を切
り開く力を求めていることになる。また、定番となっているキャラクターは時
代をこえて、人々に愛される要素をもっている。その要素の中には「かわいい」
が含まれているが、その「かわいい」という要素をつくっている形は丸、色は
白やピンク、動物系などという側面もアンケートから抽出された。多くのご当
地キャラクターが誕生している中で、ゆるキャラたちは人気をえている。特に、
ひこにゃんやくまモンは、多くの人々に人気がある。これらのキャラクターが
愛されるのは、もちろん「かわいい」外見もそうであるが、伝えたいことがわ
かりやすいからである。キャラクターたちは彼らの使命をもっている。テーマ
がしっかり決められている方が、伝えたいことを伝えることが出来る。そうい
う意味で熊本の良さをアピールするというテーマを持つくまモンは、わかりや
すいのである。
キャラクターグッズは以前には文具が多く、ドラえもんやトトロ8)の鉛筆、消
しゴム、ノートはたくさん販売されていた。しかし最近の傾向としては、時計、
インテリア、洋服、鞄などにもキャラクターがあしらわれている。それらを大
学生たちが使用していても違和感が少ない。彼らのキャラクターに対する選択
基準は「好き」がキーワードであった。たとえば形が好き、色が好き、原作が
好きである。また、デザインなどを加味しておしゃれであることも条件となっ
ていた。さらに、誰も知らないキャラクターよりも、キャラクター名が有名で
多くの人々が知っているキャラクターを選択することも明らかになった。
好きという感情は自己の基準である。おしゃれと思うことも自己の基準であ
8)トトロは『となりのトトロ』というスタジオジブリが製作した長編アニメーション
に登場する。1988年4月に東宝系で公開された。原作者は宮崎駿である。
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る。よって、大学生たちに選択される条件としては、彼らが好きだと思わなけ
ればならないし、彼らがおしゃれだと感じなければならない。好きが高じれば、
こだわりとなって、そのキャラクターを収集する者もあらわれてくる。売れて
いる人気のあるキャラクターたちは決して偶然にそうなっているのではない。
好まれる要素を持ち、そして情報源からうまく発信されているのである。キャ
ラクターを活用したキャラクターマーケティングは今後も、さらに発展してい
くと考えられる。よって、若者のキャラクター嗜好度は低くなることはないと
考えられる。もちろん、その時によって、好まれるキャラクター像は異なって
いくであろう。しかし、漫画であれ、小説であれ、若者たちに好まれるキャラ
クターは今後も生まれてくる。なぜならば、若者たちの心に元気や勇気や憧れ
を与えたり、あるいは、優しい気持ちにさせたり、いやしたりするキャラクター
は、彼らには必要だからである。そして若者たちは、お気に入りのキャラクター
グッズを今後も購入していくと推察できる。
参考文献
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辻幸恵、梅村修(2006年)『アート・マーケティング』白桃書房、228ページ
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買に与える影響」『マーケティング・サイエンス』日本マーケティング・サイエンス
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