障がい者雇用に関する一研究

論 説
障がい者雇用に関する一研究
―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―
二 神 枝 保
1.ディスアビリティ・インクルージョンと障がい者雇用
1.1 ディスアビリティ・インクルージョンの動き
障がいのある人の就労・雇用の推進は,世界的趨勢である.現在,世界人口の約15%,約10
億人が障がいをもっていると推定されている(WHO,2011).その約80%は,生産年齢人口で
あるといわれている(ILO, 2015a).
しかしながら,障がいをもつ人びとがディーセント・ワークをもつ権利はしばしば否定され
ている(ILO,2015a).ディーセント・ワーク(decent work)とは,ILOによれば,働きがい
のある人間らしい仕事である(Ghai, 2003; 2006; Futagami, 2010; 二神,2014; 2015).ILOは,
2014年から2017年にかけてディスアビリティ・インクルージョン(disability inclusion)の戦略
とアクション・プランを策定している(ILO, 2015a)
.ディスアビリティ・インクルージョンとは,
障がいをもつすべての人びとが教育,訓練,雇用,社会のあらゆる側面に参加することを促進し,
確保し,そうした参加が十分できるために必要なサポートや便宜を提供するという考え方であ
り,障がいのある人もない人も共生し,包摂するという考え方である.
ディスアビリティ・マネジメント(disability management)とは,職業生活を送っているう
ちに障がいをもつようになった人びとが有給のしごとに復帰できるように支援したり,障がい
をもっている求職者たちがディーセント・ワークに就いて,それを維持できるように手助けす
ることである(Harder and Geisen, 2011)
.2003年にはオーストラリア,オーストリア,ベルギー,
カナダ,ドイツ,スイス,イギリスなどの産官その他団体の代表が,ディスアビリティ・マネ
ジメントのグローバルな研究・教育・啓発の促進を目的として国際ディスアビリティ・マネジ
メント標準協議会(International Disability Management Standards Council: IDMSC)を設立
した(ILO, 2015b).2008年には,『スイスにおける企業のディスアビリティ・マネジメント』
の研究調査報告書もまとめられている(Geisen et al., 2008)
.
2006年第61回国連総会で障害者権利条約が採択されて以来,2016年 6 月時点で166ヶ国がこれ
を批准している.このように,障がいのある人に対する就労・雇用機会を拡大する動きが国際
的にすすめられている.
14( 14 )
横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
1.2 日本の障がい者雇用の現状と就労支援クラスター「かながわモデル」の視点
現在,日本の障がい者の総数は,障害者白書によれば,約788万人である.身体障がい,知的
障がい,精神障がいの 3 区分で障がい者数の概数をみると,身体障がい者数393万7000人,知的
障がい者数74万1000人,精神障がい者数320万1000人となっている.そのうち,18歳以上65歳未
満の在宅者数は,約324万人にのぼる.
2015年 6 月 1 日時点で企業等の障がい者の雇用者数は約45万3000人(身体障がい者32万1000
人,知的障がい者 9 万8000人,精神障がい者 3 万5000人)である.法的雇用率達成企業の割合は,
47.2%にすぎず,実雇用率は1.88%である.2013年10月時点障がい福祉サービス(就労系)のうち,
就労移行支援に約 2 万4000人,就労継続支援A型・福祉工場に約 3 万人,就労継続支援B型,旧
法授産施設に約16万2000人が就労している.
一般就労への移行の現状をみると,特別支援学校から一般企業への就職が約28.4%,障がい福
祉サービスが約61.7%,障がい福祉サービスから一般企業への就職が年間4.6%(2013年)となっ
ている.
こうした日本の現状からも,教育,福祉,医療から雇用への障がい者の更なる移行の拡大が
必要とされるだろう.2016年 4 月より改正障害者雇用促進法が施行され,企業の障がい者雇用
をめぐる動きも加速化している.
神奈川県は,障がい者雇用の問題に全国でもいちはやく取り組んだ先行事例である.本論文
では,障がい者雇用の課題への取り組みに向けての神奈川県の成功例,「かながわモデル」がど
のように導かれたのか,その経緯や要因について就労支援クラスターの視点から分析したい.
就労支援クラスターとは,障がいのある子ども・若者などのしごと能力の形成・アップとエ
ンプロイアビリティの構築・向上のための,地域の様々なエージェントの連携といえるだろう.
したがって,地域における教育機関,障がい福祉サービス事業所,企業が,障がい者の問題
にそれぞれどのように取り組み,連携しているのかを検討・考察する.本論文では,教育機関
として横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校,障がい福祉サービス事業所として「ぽ
こ・あ・ぽこ」,企業として株式会社ニッパツ・ハーモニーのケースを分析する.
