TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 バージョン: Release 1.6.0 最終更新: 2014年1月6日 このドキュメントは,TOPPERS新世代カーネルに属する一連のリアルタイムカー ネルの仕様を,統合的に記述したものである.未完成の部分も残っている(特 に動的生成対応カーネルに関しては,仕様検討が不十分なところが多い)が, 新世代カーネルの仕様検討はこの段階で完了とし,これ以降は第3世代カーネル 仕様として検討を続ける計画である. この仕様書に準拠している各カーネルのバージョンは,次の通りである. TOPPERS/ASP カーネル TOPPERS/FMP カーネル TOPPERS/HRP2 カーネル TOPPERS/SSP カーネル Release Release Release Release 1.9.0 1.2.0 2.2.0 1.2.0 なお,本文中から参照している図は,ファイルの最後にまとめて掲載してある. ---------------------------------------------------------------------TOPPERS New Generation Kernel Specification Copyright (C) 2006 -2014 by Embedded and Real -Time Systems Laboratory Graduate School of Information Science, Nagoya Univ., JAPAN Copyright (C) 2006 -2014 by TOPPERS Project, Inc., JAPAN 上記著作権者は,以下の (1) (3) の条件を満たす場合に限り,本ドキュメ ント(本ドキュメントを改変したものを含む.以下同じ)を使用・複製・改 変・再配布(以下,利用と呼ぶ)することを無償で許諾する. (1) 本ドキュメントを利用する場合には,上記の著作権表示,この利用条件 および下記の無保証規定が,そのままの形でドキュメント中に含まれて いること. (2) 本ドキュメントを改変する場合には,ドキュメントを改変した旨の記述 を,改変後のドキュメント中に含めること.ただし,改変後のドキュメ ントが,TOPPERSプロジェクト指定の開発成果物である場合には,この限 りではない. (3) 本ドキュメントの利用により直接的または間接的に生じるいかなる損害 からも,上記著作権者およびTOPPERSプロジェクトを免責すること.また, 本ドキュメントのユーザまたはエンドユーザからのいかなる理由に基づ く請求からも,上記著作権者およびTOPPERSプロジェクトを免責すること. 本ドキュメントは,無保証で提供されているものである.上記著作権者およ びTOPPERSプロジェクトは,本ドキュメントに関して,特定の使用目的に対す る適合性も含めて,いかなる保証も行わない.また,本ドキュメントの利用 により直接的または間接的に生じたいかなる損害に関しても,その責任を負 わない. ---------------------------------------------------------------------- 1 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 ○目次 ・目次 ・仕様書で用いる記述項目と記号 ・タグの付与方法 第1章 TOPPERS新世代カーネルの概要 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7 TOPPERS 新世代カーネル仕様の位置付け TOPPERS 新世代カーネル仕様の設計方針 TOPPERS/ASP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/FMP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/HRP2 カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/SSP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/ASP Safety カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 第2章 主要な概念と共通定義 2.1 仕様の位置付け 2.1.1 カーネルの機能セット 2.1.2 ターゲット非依存の規定とターゲット定義の規定 2.1.3 想定するソフトウェア構成 2.1.4 想定するハードウェア構成 2.1.5 想定するプログラミング言語 2.2 API の構成要素とコンベンション 2.2.1 API の構成要素 2.2.2 パラメータとリターンパラメータ 2.2.3 返値とエラーコード 2.2.4 機能コード 2.2.5 ヘッダファイル 2.3 主な概念 2.3.1 オブジェクトと処理単位 2.3.2 サービスコールとパラメータ 2.3.3 保護機能 2.3.4 マルチプロセッサ対応 2.3.5 その他 2.4 処理単位の種類と実行 2.4.1 処理単位の種類 2.4.2 処理単位の実行順序 2.4.3 カーネル処理の不可分性 2.4.4 処理単位を実行するプロセッサ 2.5 システム状態とコンテキスト 2.5.1 カーネル動作状態と非動作状態 2.5.2 タスクコンテキストと非タスクコンテキスト 2.5.3 カーネルの振舞いに影響を与える状態 2.5.4 全割込みロック状態と全割込みロック解除状態 2.5.5 CPU ロック状態とCPUロック解除状態 2.5.6 割込み優先度マスク 2.5.7 ディスパッチ禁止状態とディスパッチ許可状態 2.5.8 ディスパッチ保留状態 2 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 2.5.9 カーネル管理外の状態 2.5.10 処理単位の開始・終了とシステム状態 2.6 タスクの状態遷移とスケジューリング規則 2.6.1 基本的なタスク状態 2.6.2 タスクの状態遷移 2.6.3 タスクのスケジューリング規則 2.6.4 待ち行列と待ち解除の順序 2.6.5 タスク例外処理マスク状態と待ち禁止状態 2.6.6 ディスパッチ保留状態で実行中のタスクに対する強制待ち 2.6.7 制約タスク 2.7 割込み処理モデル 2.7.1 割込み処理の流れ 2.7.2 割込み優先度 2.7.3 割込み要求ラインの属性 2.7.4 割込みを受け付ける条件 2.7.5 割込み番号と割込みハンドラ番号 2.7.6 マルチプロセッサにおける割込み処理 2.7.7 カーネル管理外の割込み 2.7.8 カーネル管理外の割込みの設定方法 2.8 CPU 例外処理モデル 2.8.1 CPU 例外処理の流れ 2.8.2 CPU 例外ハンドラから呼び出せるサービスコール 2.8.3 エミュレートされたCPU例外ハンドラ 2.8.4 カーネル管理外のCPU例外 2.9 システムの初期化と終了 2.9.1 システム初期化手順 2.9.2 システム終了手順 2.10 オブジェクトの登録とその解除 2.10.1 ID 番号で識別するオブジェクト 2.10.2 オブジェクト番号で識別するオブジェクト 2.10.3 識別番号を持たないオブジェクト 2.10.4 オブジェクト生成に必要なメモリ領域 2.10.5 オブジェクトが属する保護ドメインの設定 2.10.6 オブジェクトが属するクラスの設定 2.10.7 オブジェクトの状態参照 2.11 オブジェクトのアクセス保護 2.11.1 オブジェクトのアクセス保護とアクセス違反の通知 2.11.2 メモリオブジェクトに対するアクセス許可ベクタの制限 2.11.3 デフォルトのアクセス許可ベクタ 2.11.4 アクセス許可ベクタの設定 2.11.5 カーネルの管理領域のアクセス保護 2.11.6 ユーザタスクのユーザスタック領域 2.12 システムコンフィギュレーション手順 2.12.1 システムコンフィギュレーションファイル 2.12.2 静的APIの文法とパラメータ 2.12.3 保護ドメインの指定 2.12.4 クラスの指定 2.12.5 コンフィギュレータの処理モデル 2.12.6 静的APIのパラメータに関するエラー検出 2.12.7 オブジェクトのID番号の指定 3 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 2.13 TOPPERS ネーミングコンベンション 2.13.1 モジュール識別名 2.13.2 データ型名 2.13.3 関数名 2.13.4 変数名 2.13.5 定数名 2.13.6 マクロ名 2.13.7 静的API名 2.13.8 ファイル名 2.13.9 モジュール内部の名称の衝突回避 2.14 TOPPERS共通定義 2.14.1 TOPPERS 共通ヘッダファイル 2.14.2 TOPPERS 共通データ型 2.14.3 TOPPERS 共通定数 2.14.4 TOPPERS 共通エラーコード 2.14.5 TOPPERS 共通マクロ 2.14.6 TOPPERS 共通構成マクロ 2.15 カーネル共通定義 2.15.1 カーネルヘッダファイル 2.15.2 カーネル共通定数 2.15.3 カーネル共通マクロ 2.15.4 カーネル共通構成マクロ 第3章 システムインタフェースレイヤAPI仕様 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 システムインタフェースレイヤの概要 SIL ヘッダファイル 全割込みロック状態の制御 SIL スピンロック 微少時間待ち エンディアンの取得 メモリ空間アクセス関数 I/O 空間アクセス関数 プロセッサIDの参照 第4章 カーネルAPI仕様 4.1 4.2 4.3 4.4 タスク管理機能 タスク付属同期機能 タスク例外処理機能 同期・通信機能 4.4.1 セマフォ 4.4.2 イベントフラグ 4.4.3 データキュー 4.4.4 優先度データキュー 4.4.5 メールボックス 4.4.6 ミューテックス 4.4.7 メッセージバッファ 4.4.8 スピンロック 4.5 メモリプール管理機能 4 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 4.5.1 固定長メモリプール 4.6 時間管理機能 4.6.1 システム時刻管理 4.6.2 周期ハンドラ 4.6.3 アラームハンドラ 4.6.4 オーバランハンドラ 4.7 システム状態管理機能 4.8 メモリオブジェクト管理機能 4.9 割込み管理機能 4.10 CPU 例外管理機能 4.11 拡張サービスコール管理機能 4.12 システム構成管理機能 第5章 リファレンス 5.1 サービスコール一覧 5.2 静的API一覧 5.3 データ型 5.3.1 TOPPERS 共通データ型 5.3.2 カーネルの使用するデータ型 5.3.3 カーネルの使用するパケット形式 5.4 定数とマクロ 5.4.1 TOPPERS 共通定数 5.4.2 TOPPERS 共通マクロ 5.4.3 カーネル共通定数 5.4.4 カーネル共通マクロ 5.4.5 カーネルの機能毎の定数 5.4.6 カーネルの機能毎のマクロ 5.5 構成マクロ 5.5.1 TOPPERS 共通構成マクロ 5.5.2 カーネル共通構成マクロ 5.5.3 カーネルの機能毎の構成マクロ 5.6 エラーコード一覧 5.7 機能コード一覧 5.8 カーネルオブジェクトに対するアクセスの種別 5.9 ターゲット定義事項一覧 5.10 省略名の元になった英語 5.10.1 サービスコールと静的APIの名称の中のxxxの元になった英語 5.10.2 サービスコールと静的APIの名称の中のyyyの元になった英語 5.10.3 サービスコールの名称の中のzの元になった英語 5.11 バージョン履歴 ○仕様書で用いる記述項目と記号 この仕様書では,以下の記述項目を用いる. 【補足説明】の項では,仕様本体の記述に対する補足事項を説明する. 【 カーネルにおける規定】の項では,TOPPERS新世代カーネルに属する特定 5 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 のカーネルにおける追加仕様を規定する. 【 仕様との関係】の項では,この仕様と,μITRON4.0仕様または μITRON4.0/PX仕様との違いについて説明する. 【未決定事項】の項では,この仕様書の現時点のバージョンでは,決定されず に残っている事項について記述する. 【仕様決定の理由】の項では,仕様を決定するにあたって考慮した事項につい て説明する. 「第4章 カーネルAPI仕様」の章の各サービスコールおよび静的APIの仕様記述 においては,以下の記述項目を用いる. 【静的API】の項では,システムコンフィギュレーションファイル中で静的API を記述する形式を規定する.また,【C言語API】の項では,C言語からサービス コールを呼び出す形式を規定する. 【パラメータ】の項では,サービスコールおよび静的APIに渡すパラメータの名 称とデータ型を規定し,簡単な説明を行う.また,【リターンパラメータ】の 項では,サービスコールが返すリターンパラメータの名称とデータ型を規定し, 簡単な説明を行う.【エラーコード】の項では,サービスコールおよび静的 APIが返す可能性のあるメインエラーコードと,その検出条件を規定する. 【機能】の項では,サービスコールおよび静的APIの機能を規定する. TOPPERS 新世代カーネルに属する特定のカーネルにおいてのみサポートするAPI につしては,【サポートするカーネル】の項で,そのことを記述する. また,「第4章 カーネルAPI仕様」の章では,カーネルのAPIの種別とAPIをサ ポートするカーネルの種類を表すために,次の記号を用いる. 〔T〕はタスクコンテキスト専用のサービスコールを示す.非タスクコンテキス トから呼び出すと,E_CTXエラーとなる. 〔I〕は非タスクコンテキスト専用のサービスコールを示す.タスクコンテキス トから呼び出すと,E_CTXエラーとなる. 〔TI〕はタスクコンテキストからも非タスクコンテキストからも呼び出すこと のできるサービスコールを示す. 〔S〕は静的APIを示す. 〔P〕は保護機能対応カーネルのみでサポートされているAPIを示す.保護機能 対応でないカーネルでは,このAPIはサポートされない. 〔p〕は保護機能対応でないカーネルのみでサポートされているAPIを示す.保 護機能対応カーネルでは,このAPIはサポートされない. 〔M〕はマルチプロセッサ対応カーネルのみでサポートされているAPIを示す. 6 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 マルチプロセッサ対応でないカーネルでは,このAPIはサポートされない. 〔D〕は動的生成対応カーネルのみでサポートされているAPIを示す.動的生成 対応でないカーネルでは,このAPIはサポートされない. また,エラーが発生する条件を表すために,次の記号を用いる. 〔s〕は,サービスコールのみで発生するエラーを示す.静的APIでは,このエ ラーは発生しない. 〔S〕は静的APIのみで発生するエラーを示す.サービスコールでは,このエラー は発生しない. 〔P〕は保護機能対応カーネルのみで発生するエラーを示す.保護機能対応でな いカーネルでは,このエラーは発生しない. 〔D〕は動的生成対応カーネルのみで発生するエラーを示す.動的生成対応でな いカーネルでは,このエラーは発生しない. ○タグの付与方法 この仕様書では,トレーサビリティの確保のために,記述事項に対してタグを 付与する.具体的には,以下に該当する記述事項を,タグを付与する対象とす る. ・対象ソフトウェアの実装に対する要求事項や制限事項 ・対象ソフトウェアの仕様に対する一般要求事項 ・対象ソフトウェアの動作環境に対する要求事項 ・ターゲット定義の規定 それに対して,用語の定義や補足説明,対象ソフトウェアを使用する上での推 奨事項や注意事項,仕様決定の理由,他の仕様との関係に対しては,タグを付 与しない. タグの形式と意味は次の通りである(xxxxは4桁の数字を表す). NGKIxxxx ASPSxxxx FMPSxxxx HRPSxxxx SSPSxxxx ASSSxxxx TOPPERS 新世代カーネル全体を対象とした記述 TOPPERS/ASP カーネルを対象とした記述 TOPPERS/FMP カーネルを対象とした記述 TOPPERS/HRP2 カーネルを対象とした記述 TOPPERS/SSP カーネルを対象とした記述 TOPPERS/ASP Safety カーネルを対象とした記述 仕様書中では,ある記述事項に,タグYYYYxxxx(YYYYは4文字の英文字,xxxxは 4桁の数字を表す)が付与されていることを,【YYYYxxxx】で表現する.それに 対して,タグYYYYxxxxを参照する場合には,[YYYYxxxx]と表記する. 第1章 TOPPERS新世代カーネルの概要 7 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 TOPPERS 新世代カーネルとは,TOPPERSプロジェクトにおいてITRON仕様をベース として開発している一連のリアルタイムカーネルの総称である.この章では, TOPPERS 新世代カーネル仕様の位置付けと設計方針,それに属する各カーネルの 適用対象領域と設計方針について述べる. 1.1 TOPPERS 新世代カーネル仕様の位置付け TOPPERS プロジェクトでは,2000年に公開したTOPPERS/JSPカーネルを始めとし て,μITRON4.0仕様およびその保護機能拡張(μITRON4.0/PX仕様)に準拠した リアルタイムカーネルを開発してきた. μITRON4.0仕様は1999年に,μITRON4.0/PX仕様は2002年に公表されたが,それ 以降現在までの間に,大きな仕様改訂は実施されていない.その間に,組込み システムおよびソフトウェアのますますの大規模化・複雑化,これまで以上に 高い信頼性・安全性に対する要求,小さい消費エネルギー下での高い性能要求 など,組込みシステム開発を取り巻く状況は刻々変化している.リアルタイム カーネルに対しても,マルチプロセッサへの対応,発展的な保護機能のサポー ト,機能安全対応,省エネルギー制御機能のサポートなど,新しい要求が生じ ている. TOPPERS プロジェクトでは,リアルタイムカーネルに対するこのような新しい要 求に対応するために,μITRON4.0仕様を発展させる形で,TOPPERS新世代カーネ ル仕様を策定することになった. ただし,ITRON仕様が,各社が開発するリアルタイムカーネルを標準化すること を目的に,リアルタイムカーネルの「標準仕様」を規定することを目指してい るのに対して,TOPPERS新世代カーネル仕様は,TOPPERSプロジェクトにおいて 開発している一連のリアルタイムカーネルの「実装仕様」を記述するものであ り,ITRON仕様とは異なる目的・位置付けを持つものである. 1.2 TOPPERS新世代カーネル仕様の設計方針 TOPPERS 新世代カーネル仕様を設計するにあたり,次の方針を設定する. (1) μITRON4.0仕様をベースに拡張・改良を加える TOPPERS 新世代カーネル仕様は,多くの技術者の尽力により作成され,多くの実 装・使用実績があるμITRON4.0仕様をベースとする.ただし,μITRON4.0仕様 の策定時以降の状況の変化を考慮し,μITRON4.0仕様で不十分と考えられる点 については積極的に拡張・改良する.μITRON4.0仕様への準拠性にはこだわら ない. (2) ソフトウェアの再利用性を重視する μITRON4.0仕様の策定時点と比べると,組込みソフトウェアの大規模化が進展 している一方で,ハードウェアの性能向上も著しい.そのため,ソフトウェア の再利用性を向上させるためには,少々のオーバヘッドは許容される状況にあ る. 8 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 そこで,TOPPERS新世代カーネル仕様では,μITRON4.0仕様においてオーバヘッ ド削減のために実装定義または実装依存としていたような項目についても,ター ゲットシステムに依存する項目とするのではなく,強く規定する方針とする. (3) 高信頼・安全なシステム構築を支援する TOPPERS 新世代カーネル仕様は,高信頼・安全な組込みシステム構築を支援する ものとする. 安全性の面では,アプリケーションプログラムに問題がある場合でも,リーゾ ナブルなオーバヘッドでそれを救済できるなら,救済するような仕様とする. また,アプリケーションプログラムの誤動作を検出する機能や,システムの自 己診断のための機能についても,順次取り込んでいく. (4) アプリケーションシステム構築に必要な機能は積極的に取り込む 上記の方針を満たした上で,多くのアプリケーションシステムに共通に必要と なる機能については,積極的にカーネルに取り込む. カーネル単体の信頼性を向上させるためには,カーネルの機能は少なくした方 が楽である.しかし,アプリケーションシステム構築に必要となる機能は,カー ネルがサポートしていなければアプリケーションプログラムで実現しなければ ならず,システム全体の信頼性を考えると,多くのアプリケーションシステム に共通に必要となる機能については,カーネルに取り込んだ方が有利である. 1.3 TOPPERS/ASP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS /ASPカーネル(ASPは,Advanced Standard Profile の略.以下,ASPカー ネル)は,TOPPERS新世代カーネルの出発点となるリアルタイムカーネルである. 保護機能を持ったカーネルやマルチプロセッサ対応のカーネルは,ASPカーネル を拡張する形で開発する. ASPカーネルは,20年以上に渡るITRON仕様の技術開発成果をベースとして,完 成度の高いリアルタイムカーネルを実現するものである.完成度を高めるとい う観点から,カーネル本体の仕様については,枯れた技術で実装できる範囲に 留める. ASPカーネルの主な適用対象は,高い信頼性・安全性・リアルタイム性を要求さ れる組込みシステムとする.ソフトウェア規模の面では,プログラムサイズ (バイナリコード)が数十KB 1MB程度のシステムを主な適用対象とする.それ より大規模なシステムには,保護機能を持ったリアルタイムカーネルを適用す べきと考えられる. ASPカーネルの機能は,カーネル内で動的なメモリ管理が不要な範囲に留める. これは,高い信頼性・安全性・リアルタイム性を要求される組込みシステムで は,システム稼働中に発生するメモリ不足への対処が難しいためである.この 方針から,カーネルオブジェクトは静的に生成することとし,動的なオブジェ クト生成機能は設けない.ただし,アプリケーションプログラムが動的なメモ リ管理をするためのカーネル機能である固定長メモリプール機能はサポートす る. 9 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 1.4 TOPPERS/FMP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/FMP カーネル(FMPは,Flexible Multiprocessor Profile の略.以下, FMPカーネル)は,ASPカーネルを,マルチプロセッサ対応に拡張したリアルタ イムカーネルである. FMPカーネルの適用対象となるターゲットハードウェアは,ホモジニアスなマル チプロセッサシステムである.各プロセッサが全く同一のものである必要はな いが,すべてのプロセッサでバイナリコードを共有することから,同じバイナ リコードを実行できることが必要である. FMPカーネルでは,タスクを実行するプロセッサを静的に決定するのが基本であ り,カーネルは自動的に負荷分散する機能を持たないが,タスクをマイグレー ションさせるサービスコールを備えている.これを用いて,アプリケーション で動的な負荷分散を実現することが可能である. FMPカーネルの機能は,ASPカーネルと同様に,カーネル内で動的なメモリ管理 が不要な範囲に留める. 1.5 TOPPERS/HRP2 カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/HRP2 カーネル(HRPは,High Reliable system Profile の略.2はバー ジョン番号を示す.以下,HRP2カーネル)は,さらに高い信頼性・安全性を要 求される組込みシステムや,より大規模な組込みシステム向けに適用できるよ うに,ASPカーネルを拡張したリアルタイムカーネルである. HRP2カーネルの適用対象となるターゲットハードウェアは,特権モードと非特 権モードを備え,メモリ保護のためにMMU(Memory Management Unit )または MPU(Memory Protection Unit )を持つプロセッサを用いたシステムである. HRP2カーネルの主な適用対象は,ソフトウェア規模の面では,プログラムサイ ズ(バイナリコード)が数百KB以上のシステムである. HRP2カーネルの機能は,ASPカーネルと同様に,カーネル内で動的なメモリ管理 が不要な範囲に留める.具体的には,ASPカーネルに対して,メモリ保護機能と オブジェクトアクセス保護機能,拡張サービスコール機能,ミューテックス機 能,オーバランハンドラ機能を追加し,メールボックス機能を削除している. 1.6 TOPPERS/SSP カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/SSP カーネル(SSPは,Smallest Set Profileの略.以下,SSPカーネル) は,小規模システムに用いるために,ASPカーネルをベースに可能な限り機能を 絞り込んだリアルタイムカーネルである. SSPカーネルの機能は,μITRON4.0仕様の「仕様準拠の最低条件」の考え方を踏 襲し,メモリ使用量を最小化するように定めている.具体的には,SSPカーネル においては,タスクは待ち状態を持たない(言い換えると,制約タスクのみを サポートする)のが最大の特徴である.また,ASPカーネルに対して下位互換性 を持つように配慮しているが,システム全体のメモリ使用量を最小化するため に有用な機能は,ASPカーネルに対して追加している. 10 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 TOPPERS/SSP カーネルの主な適用対象は,プログラムサイズ(バイナリコード) が数KB 数十KB程度の極めて小規模な組込みシステムである. 1.7 TOPPERS/ASP Safety カーネルの適用対象領域と仕様設計方針 TOPPERS/ASP Safety カーネル(以下,ASP Safetyカーネル)は,小規模な安全 関連システムに用いるために,ASPカーネルの機能を徹底的な検証が可能な範囲 にサブセット化したものである.メールボックスのように安全性の観点から問 題のある機能や,タスク例外処理機能のように使用頻度に比べて検証にコスト のかかる機能はサポートしない. ASP Safet yカーネルの主な適用対象は,特に高い安全性を要求される組込みシ ステムとする.ソフトウェア規模の面では,プログラムサイズ(バイナリコー ド)が数十KB 1MB程度のシステムを主な適用対象とする.それより大規模なシ ステムには,保護機能を持ったカーネルを適用すべきと考えられる. 第2章 主要な概念と共通定義 2.1 仕様の位置付け この仕様は,TOPPERS新世代カーネルに属する各カーネルの仕様を,統合的に記 述することを目標としている.また,TOPPERS新世代カーネル上で動作する各種 のシステムサービスに共通に適用される事項についても規定する. 2.1.1 カーネルの機能セット TOPPERS 新世代カーネルは,ASPカーネルをベースとして,保護機能,マルチプ ロセッサ,カーネルオブジェクトの動的生成,機能安全などに対応した一連の カーネルで構成される. この仕様では,TOPPERS新世代カーネルを構成する一連のカーネルの仕様を統合 的に記述するが,言うまでもなく,カーネルの種類によってサポートする機能 は異なる.サポートする機能をカーネルの種類毎に記述する方法もあるが,カー ネルの種類はユーザ要求に対応して増える可能性もあり,その度に仕様書を修 正するのは得策ではない. そこでこの仕様では,サポートする機能を,カーネルの種類毎ではなく,カー ネルの対応する機能セット毎に記述する.具体的には,保護機能を持ったカー ネルを保護機能対応カーネル,マルチプロセッサに対応したカーネルをマルチ プロセッサ対応カーネル,カーネルオブジェクトの動的生成機能を持ったカー ネルを動的生成対応カーネルと呼ぶことにする. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルは,保護機能対応カーネル,マルチプロセッサ対応カーネル,動的 生成対応カーネルのいずれでもない【ASPS0001】.ただし,動的生成機能拡張 パッケージを用いると,動的生成対応カーネルとなる【ASPS0002】. 11 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルは,マルチプロセッサ対応カーネルであり,保護機能対応カーネル, 動的生成対応カーネルではない【FMPS0001】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルは,保護機能対応カーネルであり,マルチプロセッサ対応カーネ ル,動的生成対応カーネルではない【HRPS0001】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルは,保護機能対応カーネル,マルチプロセッサ対応カーネル,動的 生成対応カーネルのいずれでもない【SSPS0001】. 【μITRON4.0仕様,μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0仕様は,カーネルオブジェクトの動的生成機能を持っているが,保 護機能を持っておらず,マルチプロセッサにも対応していない.μITRON4.0/PX 仕様は,μITRON4.0仕様に対して保護機能を追加するための仕様であり,カー ネルオブジェクトの動的生成機能と保護機能を持っているが,マルチプロセッ サには対応していない. 2.1.2 ターゲット非依存の規定とターゲット定義の規定 TOPPERS 新世代カーネルは,アプリケーションプログラムの再利用性を向上させ るために,ターゲットハードウェアや開発環境の違いをできる限り隠蔽するこ とを目指している.ただし,ターゲットハードウェアや開発環境の制限によっ て実現できない機能が生じたり,逆にターゲットハードウェアの特徴を活かす ためには機能拡張が不可欠になる場合がある.また,同一のターゲットハード ウェアであっても,アプリケーションシステムによって使用方法が異なる場合 があり,ターゲットシステム毎に仕様の細部に違いが生じることは避けられな い. そこで,TOPPERS新世代カーネルの仕様は,ターゲットシステムによらずに定め るターゲット非依存(target-independent)の規定と,ターゲットシステム毎 に定めるターゲット定義(target-defined)の規定に分けて記述する.この仕 様書は,ターゲット非依存の規定について記述するものであり,この仕様書で 「ターゲット定義」とした事項は,ターゲットシステム毎に用意するドキュメ ントにおいて規定する. また,この仕様書でターゲット非依存に規定した事項であっても,ターゲット ハードウェアや開発環境の制限によって実現できない場合や,実現するための オーバヘッドが大きくなる場合には,この仕様書の規定を逸脱する場合がある. このような場合には,ターゲットシステム毎に用意するドキュメントでその旨 を明記する. 2.1.3 想定するソフトウェア構成 この仕様では,アプリケーションシステムを構成するソフトウェアを,アプリ 12 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 ケーションプログラム(以下,単にアプリケーションと呼ぶ),システムサー ビス,カーネルの3階層に分けて考える(図2-1).カーネルとシステムサービ スをあわせて,ソフトウェアプラットフォームと呼ぶ. カーネルは,コンピュータの持つ最も基本的なハードウェア資源であるプロセッ サ,メモリ,タイマを抽象化し,上位階層のソフトウェア(アプリケーション およびシステムサービス)に論理的なプログラム実行環境を提供するソフトウェ アである. システムサービスは,各種の周辺デバイスを抽象化するソフトウェアで,ファ イルシステムやネットワークプロトコルスタック,各種のデバイスドライバな どが含まれる. また,この仕様では,プロセッサと各種の周辺デバイスの接続方法を隠蔽する ためのソフトウェア階層として,システムインタフェースレイヤ(SIL)を規定 する. システムインタフェースレイヤ,カーネル,各種のシステムサービス(これら をモジュールと呼ぶ)を,上位階層のソフトウェアから使うためのインタフェー スを,API(Application Programming Interface )と呼ぶ. この仕様書では,第3章においてシステムインタフェースレイヤのAPI仕様を, 第4章においてカーネルのAPI仕様を規定する.システムサービスのAPI仕様は, システムサービス毎の仕様書で規定される. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,カーネルとアプリケーションの中間にあるソフトウェア をソフトウェア部品と呼んでいたが,TOPPERS組込みコンポーネントシステム (TECS)においてはカーネルもソフトウェア部品の1つと捉えることから,この 仕様ではシステムサービスと呼ぶことにした. 2.1.4 想定するハードウェア構成 この仕様では,カーネルがサポートするハードウェア構成として,以下のこと を想定している.これらに合致しないターゲットハードウェアでカーネルを動 作させることは可能であるが,合致しない部分への適応はアプリケーションの 責任になる. (a) メモリ番地は,常に同一のメモリを指すこと(オーバレイのように,異な るメモリを同一のメモリ番地でアクセスすることがないこと)【NGKI0001】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,同一のメモリに対しては,各プロ セッサから同一の番地でアクセスできること【NGKI0002】. (b) マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,各プロセッサが同一の機械語 命令を実行できること【NGKI0003】. 2.1.5 想定するプログラミング言語 この仕様におけるAPI仕様は,ISO/IEC 9899:1990(以下,C90と呼ぶ)または 13 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 ISO/IEC 9899:1999 (以下,C99と呼ぶ)に準拠したC言語を,フリースタンディ ング環境で用いることを想定して規定している【NGKI0004】. ただし,C90の規定に加えて,以下のことを仮定している. ・16ビットおよび32ビットの整数型があること【NGKI0005】 ・ポインタが格納できるサイズの整数型があること【NGKI0006】 2.2 API の構成要素とコンベンション 2.2.1 API の構成要素 (1) サービスコール 上位階層のソフトウェアから,下位階層のソフトウェアを呼び出すインタフェー スをサービスコール(service call)と呼ぶ.カーネルのサービスコールを, システムコール(system call)と呼ぶ場合もある. (2) コールバック 下位階層のソフトウェアから,上位階層のソフトウェアを呼び出すインタフェー スをコールバック(callback)と呼ぶ. (3) 静的API オブジェクトの生成情報や初期状態などを定義するために,システムコンフィ ギュレーションファイル中に記述するインタフェースを,静的API(static API)と呼ぶ. (4) 構成マクロ 下位階層のソフトウェアに関する各種の情報を取り出すために,上位階層のソ フトウェアが用いるマクロを,構成マクロ(configuration macro)と呼ぶ. 2.2.2 パラメータとリターンパラメータ サービスコールやコールバックに渡すデータをパラメータ(parameter),それ らが返すデータをリターンパラメータ(return parameter)と呼ぶ.また,静 的APIに渡すデータもパラメータと呼ぶ. オブジェクトを生成するサービスコールなど,パラメータの数が多い場合やター ゲット定義のパラメータを追加する可能性がある場合には,複数のパラメータ を1つの構造体に入れ,その領域へのポインタをパラメータとして渡す 【NGKI0007】.また,パラメータのサイズが大きい場合にも,パラメータを入 れた領域へのポインタをパラメータとして渡す場合がある【NGKI0008】. C言語APIでは,リターンパラメータは,関数の返値とするか,リターンパラメー タを入れる領域へのポインタをパラメータとして渡すことで実現する 【NGKI0009】.オブジェクトの状態を参照するサービスコールなど,リターン パラメータの数が多い場合やターゲット定義のリターンパラメータを追加する 14 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 可能性がある場合には,複数のリターンパラメータを1つの構造体に入れて返す こととし,その領域へのポインタをパラメータとして渡す【NGKI0010】. 複数のパラメータまたはリターンパラメータを入れるための構造体を,パケッ ト(packet)と呼ぶ. サービスコールやコールバックに,パケットを置く領域へのポインタやリター ンパラメータを入れる領域へのポインタを渡す場合,別に規定がない限りは, サービスコールやコールバックの処理が完了した後は,それらの領域が参照さ れることはなく,別の目的に使用できる【NGKI0011】. 2.2.3 返値とエラーコード 一部の例外を除いて,サービスコールおよびコールバックの返値は,処理が正 常終了したかを表す符号付き整数とする.処理が正常終了した場合には,E_OK (=0)または正の値が返るものとし,値の意味はサービスコールまたはコール バック毎に定める【NGKI0012】.処理が正常終了しなかった場合には,その原 因を表す負の値が返る【NGKI0013】.処理が正常終了しなかった原因を表す値 を,エラーコード(error code)と呼ぶ. エラーコードは,いずれも負の値のメインエラーコードとサブエラーコードで 構成される【NGKI0014】.メインエラーコードとサブエラーコードからエラー コードを構成するマクロ(ERCD)と,エラーコードからメインエラーコードを 取り出すマクロ(MERCD),サブエラーコードを取り出すマクロ(SERCD)が用 意されている【NGKI0015】. メインエラーコードの名称・意味・値は,カーネルとシステムサービスで共通 に定める(「2.14.4 TOPPERS共通エラーコード」の節を参照)【NGKI0016】. サービスコールおよびコールバックの機能説明中の「E_XXXXXエラーとなる」ま たは「E_XXXXXエラーが返る」という記述は,メインエラーコードとして E_XXXXX が返ることを意味する. サブエラーコードは,エラーの原因をより詳細に表すために用いる.カーネル はサブエラーコードを使用せず,サブエラーコードとして常に-1が返る 【NGKI0017】.サブエラーコードの名称・意味・値は,サブエラーコードを使 用するシステムサービスのAPI仕様において規定する【NGKI0018】. サービスコールが負の値のエラーコード(警告を表すものを除く)を返した場 合には,サービスコールによる副作用がないのが原則である【NGKI0019】.た だし,そのような実装ができない場合にはこの原則の例外とし,サービスコー ルの機能説明にその旨を記述する【NGKI0020】. サービスコールが複数のエラーを検出するべき状況では,その内のいずれか1つ のエラーを示すエラーコードが返る【NGKI0021】. コールバックが複数のエラーを検出するべき状況では,その内のいずれか1つの エラーを示すエラーコードを返せばよい【NGKI0022】. なお,静的APIは返値を持たない.静的APIの処理でエラーが検出された場合の 扱いについては,「2.12.5 コンフィギュレータの処理モデル」の節および 15 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 「2.12.6 静的APIのパラメータに関するエラー検出」の節を参照すること. 2.2.4 機能コード ソフトウェア割込みによりサービスコールを呼び出す場合などに用いるための サービスコールを識別するための番号を,機能コード(function code)と呼ぶ. 機能コードは符号付きの整数値とし,カーネルのサービスコールには負の値を 割り付け,拡張サービスコールには正の値を用いる【NGKI0023】. 2.2.5 ヘッダファイル カーネルやシステムサービスを用いるために必要な定義を含むファイル. ヘッダファイルは,原則として,複数回インクルードしてもエラーにならない ように対処されている.具体的には,ヘッダファイルの先頭で特定の識別子 (例えば,kernel.hなら"TOPPERS_KERNEL_H")がマクロ定義され,ヘッダファ イルの内容全体をその識別子が定義されていない場合のみ有効とする条件ディ レクティブが付加されている【NGKI0024】. 2.3 主な概念 2.3.1 オブジェクトと処理単位 (1) オブジェクト カーネルまたはシステムサービスが管理対象とするソフトウェア資源を,オブ ジェクト(object)と呼ぶ.特に,カーネルが管理対象とするソフトウェア資 源を,カーネルオブジェクト(kernel object)と呼ぶ. オブジェクトは,種類毎に,番号によって識別する【NGKI0025】.カーネルま たはシステムサービスで,オブジェクトに対して任意に識別番号を付与できる 場合には,1から連続する正の整数値でオブジェクトを識別するのを原則とする 【NGKI0026】.この場合に,オブジェクトの識別番号を,オブジェクトのID番 号(ID number)と呼ぶ.そうでない場合,すなわちカーネルまたはシステムサー ビスの内部または外部からの条件によって識別番号が決まる場合には,オブジェ クトの識別番号を,オブジェクト番号(object number)と呼ぶ.識別する必要 のないオブジェクトには,識別番号を付与しない場合がある【NGKI0027】. オブジェクト属性(object attribute)は,オブジェクトの動作モードや初期 状態を定めるもので,オブジェクトの登録時に指定する【NGKI0028】.オブジェ クト属性にTA_XXXXが指定されている場合,そのオブジェクトを,TA_XXXX属性 のオブジェクトと呼ぶ.複数の属性を指定する場合には,オブジェクト属性を 渡すパラメータに,指定する属性値のビット毎論理和(C言語の"|")を渡す 【NGKI0029】.また,指定すべきオブジェクト属性がない場合には,TA_NULLを 指定する【NGKI0030】. (2) 処理単位 オブジェクトの中には,プログラムが対応付けられるものがある.プログラム が対応付けられるオブジェクト(または,対応付けられるプログラム)を,処 16 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 理単位(processing unit)と呼ぶ.処理単位に対応付けられるプログラムは, アプリケーションまたはシステムサービスで用意し,カーネルが実行制御する. 処理単位の実行を要求することを起動(activate),処理単位の実行を開始す ることを実行開始(start)と呼ぶ. 拡張情報(extended information)は,処理単位が呼び出される時にパラメー タとして渡される情報で,処理単位の登録時に指定する【NGKI0031】.拡張情 報は,カーネルやシステムサービスの動作には影響しない【NGKI0032】. (3) タスク カーネルが実行順序を制御するプログラムの並行実行の単位をタスク(task) と呼ぶ.タスクは,処理単位の1つである. サービスコールの機能説明において,サービスコールを呼び出したタスクを, 自タスク(invoking task)と呼ぶ.拡張サービスコールからサービスコールを 呼び出した場合には,拡張サービスコールを呼び出したタスクが自タスクであ る. カーネルには,静的APIにより,少なくとも1つのタスクを登録しなければなら ない.タスクが登録されていない場合には,コンフィギュレータがエラーを報 告する【NGKI0033】. 【補足説明】 タスクが呼び出した拡張サービスコールが実行されている間は,「サービスコー ルを呼び出した処理単位」は拡張サービスコールであり,「自タスク」とは一 致しない.そのため,保護機能対応カーネルにおいて,「サービスコールを呼 び出した処理単位の属する保護ドメイン」と「自タスクの属する保護ドメイン」 は,異なるものを指す. (4) ディスパッチとスケジューリング プロセッサが実行するタスクを切り換えることを,タスクディスパッチまたは 単にディスパッチ(dispatching)と呼ぶ.それに対して,次に実行すべきタス クを決定する処理を,タスクスケジューリングまたは単にスケジューリング (scheduling)と呼ぶ. ディスパッチが起こるべき状態(すなわち,スケジューリングによって,現在 実行しているタスクとは異なるタスクが,実行すべきタスクに決定されている 状態)となっても,何らかの理由でディスパッチを行わないことを,ディスパッ チの保留(pend dispatching)という.ディスパッチを行わない理由が解除さ れた時点で,ディスパッチが起こる【NGKI0034】. (5) 割込みとCPU例外 プロセッサが実行中の処理とは独立に発生するイベントによって起動される例 外処理のことを,外部割込みまたは単に割込み(interrupt)と呼ぶ.それに対 して,プロセッサが実行中の処理に依存して起動される例外処理を,CPU例外 17 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 (CPU exception)と呼ぶ. 周辺デバイスからの割込み要求をプロセッサに伝える経路を遮断し,割込み要 求が受け付けられるのを抑止することを,割込みのマスク(mask interrupt) または割込みの禁止(disable interrupt)という.マスクが解除された時点で, まだ割込み要求が保持されていれば,その時点で割込み要求を受け付ける 【NGKI0035】. マスクすることができない割込みを,NMI(non-maskable interrupt)と呼ぶ. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様において,未定義のまま使われていた割込みとCPU例外という用 語を定義した. (6) タイムイベントとタイムイベントハンドラ 時間の経過をきっかけに発生するイベントをタイムイベント(time event)と 呼ぶ.タイムイベントにより起動され,カーネルが実行制御する処理単位を, タイムイベントハンドラ(time event handler )と呼ぶ. 2.3.2 サービスコールとパラメータ (1) 優先順位と優先度 優先順位(precedence)とは,処理単位の実行順序を説明するための仕様上の 概念である.複数の処理単位が実行できる場合には,その中で最も優先順位の 高い処理単位が実行される【NGKI0036】. 優先度(priority)は,タスクなどの処理単位の優先順位や,メッセージなど の配送順序を決定するために,アプリケーションが処理単位やメッセージなど に与える値である.優先度は,符号付きの整数型であるPRI型で表し,1から連 続した正の値を用いるのを原則とする【NGKI0037】.優先度は,値が小さいほ ど優先度が高い(すなわち,先に実行または配送される)ものとする 【NGKI0038】. (2) システム時刻と相対時間 カーネルが管理する時刻を,システム時刻(system time)と呼ぶ.システム時 刻は,符号無しの整数型であるSYSTIM型で表し,単位はミリ秒とする 【NGKI0039】.システム時刻は,タイムティック(time tick)を通知するため のタイマ割込みが発生する毎に更新される【NGKI0040】. イベントを発生させる時刻を指定する場合には,基準時刻(base time)からの 相対時間(relative time)によって指定する【NGKI0041】.基準時刻は,別に 規定がない限りは,相対時間を指定するサービスコールを呼び出した時刻とな る【NGKI0042】. 相対時間は,符号無しの整数型であるRELTIM型で表し,単位はシステム時刻と 同一,すなわちミリ秒とする【NGKI0043】.相対時間には,少なくとも,16ビッ 18 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 トの符号無しの整数型(uint16_t型)に格納できる任意の値を指定することが できるが,RELTIM型(uint_t型に定義される)に格納できる任意の値を指定で きるとは限らない【NGKI0044】.相対時間に指定できる最大値は,構成マクロ TMAX_RELTIM に定義されている【NGKI0045】. イベントを発生させる時刻を相対時間で指定した場合,イベントの処理が行わ れるのは,基準時刻から相対時間によって指定した以上の時間が経過した後と なる【NGKI0046】.ただし,基準時刻を定めるサービスコールを呼び出した時 に,タイムティックを通知するためのタイマ割込みがマスクされている場合 (タイマ割込みより優先して実行される割込み処理が実行されている場合を含 む)は,相対時間によって指定した以上の時間が経過した後となることは保証 されない【NGKI0047】. イベントが発生する時刻を参照する場合には,基準時刻からの相対時間として 返される【NGKI0048】.基準時刻は,相対時間を返すサービスコールを呼び出 した時刻となる【NGKI0049】. イベントが発生する時刻が相対時間で返された場合,イベントの処理が行われ るのは,基準時刻から相対時間として返された以上の時間が経過した後となる 【NGKI0050】.ただし,相対時間を返すサービスコールを呼び出した時に,タ イムティックを通知するためのタイマ割込みがマスクされている場合(タイマ 割込みより優先して実行される割込み処理が実行されている場合を含む)は, 相対時間として返された以上の時間が経過した後となることは保証されない 【NGKI0051】. 【補足説明】 相対時間に0を指定した場合,基準時刻後の最初のタイムティックでイベントの 処理が行われる.また,1を指定した場合,基準時刻後の2回目以降のタイム ティックでイベントの処理が行われる.これは,基準時刻後の最初のタイム ティックは,基準時刻の直後に発生する可能性があるため,ここでイベントの 処理を行うと,基準時刻からの経過時間が1以上という仕様を満たせないためで ある. 同様に,相対時間として0が返された場合,基準時刻後の最初のタイムティック でイベントの処理が行われる.また,1が返された場合,基準時刻後の2回目以 降のタイムティックでイベントの処理が行われる. 【μITRON4.0仕様との関係】 相対時間(RELTIM型)とシステム時刻(SYSTIM型)の時間単位は,μITRON4.0 仕様では実装定義としていたが,この仕様ではミリ秒と規定した.また,相対 時間の解釈について,より厳密に規定した. TMAX_RELTIM は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. (3) タイムアウトとポーリング サービスコールの中で待ち状態が指定した時間以上継続した場合に,サービス コールの処理を取りやめて,サービスコールからリターンすることを,タイム 19 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 アウト(timeout)という.タイムアウトしたサービスコールからは,E_TMOUT エラーが返る【NGKI0052】. タイムアウトを起こすまでの時間(タイムアウト時間)は,符号付きの整数型 であるTMO型で表し,単位はシステム時刻と同一,すなわちミリ秒とする 【NGKI0053】.タイムアウト時間に正の値を指定した場合には,タイムアウト を起こすまでの相対時間を表す【NGKI0054】.すなわち,タイムアウトの処理 が行われるのは,サービスコールを呼び出してから指定した以上の時間が経過 した後となる. ポーリング(polling)を行うサービスコールとは,サービスコールの中で待ち 状態に遷移すべき状況になった場合に,サービスコールの処理を取りやめてリ ターンするサービスコールのことをいう.ここで,サービスコールの処理を取 りやめてリターンすることを,ポーリングに失敗したという.ポーリングに失 敗したサービスコールからは,E_TMOUTエラーが返る【NGKI0055】. ポーリングを行うサービスコールでは,待ち状態に遷移することはないのが原 則である【NGKI0056】.そのため,ポーリングを行うサービスコールは,ディ スパッチ保留状態であっても呼び出せる【NGKI0057】.ただし,サービスコー ルの中で待ち状態に遷移する状況が複数ある場合,ある状況でポーリング動作 をしても,他の状況では待ち状態に遷移する場合がある.このような場合の振 舞いは,該当するサービスコール毎に規定する【NGKI0058】. タイムアウト付きのサービスコールは,別に規定がない限りは,タイムアウト 時間にTMO_POL(=0)を指定した場合にはポーリングを行い,TMO_FEVR(=-1) を指定した場合にはタイムアウトを起こさないものとする【NGKI0059】. 【補足説明】 [NGKI0019]の原則より,サービスコールがタイムアウトした場合やポーリン グに失敗した場合には,サービスコールによる副作用がないのが原則である. ただし,そのような実装ができない場合にはこの原則の例外とし,どのような 副作用があるかをサービスコール毎に規定する. タイムアウト付きのサービスコールを,タイムアウト時間をTMO_POLとして呼び 出した場合には,ディスパッチ保留状態で呼び出すとE_CTXエラーとなることを 除いては,ポーリングを行うサービスコールと同じ振舞いをする.また,タイ ムアウト時間をTMO_FEVRとして呼び出した場合には,タイムアウトなしのサー ビスコールと全く同じ振舞いをする. 【μITRON4.0仕様との関係】 タイムアウト時間(TMO型)の時間単位は,μITRON4.0仕様では実装定義として いたが,この仕様ではミリ秒と規定した. 【仕様決定の理由】 ディスパッチ保留状態において,ポーリングを行うサービスコールを呼び出せ る場合があるのに対して,タイムアウト付きのサービスコールをタイムアウト 時間をTMO_POLとして呼び出すとエラーになるのは,ディスパッチ保留状態では, 20 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 別に規定がない限り,自タスクを広義の待ち状態に遷移させる可能性のあるサー ビスコール(タイムアウト付きのサービスコールはこれに該当)を呼び出すこ とはできないと規定されているためである. (4) ノンブロッキング サービスコールの中で待ち状態に遷移すべき状況になった時,サービスコール の処理を継続したままサービスコールからリターンする場合,そのサービスコー ルをノンブロッキング(non-blocking)という.処理を継続したままリターン する場合,サービスコールからはE_WBLKエラーが返る【NGKI0060】.E_WBLKは 警告を表すエラーコードであり,サービスコールによる副作用がないという原 則は適用されない【NGKI0061】. サービスコールからE_WBLKエラーが返った場合には,サービスコールの処理は 継続しているため,サービスコールに渡したパラメータまたはリターンパラメー タを入れる領域はまだ参照される可能性があり,別の目的に使用することはで きない【NGKI0062】.継続している処理が完了した場合や,何らかの理由で処 理が取りやめられた場合には,コールバックを呼び出すなどの方法で,サービ スコールを呼び出したソフトウェアに通知するものとする【NGKI0063】. ノンブロッキングの指定は,タイムアウト時間にTMO_NBLK(=-2)を指定する ことによって行う【NGKI0064】.ノンブロッキングの指定を行えるサービスコー ルは,指定した場合の振舞いをサービスコール毎に規定する【NGKI0065】. 【補足説明】 ノンブロッキングは,システムサービスでサポートすることを想定した機能で ある.カーネルは,ノンブロッキングの指定を行えるサービスコールをサポー トしていない. 2.3.3 保護機能 この節では,保護機能に関連する主な概念について説明する.この節の内容は, 保護機能対応カーネルにのみ適用される. (1) アクセス保護 保護機能対応カーネルは,処理単位が,許可されたカーネルオブジェクトに対 して,許可された種別のアクセスを行うことのみを許し,それ以外のアクセス を防ぐアクセス保護機能を提供する【NGKI0066】. アクセス制御の用語では,処理単位が主体(subject),カーネルオブジェクト が対象(object)ということになる. (2) メモリオブジェクト 保護機能対応カーネルにおいては,メモリ領域をカーネルオブジェクトとして 扱い,アクセス保護の対象とする【NGKI0067】.カーネルがアクセス保護の対 象とする連続したメモリ領域を,メモリオブジェクト(memory object)と呼ぶ. メモリオブジェクトは,互いに重なりあうことはない【NGKI0068】. 21 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 メモリオブジェクトは,その先頭番地によって識別する【NGKI0069】.言い換 えると,先頭番地がオブジェクト番号となる. メモリオブジェクトの先頭番地とサイズには,ターゲットハードウェアでメモ リ保護が実現できるように,ターゲット定義の制約が課せられる【NGKI0070】. (3) 保護ドメイン 保護機能を提供するために用いるカーネルオブジェクトの集合を,保護ドメイ ン(protection domain)と呼ぶ.保護ドメインは,保護ドメインIDと呼ぶID番 号によって識別する【NGKI0071】. カーネルオブジェクトは,たかだか1つの保護ドメインに属する.処理単位は, いずれか1つの保護ドメインに属さなければならないのに対して,それ以外のカー ネルオブジェクトは,いずれの保護ドメインにも属さないことができる 【NGKI0072】.いずれの保護ドメインにも属さないカーネルオブジェクトを, 無所属のカーネルオブジェクト(independent kernel object)と呼ぶ. 処理単位がカーネルオブジェクトにアクセスできるかどうかは,処理単位が属 する保護ドメインにより決まるのが原則である【NGKI0073】.すなわち,カー ネルオブジェクトに対するアクセス権は,処理単位ではなく,保護ドメイン単 位で管理される.このことから,ある保護ドメインに属する処理単位がアクセ スできることを,単に,その保護ドメインからアクセスできるという. ただし,タスクのユーザスタック領域は,ターゲット定義での変更がない限り は,そのタスク(とカーネルドメインに属する処理単位)のみがアクセスでき る(「2.11.6 ユーザタスクのユーザスタック領域」の節を参照)【NGKI0074】. これは,[NGKI0073]の原則の例外となっている. デフォルトでは,保護ドメインに属するカーネルオブジェクトは,同じ保護ド メイン(とカーネルドメイン)のみからアクセスできる【NGKI0075】.また, 無所属のカーネルオブジェクトは,すべての保護ドメインからアクセスできる 【NGKI0076】. (4) カーネルドメインとユーザドメイン システムには,カーネルドメイン(kernel domain)と呼ばれる保護ドメインが 1つ存在する【NGKI0077】.カーネルドメインに属する処理単位は,プロセッサ の特権モードで実行される【NGKI0078】.また,すべてのカーネルオブジェク トに対して,すべての種別のアクセスを行うことが許可される【NGKI0079】. この仕様で,「ある保護ドメイン(またはタスク)のみからアクセスできる」 といった場合でも,カーネルドメインドメインからはアクセスすることができ る. カーネルドメイン以外の保護ドメインを,ユーザドメイン(user domain)と呼 ぶ.ユーザドメインに属する処理単位は,プロセッサの非特権モードで実行さ れる【NGKI0080】.また,どのカーネルオブジェクトに対してどの種別のアク セスを行えるかを制限することができる【NGKI0081】. 22 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122 1123 1124 1125 1126 1127 1128 1129 1130 1131 1132 1133 1134 1135 1136 1137 1138 1139 1140 1141 1142 1143 1144 1145 1146 1147 1148 1149 1150 ユーザドメインには,1から連続する正の整数値の保護ドメインIDが付与される 【NGKI0082】.カーネルドメインの保護ドメインIDは,TDOM_KERNEL(=-1)で ある【NGKI0083】. この仕様では,システムに登録できるユーザドメインの数は,32個以下に制限 する【NGKI0084】.これを超える数のユーザドメインを登録した場合には,コ ンフィギュレータがエラーを報告する【NGKI0085】. 【補足説明】 ユーザドメインは,システムコンフィギュレーションファイル中にユーザドメ インの囲みを記述することで,カーネルに登録する(「2.12.3 保護ドメインの 指定」の節を参照).ユーザドメインを動的に生成する機能は,現時点では用 意していない. 保護機能対応でないカーネルは,カーネルドメインのみをサポートしていると みなすこともできる. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様のシステムドメイン(system domain)は,現時点ではサポー トしない.システムドメインは,それに属する処理単位が,プロセッサの特権 モードで実行され,カーネルオブジェクトに対するアクセスを制限することが できる保護ドメインである. (5) システムタスクとユーザタスク カーネルドメインに属するタスクをシステムタスク(system task),ユーザド メインに属するタスクをユーザタスク(user task)と呼ぶ. 【補足説明】 特権モードで実行されるタスクをシステムタスク,非特権モードで実行される タスクをユーザタスクと定義する方法もあるが,ユーザタスクであっても,サー ビスコールの実行中は特権モードで実行されるため,上記の定義とした. μITRON4.0/PX仕様のシステムドメインに属するタスクは,システムタスクと呼 ぶことになる. (6) アクセス許可パターン あるカーネルオブジェクトに対するある種別のアクセスが,どの保護ドメイン に属する処理単位に許可されているかを表現するビットパターンを,アクセス 許可パターン(access permission pattern )と呼ぶ.