添付1 - 中野区医師会胸部レ線読影会

第148回 胸部レ線読影会
「咳の乏しい肺炎、咳の強い肺炎」
東京海上ビル診療所
山口 哲生先生
成人市中肺炎の起炎菌として、肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズ
マ、クラミジアニューモニエ、レジオネラなどが言われていますが、実は半
数近くが原因不明とされています。今回山口先生には、呼吸器感染症診療の
進め方で、症状や画像から病原菌を推測する診断法を教えていただきました。
症例1は49才女性です。4月に突然高熱が10日持続し入院されました。
呼吸苦は見られましたが咳痰は乏く、セフェム系抗生剤の前投与が無効でし
た。
レントゲン・CTでは両側肺野にスリガラス陰影とair bronchogramを伴う
浸潤影、両側胸水、心肥大を認めました。
画像の特徴は陰影のある領域の気管支に壁の肥厚など炎症所見が乏しい事で
す。オカメインコを飼育しており、クラミドフィラシッタシ肺炎いわゆるオー
ム病でした。chlamydophila psittaciはオウムやインコなどに感染し、鳥の
排泄物や羽毛分泌物から人に感染するため、雛が生まれる春に症例が多いと
の事です。発熱、筋肉痛、頭痛などの全身症状が前景に出て、呼吸器症状は
少ないとの事でした。肺だけに留まらず心膜炎心筋炎など全身に感染が及び
重症例では多臓器不全で死亡する事もあります。
同様な経過をたどった50才女性の症例も見せていただきました。
症例2は54才男性です。1週間前から微熱、食欲不振、全身倦怠感がある
も咳痰は見られませんでした。画像では右下葉にスリガラス陰影があり、陰
影内に小葉内網状影が見られました。
chlamydophila pneumoniaeのIgG,A抗体の上昇がありクラミドフィラ
ニューモニエ肺炎と診断しました。特徴的な臨床像や画像所見に乏しく、飛
沫感染、人ー人感染により小規模集団感染を起こしうるので注意が必要です。
症例3は75才男性です。10日ほど前から38℃の発熱あり咳嗽があり、発
熱呼吸苦が増悪し入院。喀痰はないとの事でした。著しい低酸素状態で画像
では両側肺野の主軸気管支周囲に広がる浸潤影とGGOが特徴的でした。
急速に増悪する肺炎でしたが、尿中レジオネラ抗原は陰性でした。しかし尿
中抗原ではレジオネラ症の約40%を占めるL.pneumophila serogruop1し
か診断できず、レジオネラ核酸同定検査(LAMP法)によりレジオネラ肺炎と
診断できた症例でした。
同感染症の66才男性症例も見せていただきました。
残りの症例は様々な経過、画像を呈したマイコプラズマ肺炎です。
24才女性は7日前から右頚部痛5日前から高熱、咳嗽、徐々に呼吸苦が生
じ、低酸素症を呈した症例です。画像では両側に広がる胸水と気管支に沿っ
た浸潤影と小葉中心の粒状影が目立ちマイコプラズマ細気管支炎を起こし呼
吸状態が悪くなっていました。中耳炎も併発していまいた。このタイプには
初期に充分なステロイド治療を行う事が重要です。
39才女性もマイコプラズマ細気管支炎でした。
18才女性は発熱、嘔吐、頭痛で発症、その後咳嗽が出現しました。右下葉
に肺炎像あり、家族がマイコプラズマ肺炎で治療しており、家族内感染でし
た。マイコプラズマでも最初から咳嗽が出る訳ではないとの事でした。
21才女性は両側のスリガラス陰影を呈し小葉内網状影(crazy pavig)が見ら
れましたが、クラミドフィラ肺炎と異なり気管支の炎症所見が見られます。
最後は32才女性で左下葉の下行大動脈シルエットサイン陽性例です。マイ
コプラズマの画像は結節影を呈する事もあるそうです。 (山本博之)