2.横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校のケース
2.1 沿革と教育目標
横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校は,知的障がいのある児童生徒に対して,一
図表1 QOL
情操
→
↑
認知
↑
身辺処理
←
生活技能
社会生活
→ 職業能力
への適応
↓
本校の
考える
自己実現
QOL
↓
↓
健康
余暇活動
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 15 )15
人ひとりの発達や障がいの状態,特性等に応じた教育を行い,心身の調和的発達(心・体・頭
の伸長)を図るとともに,その可能性を最大限に伸ばし,自立と社会参加に必要な知識,技能
及び態度を養っている.
「やさしい心,じょうぶな体,がんばる力」を教育目標として,バラン
スのとれた社会人を目指して教育活動を行っている.
同校の沿革は,1973年 4 月 1 日横浜国立大学附属小学校,中学校に特殊学級を設置,1979年
4 月 1 日横浜国立大学教育学部附属養護学校を設置,1980年 4 月 1 日高等部を設置,1997年10
月 1 日横浜国立大学教育人間科学部附属養護学校に改称,2007年 4 月 1 日学校教育法の改正に
より,横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校に校名変更となっている.
同校の教育課程の特色のひとつにQOL(Quality of Life)の充実があげられる.同校のQOL
とは,認知や家庭環境など「個人の諸特徴」と,本人がとらえる「主観的QOL」,また周囲の
人から見た「客観的QOL」の 3 つの要素で考え,この総和が良好な状態であることを目指して
いる.図表1にあるように,①健康,②身辺処理・生活技能,③認知,④情操,⑤社会生活へ
の適応,⑥職業能力,⑦自己実現,⑧余暇活動の 8 つの項目で「の」の字を描くようにQOLを
整理しており,小学部・中学部・高等部共通の観点としている.
図表2 教科クラスター
教科のネットワーク
QOL の充実
交流
部活動
産業
国語
音楽
図工
美術
算数
数学
理科
体育
基礎教科
保健
職・家
生活
総合
伸展教科
活用教科
情報
学部行事
校外学習
学校行事
校外宿泊
そして,QOLの充実を具現化するために,同校では,図表2のように教科を有機的に構造化し,
「基礎教科」,「伸展教科」
,「活用教科」として各教科が有する特性により関連づけた教科クラス
ターとして整理している.基礎教科クラスターは,自分を取り巻く環境を理解するために基礎
となる認知発達と,身体の動きの発達を系統的に支援する教科群である.伸展教科クラスターは,
基礎教科で獲得した力を,各教科で生かし学習できるようにすると同時に,各教科の内容を学び,
知識と技能を広げることをねらいとしている.活用教科クラスターは,日常生活をもとにした
内容や,興味関心に基づく題材,将来の生活を想定した場面を設定し,課題解決的な活動に取
り組む教科である.これらの教科クラスターによって児童生徒の世界を広げることになり,
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横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
図表3 高等部における進路指導の流れ
授業
1年
2年
基礎教科
国語
数学
体育
伸展教科
音楽
美術
保健
進路指導に直接
つながる学習活動
保護者や外部機関
との連携
職場見学
ワーキングウィーク
進路意向調査
職業適性検査
保護者向け進路勉強会
進路先見学会
職場見学
インターンシップ(大学)
ワーキングウィーク
職場見学
進路意向調査
保護者向け進路勉強会
進路先見学会
進路個別面談
1学期現場実習
2学期現場実習
(場合によって追実習)
進路個別面談
ケースワーカー面談
進路先見学会・勉強会
職業相談
活用教科
3年
職業・家庭
情報
産業社会と人間
総合
QOLの充実が実現されている.
就労にむけての教育は,図表3にあるように,主に高等部の進路指導につながる学習活動と
して行われている.高等部の 1 年では,まず就労移行支援サービスなどへの職場見学が約 1 日
実施される.また,ワーキングウィークでは,通常 2 月の 1 週間にわたって校内職場体験が行
われる. 1 年生と 2 年生が,①メインテナンス班,②ランドリー班,③ランチ班の 3 つに分か
れて,職場さながらに校内でしごとをする.高等部 2 年では,一般企業などへの職場見学が約
1 日行われる.また,横浜国立大学との連携で約 1 日インターンシップも実施される.大学構
内の清掃や図書館での蔵書整理,学生食堂での皿洗いなどを行う.そして,ワーキングウィー
クでは, 1 年次と同様, 1 週間にわたって校内職場体験が行われる.さらに, 2 年生の最後の
職場見学では,地域活動支援センターなどを訪れ,見学のみならず職場体験を行うこともある
図表4 最近13年間の進路状況:進路先の割合(2002〜2014年:157名)
職業訓練
・進学
5%
その他
1%
企業就労
42%
福祉的就労
52%
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 17 )17
図表5 最近13年間の進路状況:福祉的就労の内訳(2002〜2014年:82名)
生活介護(旧更生施設)
5%
地域作業所等
27%
就労移行・
継続支援
(旧授産
施設)
68%
図表6 最近13年間の進路状況:企業就労の業種別内訳(2002〜2014年:66名)
製造業
9%
卸売り・
小売業
17%
サービス業(事務
補助含む)
74%
という.高等部 3 年では, 1 学期に一般企業,特例子会社や障がい福祉サービス事業所などで
約 2 週間(受け入れ先によってやや短いものもある)現場実習を行う. 2 学期にも,約 2 週間
現場実習を行い,就職につながるケースもあるという.生徒によっては追加的に現場実習がある.