アクセス許可パターンの 各ビットは,1つのユーザドメインに対応する【NGKI0086】.カーネルドメイン には,すべてのアクセスが許可されているため,カーネルドメインに対応する ビットは用意されていない. アクセス許可パターンは,符号無し32ビット整数に定義されるデータ型 (ACPTN)で保持し,値が1のビットに対応するユーザドメインにアクセスが許 23 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1151 1152 1153 1154 1155 1156 1157 1158 1159 1160 1161 1162 1163 1164 1165 1166 1167 1168 1169 1170 1171 1172 1173 1174 1175 1176 1177 1178 1179 1180 1181 1182 1183 1184 1185 1186 1187 1188 1189 1190 1191 1192 1193 1194 1195 1196 1197 1198 1199 1200 可されていることを表す【NGKI0087】.そのため,2つのアクセス許可パターン のビット毎論理和(C言語の"|")を求めることで,アクセスを許可されている ユーザドメインの和集合(union)を得ることができる.また,2つのアクセス 許可パターンのビット毎論理積(C言語の"&")を求めることで,アクセスを許 可されているユーザドメインの積集合(intersection)を得ることができる. アクセス許可パターンの指定に用いるために,指定したユーザドメインのみに アクセスを許可することを示すアクセス許可パターンを構成するマクロ(TACP) が用意されている【NGKI0088】.また,カーネルドメインのみにアクセスを許 可することを示すアクセス許可パターンを表す定数(TACP_KERNEL)と,すべて の保護ドメインにアクセスを許可することを示すアクセス許可パターンを表す 定数(TACP_SHARED)が用意されている【NGKI0089】. (7) アクセス許可ベクタ カーネルオブジェクトに対するアクセスは,カーネルオブジェクトの種類毎に, 通常操作1,通常操作2,管理操作,参照操作の4つの種別に分類されている 【NGKI0090】.あるカーネルオブジェクトに対する4つの種別のアクセスに関す るアクセス許可パターンをひとまとめにしたものを,アクセス許可ベクタ (access permission vector )と呼び,次のように定義されるデータ型 (ACVCT)で保持する【NGKI0091】. typedef struct acvct { ACPTN acptn1; /* 通常操作1のアクセス許可パターン */ ACPTN acptn2; /* 通常操作2のアクセス許可パターン */ ACPTN acptn3; /* 管理操作のアクセス許可パターン */ ACPTN acptn4; /* 参照操作のアクセス許可パターン */ } ACVCT; 【補足説明】 カーネルオブジェクトの種類毎のアクセスの種別の分類については,「5.8 カー ネルオブジェクトに対するアクセスの種別」の節を参照すること. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様では,アクセス許可ベクタを,1つまたは2つのアクセス許可 パターンで構成することも許しているが,この仕様では4つで構成するものと決 めている. (8) サービスコールの呼出し方法 保護機能対応カーネルでは,サービスコールは,ソフトウェア割込みによって 呼び出すのが基本である.サービスコール呼出しを通常の方法で記述した場合, ソフトウェア割込みによって呼び出すコードが生成される【NGKI0092】. 一般に,ソフトウェア割込みによるサービスコール呼出しはオーバヘッドが大 きい.そのため,カーネルドメインに属する処理単位からは,関数呼出しによっ てサービスコールを呼び出すことで,オーバヘッドを削減することができる. そこで,カーネルドメインに属する処理単位から関数呼出しによってサービス 24 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1201 1202 1203 1204 1205 1206 1207 1208 1209 1210 1211 1212 1213 1214 1215 1216 1217 1218 1219 1220 1221 1222 1223 1224 1225 1226 1227 1228 1229 1230 1231 1232 1233 1234 1235 1236 1237 1238 1239 1240 1241 1242 1243 1244 1245 1246 1247 1248 1249 1250 コールを呼び出せるように,以下の機能が用意されている. カーネルドメインに属する処理単位が実行する関数のみを含んだソースファイ ルでは,カーネルヘッダファイル(kernel.h)をインクルードする前に, TOPPERS_SVC_CALL をマクロ定義することで,サービスコール呼出しを通常の方 法で記述した場合に,関数呼出しによって呼び出すコードが生成される 【NGKI0093】. また,カーネルドメインに属する処理単位が実行する関数と,ユーザドメイン に属する処理単位が実行する関数の両方を含んだソースファイルでは,関数呼 出しによってサービスコールを呼び出すための名称を作るマクロ(SVC_CALL) を用いることで,関数呼出しによって呼び出すコードが生成される 【NGKI0094】.例えば,act_tskを関数呼出しによって呼び出す場合には,次の ように記述すればよい. ercd = SVC_CALL(act_tsk)(tskid); 【補足説明】 拡張サービスコールを,関数呼出しによって呼び出す方法は用意されていない. カーネルドメインに属する処理単位が,関数呼出しによって,拡張サービスコー ルとして登録した関数を呼び出すことはできるが,その場合には,処理単位が 呼び出した通常の関数であるとみなされ,拡張サービスコールであるとは扱わ れない. 2.3.4 マルチプロセッサ対応 この節では,マルチプロセッサ対応に関連する主な概念について説明する.こ の節の内容は,マルチプロセッサ対応カーネルにのみ適用される. (1) クラス マルチプロセッサに対応するために用いるカーネルオブジェクトの集合を,ク ラス(class)と呼ぶ.クラスは,クラスIDと呼ぶID番号によって識別する 【NGKI0095】. カーネルオブジェクトは,いずれか1つのクラスに属するのが原則である 【NGKI0096】.カーネルオブジェクトが属するクラスは,オブジェクトの登録 時に決定し,登録後に変更することはできない【NGKI0097】. 【補足説明】 処理単位を実行するプロセッサを静的に決定する機能分散型のマルチプロセッ サシステムでは,プロセッサ毎にクラスを設ける方法が典型的である.それに 対して,対称型のマルチプロセッサシステムで,処理単位のマイグレーション を許す場合には,プロセッサ毎のクラスに加えて,どのプロセッサでも実行で きるクラスを(システム中に1つまたは初期割付けプロセッサ毎に)設ける方法 が典型的である. [NGKI0096]の原則に関わらず,以下のオブジェクトはいずれのクラスにも属 25 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1251 1252 1253 1254 1255 1256 1257 1258 1259 1260 1261 1262 1263 1264 1265 1266 1267 1268 1269 1270 1271 1272 1273 1274 1275 1276 1277 1278 1279 1280 1281 1282 1283 1284 1285 1286 1287 1288 1289 1290 1291 1292 1293 1294 1295 1296 1297 1298 1299 1300 さない. ・オーバランハンドラ ・拡張サービスコール ・グローバル初期化ルーチン ・グローバル終了処理ルーチン マルチプロセッサ対応でないカーネルは,カーネルによって規定された1つのク ラスのみをサポートしているとみなすこともできる. (2) プロセッサ たかだか1つの処理単位のみを同時に実行できるハードウェアの単位を,プロセッ サ(processor)と呼ぶ.プロセッサは,プロセッサIDと呼ぶID番号によって識 別する【NGKI0098】. 複数のプロセッサを持つシステム構成をマルチプロセッサ(multiprocessor) と呼び,同時に複数の処理単位を実行することができる【NGKI0099】. システムの初期化時と終了時に特別な役割を果たすプロセッサを,マスタプロ セッサ(master processor)と呼び,システムに1つ存在する【NGKI0100】.ど のプロセッサをマスタプロセッサとするかは,ターゲット定義である 【NGKI0101】.マスタプロセッサ以外のプロセッサを,スレーブプロセッサ (slave processor)と呼ぶ.なお,カーネル動作状態では,マスタプロセッサ とスレーブプロセッサの振舞いに違いはない【NGKI0102】. (3) 処理単位の割付けとマイグレーション 処理単位は,後述のマイグレーションが発生しない限りは,いずれか1つのプロ セッサに割り付けられて実行される【NGKI0103】.処理単位を実行するプロセッ サを,割付けプロセッサと呼ぶ.また,処理単位が登録時に割り付けられるプ ロセッサを,初期割付けプロセッサと呼ぶ. 処理単位によっては,処理単位の登録後に,割付けプロセッサを変更すること が可能である【NGKI0104】.処理単位の登録後に割付けプロセッサを変更する ことを,処理単位のマイグレーション(migration)と呼ぶ. 割付けプロセッサを変更できる処理単位に対しては,処理単位を割り付けるこ とができるプロセッサ(これを,割付け可能プロセッサと呼ぶ)を制限するこ とができる【NGKI0105】. (4) クラスの持つ属性とカーネルオブジェクト タスクの初期割付けプロセッサや割付け可能プロセッサなど,カーネルオブジェ クトをマルチプロセッサ上で実現する際に設定すべき属性は,そのカーネルオ ブジェクトが属するクラスによって定まる. 各クラスが持ち,それに属するカーネルオブジェクトに適用される属性は,次 の通りである【NGKI0106】. 26 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1301 1302 1303 1304 1305 1306 1307 1308 1309 1310 1311 1312 1313 1314 1315 1316 1317 1318 1319 1320 1321 1322 1323 1324 1325 1326 1327 1328 1329 1330 1331 1332 1333 1334 1335 1336 1337 1338 1339 1340 1341 1342 1343 1344 1345 1346 1347 1348 1349 1350 ・初期割付けプロセッサ ・割付け可能プロセッサ(複数のプロセッサを指定可能,初期割付けプロセッ サを含む) ・ATT_MOD/ATA_MODによって,オブジェクトモジュールに含まれる標準のセ クションが配置されるメモリリージョン(標準メモリリージョン) ・オブジェクト生成に必要なメモリ領域(オブジェクトの管理ブロック,タ スクのスタック領域やデータキューのデータキュー管理領域など)の配置 場所 ・その他の管理情報(ロック単位など) 使用できるクラスのID番号とその属性は,ターゲット定義である【NGKI0107】. 【仕様決定の理由】 クラスを導入することで,カーネルオブジェクト毎に上記の属性を設定できる ようにしなかったのは,これらの属性をアプリケーション設計者が個別に設定 するよりも,ターゲット依存部の実装者が有益な組み合わせをあらかじめ用意 しておく方が良いと考えたためである. (5) ローカルタイマ方式とグローバルタイマ方式 システム時刻の管理方式として,プロセッサ毎にシステム時刻を持つローカル タイマ方式と,システム全体で1つのシステム時刻を持つグローバルタイマ方式 の2つの方式がある.どちらの方式を用いることができるかは,ターゲット定義 である【NGKI0108】. ローカルタイマ方式では,プロセッサ毎のシステム時刻は,それぞれのプロセッ サが更新する【NGKI0109】.異なるプロセッサのシステム時刻を同期させる機 能は,カーネルでは用意しない. グローバルタイマ方式では,システム中の1つのプロセッサがシステム時刻を更 新する【NGKI0110】.これを,システム時刻管理プロセッサと呼ぶ.どのプロ セッサをシステム時刻管理プロセッサとするかは,ターゲット定義である 【NGKI0111】. 【補足説明】 システム時刻管理プロセッサが,マスタプロセッサと一致している必要はない. 【未決定事項】 ローカルタイマ方式の場合に,プロセッサ毎に異なるタイムティックの周期を 設定したい場合が考えられるが,現時点の実装ではサポートしておらず, TIC_NUME とTIC_DENOの扱いも未決定であるため,今後の課題とする. 2.3.5 その他 (1) オブジェクトモジュール プログラムのオブジェクトコードとデータを含むファイルを,オブジェクトモ 27 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1351 1352 1353 1354 1355 1356 1357 1358 1359 1360 1361 1362 1363 1364 1365 1366 1367 1368 1369 1370 1371 1372 1373 1374 1375 1376 1377 1378 1379 1380 1381 1382 1383 1384 1385 1386 1387 1388 1389 1390 1391 1392 1393 1394 1395 1396 1397 1398 1399 1400 ジュール(object module)と呼ぶ.オブジェクトファイルとライブラリは,オ ブジェクトモジュールである. (2) メモリリージョン オブジェクトモジュールに含まれるセクションの配置対象となる同じ性質を持っ た連続したメモリ領域をメモリリージョン(memory region)と呼ぶ. メモリリージョンは,文字列によって識別する【NGKI0112】.メモリリージョ ンを識別する文字列を,メモリリージョン名と呼ぶ. 【補足説明】 この仕様では,メモリ領域(memory area)という用語は,連続したメモリの範 囲という一般的な意味で使っている. (3) 標準のセクション コンパイラに特別な指定をしない場合に出力するセクションを,標準のセクショ ン(standard sections)と呼ぶ.コンパイラが出力しないセクションの中で, ターゲット定義のものを,標準のセクションと扱う場合もある【NGKI0113】. (4) 保護ドメイン毎の標準セクション 保護機能対応カーネルにおいては,保護ドメイン毎に,標準のセクションを配 置するためのセクションが登録される【NGKI0114】.また,無所属の標準のセ クションを配置するためのセクションが登録される【NGKI0115】.これらのセ クションを,保護ドメイン毎の標準セクションと呼ぶ(standard sections for each protection domain ).保護ドメイン毎の標準セクションのセクショ ン名は,ターゲット定義で別に規定がない限りは,標準のセクション名と保護 ドメイン名(カーネルドメインの場合は"kernel",無所属の場合は"shared") を"_"でつないだものとする【NGKI0116】.例えば,カーネルドメインの ".text" セクションのセクション名は,".text_kernel" とする. 2.4 処理単位の種類と実行順序 2.4.1 処理単位の種類 カーネルが実行を制御する処理単位の種類は次の通りである【NGKI0117】. (a) タスク (a.1) タスク例外処理ルーチン (b) 割込みハンドラ (b.1) 割込みサービスルーチン (b.2) タイムイベントハンドラ (c) CPU 例外ハンドラ (d) 拡張サービスコール (e) 初期化ルーチン (f) 終了処理ルーチン 28 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1401 1402 1403 1404 1405 1406 1407 1408 1409 1410 1411 1412 1413 1414 1415 1416 1417 1418 1419 1420 1421 1422 1423 1424 1425 1426 1427 1428 1429 1430 1431 1432 1433 1434 1435 1436 1437 1438 1439 1440 1441 1442 1443 1444 1445 1446 1447 1448 1449 1450 ここで,タイムイベントハンドラとは,時間の経過をきっかけに起動される処 理単位である周期ハンドラ,アラームハンドラ,オーバランハンドラの総称で ある. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,オーバランハンドラと拡張サービスコールをサポートしてい ない【ASPS0003】.ただし,オーバランハンドラ機能拡張パッケージを用いる と,オーバランハンドラ機能を追加することができる【ASPS0004】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,オーバランハンドラと拡張サービスコールをサポートしてい ない【FMPS0002】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,タスク例外処理ルーチン,タイムイベントハンドラ,拡張サー ビスコールをサポートしていない【SSPS0002】. 2.4.2 処理単位の実行順序 処理単位の実行順序を規定するために,ここでは,処理単位の優先順位を規定 する.また,ディスパッチが起こるタイミングを規定するために,ディスパッ チを行うカーネル内の処理であるディスパッチャの優先順位についても規定す る. タスクの優先順位は,ディスパッチャの優先順位よりも低い【NGKI0118】.タ スク間では,高い優先度を持つ方が優先順位が高く,同じ優先度を持つタスク 間では,先に実行できる状態となった方が優先順位が高い【NGKI0119】.詳し くは,「2.6.3 タスクのスケジューリング規則」の節を参照すること. タスク例外処理ルーチンの優先順位は,例外が要求されたタスクと同じである が,タスクよりも先に実行される【NGKI0120】. 割込みハンドラの優先順位は,ディスパッチャの優先順位よりも高い 【NGKI0121】.割込みハンドラ間では,高い割込み優先度を持つ方が優先順位 が高く,同じ割込み優先度を持つ割込みハンドラ間では,先に実行開始された 方が優先順位が高い【NGKI0122】.同じ割込み優先度を持つ割込みハンドラ間 での実行開始順序は,この仕様では規定しない.詳しくは,「2.7.2 割込み優 先度」の節を参照すること. 割込みサービスルーチンとタイムイベントハンドラの優先順位は,それを呼び 出す割込みハンドラと同じである【NGKI0123】. CPU例外ハンドラの優先順位は,CPU例外がタスクまたはタスク例外処理ルーチ ンで発生した場合には,ディスパッチャの優先順位と同じであるが,ディスパッ チャよりも先に実行される【NGKI0124】.CPU例外がその他の処理単位で発生し た場合には,CPU例外ハンドラの優先順位は,その処理単位の優先順位と同じで あるが,その処理単位よりも先に実行される【NGKI0125】. 29 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1451 1452 1453 1454 1455 1456 1457 1458 1459 1460 1461 1462 1463 1464 1465 1466 1467 1468 1469 1470 1471 1472 1473 1474 1475 1476 1477 1478 1479 1480 1481 1482 1483 1484 1485 1486 1487 1488 1489 1490 1491 1492 1493 1494 1495 1496 1497 1498 1499 1500 拡張サービスコールの優先順位は,それを呼び出した処理単位と同じであるが, それを呼び出した処理単位よりも先に実行される【NGKI0126】. 初期化ルーチンは,カーネルの動作開始前に,システムコンフィギュレーショ ンファイル中に初期化ルーチンを登録する静的APIを記述したのと同じ順序で実 行される【NGKI0127】.終了処理ルーチンは,カーネルの動作終了後に,終了 処理ルーチンを登録する静的APIを記述したのと逆の順序で実行される 【NGKI0128】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,初期化ルーチンには,クラスに属さない グローバル初期化ルーチンと,クラスに属するローカル初期化ルーチンがある 【NGKI0129】.グローバル初期化ルーチンがマスタプロセッサで実行された後 に,各プロセッサでローカル初期化ルーチンが実行される【NGKI0130】.また, 終了処理ルーチンには,クラスに属さないグローバル終了処理ルーチンと,ク ラスに属するローカル終了処理ルーチンがある【NGKI0131】.ローカル終了処 理ルーチンが各プロセッサで実行された後に,マスタプロセッサでグローバル 終了処理ルーチンが実行される【NGKI0132】. 【仕様決定の理由】 終了処理ルーチンを,登録する静的APIを記述したのと逆順で実行するのは,終 了処理は初期化の逆の順序で行うのがよいためである(システムコンフィギュ レーションファイルを分割すると,終了処理ルーチンを登録する静的APIだけ逆 順に記述するのは難しい). 2.4.3 カーネル処理の不可分性 カーネルのサービスコール処理やディスパッチャ,割込みハンドラとCPU例外ハ ンドラの入口処理と出口処理などのカーネル処理は不可分に実行されるのが基 本である.実際には,カーネル処理の途中でアプリケーションが実行される場 合はあるが,アプリケーションがサービスコールを用いて観測できる範囲で, カーネル処理が不可分に実行された場合と同様に振る舞うのが原則である 【NGKI0133】.これを,カーネル処理の不可分性という. ただし,マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,カーネル処理が実行され ているプロセッサ以外のプロセッサから,カーネル処理の途中の状態が観測で きる場合がある.具体的には,1つのサービスコールにより複数のオブジェクト の状態が変化する場合に,一部のオブジェクトの状態のみが変化し,残りのオ ブジェクトの状態が変化していない過渡的な状態が観測できる場合がある 【NGKI0134】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応でないカーネルでは,1つのサービスコールにより複数の タスクが実行できる状態になる場合,新しく実行状態となるべきタスクへのディ スパッチは,すべてのタスクの状態遷移が完了した後に行われる.例えば,低 優先度のタスクAが発行したサービスコールにより,中優先度のタスクBと高優 先度のタスクCがこの順で待ち解除される場合,タスクBとタスクCが待ち解除さ れた後に,タスクCへのディスパッチが行われる. 30 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1501 1502 1503 1504 1505 1506 1507 1508 1509 1510 1511 1512 1513 1514 1515 1516 1517 1518 1519 1520 1521 1522 1523 1524 1525 1526 1527 1528 1529 1530 1531 1532 1533 1534 1535 1536 1537 1538 1539 1540 1541 1542 1543 1544 1545 1546 1547 1548 1549 1550 マルチプロセッサ対応カーネルでは,上のことは,1つのプロセッサ内では成り 立つが,他のプロセッサに割り付けられたタスクに対しては成り立たない.例 えば,プロセッサ1で低優先度のタスクAが実行されている時に,他のプロセッ サ2で実行されているタスクが発行したサービスコールにより,プロセッサ1に 割り付けられた中優先度のタスクBと高優先度のタスクCがこの順で待ち解除さ れる場合,タスクCが待ち解除される前に,タスクBへディスパッチされる場合 がある. 2.4.4 処理単位を実行するプロセッサ マルチプロセッサ対応カーネルでは,処理単位を実行するプロセッサ(割付け プロセッサ)は,その処理単位が属するクラスの初期割付けプロセッサと割付 け可能プロセッサから,次のように決まる. タスク,周期ハンドラ,アラームハンドラは,登録時に,属するクラスの初期 割付けプロセッサに割り付けられる【NGKI0135】.また,割付けプロセッサを 変更するサービスコール(mact_tsk/imact_tsk,mig_tsk,msta_cyc, msta_alm /imsta_alm)によって,割付けプロセッサを,クラスの割付け可能プ ロセッサのいずれかに変更することができる【NGKI0136】. 割込みハンドラ,CPU例外ハンドラ,ローカル初期化ルーチン,ローカル終了処 理ルーチンは,属するクラスの初期割付けプロセッサで実行される 【NGKI0137】.クラスの割付け可能プロセッサの情報は用いられない. 割込みサービスルーチンは,属するクラスの割付け可能プロセッサのいずれか (オプション設定によりすべて)で実行される【NGKI0138】.クラスの初期割 付けプロセッサの情報は用いられない. 以上を整理すると,次の表の通りとなる.この表の中で,「○」はその情報が 使用されることを,「−」はその情報が使用されないことを示す. 初期割付けプロセッサ 割付け可能プロセッサ ---------------------------------------------------------------------タスク(タスク例外処理 ○ ○ ルーチンを含む) ---------------------------------------------------------------------割込みハンドラ ○ − 割込みサービスルーチン − ○ 周期ハンドラ ○ ○ アラームハンドラ ○ ○ ---------------------------------------------------------------------CPU例外ハンドラ ○ − ---------------------------------------------------------------------ローカル初期化ルーチン ○ − ローカル終了処理ルーチン ○ − ---------------------------------------------------------------------オーバランハンドラ,拡張サービスコール,グローバル初期化ルーチン,グロー バル終了処理ルーチンは,いずれのクラスにも属さない【NGKI0139】.オーバ 31 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1551 1552 1553 1554 1555 1556 1557 1558 1559 1560 1561 1562 1563 1564 1565 1566 1567 1568 1569 1570 1571 1572 1573 1574 1575 1576 1577 1578 1579 1580 1581 1582 1583 1584 1585 1586 1587 1588 1589 1590 1591 1592 1593 1594 1595 1596 1597 1598 1599 1600 ランハンドラは,オーバランを起こしたタスクの割付けプロセッサによって実 行される【NGKI0140】.拡張サービスコールは,それを呼び出した処理単位の 割付けプロセッサによって実行される【NGKI0141】.グローバル初期化ルーチ ンとグローバル終了処理ルーチンは,マスタプロセッサによって実行される 【NGKI0142】. 2.5 システム状態とコンテキスト 2.5.1 カーネル動作状態と非動作状態 カーネルの初期化が完了した後,カーネルの終了処理が開始されるまでの間を, カーネル動作状態と呼ぶ.それ以外の状態,すなわちカーネルの初期化完了前 (初期化ルーチンの実行中を含む)と終了処理開始後(終了処理ルーチンの実 行中を含む)を,カーネル非動作状態と呼ぶ.プロセッサは,カーネル動作状 態かカーネル非動作状態のいずれかの状態を取る【NGKI0143】. カーネル非動作状態では,原則として,NMIを除くすべての割込みがマスクされ る【NGKI0144】. カーネル非動作状態では,システムインタフェースレイヤのAPIとカーネル非動 作状態を参照するサービスコール(sns_ker)のみを呼び出すことができる 【NGKI0145】.カーネル非動作状態で,その他のサービスコールを呼び出した 場合の動作は,保証されない【NGKI0146】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,カーネル動作状態かカー ネル非動作状態のいずれかの状態を取る【NGKI0147】. 2.5.2 タスクコンテキストと非タスクコンテキスト 処理単位が実行される環境(用いるスタック領域やプロセッサの動作モードな ど)をコンテキストと呼ぶ. カーネル動作状態において,処理単位が実行されるコンテキストは,タスクコ ンテキストと非タスクコンテキストに分類される【NGKI0148】. タスク(タスク例外処理ルーチンを含む)が実行されるコンテキストは,タス クコンテキストに分類される【NGKI0149】.また,タスクコンテキストから呼 び出した拡張サービスコールが実行されるコンテキストは,タスクコンテキス トに分類される【NGKI0150】. 割込みハンドラ(割込みサービスルーチンおよびタイムイベントハンドラを含 む)とCPU例外ハンドラが実行されるコンテキストは,非タスクコンテキストに 分類される【NGKI0151】.また,非タスクコンテキストから呼び出した拡張サー ビスコールが実行されるコンテキストは,非タスクコンテキストに分類される 【NGKI0152】. タスクコンテキストで実行される処理単位は,別に規定がない限り,タスクの スタック領域を用いて実行される【NGKI0153】.非タスクコンテキストで実行 される処理単位は,別に規定がない限り,非タスクコンテキスト用スタック領 域を用いて実行される【NGKI0154】. 32 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1601 1602 1603 1604 1605 1606 1607 1608 1609 1610 1611 1612 1613 1614 1615 1616 1617 1618 1619 1620 1621 1622 1623 1624 1625 1626 1627 1628 1629 1630 1631 1632 1633 1634 1635 1636 1637 1638 1639 1640 1641 1642 1643 1644 1645 1646 1647 1648 1649 1650 タスクコンテキストからは,非タスクコンテキスト専用のサービスコールを呼 び出すことはできない【NGKI0155】.逆に,非タスクコンテキストからは,タ スクコンテキスト専用のサービスコールを呼び出すことはできない 【NGKI0156】.いずれも,呼び出した場合にはE_CTXエラーとなる【NGKI0157】. 2.5.3 カーネルの振舞いに影響を与える状態 カーネル動作状態において,プロセッサは,カーネルの振舞いに影響を与える 状態として,次の状態を持つ【NGKI0158】. ・全割込みロックフラグ(全割込みロック状態と全割込みロック解除状態) ・CPUロックフラグ(CPUロック状態とCPUロック解除状態) ・割込み優先度マスク(割込み優先度マスク全解除状態と全解除でない状態) ・ディスパッチ禁止フラグ(ディスパッチ禁止状態とディスパッチ許可状態) これらの状態は,それぞれ独立な状態である.すなわち,プロセッサは上記の 状態の任意の組合せを取ることができ,それぞれの状態を独立に変化させるこ とができる【NGKI0159】. 2.5.4 全割込みロック状態と全割込みロック解除状態 プロセッサは,NMIを除くすべての割込みをマスクするための全割込みロックフ ラグを持つ【NGKI0160】.全割込みロックフラグがセットされた状態を全割込 みロック状態,クリアされた状態を全割込みロック解除状態と呼ぶ.すなわち, 全割込みロック状態では,NMIを除くすべての割込みがマスクされる. 全割込みロック状態では,システムインタフェースレイヤのAPIとカーネル非動 作状態を参照するサービスコール(sns_ker),カーネルを終了するサービスコー ル(ext_ker)のみを呼び出すことができる【NGKI0161】.全割込みロック状態 で,その他のサービスコールを呼び出した場合の動作は,保証されない 【NGKI0162】.また,全割込みロック状態で,実行中の処理単位からリターン してはならない.リターンした場合の動作は保証されない【NGKI0164】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,全割込みロックフラグ を持つ【NGKI0165】.すなわち,プロセッサ毎に,全割込みロック状態か全割 込みロック解除状態のいずれかの状態を取る. 2.5.5 CPU ロック状態とCPUロック解除状態 プロセッサは,カーネル管理の割込み(「2.7.7 カーネル管理外の割込み」の 節を参照)をすべてマスクするためのCPUロックフラグを持つ【NGKI0166】. CPUロックフラグがセットされた状態をCPUロック状態,クリアされた状態を CPUロック解除状態と呼ぶ.CPUロック状態では,すべてのカーネル管理の割込 みがマスクされ,ディスパッチが保留される【NGKI0167】. CPUロック状態で呼び出すことができるサービスコールは次の通り【NGKI0168】. ・システムインタフェースレイヤのAPI ・loc_cpu/iloc_cpu,unl_cpu/iunl_cpu 33 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1651 1652 1653 1654 1655 1656 1657 1658 1659 1660 1661 1662 1663 1664 1665 1666 1667 1668 1669 1670 1671 1672 1673 1674 1675 1676 1677 1678 1679 1680 1681 1682 1683 1684 1685 1686 1687 1688 1689 1690 1691 1692 1693 1694 1695 1696 1697 1698 1699 1700 ・unl_spn/iunl_spn(マルチプロセッサ対応カーネルのみ) ・dis_int,ena_int ・sns_yyy,xsns_yyy(CPU例外ハンドラからのみ) ・get_utm ・ext_tsk,ext_ker ・prb_mem(保護機能対応カーネルのみ) ・cal_svc(保護機能対応カーネルのみ) CPUロック状態で,その他のサービスコールを呼び出した場合には,E_CTXエラー となる【NGKI0169】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,CPUロックフラグを持つ 【NGKI0170】.すなわち,プロセッサ毎に,CPUロック状態かCPUロック解除状 態のいずれかの状態を取る. 【補足説明】 NMI以外にカーネル管理外の割込みを設けない場合には,全割込みロックフラグ とCPUロックフラグの機能は同一となるが,両フラグは独立に存在する. マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,あるプロセッサがCPUロック状態にあ る間は,そのプロセッサにおいてのみ,すべてのカーネル管理の割込みがマス クされ,ディスパッチが保留される.それに対して他のプロセッサにおいては, 割込みはマスクされず,ディスパッチも起こるため,CPUロック状態を使って他 のプロセッサで実行される処理単位との排他制御を実現することはできない. 2.5.6 割込み優先度マスク プロセッサは,割込み優先度を基準に割込みをマスクするための割込み優先度 マスクを持つ【NGKI0171】.割込み優先度マスクがTIPM_ENAALL(=0)の時は, いずれの割込み要求もマスクされない【NGKI0172】.この状態を割込み優先度 マスク全解除状態と呼ぶ.割込み優先度マスクがTIPM_ENAALL(=0)以外の時 は,割込み優先度マスクと同じかそれより低い割込み優先度を持つ割込みはマ スクされ,ディスパッチは保留される【NGKI0173】.この状態を割込み優先度 マスクが全解除でない状態と呼ぶ. 割込み優先度マスクが全解除でない状態では,別に規定がない限りは,自タス クを広義の待ち状態に遷移させる可能性のあるサービスコールを呼び出すこと はできない【NGKI0174】.呼び出した場合には,E_CTXエラーとなる 【NGKI0175】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,割込み優先度マスクを 持つ【NGKI0176】. 2.5.7 ディスパッチ禁止状態とディスパッチ許可状態 プロセッサは,ディスパッチを保留するためのディスパッチ禁止フラグを持つ 【NGKI0177】.ディスパッチ禁止フラグがセットされた状態をディスパッチ禁 止状態,クリアされた状態をディスパッチ許可状態と呼ぶ.すなわち,ディス パッチ禁止状態では,ディスパッチは保留される. 34 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1701 1702 1703 1704 1705 1706 1707 1708 1709 1710 1711 1712 1713 1714 1715 1716 1717 1718 1719 1720 1721 1722 1723 1724 1725 1726 1727 1728 1729 1730 1731 1732 1733 1734 1735 1736 1737 1738 1739 1740 1741 1742 1743 1744 1745 1746 1747 1748 1749 1750 ディスパッチ禁止状態では,別に規定がない限りは,自タスクを広義の待ち状 態に遷移させる可能性のあるサービスコールを呼び出すことはできない 【NGKI0178】.呼び出した場合には,E_CTXエラーとなる【NGKI0179】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,ディスパッチ禁止フラ グを持つ【NGKI0180】.すなわち,プロセッサ毎に,ディスパッチ禁止状態か ディスパッチ許可状態のいずれかの状態を取る. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,あるプロセッサがディスパッチ禁止 状態にある間は,そのプロセッサにおいてのみ,ディスパッチが保留される. それに対して他のプロセッサにおいては,ディスパッチが起こるため,ディス パッチ禁止状態を使って他のプロセッサで実行されるタスクとの排他制御を実 現することはできない. 2.5.8 ディスパッチ保留状態 非タスクコンテキストの実行中,CPUロック状態,割込み優先度マスクが全解除 でない状態,ディスパッチ禁止状態では,ディスパッチが保留される 【NGKI0181】.これらの状態を総称して,ディスパッチ保留状態と呼ぶ. マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,ディスパッチ保留状態 かそうでない状態のいずれかの状態を取る【NGKI0182】. 【補足説明】 全割込みロック状態はカーネルが管理しておらず,ディスパッチが保留される ことをカーネルが保証できないため,ディスパッチ保留状態に含めていない. 2.5.9 カーネル管理外の状態 全割込みロック状態,カーネル管理外の割込みハンドラ実行中(「2.7.7 カー ネル管理外の割込み」の節を参照),カーネル管理外のCPU例外ハンドラ実行中 (「2.8.4 カーネル管理外のCPU例外」の節を参照)を総称して,カーネル管理 外の状態と呼ぶ. それぞれの節で規定する通り,カーネル管理外の状態では,システムインタ フェースレイヤのAPIとsns_ker,ext_kerのみ(カーネル管理外のCPU例外ハン ドラからは,それに加えてxsns_dpnとxsns_xpn)を呼び出すことができ,その 他のサービスコールを呼び出すことはできない.カーネル管理外の状態から, その他のサービスコールを呼び出した場合の動作は,保証されない. カーネル管理外の状態では,少なくとも,カーネル管理の割込みはマスクされ ている.カーネル管理外の割込み(の一部)もマスクされている場合もある. 保護機能対応カーネルでは,カーネル管理外の状態になるのは,特権モードで 実行している間に限られる. 2.5.10 処理単位の開始・終了とシステム状態 35 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1751 1752 1753 1754 1755 1756 1757 1758 1759 1760 1761 1762 1763 1764 1765 1766 1767 1768 1769 1770 1771 1772 1773 1774 1775 1776 1777 1778 1779 1780 1781 1782 1783 1784 1785 1786 1787 1788 1789 1790 1791 1792 1793 1794 1795 1796 1797 1798 1799 1800 各処理単位が実行開始されるシステム状態の条件(実行開始条件),各処理単 位の実行開始時にカーネルによって行われるシステム状態の変更処理(実行開 始時処理),各処理単位からのリターン前(または終了前)にアプリケーショ ンが設定しておくべきシステム状態(リターン前または終了前),各処理単位 からのリターン時(または終了時)にカーネルによって行われるシステム状態 の変更処理(リターン時処理または終了時処理)は,次の表の通りである. CPU ロック 割込み優先度 ディスパッチ フラグ マスク 禁止フラグ ---------------------------------------------------------------【タスク】【NGKI0183】 実行開始条件 解除 全解除 許可 実行開始時処理 そのまま そのまま そのまま 終了前 原則解除(*1) 原則全解除(*1) 原則許可(*1) 終了時処理 解除する 全解除する 許可する ---------------------------------------------------------------【タスク例外処理ルーチン】【NGKI0184】 実行開始条件 解除 全解除 任意 実行開始時処理 そのまま そのまま そのまま リターン前 原則解除(*1) 原則全解除(*1) 元に戻す リターン時処理 解除する 全解除する 元に戻す(*4) ---------------------------------------------------------------【カーネル管理の割込みハンドラ】【NGKI0185】 【割込みサービスルーチン】【NGKI0186】 【タイムイベントハンドラ】【NGKI0187】 実行開始条件 解除 自優先度より低い 任意 実行開始時処理 そのまま 自優先度に(*2) そのまま リターン前 原則解除(*1) 変更不可(*3) 変更不可(*3) リターン時処理 解除する 元に戻す(*5) そのまま ---------------------------------------------------------------【CPU例外ハンドラ】【NGKI0188】 実行開始条件 任意 任意 任意 実行開始時処理 そのまま(*6) そのまま そのまま リターン前 原則元に(*1) 変更不可(*3) 変更不可(*3) リターン時処理 元に戻す 元に戻す(*5) そのまま ---------------------------------------------------------------【拡張サービスコール】【NGKI0189】 実行開始条件 任意 任意 任意 実行開始時処理 そのまま そのまま そのまま リターン前 任意 任意 任意 リターン時処理 そのまま そのまま そのまま ---------------------------------------------------------------この表の中で「原則(*1)」とは,処理単位からのリターン前(または終了前) に,アプリケーションが指定された状態に設定しておくことが原則であるが, この原則に従わなくても,リターン時(または終了時)にカーネルによって状 態が設定されるため,支障がないことを意味する. 「自優先度に(*2)」 とは,割込みハンドラと割込みサービスルーチンの場合に 36 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1801 1802 1803 1804 1805 1806 1807 1808 1809 1810 1811 1812 1813 1814 1815 1816 1817 1818 1819 1820 1821 1822 1823 1824 1825 1826 1827 1828 1829 1830 1831 1832 1833 1834 1835 1836 1837 1838 1839 1840 1841 1842 1843 1844 1845 1846 1847 1848 1849 1850 はそれを要求した割込みの割込み優先度,周期ハンドラとアラームハンドラの 場合にはタイマ割込みの割込み優先度,オーバランハンドラの場合にはオーバ ランタイマ割込みの割込み優先度に変更することを意味する. 「変更不可(*3)」 とは,その処理単位中で,そのシステム状態を変更するAPI が用意されていないことを示す. 保護機能対応カーネルでは,タスク例外処理ルーチンからのリターン時にディ スパッチ禁止フラグを元に戻す処理(*4)は,タスクにディスパッチ禁止フラグ の変更を許可している場合にのみ行われる【NGKI0529】.カーネルは,ディス パッチ禁止フラグの元の状態をユーザスタック上に保存する【NGKI0530】.ア プリケーションがユーザスタック上に保存されたディスパッチ禁止フラグの状 態を書き換えた場合,タスク例外処理ルーチンからのリターン時には,書き換 えた後のディスパッチ禁止フラグの状態に変更される(すなわち,元に戻され るとは限らない)【NGKI0190】. また,保護機能対応カーネルでは,タスクにディスパッチ禁止フラグの変更を 許可していない場合で,タスク例外処理ルーチン中で拡張サービスコールを用 いてディスパッチ禁止フラグを変更した場合,カーネルは元の状態に戻さない 【NGKI0191】.このことから,タスク例外処理ルーチンからの終了前に,ディ スパッチ禁止フラグを元の状態に戻すのは,アプリケーションの責任とする 【NGKI0192】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,タスクがタスク例外処理ルーチンを 実行中にマイグレーションされた場合,マイグレーション先のプロセッサにお いて,割込み優先度マスクとディスパッチ禁止フラグが元に戻される. 【仕様決定の理由】 保護機能対応カーネルにおいて,タスク例外処理ルーチンからのリターン時に ディスパッチ禁止フラグを元に戻す処理(*4)が,タスクにディスパッチ禁止フ ラグの変更を許可している場合にのみ行われるのは,タスクがユーザスタック 上の状態を書き換えることで,許可していない状態変更を起こせてしまうこと を防止するためである. 割込みハンドラやCPU例外ハンドラで,その処理単位中で割込み優先度マスクを 変更するAPIが用意されていないにもかかわらず,処理単位からのリターン時に 元の状態に戻す(*5)のは,プロセッサによっては,割込み優先度マスクがステー タスレジスタ等に含まれており,APIを用いずに変更できてしまう場合があるた めである. CPU例外ハンドラの実行開始時には,CPUロックフラグは変更されない(*6)こと から,CPUロック状態でCPU例外が発生した場合,CPU例外ハンドラの実行開始直 後はCPUロック状態となっている.CPUロック状態でCPU例外が発生した場合,起 動されるCPU例外ハンドラはカーネル管理外のCPU例外ハンドラであり(xsns_dpn, xsns_xpn ともtrueを返す),CPU例外ハンドラ中でiunl_cpuを呼び出してCPUロッ ク状態を解除しようとした場合の動作は保証されない.ただし,保証されない にも関わらずiunl_cpuを呼び出した場合も考えられるため,リターン時には元 37 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1851 1852 1853 1854 1855 1856 1857 1858 1859 1860 1861 1862 1863 1864 1865 1866 1867 1868 1869 1870 1871 1872 1873 1874 1875 1876 1877 1878 1879 1880 1881 1882 1883 1884 1885 1886 1887 1888 1889 1890 1891 1892 1893 1894 1895 1896 1897 1898 1899 1900 に戻すこととしている. 2.6 タスクの状態遷移とスケジューリング規則 2.6.1 基本的なタスク状態 カーネルに登録したタスクは,実行できる状態,休止状態,広義の待ち状態の いずれかの状態を取る【NGKI0193】.また,実行できる状態と広義の待ち状態 を総称して,起動された状態と呼ぶ.さらに,タスクをカーネルに登録してい ない仮想的な状態を,未登録状態と呼ぶ. (a) 実行できる状態(runnable) タスクを実行できる条件が,プロセッサが使用できるかどうかを除いて,揃っ ている状態.実行できる状態は,さらに,実行状態と実行可能状態に分類され る. (a.1) 実行状態(running) タスクが実行されている状態.または,そのタスクの実行中に,割込みまたは CPU例外により非タスクコンテキストの実行が開始され,かつ,タスクコンテキ ストに戻った後に,そのタスクの実行を再開するという状態. (a.2) 実行可能状態(ready) タスク自身は実行できる状態にあるが,それよりも優先順位の高いタスクが実 行状態にあるために,そのタスクが実行されない状態. (b) 休止状態(dormant) タスクが実行すべき処理がない状態.タスクの実行を終了した後,次に起動す るまでの間は,タスクは休止状態となっている.タスクが休止状態にある時に は,タスクの実行を再開するための情報(実行再開番地やレジスタの内容など) は保存されていない【NGKI0194】. (c) 広義の待ち状態(blocked) タスクが,処理の途中で実行を止められている状態.タスクが広義の待ち状態 にある時には,タスクの実行を再開するための情報(実行再開番地やレジスタ の内容など)は保存されており,タスクが実行を再開する時には,広義の待ち 状態に遷移する前の状態に戻される【NGKI0195】.広義の待ち状態は,さらに, (狭義の)待ち状態,強制待ち状態,二重待ち状態に分類される. (c.1) (狭義の)待ち状態(waiting) タスクが何らかの条件が揃うのを待つために,自ら実行を止めている状態. (c.2) 強制待ち状態(suspended) 他のタスクによって,強制的に実行を止められている状態.ただし,自タスク 38 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1901 1902 1903 1904 1905 1906 1907 1908 1909 1910 1911 1912 1913 1914 1915 1916 1917 1918 1919 1920 1921 1922 1923 1924 1925 1926 1927 1928 1929 1930 1931 1932 1933 1934 1935 1936 1937 1938 1939 1940 1941 1942 1943 1944 1945 1946 1947 1948 1949 1950 を強制待ち状態にすることも可能である. (c.3) 二重待ち状態(waiting-suspended) 待ち状態と強制待ち状態が重なった状態.すなわち,タスクが何らかの条件が 揃うのを待つために自ら実行を止めている時に,他のタスクによって強制的に 実行を止められている状態. 単にタスクが「待ち状態である」といった場合には,二重待ち状態である場合 を含み,「待ち状態でない」といった場合には,二重待ち状態でもないことを 意味する.また,単にタスクが「強制待ち状態である」といった場合には,二 重待ち状態である場合を含み,「強制待ち状態でない」といった場合には,二 重待ち状態でもないことを意味する. (d) 未登録状態(non-existent) タスクをカーネルに登録していない仮想的な状態.タスクの生成前と削除後は, タスクは未登録状態にあるとみなす. カーネルによっては,これらのタスク状態以外に,過渡的な状態が存在する場 合がある【NGKI0196】.過渡的な状態については,「2.6.6 ディスパッチ保留 状態で実行中のタスクに対する強制待ち」の節を参照すること. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,タスクが未登録状態になることはない【ASPS0005】.また, 上記のタスク状態以外の過渡的な状態になることもない【ASPS0006】.ただし, 動的生成機能拡張パッケージでは,タスクが未登録状態になる【ASPS0007】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,タスクが未登録状態になることはない【FMPS0003】.上記の タスク状態以外の過渡的な状態として,タスクが強制待ち状態[実行継続中] になることがある【FMPS0004】.詳しくは,「2.6.6 ディスパッチ保留状態で 実行中のタスクに対する強制待ち」の節を参照すること. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,タスクが未登録状態になることはない【HRPS0002】.また, 上記のタスク状態以外の過渡的な状態になることもない【HRPS0003】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,タスクが広義の待ち状態と未登録状態になることはない 【SSPS0003】.また,上記のタスク状態以外の過渡的な状態になることもない 【SSPS0004】. 2.6.2 タスクの状態遷移 タスクの状態遷移を図2-2に示す【NGKI0197】. 39 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 1951 1952 1953 1954 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 未登録状態のタスクをカーネルに登録することを,タスクを生成する(create) という.生成されたタスクは,休止状態に遷移する【NGKI0198】.また,タス ク生成時の属性指定により,生成と同時にタスクを起動し,実行できる状態に することもできる【NGKI0199】.逆に,登録されたタスクを未登録状態に遷移 させることを,タスクを削除する(delete)という. 休止状態のタスクを,実行できる状態にすることを,タスクを起動する (activate)という.起動されたタスクは,実行できる状態になる 【NGKI0200】.逆に,起動された状態のタスクを,休止状態(または未登録状 態)に遷移させることを,タスクを終了する(terminate)という. 実行できる状態になったタスクは,まずは実行可能状態に遷移するが,そのタ スクの優先順位が実行状態のタスクよりも高い場合には,ディスパッチ保留状 態でない限りはただちにディスパッチが起こり,実行状態へ遷移する 【NGKI0201】.この時,それまで実行状態であったタスクは実行可能状態に遷 移する【NGKI0202】.この時,実行状態に遷移したタスクは,実行可能状態に 遷移したタスクをプリエンプトしたという.逆に,実行可能状態に遷移したタ スクは,プリエンプトされたという. タスクを待ち解除するとは,タスクが待ち状態(二重待ち状態を除く)であれ ば実行できる状態に,二重待ち状態であれば強制待ち状態に遷移させることを いう.また,タスクを強制待ちから再開するとは,タスクが強制待ち状態(二 重待ち状態を除く)であれば実行できる状態に,二重待ち状態であれば待ち状 態に遷移させることをいう. 【補足説明】 タスクの実行開始とは,タスクが起動された後に最初に実行される(実行状態 に遷移する)時のことをいう. 2.6.3 タスクのスケジューリング規則 実行できるタスクは,優先順位の高いものから順に実行される【NGKI0203】. すなわち,ディスパッチ保留状態でない限りは,実行できるタスクの中で最も 高い優先順位を持つタスクが実行状態となり,他は実行可能状態となる. タスクの優先順位は,タスクの優先度とタスクが実行できる状態になった順序 から,次のように定まる.優先度の異なるタスクの間では,優先度の高いタス クが高い優先順位を持つ【NGKI0204】.優先度が同一のタスクの間では,先に 実行できる状態になったタスクが高い優先順位を持つ【NGKI0205】.すなわち, 同じ優先度を持つタスクは,FCFS(First Come First Served )方式でスケジュー リングされる.ただし,サービスコールの呼出しにより,同じ優先度を持つタ スク間の優先順位を変更することも可能である【NGKI0206】. 最も高い優先順位を持つタスクが変化した場合には,ディスパッチ保留状態で ない限りはただちにディスパッチが起こり,最も高い優先順位を持つタスクが 実行状態となる【NGKI0207】.ディスパッチ保留状態においては,実行状態の タスクは切り換わらず,最も高い優先順位を持つタスクは実行可能状態にとど まる【NGKI0208】. 40 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030 2031 2032 2033 2034 2035 2036 2037 2038 2039 2040 2041 2042 2043 2044 2045 2046 2047 2048 2049 2050 マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサ毎に,上記のスケジューリン グ規則を適用して,タスクスケジューリングを行う【NGKI0209】.すなわち, プロセッサがディスパッチ保留状態でない限りは,そのプロセッサに割り付け られた実行できるタスクの中で最も高い優先順位を持つタスクが実行状態とな り,他は実行可能状態となる.そのため,実行状態のタスクは,プロセッサ毎 に存在する. 2.6.4 待ち行列と待ち解除の順序 タスクが待ち解除される順序の管理のために,待ち状態のタスクがつながれて いるキューを,待ち行列と呼ぶ.また,タスクが同期・通信オブジェクトの待 ち行列につながれている場合に,そのオブジェクトを,タスクの待ちオブジェ クトと呼ぶ. 待ち行列にタスクをつなぐ順序には,FIFO順とタスクの優先度順がある.どち らの順序でつなぐかは,待ち行列毎に規定される【NGKI0210】.多くの待ち行 列において,どちらの順序でつなぐかを,オブジェクト属性により指定できる 【NGKI0211】. FIFO 順の待ち行列においては,新たに待ち状態に遷移したタスクは待ち行列の 最後につながれる【NGKI0212】.それに対してタスクの優先度順の待ち行列に おいては,新たに待ち状態に遷移したタスクは,優先度の高い順に待ち行列に つながれる【NGKI0213】.同じ優先度のタスクが待ち行列につながれている場 合には,新たに待ち状態に遷移したタスクが,同じ優先度のタスクの中で最後 につながれる【NGKI0214】. 待ち解除の条件がタスクによって異なる場合には,待ち行列の先頭のタスクは 待ち解除の条件を満たさないが,後方のタスクが待ち解除の条件を満たす場合 がある.このような場合の振舞いとして,次の2つのケースがある.どちらの振 舞いをするかは,待ち行列毎に規定される【NGKI0215】. (a) 待ち解除の条件を満たしたタスクの中で,待ち行列の前方につながれたも のから順に待ち解除される【NGKI0216】.すなわち,待ち行列の前方に待ち解 除の条件を満たさないタスクがあっても,後方のタスクが待ち解除の条件を満 たしていれば,先に待ち解除される. (b) タスクの待ち解除は,待ち行列につながれている順序で行われる 【NGKI0217】.すなわち,待ち行列の前方に待ち解除の条件を満たさないタス クがあると,後方のタスクが待ち解除の条件を満たしても,待ち解除されない. ここで,(b)の振舞いをする待ち行列においては,待ち行列につながれたタスク の強制終了,タスク優先度の変更(待ち行列がタスクの優先度順の場合のみ), 待ち状態の強制解除が行われた場合に,タスクの待ち解除が起こることがある. 具体的には,これらの操作により新たに待ち行列の先頭になったタスクが,待 ち解除の条件を満たしていれば,ただちに待ち解除される【NGKI0218】.さら に,この待ち解除により新たに待ち行列の先頭になったタスクに対しても,同 じ処理が繰り返される【NGKI0219】. 2.6.5 タスク例外処理マスク状態と待ち禁止状態 41 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2051 2052 2053 2054 2055 2056 2057 2058 2059 2060 2061 2062 2063 2064 2065 2066 2067 2068 2069 2070 2071 2072 2073 2074 2075 2076 2077 2078 2079 2080 2081 2082 2083 2084 2085 2086 2087 2088 2089 2090 2091 2092 2093 2094 2095 2096 2097 2098 2099 2100 保護機能対応カーネルにおいて,ユーザタスクについては特権モードで実行し ている間(特権モードを実行している間に,実行可能状態や広義の待ち状態に なっている場合を含む.また,サービスコールを呼び出して,実行可能状態や 広義の待ち状態になっている場合も含む.タスクの実行開始前は含まない), システムタスクについては拡張サービスコールを実行している間(拡張サービ スコールを実行している間に,実行可能状態や広義の待ち状態になっている場 合を含む)は,タスク例外処理ルーチンの実行は開始されない【NGKI0220】. これらの状態を,タスク例外処理マスク状態と呼ぶ. タスクは,タスク例外処理マスク状態である時に,基本的なタスク状態と重複 して,待ち禁止状態になることができる【NGKI0221】.