報告書 - 立命館大学アート・リサーチセンター

(様式)
文部科学省
共同利用・共同研究拠点
立命館大学アート・リサーチセンター 日本文化資源デジタル・アーカイブ研究拠点
2014 年度 共同研究成果報告書
2015 年 4 月
30 日 提出
1. 研究課題名
演劇上演記録のデータ・ベース化と活用、ならびに汎用利用システム構築に関る研究
(英文標記:
)
2. 研究代表者
氏名(ふりがな)
所属機関・職名
武藤 祥子(むとう さちこ)
公益財団法人 松竹大谷図書館
3. 研究分担者 (合計: 4 名) ※アート・リサーチセンター所属者は、「ARC 所属教員欄」に○印を付してください
氏名(ふりがな)
所属機関・職名
井川繭子(いがわまゆこ)
松竹大谷図書館
村島彩加(むらしまあやか)
日本学術振興会・PD
倉橋正恵(くらはしまさえ)
立命館大学衣笠研究機構客員研究員
青山いずみ(あおやまいずみ)
立命館大学文学研究科博士前期課程 M1
4. 研究課題の概要(300 字程度) (申請書から変更がある場合は、変更点が分かるように明記してください)
松竹大谷図書館は、開館以来、演劇史や演劇資料整理の基礎となる演劇上演記録を作成してきた。
この上演記録は、主に明治初年から戦前までの東京の記録と、戦後の各地の大劇場、及び東京の小劇場の記
録である。これらの上演記録は、元々図書カードによって整理されていたもので、これを完全にデータベースに
移行しつつ、不完全な情報については、資料の原典に当たるなど精緻化、考証を進めてデータの精度を上
げ、日本演劇の研究と資料整理の基礎となる上演記録データベースを構築する。
(様式)
5. 研究成果の概要 (この項は、本センターのホームページ・紀要等で公開することがあります)
2014 年度研究では、今まで続けてきた劇場ごとの演劇上演記録の考証作業を継続して行うことができた。
本年度はそれに加えて、ジャンルを「新派」に限定して戦後の上演記録の作成と考証作業を行った。
「新派」は明治期に旧来の歌舞伎などの演劇に対して、新しく発生した演劇のジャンルだが、戦前戦後を経て、
現在でも劇団新派として公演を行っている。
現在の新派公演は松竹株式会社が製作しており、そのため歴代の演劇部新派担当プロデューサーや、新派の
演出家が公演記録を書き留めていた冊子が存在する。今回の考証作業では、当館が記録してきた上演カード
の記録をベースとした上で、それらの冊子を重要な典拠資料としてデータベース化できた。
またこの作業では、冊子をスキャンして画像化し、その画像を新派担当プロデューサーにも提供した。
新派上演データベースが完成すれば、今後の新派公演製作業務に活用できる有益なデータベースとなるであ
ろう。
また考証作業は、今年度より演劇の専門知識を持った新たな人材を得て入力作業が行われた。考証作業が進
むにつれ、入力ペースや考証の精度も上がり、上演記録の考証方法を会得した人材の育成にもつながったと
いえる。
さらに、別予算で進めている芝居番付のデジタル化がアート・リサーチセンターとのコラボレーションで進行中で
あり、2014 年度中に約 6,000 点の内、2,500 点の画像化が完了する予定である。
6-1. 研究成果の詳細 (申請書に記載した内容に照らし合わせ、達成状況も含めて具体的に記述してください)
2014 年行った演劇上演記録の考証作業は、以下の2種類である。
1)劇場ごとの考証作業(新宿コマ劇場、梅田コマ劇場)
考証作業の典拠資料は、筋書(プログラム)を中心にしているが、他にも必要があれば『松竹百年史』や興
行会社や劇場ごとに発行されている上演史、さらに演劇雑誌なども参照して行っている。
現在では、103,453 件中 46,579 件の検証作業が終了している。
2)ジャンルごとの考証作業(新派上演記録)【一般公開予定データベース】
新派公演の上演記録は未だ作られておらず、これが完成すれば研究や今後の公演製作に有効なデータ