3 年生は,卒業前に報告会で現場実習の内容について発表する.
2.2 卒業生の進路状況
最近13年間の同校の卒業生の進路状況をみてみると,図表4のように,全体の52%が福祉的
就労に就いており,42%が企業就労に就いており,5%は職業訓練・進学となっている.福祉的
就労の内訳をみると,就労移行・継続支援(68%)が最も多く,次いで地域作業所等(27%)
となっている(図表5).企業就労の業種別内訳をみると,サービス業(事務補助含む)(74%)
が最も多く,次いで卸売り・小売業(17%),製造業( 9 %)となっている(図表 6 ).
就労支援のネットワークについては,同校の進路担当や元担任教諭による卒業生巡回,同窓会・
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横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
青年教室による余暇活動支援,ハローワークや就労支援センターとの連携などが挙げられる.
卒業生巡回とは,同校の進路担当や元担任教諭が企業や地域作業所において働く卒業生を訪問
し,職場への定着を支援するものである.余暇活動支援として,年に約 4 回,同窓会や青年教
室がバーベキューやレクリエーション大会を実施したり,月に1~2回,卒業生保護者やOB職
員の協力のもとにサッカーやバレーボールが行われている.このように,卒業生たちとの交流
がされている.横浜のハローワークと連携して在校生の就職支援も行っている.就労支援セン
ターとの連携は,卒業生の就労のフォローアップ,職場への定着に役立っている.
2.3 インクルーシブ教育への同校の取り組み
最近,注目されているインクルーシブ教育システム(inclusive education system)へ同校は
どのように取り組んでいるだろうか.インクルーシブ教育システムとは,人間の多様性の尊重
等の強化,障がい者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ,自由な社会
に効果的に参加することを可能とするとの目的のもと,障がいある者と障がいのない者が共に
学ぶ仕組みであり,障がいのある者が教育制度一般(general education system)から排除され
ないこと,自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること,個人に必要な「合
理的配慮」が提供される等が必要とされている.
同校のインクルーシブ教育への取り組みの一環で,現在文部科学省委託事業として2020年の
東京オリンピック・パラリンピックに向けて障がいのある者もない者も共にスポーツをする教
育活動が挙げられるという.同校の生徒と近隣の横浜国立大学附属中学校の生徒が一緒にサッ
カーを行うイベントも実施されている.
また,平成29年度からの教育課程の見直しも検討されており,現在地域科目の新設が提案さ
れており,インクルーシブ教育のモデルケースとなっている.地域科目とは,共生社会の形成
に向けて地域とどのように連携していくのか,そして社会の中でどのように自立して参加して
いくのかを学ぶことを目指す科目である.例えば,同校の就労にむけての教育のひとつとして
挙げたワーキングウィークで,ランチ班の生徒が作ったお弁当を近隣の弘明寺商店街で販売す
るなどの試案があるという.
2.4 ケースの特徴と就労支援クラスター
このように,同校の教育課程の特色は,QOLの充実であり,それは児童生徒が生活していく
力を身につけ,積極的に社会参加し,働くことの意味を理解することに役立っている.そして,
結果として,児童生徒の就労意欲が向上し,将来も働きつづけることができるという.産学官
連携による就労支援のネットワークも充実しており,こうして形成された就労支援クラスター
が同校の卒業生たちの高い職場への定着につながっているといえるだろう.今後同校のインク
ルーシブ教育において,就労支援クラスターもさらに強化され,共生社会を形成することが実
現されていくだろう.
3.ぽこ・あ・ぽこのケース
3.1 設立の経緯
1972年,電機連合神奈川地方協議会(当時:電機労連)は,第20回定期大会において労働組
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 19 )19
合としては全国に先駆けて障がい福祉活動を開始した.1991年には,電機神奈川福祉センター
設立準備委員会を設置し,1992年に横浜南部就労援助センター(当時:援助センター)事業を
開始した.1995年に神奈川県より社会福祉法人の認可を受け,1996年より通所授産施設「ぽこ・
あ・ぽこ」の事業を開始した.2006年に障害者自立支援法のもとで多機能型事業所「ぽこ・あ・
ぽこ」として就労移行支援事業と就労継続支援事業B型へ移行した.2010年から自立訓練事業(生
活訓練)を新たに開始した.ちなみに,ぽこ・あ・ぽこはラテン語で「少しずつ」,「一歩ずつ」
という意味がある.
3.2 事業目的と事業内容
事業目的は,知的障がいをもつ人が,作業を通して社会自立できるよう支援することにある.
目的達成の 3 つの柱には,①知的障がい者が働く職場の創出,②働ける知的障がい者の育成,
③働いている知的障がい者の継続的フォローがある.
事業内容は,障害者総合支援法に基づいて,①就労移行支援事業,②就労継続支援事業B型,
③自立訓練事業(生活訓練)の 3 つが挙げられる.