待ち禁止状態とは,タ スクが待ち状態に入ることが一時的に禁止された状態である.待ち禁止状態に あるタスクが,サービスコールを呼び出して待ち状態に遷移しようとした場合, サービスコールはE_RLWAIエラーとなる【NGKI0222】. タスクを待ち禁止状態に遷移させるサービスコールは,対象タスクがタスク例 外処理マスク状態である場合に,対象タスクを待ち禁止状態に遷移させる 【NGKI0223】.その後,タスクがタスク例外処理マスク状態でなくなる時点 (ユーザタスクについては特権モードから戻る時点,システムタスクについて 拡張サービスコールからリターンする時点)で,待ち禁止状態が解除される 【NGKI0224】.また,タスクの待ち禁止状態を解除するサービスコールによっ ても,待ち禁止状態を解除することができる【NGKI0225】. 【仕様決定の理由】 タスク例外処理ルーチンでは,タスクの本体のための例外処理(例えば,タス クに対して終了要求があった時の処理)を行うことを想定しており,タスクか ら呼び出した拡張サービスコールのための例外処理を行うことは想定していな い.そのため,拡張サービスコールを実行している間にタスク例外処理が要求 された場合に,すぐにタスク例外処理ルーチンを実行すると,拡張サービスコー ルのための例外処理が行われないことになる. また,ユーザタスクの場合には,特権モードを実行中にタスク例外処理ルーチ ンを実行すると,システムスタックに情報を残したまま非特権モードに戻るこ とになる.この状態で,タスク例外処理ルーチンから大域脱出すると,システ ムスタック上に不要な情報が残ってしまう. これらの理由から,タスクが拡張サービスコールを実行している間は,タスク 例外処理マスク状態とし,タスク例外処理ルーチンの実行を開始しないことと する.さらに,ユーザタスクについては,特権モードを実行している間(拡張 サービスコールを実行している間を含む)を,タスク例外処理マスク状態とす る. 対象タスクに,タスク例外処理ルーチンをすみやかに実行させたい場合には, タスク例外処理の要求に加えて,待ち状態の強制解除を行う(必要に応じて, 強制待ち状態からの再開も行う).保護機能対応でないカーネルにおいては, この方法により,対象タスクが正常に待ち解除されるのを待たずに,タスク例 外処理ルーチンを実行させることができる. 42 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2101 2102 2103 2104 2105 2106 2107 2108 2109 2110 2111 2112 2113 2114 2115 2116 2117 2118 2119 2120 2121 2122 2123 2124 2125 2126 2127 2128 2129 2130 2131 2132 2133 2134 2135 2136 2137 2138 2139 2140 2141 2142 2143 2144 2145 2146 2147 2148 2149 2150 それに対して,保護機能対応カーネルにおいては,対象タスクがタスク例外処 理マスク状態で実行している間は,タスク例外処理ルーチンの実行が開始され ない.そのため,対象タスクに対して待ち状態の強制解除を行っても,その後 に対象タスクが待ち状態に入ると,タスク例外処理ルーチンがすみやかに実行 されないことになる. 待ち禁止状態は,この問題を解決するために導入したものである.タスク例外 処理の要求(ras_tex/iras_tex)に加えて,待ち禁止状態への遷移(dis_wai/ idis_wai )と待ち状態の強制解除(rel_wai/irel_wai)をこの順序で行うこと で,対象タスクが正常に待ち解除されるのを待たずに,タスク例外処理ルーチ ンを実行させることができる. タスク例外処理マスク状態を,ユーザタスクについても拡張サービスコールを 実行している間とせず,特権モードで実行している間とした理由は,拡張サー ビスコールを実行している間とした場合に次のような問題があるためである. ユーザタスクが,ソフトウェア割込みにより自タスクを待ち状態に遷移させる サービスコールを呼び出した直後に割込みが発生し,その割込みハンドラの中 でiras_tex,idis_wai,irel_waiが呼び出されると,この時点では待ち解除も されず待ち禁止状態にもならないために,割込みハンドラからのリターン後に 待ち状態に入ってしまう.ソフトウェア割込みによりすべての割込みが禁止さ れないターゲットプロセッサでは,ソフトウェア割込みの発生とサービスコー ルの実行を不可分にできないため,このような状況を防ぐことができない. なお,拡張サービスコールは,待ち状態に入るサービスコールからE_RLWAIが返 された場合には,実行中の処理を取りやめて,E_RLWAIを返値としてリターンす るように実装すべきである. 【μITRON4.0仕様,μITRON4.0/PX仕様との関係】 待ち禁止状態は,μITRON4.0仕様にはない概念であり,μITRON4.0/PX仕様で導 入された.ただし,μITRON4.0/PX仕様では,タスクの待ち状態を強制解除する サービスコールが,タスクを待ち禁止状態へ遷移させる機能も持つこととして いる.その結果μITRON4.0/PX仕様は,待ち状態を強制解除するサービスコール の仕様において,μITRON4.0仕様との互換性がなくなっている. この仕様では,待ち状態の強制解除と待ち禁止状態への遷移を別々のサービス コールで行うこととした.これにより,待ち状態を強制解除するサービスコー ルの仕様が,μITRON4.0仕様と互換になっている.一方,μITRON4.0/PX仕様と は互換性がない. 2.6.6 ディスパッチ保留状態で実行中のタスクに対する強制待ち ディスパッチ保留状態において,実行状態のタスクを強制待ち状態へ遷移させ るサービスコールを呼び出した場合,実行状態のタスクの切換えは,ディスパッ チ保留状態が解除されるまで保留される【NGKI0226】. この間,それまで実行状態であったタスクは,実行状態と強制待ち状態の間の 過渡的な状態にあると考える【NGKI0227】.この状態を,強制待ち状態[実行 継続中]と呼ぶ.一方,ディスパッチ保留状態が解除された後に実行すべきタ 43 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2151 2152 2153 2154 2155 2156 2157 2158 2159 2160 2161 2162 2163 2164 2165 2166 2167 2168 2169 2170 2171 2172 2173 2174 2175 2176 2177 2178 2179 2180 2181 2182 2183 2184 2185 2186 2187 2188 2189 2190 2191 2192 2193 2194 2195 2196 2197 2198 2199 2200 スクは,実行可能状態にとどまる【NGKI0228】. タスクが強制待ち状態[実行継続中]にある時に,ディスパッチ保留状態が解 除されると,ただちにディスパッチが起こり,タスクは強制待ち状態に遷移す る【NGKI0229】. 過渡的な状態も含めたタスクの状態遷移を図2-3に示す【NGKI0230】. タスクが強制待ち状態[実行継続中]である時の扱いは次の通りである. (a) プロセッサを占有して実行を継続する. 強制待ち状態[実行継続中]のタスクは,プロセッサを占有して,そのまま継 続して実行される【NGKI0231】. (b) 実行状態のタスクに関する情報を参照するサービスコールでは,実行状態 であるものと扱う. 実行状態のタスクに関する情報を参照するサービスコール(get_tid/ iget_tid ,get_did,sns_tex)では,強制待ち状態[実行継続中]のタスクが, それを実行するプロセッサにおいて実行状態のタスクであるものと扱う.具体 的には,強制待ち状態[実行継続中]のタスクが実行されている時にget_tid/ iget_tid を発行すると,そのタスクのID番号を参照する【NGKI0232】.また, get_didを発行するとそのタスクが属する保護ドメインのID番号を,sns_texを 発行するとそのタスクのタスク例外処理禁止フラグを参照する【NGKI0233】. (c) その他のサービスコールでは,強制待ち状態であるものと扱う. その他のサービスコールでは,強制待ち状態[実行継続中]のタスクは,強制 待ち状態であるものと扱う【NGKI0234】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ディスパッチ保留状態において実行状態のタスクを強制待ち 状態へ遷移させるサービスコールはサポートしていないため,タスクが強制待 ち状態[実行継続中]になることはない【ASPS0008】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ディスパッチ保留状態において実行状態のタスクを強制待ち 状態へ遷移させるサービスコールを,他のプロセッサから呼び出すことができ るため,タスクが強制待ち状態[実行継続中]になる場合がある【FMPS0005】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,ディスパッチ保留状態において実行状態のタスクを強制待 ち状態へ遷移させるサービスコールはサポートしていないため,タスクが強制 待ち状態[実行継続中]になることはない【HRPS0004】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 44 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2201 2202 2203 2204 2205 2206 2207 2208 2209 2210 2211 2212 2213 2214 2215 2216 2217 2218 2219 2220 2221 2222 2223 2224 2225 2226 2227 2228 2229 2230 2231 2232 2233 2234 2235 2236 2237 2238 2239 2240 2241 2242 2243 2244 2245 2246 2247 2248 2249 2250 SSPカーネルでは,タスクが広義の待ち状態になることはないため,タスクが強 制待ち状態[実行継続中]になることもない【SSPS0005】. 【補足説明】 この仕様では,ディスパッチ保留状態において,実行状態のタスクを強制終了 させるサービスコールはサポートしていない.そのため,実行状態と休止状態 の間の過渡的な状態は存在しない. 2.6.7 制約タスク 制約タスク(restricted task)は,複数のタスクでスタック領域を共有するこ とによるメモリ使用量の削減を目的に,通常のタスクに対して,広義の待ち状 態を持たないなどの機能制限を加えたものである.具体的には,制約タスクに は以下の機能制限がある. (a) 広義の待ち状態に入ることができない【NGKI0235】. (b) サービスコールにより優先度を変更することができない【NGKI0236】. (c) 対象優先度の中の先頭のタスクが制約タスクである場合には,タスクの優 先順位の回転(rot_rdq/irot_rdq)を行うことができない【NGKI0237】. (d) マルチプロセッサ対応カーネルでは,割付けプロセッサを変更することが できない【NGKI0238】. 制約タスクに対して,機能制限により使用できなくなったサービスコールを呼 び出した場合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI0239】.E_NOSPTエラーが返る ことに依存している場合を除いては,制約タスクを通常のタスクに置き換える ことができる【NGKI0240】. 【未決定事項】 現状では,制約タスクの優先度を変更するサービスコールは設けていないが, 制約タスクが,自タスクの優先度を,起動時優先度(SSPカーネルにおいては, 実行時優先度)と同じかそれよりも高い値に変更することは許してもよい.た だし,優先度の変更後は,同じ優先度内で最高優先順位としなければならない ため,chg_priとは振舞いが異なることになる.自タスクの優先度を起動時優先 度と同じかそれよりも高い値に変更するサービスコールを設けるかどうかは, 今後の課題である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,制約タスクをサポートしていない【ASPS0009】.ただし,制 約タスク拡張パッケージを用いると,制約タスクの機能を追加することができ る【ASPS0010】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 45 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2251 2252 2253 2254 2255 2256 2257 2258 2259 2260 2261 2262 2263 2264 2265 2266 2267 2268 2269 2270 2271 2272 2273 2274 2275 2276 2277 2278 2279 2280 2281 2282 2283 2284 2285 2286 2287 2288 2289 2290 2291 2292 2293 2294 2295 2296 2297 2298 2299 2300 FMPカーネルでは,制約タスクをサポートしていない【FMPS0006】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,制約タスクをサポートしていない【HRPS0005】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,制約タスクのみをサポートする【SSPS0006】.そのため,す べてのタスクと非タスクコンテキストがスタック領域を共有することができ, すべての処理単位で同一のスタック領域を使用している【SSPS0007】.このス タック領域を,共有スタック領域と呼ぶ. 【μITRON4.0仕様との関係】 制約タスクは,μITRON4.0仕様の自動車制御プロファイルで導入された機能で ある.この仕様における制約タスクは,μITRON4.0仕様の制約タスクよりも機 能制限が少なくなっている. 2.7 割込み処理モデル TOPPERS 新世代カーネルにおける割込み処理のモデルは,TOPPERS標準割込み処 理モデルに準拠している. TOPPERS 標準割込み処理モデルの概念図を図2-4に示す【NGKI0241】.この図は, 割込み処理モデルの持つすべての機能が,ハードウェア(プロセッサおよび割 込みコントローラ)で実現されているとして描いた概念図である.実際のハー ドウェアで不足している機能については,カーネル内の割込み処理のソフトウェ アで実現される. 【μITRON4.0仕様との関係】 割込み処理モデルは,μITRON4.0仕様から大幅に拡張している. 2.7.1 割込み処理の流れ 周辺デバイス(以下,デバイスと呼ぶ)からの割込み要求は,割込みコントロー ラ(IRC)を経由して,プロセッサに伝えられる.デバイスから割込みコントロー ラに割込み要求を伝えるための信号線を,割込み要求ラインと呼ぶ.一般には, 1つの割込み要求ラインに,複数のデバイスからの割込み要求が接続される. プロセッサは,デバイスからの割込み要求を受け付ける条件が満たされた場合, 割込み要求を受け付ける【NGKI0242】.受け付けた割込み要求が,カーネル管 理の割込みである場合には,カーネル内の割込みハンドラの入口処理(割込み 入口処理)を経由して,カーネル内の割込みハンドラを実行する【NGKI0243】. カーネル内の割込みハンドラは,アプリケーションが割込み要求ラインに対し て登録した割込みサービスルーチン(ISR)を呼び出す【NGKI0244】.割込みサー ビスルーチンは,プロセッサの割込みアーキテクチャや割込みコントローラに 依存せず,割込みを要求したデバイスのみに依存して記述するのが原則である 46 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2301 2302 2303 2304 2305 2306 2307 2308 2309 2310 2311 2312 2313 2314 2315 2316 2317 2318 2319 2320 2321 2322 2323 2324 2325 2326 2327 2328 2329 2330 2331 2332 2333 2334 2335 2336 2337 2338 2339 2340 2341 2342 2343 2344 2345 2346 2347 2348 2349 2350 【NGKI0245】.1つの割込み要求ラインに対して複数のデバイスが接続されるこ とから,1つの割込み要求ラインに対して複数の割込みサービスルーチンを登録 することができる【NGKI0246】. ただし,カーネルが標準的に用意している割込みハンドラで対応できない特殊 なケースも考えられる.このような場合に対応するために,アプリケーション が用意した割込みハンドラをカーネルに登録することもできる【NGKI0247】. カーネルが用いるタイマデバイスからの割込み要求の場合,カーネル内の割込 みハンドラにより,タイムイベントの処理が行われる.具体的には,タイムア ウト処理等が行われることに加えて,アプリケーションが登録したタイムイベ ントハンドラが呼び出される【NGKI0248】. なお,受け付けた割込み要求に対して,割込みサービスルーチンも割込みハン ドラも登録していない場合の振舞いは,ターゲット定義である【NGKI0249】. 2.7.2 割込み優先度 割込み要求は,割込み処理の優先順位を指定するための割込み優先度を持つ 【NGKI0250】.プロセッサは,割込み優先度マスクの現在値よりも高い割込み 優先度を持つ割込み要求のみを受け付ける【NGKI0251】.逆に言うと,割込み 優先度マスクの現在値と同じか,それより低い割込み優先度を持つ割込みは, マスクされる. プロセッサは,割込み要求を受け付けると,割込み優先度マスクを,受け付け た割込み要求の割込み優先度に設定する(ただし,受け付けた割込みがNMIであ る場合には例外とする)【NGKI0252】.また,割込み処理からのリターンによ り,割込み優先度マスクを,割込み要求を受け付ける前の値に戻す 【NGKI0253】. これらのことから,他の方法で割込みをマスクしていない限り,ある割込み要 求の処理中は,それと同じかそれより低い割込み優先度を持つ割込み要求は受 け付けられず,それより高い割込み優先度を持つ割込み要求は受け付けられる ことになる.つまり,割込み優先度は,多重割込みを制御するためのものと位 置付けることができる.それに対して,同時に発生している割込み要求の中で, 割込み優先度の高い割込み要求が先に受け付けられるとは限らない 【NGKI0254】. 割込み優先度は,PRI型で表現し,値が小さいほど優先度が高いものとするが, [NGKI0037]の原則には従わず,-1から連続した負の値を用いる【NGKI0255】. 割込み優先度の段階数は,ターゲット定義である【NGKI0256】.プロセッサが 割込み優先度マスクを実現するための機能を持たないか,実現するために大き いオーバヘッドを生じる場合には,ターゲット定義で,割込み優先度の段階数 を1にする(すなわち,多重割込みを許さない)場合がある. 【仕様決定の理由】 割込み優先度に-1から連続した負の値を用いるのは,割込み優先度とタスク優 先度を比較できるようになることと,いずれの割込みもマスクしない割込み優 47 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2351 2352 2353 2354 2355 2356 2357 2358 2359 2360 2361 2362 2363 2364 2365 2366 2367 2368 2369 2370 2371 2372 2373 2374 2375 2376 2377 2378 2379 2380 2381 2382 2383 2384 2385 2386 2387 2388 2389 2390 2391 2392 2393 2394 2395 2396 2397 2398 2399 2400 先度マスクの値を0にできるためである. 2.7.3 割込み要求ラインの属性 各割込み要求ラインは,以下の属性を持つ.なお,1つの割込み要求ラインに複 数のデバイスからの割込み要求が接続されている場合,それらの割込み要求は 同一の属性を持つ【NGKI0257】.それらの割込み要求に別々の属性を設定する ことはできない. (1) 割込み要求禁止フラグ 割込み要求ライン毎に,割込みをマスクするための割込み要求禁止フラグを持 つ【NGKI0258】.割込み要求禁止フラグをセットすると,その割込み要求ライ ンによって伝えられる割込み要求はマスクされる【NGKI0259】. プロセッサが割込み要求禁止フラグを実現するための機能を持たないか,実現 するために大きいオーバヘッドを生じる場合には,ターゲット定義で,割込み 要求禁止フラグをサポートしない場合がある【NGKI0260】.また,プロセッサ の持つ割込み要求禁止フラグの機能がこの仕様に合致しない場合には,ターゲッ ト定義で,割込み要求禁止フラグをサポートしないか,振舞いが異なるものと する場合がある【NGKI0261】. (2) 割込み優先度 割込み要求ライン毎に,割込み優先度を設定することができる【NGKI0262】. 割込み要求の割込み優先度とは,その割込み要求を伝える割込み要求ラインに 対して設定された割込み優先度のことである【NGKI0263】. (3) トリガモード 割込み要求ラインに対する割込み要求が,レベルトリガであるかエッジトリガ であるかを設定することができる【NGKI0264】.エッジトリガの場合には,さ らに,ターゲット定義で,ポジティブエッジトリガかネガティブエッジトリガ か両エッジトリガかを設定できる場合もある【NGKI0265】.また,レベルトリ ガの場合には,ターゲット定義で,ローレベルトリガかハイレベルトリガかを 設定できる場合もある【NGKI0266】. プロセッサがトリガモードを設定するための機能を持たないか,設定するため に大きいオーバヘッドを生じる場合には,ターゲット定義で,トリガモードの 設定をサポートしない場合がある【NGKI0267】. 属性が設定されていない割込み要求ラインに対しては,割込み要求禁止フラグ がセットされ,割込み要求はマスクされる【NGKI0268】.また,割込み要求禁 止フラグをクリアすることもできない【NGKI0269】. 【使用上の注意】 アプリケーションが,割込み要求禁止フラグを動的にセット/クリアする機能 を用いると,次の理由でソフトウェアの再利用性が下がる可能性があるため, 注意が必要である.プロセッサによっては,この割込み処理モデルに合致した 48 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2401 2402 2403 2404 2405 2406 2407 2408 2409 2410 2411 2412 2413 2414 2415 2416 2417 2418 2419 2420 2421 2422 2423 2424 2425 2426 2427 2428 2429 2430 2431 2432 2433 2434 2435 2436 2437 2438 2439 2440 2441 2442 2443 2444 2445 2446 2447 2448 2449 2450 割込み要求禁止フラグの機能を実現できない場合がある.また,割込み要求禁 止フラグをセットすることで,複数のデバイスからの割込みがマスクされる場 合がある.ソフトウェアの再利用性を上げるためには,あるデバイスからの割 込みのみをマスクしたい場合には,そのデバイス自身の機能を使ってマスクを 実現すべきである. 複数のデバイスからの割込み要求が接続されている割込み要求ラインを,エッ ジトリガに設定することは推奨されない.これは,次のような状況において, 割込み要求を取りこぼす可能性があるためである.ある割込み要求ラインに, デバイスAとデバイスBからの割込み要求が接続されており,デバイスAの割込み 処理を先に行う場合を考える.この時,デバイスB からの割込み要求によって 割込みハンドラが実行され,デバイスAの割込み処理を行った後,デバイスBの 割込み処理を行う前に,デバイスAからの割込み要求が発生した場合に,デバイ スAからの割込み要求を取りこぼしてしまう. 2.7.4 割込みを受け付ける条件 NMI以外の割込み要求は,次の4つの条件が揃った場合に受け付けられる 【NGKI0270】. (a) 割込み要求ラインに対する割込み要求禁止フラグがクリアされていること (b) 割込み要求ラインに設定された割込み優先度が,割込み優先度マスクの現 在値よりも高い(優先度の値としては小さい)こと (c) 全割込みロックフラグがクリアされていること (d) 割込み要求がカーネル管理の割込みである場合には,CPUロックフラグがク リアされていること これらの条件が揃った割込み要求が複数ある場合に,どの割込み要求が最初に 受け付けられるかは,この仕様では規定しない【NGKI0271】.すなわち,割込 み優先度の高い割込み要求が先に受け付けられるとは限らない. 2.7.5 割込み番号と割込みハンドラ番号 割込み要求ラインを識別するための番号を,割込み番号と呼ぶ.割込み番号は, 符号無しの整数型であるINTNO型で表し,ターゲットハードウェアの仕様から決 まる自然な番号付けを基本として,ターゲット定義で付与される【NGKI0272】. そのため,1から連続した正の値であるとは限らない. それに対して,アプリケーションが用意した割込みハンドラをカーネルに登録 する場合に,割込みハンドラの登録対象となる割込みを識別するための番号を, 割込みハンドラ番号と呼ぶ.割込みハンドラ番号は,符号無しの整数型である INHNO 型で表し,ターゲットハードウェアの仕様から決まる自然な番号付けを基 本として,ターゲット定義で付与される【NGKI0273】.そのため,1から連続し た正の値であるとは限らない. 割込みハンドラ番号は,割込み番号と1対1に対応するのが基本である(両者が 一致する場合が多い)【NGKI0274】. 49 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2451 2452 2453 2454 2455 2456 2457 2458 2459 2460 2461 2462 2463 2464 2465 2466 2467 2468 2469 2470 2471 2472 2473 2474 2475 2476 2477 2478 2479 2480 2481 2482 2483 2484 2485 2486 2487 2488 2489 2490 2491 2492 2493 2494 2495 2496 2497 2498 2499 2500 ただし,割込みを要求したデバイスが割込みベクタを生成してプロセッサに渡 すアーキテクチャなどでは,割込み番号と割込みハンドラ番号の対応を,カー ネルが管理していない場合がある【NGKI0275】.そこで,ターゲット定義で, 割込み番号に対応しない割込みハンドラ番号や,割込みハンドラ番号に対応し ない割込み番号を設ける場合もある【NGKI0276】.ただし,割込みサービスルー チンの登録対象にできる割込み番号は,割込みハンドラ番号との1対1の対応関 係をカーネルが管理しているもののみである【NGKI0277】. 2.7.6 マルチプロセッサにおける割込み処理 この節では,マルチプロセッサにおける割込み処理について説明する.この節 の内容は,マルチプロセッサ対応カーネルにのみ適用される. マルチプロセッサ対応カーネルでは,TOPPERS標準割込み処理モデルの構成要素 の中で,図2-4の破線に囲まれた部分はプロセッサ毎に持ち,それ以外の部分は システム全体で1つのみ持つ【NGKI0278】.すなわち,全割込みロックフラグ, CPUロックフラグ,割込み優先度マスクはプロセッサ毎に持つのに対して,割込 み要求ラインおよびその属性(割込み要求禁止フラグ,割込み優先度,トリガ モード)はシステム全体で共通に持つ. 割込み番号は,割込み要求ラインを識別するための番号であることから,割込 み要求ラインが複数のプロセッサに接続されている場合でも,1つの割込み要求 ラインには1つの割込み番号を付与する【NGKI0279】.逆に,複数のプロセッサ が同じ種類のデバイスを持っている場合でも,別のデバイスからの割込み要求 ラインには異なる割込み番号を付与する(図2-5)【NGKI0280】.図2-5におい て,ローカルIRCは個々のプロセッサに対する割込みを制御するための回路であ り,グローバルIRCはデバイスからの割込みをプロセッサに分配するための回路 である.グローバルIRCは,必ず備わっているとは限らない. 割込み要求禁止フラグは,この仕様上はシステム全体で共通に持つこととして いるが,実際のターゲットハードウェア(特に,グローバルIRCを備えていない もの)では,プロセッサ毎に持っている場合がある.そのため,ターゲット定 義で,あるプロセッサで割込み要求禁止フラグを動的にセット/クリアしても, 他のプロセッサに対しては割込みがマスク/マスク解除されない場合があるも のとする【NGKI0281】. 複数のプロセッサに接続された割込み要求ラインに対して登録された割込みサー ビスルーチンは,それらのプロセッサのいずれによっても実行することができ る【NGKI0282】.ただし,その内のどのプロセッサで割込みサービスルーチン を実行するかは,割込みサービスルーチンが属するクラスの割付け可能プロセッ サにより決定される(「2.4.4 処理単位を実行するプロセッサ」の節を参照). 割込みサービスルーチンが属するクラスの割付け可能プロセッサは,登録対象 の割込み要求ラインが接続されたプロセッサの集合に含まれていなければなら ない【NGKI0283】.また,同一の割込み要求ラインに対して登録する割込みサー ビスルーチンは,同一のクラスに属していなければならない【NGKI0284】. それに対して,割込みハンドラはプロセッサ毎に登録する.そのため,同じ割 込み要求に対応する割込みハンドラであっても,プロセッサ毎に異なる割込み 50 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2501 2502 2503 2504 2505 2506 2507 2508 2509 2510 2511 2512 2513 2514 2515 2516 2517 2518 2519 2520 2521 2522 2523 2524 2525 2526 2527 2528 2529 2530 2531 2532 2533 2534 2535 2536 2537 2538 2539 2540 2541 2542 2543 2544 2545 2546 2547 2548 2549 2550 ハンドラ番号を付与する(図2-5)【NGKI0285】.割込みハンドラが属するクラ スの初期割付けプロセッサは,割込みが要求されるプロセッサと一致していな ければならない【NGKI0286】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルにおける割込み番号の付与方法は,複数のプロ セッサに接続された割込み要求ラインに対しては,割込み番号の上位ビットを 0とし,1つのプロセッサのみに接続された割込み要求ラインに対しては,割込 み番号の上位ビットに,接続されたプロセッサのID番号を含める方法を基本と する.また,割込みハンドラ番号の付与方法は,割込みハンドラ番号の上位ビッ トに,その割込みハンドラを実行するプロセッサのID番号を含める方法を基本 とする(図2-5). 1つのプロセッサのみに接続された割込み要求ラインに対して登録された割込み サービスルーチンは,そのプロセッサのみを割付け可能プロセッサとするクラ スに属していなければならない. 【使用上の注意】 複数のプロセッサで実行することができる割込みサービスルーチンは,それら のプロセッサのいずれかで実行されるものと設定した場合でも,複数回の割込 み要求により,異なるプロセッサで同時に実行される可能性がある. 2.7.7 カーネル管理外の割込み 高い割込み応答性を求められるアプリケーションでは,カーネル内で割込みを マスクすることにより,割込み応答性の要求を満たせなくなる場合がある.こ のような要求に対応するために,カーネル内では,ある割込み優先度(これを, TMIN_INTPRI と書く)よりも高い割込み優先度を持つ割込みをマスクしないこと としている【NGKI0287】.TMIN_INTPRIを固定するか設定できるようにするか, 設定できるようにする場合の設定方法は,ターゲット定義である【NGKI0288】. TMIN_INTPRI よりも高い割込み優先度を持ち,カーネル内でマスクしない割込み を,カーネル管理外の割込みと呼ぶ.また,カーネル管理外の割込みによって 起動される割込みハンドラを,カーネル管理外の割込みハンドラと呼ぶ.NMIは, カーネル管理外の割込みとして扱う.NMI以外にカーネル管理外の割込みを設け るか(設けられるようにするか)どうかは,ターゲット定義である【NGKI0289】. それに対して,TMIN_INTPRIと同じかそれよりも低い割込み優先度を持つ割込み をカーネル管理の割込み,カーネル管理の割込みによって起動される割込みハ ンドラをカーネル管理の割込みハンドラと呼ぶ. カーネル管理外の割込みハンドラは,カーネル内の割込み入口処理を経由せず に実行するのが基本である【NGKI0290】.ただし,すべての割込みで同じ番地 に分岐するプロセッサでは,カーネル内の割込み入口処理を全く経由せずにカー ネル管理外の割込みハンドラを実行することができず,入口処理の一部分を経 由してカーネル管理外の割込みハンドラが実行されることになる【NGKI0291】. カーネル管理外の割込みハンドラが実行開始される時のシステム状態とコンテ 51 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2551 2552 2553 2554 2555 2556 2557 2558 2559 2560 2561 2562 2563 2564 2565 2566 2567 2568 2569 2570 2571 2572 2573 2574 2575 2576 2577 2578 2579 2580 2581 2582 2583 2584 2585 2586 2587 2588 2589 2590 2591 2592 2593 2594 2595 2596 2597 2598 2599 2600 キスト,割込みハンドラの終了時に行われる処理,割込みハンドラの記述方法 は,ターゲット定義である【NGKI0292】.カーネル管理外の割込みハンドラか らは,システムインタフェースレイヤのAPIとsns_ker,ext_kerのみを呼び出す ことができ,その他のサービスコールを呼び出すことはできない【NGKI0293】. カーネル管理外の割込みハンドラから,その他のサービスコールを呼び出した 場合の動作は,保証されない【NGKI0294】. 2.7.8 カーネル管理外の割込みの設定方法 カーネル管理外の割込みの設定方法は,ターゲット定義で,次の3つの方法のい ずれかが採用される【NGKI0295】. (a-1) NMI以外にカーネル管理外の割込みを設けない (a-2) カーネル構築時に特定の割込みをカーネル管理外にすると決める これら場合には,カーネル管理外とする割込みはカーネル構築時(ターゲット 依存部の実装時やカーネルのコンパイル時)に決まるため,カーネル管理外と する割込みをアプリケーション側で設定する必要はない【NGKI0296】.ここで, カーネル管理外とされた割込みに対して,カーネルのAPIにより割込みハンドラ を登録できるかと,割込み要求ラインの属性を設定できるかは,ターゲット定 義である【NGKI0297】.割込みハンドラを登録できる場合には,それを定義す るAPIにおいて,カーネル管理外であることを示す割込みハンドラ属性 (TA_NONKERNEL)を指定する【NGKI0298】.また,割込み要求ラインの属性を 設定できる場合には,設定する割込み優先度をTMIN_INTPRIよりも高い値とする 【NGKI0299】. (b) カーネル管理外とする割込みをアプリケーションで設定できるようにする この場合には,カーネル管理外とする割込みの設定は,次の方法で行う.まず, カーネル管理外とする割込みハンドラを定義するAPIにおいて,カーネル管理外 であることを示す割込みハンドラ属性(TA_NONKERNEL)を指定する 【NGKI0300】.また,カーネル管理外とする割込みの割込み要求ラインに対し て設定する割込み優先度を,TMIN_INTPRIよりも高い値とする【NGKI0301】. いずれの場合にも,カーネル管理の割込みの割込み要求ラインに対して設定す る割込み優先度は,TMIN_INTPRIより高い値であってはならない【NGKI0302】. また,カーネル管理外の割込みに対して,割込みサービスルーチンを登録する ことはできない【NGKI0303】. 2.8 CPU 例外処理モデル プロセッサが検出するCPU例外の種類や,CPU例外検出時のプロセッサの振舞い は,プロセッサによって大きく異なる.そのため,CPU例外ハンドラをターゲッ トハードウェアに依存せずに記述することは,少なくとも現時点では困難であ る.そこでこの仕様では,CPU例外の処理モデルを厳密に標準化するのではなく, ターゲットハードウェアに依存せずに決められる範囲で規定する. 2.8.1 CPU 例外処理の流れ アプリケーションは,プロセッサが検出するCPU例外の種類毎に,CPU例外ハン 52 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2601 2602 2603 2604 2605 2606 2607 2608 2609 2610 2611 2612 2613 2614 2615 2616 2617 2618 2619 2620 2621 2622 2623 2624 2625 2626 2627 2628 2629 2630 2631 2632 2633 2634 2635 2636 2637 2638 2639 2640 2641 2642 2643 2644 2645 2646 2647 2648 2649 2650 ドラを登録することができる【NGKI0304】.プロセッサがCPU例外の発生を検出 すると,カーネル内のCPU例外ハンドラの入口処理(CPU例外入口処理)を経由 して,発生したCPU例外に対して登録したCPU例外ハンドラが呼び出される 【NGKI0305】. CPU例外ハンドラの登録対象となるCPU例外を識別するための番号を,CPU例外ハ ンドラ番号と呼ぶ.CPU例外ハンドラ番号は,符号無しの整数型であるEXCNO型 で表し,ターゲットハードウェアの仕様から決まる自然な番号付けを基本とし て,ターゲット定義で付与される【NGKI0306】.そのため,1から連続した正の 値であるとは限らない. マルチプロセッサ対応カーネルでは,異なるプロセッサで発生するCPU例外は, 異なるCPU例外であると扱う【NGKI0307】.すなわち,同じ種類のCPU例外であっ ても,異なるプロセッサのCPU例外には異なるCPU例外ハンドラ番号を付与し, プロセッサ毎にCPU例外ハンドラを登録する.CPU例外ハンドラが属するクラス の初期割付けプロセッサは,CPU例外が発生するプロセッサと一致していなけれ ばならない【NGKI0308】. CPU例外ハンドラにおいては,CPU例外が発生した状態からのリカバリ処理を行 う【NGKI0309】.どのようなリカバリ処理を行うかは,一般にはCPU例外の種類 やそれが発生したコンテキストおよび状態に依存するが,大きく次の4つの方法 が考えられる【NGKI0310】. (a) カーネルに依存しない形でCPU例外の原因を取り除き,実行を継続する. (b) CPU 例外を起こしたタスクよりも優先度の高いタスクを起動または待ち解除 し,そのタスクでリカバリ処理を行う(例えば,CPU例外を起こしたタスクを強 制終了し,再度起動する).ただし,CPU例外を起こしたタスクが最高優先度の 場合には,この方法でリカバリ処理を行うことはできない(リカバリ処理を行 うタスクを最高優先度とし,タスクの起動または待ち解除後に優先順位を回転 させることで,リカバリ処理を行える可能性があるが,CPU例外を起こしたタス クが制約タスクの場合には適用できないなど,推奨できる方法ではない) 【NGKI0311】. (c) CPU 例外を起こしたタスクにタスク例外処理を要求し,タスク例外処理ルー チンでリカバリ処理を行う(例えば,CPU例外を起こしたタスクを終了する). (d) システム全体に対してリカバリ処理を行う(例えば,システムを再起動す る). この中で(a)と(d)の方法は,カーネルの機能を必要としないため,CPU例外が発 生したコンテキストおよび状態に依存せずに常に行える【NGKI0312】.それに 対して(b)と(c)の方法は,CPU例外ハンドラからそのためのサービスコールを呼 び出せることが必要であり,それが行えるかどうかは,CPU例外が発生したコン テキストおよび状態に依存する【NGKI0313】. なお,発生したCPU例外に対して,CPU例外ハンドラを登録していない場合の振 舞いは,ターゲット定義である【NGKI0314】. 【使用上の注意】 53 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2651 2652 2653 2654 2655 2656 2657 2658 2659 2660 2661 2662 2663 2664 2665 2666 2667 2668 2669 2670 2671 2672 2673 2674 2675 2676 2677 2678 2679 2680 2681 2682 2683 2684 2685 2686 2687 2688 2689 2690 2691 2692 2693 2694 2695 2696 2697 2698 2699 2700 CPU例外入口処理でCPU例外が発生し,それを処理するためのCPU例外ハンドラの 入口処理で同じ原因でCPU例外が発生すると,CPU例外が繰り返し発生し,アプ リケーションが登録したCPU例外ハンドラまで処理が到達しない状況が考えられ る.このような状況が発生するかどうかはターゲットによるが,これが許容で きない場合には,CPU例外入口処理を経由せずに,アプリケーションが用意した CPU例外ハンドラを直接実行するようにしなければならない. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルにおけるCPU例外ハンドラ番号の付与方法は, CPU例外ハンドラ番号の上位ビットに,そのCPU例外が発生するプロセッサのID 番号を含める方法を基本とする. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,CPU例外からのリカバリ処理の方法については,記述され ていない. 2.8.2 CPU 例外ハンドラから呼び出せるサービスコール CPU例外ハンドラからは,CPU例外発生時のディスパッチ保留状態を参照するサー ビスコール(xsns_dpn)と,CPU例外発生時にタスク例外処理ルーチンを実行開 始できない状態であったかを参照するサービスコール(xsns_xpn)を呼び出す ことができる【NGKI0315】. xsns_dpn は,CPU例外がタスクコンテキストで発生し,そのタスクがディスパッ チできる状態であった場合にfalseを返す【NGKI0316】.xsns_dpnがfalseを返 した場合,そのCPU例外ハンドラから,非タスクコンテキストから呼び出せるす べてのサービスコールを呼び出すことができ,(b)の方法によるリカバリ処理が 可能である【NGKI0317】.ただし,CPU例外を起こしたタスクが最高優先度の場 合には,この方法でリカバリ処理を行うことはできない【NGKI0318】. xsns_xpn は,CPU例外がタスクコンテキストで発生し,そのタスクがタスク例外 処理ルーチンを実行できる状態であった場合にfalseを返す【NGKI0319】. xsns_xpn がfalse を返した場合,そのCPU例外ハンドラから,非タスクコンテキ ストから呼び出せるすべてのサービスコールを呼び出すことができ,(c)の方法 によるリカバリ処理が可能である【NGKI0320】. xsns_dpn とxsns_xpnのいずれのサービスコールもtrueを返した場合,そのCPU例 外ハンドラからは,xsns_dpnとxsns_xpnに加えて,システムインタフェースレ イヤのAPIとsns_ker,ext_kerのみを呼び出すことができ,その他のサービスコー ルを呼び出すことはできない【NGKI0321】.いずれのサービスコールもtrueを 返したにもかかわらず,その他のサービスコールを呼び出した場合の動作は, 保証されない【NGKI0322】.この場合には,(b)と(c)の方法によるリカバリ処 理は行うことはできず,(a)または(d)の方法によるリカバリ処理を行うしかな いことになる. 【μITRON4.0仕様との関係】 54 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2701 2702 2703 2704 2705 2706 2707 2708 2709 2710 2711 2712 2713 2714 2715 2716 2717 2718 2719 2720 2721 2722 2723 2724 2725 2726 2727 2728 2729 2730 2731 2732 2733 2734 2735 2736 2737 2738 2739 2740 2741 2742 2743 2744 2745 2746 2747 2748 2749 2750 CPU例外ハンドラで行える操作に関しては,μITRON4.0仕様を見直し,全面的に 修正した. 2.8.3 エミュレートされたCPU例外ハンドラ エラーコードによってアプリケーションに通知できないエラーをカーネルが検 出した場合に,アプリケーションが登録したエラー処理を,カーネルが呼び出 す場合がある【NGKI0323】.この場合に,カーネルが検出するエラーをCPU例外 と同等に扱うものとし,エミュレートされたCPU例外と呼ぶ【NGKI0324】.また, エラー処理のためのプログラムをCPU例外ハンドラと同等に扱うものとし,エミュ レートされたCPU例外ハンドラと呼ぶ【NGKI0325】. 具体的には,エミュレートされたCPU例外ハンドラに対してもCPU例外ハンドラ 番号が付与され,CPU例外ハンドラと同じ方法で登録できる【NGKI0326】.また, エミュレートされたCPU例外ハンドラからも,CPU例外ハンドラから呼び出せる サービスコールを呼び出すことができ,CPU例外ハンドラと同様のリカバリ処理 を行うことができる【NGKI0327】. 【μITRON4.0仕様との関係】 エミュレートされたCPU例外およびCPU例外ハンドラは,μITRON4.0仕様に定義 されていない概念である. 2.8.4 カーネル管理外のCPU例外 カーネル非動作状態,カーネル内のクリティカルセクションの実行中(これを, カーネル実行中と呼ぶ),全割込みロック状態,CPUロック状態,カーネル管理 外の割込みハンドラ実行中のいずれかで発生したCPU例外を,カーネル管理外の CPU例外と呼ぶ.また,それによって起動されるCPU例外ハンドラを,カーネル 管理外のCPU例外ハンドラと呼ぶ.さらに,カーネル管理外のCPU例外ハンドラ 実行中に発生したCPU例外も,カーネル管理外のCPU例外とする. それに対して,カーネル管理外のCPU例外以外のCPU例外をカーネル管理のCPU例 外,カーネル管理のCPU例外によって起動されるCPU例外ハンドラをカーネル管 理のCPU例外ハンドラと呼ぶ. カーネル管理外のCPU例外ハンドラからは,システムインタフェースレイヤの APIとsns_ker,ext_ker,xsns_dpn,xsns_xpnのみを呼び出すことができ,その 他のサービスコールを呼び出すことはできない【NGKI0328】.カーネル管理外 のCPU例外ハンドラから,その他のサービスコールを呼び出した場合の動作は, 保証されない【NGKI0329】. カーネル管理外のCPU例外ハンドラにおいては,xsns_dpnとxsns_xpnのいずれの サービスコールもtrueを返す【NGKI0330】.そのため,カーネル管理外のCPU例 外からは,(a)または(d)の方法によるリカバリ処理しか行えない. 【補足説明】 カーネル管理外のCPU例外は,カーネル管理外の割込みと異なり,特定のCPU例 外をカーネル外とするわけではない.同じCPU例外であっても,CPU例外が起こ 55 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2751 2752 2753 2754 2755 2756 2757 2758 2759 2760 2761 2762 2763 2764 2765 2766 2767 2768 2769 2770 2771 2772 2773 2774 2775 2776 2777 2778 2779 2780 2781 2782 2783 2784 2785 2786 2787 2788 2789 2790 2791 2792 2793 2794 2795 2796 2797 2798 2799 2800 る状況によって,カーネル管理となる場合とカーネル管理外となる場合がある. 2.9 システムの初期化と終了 2.9.1 システム初期化手順 システムのリセット後,最初に実行するプログラムを,スタートアップモジュー ルと呼ぶ.スタートアップモジュールはカーネルの管理外であり,アプリケー ションで用意するのが基本であるが,スタートアップモジュールで行うべき処 理を明確にするために,カーネルの配布パッケージの中に,標準のスタートアッ プモジュールが用意されている【NGKI0331】. 標準のスタートアップモジュールは,プロセッサのモードとスタックポインタ 等の初期化,NMIを除くすべての割込みのマスク(全割込みロック状態と同等の 状態にする),ターゲットシステム依存の初期化フックの呼出し,非初期化デー タセクション(bssセクション)のクリア,初期化データセクション(dataセク ション)の初期化,ソフトウェア環境(ライブラリなど)依存の初期化フック の呼出しを行った後,カーネルの初期化処理へ分岐する【NGKI0332】.ここで 呼び出すターゲットシステム依存の初期化フックでは,リセット後に速やかに 行うべき初期化処理を行うことが想定されている. マルチプロセッサ対応カーネルでは,すべてのプロセッサがスタートアップモ ジュールを実行し,カーネルの初期化処理へ分岐する【NGKI0333】.ただし, 共有リソースの初期化処理(非初期化データセクションのクリア,初期化デー タセクションの初期化,ソフトウェア環境依存の初期化フックの呼出しなど) は,マスタプロセッサのみで実行する【NGKI0334】.各プロセッサがカーネル の初期化処理へ分岐するのは,共有リソースの初期化処理が完了した後でなけ ればならないため,スレーブプロセッサは,カーネルの初期化処理へ分岐する 前に,マスタプロセッサによる共有リソースの初期化処理の完了を待ち合わせ る必要がある【NGKI0335】. カーネルの初期化処理においては,まず,カーネル自身の初期化処理(カーネ ル内のデータ構造の初期化,カーネルが用いるデバイスの初期化など)と静的 APIの処理(オブジェクトの登録など)が行われる【NGKI0336】.静的APIのパ ラメータに関するエラーは,コンフィギュレータによって検出されるのが原則 であるが,コンフィギュレータで検出できないエラーが,この処理中に検出さ れる場合もある【NGKI0337】. 静的APIの処理順序によりシステムの規定された振舞いが変化する場合には,シ ステムコンフィギュレーションファイルにおける静的APIの記述順と同じ順序で 静的APIが処理された場合と,同じ振舞いとなる【NGKI0338】.例えば,静的 APIによって同じ優先度のタスクを複数生成・起動した場合,静的APIの記述順 が先のタスクが高い優先順位を持つ.それに対して,周期ハンドラの動作開始 順序は,同じタイムティックで行うべき処理が複数ある場合の処理順序が規定 されないことから(「4.6.1 システム時刻管理」の節を参照),静的APIの記述 順となるとは限らない. 次に,静的API(ATT_INI)により登録した初期化ルーチンが,システムコンフィ ギュレーションファイルにおける静的APIの記述順と同じ順序で実行される 【NGKI0339】. 56 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2801 2802 2803 2804 2805 2806 2807 2808 2809 2810 2811 2812 2813 2814 2815 2816 2817 2818 2819 2820 2821 2822 2823 2824 2825 2826 2827 2828 2829 2830 2831 2832 2833 2834 2835 2836 2837 2838 2839 2840 2841 2842 2843 2844 2845 2846 2847 2848 2849 2850 マルチプロセッサ対応カーネルでは,すべてのプロセッサがカーネル自身の初 期化処理と静的APIの処理を完了した後に,マスタプロセッサがグローバル初期 化ルーチンを実行する【NGKI0340】.グローバル初期化ルーチンの実行が完了 した後に,各プロセッサは,自プロセッサに割り付けられたローカル初期化ルー チンを実行する【NGKI0341】.すなわち,ローカル初期化ルーチンは,初期割 付けプロセッサにより実行される. 以上が終了すると,カーネル非動作状態から動作状態に遷移し(「2.5.1 カー ネル動作状態と非動作状態」の節を参照),カーネルの動作が開始される 【NGKI0342】.具体的には,システム状態が,全割込みロック解除状態・CPUロッ ク解除状態・割込み優先度マスク全解除状態・ディスパッチ許可状態に設定さ れ(すなわち,割込みがマスク解除され),タスクの実行が開始される. マルチプロセッサ対応カーネルでは,すべてのプロセッサがローカル初期化ルー チンの実行を完了した後に,カーネル非動作状態から動作状態に遷移し,カー ネルの動作が開始される【NGKI0343】.マルチプロセッサ対応カーネルにおけ るシステム初期化の流れと,各プロセッサが同期を取るタイミングを,図2-6に 示す【NGKI0344】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様においては,初期化ルーチンの実行は静的APIの処理に含まれる ものとしていたが,この仕様では,初期化ルーチンを登録する静的APIの処理は, 初期化ルーチンを登録することのみを意味し,初期化ルーチンの実行は含まな いものとした. 2.9.2 システム終了手順 カーネルを終了させるサービスコール(ext_ker)を呼び出すと,カーネル動作 状態から非動作状態に遷移する(「2.5.1 カーネル動作状態と非動作状態」の 節を参照)【NGKI0345】.具体的には,NMIを除くすべての割込みがマスクされ, タスクの実行が停止される. マルチプロセッサ対応カーネルでは,カーネルを終了させるサービスコール (ext_ker)は,どのプロセッサからでも呼び出すことができる【NGKI0346】. 1つのプロセッサでカーネルを終了させるサービスコールを呼び出すと,そのプ ロセッサがカーネル動作状態から非動作状態に遷移した後,他のプロセッサに 対してカーネル終了処理の開始を要求する【NGKI0347】.複数のプロセッサか ら,カーネルを終了させるサービスコール(ext_ker)を呼び出してもよい 【NGKI0348】. 次に,静的API(ATT_TER)により登録した終了処理ルーチンが,システムコン フィギュレーションファイルにおける静的APIの記述順と逆の順序で実行される 【NGKI0349】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,すべてのプロセッサがカーネル非動作状 態に遷移した後に,各プロセッサが,自プロセッサに割り付けられたローカル 終了処理ルーチンを実行する【NGKI0350】.すなわち,ローカル終了処理ルー チンは,初期割付けプロセッサにより実行される.すべてのプロセッサでロー 57 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2851 2852 2853 2854 2855 2856 2857 2858 2859 2860 2861 2862 2863 2864 2865 2866 2867 2868 2869 2870 2871 2872 2873 2874 2875 2876 2877 2878 2879 2880 2881 2882 2883 2884 2885 2886 2887 2888 2889 2890 2891 2892 2893 2894 2895 2896 2897 2898 2899 2900 カル終了処理ルーチンの実行が完了した後に,マスタプロセッサがグローバル 終了処理ルーチンを実行する【NGKI0351】. 以上が終了すると,ターゲットシステム依存の終了処理が呼び出される 【NGKI0352】.ターゲットシステム依存の終了処理は,カーネルの管理外であ り,アプリケーションで用意するのが基本であるが,カーネルの配布パッケー ジの中に,ターゲットシステム毎に標準的なルーチンが用意されている 【NGKI0353】.標準のターゲットシステム依存の終了処理では,ソフトウェア 環境(ライブラリなど)依存の終了処理フックを呼び出す【NGKI0354】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,すべてのプロセッサで,ターゲットシス テム依存の終了処理が呼び出される【NGKI0355】.マルチプロセッサ対応カー ネルにおけるシステム終了処理の流れと,各プロセッサが同期を取るタイミン グを,図2-7に示す【NGKI0356】. 【使用上の注意】 マルチプロセッサ対応カーネルで,あるプロセッサからカーネルを終了させる サービスコール(ext_ker)を呼び出しても,他のプロセッサがカーネル動作状 態で割込みをマスクしたまま実行し続けると,カーネルが終了しない. プロセッサが割込みをマスクしたまま実行し続けないようにするのは,アプリ ケーションの責任である.例えば,ある時間を超えて割込みをマスクしたまま 実行し続けていないかを,ウォッチドッグタイマを用いて監視する方法が考え られる.割込みをマスクしたまま実行し続けていた場合には,そのプロセッサ からもカーネルを終了させるサービスコール(ext_ker)を呼び出すことで,カー ネルを終了させることができる. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様には,システム終了に関する規定はない. 2.10 オブジェクトの登録とその解除 2.10.1 ID 番号で識別するオブジェクト ID番号で識別するオブジェクトは,オブジェクトを生成する静的 API(CRE_YYY),サービスコール(acre_yyy),またはオブジェクトを追加す る静的API(ATT_YYY,ATA_YYY)によってカーネルに登録する【NGKI0357】.オ ブジェクトを追加する静的APIによって登録されたオブジェクトはID番号を持た ないため,ID番号を指定して操作することができない【NGKI0358】. オブジェクトを生成する静的API(CRE_YYY)は,生成するオブジェクトにID番 号を割り付け,ID番号を指定するパラメータとして記述した識別名を,割り付 けたID番号にマクロ定義する【NGKI0359】.同じ識別名のオブジェクトが生成 済みの場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI0360】. オブジェクトを生成するサービスコール(acre_yyy)は,割付け可能なID番号 の数を指定する静的API(AID_YYY)によって確保されたID番号の中から,使用 されていないID番号を1つ選び,生成するオブジェクトに割り付ける 58 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2901 2902 2903 2904 2905 2906 2907 2908 2909 2910 2911 2912 2913 2914 2915 2916 2917 2918 2919 2920 2921 2922 2923 2924 2925 2926 2927 2928 2929 2930 2931 2932 2933 2934 2935 2936 2937 2938 2939 2940 2941 2942 2943 2944 2945 2946 2947 2948 2949 2950 【NGKI0361】.割り付けたID番号は,サービスコールの返値としてアプリケー ションに通知する【NGKI0362】.使用されていないID番号が残っていない場合 には,E_NOID エラーとなる【NGKI0363】. 割付け可能なID番号の数を指定する静的API(AID_YYY)は,システムコンフィ ギュレーションファイル中に複数記述することができる【NGKI0364】.その場 合,各静的APIで指定した数の合計の数のID番号が確保される【NGKI0365】. オブジェクトを生成するサービスコール(acre_yyy)によって登録したオブジェ クトは,オブジェクトを削除するサービスコール(del_yyy)によって登録を解 除することができる【NGKI0366】.登録解除したオブジェクトのID番号は,未 使用の状態に戻され,そのID番号を用いて新しいオブジェクトを登録すること ができる【NGKI0367】.この場合に,登録解除前のオブジェクトに対して行う つもりの操作が,新たに登録したオブジェクトに対して行われないように,注 意が必要である. オブジェクトを生成または追加する静的APIによって登録したオブジェクトは, 登録を解除することができない【NGKI0368】.登録を解除しようとした場合に は,E_OBJエラーとなる【NGKI0369】. タスク以外の処理単位は,その処理単位が実行されている間でも,登録解除す ることができる【NGKI0370】.この場合,登録解除された処理単位に実行が強 制的に終了させられることはなく,処理単位が自ら実行を終了するまで,処理 単位の実行は継続される【NGKI0371】. 同期・通信オブジェクトを削除した時に,そのオブジェクトを待っているタス クがあった場合,それらのタスクは待ち解除され,待ち状態に遷移させたサー ビスコールはE_DLTエラーとなる【NGKI0372】.複数のタスクが待ち解除される 場合には,待ち行列につながれていた順序で待ち解除される【NGKI0373】.