ベースとなる。今回は松竹株式会社演劇部の新派公演製作担当の協力を得て、典拠資料等の提供も受
けることができ、集中的に考証を進めた結果、ジャンルを限定しての公開が可能なレベルまで精度の高い
データが完成した。
これらのデータは、松竹大谷図書館事務所内で日常の業務中に活用されているが、2)の新派上演記録につい
ては、現在データの最終調整を行っており、近々アート・リサーチセンターにてデータベースの構築を行って一
般公開データベースとして提供する予定になっている。
6-2. データーベース、共有すべきデータ・アーカイブの構築状況
今年度、ジャンルを「新派」に特定して考証作業を行い、現在はほぼ入力作業が終了したデータについて、公
開と活用に向けてデータの最終チェックを進めているところである。この後、これらをアート・リサーチセンターの
サポートによりデータベースを構築して公開へもっていきたいと考えている。
公開は劇団新派の公式HP上にリンクを貼る形で行うことが決定しており、研究目的の学術的利用のみならず、
将来の新派公演の製作や、一般の利用者も利用できるようなデータベースとして今後の活用が期待される。
その意味でもデータベースを公開した後も、必要があればメンテナンスやデータ内容の修正等を行い、使いや
すく信頼性の高い上演記録データベースを目指して成長させていきたい。
また、劇場ごとに考証作業を行っている演劇上演記録全体のデータについては、2014 年度末の段階でも、全
データの約 65%分の検証が完了した状況であり、一般公開を行う段階とはいえないため、現在は松竹大谷図
書館事務所内で、業務に必要なデータベースとしての利用にとどまっている。しかしながら、上記のようにジャン
ルを限定したデータベースを構築し公開・運用していくことで、将来の全体のデータベース公開へとつなげてい
きたい。
7. 研究成果の発信状況 ※データベースのアクセス数なども具体的に記入してください
(様式)
演劇上演記録データのうち、ジャンルを「新派」に特定して考証作業を行いほぼ入力作業が終了したデータに
ついては、現在データの最終チェックを進めている段階である。この後、これらをアート・リサーチセンターのサ
ポートによりデータベースを構築する予定だが、公開時期は 2015 年度前半を見込んでいる。
今年度は上記のようにジャンルを限定したデータベースの公開を目指して考証作業を集中して行ったが、一方
では劇場ごとの考証作業も滞りなく進めている。このように考証の終了したデータを確実に増やしていき、将来
の演劇上演記録全体のデータベース公開へとつなげていきたいと考える。この点においても、データベースを
公開した後も、必要があればメンテナンスやデータ内容の修正・追加等を行い、使いやすく信頼性の高い上演
記録データベースを目指して成長させていきたい。
松竹大谷図書館では 2014 年秋より当館の HP 上で「松竹大谷図書館所蔵・義太夫正本検索閲覧システム」の
公開を開始し、その際には利用者・関係者・各関係機関より反響を寄せていただいた。このときにもアート・リサ
ーチセンターのサポートを受けてデータベースの構築や HP の整備を行った実績がある。この経験を生かして
演劇上演記録データベース【新派上演記録データベース(仮称)】の公開と運用を、今年度の上演記録考証の
成果として発信する予定である。
8. 研究業績
(1)著書
1.公演プログラム(歌舞伎座、新橋演舞場、明治座、南座、大阪松竹座、御園座、博多座)/共同/2014 年 4
日 1 日以降発行の各月(但し歌舞伎本公演に限る)/巻末掲載上演年表
2.『十八代目中村勘三郎 芸の軌跡 出演年表』/共同/2014 年 12 月 1 日/演劇出版社/『演劇界』2014
年 12 月号別冊付録 18p-57p
3.『演劇界』2015 年 5 月号「追悼十代目坂東三津五郎」/共同/2015 年 4 月 5 日/演劇出版社/「芸の軌
跡 昭和 31 年~平成 26 年出演年表」51p-60p