①就労移行支援事業は, 2 年の利用期間で一般就労を目指すことを目的としている.②就労
継続支援事業B型は,作業生活を通じて本人が安定した生活を継続できるようにし,高工賃を
目指すことと共に,時間をかけて一歩一歩育成をし,可能であれば,一般就労を目指すことに
ある.③自立訓練事業(生活訓練)は, 2 年間の訓練を通じて一般就労に必要な社会性を身に
付け,就労移行への円滑な移行を図り,一般就労を目指すことを主眼としている.
ぽこ・あ・ぽこの3事業の特徴としては,①個別の育成プログラムの作成,②利用者情報の
一元管理,③豊富な授産科目と高い工賃,④授産科目に自主製品を持たない,⑤専門業者との
協力,⑥柔軟な作業班編成と個別対応,⑦職場に近い作業環境,⑧施設外実習と多角的なアセ
スメント,⑨一般就労に向けた求職支援,⑩一般就労後の職場定着支援などが挙げられる.さ
らに,各事業の特徴についても以下で詳しくふれたい.
図表7 事業別の障がい程度分布(単位:人)
16
14
14
12
10
13
就労移行支援
就労継続支援B 型
生活訓練
8
6
6
5
5
4
4
2
3
3
1
1
0
(人)
A1
A2
B1
B2
精神2級
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横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
3.3 利用者状況と授産売上状況
2015年 3 月31日時点の利用者総数は,55名(就労移行:22名,就労継続支援B型:25名,生
活訓練: 8 名)である.性別は女性 8 名(14.5%),男性47名(85.5%)である.年齢層は,18歳
から54歳で,平均年齢は28歳である.居住状態は,保護者と同居:50名,グループホーム: 4 名,
独り暮らし: 1 名という内訳である.なお,図表 7 は事業別の障がい程度分布である.
2014年度の売上は3043万9092円であり,その業務内容は部品組立・解体,印刷製本,清掃である.
2014年度の全利用者の平均工賃月額は, 2 回の賞与分を含め,26,881円であった.就労継続支援
B型利用者の平均工賃額は,38,834円/月,就労移行利用者の平均工賃額は27,635円/月,生活訓
練利用者の平均工賃額は,14,176円/月である.なお,図表 8 は過去5年間の売上の推移である.
図表8 売上の推移
35,000,000
30,000,000
25,000,000
20,000,000
15,000,000
10,000,000
5,000,000
(円)
0
2010 年度
2011 年度
2012 年度
部品組立・解体
印刷製本
2013 年度
2014 年度
清掃
3.4 就労移行支援事業と就労状況について
1996年以来,総就労者数は261名,離職者数は86名,現在就労者数は175名であり,そのうち
ぽこ・あ・ぽこ定着支援者数は111名である.勤続10年以上14年未満は31名で,15年以上は13名
となっている.離職者の状況は,再利用が51名,他機関利用が26名,その他が 9 名となっている.
2014年度の就労移行支援事業の15名,就労継続支援事業B型の 1 名の合計16名が就労しており,
そのほとんどが 1 年半のうちに就職が決定するという.就職先企業の業種も様々である.
特に,就労移行支援事業において受け入れ先企業と利用者のマッチングで気を付けているこ
とは,働く環境であるという.求人企業のそうした点を個別に照会・吟味してから,利用者と
のジョブマッチングを行うことが高い定着率につながるという.
図表 9 のように,ぽこ・あ・ぽこの定着率は高く,就職 3 年以内では80%以上となっている.
こうした高い定着率のひとつの背景には,就職してから半年間専門職員が 1 ケ月 1 回のペース
で就職先を巡回して,就職者のストレスが溜っていないかなど相談にのっているという.
また,ぽこ・あ・ぽこの高い定着率のその他の背景としては,施設内での作業生活全体を通
じて継続的なアセスメントが行われていることや外部実習先からの評価も挙げられる.特に,
ぽこ・あ・ぽこの個別支援計画の評価項目をみると,「安定した生活」,「社会性」,「健康管理・
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 21 )21
図表9 ぽこ・あ・ぽこの定着率
100%
96.9%
92.5%
95%
90%
85%
80.6%
89.0%
80%
75.7%
75%
73.7%
78.0%
68.8%
74.4%
70%
70.7%
65%
60%
2006-2014年 (146 名)
55%
1997-2005年 (82 名)
64.6%
62.2%
50%
1年後
2年後
3年後
4年後
5年後
6年後
安全」,「就労意欲・集中力」,「作業姿勢」,「作業遂行能力」といった社会人としての生活全般
の項目を 3 ケ月に 1 回評価・分析することに重きをおいているという.そして,外部実習に関
していえば,短時間で行う清掃先を 2 ケ所確保すると共に, 3 ケ月の外部実習先として清掃実
習先 1 ケ所,印刷補助やメール配達を行う実習先 2 ケ所を確保しており,企業での実習を随時
行っている.