削 除した同期・通信オブジェクトが複数の待ち行列を持つ場合には,別の待ち行 列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,該当するサービスコール毎に 規定する【NGKI0374】. オブジェクトを再初期化するサービスコール(ini_yyy)は,指定したオブジェ クトを削除した後に,同じパラメータで再度生成したのと等価の振舞いをする 【NGKI0375】.ただし,オブジェクトを生成または追加する静的APIによって登 録したオブジェクトも,再初期化することができる【NGKI0376】. なお,動的生成対応カーネル以外では,オブジェクトを生成するサービスコー ル(acre_yyy),割付け可能なID番号の数を指定する静的API(AID_YYY),オ ブジェクトを削除するサービスコール(del_yyy)は,サポートされない 【NGKI0377】. 【μITRON4.0仕様との関係】 ID番号を指定してオブジェクトを生成するサービスコール(cre_yyy)を廃止し た.また,オブジェクトを生成または追加する静的APIによって登録したオブジェ クトは,登録解除できないこととした. μITRON4.0仕様では,割付け可能なID番号の数を指定する静的API(AID_YYY) 59 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 2951 2952 2953 2954 2955 2956 2957 2958 2959 2960 2961 2962 2963 2964 2965 2966 2967 2968 2969 2970 2971 2972 2973 2974 2975 2976 2977 2978 2979 2980 2981 2982 2983 2984 2985 2986 2987 2988 2989 2990 2991 2992 2993 2994 2995 2996 2997 2998 2999 3000 は規定されていない. 複数の待ち行列を持つ同期・通信オブジェクトを削除した時に,別の待ち行列 で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,μITRON4.0仕様では実装依存と されている. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 アクセス許可ベクタを指定してオブジェクトを生成する静的API(CRA_YYY)は 廃止し,オブジェクトの登録後にアクセス許可ベクタを設定する静的 API(SAC_YYY)をサポートすることとした.これにあわせて,アクセス許可ベ クタを指定してオブジェクトを登録するサービスコール(cra_yyy,acra_yyy, ata_yyy)も廃止した. 【仕様決定の理由】 ID番号を指定してオブジェクトを生成するサービスコール(cre_yyy)とアクセ ス許可ベクタを指定してオブジェクトを登録するサービスコール(cra_yyy, acra_yyy ,ata_yyy)を廃止したのは,必要性が低いと考えたためである. 静的APIについても,サービスコールに整合するよう変更した. 2.10.2 オブジェクト番号で識別するオブジェクト オブジェクト番号で識別するオブジェクトは,オブジェクトを定義する静的 API(DEF_YYY)またはサービスコール(def_yyy)によってカーネルに登録する 【NGKI0378】. オブジェクトを定義するサービスコール(def_yyy)によって登録したオブジェ クトは,同じサービスコールを,オブジェクトの定義情報を入れたパケットへ のポインタをNULLとして呼び出すことによって,登録を解除することができる 【NGKI0379】.登録解除したオブジェクト番号は,オブジェクト登録前の状態 に戻され,同じオブジェクト番号に対して新たにオブジェクトを定義すること ができる【NGKI0380】.登録解除されていないオブジェクト番号に対して再度 オブジェクトを登録しようとした場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI0381】. オブジェクトを定義する静的APIによって登録したオブジェクトは,登録を解除 することができない【NGKI0382】.登録を解除しようとした場合には,E_OBJエ ラーとなる【NGKI0383】. なお,動的生成対応カーネル以外では,オブジェクトを定義するサービスコー ル(def_yyy)はサポートされない【NGKI0384】. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,オブジェクトの定義を変更したい場合には,一度登録解除した 後に,新たにオブジェクトを定義する必要がある.また,オブジェクトを定義 する静的APIによって登録したオブジェクトは,この仕様では,登録解除できな いこととした. 2.10.3 識別番号を持たないオブジェクト 60 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3001 3002 3003 3004 3005 3006 3007 3008 3009 3010 3011 3012 3013 3014 3015 3016 3017 3018 3019 3020 3021 3022 3023 3024 3025 3026 3027 3028 3029 3030 3031 3032 3033 3034 3035 3036 3037 3038 3039 3040 3041 3042 3043 3044 3045 3046 3047 3048 3049 3050 識別する必要がないために,識別番号を持たないオブジェクトは,オブジェク トを追加する静的API(ATT_YYY)によってカーネルに登録する. 2.10.4 オブジェクト生成に必要なメモリ領域 カーネルオブジェクトを生成する際に,サイズが一定でないメモリ領域を必要 とする場合には,カーネルオブジェクトを生成する静的APIおよびサービスコー ルに,使用するメモリ領域の先頭番地を渡すパラメータを設けている 【NGKI0385】.このパラメータをNULLとした場合,必要なメモリ領域は,コン フィギュレータまたはカーネルにより確保される【NGKI0386】. オブジェクト生成に必要なメモリ領域の中で,カーネルの内部で用いるものを, カーネルの用いるオブジェクト管理領域と呼ぶ.この仕様では,以下のメモリ 領域が,カーネルの用いるオブジェクト管理領域に該当する. ・データキュー管理領域 ・優先度データキュー管理領域 ・優先度別のメッセージキューヘッダ領域 ・固定長メモリプール管理領域 【補足説明】 カーネルオブジェクトを生成する際には,管理ブロックなどを置くためのメモ リ領域も必要になるが,サイズが一定のメモリ領域はコンフィギュレータによ り確保されるため,カーネルオブジェクトを生成する静的APIおよびサービスコー ルにそれらのメモリ領域の先頭番地を渡すパラメータを設けていない. 2.10.5 オブジェクトが属する保護ドメインの設定 保護機能対応カーネルにおいて,カーネルオブジェクトが属する保護ドメイン は,オブジェクトの登録時に決定し,登録後に変更することはできない 【NGKI0387】. カーネルオブジェクトを静的APIによって登録する場合には,オブジェクトを登 録する静的APIを,そのオブジェクトを属させる保護ドメインの囲みの中に記述 する【NGKI0388】.無所属のオブジェクトを登録する静的APIは,保護ドメイン の囲みの外に記述する(「2.12.3 保護ドメインの指定」の節を参照) 【NGKI0389】. カーネルオブジェクトをサービスコールによって登録する場合には,オブジェ クト属性にTA_DOM(domid)を指定することにより,オブジェクトを属させる保護 ドメインを設定する【NGKI0390】.ここでdomidは,そのオブジェクトを属させ る保護ドメインのID番号であり,TDOM_KERNEL(=-1)を指定することでカーネ ルドメインに属させることができる.また,domidにTDOM_SELF(=0)を指定す るか,オブジェクト属性にTA_DOM(domid)を指定しないことで,自タスクが属す る保護ドメインに属させることができる.さらに,無所属のオブジェクトを登 録する場合には,domidにTDOM_NONE(=-2)を指定する. ただし,特定の保護ドメインのみに属することができるカーネルオブジェクト 61 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3051 3052 3053 3054 3055 3056 3057 3058 3059 3060 3061 3062 3063 3064 3065 3066 3067 3068 3069 3070 3071 3072 3073 3074 3075 3076 3077 3078 3079 3080 3081 3082 3083 3084 3085 3086 3087 3088 3089 3090 3091 3092 3093 3094 3095 3096 3097 3098 3099 3100 を登録するサービスコールの中には,オブジェクトを属させる保護ドメインを オブジェクト属性で設定する必要がないものもある【NGKI0391】. 割付け可能なID番号の数を指定する静的API(AID_YYY)で確保したID番号は, どの保護ドメインに属するオブジェクトにも(また,無所属のオブジェクトに も)割り付けられる【NGKI0392】.これらの静的APIは,保護ドメインの囲みの 外に記述しなければならない.保護ドメインの囲みの中に記述した場合には, E_RSATR エラーとなる【NGKI0394】. 【補足説明】 この仕様では,カーネルオブジェクトの属する保護ドメインを参照する機能は 用意していない. 【仕様決定の理由】 カーネルオブジェクトをサービスコールによって登録する場合に,オブジェク トを属させる保護ドメインをオブジェクト属性で指定することにしたのは,保 護機能対応でないカーネルとの互換性のためには,サービスコールのパラメー タを増やさない方が望ましいためである. 2.10.6 オブジェクトが属するクラスの設定 マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,カーネルオブジェクトが属するクラ スは,オブジェクトの登録時に決定し,登録後に変更することはできない 【NGKI0395】. カーネルオブジェクトを静的APIによって登録する場合には,オブジェクトを登 録する静的APIを,そのオブジェクトを属させるクラスの囲みの中に記述する 【NGKI0396】.クラスに属さないオブジェクトを登録する静的APIは,クラスの 囲みの外に記述する(「2.12.4 クラスの指定」の節を参照)【NGKI0397】. カーネルオブジェクトをサービスコールによって登録する場合には,オブジェ クト属性にTA_CLS(clsid)を指定することにより,オブジェクトを属させるクラ スを設定する【NGKI0398】.ここでclsidは,そのオブジェクトを属させるクラ スのID番号であり,clsidにTCLS_SELF(=0)を指定するか,オブジェクト属性 にTA_CLS(clsid)を指定しないことで,自タスクが属するクラスに属させること ができる. 割付け可能なID番号の数を指定する静的API(AID_YYY)で確保したID番号は, 静的APIを囲むクラスに属するオブジェクトにのみ割り付けられる【NGKI0399】. これらの静的APIは,確保したID番号を割り付けるオブジェクトの属すべきクラ スの囲みの中に記述しなければならない.クラスの囲みの外に記述した場合に は,E_RSATRエラーとなる【NGKI0401】. 【補足説明】 この仕様では,カーネルオブジェクトの属するクラスを参照する機能は用意し ていない. 62 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3101 3102 3103 3104 3105 3106 3107 3108 3109 3110 3111 3112 3113 3114 3115 3116 3117 3118 3119 3120 3121 3122 3123 3124 3125 3126 3127 3128 3129 3130 3131 3132 3133 3134 3135 3136 3137 3138 3139 3140 3141 3142 3143 3144 3145 3146 3147 3148 3149 3150 【仕様決定の理由】 カーネルオブジェクトをサービスコールによって登録する場合に,オブジェク トを属させるクラスをオブジェクト属性で指定することにしたのは,マルチプ ロセッサ対応でないカーネルとの互換性のためには,サービスコールのパラメー タを増やさない方が望ましいためである. 2.10.7 オブジェクトの状態参照 ID番号で識別するオブジェクトのすべてと,オブジェクト番号で識別するオブ ジェクトの一部に対して,オブジェクトの状態を参照するサービスコール (ref_yyy,get_yyy)を用意する【NGKI0402】. オブジェクトの状態を参照するサービスコールでは,オブジェクトの登録時に 指定し,その後に変化しない情報(例えば,タスクのタスク属性や初期優先度) を参照するための機能は用意しないことを原則とする【NGKI0403】.自タスク の拡張情報の参照するサービスコール(get_inf)は,この原則に対する例外で ある【NGKI0404】. 2.11 オブジェクトのアクセス保護 この節では,カーネルオブジェクトのアクセス保護について述べる.この節の 内容は,保護機能対応カーネルにのみ適用される. 2.11.1 オブジェクトのアクセス保護とアクセス違反の通知 カーネルオブジェクトに対するアクセスは,そのオブジェクトに対して設定さ れたアクセス許可ベクタによって保護される【NGKI0405】.ただし,アクセス 許可ベクタを持たないオブジェクトに対するアクセスは,システム状態に対す るアクセス許可ベクタによって保護される【NGKI0406】.また,オブジェクト を登録するサービスコールと,特定のオブジェクトに関連しないシステムの状 態に対するアクセスについては,システム状態のアクセス許可ベクタによって 保護される【NGKI0407】. アクセス許可ベクタによって許可されていないアクセス(アクセス違反)は, カーネルによって検出され,以下の方法によって通知される. サービスコールにより,メモリオブジェクト以外のカーネルオブジェクトに対 して,許可されていないアクセスを行おうとした場合,サービスコールから E_OACV エラーが返る【NGKI0408】.また,メモリオブジェクトに対して,許可 されていない管理操作または参照操作を行おうとした場合も,サービスコール からE_OACVエラーが返る【NGKI0409】. メモリオブジェクトに対して,通常のメモリアクセスにより,許可されていな い書込みアクセスまたは読出しアクセス(実行アクセスを含む)を行おうとし た場合,CPU例外ハンドラが起動される【NGKI0410】.どのCPU例外ハンドラが 起動されるかは,ターゲット定義である【NGKI0411】.ターゲットによっては, エミュレートされたCPU例外ハンドラの場合もある.また,ターゲット定義で, アクセス違反の状況に応じて異なるCPU例外ハンドラが起動される場合もある. この(これらの)CPU例外ハンドラを,メモリアクセス違反ハンドラと呼ぶ. 63 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3151 3152 3153 3154 3155 3156 3157 3158 3159 3160 3161 3162 3163 3164 3165 3166 3167 3168 3169 3170 3171 3172 3173 3174 3175 3176 3177 3178 3179 3180 3181 3182 3183 3184 3185 3186 3187 3188 3189 3190 3191 3192 3193 3194 3195 3196 3197 3198 3199 3200 メモリオブジェクトに対して,サービスコールを通じて,許可されていない書 込みアクセスまたは読出しアクセスを行おうとした場合,サービスコールから E_MACV エラーが返るか,メモリアクセス違反ハンドラが起動される 【NGKI0412】.E_MACVエラーが返るかメモリアクセス違反ハンドラされるかは, ターゲット定義である【NGKI0413】. メモリアクセス違反ハンドラでは,アクセス違反を発生させたアクセスに関す る情報(アクセスした番地,アクセスの種別,アクセスした命令の番地など) を参照する方法を,ターゲット定義で用意する【NGKI0414】. メモリオブジェクトとしてカーネルに登録されていないメモリ領域に対して, ユーザドメインから書込みアクセスまたは読出しアクセス(実行アクセスを含 む)を行おうとした場合には,メモリオブジェクトに対するアクセスが許可さ れていない場合と同様に扱われる【NGKI0415】.カーネルドメインから同様の アクセスを行おうとした場合の動作は保証されない【NGKI0416】. 【未決定事項】 マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,システム状態のアクセス許可ベクタ をシステム全体で1つ持つかプロセッサ毎に持つかは,今後の課題である. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様では,アクセス保護の実装定義の制限について規定している が,この仕様では,メモリオブジェクトに対するアクセス許可ベクタのターゲッ ト定義の制限以外については規定していない. 【仕様決定の理由】 オブジェクトを登録するサービスコールを,そのオブジェクトのアクセス許可 ベクタによって保護しないのは,オブジェクトを登録する前には,アクセス許 可ベクタが設定されていないためである. 2.11.2 メモリオブジェクトに対するアクセス許可ベクタの制限 メモリオブジェクトの書込みアクセスと読出しアクセス(実行アクセスを含む) に対して設定できるアクセス許可パターンは,ターゲット定義で制限される場 合がある【NGKI0417】. ただし,少なくとも,次の5つの組み合わせの設定は,行うことができる. (a) メモリオブジェクトが属する保護ドメインのみに,読出しアクセス(実行 アクセスを含む)のみを許可する【NGKI0418】.これを,専有リードオン リー(private read only)と呼ぶ. (b) メモリオブジェクトが属する保護ドメインのみに,書込みアクセスと読出 しアクセス(実行アクセスを含む)を許可する【NGKI0419】.これを,専 有リードライト(private read/write)と呼ぶ. 64 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3201 3202 3203 3204 3205 3206 3207 3208 3209 3210 3211 3212 3213 3214 3215 3216 3217 3218 3219 3220 3221 3222 3223 3224 3225 3226 3227 3228 3229 3230 3231 3232 3233 3234 3235 3236 3237 3238 3239 3240 3241 3242 3243 3244 3245 3246 3247 3248 3249 3250 (c) すべての保護ドメインに,読出しアクセス(実行アクセスを含む)のみを 許可する【NGKI0420】.これを,共有リードオンリー(shared read only) と呼ぶ. (d) すべての保護ドメインに,書込みアクセスと読出しアクセス(実行アクセ スを含む)を許可する【NGKI0421】.これを,共有リードライト(shared read/write )と呼ぶ. (e) メモリオブジェクトが属する保護ドメインに,書込みアクセスと読出しア クセス(実行アクセスを含む)を許可し,他の保護ドメインには,読出し アクセス(実行アクセスを含む)のみを許可する【NGKI0422】.これを, 共有リード専有ライト(shared read private write )と呼ぶ. また,ターゲット定義で,1つの保護ドメインに登録できるメモリオブジェクト の数が制限される場合がある【NGKI0423】. 2.11.3 デフォルトのアクセス許可ベクタ 静的APIによりカーネルオブジェクトを登録した直後は,次に規定されるデフォ ルトのアクセス許可ベクタが設定される. 保護ドメインに属するカーネルオブジェクトに対しては,4つの種別のアクセス がいずれも,その保護ドメインのみに許可される【NGKI0424】.すなわち,カー ネルドメインに属するオブジェクトに対しては,4つのアクセス許可パターンが いずれもTACP_KERNELに,ユーザドメインに属するオブジェクトに対しては,4 つのアクセス許可パターンがいずれもTACP(domid)(domidはオブジェクトが属 する保護ドメインのID番号)に設定される. 無所属のカーネルオブジェクトに対しては,4つの種別のアクセスがいずれも, すべての保護ドメインに許可される【NGKI0425】.すなわち,4つのアクセス許 可パターンがいずれも,TACP_SHAREDに設定される. システム状態のアクセス許可ベクタは,4つの種別のアクセスがいずれも,カー ネルドメインのみに許可される【NGKI0426】.すなわち,4つのアクセス許可パ ターンがいずれも,TACP_KERNELに設定される. 【未決定事項】 サービスコールによりカーネルオブジェクトを登録した直後のアクセス許可ベ クタについては,今後の課題である. 2.11.4 アクセス許可ベクタの設定 アクセス許可ベクタをデフォルト以外の値に設定するために,カーネルオブジェ クトのアクセス許可ベクタを設定する静的API(SAC_YYY)と,システム状態の アクセス許可ベクタを設定する静的API(SAC_SYS)が用意されている 【NGKI0427】. また,動的生成対応カーネルにおいては,カーネルオブジェクトのアクセス許 可ベクタを設定するサービスコール(sac_yyy)と,システム状態のアクセス許 65 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3251 3252 3253 3254 3255 3256 3257 3258 3259 3260 3261 3262 3263 3264 3265 3266 3267 3268 3269 3270 3271 3272 3273 3274 3275 3276 3277 3278 3279 3280 3281 3282 3283 3284 3285 3286 3287 3288 3289 3290 3291 3292 3293 3294 3295 3296 3297 3298 3299 3300 可ベクタを設定するサービスコール(sac_sys)が用意されている【NGKI0428】. ただし,静的APIによって登録したオブジェクトは,サービスコール(sac_yyy) によってアクセス許可ベクタを設定することができない【NGKI0429】.アクセ ス許可ベクタを設定しようとした場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI0430】. メモリオブジェクトに対しては,アクセス許可ベクタを設定する静的APIは用意 されておらず,オブジェクトの登録と同時にアクセス許可ベクタを設定する静 的API(ATA_YYY)が用意されている【NGKI0431】. オブジェクトに対するアクセスが許可されているかは,そのオブジェクトにア クセスするサービスコールを呼び出した時点でチェックされる【NGKI0432】. そのため,アクセス許可ベクタを変更しても,変更以前に呼び出されたサービ スコールの振舞いには影響しない.例えば,待ち行列を持つ同期・通信オブジェ クトのアクセス許可ベクタを変更しても,呼び出した時点ですでに待ち行列に つながれているタスクには影響しない.また,ミューテックスのアクセス許可 ベクタを変更しても,呼び出した時点ですでにミューテックをロックしていた タスクには影響しない. この仕様では,カーネルオブジェクトに設定されたアクセス許可ベクタを参照 する機能は用意していない. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 アクセス許可ベクタを指定してオブジェクトを生成する静的API(CRA_YYY)は 廃止し,オブジェクトの登録後にアクセス許可ベクタを設定する静的 API(SAC_YYY)をサポートすることとした. 静的APIによって登録したオブジェクトは,サービスコール(sac_yyy)によっ てアクセス許可ベクタを設定することができないこととした. オブジェクトの状態参照するサービスコール(ref_yyy)により,オブジェクト に設定されたアクセス許可ベクタを参照する機能サポートしないこととした. これは,[NGKI0403]の原則に合わせるための修正である. 2.11.5 カーネルの管理領域のアクセス保護 カーネルが動作するために,カーネルの内部で用いるメモリ領域を,カーネル の管理領域と呼ぶ.ユーザタスクからカーネルを保護するためには,カーネル の管理領域にアクセスできるのは,カーネルドメインのみでなければならない. そのため,カーネルの管理領域は,4つの種別のアクセスがカーネルドメインの みに許可されたメモリオブジェクト(これを,カーネル専用のメモリオブジェ クトと呼ぶ)の中に置かれる【NGKI0433】. カーネルの用いるオブジェクト管理領域(カーネルの管理領域に該当する. 「2.10.4 オブジェクト生成に必要なメモリ領域」の節を参照)として,カーネ ル専用のメモリオブジェクトに含まれないメモリ領域を指定した場合,E_OBJエ ラーとなる【NGKI0434】.また,カーネルの用いるオブジェクト管理領域の先 頭番地にNULL を指定した場合,必要なメモリ領域が,カーネル専用のメモリオ ブジェクトの中に確保される【NGKI0435】. 66 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3301 3302 3303 3304 3305 3306 3307 3308 3309 3310 3311 3312 3313 3314 3315 3316 3317 3318 3319 3320 3321 3322 3323 3324 3325 3326 3327 3328 3329 3330 3331 3332 3333 3334 3335 3336 3337 3338 3339 3340 3341 3342 3343 3344 3345 3346 3347 3348 3349 3350 システムタスクのスタック領域,ユーザタスクのシステムスタック領域,非タ スクコンテキスト用のスタック領域は,カーネルの用いるオブジェクト管理領 域には該当しないが,カーネルドメインの実行中にのみアクセスされるため, カーネルの用いるオブジェクト管理領域と同様の扱いとなる【NGKI0436】.一 方,ユーザタスクのユーザスタック領域と固定長メモリプール領域は,ユーザ ドメインの実行中にもアクセスされるため,カーネルの用いるオブジェクト管 理領域とは異なる扱いとなる. 2.11.6 ユーザタスクのユーザスタック領域 ユーザタスクが非特権モードで実行する間に用いるスタック領域を,システム スタック領域(「4.1 タスク管理機能」の節を参照)と対比させて,ユーザス タック領域と呼ぶ.ユーザスタック領域は,そのタスクと同じ保護ドメインに 属する1つのメモリオブジェクトとしてカーネルに登録される【NGKI0437】.た だし,他のメモリオブジェクトとは異なり,次のように扱われる. タスクのユーザスタック領域に対しては,そのタスクのみが書込みアクセスお よび読出しアクセスを行うことができる【NGKI0438】.そのため,書込みアク セスと読出しアクセス(実行アクセスを含む)に対するアクセス許可パターン は意味を持たない【NGKI0439】.ユーザスタック領域に対して実行アクセスを 行えるかどうかは,ターゲット定義である【NGKI0440】. ただし,上記の仕様を実現するために大きいオーバヘッドを生じる場合には, ターゲット定義で,タスクのユーザスタック領域を,そのタスクが属する保護 ドメイン全体からアクセスできるものとする場合がある【NGKI0441】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 この仕様では,タスクのユーザスタック領域は,そのタスクのみがアクセスで きるものとした. 2.12 システムコンフィギュレーション手順 2.12.1 システムコンフィギュレーションファイル カーネルやシステムサービスが管理するオブジェクトの生成情報や初期状態な どを記述するファイルを,システムコンフィギュレーションファイル(system configuration file )と呼ぶ.また,システムコンフィギュレーションファイ ルを解釈して,カーネルやシステムサービスの構成・初期化情報を含むファイ ルなどを生成するツールを,コンフィギュレータ(configurator)と呼ぶ. システムコンフィギュレーションファイルには,カーネルの静的API,システム サービスの静的API,保護ドメインの囲み,クラスの囲み,コンフィギュレータ に対するINCLUDEディレクティブ,C言語プリプロセッサのインクルードディレ クティブ(#include)と条件ディレクティブ(#if,#ifdefなど)のみを記述す ることができる【NGKI0442】. コンフィギュレータに対するINCLUDEディレクティブは,システムコンフィギュ レーションファイルを複数のファイルに分割して記述するために用いるもので, その文法は次のいずれかである(両者の違いは,指定されたファイルを探すディ 67 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3351 3352 3353 3354 3355 3356 3357 3358 3359 3360 3361 3362 3363 3364 3365 3366 3367 3368 3369 3370 3371 3372 3373 3374 3375 3376 3377 3378 3379 3380 3381 3382 3383 3384 3385 3386 3387 3388 3389 3390 3391 3392 3393 3394 3395 3396 3397 3398 3399 3400 レクトリの違いのみ)【NGKI0443】. INCLUDE(" ファイル名"); INCLUDE(< ファイル名>); コンフィギュレータは,INCLUDEディレクティブによって指定されたファイル中 の記述を,システムコンフィギュレーションファイルの一部分として解釈する 【NGKI0444】.すなわち,INCLUDEディレクティブによって指定されたファイル 中には,カーネルの静的API,システムサービスの静的API,コンフィギュレー タに対するINCLUDEディレクティブ,C言語プリプロセッサのインクルードディ レクティブと条件ディレクティブのみを記述することができる. C言語プリプロセッサのインクルードディレクティブは,静的APIのパラメータ を解釈するために必要なC言語のヘッダファイルを指定するために用いる 【NGKI0445】.また,条件ディレクティブは,有効とする静的APIを選択するた めに用いることができる【NGKI0446】.ただし,インクルードディレクティブ は,コンフィギュレータが生成するファイルでは先頭に集められる 【NGKI0447】.そのため,条件ディレクティブの中にインクルードディレクティ ブを記述しても,インクルードディレクティブは常に有効となる.また,1つの 静的APIの記述の途中に,条件ディレクティブを記述することはできない 【NGKI0448】. コンフィギュレータは,システムコンフィギュレーションファイル中の静的 APIを,その記述順に解釈する【NGKI0449】.そのため例えば,タスクを生成す る静的APIの前に,そのタスクにタスク例外処理ルーチンを定義する静的APIが 記述されていた場合,タスク例外処理ルーチンを定義する静的APIがE_NOEXSエ ラーとなる. 【μITRON4.0仕様との関係】 システムコンフィギュレーションファイルにおけるC言語プリプロセッサのディ レクティブの扱いを全面的に見直し,コンフィギュレータに対するINCLUDEディ レクティブを設けた.また,共通静的APIを廃止した.μITRON4.0仕様における #include ディレクティブの役割は,この仕様ではINCLUDEディレクティブに置き 換わる.逆に,μITRON4.0仕様におけるINCLUDE静的APIの役割は,この仕様で は#includeディレクティブに置き換わる. 2.12.2 静的APIの文法とパラメータ 静的APIは,次に述べる例外を除いては,C言語の関数呼出しと同様の文法で記 述する【NGKI0450】.すなわち,静的APIの名称に続けて,静的APIの各パラメー タを","で区切って列挙したものを"("と")"で囲んで記述し,最後に";"を記述 する.ただし,静的APIのパラメータに構造体(または構造体へのポインタ)を 記述する場合には,構造体の各フィールドを","で区切って列挙したものを"{" と"}"で囲んだ形で記述する【NGKI0451】. サービスコールに対応する静的APIの場合,静的APIのパラメータは,対応する サービスコールのパラメータと同一とすることを原則とする【NGKI0452】. 静的APIのパラメータは,次の4種類に分類される. 68 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3401 3402 3403 3404 3405 3406 3407 3408 3409 3410 3411 3412 3413 3414 3415 3416 3417 3418 3419 3420 3421 3422 3423 3424 3425 3426 3427 3428 3429 3430 3431 3432 3433 3434 3435 3436 3437 3438 3439 3440 3441 3442 3443 3444 3445 3446 3447 3448 3449 3450 (a) オブジェクト識別名 オブジェクトのID番号を指定するパラメータ.オブジェクトの名称を表す単一 の識別名のみを記述することができる. コンフィギュレータは,オブジェクト生成のための静的API(CRE_YYY)を処理 する際に,オブジェクトにID番号を割り付け,構成・初期化ヘッダファイルに, 指定された識別名を割り付けたID番号にマクロ定義するC言語プリプロセッサの ディレクティブ(#define)を生成する【NGKI0453】. オブジェクト生成以外の静的APIが,オブジェクトのID番号をパラメータに取る 場合(カーネルの静的APIでは,SAC_TSKやDEF_TEXのtskidパラメータ等がこれ に該当する)には,パラメータとして記述する識別名は,生成済みのオブジェ クトの名称を表す識別名でなければならない.そうでない場合には,コンフィ ギュレータがエラーを報告する【NGKI0455】. 静的APIの整数定数式パラメータの記述に,オブジェクト識別名を使用すること はできない【NGKI0456】. (b) 整数定数式パラメータ オブジェクト番号や機能コード,オブジェクト属性,サイズや数,優先度など, 整数値を指定するパラメータ.プログラムが配置される番地に依存せずに値の 決まる整数定数式を記述することができる. 整数定数式の解釈に必要な定義や宣言等は,システムコンフィギュレーション ファイルからC言語プリプロセッサのインクルードディレクティブによってイン クルードするファイルに含まれていなければならない【NGKI0457】. (c) 一般定数式パラメータ 処理単位のエントリ番地,メモリ領域の先頭番地,拡張情報など,番地を指定 する可能性のあるパラメータ.任意の定数式を記述することができる. 定数式の解釈に必要な定義や宣言等は,システムコンフィギュレーションファ イルからC言語プリプロセッサのインクルードディレクティブによってインクルー ドするファイルに含まれていなければならない【NGKI0458】. (d) 文字列パラメータ オブジェクトモジュール名やセクション名など,文字列を指定するパラメータ. 任意の文字列を,C言語の文字列の記法で記述することができる. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様においては,静的APIのパラメータを次の4種類に分類していた が,コンフィギュレータの仕組みを見直したことに伴い全面的に見直した. (A) 自動割付け対応整数値パラメータ 69 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3451 3452 3453 3454 3455 3456 3457 3458 3459 3460 3461 3462 3463 3464 3465 3466 3467 3468 3469 3470 3471 3472 3473 3474 3475 3476 3477 3478 3479 3480 3481 3482 3483 3484 3485 3486 3487 3488 3489 3490 3491 3492 3493 3494 3495 3496 3497 3498 3499 3500 (B) 自動割付け非対応整数値パラメータ (C) プリプロセッサ定数式パラメータ (D) 一般定数式パラメータ この仕様の(a)が,おおよそμITRON4.0仕様の(A)に相当するが,(a)には整数値 を記述できない点が異なる.(b) (c)と(B) (D)の間には単純な対応関係がな いが,記述できる定数式の範囲には,(B)⊂(C)⊂(b)⊂(c)=(D)の関係がある. μITRON4.0仕様では,静的APIのパラメータは基本的には(D)とし,コンフィギュ レータが値を知る必要があるパラメータを(B),構成・初期化ファイルに生成す るC言語プリプロセッサの条件ディレクティブ(#if)中に含めたい可能性のあ るパラメータを(C)としていた. それに対して,この仕様におけるコンフィギュレータの処理モデル(「2.12.5 コンフィギュレータの処理モデル」の節を参照)では,コンフィギュレータの パス2において定数式パラメータの値を知ることができるため,(B) (D)の区別 をする必要がない.そのため,静的APIのパラメータは基本的には(b)とし,パ ス2で値を知ることのできない定数式パラメータのみを(c)としている. 2.12.3 保護ドメインの指定 保護機能対応カーネルでは,オブジェクトを登録する静的API等を,そのオブジェ クトが属する保護ドメインの囲みの中に記述する【NGKI0459】.無所属のオブ ジェクトを登録する静的APIは,保護ドメインの囲みの外に記述する 【NGKI0460】.保護ドメインに属すべきオブジェクトを登録する静的API等を, 保護ドメインの囲みの外に記述した場合には,コンフィギュレータがE_RSATRエ ラーを報告する【NGKI0461】. ユーザドメインの囲みの文法は次の通り【NGKI0462】. DOMAIN(保護ドメイン名) { ユーザドメインに属するオブジェクトを登録する静的API等 } 保護ドメイン名には,ユーザドメインの名称を表す単一の識別名のみを記述す ることができる【NGKI0463】. コンフィギュレータは,ユーザドメインの囲みを処理する際に,ユーザドメイ ンに保護ドメインIDを割り付け,構成・初期化ヘッダファイルに,指定された 保護ドメイン名を割り付けた保護ドメインIDにマクロ定義するC言語プリプロセッ サのディレクティブ(#define)を生成する【NGKI0464】.また,ユーザドメイ ンの囲みの中およびそれ以降に記述する静的APIの整数定数式パラメータの記述 に保護ドメイン名を記述すると,割り付けた保護ドメインIDの値に評価される 【NGKI0465】. ユーザドメインの囲みの中を空にすることで,ユーザドメインへの保護ドメイ ンIDの割付けのみを行うことができる【NGKI0466】. カーネルドメインの囲みの文法は次の通り【NGKI0467】. 70 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3501 3502 3503 3504 3505 3506 3507 3508 3509 3510 3511 3512 3513 3514 3515 3516 3517 3518 3519 3520 3521 3522 3523 3524 3525 3526 3527 3528 3529 3530 3531 3532 3533 3534 3535 3536 3537 3538 3539 3540 3541 3542 3543 3544 3545 3546 3547 3548 3549 3550 KERNEL_DOMAIN { カーネルドメインに属するオブジェクトを登録する静的API等 } 同じ保護ドメイン名を指定したユーザドメインの囲みや,カーネルドメインの 囲みを,複数回記述してもよい【NGKI0468】.保護機能対応でないカーネルで 保護ドメインの囲みを記述した場合や,保護ドメインの囲みの中に保護ドメイ ンの囲みを記述した場合には,コンフィギュレータがエラーを報告する 【NGKI0469】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 保護ドメインの囲みの文法を変更した. 【仕様決定の理由】 保護ドメインに属すべきオブジェクトを登録する静的API等を保護ドメインの囲 みの外に記述した場合のエラーコードをE_RSATRとしたのは,オブジェクトを動 的に登録するAPIにおいては,オブジェクトの属する保護ドメインを,オブジェ クト属性によって指定するためである. 2.12.4 クラスの指定 マルチプロセッサ対応カーネルでは,オブジェクトを登録する静的API等を,そ のオブジェクトが属するクラスの囲みの中に記述する【NGKI0470】.クラスに 属すべきオブジェクトを登録する静的API等を,クラスの囲みの外に記述した場 合には,コンフィギュレータがE_RSATRエラーを報告する【NGKI0471】. クラスの囲みの文法は次の通り【NGKI0472】. CLASS( クラスID) { クラスに属するオブジェクトを登録する静的API等 } クラスIDには,静的APIの整数定数式パラメータと同等の定数式を記述すること ができる【NGKI0473】.使用できないクラスIDを指定した場合には,コンフィ ギュレータがE_IDエラーを報告する【NGKI0474】. 同じクラスIDを指定したクラスの囲みを複数回記述してもよい【NGKI0475】. マルチプロセッサ対応でないカーネルでクラスの囲みを記述した場合や,クラ スの囲みの中にクラスの囲みを記述した場合には,コンフィギュレータがエラー を報告する【NGKI0476】. なお,保護機能とマルチプロセッサの両方に対応するカーネルでは,保護ドメ インの囲みとクラスの囲みはどちらが外側になっていてもよい【NGKI0477】. 【仕様決定の理由】 クラスに属すべきオブジェクトを登録する静的API等をクラスの囲みの外に記述 した場合のエラーコードをE_RSATRとしたのは,オブジェクトを動的に登録する 71 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3551 3552 3553 3554 3555 3556 3557 3558 3559 3560 3561 3562 3563 3564 3565 3566 3567 3568 3569 3570 3571 3572 3573 3574 3575 3576 3577 3578 3579 3580 3581 3582 3583 3584 3585 3586 3587 3588 3589 3590 3591 3592 3593 3594 3595 3596 3597 3598 3599 3600 APIにおいては,オブジェクトの属するクラスを,オブジェクト属性によって指 定するためである. 2.12.5 コンフィギュレータの処理モデル コンフィギュレータは,次の3つないしは4つのパスにより,システムコンフィ ギュレーションファイルを解釈し,構成・初期化情報を含むファイルなどを生 成する(図2-8). 最初のパス1では,システムコンフィギュレーションファイルを解釈し,そこに 含まれる静的APIの整数定数式パラメータの値をCコンパイラを用いて求めるた めに,パラメータ計算用C言語ファイル(cfg1_out.c)を生成する.この時,シ ステムコンフィギュレーションファイルに含まれるC言語プリプロセッサのイン クルードディレクティブは,パラメータ計算用C言語ファイルの先頭に集めて生 成する.また,条件ディレクティブは,順序も含めて,そのままの形でパラメー タ計算用C言語ファイルに出力する.システムコンフィギュレーションファイル に文法エラーや未サポートの記述があった場合には,この段階で検出される. 次に,Cコンパイラおよび関連ツールを用いて,パラメータ計算用C言語ファイ ルをコンパイルし,ロードモジュールを生成する.また,それをSレコードフォー マットの形に変換したSレコードファイル(cfg1_out.srec)と,その中の各シ ンボルとアドレスの対応表を含むシンボルファイル(cfg1_out.syms)を生成す る.静的APIの整数定数式パラメータに解釈できない式が記述された場合には, この段階でエラーが検出される. コンフィギュレータのパス2では,パス1で生成されたロードモジュールのSレコー ドファイルとシンボルファイルから,C言語プリプロセッサの条件ディレクティ ブによりどの静的APIが有効となったかと,それらの静的APIの整数定数式パラ メータの値を取り出し,カーネルおよびシステムサービスの構成・初期化ファ イル(kernel_cfg.cなど)と構成・初期化ヘッダファイル(kernel_cfg.hなど) を生成する.構成・初期化ヘッダファイルには,登録できるオブジェクトの数 (動的生成対応カーネル以外では,静的APIによって登録されたオブジェクトの 数に一致)やオブジェクトのID番号などの定義を出力する.静的APIの整数定数 式パラメータに不正がある場合には,この段階でエラーが検出される. パス2で生成されたファイルを,他のソースファイルとあわせてコンパイルし, アプリケーションのロードモジュールを生成する.また,そのSレコードファイ ル(system.srec)とシンボルファイル(system.syms)を生成する.静的APIの 一般定数式パラメータに解釈できない式が記述された場合には,この段階でエ ラーが検出される. コンフィギュレータのパス3では,パス1およびパス2で生成されたロードモジュー ルのSレコードファイルとシンボルファイルから,静的APIのパラメータの値な どを取り出し,妥当性のチェックを行う.静的APIの一般定数式パラメータに不 正がある場合には,この段階でエラーが検出される. 保護機能対応カーネルにおいては,メモリ配置を決定し,メモリ保護のための 設定情報を生成するために,さらに以下の処理を行う(図2-9). コンフィギュレータは,決定したメモリ配置に従ってロードモジュールを生成 72 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3601 3602 3603 3604 3605 3606 3607 3608 3609 3610 3611 3612 3613 3614 3615 3616 3617 3618 3619 3620 3621 3622 3623 3624 3625 3626 3627 3628 3629 3630 3631 3632 3633 3634 3635 3636 3637 3638 3639 3640 3641 3642 3643 3644 3645 3646 3647 3648 3649 3650 するために,リンクスクリプト(ldscript.ld)を生成する.また,メモリ保護 のための設定情報を,メモリ構成・初期化ファイル(kernel_mem.c)に生成す る.これらのファイルを生成するためには,パス3以降で初めて得られる情報が 必要となるため,これらのファイルはパス3以降でしか生成できず,最終的なロー ドモジュールも,パス3以降で生成する. そのため,パス2で生成されたロードモジュールは,仮のロードモジュールとい う位置付けになる.ここで,パス3以降で必要な情報を取り出し,最終的なロー ドモジュールのサイズを割り出せるように,パス3以降でメモリ構成・初期化ファ イルに生成するのと同様のデータ構造を,パス2において仮のメモリ構成・初期 化ファイル(kernel_mem2.c)に生成する.また,これをリンクするための仮の リンクスクリプト(cfg2_out.ld)を生成し,これらを用いて仮のロードモジュー ルを生成する.さらに,仮のロードモジュールのSレコードファイル (cfg2_out.srec)とシンボルファイル(cfg2_out.syms)も,最終的なものと 混同しないように,異なるファイル名で生成する. パス3は,ターゲット依存で用いるパスで,メモリ配置やメモリ保護のための設 定情報のサイズを最適化するための処理を行う.パス2で生成された仮のロード モジュールのSレコードファイルとシンボルファイルから必要な情報を取り出し, 再度,仮のメモリ構成・初期化ファイル(kernel_mem3.c)と仮のリンクスクリ プト(cfg3_out.ld)を生成する.また,これらのファイルを他のソースファイ ルとあわせてコンパイルして仮のロードモジュールを生成し,そのSレコードファ イル(cfg3_out.srec)とシンボルファイル(cfg3_out.syms)を生成する.こ の段階で,メモリオブジェクトに重なりがあるなどのエラーが検出される場合 もある. パス4では,パス3(パス3を用いない場合はパス2)で生成された仮のロードモ ジュールのSレコードファイルとシンボルファイルから必要な情報を取り出し, 最終的なメモリ構成・初期化ファイル(kernel_mem.c)とリンクスクリプト (ldscript.ld)を生成する.またパス4では,保護機能対応でないカーネルに おいてパス3で行っていた静的APIパラメータの値などの妥当性のチェックも行 う.そのため,静的APIの一般定数式パラメータに不正がある場合には,この段 階でエラーが検出される. パス4で生成されたファイルを,他のソースファイルとあわせてコンパイルし, アプリケーションの最終的なロードモジュールを生成する.また,そのSレコー ドファイル(system.srec,必要な場合のみ)とシンボルファイル (system.syms)を生成する. 最後に,最終的なロードモジュールが,パス3(パス3を用いない場合はパス2) で生成された仮のロードモジュールと同じメモリ配置であることをチェックす る.両者のメモリ配置が異なっていた場合には,ロードモジュールが正しく生 成されていない可能性があるが,これは,コンフィギュレーション処理の不具 合を示すものである. 【μITRON4.0仕様との関係】 コンフィギュレータの処理モデルは全面的に変更した. 2.12.6 静的APIのパラメータに関するエラー検出 73 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3651 3652 3653 3654 3655 3656 3657 3658 3659 3660 3661 3662 3663 3664 3665 3666 3667 3668 3669 3670 3671 3672 3673 3674 3675 3676 3677 3678 3679 3680 3681 3682 3683 3684 3685 3686 3687 3688 3689 3690 3691 3692 3693 3694 3695 3696 3697 3698 3699 3700 静的APIのパラメータに関するエラー検出は,同じものがサービスコールとして 呼ばれた場合と同等とすることを原則とする【NGKI0478】.言い換えると,サー ビスコールによっても検出できないエラーは,静的APIにおいても検出しない. 静的APIの機能説明中の「E_XXXXXエラーとなる」または「E_XXXXXエラーが返る」 という記述は,コンフィギュレータがそのエラーを検出することを意味する. ただし,エラーの種類によっては,サービスコールと同等のエラー検出を行う ことが難しいため,そのようなものについては例外とする【NGKI0479】.例え ば,メモリ不足をコンフィギュレータによって検出するのは容易ではない. 逆に,オブジェクト属性については,サービスコールより強力なエラーチェッ クを行える可能性がある.例えば,タスク属性にTA_STAと記述されている場合, サービスコールではエラーを検出できないが,コンフィギュレータでは検出で きる可能性がある.ただし,このようなエラー検出を完全に行おうとするとコ ンフィギュレータが複雑になるため,このようなエラーを検出することは必須 とせず,検出できた場合には警告として報告する【NGKI0480】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,静的APIのパラメータに関するエラー検出について規定さ れていない. 2.12.7 オブジェクトのID番号の指定 コンフィギュレータのオプション機能として,アプリケーション設計者がオブ ジェクトのID番号を指定するための次の機能を用意する. コンフィギュレータのオプション指定により,オブジェクト識別名とID番号の 対応表を含むファイルを渡すと,コンフィギュレータはそれに従ってオブジェ クトにID番号を割り付ける【NGKI0481】.それに従ったID番号割付けができな い場合(ID番号に抜けができる場合など)には,コンフィギュレータはエラー を報告する【NGKI0482】. またコンフィギュレータは,オプション指定により,オブジェクト識別名とコ ンフィギュレータが割り付けたID番号の対応表を含むファイルを,コンフィギュ レータに渡すファイルと同じフォーマットで生成する【NGKI0483】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,オブジェクト生成のための静的APIのID番号を指定するパ ラメータに整数値を記述できるため,このような機能は用意されていない. 2.13 TOPPERS ネーミングコンベンション この節では,TOPPERSソフトウェアのAPIの構成要素の名称に関するネーミング コンベンションについて述べる.このネーミングコンベンションは,モジュー ル間のインタフェースに関わる名称に適用することを想定しているが,モジュー ル内部の名称に適用してもよい. 74 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3701 3702 3703 3704 3705 3706 3707 3708 3709 3710 3711 3712 3713 3714 3715 3716 3717 3718 3719 3720 3721 3722 3723 3724 3725 3726 3727 3728 3729 3730 3731 3732 3733 3734 3735 3736 3737 3738 3739 3740 3741 3742 3743 3744 3745 3746 3747 3748 3749 3750 2.13.1 モジュール識別名 異なるモジュールのAPIの構成要素の名称が衝突することを避けるために,各モ ジュールに対して,それを識別するためのモジュール識別名を定める.モジュー ル識別名は,英文字と数字で構成し,2 8文字程度の長さとする. カーネルのモジュール識別名は"kernel",システムインタフェースレイヤのモ ジュール識別名は"sil"とする. APIの構成要素の名称には,モジュール識別名を含めることを原則とするが,カー ネルのAPIなど,頻繁に使用されて衝突のおそれが少ない場合には,モジュール 識別名を含めない名称を使用する. 以下では,モジュール識別名の英文字を英小文字としたものをwww,英大文字と したものをWWWと表記する. 2.13.2 データ型名 各サイズの整数型など,データの意味を定めない基本データ型の名称は,英小 文字,数字,"_"で構成する.データ型であることを明示するために,末尾が "_t" である名称とする. 複合データ型やデータの意味を定めるデータ型の名称は,英大文字,数字, "_"で構成する.データ型であることを明示するために,先頭が"T_"または末尾 が"_T"である名称とする場合もある. データ型の種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) パケットのデータ型 T_CYYY T_DYYY T_RYYY T_WWW_CYYY T_WWW_DYYY T_WWW_RYYY acre_yyy に渡すパケットのデータ型 def_yyyに渡すパケットのデータ型 ref_yyy に渡すパケットのデータ型 www_acre_yyy に渡すパケットのデータ型 www_def_yyy に渡すパケットのデータ型 www_ref_yyy に渡すパケットのデータ型 2.13.3 関数名 関数の名称は,英小文字,数字,"_"で構成する. 関数の種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) サービスコール サービスコールは,xxx_yyyまたはwww_xxx_yyyの名称とする.ここで,xxxは操 作の方法,yyyは操作の対象を表す.xxx_yyyまたはwww_xxx_yyyから派生したサー ビスコールは,それぞれzxxx_yyyまたはwww_zxxx_yyyの名称とする.ここでzは, 派生したことを表す文字である.派生したことを表す文字を2つ付加する場合に は,zzxxx_yyyまたはwww_zzxxx_yyyの名称となる. 75 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3751 3752 3753 3754 3755 3756 3757 3758 3759 3760 3761 3762 3763 3764 3765 3766 3767 3768 3769 3770 3771 3772 3773 3774 3775 3776 3777 3778 3779 3780 3781 3782 3783 3784 3785 3786 3787 3788 3789 3790 3791 3792 3793 3794 3795 3796 3797 3798 3799 3800 非タスクコンテキスト専用のサービスコールの名称は,派生したことを表す文 字として"i"を付加し,ixxx_yyy,izxxx_yyy,www_ixxx_yyy,www_izxxx_yyyと いった名称とする. 【補足説明】 サービスコールの名称を構成する省略名(xxx,yyy,z)の元になった英語につ いては,「5.10 省略名の元になった英語」の節を参照すること. (B) コールバック コールバックの名称は,サービスコールのネーミングコンベンションに従う. 2.13.4 変数名 変数(const修飾子のついたものを含む)の名称は,英小文字,数字,"_"で構 成する.データ型が異なる変数には,異なる名称を付けることを原則とする. 変数の名称に関して,次のガイドラインを設ける. id no atr stat mode pri sz cnt ptn tim cd i max min left ID(オブジェクトのID番号,ID型) 番号(オブジェクト番号) 属性(オブジェクト属性,ATR型) 状態(オブジェクト状態,STAT型) モード(サービスコールの動作モード,MODE型) 優先度(優先度,PRI型) サイズ(単位はバイト数,SIZE型またはuint_t型) の個数(単位は個数,uint_t型) パターン 時刻, 時間 コード の初期値 の最大値 の最小値 の残り また,ポインタ変数(関数ポインタを除く)の名称に関して,次のガイドライ ンを設ける. p_ pp_ pk_ ppk_ ポインタ ポインタを入れる領域へのポインタ パケットへのポインタ パケットへのポインタを入れる領域へのポインタ 変数の種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) パケットへのポインタ pk_cyyy acre_yyy に渡すパケットへのポインタ 76 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3801 3802 3803 3804 3805 3806 3807 3808 3809 3810 3811 3812 3813 3814 3815 3816 3817 3818 3819 3820 3821 3822 3823 3824 3825 3826 3827 3828 3829 3830 3831 3832 3833 3834 3835 3836 3837 3838 3839 3840 3841 3842 3843 3844 3845 3846 3847 3848 3849 3850 pk_dyyy pk_ryyy pk_www_cyyy pk_www_dyyy pk_www_ryyy def_yyyに渡すパケットへのポインタ ref_yyy に渡すパケットへのポインタ www_acre_yyy に渡すパケットへのポインタ www_def_yyy に渡すパケットへのポインタ www_ref_yyy に渡すパケットへのポインタ 2.13.5 定数名 定数(C言語プリプロセッサのマクロ定義によるもの)の名称は,英大文字,数 字,"_"で構成する. 定数の種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) メインエラーコード メインエラーコードは,先頭が"E_"である名称とする. (B) 機能コード TFN_XXX_YYY TFN_WWW_XXX_YYY xxx_yyy の機能コード www_xxx_yyy の機能コード (C) その他の定数 その他の定数は,先頭がTUU_またはTUU_WWW_である名称とする.ここでUUは, 定数の種類またはデータ型を表す.同じパラメータまたはリターンパラメータ に用いられる定数の名称については,UUを同一にすることを原則とする. また,定数の名称に関して,次のガイドラインを設ける. TA_ TSZ_ TBIT_ TMAX_ TMIN_ オブジェクトの属性値 のサイズ のビット数 の最大値 の最小値 2.13.6 マクロ名 マクロ(C言語プリプロセッサのマクロ定義によるもの)の名称は,それが表す 構成要素のネーミングコンベンションに従う.すなわち,関数を表すマクロは 関数のネーミングコンベンションに,定数を表すマクロは定数のネーミングコ ンベンションに従う.ただし,簡単な関数を表すマクロや,副作用があるなど の理由でマクロであることを明示したい場合には,英大文字,数字,"_"で構成 する場合もある. マクロの種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) 構成マクロ 構成マクロの名称は,英大文字,数字,"_"で構成し,次のガイドラインを設け 77 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3851 3852 3853 3854 3855 3856 3857 3858 3859 3860 3861 3862 3863 3864 3865 3866 3867 3868 3869 3870 3871 3872 3873 3874 3875 3876 3877 3878 3879 3880 3881 3882 3883 3884 3885 3886 3887 3888 3889 3890 3891 3892 3893 3894 3895 3896 3897 3898 3899 3900 る. TSZ_ TBIT_ TMAX_ TMIN_ のサイズ のビット数 の最大値 の最小値 2.13.7 静的API名 静的APIの名称は,英大文字,数字,"_"で構成し,対応するサービスコールの 名称中の英小文字を英大文字で置き換えたものとする.