なお,ぽこ・あ・ぽこでは一般就労は最終ゴールではなく,その後の就労継続,場合によっ
ては様々な事情から離職を選択する際もスムーズに安心して福祉に移行できるように支援する
ことも行っている.
こうした就労移行支援事業の課題としては,専門職員の人材育成が挙げられるという.高い
報酬を与えるなど質の高い人材の確保と育成が急がれるだろう.
図表10 神奈川県最低賃金の1/3と就労継続支援B型平均工賃の推移(時給,単位:円)
400
342
350
306
300
274
276
287
253
250
239
245
255
263
273
200
353
355
298
283
279
289
296
神奈川県最低賃金1/3
ぽこ・あ・ぽこ
就労継続支援B 型工賃
150
(円) 100
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (年度)
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横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
3.5 就労継続支援事業B型と工賃の向上
就労継続支援B型の主な目的は,作業生活を通じて本人が安定した生活を継続できるように
し,高い工賃を目指すことと共に,時間をかけて一歩一歩育成をし,可能であれば一般就労を
目指すことである.したがって,ぽこ・あ・ぽこでは,少なくとも1名の就労者を輩出するこ
とを毎年度の目標としている.
なお,就労継続支援B型に対しては,地域の最低賃金の 3 分の 1 という工賃目標が設定され
ている.図表10は,ぽこ・あ・ぽこ就労継続支援B型工賃の推移を示している.
利用者に対して高い工賃を支払うためには,安定した作業量の確保が必須である.安定した
作業量を確保するためには,高い生産性・品質・納期厳守が必要であるので,ぽこ・あ・ぽこ
では企業OBを職業支援員として配置し,作業の効率化と様々な治工具を作製することで,この
目的を達成している.
3.6 自立訓練事業(生活訓練)とモチベーションの向上
2010年度から2014年度末までの 5 年間で合計29名の利用者が生活訓練を利用した.生活訓練
を利用した29名のうち,14名(全体の48%)が就労移行へ事業移行し,そのうち10名(全体の
34%)が一般就労を果たしている.生活訓練の利用者が就労訓練へ事業移行する際の平均利用
期間は11ケ月であり,その後就職した10名の就労移行平均期間は14ケ月であるので,生活訓練
を利用して就労するまでの平均利用期間は25ケ月ということになる.
なお,平均利用期間はほぼ 2 年であるが,生活訓練がもつ効果として大きく 2 つが挙げられる.
ひとつには,施設内限定で訓練を行うことで,体力・時間厳守・報連相(報告,連絡,相談)
・
挨拶・返事といった基本的な課題を常に意識付けできることがある.
もうひとつは,モチベーションの向上である.ぽこ・あ・ぽこでは 3 事業の利用者が一緒に
作業を行っているが,そのため生活訓練の利用者にとってはステップアップとしての就労移行
という具体的な目標がみえることで,モチベーション向上につながっているという.
図表11 就労支援クラスター「かながわモデル」
:ぽこ・あ・ぽこと神奈川県の支援ネットワーク
企業(大手・中・小規模)
電機企業(労働組合)
企業団体
労働
電機連合神奈川地協
【関係法人】
連携
交流
社会福祉法人 青い鳥
社会福祉法人
ぽこ・あ・ぽこ
横浜やまびこの里
社会福祉法人 すみなす会
わーくす大師
ウィング・ビート
ミラークよこすか
(同一法人施設)
NPO 法人
障害者雇用部会
就労支援センター
福祉
福祉保健センター
教育機関 障がい福祉サービス事業所 ふれあいショップ
全国就労移行支援事業所連絡協議会
横浜南部
湘南地域
中部(川崎)
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 23 )23
3.7 ケースの特徴と就労支援クラスター
本ケースの特徴のひとつは,設立の経緯でもふれたように,電機連合神奈川地方協議会がイ
ニシアティブをとって組織化した事業である点にある.こうした背景から,図表11のように,
ぽこ・あ・ぽこはNPO法人障害者雇用部会,地域の企業,就労支援センター,教育機関,福祉
保健センターなどとうまく連携しており,それがぽこ・あ・ぽこの最大のメリットといえるだ
ろう.多くの利用者が一般就労を果たすことができ,その定着率も高い理由には,こうした就
労支援クラスターのネットワークが挙げられるだろう.
4.株式会社ニッパツ・ハーモニーのケース
4.1 会社概要
株式会社ニッパツ・ハーモニーは,親会社である日本発条株式会社の特例子会社として,
2002年3月14日に設立された.ニッパツ・ハーモニーの資本金は770万円であり,出資比率は日
本発条(株)91%,日発販売(株) 9 %となっている.図表12は,売上高の推移を示しており,
2014年の売上高は 1 億4,620万円である.
社名にある「ハーモニー」は,それぞれ異なった声でありながら素晴らしいハーモニーを奏
でるように,障がいをもつ人ももたない人も,共に調和しながら,「社員の自立」,「社会との共
生」を目指す意味が込められている.
図表12 ニッパツ・ハーモニーの売上高の推移
(単位:百万円)
160.0
130.0
140.0
111.2 111.1
120.0
141.1 146.2
124.8 125.4
105.1
90.9
100.0
80.0
53.4
60.0
40.0
20.3
63.1
28.4
20.0
0.0
2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績 実績
なお,親会社の日本発条株式会社は1939年 9 月に設立され,資本金は170億957万円,売上高
は6,014億円,事業内容は懸架ばね,シート,精密ばね等の製造である.
4.2 従業員について
従業員は,2016年 3 月 1 日時点で,知的障がい者53名であり,そのうち重度障がい者は29名
24( 24 )
横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
となっている.横浜事業所の人数は,27名となっている.性別は,男女比が約3 : 2である.平
均年齢は,約28.1才である.勤続年数10年以上の勤続者も13名いる.
なお,図表13はニッパツ・グループの障がい者雇用比率の推移を示しており,2015年 6 月の
障がい者雇用比率は2.14%である.
図表13 ニッパツ・グループの雇用率の推移
(2015 年6月1日調査)
3.00%
雇用率改定
(みなし法定雇用率)
ハーモニー設立
グループ適用
2.50%
2.00%
1.8%
1.79% 1.73%
1.50%
1.00%
2.04%
1.97%
2.37%
2.17%
2.08%
2.0%
2.06%
2.04%
1.84% 1.84%
2.14%
2.03%
1.74%
1.22%
0.50%
0.00%
2001年 2002年 2003年 2004年2005年 2006年 2007年 2008年2009年 2010年 2011年 2012年2013年 2014年 2015年
4.3 採用ルート
最近3年間で,全体18名のうち,新卒15名,中途3名である.つまり,採用ルートはほとん
ど(約8割以上)が新卒採用であり,補充者のみ中途採用である.
新卒採用については,県教育委員会と連携しながら県内の特別支援学校の生徒たちの実習を
受け入れている.高等部 2 年のときの約 1 週間の実習, 3 年のときの約 1 週間と約 2 週間の合
計3回程度の実習を経験したものの中から,適性のある生徒を採用することが多い.
また,中途採用については,特別支援学校と連携しながら,訓練所にいる卒業生の紹介や就
労支援センターから適当な人材の紹介によって,採用することが多い.
4.4 業務内容と賃金について
業務内容には,清掃業務(浴場,トイレ,廊下,階段,更衣室,食堂床等),構内廃棄物回収
と分別作業,構内緑化作業,生産補助作業(容器清掃),事務補助作業,郵便物集配作業,会場
設営などがある.
初任給は,神奈川県の最低賃金905円に労働時間( 7 時間40分)を乗じたものに,夏と冬の年
2 回 1 ケ月分の賞与が加算される.
4.5 障がいをもつ従業員の指導・支援体制と定着率について
従業員の目標には,「やる気:働く意欲をもって社会に参加しよう」,「根気:根気強く可能性
に挑戦しよう」,
「元気:明るく元気に頑張ろう」がある.これらの 3 つの目標「やる気」,
「根気」,
「元気」を日々実践していけるように,ニッパツ・ハーモニーでは,朝礼,昼礼,終礼を行って
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 25 )25
いる.朝礼では,健康チェックやラジオ体操,今日の目標の確認,作業説明,リーダー輪番制
によるオ・ア・シ・ス(おはようございます,ありがとうございます,しつれいします,すみ
ません)の唱和が行われている.昼礼でも,健康チェックや今日の目標の確認,作業説明が行
われ,終礼では,業務日誌の記入によって,一日の作業の振り返りが行われている.
仕事のモットーは,スピードよりも,丁寧にやることを基本にしているという.知的障がい
をもつ従業員は,ちょっとした変化への適応が難しいため,それぞれの適性をみて得意の仕事
をもたせるとともに,少しずつ作業領域を広げていく指導をしているという.
ひとりの指導員は,障がいをもつ従業員 4 〜 6 人を担当している.研修で指導員が従業員の
業務内容について半月から1,2ケ月かけて指導した後,基本的には従業員がひとりで作業を行
う.指導員は,巡回して従業員の作業の出来映えを確認する.必要があれば,その都度指導を
して作業改善や環境改善を行うという.
なお,毎年障がいを持つ従業員の何人かはアビリンピックという障がい者技能競技大会に出
場しており,入賞した者もいるという.こうした活動が障がいをもつ従業員のモチベーション
向上にも役立っている.
障がいをもつ従業員の職務態度は,真面目でこつこつ仕事をするタイプが多いという.定着
率は高く,入社 3 年以内をみると,約 9 割程度であるという.高い定着率の背景については,
のちほど分析したい.
4.6 障がい者雇用の課題
ニッパツ・ハーモニーでは,個人個人の特性をしっかりと理解・把握したうえで指導するこ
とによって,その能力を発揮できるという視点から障がい者雇用を行っている.