対応するサービスコー ルがない場合には,サービスコールのネーミングコンベンションに従って定め た名称中の英小文字を英大文字で置き換えたものとする. 2.13.8 ファイル名 ファイルの名称は,英小文字,数字,"_","."で構成する.英大文字と英小文 字を区別しないファイルシステムに対応するために,英大文字は使用しない. また,"-"も使用しない. ファイルの種類毎に,次のネーミングコンベンションを定める. (A) ヘッダファイル モジュールを用いるために必要な定義を含むヘッダファイルは,そのモジュー ルのモジュール識別名の末尾に".h"を付加した名前(すなわち,www.h)とする. 2.13.9 モジュール内部の名称の衝突回避 モジュール内部の名称が,他のモジュール内部の名称と衝突することを避ける ために,次のガイドラインを設ける. モジュール内部に閉じて使われる関数や変数などの名称で,オブジェクトファ イルのシンボル表に登録されて外部から参照できる名称は,C言語レベルで,先 頭が_www_または_WWW_である名称とする.例えば,カーネルの内部シンボルは, C言語レベルで,先頭が"_kernel_"または"_KERNEL_"である名称とする. また,モジュールを用いるために必要な定義を含むヘッダファイル中に用いる 名称で,それをインクルードする他のモジュールで使用する名称と衝突する可 能性のある名称は,"TOPPERS_"で始まる名称とする. 2.14 TOPPERS 共通定義 TOPPERS ソフトウェアに共通に用いる定義を,TOPPERS共通定義と呼ぶ. 2.14.1 TOPPERS 共通ヘッダファイル TOPPERS 共通定義(共通データ型,共通定数,共通マクロ)は,TOPPERS共通ヘッ ダファイル(t_stddef.h)およびそこからインクルードされるファイルに含ま れている【NGKI0484】.TOPPERS共通定義を用いる場合には,TOPPERS共通ヘッ 78 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3901 3902 3903 3904 3905 3906 3907 3908 3909 3910 3911 3912 3913 3914 3915 3916 3917 3918 3919 3920 3921 3922 3923 3924 3925 3926 3927 3928 3929 3930 3931 3932 3933 3934 3935 3936 3937 3938 3939 3940 3941 3942 3943 3944 3945 3946 3947 3948 3949 3950 ダファイルをインクルードする【NGKI0485】. TOPPERS 共通ヘッダファイルは,カーネルヘッダファイル(kernel.h)やシステ ムインタフェースレイヤヘッダファイル(sil.h)からインクルードされるため, これらのファイルをインクルードする場合には,TOPPERS共通ヘッダファイルを 直接インクルードする必要はない【NGKI0486】. 2.14.2 TOPPERS 共通データ型 C90に規定されているデータ型以外で,TOPPERSソフトウェアで共通に用いるデー タ型は次の通りである【NGKI0487】. int8_t uint8_t int16 _t uint16_t int32_t uint32_t int64_t uint64_t int128_t uint128_t 符号付き8ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し8ビット整数(オプション,C99準拠) 符号付き16ビット整数(C99準拠) 符号無し16ビット整数(C99準拠) 符号付き32ビット整数(C99準拠) 符号無し32ビット整数(C99準拠) 符号付き64ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し64ビット整数(オプション,C99準拠) 符号付き128ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し128ビット整数(オプション,C99準拠) int_least8_t uint_least8_t 8 ビット以上の符号付き整数(C99準拠) int_least8_t 型と同じサイズの符号無し整数(C99準拠) float32_t double64_t IEEE754 準拠の32ビット単精度浮動小数点数(オプション) IEEE754 準拠の64ビット倍精度浮動小数点数(オプション) bool_t int_t uint_t long_t ulong_t 真偽値(trueまたはfalse) 16 ビット以上の符号付き整数 int_t 型と同じサイズの符号無し整数 32 ビット以上かつint_t型以上のサイズの符号付き整数 long_t 型と同じサイズの符号無し整数 intptr_t uintptr_t ポインタを格納できるサイズの符号付き整数(C99準拠) intptr_t 型と同じサイズの符号無し整数(C99準拠) FN ER 機能コード(符号付き整数,int_tに定義) 正常終了(E_OK)またはエラーコード(符号付き整数,int_t に定義) オブジェクトのID番号(符号付き整数,int_tに定義) オブジェクト属性(符号無し整数,uint_tに定義) オブジェクトの状態(符号無し整数,uint_tに定義) サービスコールの動作モード(符号無し整数,uint_tに定義) 優先度(符号付き整数,int_tに定義) メモリ領域のサイズ(符号無し整数,ポインタを格納できる サイズの符号無し整数型に定義) ID ATR STAT MODE PRI SIZE TMO タイムアウト指定(符号付き整数,単位はミリ秒,int_tに定義) 79 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 3951 3952 3953 3954 3955 3956 3957 3958 3959 3960 3961 3962 3963 3964 3965 3966 3967 3968 3969 3970 3971 3972 3973 3974 3975 3976 3977 3978 3979 3980 3981 3982 3983 3984 3985 3986 3987 3988 3989 3990 3991 3992 3993 3994 3995 3996 3997 3998 3999 4000 RELTIM SYSTIM SYSUTM 相対時間(符号無し整数,単位はミリ秒,uint_tに定義) システム時刻(符号無し整数,単位はミリ秒,ulong_tに定義) 性能評価用システム時刻(符号無し整数,単位はマイクロ秒, ulong_tに定義) FP プログラムの起動番地(型の定まらない関数ポインタ) ER_BOOL ER_ID エラーコードまたは真偽値(符号付き整数,int_tに定義) エラーコードまたはID番号(符号付き整数,int_tに定義, 負のID番号は格納できない) エラーコードまたは符号無し整数(符号付き整数,int_tに 定義,符号無し整数を格納する場合の有効ビット数はuint_t より1ビット短い) ER_UINT MB_T オブジェクト管理領域を確保するためのデータ型 ACPTN アクセス許可パターン(符号無し32ビット整数,uint32_tに 定義) アクセス許可ベクタ ACVCT ここで,データ型が「AまたはB」とは,AかBのいずれかの値を取ることを示す. 例えばER_BOOLは,エラーコードまたは真偽値のいずれかの値を取る. int8_t ,uint8_t,int64_t,uint64_t,int128_t,uint128_t,float32_t, double64_t が使用できるかどうかは,ターゲット定義である【NGKI0488】.こ れらが使用できるかどうかは,それぞれ,INT8_MAX,UINT8_MAX,INT64_MAX, UINT64_MAX ,INT128_MAX,UINT128_MAX,FLOAT32_MAX,DOUBLE64_MAXがマクロ 定義されているかどうかで判別することができる【NGKI0489】.IEEE754準拠の 浮動小数点数がサポートされていない場合には,ターゲット定義で, float32_t とdouble64_tは使用できないものとする【NGKI0490】. 【μITRON4.0仕様との関係】 B,UB,H,UH,W,UW,D,UD,VP_INTに代えて,C99準拠のint8_t,uint8_t, int16_t ,uint16_t,int32_t,uint32_t,int64_t,uint64_t,intptr_tを用い ることにした.また,uintptr_t,int128_t,uint128_tを用意することにした. VPは,void *と等価であるため,用意しないことにした.また,ターゲットシ ステムにより振舞いが一定しないことから,VB,VH,VW,VDに代わるデータ型 は用意しないことにした. INT,UINTに代えて,C99の型名と相性が良いint_t,uint_tを用いることにした. また,32ビット以上かつint_t型(またはuint_t型)以上のサイズが保証される 整数型として,long_t,ulong_tを用意し,8ビット以上のサイズで必ず存在す る整数型として,C99準拠のint_least8_t,uint_least8_tを導入することにし た.int_least16_t,uint_least16_t,int_least32_t,uint_least32_tを導入 しなかったのは,16ビットおよび32ビットの整数型があることを仮定しており, それぞれint16_t,uint16_t,int32_t,uint32_tで代用できるためである. TECS との整合性を取るために,BOOLに代えて,bool_tを用いることにした.ま 80 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4001 4002 4003 4004 4005 4006 4007 4008 4009 4010 4011 4012 4013 4014 4015 4016 4017 4018 4019 4020 4021 4022 4023 4024 4025 4026 4027 4028 4029 4030 4031 4032 4033 4034 4035 4036 4037 4038 4039 4040 4041 4042 4043 4044 4045 4046 4047 4048 4049 4050 た,IEEE754準拠の単精度浮動小数点数を表す型としてfloat32_t,IEEE754準拠 の64ビットを表す型としてdouble64_tを導入した. 性能評価用システム時刻のためのデータ型としてSYSUTMを,オブジェクト管理 領域を確保するためのデータ型としてMB_Tを用意することにした 2.14.3 TOPPERS 共通定数 C90に規定されている定数以外で,TOPPERSソフトウェアで共通に用いる定数は 次の通りである(一部,C90に規定されているものも含む). (1) 一般定数【NGKI0491】 NULL 無効ポインタ true false 1 0 真 偽 E_OK 0 正常終了 【μITRON4.0仕様との関係】 BOOL をbool_tに代えたことから,TRUEおよびFALSEに代えて,trueおよびfalse を用いることにした. (2) 整数型に格納できる最大値と最小値【NGKI0492】 INT8_ MAX INT8_MIN UINT8_MAX INT16_MAX INT16_MIN UINT16_MAX INT32_MAX INT32_MIN UINT32_MAX INT64_MAX INT64_MIN UINT64_MAX INT128_MAX INT128_MIN UINT128_MAX int8_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int8_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint8_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int16_t に格納できる最大値(C99準拠) int16_tに格納できる最小値(C99準拠) uint16_t に格納できる最大値(C99準拠) int32_t に格納できる最大値(C99準拠) int32_t に格納できる最小値(C99準拠) uint32_t に格納できる最大値(C99準拠) int64_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int64_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint64_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int128_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int128_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint128_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) INT_LEAST8_MAX INT_LEAST8_MIN UINT_LEAST8_MAX INT_MAX INT_MIN UINT_MAX LONG_MAX int_least8_t に格納できる最大値(C99準拠) int_least8_t に格納できる最小値(C99準拠) uint_least8_t に格納できる最大値(C99準拠) int_t に格納できる最大値(C90準拠) int_t に格納できる最小値(C90準拠) uint_t に格納できる最大値(C90準拠) long_t に格納できる最大値(C90準拠) 81 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4051 4052 4053 4054 4055 4056 4057 4058 4059 4060 4061 4062 4063 4064 4065 4066 4067 4068 4069 4070 4071 4072 4073 4074 4075 4076 4077 4078 4079 4080 4081 4082 4083 4084 4085 4086 4087 4088 4089 4090 4091 4092 4093 4094 4095 4096 4097 4098 4099 4100 LONG_MIN ULONG_MAX long_t に格納できる最小値(C90準拠) ulong_t に格納できる最大値(C90準拠) FL OAT32_MIN float32_t に格納できる最小の正規化された正の浮 動小数点数(オプション) float32_t に格納できる表現可能な最大の有限浮動 小数点数(オプション) double64_t に格納できる最小の正規化された正の浮 動小数点数(オプション) double64_t に格納できる表現可能な最大の有限浮動 小数点数(オプション) FLOAT32_MAX DOUBLE64_MIN DOUBLE64_MAX (3) 整数型のビット数【NGKI0493】 CHAR_BIT cha r型のビット数(C90準拠) (4) オブジェクト属性【NGKI0494】 TA_NULL 0U オブジェクト属性を指定しない (5) タイムアウト指定【NGKI0495】 TMO_POL TMO_FEVR TMO_NBLK 0 -1 -2 ポーリング 永久待ち ノンブロッキング (6) アクセス許可パターン【NGKI0496】 TACP_KERNEL TACP_SHARED 0U ~0U カーネルドメインのみにアクセスを許可 すべての保護ドメインにアクセスを許可 2.14.4 TOPPERS 共通エラーコード TOPPERS ソフトウェアで共通に用いるメインエラーコードは次の通りである 【NGKI0497】. (A) 内部エラークラス(EC_SYS,-5 E_SYS -5 -8) システムエラー (B) 未サポートエラークラス(EC_NOSPT,-9 E_NOSPT E_RSFN E_RSATR -9 -10 -11 未サポート機能 予約機能コード 予約属性 (C) パラメータエラークラス(EC_PAR,-17 E_PAR E_ID -17 -18 -16) パラメータエラー 不正ID番号 82 -24) TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4101 4102 4103 4104 4105 4106 4107 4108 4109 4110 4111 4112 4113 4114 4115 4116 4117 4118 4119 4120 4121 4122 4123 4124 4125 4126 4127 4128 4129 4130 4131 4132 4133 4134 4135 4136 4137 4138 4139 4140 4141 4142 4143 4144 4145 4146 4147 4148 4149 4150 (D) 呼出しコンテキストエラークラス(EC_CTX,-25 E_CTX E_MACV E_OACV E_ILUSE -25 -26 -27 -28 コンテキストエラー メモリアクセス違反 オブジェクトアクセス違反 サービスコール不正使用 (E) 資源不足エラークラス(EC_NOMEM,-33 E_NOMEM E_NOID E_NORES -33 -34 -35 -40) メモリ不足 ID番号不足 資源不足 (F) オブジェクト状態エラークラス(EC_OBJ,-41 E_OBJ E_NOEXS E_QOVR -41 -42 -43 -49 -50 -51 -52 -56) 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除 ポーリング失敗またはタイムアウト 待ちオブジェクトの削除または再初期化 待ちオブジェクトの状態変化 (H) 警告クラス(EC_WARN,-57 E_WBLK E_BOVR -48) オブジェクト状態エラー オブジェクト未登録 キューイングオーバフロー (G) 待ち解除エラークラス(EC_RLWAI,-49 E_RLWAI E_TMOUT E_DLT E_CLS -32) -57 -58 -64) ノンブロッキング受付け バッファオーバフロー このエラークラスに属するエラーコードは,警告を表すエラーコードであり, [NGKI0019]の原則では例外としている. 【μITRON4.0仕様との関係】 E_NORES は,μITRON4.0仕様に規定されていないエラーコードである. 2.14.5 TOPPERS 共通マクロ (1) 整数定数を作るマクロ【NGKI0498】 INT8_C(val) UINT8_C(val) INT16_C(val) UINT16_C(val) INT32_C(val) UINT32_C(val) INT6 4_C(val) int_least8_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint_least8_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) int16_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint16_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) int32_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint32_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) int64_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) 83 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4151 4152 4153 4154 4155 4156 4157 4158 4159 4160 4161 4162 4163 4164 4165 4166 4167 4168 4169 4170 4171 4172 4173 4174 4175 4176 4177 4178 4179 4180 4181 4182 4183 4184 4185 4186 4187 4188 4189 4190 4191 4192 4193 4194 4195 4196 4197 4198 4199 4200 UINT64_C(val) INT128_C(val) UINT128_C(val) uint64_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) int128_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) uint128_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) UINT_C(val) ULONG_C(val) uint_t 型の定数を作るマクロ ulong_t 型の定数を作るマクロ 【仕様決定の理由】 C99に用意されていないUINT_CとULONG_Cを導入したのは,アセンブリ言語から も参照する定数を記述するためである.C言語のみで用いる定数をこれらのマク ロを使って記述する必要はない. (2) 型に関する情報を取り出すためのマクロ【NGKI0499】 offsetof(structure, field) 構造体structure中のフィールドfieldの バイト位置を返すマクロ(C90準拠) alignof(typ e) 型typeのアラインメント単位を返すマクロ ALIGN_TYPE(addr, type) 番地addrが型typeに対してアラインしてい るかどうかを返すマクロ (3) assert マクロ【NGKI0500】 assert(exp) expが成立しているかを検査するマクロ(C90準拠) (4) コンパイラの拡張機能のためのマクロ【NGKI0501】 inline Inline asm Asm throw() NoReturn インライン関数 ファイルローカルなインライン関数 インラインアセンブラ インラインアセンブラ(最適化抑止) 例外を発生しない関数 リターンしない関数 (5) エラーコード構成・分解マクロ【NGKI0502】 ERCD(mercd, sercd) メインエラーコードmercdとサブエラーコードsercdか ら,エラーコードを構成するためのマクロ MERCD(ercd) エラーコードercdからメインエラーコードを抽出する ためのマクロ エラーコードercdからサブエラーコードを抽出するた めのマクロ SERCD(ercd) (6) アクセス許可パターン構成マクロ【NGKI0503】 TACP(domid) domid で指定されるユーザドメインのみにアクセスを 許可するアクセス許可パターンを構成するためのマ 84 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4201 4202 4203 4204 4205 4206 4207 4208 4209 4210 4211 4212 4213 4214 4215 4216 4217 4218 4219 4220 4221 4222 4223 4224 4225 4226 4227 4228 4229 4230 4231 4232 4233 4234 4235 4236 4237 4238 4239 4240 4241 4242 4243 4244 4245 4246 4247 4248 4249 4250 クロ ここで,TACPのパラメータ(domid)には,ユーザドメインのID番号のみを指定 することができる【NGKI0504】.TDOM_SELF,TDOM_KERNEL,TDOM_NONEを指定し た場合の動作は,保証されない【NGKI0505】. 2.14.6 TOPPERS 共通構成マクロ (1) 相対時間の範囲【NGKI0506】 TMAX_RELTIM 相対時間に指定できる最大値 2.15 カーネル共通定義 カーネルの複数の機能で共通に用いる定義を,カーネル共通定義と呼ぶ. 2.15.1 カーネルヘッダファイル カーネルを用いるために必要な定義は,カーネルヘッダファイル(kernel.h) およびそこからインクルードされるファイルに含まれている【NGKI0507】.カー ネルを用いる場合には,カーネルヘッダファイルをインクルードする 【NGKI0508】. ただし,カーネルを用いるために必要な定義の中で,コンフィギュレータによっ て生成されるものは,カーネル構成・初期化ヘッダファイル(kernel_cfg.h) に含まれる【NGKI0509】.具体的には,登録できるオブジェクトの数 (TNUM_YYY)やオブジェクトのID番号などの定義が,これに該当する.これら の定義を用いる場合には,カーネル構成・初期化ヘッダファイルをインクルー ドする【NGKI0510】. μITRON4.0仕様で規定されており,この仕様で廃止されたデータ型および定数 を用いる場合には,ITRON仕様互換ヘッダファイル(itron.h)をインクルード する【NGKI0511】. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,コンフィギュレータが生成するヘッダファイルに,オブジェク トのID番号の定義に加えて,登録できるオブジェクトの数(TNUM_YYY)の定義 が含まれることとした.これに伴い,ヘッダファイルの名称を,μITRON4.0仕 様の自動割付け結果ヘッダファイル(kernel_id.h)から,カーネル構成・初期 化ヘッダファイル(kernel_cfg.h)に変更した. 2.15.2 カーネル共通定数 (1) オブジェクト属性【NGKI0512】 TA_TPRI 0x01U タスクの待ち行列をタスクの優先度順に 【μITRON4.0仕様との関係】 85 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4251 4252 4253 4254 4255 4256 4257 4258 4259 4260 4261 4262 4263 4264 4265 4266 4267 4268 4269 4270 4271 4272 4273 4274 4275 4276 4277 4278 4279 4280 4281 4282 4283 4284 4285 4286 4287 4288 4289 4290 4291 4292 4293 4294 4295 4296 4297 4298 4299 4300 値が0のオブジェクト属性(TA_HLNG,TA_TFIFO,TA_MFIFO,TA_WSGL)は,デフォ ルトの扱いにして廃止した.これは,「(tskatr & TA_HLNG) != 0U 」のような 間違いを防ぐためである.TA_ASMは,有効な使途がないために廃止した. TA_MPRI は,メールボックス機能でのみ使用するため,カーネル共通定義から外 した. (2) 保護ドメインID【NGKI0513】 TDOM_SELF TDOM_KERNEL TDOM_NONE 0 -1 -2 自タスクの属する保護ドメイン カーネルドメイン 無所属(保護ドメインに属さない) (3) その他のカーネル共通定数【NGKI0514】 TCLS_SELF 0 自タスクの属するクラス TPRC_NONE TPRC_INI 0 0 割付けプロセッサの指定がない 初期割付けプロセッサ TSK_SELF TSK_NONE 0 0 自タスク指定 該当するタスクがない TPRI_SELF TPRI_INI 0 0 自タスクのベース優先度の指定 タスクの起動時優先度の指定 TIPM_ENAALL 0 割込み優先度マスク全解除 (4) カーネルで用いるメインエラーコード 「2.14.4 TOPPERS共通エラーコード」の節で定義したメインエラーコードの中 で,E_CLS,E_WBLK,E_BOVRの3つは,カーネルでは使用しない【NGKI0515】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,サービスコールから,E_RSFN,E_RSATR,E_MACV,E_OACV, E_NOMEM ,E_NOID,E_NORES,E_NOEXSが返る状況は起こらない【ASPS0011】. E_RSATR は,コンフィギュレータによって検出される【ASPS0012】.ただし,動 的生成機能拡張パッケージでは,E_RSATR,E_NOMEM,E_NOID,E_NOEXSが返る状 況が起こる【ASPS0013】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,サービスコールから,E_RSFN,E_RSATR,E_MACV,E_OACV, E_NOMEM ,E_NOID,E_NORES,E_NOEXSが返る状況は起こらない【FMPS0007】. E_RSATR とE_NORESは,コンフィギュレータによって検出される【FMPS0008】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,サービスコールから,E_RSATR,E_NOID,E_NORES, E_NOEXS が返る状況は起こらない【HRPS0006】.E_RSATRは,コンフィギュレー 86 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4301 4302 4303 4304 4305 4306 4307 4308 4309 4310 4311 4312 4313 4314 4315 4316 4317 4318 4319 4320 4321 4322 4323 4324 4325 4326 4327 4328 4329 4330 4331 4332 4333 4334 4335 4336 4337 4338 4339 4340 4341 4342 4343 4344 4345 4346 4347 4348 4349 4350 タによって検出される【HRPS0007】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,サービスコールから,E_RSFN,E_RSATR,E_MACV,E_OACV, E_ILUSE ,E_NOMEM,E_NOID,E_NORES,E_NOEXS,E_RLWAI,E_TMOUT,E_DLTが返 る状況は起こらない【SSPS0008】.E_RSATRは,コンフィギュレータによって検 出される【SSPS0009】. 2.15.3 カーネル共通マクロ (1) スタック領域をアプリケーションで確保するためのデータ型とマクロ スタック領域をアプリケーションで確保するために,次のデータ型とマクロを 用意している【NGKI0516】. STK_T スタック領域を確保するためのデータ型 COUNT_STK_T(sz) サイズszのスタック領域を確保するために必要な STK_T 型の配列の要素数 要素数COUNT_STK_T(sz)のSTK_T型の配列のサイズ(sz を,STK_T型のサイズの倍数になるように大きい方に 丸めた値) ROUND_STK_T(sz) これらを用いてスタック領域を確保する方法は次の通り【NGKI0517】. STK_T < スタック領域の変数名>[COUNT_STK_T(<スタック領域のサイズ>)]; この方法で確保したスタック領域を,サービスコールまたは静的APIに渡す場合 には,スタック領域の先頭番地に<スタック領域の変数名>を,スタック領域の サイズにROUND_STK_T(<スタック領域のサイズ>)を指定する【NGKI0518】. ただし,保護機能対応カーネルにおいては,上の方法によりタスクのユーザス タック領域を確保することはできない【NGKI0519】.詳しくは,「4.1 タスク 管理機能」の節のCRE_TSKの機能の項を参照すること. (2) オブジェクト属性を作るマクロ 保護機能対応カーネルでは,オブジェクトが属する保護ドメインを指定するた めのオブジェクト属性を作るマクロとして,次のマクロを用意している 【NGKI0520】. TA_DOM(domid) domid で指定される保護ドメインに属する マルチプロセッサ対応カーネルでは,オブジェクトが属するクラスを指定する ためのオブジェクト属性を作るマクロとして,次のマクロを用意している 【NGKI0521】. TA_CLS(clsid) clsid で指定されるクラスに属する 87 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4351 4352 4353 4354 4355 4356 4357 4358 4359 4360 4361 4362 4363 4364 4365 4366 4367 4368 4369 4370 4371 4372 4373 4374 4375 4376 4377 4378 4379 4380 4381 4382 4383 4384 4385 4386 4387 4388 4389 4390 4391 4392 4393 4394 4395 4396 4397 4398 4399 4400 (3) サービスコールの呼出し方法を指定するマクロ 保護機能対応カーネルでは,サービスコールの呼出し方法を指定するためのマ クロとして,次のマクロを用意している【NGKI0522】. SVC_CALL(svc) svc で指定されるサービスコールを関数呼出しによっ て呼び出すための名称 2.15.4 カーネル共通構成マクロ (1) サポートする機能【NGKI0523】 TOPPERS_SUPPORT_PROTECT TOPPERS_SUPPORT_MULTI_PRC TOPPERS_SUPPORT_DYNAMIC_CRE 保護機能対応のカーネル マルチプロセッサ対応のカーネル 動的生成対応のカーネル 【未決定事項】 マクロ名は,今後変更する可能性がある. (2) 優先度の範囲【NGKI0524】 TMIN_TPRI TMAX_TPRI タスク優先度の最小値(=1) タスク優先度の最大値 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,タスク優先度の最大値(TMAX_TPRI)は16に固定されている 【ASPS0014】.ただし,タスク優先度拡張パッケージを用いると,TMAX_TPRIを 256に拡張することができる【ASPS0015】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,タスク優先度の最大値(TMAX_TPRI)は16に固定されている 【FMPS0009】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,タスク優先度の最大値(TMAX_TPRI)は16に固定されている 【HRPS0008】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,タスク優先度の最大値(TMAX_TPRI)は16に固定されている 【SSPS0010】. 【μITRON4.0仕様との関係】 メッセージ優先度の最小値(TMIN_MPRI)と最大値(TMAX_MPRI)は,メールボッ クス機能でのみ使用するため,カーネル共通定義から外した. 88 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4401 4402 4403 4404 4405 4406 4407 4408 4409 4410 4411 4412 4413 4414 4415 4416 4417 4418 4419 4420 4421 4422 4423 4424 4425 4426 4427 4428 4429 4430 4431 4432 4433 4434 4435 4436 4437 4438 4439 4440 4441 4442 4443 4444 4445 4446 4447 4448 4449 4450 (3) プロセッサの数 マルチプロセッサ対応カーネルでは,プロセッサの数を知るためのマクロとし て,次の構成マクロを用意している【NGKI0525】. TNUM_PRCID プロセッサの数 (4) 特殊な役割を持ったプロセッサ マルチプロセッサ対応カーネルでは,特殊な役割を持ったプロセッサを知るた めのマクロとして,次の構成マクロを用意している【NGKI0526】. TOPPERS_MASTER_PRCID TOPPERS_SYSTIM_PRCID マスタプロセッサのID番号 システム時刻管理プロセッサのID番号(グ ローバルタイマ方式の場合のみ) (5) タイマ方式 マルチプロセッサ対応カーネルでは,システム時刻の方式を知るためのマクロ として,次の構成マクロを用意している【NGKI0527】. TOPPERS_SYSTIM_LOCAL TOPPERS_SYSTIM_GLOBAL ローカルタイマ方式の場合にマクロ定義 グローバルタイマ方式の場合にマクロ定義 (6) バージョン情報【NGKI0528】 TKERNEL_MAKER TKERNEL_PRID TKERNEL_SPVER TKERNEL_PRVER カーネルのメーカコード(=0x0118) カーネルの識別番号 カーネル仕様のバージョン番号 カーネルのバージョン番号 カーネルのメーカコード(TKERNEL_MAKER)は,TOPPERSプロジェクトから配布 するカーネルでは,TOPPERSプロジェクトを表す値(0x0118)に設定されている. カーネルの識別番号(TKERNEL_PRID)は,TOPPERSカーネルの種類を表す. 0x0001 0x0002 0x0003 0x0004 0x0005 0x0006 0x0007 0x0008 0x0009 0x000a TOPPERS/JSP カーネル 予約(IIMPカーネル) 予約(IDLカーネル) TOPPERS/FI4 カーネル TOPPERS/FDMP カーネル TOPPERS/HRP カーネル TOPPERS/ASP カーネル TOPPERS/FMP カーネル TOPPERS/SSP カーネル TOPPERS/ASP Safety カーネル カーネル仕様のバージョン番号(TKERNEL_SPVER)は,上位8ビット(0xf5)が TOPPERS 新世代カーネル仕様であることを,中位4ビットがメジャーバージョン 89 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4451 4452 4453 4454 4455 4456 4457 4458 4459 4460 4461 4462 4463 4464 4465 4466 4467 4468 4469 4470 4471 4472 4473 4474 4475 4476 4477 4478 4479 4480 4481 4482 4483 4484 4485 4486 4487 4488 4489 4490 4491 4492 4493 4494 4495 4496 4497 4498 4499 4500 番号,下位4ビットがマイナーバージョン番号を表す. カーネルのバージョン番号(TKERNEL_PRVER)は,上位4ビットがメジャーバー ジョン番号,中位8ビットがマイナーバージョン番号,下位4ビットがパッチレ ベルを表す. 第3章 システムインタフェースレイヤAPI仕様 3.1 システムインタフェースレイヤの概要 システムインタフェースレイヤ(この章では,SILと略記する)は,デバイスを 直接操作するプログラムが用いるための機能である.ITRONデバイスドライバ設 計ガイドラインの一部分として検討されたものをベースに,TOPPERSプロジェク トにおいて修正を加えて用いている. SILの機能は,プロセッサの特権モードで実行されているプログラムが使用する ことを想定している【NGKI0801】.非特権モードで実行されているプログラム からSILの機能を呼び出した場合の動作は,次の例外を除いては保証されない 【NGKI0802】. ・微少時間待ちの機能を呼び出すこと ・エンディアンの取得のためのマクロを参照すること ・メモリ空間アクセス関数により,アクセスを許可されたメモリ領域にアクセ スすること ・I/O空間アクセス関数により,アクセスを許可されたI/O領域にアクセスする こと 3.2 SIL ヘッダファイル SILを用いるために必要な定義は,SILヘッダファイル(sil.h)およびそこから インクルードされるファイルに含まれている【NGKI0803】.SILを用いる場合に は,SILヘッダファイルをインクルードする【NGKI0804】. 3.3 全割込みロック状態の制御 デバイスを扱うプログラムの中では,すべての割込み(NMIを除く,以下同じ) をマスクしたい場合がある.カーネルで制御できるCPUロック状態は,カーネル 管理外の割込み(NMI以外にカーネル管理外の割込みがあるかはターゲット定義) をマスクしないため,このような場合に用いることはできない. そこで,SILでは,すべての割込みをマスクする全割込みロック状態を制御する ための以下の機能を用意している. (1) SIL_PRE_LOC 全割込みロック状態の制御に必要な変数を宣言するマクロ【NGKI0805】.通常 は,型と変数名を並べたもので,最後に";"を含まない. このマクロは,SIL_LOC_INT,SIL_UNL_INTを用いる関数またはブロックの先頭 90 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4501 4502 4503 4504 4505 4506 4507 4508 4509 4510 4511 4512 4513 4514 4515 4516 4517 4518 4519 4520 4521 4522 4523 4524 4525 4526 4527 4528 4529 4530 4531 4532 4533 4534 4535 4536 4537 4538 4539 4540 4541 4542 4543 4544 4545 4546 4547 4548 4549 4550 の変数宣言部に記述しなければならない【NGKI0806】.SIL_LOC_INT, SIL_UNL_INT を1つの関数内でネストして用いることは可能であるが,その場合 には,ネストレベル毎にブロックを作り,そのブロックの先頭の変数宣言部に SIL_PRE_LOC を記述しなければならない【NGKI0807】.そのように記述しなかっ た場合の動作は保証されない【NGKI0808】. (2) SIL_LOC_INT() 全割込みロックフラグをセットすることで,NMIを除くすべての割込みをマスク し,全割込みロック状態に遷移する【NGKI0809】. (3) SIL_UNL_INT() 全割込みロックフラグを,対応するSIL_LOC_INTを実行する前の状態に戻す 【NGKI0810】.SIL_LOC_INTを実行せずにSIL_UNL_INTを呼び出した場合の動作 は保証されない【NGKI0811】. なお,全割込みロック状態で呼び出せるサービスコールなどの制限事項につい ては,「2.5.4 全割込みロック状態と全割込みロック解除状態」の節を参照す ること. 【補足説明】 全割込みロック状態の制御機能の使用例は次の通り. { SIL_PRE_LOC; SIL_LOC_INT(); // この間はNMIを除くすべての割込みがマスクされる. // この間にサービスコールを呼び出してはならない(一部例外あり). SIL_UNL_INT(); } 3.4 SIL スピンロック マルチプロセッサシステムにおいて,カーネルの機能を用いずに,他のプロセッ サとの間でも排他制御を実現したい場合がある.そこでSILでは,割込みのマス クとプロセッサ間ロックの取得により排他制御を行うためのスピンロックの機 能を用意している.これを,カーネルのスピンロック機能と区別するために, SILスピンロックと呼ぶ. プロセッサ間ロックを取得している間は,全割込みロック状態にすることです べての割込み(NMIを除く)がマスクされる【NGKI0812】.ロックが他のプロセッ サに取得されている場合には,ロックが取得できるまでループによって待つ 【NGKI0813】.ロックの取得を待つ間は,割込みはマスクされない(ロックの 取得を試みる前にマスクしていた割込みは,マスク解除されない) 【NGKI0814】.プロセッサ間ロックを取得し割込みをマスクすることを,SILス ピンロックを取得するという.また,プロセッサ間ロックを返却し割込みをマ スク解除することを,SILスピンロックを返却するという. 91 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4551 4552 4553 4554 4555 4556 4557 4558 4559 4560 4561 4562 4563 4564 4565 4566 4567 4568 4569 4570 4571 4572 4573 4574 4575 4576 4577 4578 4579 4580 4581 4582 4583 4584 4585 4586 4587 4588 4589 4590 4591 4592 4593 4594 4595 4596 4597 4598 4599 4600 SILで取得・返却するプロセッサ間ロックは,システムに唯一存在する 【NGKI0815】. (1) SIL_PRE_LOC 全割込みロック状態の制御に必要な変数を宣言するマクロであるが,SILスピン ロックの取得・解放にも兼用する【NGKI0816】. このマクロは,SIL_LOC_SPN,SIL_UNL_SPNを用いる関数またはブロックの先頭 の変数宣言部に記述しなければならない【NGKI0817】.SIL_LOC_SPN, SIL_UNL_SPN を,同じ関数内のSIL_LOC_INT,SIL_UNL_INTとネストして用いるこ とは可能であるが,その場合には,ネストレベル毎にブロックを作り,そのブ ロックの先頭の変数宣言部にSIL_PRE_LOCを記述しなければならない 【NGKI0818】.そのように記述しなかった場合の動作は保証されない 【NGKI0819】. (2) SIL_LOC_SPN() SILスピンロックが取得されていない状態である場合には,プロセッサ間ロック の取得を試みる【NGKI0820】.ロックが他のプロセッサに取得されている状態 である場合や,他のプロセッサがロックの取得に成功した場合には,ロックが 返却されるまでループによって待ち,返却されたらロックの取得を試みる 【NGKI0821】.ロックの取得に成功した場合には,全割込みロックフラグをセッ トし,全割込みロック状態に遷移する【NGKI0822】. (3) SIL_UNL_SPN() プロセッサ間ロックを返却し,全割込みロックフラグを対応するSIL_LOC_SPNを 実行する前の状態に戻す【NGKI0823】. SILスピンロックを取得している状態でSIL_LOC_SPNを呼び出した場合の動作は 保証されない【NGKI0824】.逆に,SILスピンロックを取得していない状態で SIL_UNL_SPNを呼び出した場合の動作も保証されない【NGKI0825】. なお,SILスピンロック取得中は全割込みロック状態となっているため,SILス ピンロック取得中に呼び出せるサービスコールなどについては,「2.5.4 全割 込みロック状態と全割込みロック解除状態」の節の制限事項が適用される. なお,マルチプロセッサシステム以外では,SIL_LOC_SPNとSIL_UNL_SPNは用意 されていない【NGKI0826】. 【使用上の注意】 全割込ロック状態やCPUロック状態でSIL_LOC_SPNを呼び出すことはできるが, 割込みがマスクされている時間が長くなるために,そのような使い方は避ける べきである. 【補足説明】 92 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4601 4602 4603 4604 4605 4606 4607 4608 4609 4610 4611 4612 4613 4614 4615 4616 4617 4618 4619 4620 4621 4622 4623 4624 4625 4626 4627 4628 4629 4630 4631 4632 4633 4634 4635 4636 4637 4638 4639 4640 4641 4642 4643 4644 4645 4646 4647 4648 4649 4650 SILスピンロック機能の使用例は次の通り. { SIL_PRE_LOC; SIL_LOC_SPN(); // この間はSILスピンロックを取得している. // この間はNMIを除くすべての割込みがマスクされる. // この間にサービスコールを呼び出してはならない(一部例外あり). SIL_UNL_SPN(); } 3.5 微少時間待ち デバイスをアクセスする際に,微少な時間待ちを入れなければならない場合が ある.そのような場合に,NOP命令をいくつか入れるなどの方法で対応すると, ポータビリティを損なうことになる.そこで,SILでは,微少な時間待ちを行う ための以下の機能を用意している. (1) void sil_dly_nse(ulong_t dlytim) dlytim で指定された以上の時間(単位はナノ秒),ループなどによって待つ 【NGKI0827】.指定した値によっては,指定した時間よりもかなり長く待つ場 合があるので注意すること. 3.6 エンディアンの取得 プロセッサのバイトエンディアンを取得するためのマクロとして,SILでは,以 下のマクロを定義している. (1) SIL_ENDIAN_BIG ,SIL_ENDIAN_LITTLE ビッグエンディアンプロセッサではSIL_ENDIAN_BIGを,リトルエンディアンプ ロセッサではSIL_ENDIAL_LITTLEを,マクロ定義している【NGKI0828】. 3.7 メモリ空間アクセス関数 メモリ空間にマッピングされたデバイスレジスタや,デバイスとの共有メモリ をアクセスするために,SILでは,以下の関数を用意している. (1) uint8_t sil_reb_mem(const uint8_t *mem) memで指定されるアドレスから8ビット単位で読み出した値を返す【NGKI0829】. (2) void sil_wrb_mem(uint8_t *mem, uint8_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を8ビット単位で書き込む 【NGKI0830】. (3) uint16_t sil_reh _mem(const uint16_t *mem) 93 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4651 4652 4653 4654 4655 4656 4657 4658 4659 4660 4661 4662 4663 4664 4665 4666 4667 4668 4669 4670 4671 4672 4673 4674 4675 4676 4677 4678 4679 4680 4681 4682 4683 4684 4685 4686 4687 4688 4689 4690 4691 4692 4693 4694 4695 4696 4697 4698 4699 4700 memで指定されるアドレスから16ビット単位で読み出した値を返す【NGKI0831】. (4) void sil_wrh_mem(uint16_t *mem, uint16_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を16ビット単位で書き込む 【NGKI0832】. (5) uint16_t sil_reh_lem(const uint16_t *mem) memで指定されるアドレスから16ビット単位でリトルエンディアンで読み出した 値を返す【NGKI0833】.リトルエンディアンプロセッサでは,sil_reh_memと一 致する.ビッグエンディアンプロセッサでは,sil_reh_memが返す値を,エンディ アン変換した値を返す. (6) void sil_wrh_lem(uint16_t *mem, uint16_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を16ビット単位でリトルエンディ アンで書き込む【NGKI0834】.リトルエンディアンプロセッサでは, sil_wrh_mem と一致する.ビッグエンディアンプロセッサでは,dataをエンディ アン変換した値を,sil_wrh_memで書き込むのと同じ結果となる. (7) uint16_t sil_reh_bem(const uint16_t *mem) memで指定されるアドレスから16ビット単位でビッグエンディアンで読み出した 値を返す【NGKI0835】.ビッグエンディアンプロセッサでは,sil_reh_memと一 致する.リトルエンディアンプロセッサでは,sil_reh_memが返す値を,エンディ アン変換した値を返す. (8) void sil_wrh_bem(uint16_t *mem, uint16_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を16ビット単位でビッグエンディ アンで書き込む【NGKI0836】.ビッグエンディアンプロセッサでは, sil_wrh_mem と一致する.リトルエンディアンプロセッサでは,dataをエンディ アン変換した値を,sil_wrh_memで書き込むのと同じ結果となる. (9) uint32_t sil_rew_mem(const uint32_t *mem) memで指定されるアドレスから32ビット単位で読み出した値を返す【NGKI0837】. (10) void sil_wrw_mem(uint32_t *mem, uint32_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を32ビット単位で書き込む 【NGKI0838】. (11) uint32_t sil_rew_lem(const uint32_t *mem) memで指定されるアドレスから32ビット単位でリトルエンディアンで読み出した 値を返す【NGKI0839】.リトルエンディアンプロセッサでは,sil_rew_memと一 致する.ビッグエンディアンプロセッサでは,sil_rew_memが返す値を,エンディ 94 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4701 4702 4703 4704 4705 4706 4707 4708 4709 4710 4711 4712 4713 4714 4715 4716 4717 4718 4719 4720 4721 4722 4723 4724 4725 4726 4727 4728 4729 4730 4731 4732 4733 4734 4735 4736 4737 4738 4739 4740 4741 4742 4743 4744 4745 4746 4747 4748 4749 4750 アン変換した値を返す. (12) void sil_wrw_lem(uint32_t *mem, uint32_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を32ビット単位でリトルエンディ アンで書き込む【NGKI0840】.リトルエンディアンプロセッサでは, sil_wrw_mem と一致する.ビッグエンディアンプロセッサでは,dataをエンディ アン変換した値を,sil_wrw_memで書き込むのと同じ結果となる. (13) uint32_t sil_rew_bem(const uint32_t *mem) memで指定されるアドレスから32ビット単位でビッグエンディアンで読み出した 値を返す【NGKI0841】.ビッグエンディアンプロセッサでは,sil_rew_memと一 致する.リトルエンディアンプロセッサでは,sil_rew_memが返す値を,エンディ アン変換した値を返す. (14) void sil_wrw_bem(uint32_t *mem, uint32_t data) memで指定されるアドレスにdataで指定される値を32ビット単位でビッグエンディ アンで書き込む【NGKI0842】.ビッグエンディアンプロセッサでは, sil_wrw_mem と一致する.リトルエンディアンプロセッサでは,dataをエンディ アン変換した値を,sil_wrw_memで書き込むのと同じ結果となる. 3.8 I/O 空間アクセス関数 メモリ空間とは別にI/O空間を持つプロセッサでは,I/O空間にあるデバイスレ ジスタをアクセスするために,メモリ空間アクセス関数と同等の以下の関数を 用意している【NGKI0843】. (1) uint8_t sil_reb_iop(const uint8_t *iop) (2) void sil_wrb_iop(uint8_t *iop, uint8_t data) (3) uint16_t sil_reh_iop(const uint16_t *iop) (4) void sil_wrh_iop(uint16_t *iop, uint16_t data) (5) uint16_t sil_reh_lep(const uint16_t *iop) (6) void sil_wrh_lep(uint16_t *iop, uint16_t data) (7) uint16_t sil_reh_b ep(const uint16_t *iop) (8) void sil_wrh_bep(uint16_t *iop, uint16_t data) (9) uint32_t sil_rew_iop(const uint32_t *iop) (10) void sil_wrw_iop(uint32_t *iop, uint32_t data) (11) uint32_t sil_rew_lep(const uint32_t *i op) (12) void sil_wrw_lep(uint32_t *iop, uint32_t data) (13) uint32_t sil_rew_bep(const uint32_t *iop) (14) void sil_wrw_bep(uint32_t *iop, uint32_t data) 3.9 プロセッサIDの参照 マルチプロセッサシステムにおいては,プログラムがどのプロセッサで実行さ れているかを参照するために,以下の関数を用意している. (1) void sil_get_pid(ID *p_prcid) 95 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4751 4752 4753 4754 4755 4756 4757 4758 4759 4760 4761 4762 4763 4764 4765 4766 4767 4768 4769 4770 4771 4772 4773 4774 4775 4776 4777 4778 4779 4780 4781 4782 4783 4784 4785 4786 4787 4788 4789 4790 4791 4792 4793 4794 4795 4796 4797 4798 4799 4800 この関数を呼び出したプログラムを実行しているプロセッサのID番号を参照し, p_prcid で指定したメモリ領域に返す【NGKI0844】. 【使用上の注意】 タスクは,sil_get_pidを用いて,自タスクを実行しているプロセッサを正しく 参照できるとは限らない.これは,sil_get_pidを呼び出し,自タスクを実行し ているプロセッサのID番号を参照した直後に割込みが発生した場合, sil_get_pid から戻ってきた時には自タスクを実行しているプロセッサが変化し ている可能性があるためである. 第4章 カーネルAPI仕様 この章では,カーネルのAPI仕様について規定する. 【μITRON4.0仕様との関係】 TOPPERS 共通データ型に従い,パラメータのデータ型を次の通り変更した.これ らの変更については,個別のAPI仕様では記述しない. INT → int_t UINT → uint_t VP → void * VP_INT → intptr_t 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 ID番号で識別するオブジェクトのアクセス許可ベクタをデフォルト以外に設定 する場合には,オブジェクトを生成した後に設定することとし,アクセス許可 ベクタを設定する静的API(SAC_YYY)を新設した.逆に,アクセス許可ベクタ を指定してオブジェクトを生成する機能(CRA_YYY,cra_yyy,acra_yyy)は廃 止した.これらの変更については,個別のAPI仕様では記述しない. 4.1 タスク管理機能 タスクは,プログラムの並行実行の単位で,カーネルが実行を制御する処理単 位である.タスクは,タスクIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI1001】. タスク管理機能に関連して,各タスクが持つ情報は次の通り【NGKI1002】. ・タスク属性 ・タスク状態 ・ベース優先度 ・現在優先度 ・起動要求キューイング数 ・割付けプロセッサ(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) ・次回起動時の割付けプロセッサ(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) ・拡張情報 96 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4801 4802 4803 4804 4805 4806 4807 4808 4809 4810 4811 4812 4813 4814 4815 4816 4817 4818 4819 4820 4821 4822 4823 4824 4825 4826 4827 4828 4829 4830 4831 4832 4833 4834 4835 4836 4837 4838 4839 4840 4841 4842 4843 4844 4845 4846 4847 4848 4849 4850 ・メインルーチンの先頭番地 ・起動時優先度 ・実行時優先度(TOPPERS/SSPカーネルの場合) ・スタック領域 ・システムスタック領域(保護機能対応カーネルの場合) ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) タスクのベース優先度は,タスクの現在優先度を決定するために使われる優先 度であり,タスクの起動時に起動時優先度に初期化される【NGKI1003】. タスクの現在優先度は,タスクの実行順位を決定するために使われる優先度で ある.単にタスクの優先度と言った場合には,現在優先度のことを指す.タス クがミューテックスをロックしていない間は,タスクの現在優先度はベース優 先度に一致する【NGKI1004】.ミューテックスをロックしている間のタスクの 現在優先度については,「4.4.6 ミューテックス」の節を参照すること. タスクの起動要求キューイング数は,処理されていないタスクの起動要求の数 であり,タスクの生成時に0に初期化される【NGKI1005】. 割付けプロセッサは,マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,タスクを実行 するプロセッサで,タスクの生成時に,タスクが属するクラスによって定まる 初期割付けプロセッサに初期化される【NGKI1006】. 次回起動時の割付けプロセッサは,マルチプロセッサ対応カーネルにおいて, タスクが次に起動される時に割り付けられるプロセッサで,タスクの生成時に 未設定の状態に初期化される【NGKI1007】.タスクの起動時に,次回起動時の 割付けプロセッサが設定されていれば,タスクの割付けプロセッサがそのプロ セッサに変更され,次回起動時の割付けプロセッサは未設定の状態に戻される 【NGKI1008】.次回起動時の割付けプロセッサが未設定の場合には,タスクの 割付けプロセッサは変更されない(つまり,タスクが前に実行されていたのと 同じプロセッサで実行される)【NGKI1009】. 保護機能対応カーネルにおいては,スタック領域の扱いは,ユーザタスクとシ ステムタスクで異なる.ユーザタスクのスタック領域は,ユーザタスクが非特 権モードで実行する間に用いるスタック領域であり,ユーザスタック領域と呼 ぶ【NGKI1010】.その扱いについては,「2.11.6 ユーザタスクのユーザスタッ ク領域」の節を参照すること.システムタスクのスタック領域は,カーネルの 用いるオブジェクト管理領域と同様に扱われる【NGKI1011】. システムスタック領域は,保護機能対応カーネルにおいて,ユーザタスクがサー ビスコール(拡張サービスコールを含む)を呼び出し,特権モードで実行する 間に用いるスタック領域である【NGKI1012】.システムスタック領域は,カー ネルの用いるオブジェクト管理領域と同様に扱われる【NGKI1013】. タスク属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1014】. TA_ACT TA_RSTR 0x02U 0x04U タスクの生成時にタスクを起動する 生成するタスクを制約タスクとする 97 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4851 4852 4853 4854 4855 4856 4857 4858 4859 4860 4861 4862 4863 4864 4865 4866 4867 4868 4869 4870 4871 4872 4873 4874 4875 4876 4877 4878 4879 4880 4881 4882 4883 4884 4885 4886 4887 4888 4889 4890 4891 4892 4893 4894 4895 4896 4897 4898 4899 4900 TA_ACT を指定しない場合,タスクの生成直後には,タスクは休止状態となる 【NGKI1015】.また,ターゲットによっては,ターゲット定義のタスク属性を 指定できる場合がある【NGKI1016】.ターゲット定義のタスク属性として,次 の属性を予約している【NGKI1017】. TA_FPU FPU レジスタをコンテキストに含める C言語によるタスクの記述形式は次の通り【NGKI1018】. void task(intptr_t exinf) { タスク本体 ext_tsk(); } exinf には,タスクの拡張情報が渡される【NGKI1019】.ext_tskを呼び出さず, タスクのメインルーチンからリターンした場合,ext_tskを呼び出した場合と同 じ動作をする【NGKI1020】. タスク管理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMAX_ACTCNT タスクの起動要求キューイング数の最大値【NGKI1021】 TNUM_TSKID 登録できるタスクの数(動的生成対応でないカーネルで は,静的APIによって登録されたタスクの数に一致) 【NGKI1022】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,TMAX_ACTCNTは1に固定されている【ASPS0101】.また,制約 タスクはサポートしていない【ASPS0102】.ただし,制約タスク拡張パッケー ジを用いると,制約タスクの機能を追加することができる【ASPS0103】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,TMAX_ACTCNTは1に固定されている【FMPS0101】.また,制約 タスクはサポートしていない【FMPS0102】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,TMAX_ACTCNTは1に固定されている【HRPS0101】.また,制 約タスクはサポートしていない【HRPS0102】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,TMAX_ACTCNTは1に固定されている【SSPS0101】. SSPカーネルは,制約タスクのみをサポートすることから,すべてのタスクでス タック領域を共有しており,タスク毎にスタック領域の情報を持たない 98 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4901 4902 4903 4904 4905 4906 4907 4908 4909 4910 4911 4912 4913 4914 4915 4916 4917 4918 4919 4920 4921 4922 4923 4924 4925 4926 4927 4928 4929 4930 4931 4932 4933 4934 4935 4936 4937 4938 4939 4940 4941 4942 4943 4944 4945 4946 4947 4948 4949 4950 【SSPS0102】. SSPカーネルにおける追加機能として,タスクに対して,実行時優先度の情報を 持つ【SSPS0103】.SSPカーネルにおいては,タスクが起動された後,最初に実 行状態になる時に,タスクのベース優先度が,タスクの実行時優先度に設定さ れる【SSPS0104】.実行時優先度の機能は,起動時優先度よりも高い優先度で タスクを実行することで,同時期に共有スタック領域を使用している状態にな るタスクの組み合わせを限定し,スタック領域を節約するための機能である. タスクの実行時優先度は,実行時優先度を定義する静的API(DEF_EPR)によっ て設定する【SSPS0105】.実行時優先度を定義しない場合,タスクの実行時優 先度は,起動時優先度と同じ値に設定される【SSPS0106】. 〔実行時優先度によるスタック領域の節約〕 いずれのタスクにも実行時優先度が設定されていない場合には,すべてのタス クが同時期に共有スタック領域を使用している状態になる可能性があるため, すべてのタスクのスタック領域のサイズの和に,非タスクコンテキスト用のス タック領域のサイズを加えたものが,共有スタック領域に必要なサイズとなる. タスクAに対して実行時優先度が設定されており,タスクAの起動時優先度より も高く,タスクAの実行時優先度と同じかそれよりも低い起動時優先度を持つタ スクBがある場合,タスクAとタスクBは同時期に共有スタック領域を使用してい る状態にならない.そのため,タスクAとタスクBの内,サイズが小さい方のス タック領域のサイズは,共有スタック領域のサイズに加える必要がなくなり, スタック領域を節約できることになる. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,自タスクの拡張情報の参照するサービスコール(get_inf)をサ ポートし,起動コードを指定してタスクを起動するサービスコール(sta_tsk), タスクを終了と同時に削除するサービスコール(exd_tsk),タスクの状態を参 照するサービスコールの簡易版(ref_tst)はサポートしないこととした. TNUM_TSKID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_TSK タスクの生成〔S〕【NGKI1023】 acre_tsk タスクの生成〔TD〕【NGKI1024】 【静的API】 *保護機能対応でないカーネルの場合 CRE_TSK(ID tskid, { ATR tskatr, intptr_t exinf, TASK task, PRI itskpri, SIZE stksz, STK_T *stk }) *保護機能対応カーネルの場合 CRE_TSK(ID tskid, { ATR tskatr, intptr_t exinf, TASK task, PRI itskpri, SIZE stksz, STK_T *stk, SIZE sstksz, STK_T *sstk }) ※ sstkszおよびsstkの記述は省略することができる【NGKI1025】. 【C言語API】 99 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 4951 4952 4953 4954 4955 4956 4957 4958 4959 4960 4961 4962 4963 4964 4965 4966 4967 4968 4969 4970 4971 4972 4973 4974 4975 4976 4977 4978 4979 4980 4981 4982 4983 4984 4985 4986 4987 4988 4989 4990 4991 4992 4993 4994 4995 4996 4997 4998 4999 5000 ER_ID tskid = acre_tsk(const T_CTSK *pk_ctsk) 【パラメータ】 ID tskid T_CTSK * pk_ctsk 生成するタスクのID番号(CRE_TSKの場合) タスクの生成情報を入れたパケットへのポイン タ(静的APIを除く) *タスクの生成情報(パケットの内容) ATR tskatr タスク属性 intptr_t exinf タスクの拡張情報 TASK task タスクのメインルーチンの先頭番地 PRI itskpri タスクの起動時優先度 SIZE stksz タスクのスタック領域のサイズ(バイト数) STK_T * stk タスクのスタック領域の先頭番地 SIZE sstksz タスクのシステムスタック領域のサイズ(バイ ト数,保護機能対応カーネルの場合,静的API においては省略可) STK_T * sstk タスクのシステムスタック領域の先頭番地(保 護機能対応カーネルの場合,静的APIにおいて は省略可) 【リターンパラメータ】 ER_ID tskid 生成されたタスクのID番号(正の値)またはエ ラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1026】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1027】 E_RSATR 予約属性 ・tskatrが無効【NGKI1028】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外または無所属〔sP〕 【NGKI1029】 ・保護ドメインの囲みの中に記述されていない〔SP〕【NGKI1030】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1031】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1032】 E_PAR パラメータエラー ・taskがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI1033】 ・itskpriが有効範囲外【NGKI1034】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1035】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_ctskが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1036】 E_NOID ID 番号不足 ・割り付けられるタスクIDがない〔sD〕【NGKI1037】 E_NOMEM メモリ不足 ・スタック領域が確保できない【NGKI1038】 100 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5001 5002 5003 5004 5005 5006 5007 5008 5009 5010 5011 5012 5013 5014 5015 5016 5017 5018 5019 5020 5021 5022 5023 5024 5025 5026 5027 5028 5029 5030 5031 5032 5033 5034 5035 5036 5037 5038 5039 5040 5041 5042 5043 5044 5045 5046 5047 5048 5049 5050 E_OBJ ・システムスタック領域が確保できない【NGKI1039】 オブジェクト状態エラー ・tskidで指定したタスクが登録済み(CRE_TSKの場合)【NGKI1040】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したタスク生成情報に従って,タスクを生成する.具体的 な振舞いは以下の通り. まず,stkとstkszからタスクが用いるスタック領域が設定される【NGKI1041】. ただし,保護機能対応カーネルで,生成するタスクがシステムタスクの場合に は,スタック領域の設定にsstkszも用いられる.stkszに0以下の値を指定した 時や,設定されるスタック領域のサイズがターゲット定義の最小値よりも小さ くなる時には,E_PARエラーとなる【NGKI1042】. また,保護機能対応カーネルで,生成するタスクがユーザタスクの場合には, sstk とsstkszからシステムスタック領域が設定される【NGKI1043】.この場合, sstksz に0以下の値を指定した時や,ターゲット定義の最小値よりも小さい値を 指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI1044】. 次に,生成されたタスクに対してタスク生成時に行うべき初期化処理が行われ, 生成されたタスクは休止状態になる【NGKI1045】.さらに,tskatrにTA_ACTを 指定した場合には,タスク起動時に行うべき初期化処理が行われ,生成された タスクは実行できる状態になる【NGKI1046】. 静的APIにおいては,tskidはオブジェクト識別名,tskatr,itskpri,stkszは 整数定数式パラメータ,exinf,task,stkは一般定数式パラメータである 【NGKI1047】.コンフィギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラー を検出することができない【NGKI1048】. 〔stkにNULLを指定した場合〕 stkをNULLとした場合,stkszで指定したサイズのスタック領域が,コンフィギュ レータまたはカーネルにより確保される【NGKI1049】.stkszにターゲット定義 の制約に合致しないサイズを指定した時には,ターゲット定義の制約に合致す るように大きい方に丸めたサイズで確保される【NGKI1050】. 保護機能対応カーネルにおいて,生成するタスクがユーザタスクの場合,コン フィギュレータまたはカーネルにより確保されるスタック領域(ユーザスタッ ク領域)は,「2.11.6 ユーザタスクのユーザスタック領域」の節の規定に従っ て,メモリオブジェクトとしてカーネルに登録される【NGKI1051】. 静的APIにより制約タスクを生成する場合(tskatrにTA_RSTRを指定して生成す る場合),スタック領域は,制約タスクの起動時優先度毎に確保され,同じ起 動時優先度を持つ制約タスクで共有される【NGKI1052】.確保されるスタック 領域のサイズは,それを共有する制約タスクのスタック領域のサイズ(stksz) の最大値となる【NGKI1053】.マルチプロセッサ対応カーネルでは,以上のス タック領域の確保処理を,制約タスクの初期割付けプロセッサ毎に行う 【NGKI1054】. 101 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5051 5052 5053 5054 5055 5056 5057 5058 5059 5060 5061 5062 5063 5064 5065 5066 5067 5068 5069 5070 5071 5072 5073 5074 5075 5076 5077 5078 5079 5080 5081 5082 5083 5084 5085 5086 5087 5088 5089 5090 5091 5092 5093 5094 5095 5096 5097 5098 5099 5100 〔stkにNULL以外を指定した場合〕 stkにNULL以外を指定した場合,stkとstkszで指定したスタック領域は,アプリ ケーションで確保しておく必要がある【NGKI1055】.スタック領域をアプリケー ションで確保する方法については,「2.15.3 カーネル共通マクロ」の節を参照 すること.その方法に従わず,stkやstkszにターゲット定義の制約に合致しな い先頭番地やサイズを指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI1056】. 保護機能対応カーネルにおいて,生成するタスクがシステムタスクの場合に, stkとstkszで指定したスタック領域がカーネル専用のメモリオブジェクトに含 まれない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI1057】. 保護機能対応カーネルにおいて,生成するタスクがユーザタスクの場合,stkと stksz で指定したスタック領域(ユーザスタック領域)は,「2.11.6 ユーザタ スクのユーザスタック領域」の節の規定に従って,メモリオブジェクトとして カーネルに登録される【NGKI1058】.そのため,上の方法を用いてスタック領 域を確保しても,ターゲット定義の制約に合致する先頭番地とサイズとなると は限らず,スタック領域をアプリケーションで確保する方法は,ターゲット定 義である【NGKI1059】.また,stkとstkszで指定したスタック領域が,登録済 みのメモリオブジェクトとメモリ領域が重なる場合には,E_OBJエラーとなる 【NGKI1060】. 〔sstkとsstkszの扱い〕 保護機能対応カーネルにおけるsstkとsstkszの扱いは,生成するタスクがユー ザタスクの場合とシステムタスクの場合で異なる. 生成するタスクがユーザタスクの場合の扱いは次の通り. sstk の記述を省略するか,sstkをNULLとした場合,sstkszで指定したサイズの システムスタック領域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保され る【NGKI1061】.sstkszにターゲット定義の制約に合致しないサイズを指定し た時には,ターゲット定義の制約に合致するように大きい方に丸めたサイズで 確保される【NGKI1062】.sstkszの記述も省略した場合には,ターゲット定義 のデフォルトのサイズで確保される【NGKI1063】. sstk にNULL以外を指定した場合,sstkとsstkszで指定したスタック領域は,ア プリケーションで確保しておく必要がある【NGKI1064】.スタック領域をアプ リケーションで確保する方法については,「2.15.3 カーネル共通マクロ」の節 を参照すること.その方法に従わず,sstkやsstkszにターゲット定義の制約に 合致しない先頭番地やサイズを指定した時には,E_PARエラーとなる 【NGKI1065】.また,stkとstkszで指定したシステムスタック領域がカーネル 専用のメモリオブジェクトに含まれない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI1066】. 生成するタスクがシステムタスクの場合の扱いは次の通り. sstk に指定することができるのは,NULLのみである.sstkにNULL以外を指定し た場合には,E_PARエラーとなる【NGKI1068】. 102 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5101 5102 5103 5104 5105 5106 5107 5108 5109 5110 5111 5112 5113 5114 5115 5116 5117 5118 5119 5120 5121 5122 5123 5124 5125 5126 5127 5128 5129 5130 5131 5132 5133 5134 5135 5136 5137 5138 5139 5140 5141 5142 5143 5144 5145 5146 5147 5148 5149 5150 sstksz に0以外の値を指定した場合で,stkがNULLの場合には,コンフィギュレー タまたはカーネルにより確保されるスタック領域のサイズに,sstkszが加えら れる【NGKI1069】.stkszにsstkszを加えた値が,ターゲット定義の制約に合致 しないサイズになる時には,ターゲット定義の制約に合致するように大きい方 に丸めたサイズで確保される【NGKI1070】. sstksz に0以外の値を指定した場合で,stkがNULLでない場合には,E_PARエラー となる【NGKI1071】. sstksz に0を指定した場合,これらの処理は行わず,E_PARエラーにもならない 【NGKI1072】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_TSKのみをサポートする【ASPS0104】.ただし,動的生 成機能拡張パッケージでは,acre_tskもサポートする【ASPS0105】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_TSKのみをサポートする【FMPS0103】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_TSKのみをサポートする【HRPS0103】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,CRE_TSKのみをサポートする【SSPS0107】. SSPカーネルでは,複数のタスクに対して,同じ起動時優先度を設定することは できない.設定した場合には,コンフィギュレータがE_PARエラーを報告する 【SSPS0109】. SSPカーネルでは,制約タスクのみをサポートするため,タスク属性にTA_RSTR を指定しない場合でも,生成されるタスクは制約タスクとなる【SSPS0110】. SSPカーネルでは,stkにはNULLを指定しなくてはならず,その場合でも,コン フィギュレータはタスクのスタック領域を確保しない【SSPS0111】.これは, SSPカーネルでは,すべての処理単位が共有スタック領域を使用し,タスク毎に スタック領域を持たないためである.stkにNULL以外を指定した場合には, E_PAR エラーとなる【SSPS0112】. 共有スタック領域の設定方法については,DEF_STKの項を参照すること. 【μITRON4.0仕様との関係】 task のデータ型をTASKに,stkのデータ型をSTK_T *に変更した.COUNT_STK_Tと ROUND_STK_T を新設し,スタック領域をアプリケーションで確保する方法を規定 した. 103 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5151 5152 5153 5154 5155 5156 5157 5158 5159 5160 5161 5162 5163 5164 5165 5166 5167 5168 5169 5170 5171 5172 5173 5174 5175 5176 5177 5178 5179 5180 5181 5182 5183 5184 5185 5186 5187 5188 5189 5190 5191 5192 5193 5194 5195 5196 5197 5198 5199 5200 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 sstk のデータ型をSTK_T *に変更した.システムスタック領域をアプリケーショ ンで確保する方法を規定した. 【未決定事項】 サービスコール(acre_tsk)により,stkにNULLを指定して制約タスクを生成し た場合のスタック領域の確保方法については,今後の課題である. 【仕様決定の理由】 保護機能対応カーネルにおいて,sstkszおよびsstkの記述は省略することがで きることとしたのは,保護機能対応でないカーネル用のシステムコンフィギュ レーションファイルを,保護機能対応カーネルにも変更なしに使えるようにす るためである. ---------------------------------------------------------------------AID_ TSK 割付け可能なタスクIDの数の指定〔SD〕【NGKI1073】 【静的API】 AID_TSK(uint_t notsk) 【パラメータ】 uint_t notsk 割付け可能なタスクIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・保護ドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI1074】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1075】 E_PAR パラメータエラー ・notskが負の値【NGKI3276】 【機能】 notsk で指定した数のタスクIDを,タスクを生成するサービスコールによって割 付け可能なタスクIDとして確保する【NGKI1076】. notsk は整数定数式パラメータである【NGKI1077】. ---------------------------------------------------------------------SAC_TSK タスクのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI1078】 sac_tsk タスクのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI1079】 【静的API】 SAC_TSK(ID tskid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_tsk(ID tskid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 104 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5201 5202 5203 5204 5205 5206 5207 5208 5209 5210 5211 5212 5213 5214 5215 5216 5217 5218 5219 5220 5221 5222 5223 5224 5225 5226 5227 5228 5229 5230 5231 5232 5233 5234 5235 5236 5237 5238 5239 5240 5241 5242 5243 5244 5245 5246 5247 5248 5249 5250 ID ACVCT * tskid p_acvct 対象タスクのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1080】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1081】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外〔s〕【NGKI1082】 E_RSATR 予約属性 ・対象タスクが属する保護ドメインの囲みの中に記述されて いない〔S〕【NGKI1083】 ・対象タスクが属するクラスの囲みの中に記述されていない 〔SM〕【NGKI1084】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録【NGKI1085】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する管理操作が許可されていない〔s〕【NGKI1086】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI1087】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1088】 ・対象タスクに対してアクセス許可ベクタが設定済み〔S〕 【NGKI1089】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)のアクセス許可ベクタ(4つのアクセス 許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する【NGKI1090】. 静的APIにおいては,tskidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI1091】. acptn4は整数定数 sac_tsk においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1092】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_TSK,sac_tskをサポートしない【ASPS0106】. 105 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5251 5252 5253 5254 5255 5256 5257 5258 5259 5260 5261 5262 5263 5264 5265 5266 5267 5268 5269 5270 5271 5272 5273 5274 5275 5276 5277 5278 5279 5280 5281 5282 5283 5284 5285 5286 5287 5288 5289 5290 5291 5292 5293 5294 5295 5296 5297 5298 5299 5300 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_TSK,sac_tskをサポートしない【FMPS0104】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_TSKのみをサポートする【HRPS0104】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,SAC_TSK,sac_tskをサポートしない【SSPS0113】. ---------------------------------------------------------------------DEF_EPR タスクの実行時優先度の定義〔S〕【NGKI1093】 【静的API】 DEF_EPR(ID tskid, { PRI exepri }) 【パラメータ】 ID tskid PRI exepri 対象タスクのID番号 タスクの実行時優先度 【エラーコード】 E_PAR パラメータエラー ・exepriが有効範囲外【NGKI1094】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・条件については機能の項を参照 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクに対して実行優先度が設定済み【NGKI1095】 【サポートするカーネル】 DEF_EPR は,TOPPERS/SSPカーネルのみがサポートする静的APIである.他のカー ネルは,DEF_EPRをサポートしない【NGKI1096】. 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)の実行時優先度を,exepriで指定した優 先度に設定する【NGKI1097】. tskid はオブジェクト識別名,exepriは整数定数式パラメータである【NGKI1098】. exepri が,対象タスクの起動時優先度よりも低い場合には,E_ILUSEエラーとな る【NGKI1099】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------del_tsk タスクの削除〔TD〕【NGKI1100】 106 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5301 5302 5303 5304 5305 5306 5307 5308 5309 5310 5311 5312 5313 5314 5315 5316 5317 5318 5319 5320 5321 5322 5323 5324 5325 5326 5327 5328 5329 5330 5331 5332 5333 5334 5335 5336 5337 5338 5339 5340 5341 5342 5343 5344 5345 5346 5347 5348 5349 5350 【C言語API】 ER ercd = del_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1101】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1102】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1103】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録【NGKI1104】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する管理操作が許可されていない〔P〕【NGKI1105】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態でない【NGKI1106】 ・対象タスクは静的APIで生成された【NGKI1107】 【機能】 tskidで指定したタスク(対象タスク)を削除する.具体的な振舞いは以下の通 り. 対象タスクが休止状態である場合には,対象タスクの登録が解除され,そのタ スクIDが未使用の状態に戻される【NGKI1108】.また,タスクの生成時にタス クのスタック領域およびシステムスタック領域がカーネルによって確保された 場合は,それらのメモリ領域が解放される【NGKI1109】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_tskをサポートしない【ASPS0107】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_tskをサポートする【ASPS0108】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_tskをサポートしない【FMPS0105】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_tskをサポートしない【HRPS0105】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,del_tskをサポートしない【SSPS0114】. 107 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5351 5352 5353 5354 5355 5356 5357 5358 5359 5360 5361 5362 5363 5364 5365 5366 5367 5368 5369 5370 5371 5372 5373 5374 5375 5376 5377 5378 5379 5380 5381 5382 5383 5384 5385 5386 5387 5388 5389 5390 5391 5392 5393 5394 5395 5396 5397 5398 5399 5400 ---------------------------------------------------------------------act_tsk タスクの起動〔T〕【NGKI1110】 iact_tsk タスクの起動〔I〕【NGKI1111】 【C言語API】 ER ercd = act_tsk(ID tskid) ER ercd = iact_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(act_tskの場合)【NGKI1112】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iact_tskの場合)【NGKI1113】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1114】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1115】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1116】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない(act_tsk の場合)〔P〕【NGKI1117】 E_QOVR キューイングオーバフロー ・条件については機能の項を参照 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)に対して起動要求を行う.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象タスクが休止状態である場合には,対象タスクに対してタスク起動時に行 うべき初期化処理が行われ,対象タスクは実行できる状態になる【NGKI1118】. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクの起動要求キューイング数 に1が加えられる【NGKI1119】.起動要求キューイング数に1を加えると TMAX_ACTCNT を超える場合には,E_QOVRエラーとなる【NGKI1120】. act_tsk においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1121】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,act_tsk/iact_tskは,対象タスクの次回 起動時の割付けプロセッサを変更しない. ---------------------------------------------------------------------mact_tsk 割付けプロセッサ指定でのタスクの起動〔TM〕【NGKI1122】 108 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5401 5402 5403 5404 5405 5406 5407 5408 5409 5410 5411 5412 5413 5414 5415 5416 5417 5418 5419 5420 5421 5422 5423 5424 5425 5426 5427 5428 5429 5430 5431 5432 5433 5434 5435 5436 5437 5438 5439 5440 5441 5442 5443 5444 5445 5446 5447 5448 5449 5450 imact_tsk 割付けプロセッサ指定でのタスクの起動〔IM〕【NGKI1123】 【C言語API】 ER ercd = mact_tsk(ID tskid, ID prcid) ER ercd = imact_tsk(ID tskid, ID prcid) 【パラメータ】 ID tskid ID prcid 対象タスクのID番号 タスクの割付け対象のプロセッサのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(mact_tskの場合) 【NGKI1124】 ・タスクコンテキストからの呼出し(imact_tskの場合) 【NGKI1125】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1126】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1127】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1128】 ・prcidが有効範囲外【NGKI1129】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1130】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない(mact_tsk の場合)〔P〕【NGKI1131】 E_QOVR キューイングオーバフロー ・条件については機能の項を参照 【機能】 prcid で指定したプロセッサを割付けプロセッサとして,tskidで指定したタス ク(対象タスク)に対して起動要求を行う.具体的な振舞いは以下の通り. 対象タスクが休止状態である場合には,対象タスクの割付けプロセッサが prcid で指定したプロセッサに変更された後,対象タスクに対してタスク起動時 に行うべき初期化処理が行われ,対象タスクは実行できる状態になる 【NGKI1132】. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクの起動要求キューイング数 に1が加えられ,次回起動時の割付けプロセッサがprcidで指定したプロセッサ に変更される【NGKI1133】.起動要求キューイング数に1を加えると TMAX_ACTCNT を超える場合には,E_QOVRエラーとなる【NGKI1134】. 109 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5451 5452 5453 5454 5455 5456 5457 5458 5459 5460 5461 5462 5463 5464 5465 5466 5467 5468 5469 5470 5471 5472 5473 5474 5475 5476 5477 5478 5479 5480 5481 5482 5483 5484 5485 5486 5487 5488 5489 5490 5491 5492 5493 5494 5495 5496 5497 5498 5499 5500 mact_tsk においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タス クとなる【NGKI1135】. 対象タスクの属するクラスの割付け可能プロセッサが,prcidで指定したプロセッ サを含んでいない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI1136】. prcid にTPRC_INI(=0)を指定すると,対象タスクの割付けプロセッサを,そ れが属するクラスの初期割付けプロセッサとする【NGKI1137】. 【補足説明】 TMAX_ACTCNT が2以上の場合でも,対象タスクが次に起動される時の割付けプロ セッサは,キューイングされない.すなわち,プロセッサAに割り付けられた休 止状態でないタスクを対象として,プロセッサBを割付けプロセッサとして mact_tsk を呼び出し,さらにプロセッサCを割付けプロセッサとしてmact_tskを 呼び出すと,対象タスクの次回起動時の割付けプロセッサがプロセッサCに変更 され,対象タスクがプロセッサBで実行されることはない.なお,TMAX_ACTCNT が1の場合には,プロセッサCを割付けプロセッサとした2回目のmact_tskが E_QOVR エラーとなるため,次回起動時の割付けプロセッサはプロセッサBのまま 変更されない. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,mact_tsk,imact_tskをサポートしない【ASPS0109】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,mact_tsk,imact_tskをサポートしない【HRPS0106】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,mact_tsk,imact_tskをサポートしない【SSPS0115】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------can_act タスク起動要求のキャンセル〔T〕【NGKI1138】 【C言語API】 ER_UINT actcnt = can_act(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 【リターンパラメータ】 ER_UINT actcnt 対象タスクのID番号 キューイングされていた起動要求の数(正の値 または0)またはエラーコード 【エラーコード】 110 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5501 5502 5503 5504 5505 5506 5507 5508 5509 5510 5511 5512 5513 5514 5515 5516 5517 5518 5519 5520 5521 5522 5523 5524 5525 5526 5527 5528 5529 5530 5531 5532 5533 5534 5535 5536 5537 5538 5539 5540 5541 5542 5543 5544 5545 5546 5547 5548 5549 5550 E_CTX E_ID E_NOEXS E_OACV コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1139】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1140】 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1141】 オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1142】 オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI1143】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)に対する処理されていない起動要求をす べてキャンセルし,キャンセルした起動要求の数を返す.具体的な振舞いは以 下の通り. 対象タスクの起動要求キューイング数が0に設定され,0に設定する前の起動要 求キューイング数が,サービスコールの返値として返される【NGKI1144】.ま た,マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,対象タスクの次回起動時の割 付けプロセッサが未設定状態に戻される【NGKI1145】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1146】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,can_actをサポートしない【SSPS0116】. ---------------------------------------------------------------------mig_tsk タスクの割付けプロセッサの変更〔TM〕【NGKI1147】 【C言語API】 ER ercd = mig_tsk(ID tskid, ID prcid) 【パラメータ】 ID tskid ID prcid 対象タスクのID番号 タスクの割付けプロセッサのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1148】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1149】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1150】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1151】 111 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5551 5552 5553 5554 5555 5556 5557 5558 5559 5560 5561 5562 5563 5564 5565 5566 5567 5568 5569 5570 5571 5572 5573 5574 5575 5576 5577 5578 5579 5580 5581 5582 5583 5584 5585 5586 5587 5588 5589 5590 5591 5592 5593 5594 5595 5596 5597 5598 5599 5600 E_PAR E_NOEXS E_OACV E_OBJ ・prcidが有効範囲外【NGKI1152】 パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1153】 オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI1154】 オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 tskid で指定したタスクの割付けプロセッサを,prcidで指定したプロセッサに 変更する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象タスクが,自タスクが割り付けられたプロセッサに割り付けられている場 合には,対象タスクをprcidで指定したプロセッサに割り付ける【NGKI1155】. 対象タスクが実行できる状態の場合には,prcidで指定したプロセッサに割り付 けられた同じ優先度のタスクの中で,最も優先順位が低い状態となる 【NGKI1156】. 対象タスクが,自タスクが割付けられたプロセッサと異なるプロセッサに割り 付けられている場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI1157】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1158】. ディスパッチ保留状態で,対象タスクを自タスクとしてmig_tskを呼び出すと, E_CTX エラーとなる【NGKI1159】. 対象タスクの属するクラスの割付け可能プロセッサが,prcidで指定したプロセッ サを含んでいない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI1160】. prcid にTPRC_INI(=0)を指定すると,対象タスクの割付けプロセッサを,そ れが属するクラスの初期割付けプロセッサに変更する【NGKI1161】. 【補足説明】 この仕様では,タスクをマイグレーションさせることができるのは,そのタス クと同じプロセッサに割り付けられたタスクのみである.そのため,CPUロック 状態やディスパッチ禁止状態を用いて,他のタスクへのディスパッチが起こら ないようにすることで,自タスクが他のプロセッサへマイグレーションされる のを防ぐことができる. 対象タスクが,最初からprcidで指定したプロセッサに割り付けられている場合 には,割付けプロセッサの変更は起こらないが,優先順位が同一優先度のタス クの中で最低となる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 112 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5601 5602 5603 5604 5605 5606 5607 5608 5609 5610 5611 5612 5613 5614 5615 5616 5617 5618 5619 5620 5621 5622 5623 5624 5625 5626 5627 5628 5629 5630 5631 5632 5633 5634 5635 5636 5637 5638 5639 5640 5641 5642 5643 5644 5645 5646 5647 5648 5649 5650 ASPカーネルでは,mig_tskをサポートしない【ASPS0110】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,mig_tskをサポートしない【HRPS0107】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,mig_tskをサポートしない【SSPS0117】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ext_tsk 自タスクの終了〔T〕【NGKI1162】 【C言語API】 ER ercd = ext_tsk() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd エラーコード 【エラーコード】 E_SYS システムエラー ・カーネルの誤動作【NGKI1163】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1164】 【機能】 自タスクを終了させる.具体的な振舞いは以下の通り. 自タスクに対してタスク終了時に行うべき処理が行われ,自タスクは休止状態 になる【NGKI1165】.さらに,自タスクの起動要求キューイング数が0でない場 合には,自タスクに対してタスク起動時に行うべき処理が行われ,自タスクは 実行できる状態になる【NGKI1166】.またこの時,起動要求キューイング数か ら1が減ぜられる【NGKI1167】. ext_tsk は,CPUロック解除状態,割込み優先度マスク全解除状態,ディスパッ チ許可状態で呼び出すのが原則であるが,そうでない状態で呼び出された場合 には,CPUロック解除状態,割込み優先度マスク全解除状態,ディスパッチ許可 状態に遷移させた後,自タスクを終了させる【NGKI1168】. ext_tsk が正常に処理された場合,ext_tskからはリターンしない【NGKI1169】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 113 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5651 5652 5653 5654 5655 5656 5657 5658 5659 5660 5661 5662 5663 5664 5665 5666 5667 5668 5669 5670 5671 5672 5673 5674 5675 5676 5677 5678 5679 5680 5681 5682 5683 5684 5685 5686 5687 5688 5689 5690 5691 5692 5693 5694 5695 5696 5697 5698 5699 5700 SSPカーネルでは,ext_tskをサポートしない【SSPS0118】.自タスクを終了さ せる場合には,タスクのメインルーチンからリターンする【SSPS0119】. 【μITRON4.0仕様との関係】 ext_tsk を非タスクコンテキストから呼び出した場合に,E_CTXエラーが返るこ ととした.μITRON4.0仕様においては,ext_tskからはリターンしないと規定さ れている. ---------------------------------------------------------------------ter_tsk タスクの強制終了〔T〕【NGKI1170】 【C言語API】 ER ercd = ter_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1171】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1172】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1173】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1174】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1175】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・対象タスクが自タスク【NGKI1176】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1177】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を終了させる.具体的な振舞いは以下の 通り. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクに対してタスク終了時に行 うべき処理が行われ,対象タスクは休止状態になる【NGKI1178】.さらに,対 象タスクの起動要求キューイング数が0でない場合には,対象タスクに対してタ スク起動時に行うべき処理が行われ,対象タスクは実行できる状態になる 【NGKI1179】.またこの時,起動要求キューイング数から1が減ぜられる 【NGKI1180】. 114 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5701 5702 5703 5704 5705 5706 5707 5708 5709 5710 5711 5712 5713 5714 5715 5716 5717 5718 5719 5720 5721 5722 5723 5724 5725 5726 5727 5728 5729 5730 5731 5732 5733 5734 5735 5736 5737 5738 5739 5740 5741 5742 5743 5744 5745 5746 5747 5748 5749 5750 マルチプロセッサ対応カーネルでは,対象タスクは,自タスクと同じプロセッ サに割り付けられているタスクに限られる【NGKI1181】.対象タスクが自タス クと異なるプロセッサに割り付けられている場合には,E_OBJエラーとなる 【NGKI1182】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける使用上の注意】 現時点のFMPカーネルの実装では,デッドロック回避のためのリトライ処理によ り,サービスコールの処理時間に上限がないため,注意が必要である(ロック 方式にも依存する). 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ter_tskをサポートしない【SSPS0120】. ---------------------------------------------------------------------chg_pri タスクのベース優先度の変更〔T〕【NGKI1183】 【C言語API】 ER ercd = chg_pri(ID tskid, PRI tskpri) 【パラメータ】 ID tskid PRI tskpri 対象タスクのID番号 ベース優先度 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1184】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1185】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1186】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1187】 E_PAR パラメータエラー ・tskpriが有効範囲外【NGKI1188】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1189】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1190】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・条件については機能の項を参照 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1191】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)のベース優先度を,tskpriで指定した優 115 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5751 5752 5753 5754 5755 5756 5757 5758 5759 5760 5761 5762 5763 5764 5765 5766 5767 5768 5769 5770 5771 5772 5773 5774 5775 5776 5777 5778 5779 5780 5781 5782 5783 5784 5785 5786 5787 5788 5789 5790 5791 5792 5793 5794 5795 5796 5797 5798 5799 5800 先度に変更する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクのベース優先度が,tskpri で指定した優先度に変更される【NGKI1192】.それに伴って,対象タスクの現 在優先度も変更される【NGKI1193】. 対象タスクが,優先度上限ミューテックスをロックしていない場合には,次の 処理が行われる.