したがって,それぞれの障がい者の適性を把握して得意な仕事をもたせるとともに,障がい
者の職域を少しずつ広げることがこれからの指導のポイントであろう.
また,働くというモチベーションを維持するために,家庭や就労支援センター,学校との連
携もとても重要である.
このように,特例子会社として採算をとりつつ,障がい者雇用の促進と障がいをもつ従業員
のフォローを継続することが今後の課題といえるだろう.
4.7 ケースの特徴と就労支援クラスター
本ケースの特徴は,就労支援クラスター「かながわモデル」として形成されている,ニッパツ・
ハーモニーのネットワークにあり,その点が障がいをもつ従業員の定着率の高さにもつながっ
ている.「かながわモデル」については,総括で詳しく述べたい.
ニッパツ・ハーモニーは,2003年設立のNPO法人障害者雇用部会のメンバーであるため,企
業分会や企業見学会などによる交流もあり,障害者雇用部会と連携している.
また,県教育委員会や特別支援学校とは,実習生の受け入れなどにおいて連携がとれている.
地域の就労支援センターとは,就職後の定着支援において密に連携している.
さらに,家庭とも就職前の説明会や個別面談などで情報を共有し,連携している.
このように,就労支援クラスター「かながわモデル」によって,ニッパツ・ハーモニーの障
がい者雇用の成果があがっているといえるだろう.
26( 26 )
横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
5.総括:就労支援クラスター「かながわモデル」について
図表14は,
「かながわモデル」ともいうべき,神奈川県の就労支援クラスターを形成しつつ,ニッ
パツ・ハーモニーが地域のエージェントとどのように連携しているかを示している.ここでは,
ニッパツ・ハーモニーを中心にした就労支援クラスターを描いている.
:ニッパツ・ハーモニーと神奈川県の支援ネットワーク
図表14 就労支援クラスター「かながわモデル」
NPO 法人
障害者雇
用部会
地域の
就労支援センター
他の
特例子会社
ニッパツ・
ハーモニー
家庭
特別支援
学校
行政
(県教育委員会他)
ハローワーク
就労後のアフターフォロー(3年間)
就労支援クラスターとは,冒頭でふれたように,障がいのある子ども・若者などのしごと能
力の形成・アップとエンプロイアビリティの構築・向上のための,地域の様々なエージェント
の連携である.それは,産業クラスターにも擬することができる.産業クラスターとは,Porter
(1998)によれば,共通性と補完性とが結び付いた,特定分野における地理的に近接し,連関し
た企業ならびに関連組織のグループをさす.産業クラスターは,ひとつの地域や町に地理的に
集中して形成されていることが多く,その活性化が国際的な産業の競争力,国の競争優位の源
泉になるという(二神,2002).障がいのある人に対する就労支援クラスターは,地域ベース,
基礎自治体単位で形成される.ここで共通性とは,障がいのある子ども・若者などのしごと能
力の形成・アップとエンプロイアビリティの構築・向上である.補完とは,各担当機関が補完
関係にある機能,役割を分担していることである.相互に競争し合い,協力し合うという関係
にある.産業クラスターでは,変化する環境の中で存続すべく,そのためのイノベーションも
大切であり,大学,研究機関も加わることがある.産学官連携は,きわめて重要である(Futagami
et al., 2010)
.産業クラスターのキーワードは,地域,共通性と補完性,競争と協力,コラボレー
ション,イノベーションであるが,障がいのある人に対する就労支援クラスターにとっても,
これらはやはりキーワードである.
ニッパツ・ハーモニーは,定着支援において地域の特別支援学校や就労支援センターと連携
している.さきにケースとして取り上げた横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校も,
そのひとつである.特別支援学校は,卒業生が就職してから 3 年間,約半年に 1 回のペースで
巡回し,卒業生の様子をフォローするという. 4 年目からは,就労支援センターが巡回し,問
障がい者雇用に関する一研究 ―就労支援クラスター「かながわモデル」の視点からの分析―(二神 枝保)( 27 )27
題などが生じた場合には,家庭とも連携しながら問題解決に取り組むという.
ニッパツ・ハーモニーは,NPO法人障害者雇用部会のメンバー企業でもあるので,この組織
とも密に連携している.NPO法人障害者雇用部会のはじまりは,約40年前に設立された児童医
療のための財団法人にある.やがて発達障がいの子供・保護者のための「小児療育相談センター」
が併設され,県域での労働組合運動に結びつき,障がいをもつ人が働くことをテーマとした勉
強会が始まった.さきにケースとして取り上げた「ぽこ・あ・ぽこ」も,そうした経緯の中で
設立されている.労働行政,教育,障がい者雇用を前向きに考える企業の人たちもこの勉強会
に加わり,やがて障がいをもつ人が働くことをサポートしようという人々のムーブメントがお
こり,2003年に土師修司氏によってNPO法人障害者雇用部会が設立された.2014年 6 月時点で,
31社の特例子会社が構成員となっている.