対象タスクが実行できる状態の場合には,同じ優先度のタス クの中で最低優先順位となる【NGKI1194】.対象タスクが待ち状態で,タスク の優先度順の待ち行列につながれている場合には,対象タスクの変更後の現在 優先度に従って,その待ち行列中での順序が変更される【NGKI1195】.待ち行 列中に同じ現在優先度のタスクがある場合には,対象タスクの順序はそれらの 中で最後になる【NGKI1196】. 対象タスクが,優先度上限ミューテックスをロックしている場合には,対象タ スクの現在優先度が変更されることはなく,優先順位も変更されない 【NGKI1197】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1198】.また,tskpriにTPRI_INI(=0)を指定すると,対象タスクのベー ス優先度が,起動時優先度に変更される【NGKI1199】. 対象タスクが優先度上限ミューテックスをロックしているかロックを待ってい る場合,tskpriは,それらのミューテックスの上限優先度と同じかそれより低 くなければならない.そうでない場合には,E_ILUSEエラーとなる【NGKI1201】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,chg_priをサポートしない【SSPS0121】. 【μITRON4.0仕様との関係】 対象タスクが,同じ優先度のタスクの中で最低の優先順位となる(対象タスク が待ち状態で,タスクの優先度順の待ち行列につながれている場合には,同じ 優先度のタスクの中での順序が最後になる)条件を変更した. ---------------------------------------------------------------------get_pri タスク優先度の参照〔T〕【NGKI1202】 【C言語API】 ER ercd = get_pri(ID tskid, PRI *p_tskpri) 【パラメータ】 ID tskid PRI * p_tskpri 対象タスクのID番号 現在優先度を入れるメモリ領域へのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd PRI tskpri 正常終了(E_OK)またはエラーコード 現在優先度 【エラーコード】 116 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5801 5802 5803 5804 5805 5806 5807 5808 5809 5810 5811 5812 5813 5814 5815 5816 5817 5818 5819 5820 5821 5822 5823 5824 5825 5826 5827 5828 5829 5830 5831 5832 5833 5834 5835 5836 5837 5838 5839 5840 5841 5842 5843 5844 5845 5846 5847 5848 5849 5850 E_CTX E_ID E_NOEXS E_OACV E_MACV E_OBJ コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1203】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1204】 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1205】 オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1206】 オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する参照操作が許可されていない〔P〕【NGKI1207】 メモリアクセス違反 ・p_tskpriが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可され ていない〔P〕【NGKI1208】 オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1209】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)の現在優先度を参照する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクの現在優先度が,p_tskpri が指すメモリ領域に返される【NGKI1210】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1211】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_priをサポートしない【SSPS0122】. ---------------------------------------------------------------------get_inf 自タスクの拡張情報の参照〔T〕【NGKI1212】 【C言語API】 ER ercd = get_inf(intptr_t *p_exinf) 【パラメータ】 intptr_t * p_exinf 拡張情報を入れるメモリ領域へのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd intptr_t exinf 正常終了(E_OK)またはエラーコード 拡張情報 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1213】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1214】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_exinfが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1215】 117 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5851 5852 5853 5854 5855 5856 5857 5858 5859 5860 5861 5862 5863 5864 5865 5866 5867 5868 5869 5870 5871 5872 5873 5874 5875 5876 5877 5878 5879 5880 5881 5882 5883 5884 5885 5886 5887 5888 5889 5890 5891 5892 5893 5894 5895 5896 5897 5898 5899 5900 【機能】 自タスクの拡張情報を参照する.参照した拡張情報は,p_exinfが指すメモリ領 域に返される【NGKI1216】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_infをサポートしない【SSPS0123】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_tsk タスクの状態参照〔T〕【NGKI1217】 【C言語API】 ER ercd = ref_tsk(ID tskid, T_RTSK *pk_rtsk) 【パラメータ】 ID tskid T_RTSK * pk_rtsk 対象タスクのID番号 タスクの現在状態を入れるパケットへのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード *タスクの現在状態(パケットの内容) STAT tskstat タスク状態 PRI tskpri タスクの現在優先度 PRI tskbpri タスクのベース優先度 STAT tskwait タスクの待ち要因 ID wobjid タスクの待ち対象のオブジェクトのID TMO lefttmo タスクがタイムアウトするまでの時間 uint_t actcnt タスクの起動要求キューイング数 uint_t wupcnt タスクの起床要求キューイング数 bool_t texmsk タスクがタスク例外処理マスク状態か否か(保 護機能対応カーネルの場合) bool_t waifbd タスクが待ち禁止状態か否か(保護機能対応カー ネルの場合) uint_t svclevel タスクの拡張サービスコールのネストレベル(保 護機能対応カーネルの場合) ID prcid タスクの割付けプロセッサのID(マルチプロセッ サ対応カーネルの場合) ID actprc タスクの次回起動時の割付けプロセッサのID(マ ルチプロセッサ対応カーネルの場合) 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1218】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1219】 E_ID 不正ID番号 118 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5901 5902 5903 5904 5905 5906 5907 5908 5909 5910 5911 5912 5913 5914 5915 5916 5917 5918 5919 5920 5921 5922 5923 5924 5925 5926 5927 5928 5929 5930 5931 5932 5933 5934 5935 5936 5937 5938 5939 5940 5941 5942 5943 5944 5945 5946 5947 5948 5949 5950 E_NOEXS E_OACV E_MACV ・tskidが有効範囲外【NGKI1220】 オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1221】 オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する参照操作が許可されていない〔P〕【NGKI1222】 メモリアクセス違反 ・pk_rtskが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1223】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)の現在状態を参照する.参照した現在状 態は,pk_rtskで指定したメモリ領域に返される【NGKI1224】. tskstat には,対象タスクの現在のタスク状態を表す次のいずれかの値が返され る【NGKI1225】. TTS_RUN TTS_RDY TTS_WAI TTS_SUS TTS_WAS TTS_DMT 0x01U 0x02U 0x04U 0x08U 0x0cU 0x10U 実行状態 実行可能状態 待ち状態 強制待ち状態 二重待ち状態 休止状態 マルチプロセッサ対応カーネルでは,対象タスクが自タスクの場合にも, tskstat がTTS_SUSとなる場合がある【NGKI1226】.この状況は,自タスクに対 してref_tskを発行するのと同じタイミングで,他のプロセッサで実行されてい るタスクから同じタスクに対してsus_tskが発行された場合に発生する可能性が ある. 対象タスクが休止状態でない場合には,tskpriには対象タスクの現在優先度が, tskbpri には対象タスクのベース優先度が返される【NGKI1227】.対象タスクが 休止状態である場合には,tskpriとtskbpriの値は保証されない【NGKI1228】. 対象タスクが待ち状態である場合には,tskwaitには,対象タスクが何を待って いる状態であるかを表す次のいずれかの値が返される【NGKI1229】. TTW_SLP TTW_DLY TTW_SEM TTW_FLG TTW_SDTQ TTW_RDTQ TTW_SPDQ TTW_RPDQ TTW_MBX TTW_MTX TTW_SMBF TTW_RMBF TTW_MPF 0x0001U 0x0002U 0x0004U 0x0008U 0x0010U 0x0020U 0x0100U 0x0200U 0x0040U 0x0080U 0x0400U 0x0800U 0x2000U 起床待ち 時間経過待ち セマフォの資源獲得待ち イベントフラグ待ち データキューへの送信待ち データキューからの受信待ち 優先度データキューへの送信待ち 優先度データキューからの受信待ち メールボックスからの受信待ち ミューテックスのロック待ち状態 メッセージバッファへの送信待ち メッセージバッファからの受信待ち 固定長メモリブロックの獲得待ち 119 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 5951 5952 5953 5954 5955 5956 5957 5958 5959 5960 5961 5962 5963 5964 5965 5966 5967 5968 5969 5970 5971 5972 5973 5974 5975 5976 5977 5978 5979 5980 5981 5982 5983 5984 5985 5986 5987 5988 5989 5990 5991 5992 5993 5994 5995 5996 5997 5998 5999 6000 対象タスクが待ち状態でない場合には,tskwaitの値は保証されない 【NGKI1230】. 対象タスクが起床待ち状態および時間経過待ち状態以外の待ち状態である場合 には,wobjidに,対象タスクが待っているオブジェクトのID番号が返される 【NGKI1231】.対象タスクが待ち状態でない場合や,起床待ち状態または時間 経過待ち状態である場合には,wobjidの値は保証されない【NGKI1232】. 対象タスクが時間経過待ち状態以外の待ち状態である場合には,lefttmoに,タ スクがタイムアウトを起こすまでの相対時間が返される【NGKI1233】.タスク がタイムアウトを起こさない場合には,TMO_FEVR(=-1)が返される 【NGKI1234】. 対象タスクが時間経過待ち状態である場合には,lefttmoに,タスクの遅延時間 が経過して待ち解除されるまでの相対時間が返される【NGKI1235】.ただし, 返されるべき相対時間がTMO型に格納することができない場合がありうる.この 場合には,相対時間(RELTIM型,uint_t型に定義される)をTMO型(int_t型に 定義される)に型キャストした値が返される【NGKI1236】. 対象タスクが待ち状態でない場合には,lefttmoの値は保証されない 【NGKI1237】. actcnt には,対象タスクの起動要求キューイング数が返される【NGKI1238】. 対象タスクが休止状態でない場合には,wupcntに,タスクの起床要求キューイ ング数が返される【NGKI1239】.対象タスクが休止状態である場合には, wupcnt の値は保証されない【NGKI1240】. 保護機能対応カーネルで,対象タスクが休止状態でない場合には,texmskに, 対象タスクがタスク例外処理マスク状態の場合にtrue,そうでない場合に false が返される【NGKI1241】.waifbdには,対象タスクが待ち禁止状態の場合 にtrue,そうでない場合にfalseが返される【NGKI1242】.またsvclevelには, 対象タスクが拡張サービスコールを呼び出していない場合には0,呼び出してい る場合には,実行中の拡張サービスコールがネスト段数が返される 【NGKI1243】.対象タスクが休止状態である場合には,texmsk,waifbd, svcle velの値は保証されない【NGKI1244】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,prcidに,対象タスクの割付けプロセッサ のID番号が返される【NGKI1245】.またactprcには,対象タスクの次回起動時 の割付けプロセッサのID番号が返される【NGKI1246】.次回起動時の割付けプ ロセッサが未設定の場合には,actprcにTPRC_NONE(=0)が返される 【NGKI1247】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1248】. 【補足説明】 対象タスクが時間経過待ち状態である場合に,lefttmo(TMO型)に返される値 120 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6001 6002 6003 6004 6005 6006 6007 6008 6009 6010 6011 6012 6013 6014 6015 6016 6017 6018 6019 6020 6021 6022 6023 6024 6025 6026 6027 6028 6029 6030 6031 6032 6033 6034 6035 6036 6037 6038 6039 6040 6041 6042 6043 6044 6045 6046 6047 6048 6049 6050 をRELTIM型に型キャストすることで,タスクが待ち解除されるまでの相対時間 を正しく得ることができる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,tskwaitにTTW_MTX,TTW_SMBF,TTW_RMBFが返ることはない 【ASPS0111】.ただし,ミューテックス機能拡張パッケージを用いると, tskwait にTTW_MTXが返る場合がある【ASPS0112】.また,メッセージバッファ 機能拡張パッケージを用いると,tskwaitにTTW_SMBFとTTW_RMBFが返る場合があ る【ASPS0208】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,tskwaitにTTW_MTX,TTW_SMBF,TTW_RMBFが返ることはない 【FMPS0106】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,tskwaitにTTW_MBX,TTW_SMBF,TTW_RMBFが返ることはない 【HRPS0108】.ただし,メッセージバッファ機能拡張パッケージを用いると, tskwait にTTW_SMBFとTTW_RMBFが返る場合がある【HRPS0174】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_tskをサポートしない【SSPS0124】. 【使用上の注意】 ref_tsk はデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_tskを呼び出し,対象タスクの現在状態を参照した直後に割 込みが発生した場合,ref_tskから戻ってきた時には対象タスクの状態が変化し ている可能性があるためである. 【μITRON4.0仕様との関係】 対象タスクが時間経過待ち状態の時にlefttmoに返される値について規定した. また,参照できるタスクの状態から,強制待ち要求ネスト数(suscnt)を除外 した. マルチプロセッサ対応カーネルで参照できる情報として,割付けプロセッサの ID(prcid)と次回起動時の割付けプロセッサのID(actprc)を追加した. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 保護機能対応カーネルで参照できる情報として,タスク例外処理マスク状態か 否か(texmsk),待ち禁止状態か否か(waifbd),拡張サービスコールのネス トレベル(svclevel)を追加した. ---------------------------------------------------------------------4.2 タスク付属同期機能 121 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6051 6052 6053 6054 6055 6056 6057 6058 6059 6060 6061 6062 6063 6064 6065 6066 6067 6068 6069 6070 6071 6072 6073 6074 6075 6076 6077 6078 6079 6080 6081 6082 6083 6084 6085 6086 6087 6088 6089 6090 6091 6092 6093 6094 6095 6096 6097 6098 6099 6100 タスク付属同期機能は,タスクとタスクの間,または非タスクコンテキストの 処理とタスクの間で同期を取るために,タスク単独で持っている機能である. タスク付属同期機能に関連して,各タスクが持つ情報は次の通り【NGKI1249】. ・起床要求キューイング数 タスクの起床要求キューイング数は,処理されていないタスクの起床要求の数 であり,タスクの起動時に0に初期化される【NGKI1250】. タスク付属同期機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMAX_WUPCNT タスクの起床要求キューイング数の最大値【NGKI1251】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,TMAX_WUPCNTは1に固定されている【ASPS0113】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,TMAX_WUPCNTは1に固定されている【FMPS0107】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,TMAX_WUPCNTは1に固定されている【HRPS0109】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,タスク付属同期機能をサポートしない【SSPS0125】. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,強制待ち要求をネストする機能をサポートしないこととした. 言い換えると,強制待ち要求ネスト数の最大値を1に固定する.これに伴い,強 制待ち状態から強制再開するサービスコール(frsm_tsk)とタスクの強制待ち 要求ネスト数の最大値を表すカーネル構成マクロ(TMAX_SUSCNT)は廃止した. また,ref_tskで参照できる情報(T_RTSKのフィールド)から,強制待ち要求ネ スト数(suscnt)を除外した. ---------------------------------------------------------------------slp_tsk 起床待ち〔T〕【NGKI1252】 tslp_tsk 起床待ち(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1253】 【C言語API】 ER ercd = slp_tsk() ER ercd = tslp_tsk(TMO tmout) 【パラメータ】 TMO tmout タイムアウト時間(tslp_tskの場合) 122 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6101 6102 6103 6104 6105 6106 6107 6108 6109 6110 6111 6112 6113 6114 6115 6116 6117 6118 6119 6120 6121 6122 6123 6124 6125 6126 6127 6128 6129 6130 6131 6132 6133 6134 6135 6136 6137 6138 6139 6140 6141 6142 6143 6144 6145 6146 6147 6148 6149 6150 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・ディスパッチ保留状態からの呼出し【NGKI1254】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し【NGKI1255】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(tslp_tskの場合)【NGKI1256】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(slp_tskを除く)【NGKI1257】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除【NGKI1258】 【機能】 自タスクを起床待ちさせる.具体的な振舞いは以下の通り. 自タスクの起床要求キューイング数が0でない場合には,起床要求キューイング 数から1が減ぜられる【NGKI1259】.起床要求キューイング数が0の場合には, 自タスクは起床待ち状態となる【NGKI1260】. 【補足説明】 自タスクの起床要求キューイング数が0でない場合には,自タスクは実行できる 状態を維持し,自タスクの優先順位は変化しない. ---------------------------------------------------------------------wup_tsk タスクの起床〔T〕【NGKI1261】 iwup_tsk タスクの起床〔I〕【NGKI1262】 【C言語API】 ER ercd = wup_tsk(ID tskid) ER er cd = iwup_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(wup_tskの場合)【NGKI1263】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iwup_tskの場合)【NGKI1264】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1265】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1266】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1267】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1268】 123 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6151 6152 6153 6154 6155 6156 6157 6158 6159 6160 6161 6162 6163 6164 6165 6166 6167 6168 6169 6170 6171 6172 6173 6174 6175 6176 6177 6178 6179 6180 6181 6182 6183 6184 6185 6186 6187 6188 6189 6190 6191 6192 6193 6194 6195 6196 6197 6198 6199 6200 E_OACV E_OBJ E_QOVR オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない(wup_tsk の場合)〔P〕【NGKI1269】 オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1270】 キューイングオーバフロー ・条件については機能の項を参照 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を起床する.具体的な振舞いは以下の通 り. 対象タスクが起床待ち状態である場合には,対象タスクが待ち解除される 【NGKI1271】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1272】. 対象タスクが起床待ち状態でなく,休止状態でもない場合には,対象タスクの 起床要求キューイング数に1が加えられる【NGKI1273】.起床要求キューイング 数に1を加えるとTMAX_WUPCNTを超える場合には,E_QOVRエラーとなる 【NGKI1274】. wup_tsk においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1275】. ---------------------------------------------------------------------can_wup タスク起床要求のキャンセル〔T〕【NGKI1276】 【C言語API】 ER_UINT wupcnt = can_wup(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 【リターンパラメータ】 ER_UINT wupcnt 対象タスクのID番号 キューイングされていた起床要求の数(正の値 または0)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1277】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1278】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1279】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1280】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1281】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI1282】 124 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6201 6202 6203 6204 6205 6206 6207 6208 6209 6210 6211 6212 6213 6214 6215 6216 6217 6218 6219 6220 6221 6222 6223 6224 6225 6226 6227 6228 6229 6230 6231 6232 6233 6234 6235 6236 6237 6238 6239 6240 6241 6242 6243 6244 6245 6246 6247 6248 6249 6250 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1283】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)に対する処理されていない起床要求をす べてキャンセルし,キャンセルした起床要求の数を返す.具体的な振舞いは以 下の通り. 対象タスクが休止状態でない場合には,対象タスクの起床要求キューイング数 が0に設定され,0に設定する前の起床要求キューイング数が,サービスコール の返値として返される【NGKI1284】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1285】. ---------------------------------------------------------------------rel_wai 強制的な待ち解除〔T〕【NGKI1286】 irel_wai 強制的な待ち解除〔I〕【NGKI1287】 【C言語API】 ER ercd = rel_wai(ID tskid) ER ercd = irel_wai(ID t skid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(rel_waiの場合)【NGKI1288】 ・タスクコンテキストからの呼出し(irel_waiの場合)【NGKI1289】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1290】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1291】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1292】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1293】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(rel_wai の場合)〔P〕【NGKI1294】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが待ち状態でない【NGKI1295】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を,強制的に待ち解除する.具体的な振 舞いは以下の通り. 125 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6251 6252 6253 6254 6255 6256 6257 6258 6259 6260 6261 6262 6263 6264 6265 6266 6267 6268 6269 6270 6271 6272 6273 6274 6275 6276 6277 6278 6279 6280 6281 6282 6283 6284 6285 6286 6287 6288 6289 6290 6291 6292 6293 6294 6295 6296 6297 6298 6299 6300 対象タスクが待ち状態である場合には,対象タスクが待ち解除される 【NGKI1296】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_RLWAIが返る【NGKI1297】. ---------------------------------------------------------------------sus_tsk 強制待ち状態への遷移〔T〕【NGKI1298】 【C言語API】 ER ercd = sus_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER e rcd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1299】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1300】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1301】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1302】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1303】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1304】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1305】 E_QOVR キューイングオーバフロー ・対象タスクが強制待ち状態(二重待ち状態を含む)【NGKI1306】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を強制待ちにする.具体的な振舞いは以 下の通り. 対象タスクが実行できる状態である場合には,対象タスクは強制待ち状態とな る【NGKI1307】.また,待ち状態(二重待ち状態を除く)である場合には,二 重待ち状態となる【NGKI1308】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,対象タスクが自タスクの場合にも, E_QOVR エラーとなる場合がある【NGKI1309】.この状況は,自タスクに対して sus_tsk を発行するのと同じタイミングで,他のプロセッサで実行されているタ スクから同じタスクに対してsus_tskが発行された場合に発生する可能性がある. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 126 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6301 6302 6303 6304 6305 6306 6307 6308 6309 6310 6311 6312 6313 6314 6315 6316 6317 6318 6319 6320 6321 6322 6323 6324 6325 6326 6327 6328 6329 6330 6331 6332 6333 6334 6335 6336 6337 6338 6339 6340 6341 6342 6343 6344 6345 6346 6347 6348 6349 6350 【NGKI1310】. ディスパッチ保留状態で,対象タスクを自タスクとしてsus_tskを呼び出すと, E_CTX エラーとなる【NGKI1311】. ---------------------------------------------------------------------rsm_tsk 強制待ち状態からの再開〔T〕【NGKI1312】 【C言語API】 ER ercd = rsm_tsk(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1313】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1314】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1315】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1316】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1317】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1318】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが強制待ち状態(二重待ち状態を含む)でない 【NGKI1319】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を,強制待ちから再開する.具体的な振 舞いは以下の通り. 対象タスクが強制待ち状態である場合には,対象タスクは強制待ちから再開さ れる【NGKI1320】. ---------------------------------------------------------------------dis_wai 待ち禁止状態への遷移〔TP〕【NGKI1321】 idis_wai 待ち禁止状態への遷移〔IP〕【NGKI1322】 【C言語API】 ER ercd = dis_wai(ID tskid) ER ercd = idis_wai(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 127 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6351 6352 6353 6354 6355 6356 6357 6358 6359 6360 6361 6362 6363 6364 6365 6366 6367 6368 6369 6370 6371 6372 6373 6374 6375 6376 6377 6378 6379 6380 6381 6382 6383 6384 6385 6386 6387 6388 6389 6390 6391 6392 6393 6394 6395 6396 6397 6398 6399 6400 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(dis_waiの場合)【NGKI1323】 ・タスクコンテキストからの呼出し(idis_waiの場合)【NGKI1324】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1325】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1326】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1327】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1328】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(dis_wai の場合)【NGKI1329】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1330】 ・対象タスクがタスク例外処理マスク状態でない【NGKI1331】 E_QOVR キューイングオーバフロー ・対象タスクが待ち禁止状態【NGKI1332】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)を待ち禁止状態にする.具体的な振舞い は以下の通り. 対象タスクがタスク例外処理マスク状態であり,待ち禁止状態でない場合には, 対象タスクは待ち禁止状態になる【NGKI1333】. dis_wai においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1334】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,dis_waiをサポートしない【ASPS0114】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,dis_waiをサポートしない【FMPS0108】. 【補足説明】 dis_wai は,対象タスクの待ち解除は行わない.対象タスクを待ち禁止状態にす ることに加えて待ち解除したい場合には,dis_waiを呼び出した後に,rel_wai を呼び出せばよい. 【未決定事項】 128 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6401 6402 6403 6404 6405 6406 6407 6408 6409 6410 6411 6412 6413 6414 6415 6416 6417 6418 6419 6420 6421 6422 6423 6424 6425 6426 6427 6428 6429 6430 6431 6432 6433 6434 6435 6436 6437 6438 6439 6440 6441 6442 6443 6444 6445 6446 6447 6448 6449 6450 マルチプロセッサ対応カーネルでは,対象タスクを,自タスクと同じプロセッ サに割り付けられているタスクに限るなどの制限を導入する可能性があるが, 現時点では未決定である. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ena_wai 待ち禁止状態の解除〔TP〕【NGKI1335】 iena_wai 待ち禁止状態の解除〔IP〕【NGKI1336】 【C言語API】 ER ercd = ena_wai(ID tskid) ER ercd = iena_wai(ID tskid) 【パラメータ】 ID ts kid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(ena_waiの場合)【NGKI1337】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iena_waiの場合)【NGKI1338】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1339】 E_NOSPT 未サポート機能 ・対象タスクが制約タスク【NGKI1340】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1341】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1342】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(ena_wai の場合)【NGKI1343】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1344】 ・対象タスクが待ち禁止状態でない【NGKI1345】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)の待ち禁止状態を解除する.具体的な振 舞いは以下の通り. 対象タスクが待ち禁止状態である場合には,待ち禁止状態は解除される 【NGKI1346】. ena_wai においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1347】. 129 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6451 6452 6453 6454 6455 6456 6457 6458 6459 6460 6461 6462 6463 6464 6465 6466 6467 6468 6469 6470 6471 6472 6473 6474 6475 6476 6477 6478 6479 6480 6481 6482 6483 6484 6485 6486 6487 6488 6489 6490 6491 6492 6493 6494 6495 6496 6497 6498 6499 6500 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ena_waiをサポートしない【ASPS0115】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ena_waiをサポートしない【FMPS0109】. 【未決定事項】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,対象タスクを,自タスクと同じプロセッ サに割り付けられているタスクに限るなどの制限を導入する可能性があるが, 現時点では未決定である. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------dly_tsk 自タスクの遅延〔T〕【NGKI1348】 【C言語API】 ER ercd = dly_tsk(RELTIM dlytim) 【パラメータ】 RELTIM dlytim 遅延時間 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・ディスパッチ保留状態からの呼出し【NGKI1349】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し【NGKI1350】 E_PAR パラメータエラー ・dlytimがTMAX_RELTIMより大きい【NGKI1351】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除【NGKI1352】 【機能】 dlytim で指定した時間,自タスクを遅延させる.具体的な振舞いは以下の通り. 自タスクは,dlytimで指定した時間が経過するまでの間,時間経過待ち状態と なる【NGKI1353】.dly_tskを呼び出してからdlytimで指定した相対時間後に, 自タスクは待ち解除され,dly_tskからE_OKが返る【NGKI1354】. ---------------------------------------------------------------------4.3 タスク例外処理機能 130 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6501 6502 6503 6504 6505 6506 6507 6508 6509 6510 6511 6512 6513 6514 6515 6516 6517 6518 6519 6520 6521 6522 6523 6524 6525 6526 6527 6528 6529 6530 6531 6532 6533 6534 6535 6536 6537 6538 6539 6540 6541 6542 6543 6544 6545 6546 6547 6548 6549 6550 タスク例外処理ルーチンは,カーネルが実行を制御する処理単位で,タスクと 同一のコンテキスト内で実行される.タスク例外処理ルーチンは,各タスクに 1つのみ登録できるため,タスクIDによって識別する【NGKI1355】. タスク例外処理機能に関連して,各タスクが持つ情報は次の通り【NGKI1356】. ・タスク例外処理ルーチン属性 ・タスク例外処理禁止フラグ ・保留例外要因 ・タスク例外処理ルーチンの先頭番地 タスク例外処理ルーチン属性に指定できる属性はない【NGKI1357】.そのため, タスク例外処理ルーチン属性には,TA_NULLを指定しなければならない 【NGKI1358】. タスクは,タスク例外処理ルーチンの実行を保留するためのタスク例外処理禁 止フラグを持つ【NGKI1359】.タスク例外処理禁止フラグがセットされた状態 をタスク例外処理禁止状態,クリアされた状態をタスク例外処理許可状態と呼 ぶ【NGKI1360】.タスク例外処理禁止フラグは,タスクの起動時に,セットし た状態に初期化される【NGKI1361】. タスクの保留例外要因は,タスクに対して要求された例外要因を蓄積するため のビットマップであり,タスクの起動時に0に初期化される【NGKI1362】. タスク例外処理ルーチンは,「タスク例外処理許可状態である」「保留例外要 因が0でない」「タスクが実行状態である」「タスクコンテキストが実行されて いる」「割込み優先度マスク全解除状態である」「CPUロック状態でない」の6 つの条件が揃った場合に実行が開始される【NGKI1363】.保護機能対応カーネ ルにおいては,さらに,「タスク例外処理マスク状態でない」という条件が追 加される【NGKI1364】.タスク例外処理マスク状態については,「2.6.5 タス ク例外処理マスク状態と待ち禁止状態」の節を参照すること. タスク例外処理ルーチンの実行が開始される時,タスク例外処理禁止フラグは セットされ,保留例外要因は0にクリアされる【NGKI1365】.また,タスク例外 処理ルーチンからのリターン時には,タスク例外処理禁止フラグはクリアされ る【NGKI1366】. 保護機能対応カーネルでは,ユーザタスクのタスク例外処理ルーチンの実行開 始時に,リターン先の番地やシステム状態等が,ユーザスタック上に保存され る【NGKI1367】.ここで,ユーザスタック領域に十分な空きがない場合や,ユー ザスタックポインタがユーザスタック領域以外を指している場合,カーネルは, エミュレートされたCPU例外を発生させる【NGKI1368】.これを,タスク例外実 行開始時スタック不正例外と呼ぶ. 逆に,タスク例外処理ルーチンからのリターン時には,リターン先の番地やシ ステム状態等が,ユーザスタック上から取り出される【NGKI1369】.ここで, ユーザスタック領域に積まれている情報が足りない場合や,ユーザスタックポ インタがユーザスタック領域以外を指している場合,カーネルは,エミュレー トされたCPU例外を発生させる【NGKI1370】.これを,タスク例外リターン時ス タック不正例外と呼ぶ. 131 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6551 6552 6553 6554 6555 6556 6557 6558 6559 6560 6561 6562 6563 6564 6565 6566 6567 6568 6569 6570 6571 6572 6573 6574 6575 6576 6577 6578 6579 6580 6581 6582 6583 6584 6585 6586 6587 6588 6589 6590 6591 6592 6593 6594 6595 6596 6597 6598 6599 6600 タスク例外実行開始時スタック不正例外またはタスク例外リターン時スタック 不正例外を起こしたタスクの実行を継続した場合の動作は保証されないため, アプリケーションは,これらのCPU例外を処理するCPU例外ハンドラで, 「2.8.1 CPU例外処理の流れ」の節の(b)または(d)の方法でリカバリ処理を行う 必要がある【NGKI1371】.この方法に従わなかった場合の動作は,保証されな い【NGKI1372】. 保護機能対応カーネルにおいて,タスク例外処理ルーチンは,タスクと同じ保 護ドメインに属する【NGKI1373】. タスク例外処理機能に用いるデータ型は次の通り. TEXPTN タスク例外要因のビットパターン(符号無し整数,uint_tに 定義)【NGKI1374】 C言語によるタスク例外処理ルーチンの記述形式は次の通り【NGKI1375】. void task_exception_routine(TEXPTN texptn, intptr_t exinf) { タスク例外処理ルーチン本体 } texptn にはタスク例外処理ルーチン起動時の保留例外要因が,exinfにはタスク の拡張情報が,それぞれ渡される【NGKI1376】. タスク例外処理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TBIT_TEXPTN タスク例外要因のビット数(TEXPTNの有効ビット数) 【NGKI1377】 【補足説明】 保護機能対応でないカーネルでは,タスク例外処理ルーチンの実行開始条件の 内,「CPUロック状態でない」は省いても同じ結果になる.これは,CPUロック 状態で他の条件が揃うことはないためである.一方,保護機能対応カーネルで は,CPUロック状態で拡張サービスコールからリターンした場合(言い換えると, タスク例外処理マスク状態が解除された場合)に,CPUロック状態で他の条件が 揃うことになる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,タスク例外要因のビット数(TBIT_TEXPTN)は16以上である 【ASPS0116】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,タスク例外要因のビット数(TBIT_TEXPTN)は16以上である 【FMPS0110】. 132 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6601 6602 6603 6604 6605 6606 6607 6608 6609 6610 6611 6612 6613 6614 6615 6616 6617 6618 6619 6620 6621 6622 6623 6624 6625 6626 6627 6628 6629 6630 6631 6632 6633 6634 6635 6636 6637 6638 6639 6640 6641 6642 6643 6644 6645 6646 6647 6648 6649 6650 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,タスク例外要因のビット数(TBIT_TEXPTN)は16以上である 【HRPS0110】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,タスク例外処理機能をサポートしない【SSPS0126】. 【μITRON4.0仕様との関係】 割込み優先度マスク全解除状態でない場合には,タスク例外処理ルーチンの実 行が開始されないという仕様に変更した. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 ユーザタスクのタスク例外処理ルーチンの実行開始時とリターン時にユーザス タックが不正となる問題に関して,μITRON4.0/PX仕様では考慮されていない. 【仕様変更の経緯】 この仕様のRelease 1.2以前では,タスク例外処理ルーチンの実行開始条件に 「割込み優先度マスク全解除状態である」の条件がなかったが,Release1.3以 降で追加した.これは,マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,他プロセッ サで実行中のタスクに対してタスク例外処理を要求した場合に,割込み優先度 マスクが全解除でないと,タスク例外処理ルーチンをただちに実行開始するこ とができないためである.なお,ASPカーネル Release 1.6以前と,FMPカーネ ル Release 1.1.1以前のバージョンは,古い仕様に従って実装されている. ---------------------------------------------------------------------DEF_TEX タスク例外処理ルーチンの定義〔S〕【NGKI1378】 def_tex タスク例外処理ルーチンの定義〔TD〕【NGKI1379】 【静的API】 DEF_TEX(ID tskid, { ATR texatr, TEXRTN texrtn }) 【C言語API】 ER ercd = def_tex(ID tskid, const T_DTEX *pk_dtex) 【パラメータ】 ID tskid T_DTEX * pk_dtex 対象タスクのID番号 タスク例外処理ルーチンの定義情報を入れたパ ケットへのポインタ(静的APIを除く) *タスク例外処理ルーチンの定義情報(パケットの内容) ATR texatr タスク例外処理ルーチン属性 TEXRTN texrtn タスク例外処理ルーチンの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 133 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6651 6652 6653 6654 6655 6656 6657 6658 6659 6660 6661 6662 6663 6664 6665 6666 6667 6668 6669 6670 6671 6672 6673 6674 6675 6676 6677 6678 6679 6680 6681 6682 6683 6684 6685 6686 6687 6688 6689 6690 6691 6692 6693 6694 6695 6696 6697 6698 6699 6700 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1380】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1381】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外〔s〕【NGKI1382】 E_RSATR 予約属性 ・texatrが無効【NGKI1383】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・texrtnがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI1384】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録【NGKI1385】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1386】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_dtexが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1387】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1388】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)に対して,各パラメータで指定したタス ク例外処理ルーチン定義情報に従って,タスク例外処理ルーチンを定義する 【NGKI1389】. ただし,def_texにおいてpk_dtexをNULLにした場合には,対象タスクに対する タスク例外処理ルーチンの定義を解除する【NGKI1390】.また,対象タスクの タスク例外処理禁止フラグをセットし,保留例外要因を0に初期化する 【NGKI1391】. 静的APIにおいては,tskidはオブジェクト識別名,texatrは整数定数式パラメー タ,texrtnは一般定数式パラメータである【NGKI1392】. タスク例外処理ルーチンを定義する場合(DEF_TEXの場合およびdef_texにおい てpk_dtexをNULL以外にした場合)で,対象タスクに対してすでにタスク例外処 理ルーチンが定義されている場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI1393】. 保護機能対応カーネルにおいて,DEF_TEXは,対象タスクが属する保護ドメイン の囲みの中に記述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーと なる【NGKI1395】.また,def_texでタスク例外処理ルーチンを定義する場合に は,タスク例外処理ルーチンの属する保護ドメインを設定する必要はなく,タ スク例外処理ルーチン属性にTA_DOM(domid)を指定した場合にはE_RSATRエラー となる【NGKI1396】.ただし,TA_DOM(TDOM_SELF)を指定した場合には,指定が 無視され,E_RSATRエラーは検出されない【NGKI1397】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,DEF_TEXは,対象タスクが属するクラ 134 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6701 6702 6703 6704 6705 6706 6707 6708 6709 6710 6711 6712 6713 6714 6715 6716 6717 6718 6719 6720 6721 6722 6723 6724 6725 6726 6727 6728 6729 6730 6731 6732 6733 6734 6735 6736 6737 6738 6739 6740 6741 6742 6743 6744 6745 6746 6747 6748 6749 6750 スの囲みの中に記述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラー となる【NGKI1399】.また,def_texでタスク例外処理ルーチンを定義する場合 には,タスク例外処理ルーチンの属するクラスを設定する必要はなく,タスク 例外処理ルーチン属性にTA_CLS(clsid)を指定した場合にはE_RSATRエラーとな る【NGKI1400】.