NPO法人障害者雇用部会の目的は,①障がい者雇用に関する啓発活動,②障がい者を雇用し
ようとする,または雇用している企業に対しての雇用安定のための支援,③障がい者の就労を
支援する関係者の人材育成の支援,④障がい者の雇用を推進する他の組織との協働事業,⑤障
がい者が生活しやすい社会環境作りのための政策提言などである.啓発活動の内容には,企業
見学会や企業分会を実施したり,企業内育成型ジョブコーチの育成事業なども行っており,ニッ
パツ・ハーモニーもこうした活動に参加することで,障害者雇用部会と連携している.
図表15 就労支援クラスター「かながわモデル」
:障害者雇用部会と神奈川県の支援ネットワーク
教
行
育
政
経済団体
労働団体
NPO 法人
障害者雇用部会
福
企
祉
業
図表15は,NPO法人障害者雇用部会を中心として描いた就労支援クラスター「かながわモデ
ル」の図である.
このように,障がい者雇用は,各組織が単独で進めても成果が上がらない.むしろ各組織がネッ
トワークで結ばれ,ベクトルを合わせることにより,はじめて成果があがる.図表15の中で,
障害者雇用部会はコーディネーターの役割を果たしている.つまり,障がい者の就労実現や継
続的就労のためには,県内の就労支援センターと連携し,障がい者雇用企業の開発と就労支援
が重要となる.また,関係企業,就労支援センター,特別支援学校,県教育委員会,雇用部会
で企業就労アフターフォロー研究委員会を設け,特別支援学校から就労した生徒に対する卒業
後の必要な支援について,具体的事例を分析・検討したうえで,フォローアップ体制を構築す
ることも大切である.
28( 28 )
横浜経営研究 第37巻 第1号(2016)
このように障がい者雇用は,地域の各組織が問題や課題を共有しながら,地域において就労
支援クラスターを形成しながら,お互いに連携することによって,成果を上げることができる
のであり,その意味で就労支援クラスター「かながわモデル」はとても示唆に富んでいるとい
えるだろう.
<謝 辞>
*横浜国立大学教育人間科学部附属特別支援学校校長 渡部匡隆先生,副校長 中戸川伸一先生,
進路指導担当教諭 青木実先生,社会福祉法人電気神奈川福祉センターぽこ・あ・ぽこ支援課長
三杉礼美様,株式会社ニッパツ・ハーモニー管理部長 大田辰夫様に対してインタヴューを実施
し,貴重なお話をお伺いさせて頂きまして,心よりお礼申し上げます.また,本論文作成にあ
たり,前厚生労働事務次官 村木厚子様には,大変貴重な助言を頂きましたので,ここに深く感
謝申し上げます.さらに,ジュネーヴのILOのRaymond Torres所長には,いつも貴重な情報と
問題意識をご教示頂いておりまして,心よりお礼申し上げます.
**本論文は,平成28年度文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C)
(課題番号16K03856)
「戦
略的人材開発の日欧比較研究」および平成27年度横浜経営学会特別研究プロジェクト「産学官
連携による戦略的人材開発」の研究成果の一部である.
参 考 文 献
二神枝保(2002)『人材の流動化と個人と組織の新しい関わり方』多賀出版.
Futagami, S., Backes-Gellner, U. und Pull, K.(2010)
“Stand und aktuelle Herausforderungen des
japanischen Hochschulsystems”
, Hochschulmanagement, Heft 1, SS.21-24.
Futagami, S.(2010)
“Non-Standard Employment in Japan: Gender Dimensions”
, International Institute for
Labour Studies, 200, pp.1-20, International Labour Office(ILO),Geneva.
二神枝保(2014)「雇用・人材開発システムの日欧比較:ディーセント・ワークの視点からの分析」『しご
と能力研究』第 2 号, pp.123-148.
二神枝保(2015)「人的資源マネジメント」山倉健嗣編著『ガイダンス現代経営学』中央経済社,pp.81-105.
Geisen, T., Lichtenauer, A., Roulin, C., Schielke, G., und Institut Integration und Partizipation der
Hochschule für Soziale Arbeit FHNW(2008), Disability Management in Unternehmen in der
Schweiz, Bundesamt für Sozialversicherungen, Bern.
Ghai, D.(2003)
“Decent work: Concept and indicators”
, International Labour Review, Vol. 142, No.2, pp.
113-145.
Ghai, D.(2006)Decent work: Objectives and strategies, International Labour Office(ILO)
, Geneva.
Harder, H., and Geisen, G. T.(2011)The Disability Management and Workplace Integration: International
Research Findings, Great Britain: Gower Publishing Unlimited.
ILO(2015a)Disability Inclusion Strategy and Action Plan 2014-2017, International Labour Office(ILO)
,
Geneva.
ILO(2015b), Decent work for persons with disabilities: promoting rights in the global development agenda,
International Labour Office(ILO),Geneva.
Porter, M. E.(1998)On Competition, Harvard Business Review Book. Boston.
WHO, World Bank(2011)World Report on Disability, WHO.
〔ふたがみ しほ 横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授〕
〔2016年6月29日受理〕