ただし,TA_CLS(CLS_SELF)を指定した場合には,指定が無視 され,E_RSATRエラーは検出されない【NGKI1401】. タスク例外処理ルーチンの定義を解除する場合(def_texにおいてpk_dtexを NULL にした場合)で,対象タスクに対してタスク例外処理ルーチンが定義され ていない場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI1402】. def_tex においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1403】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,DEF_TEXのみをサポートする【ASPS0117】.ただし,動的生 成機能拡張パッケージでは,def_texもサポートする【ASPS0118】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,DEF_TEXのみをサポートする【FMPS0111】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,DEF_TEXのみをサポートする【HRPS0111】. 【μITRON4.0仕様との関係】 texrtn のデータ型をTEXRTNに変更した. def_tex によって,定義済みのタスク例外処理ルーチンを再定義しようとした場 合に,E_OBJエラーとすることにした. ---------------------------------------------------------------------ras_tex タスク例外処理の要求〔T〕【NGKI1404】 iras_tex タスク例外処理の要求〔I〕【NGKI1405】 【C言語API】 ER ercd = ras_tex(ID tskid, TEXPTN rasptn) ER ercd = iras_tex(ID tskid, TEXPTN rasptn) 【パラメータ】 ID tskid TEXPTN rasptn 対象タスクのID番号 要求するタスク例外処理のタスク例外要因 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー 135 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6751 6752 6753 6754 6755 6756 6757 6758 6759 6760 6761 6762 6763 6764 6765 6766 6767 6768 6769 6770 6771 6772 6773 6774 6775 6776 6777 6778 6779 6780 6781 6782 6783 6784 6785 6786 6787 6788 6789 6790 6791 6792 6793 6794 6795 6796 6797 6798 6799 6800 E_ID E_PAR E_NOEXS E_OACV E_OBJ ・非タスクコンテキストからの呼出し(ras_texの場合)【NGKI1406】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iras_texの場合)【NGKI1407】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1408】 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1409】 パラメータエラー ・rasptnが0【NGKI1410】 オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1411】 オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(ras_tex の場合)〔P〕【NGKI1412】 オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1413】 ・対象タスクに対してタスク例外処理ルーチンが定義されてい ない【NGKI1414】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)に対して,rasptnで指定したタスク例外 要因のタスク例外処理を要求する.対象タスクの保留例外要因が,それまでの 値とrasptnで指定した値のビット毎論理和(C言語の"|")に更新される 【NGKI1415】. ras_tex においてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI1416】. ---------------------------------------------------------------------dis_tex タスク例外処理の禁止〔T〕【NGKI1417】 【C言語API】 ER ercd = dis_tex() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1419】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1420】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・自タスクに対してタスク例外処理ルーチンが定義されていな い【NGKI1421】 【機能】 自タスクのタスク例外処理禁止フラグをセットする【NGKI1422】.すなわち, 自タスクをタスク例外処理禁止状態に遷移させる. 136 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6801 6802 6803 6804 6805 6806 6807 6808 6809 6810 6811 6812 6813 6814 6815 6816 6817 6818 6819 6820 6821 6822 6823 6824 6825 6826 6827 6828 6829 6830 6831 6832 6833 6834 6835 6836 6837 6838 6839 6840 6841 6842 6843 6844 6845 6846 6847 6848 6849 6850 ---------------------------------------------------------------------ena_tex タスク例外処理の許可〔T〕【NGKI1423】 【C言語API】 ER ercd = ena_tex() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1424】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1425】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・自タスクに対してタスク例外処理ルーチンが定義されていな い【NGKI1426】 【機能】 自タスクのタスク例外処理禁止フラグをクリアする【NGKI1427】.すなわち, 自タスクをタスク例外処理許可状態に遷移させる. 【補足説明】 タスク例外処理ルーチン中でena_texを呼び出すことにより,タスク例外処理ルー チンの多重起動を行うことができる.ただし,多重起動の最大段数を制限する のは,アプリケーションの責任である. ---------------------------------------------------------------------sns_tex タスク例外処理禁止状態の参照〔TI〕【NGKI1428】 【C言語API】 bool_t stat e = sns_tex() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state タスク例外処理禁止状態 【機能】 実行状態のタスクのタスク例外処理禁止フラグを参照する.具体的な振舞いは 以下の通り. 実行状態のタスクが,タスク例外処理禁止状態の場合にtrue,タスク例外処理 許可状態の場合にfalseが返る【NGKI1429】.sns_texを非タスクコンテキスト から呼び出した場合で,実行状態のタスクがない場合には,trueが返る 137 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6851 6852 6853 6854 6855 6856 6857 6858 6859 6860 6861 6862 6863 6864 6865 6866 6867 6868 6869 6870 6871 6872 6873 6874 6875 6876 6877 6878 6879 6880 6881 6882 6883 6884 6885 6886 6887 6888 6889 6890 6891 6892 6893 6894 6895 6896 6897 6898 6899 6900 【NGKI1430】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,サービスコールを呼び出した処理 単位を実行しているプロセッサにおいて実行状態のタスクのタスク例外処理禁 止フラグを参照する【NGKI1431】. 【補足説明】 sns_tex をタスクコンテキストから呼び出した場合,実行状態のタスクは自タス クに一致する. ---------------------------------------------------------------------ref_tex タスク例外処理の状態参照〔T〕【NGKI1432】 【C言語API】 ER ercd = ref_tex(ID tskid, T_RTEX *pk_rtex) 【パラメータ】 ID tskid T_RTEX * pk_rtex 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象タスクのID番号 タスク例外処理の現在状態を入れるパケットへ のポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *タスク例外処理の現在状態(パケットの内容) STAT texstat タスク例外処理の状態 TEXPTN pndptn タスクの保留例外要因 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1433】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1434】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI1435】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI1436】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する参照操作が許可されていない〔P〕【NGKI1437】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rtexが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1438】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象タスクが休止状態【NGKI1439】 ・対象タスクに対してタスク例外処理ルーチンが定義されてい ない【NGKI1440】 【機能】 tskid で指定したタスク(対象タスク)のタスク例外処理に関する現在状態を参 照する.参照した現在状態は,pk_rtexで指定したパケットに返される 138 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6901 6902 6903 6904 6905 6906 6907 6908 6909 6910 6911 6912 6913 6914 6915 6916 6917 6918 6919 6920 6921 6922 6923 6924 6925 6926 6927 6928 6929 6930 6931 6932 6933 6934 6935 6936 6937 6938 6939 6940 6941 6942 6943 6944 6945 6946 6947 6948 6949 6950 【NGKI1441】. texstat には,対象タスクの現在のタスク例外処理禁止フラグを表す次のいずれ かの値が返される【NGKI1442】. TTEX_ENA TTEX_DIS 0x01U 0x02U タスク例外処理許可状態 タスク例外処理禁止状態 pndptn には,対象タスクの現在の保留例外要因が返される【NGKI1443】. tskid にTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI1444】. ---------------------------------------------------------------------4.4 同期・通信機能 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,同期・通信機能をサポートしない【SSPS0127】. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,ランデブ機能はサポートしていない.今後の検討により,ラン デブ機能をサポートすることに変更する可能性もある. 4.4.1 セマフォ セマフォは,資源の数を表す0以上の整数値を取るカウンタ(資源数)を介して, 排他制御やイベント通知を行うための同期・通信オブジェクトである.セマフォ の資源数から1を減ずることを資源の獲得,資源数に1を加えることを資源の返 却と呼ぶ.セマフォは,セマフォIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI1445】. 各セマフォが持つ情報は次の通り【NGKI1446】. ・セマフォ属性 ・資源数(の現在値) ・待ち行列(セマフォの資源獲得待ち状態のタスクのキュー) ・初期資源数 ・最大資源数 ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 待ち行列は,セマフォの資源が獲得できるまで待っている状態(セマフォの資 源獲得待ち状態)のタスクが,資源を獲得できる順序でつながれているキュー である. セマフォの初期資源数は,セマフォを生成または再初期化した際の,資源数の 初期値である.また,セマフォの最大資源数は,資源数が取りうる最大値であ る.資源数が最大資源数に一致している時に資源を返却しようとすると, 139 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 6951 6952 6953 6954 6955 6956 6957 6958 6959 6960 6961 6962 6963 6964 6965 6966 6967 6968 6969 6970 6971 6972 6973 6974 6975 6976 6977 6978 6979 6980 6981 6982 6983 6984 6985 6986 6987 6988 6989 6990 6991 6992 6993 6994 6995 6996 6997 6998 6999 7000 E_QOVR エラーとなる【NGKI1447】. セマフォ属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1448】. TA_TPRI 0x01U 待ち行列をタスクの優先度順にする TA_TPRI を指定しない場合,待ち行列はFIFO順になる【NGKI1449】. セマフォ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMAX_MAXSEM セマフォの最大資源数の最大値(=UINT_MAX)【NGKI1450】 TNUM_SEMID 登録できるセマフォの数(動的生成対応でないカーネル では,静的APIによって登録されたセマフォの数に一致) 【NGKI1451】 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_SEMID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_SEM セマフォの生成〔S〕【NGKI1452】 acre_sem セマフォの生成〔TD〕【NGKI1453】 【静的API】 CRE_SEM(ID semid, { ATR sematr, uint_t isemcnt, uint_t maxsem }) 【C言語API】 ER_ID semid = acre_sem(const T_CSEM *pk_csem) 【パラメータ】 ID semid T_CSEM * pk_csem 生成するセマフォのID番号(CRE_SEMの場合) セマフォの生成情報を入れたパケットへのポイ ンタ(静的APIを除く) *セマフォの生成情報(パケットの内容) ATR sematr セマフォ属性 uint_t isemcnt セマフォの初期資源数 uint_t maxsem セマフォの最大資源数 【リターンパラメータ】 ER_ID semid 生成されたセマフォのID番号(正の値)または エラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1454】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1455】 E_RSATR 予約属性 ・sematrが無効【NGKI1456】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI1457】 140 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7001 7002 7003 7004 7005 7006 7007 7008 7009 7010 7011 7012 7013 7014 7015 7016 7017 7018 7019 7020 7021 7022 7023 7024 7025 7026 7027 7028 7029 7030 7031 7032 7033 7034 7035 7036 7037 7038 7039 7040 7041 7042 7043 7044 7045 7046 7047 7048 7049 7050 E_PAR E_OACV E_MACV E_NOID E_OBJ ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1458】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1459】 パラメータエラー ・maxsemが有効範囲(1以上TMAX_MAXSEM以下)外【NGKI1468】 ・isemcntが有効範囲(0以上maxsem以下)外【NGKI1466】 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1460】 メモリアクセス違反 ・pk_csemが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1461】 ID 番号不足 ・割り付けられるセマフォIDがない〔sD〕【NGKI1462】 オブジェクト状態エラー ・semidで指定したセマフォが登録済み(CRE_SEMの場合) 【NGKI1463】 【機能】 各パラメータで指定したセマフォ生成情報に従って,セマフォを生成する.生 成されたセマフォの資源数は初期資源数に,待ち行列は空の状態に初期化され る【NGKI1464】. 静的APIにおいては,semidはオブジェクト識別名,sematr,isemcnt,maxsemは 整数定数式パラメータである【NGKI1465】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_SEMのみをサポートする【ASPS0119】.ただし,動的生 成機能拡張パッケージでは,acre_semもサポートする【ASPS0120】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_SEMのみをサポートする【FMPS0112】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_SEMのみをサポートする【HRPS0112】. ---------------------------------------------------------------------AID_SEM 割付け可能なセマフォIDの数の指定〔SD〕【NGKI1469】 【静的API】 AID_SEM(uint_t nosem) 【パラメータ】 uint_t n osem 割付け可能なセマフォIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1470】 141 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7051 7052 7053 7054 7055 7056 7057 7058 7059 7060 7061 7062 7063 7064 7065 7066 7067 7068 7069 7070 7071 7072 7073 7074 7075 7076 7077 7078 7079 7080 7081 7082 7083 7084 7085 7086 7087 7088 7089 7090 7091 7092 7093 7094 7095 7096 7097 7098 7099 7100 E_PAR パラメータエラー ・nosemが負の値【NGKI3277】 【機能】 nosem で指定した数のセマフォIDを,セマフォを生成するサービスコールによっ て割付け可能なセマフォIDとして確保する【NGKI1471】. nosem は整数定数式パラメータである【NGKI1472】. ---------------------------------------------------------------------SAC_SEM セマフォのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI1473】 sac_sem セマフォのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI1474】 【静的API】 SAC_SEM(ID semid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_sem(ID semid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID semid ACVCT * p_acvct 対象セマフォのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1475】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1476】 E_ID 不正ID番号 ・semidが有効範囲外〔s〕【NGKI1477】 E_RSATR 予約属性 ・対象セマフォが属する保護ドメインの囲みの中に記述され ていない〔S〕【NGKI1478】 ・対象セマフォが属するクラスの囲みの中に記述されていな い〔SM〕【NGKI1479】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録【NGKI1480】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI1481】 142 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7101 7102 7103 7104 7105 7106 7107 7108 7109 7110 7111 7112 7113 7114 7115 7116 7117 7118 7119 7120 7121 7122 7123 7124 7125 7126 7127 7128 7129 7130 7131 7132 7133 7134 7135 7136 7137 7138 7139 7140 7141 7142 7143 7144 7145 7146 7147 7148 7149 7150 E_MACV E_OBJ メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI1482】 オブジェクト状態エラー ・対象セマフォは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1483】 ・対象セマフォに対してアクセス許可ベクタが設定済み〔S〕 【NGKI1484】 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)のアクセス許可ベクタ(4つのアク セス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI1485】. 静的APIにおいては,semidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI1486】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_SEM,sac_semをサポートしない【ASPS0121】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_SEM,sac_semをサポートしない【FMPS0113】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_SEMのみをサポートする【HRPS0113】. ---------------------------------------------------------------------del_sem セマフォの削除〔TD〕【NGKI1487】 【C言語API】 ER ercd = del_sem(ID semid) 【パラメータ】 ID semi d 対象セマフォのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1488】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1489】 E_ID 不正ID番号 ・semidが有効範囲外【NGKI1490】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録【NGKI1491】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する管理操作が許可されていない〔P〕 143 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7151 7152 7153 7154 7155 7156 7157 7158 7159 7160 7161 7162 7163 7164 7165 7166 7167 7168 7169 7170 7171 7172 7173 7174 7175 7176 7177 7178 7179 7180 7181 7182 7183 7184 7185 7186 7187 7188 7189 7190 7191 7192 7193 7194 7195 7196 7197 7198 7199 7200 E_OBJ 【NGKI1492】 オブジェクト状態エラー ・対象セマフォは静的APIで生成された【NGKI1493】 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)を削除する.具体的な振舞いは以下 の通り. 対象セマフォの登録が解除され,そのセマフォIDが未使用の状態に戻される 【NGKI1494】.また,対象セマフォの待ち行列につながれたタスクは,待ち行 列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI1495】.待ち解除されたタス クには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1496】. 【使用上の注意】 del_sem により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_semをサポートしない【ASPS0122】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_semをサポートする【ASPS0123】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_semをサポートしない【FMPS0114】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_semをサポートしない【HRPS0114】. ---------------------------------------------------------------------sig_sem セマフォの資源の返却〔T〕【NGKI1497】 isig_sem セマフォの資源の返却〔I〕【NGKI1498】 【C言語API】 ER ercd = sig_sem(ID semid) ER ercd = isig_sem(ID semid) 【パラメータ】 ID semid 対象セマフォのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(sig_semの場合)【NGKI1499】 144 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7201 7202 7203 7204 7205 7206 7207 7208 7209 7210 7211 7212 7213 7214 7215 7216 7217 7218 7219 7220 7221 7222 7223 7224 7225 7226 7227 7228 7229 7230 7231 7232 7233 7234 7235 7236 7237 7238 7239 7240 7241 7242 7243 7244 7245 7246 7247 7248 7249 7250 E_ID E_NOEXS E_OACV E_QOVR ・タスクコンテキストからの呼出し(isig_semの場合)【NGKI1500】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1501】 不正ID番号 ・semidが有効範囲外【NGKI1502】 オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録〔D〕【NGKI1503】 オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する通常操作1が許可されていない(sig_sem の場合)〔P〕【NGKI1504】 キューイングオーバフロー ・条件については機能の項を参照 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)に資源を返却する.具体的な振舞い は以下の通り. 対象セマフォの待ち行列にタスクが存在する場合には,待ち行列の先頭のタス クが待ち解除される【NGKI1505】.この時,待ち解除されたタスクが資源を獲 得したことになるため,対象セマフォの資源数は変化しない【NGKI1506】.待 ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_OKが返る 【NGKI1507】. 待ち行列にタスクが存在しない場合には,対象セマフォの資源数に1が加えられ る【NGKI1508】.資源数に1を加えるとそのセマフォの最大資源数を越える場合 には,E_QOVRエラーとなる【NGKI1509】. ---------------------------------------------------------------------wai_sem セマフォの資源の獲得〔T〕【NGKI1510】 pol_sem セマフォの資源の獲得(ポーリング)〔T〕【NGKI1511】 twai_sem セマフォの資源の獲得(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1512】 【C言語API】 ER ercd = wai_sem(ID semid) ER ercd = pol_sem(ID semid) ER ercd = twai_sem(ID semid, TMO tmout) 【パラメータ】 ID semid TMO tmout 対象セマフォのID番号 タイムアウト時間(twai_semの場合) 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1513】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1514】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(pol_semを除く)【NGKI1515】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(pol_semを除く)【NGKI1516】 145 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7251 7252 7253 7254 7255 7256 7257 7258 7259 7260 7261 7262 7263 7264 7265 7266 7267 7268 7269 7270 7271 7272 7273 7274 7275 7276 7277 7278 7279 7280 7281 7282 7283 7284 7285 7286 7287 7288 7289 7290 7291 7292 7293 7294 7295 7296 7297 7298 7299 7300 E_ID E_PAR E_NOEXS E_OACV E_TMOUT E_RLWAI E_DLT 不正ID番号 ・semidが有効範囲外【NGKI1517】 パラメータエラー ・tmoutが無効(twai_semの場合)【NGKI1518】 オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録〔D〕【NGKI1519】 オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1520】 ポーリング失敗またはタイムアウト(wai_semを除く)【NGKI1521】 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(pol_semを除く) 【NGKI1522】 待ちオブジェクトの削除または再初期化(pol_semを除く) 【NGKI1523】 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)から資源を獲得する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象セマフォの資源数が1以上の場合には,資源数から1が減ぜられる 【NGKI1524】.資源数が0の場合には,自タスクはセマフォの資源獲得待ち状態 となり,対象セマフォの待ち行列につながれる【NGKI1525】. ---------------------------------------------------------------------ini_sem セマフォの再初期化〔T〕【NGKI1526】 【C言語API】 ER ercd = ini_sem(ID semid) 【パラメータ】 ID semid 対象セマフォのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1527】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1528】 E_ID 不正ID番号 ・semidが有効範囲外【NGKI1529】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録〔D〕【NGKI1530】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1531】 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)を再初期化する.具体的な振舞いは 146 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7301 7302 7303 7304 7305 7306 7307 7308 7309 7310 7311 7312 7313 7314 7315 7316 7317 7318 7319 7320 7321 7322 7323 7324 7325 7326 7327 7328 7329 7330 7331 7332 7333 7334 7335 7336 7337 7338 7339 7340 7341 7342 7343 7344 7345 7346 7347 7348 7349 7350 以下の通り. 対象セマフォの資源数は,初期資源数に初期化される【NGKI1532】.また,対 象セマフォの待ち行列につながれたタスクは,待ち行列の先頭のタスクから順 に待ち解除される【NGKI1533】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となっ たサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1534】. 【使用上の注意】 ini_sem により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. セマフォを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保つのは,ア プリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_sem セマフォの状態参照〔T〕【NGKI1535】 【C言語API】 ER ercd = ref_sem(ID semid, T_RSEM *pk_rsem) 【パラメータ】 ID semid T_RSEM * pk_rsem 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象セマフォのID番号 セマフォの現在状態を入れるパケットへのポイ ンタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *セマフォの現在状態(パケットの内容) ID wtskid セマフォの待ち行列の先頭のタスクのID番号 uint_t semcnt セマフォの資源数 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1536】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1537】 E_ID 不正ID番号 ・semidが有効範囲外【NGKI1538】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象セマフォが未登録〔D〕【NGKI1539】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象セマフォに対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1540】 E_MACV メモリアクセス違反 147 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7351 7352 7353 7354 7355 7356 7357 7358 7359 7360 7361 7362 7363 7364 7365 7366 7367 7368 7369 7370 7371 7372 7373 7374 7375 7376 7377 7378 7379 7380 7381 7382 7383 7384 7385 7386 7387 7388 7389 7390 7391 7392 7393 7394 7395 7396 7397 7398 7399 7400 ・pk_rsemが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1541】 【機能】 semid で指定したセマフォ(対象セマフォ)の現在状態を参照する.参照した現 在状態は,pk_rsemで指定したパケットに返される【NGKI1542】. 対象セマフォの待ち行列にタスクが存在しない場合,wtskidにはTSK_NONE(= 0)が返る【NGKI1543】. 【使用上の注意】 ref_sem はデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_semを呼び出し,対象セマフォの現在状態を参照した直後に 割込みが発生した場合,ref_semから戻ってきた時には対象セマフォの状態が変 化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.2 イベントフラグ イベントフラグは,イベントの発生の有無を表すビットの集合(ビットパター ン)を介して,イベント通知を行うための同期・通信オブジェクトである.イ ベントが発生している状態を1,発生していない状態を0とし,ビットパターン により複数のイベントの発生の有無を表す【NGKI1544】.イベントフラグは, イベントフラグIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI1545】. 1つまたは複数のビットをセットする1にする(セットする)ことを,イベント フラグをセットするといい,0にする(クリアする)ことを,イベントフラグを クリアするという.イベントフラグによりイベントを通知する側のタスクは, イベントフラグをセットまたはクリアすることで,イベントの発生を通知する. イベントフラグによりイベントの通知を受ける側のタスクは,待ちビットパター ンと待ちモードにより,どのビットがセットされるのを待つかを指定する.待 ちモードにTWF_ORW(=0x01U)を指定した場合,待ちビットパターンに含まれ るいずれかのビットがセットされるのを待つ【NGKI1546】.待ちモードに TWF_ANDW (=0x02U)を指定した場合,待ちビットパターンに含まれるすべての ビットがセットされるのを待つ【NGKI1547】.この条件を,イベントフラグの 待ち解除の条件と呼ぶ. 各イベントフラグが持つ情報は次の通り【NGKI1548】. ・イベントフラグ属性 ・ビットパターン(の現在値) ・待ち行列(イベントフラグ待ち状態のタスクのキュー) ・初期ビットパターン ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 148 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7401 7402 7403 7404 7405 7406 7407 7408 7409 7410 7411 7412 7413 7414 7415 7416 7417 7418 7419 7420 7421 7422 7423 7424 7425 7426 7427 7428 7429 7430 7431 7432 7433 7434 7435 7436 7437 7438 7439 7440 7441 7442 7443 7444 7445 7446 7447 7448 7449 7450 待ち行列は,イベントフラグが指定した待ち解除の条件を満たすまで待ってい る状態(イベントフラグ待ち状態)のタスクがつながれているキューである. 待ち行列につながれたタスクの待ち解除は,待ち解除の条件を満たした中で, 待ち行列の前方につながれたものから順に行われる(〔NGKI0216〕に該当) 【NGKI1549】. イベントフラグの初期ビットパターンは,イベントフラグを生成または再初期 化した際の,ビットパターンの初期値である. イベントフラグ属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1550】. TA_TPRI TA_WMUL TA_CLR 0x01U 0x02U 0x04U 待ち行列をタスクの優先度順にする 複数のタスクが待つのを許す タスクの待ち解除時にイベントフラグをクリアする TA_TPRI を指定しない場合,待ち行列はFIFO順になる【NGKI1551】.TA_WMULを 指定しない場合,1つのイベントフラグに複数のタスクが待つことを禁止する 【NGKI1552】. TA_CLR を指定した場合,タスクの待ち解除時に,イベントフラグのビットパター ンを0にクリアする【NGKI1553】.TA_CLRを指定しない場合,タスクの待ち解除 時にイベントフラグをクリアしない【NGKI1554】. イベントフラグ機能に用いるデータ型は次の通り. FLGPTN イベントフラグのビットパターン(符号無し整数,uint_tに 定義)【NGKI1555】 イベントフラグ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TBIT_FLGPTN イベントフラグのビット数(FLGPTNの有効ビット数) 【NGKI1556】 TNUM_FLGID 登録できるイベントフラグの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたイベントフラグの 数に一致)【NGKI1557】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,イベントフラグのビット数(TBIT_FLGPTN)は16以上である 【ASPS0124】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,イベントフラグのビット数(TBIT_FLGPTN)は16以上である 【FMPS0115】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,イベントフラグのビット数(TBIT_FLGPTN)は16以上である 149 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7451 7452 7453 7454 7455 7456 7457 7458 7459 7460 7461 7462 7463 7464 7465 7466 7467 7468 7469 7470 7471 7472 7473 7474 7475 7476 7477 7478 7479 7480 7481 7482 7483 7484 7485 7486 7487 7488 7489 7490 7491 7492 7493 7494 7495 7496 7497 7498 7499 7500 【HRPS0115】. 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_FLGID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_FLG イベントフラグの生成〔S〕【NGKI1558】 acre_flg イベントフラグの生成〔TD〕【NGKI1559】 【静的API】 CRE_FLG(ID flgid, { ATR flgatr, FLGPTN iflgptn }) 【C言語API】 ER_ID flgid = acre_flg(const T_CFLG *pk_cflg) 【パラメータ】 ID flgid T_CFLG * pk_cflg 生成するイベントフラグのID番号(CRE_FLGの 場合) イベントフラグの生成情報を入れたパケットへ のポインタ(静的APIを除く) *イベントフラグの生成情報(パケットの内容) ATR flgatr イベントフラグ属性 FLGPTN iflgptn イベントフラグの初期ビットパターン 【リターンパラメータ】 ER_ID flgid 生成されたイベントフラグのID番号(正の値) またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1560】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1561】 E_RSATR 予約属性 ・flgatrが無効【NGKI1562】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI1563】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1564】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1565】 E_PAR パラメータエラー ・iflgptnがFLGPTNに格納できない〔S〕【NGKI3275】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1566】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_cflgが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1567】 E_NOID ID番号不足 ・割り付けられるイベントフラグIDがない〔sD〕【NGKI1568】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・flgidで指定したイベントフラグが登録済み(CRE_FLGの場合) 150 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7501 7502 7503 7504 7505 7506 7507 7508 7509 7510 7511 7512 7513 7514 7515 7516 7517 7518 7519 7520 7521 7522 7523 7524 7525 7526 7527 7528 7529 7530 7531 7532 7533 7534 7535 7536 7537 7538 7539 7540 7541 7542 7543 7544 7545 7546 7547 7548 7549 7550 【NGKI1569】 【機能】 各パラメータで指定したイベントフラグ生成情報に従って,イベントフラグを 生成する.生成されたイベントフラグのビットパターンは初期ビットパターン に,待ち行列は空の状態に初期化される【NGKI1570】. 静的APIにおいては,flgidはオブジェクト識別名,flgatrとiflgptnは整数定数 式パラメータである【NGKI1571】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_FLGのみをサポートする【ASPS0125】.ただし,動的生 成機能拡張パッケージでは,acre_flgもサポートする【ASPS0126】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_FLGのみをサポートする【FMPS0116】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_FLGのみをサポートする【HRPS0116】. ---------------------------------------------------------------------AID_FLG 割付け可能なイベントフラグIDの数の指定〔SD〕【NGKI1572】 【静的API】 AID_FLG(uint_t noflg) 【パラメータ】 uint_t noflg 割付け可能なイベントフラグIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1573】 E_PAR パラメータエラー ・noflgが負の値【NGKI3278】 【機能】 noflg で指定した数のイベントフラグIDを,イベントフラグを生成するサービス コールによって割付け可能なイベントフラグIDとして確保する【NGKI1574】. noflg は整数定数式パラメータである【NGKI1575】. ---------------------------------------------------------------------SAC_FLG イベントフラグのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI1576】 sac_flg イベントフラグのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI1577】 【静的API】 SAC_FLG(ID flgid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, 151 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7551 7552 7553 7554 7555 7556 7557 7558 7559 7560 7561 7562 7563 7564 7565 7566 7567 7568 7569 7570 7571 7572 7573 7574 7575 7576 7577 7578 7579 7580 7581 7582 7583 7584 7585 7586 7587 7588 7589 7590 7591 7592 7593 7594 7595 7596 7597 7598 7599 7600 ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_flg(ID flgid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID flgid ACVCT * p_acvct 対象イベントフラグのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn 1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1578】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1579】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外〔s〕【NGKI1580】 E_RSATR 予約属性 ・対象イベントフラグが属する保護ドメインの囲みの中に記 述されていない〔S〕【NGKI1581】 ・対象イベントフラグが属するクラスの囲みの中に記述され ていない〔SM〕【NGKI1582】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録【NGKI1583】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI1584】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI1585】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象イベントフラグは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1586】 ・対象イベントフラグに対してアクセス許可ベクタが設定済 み〔S〕【NGKI1587】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)のアクセス許可ベクタ (4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI1588】. 静的APIにおいては,flgidはオブジェクト識別名,acptn1 152 acptn4は整数定数 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7601 7602 7603 7604 7605 7606 7607 7608 7609 7610 7611 7612 7613 7614 7615 7616 7617 7618 7619 7620 7621 7622 7623 7624 7625 7626 7627 7628 7629 7630 7631 7632 7633 7634 7635 7636 7637 7638 7639 7640 7641 7642 7643 7644 7645 7646 7647 7648 7649 7650 式パラメータである【NGKI1589】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_FLG,sac_flgをサポートしない【ASPS0127】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_FLG,sac_flgをサポートしない【FMPS0117】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_FLGのみをサポートする【HRPS0117】. ---------------------------------------------------------------------del_flg イベントフラグの削除〔TD〕【NGKI1590】 【C言語API】 ER ercd = del_flg(ID flgid) 【パラメータ】 ID flgid 対象イベントフラグのID番号 【リターンパラメータ】 ER e rcd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1591】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1592】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1593】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録【NGKI1594】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1595】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象イベントフラグは静的APIで生成された【NGKI1596】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)を削除する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象イベントフラグの登録が解除され,そのイベントフラグIDが未使用の状態 に戻される【NGKI1597】.また,対象イベントフラグの待ち行列につながれた タスクは,待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI1598】.待 ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが 返る【NGKI1599】. 153 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7651 7652 7653 7654 7655 7656 7657 7658 7659 7660 7661 7662 7663 7664 7665 7666 7667 7668 7669 7670 7671 7672 7673 7674 7675 7676 7677 7678 7679 7680 7681 7682 7683 7684 7685 7686 7687 7688 7689 7690 7691 7692 7693 7694 7695 7696 7697 7698 7699 7700 【使用上の注意】 del_flg により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_flgをサポートしない【ASPS0128】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_flgをサポートする【ASPS0129】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_flgをサポートしない【FMPS0118】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_flgをサポートしない【HRPS0118】. ---------------------------------------------------------------------set_flg イベントフラグのセット〔T〕【NGKI1600】 iset_flg イベントフラグのセット〔I〕【NGKI1601】 【C言語API】 ER ercd = set_flg(ID flgid, FLGPTN setptn) ER ercd = iset_flg(ID flgid, FLGPTN setptn) 【パラメータ】 ID flgid FLGPTN setptn 対象イベントフラグのID番号 セットするビットパターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(set_flgの場合)【NGKI1602】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iset_flgの場合)【NGKI1603】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1604】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1605】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録〔D〕【NGKI1606】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する通常操作1が許可されていない (set_flgの場合)〔P〕【NGKI1607】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)のsetptnで指定したビッ 154 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7701 7702 7703 7704 7705 7706 7707 7708 7709 7710 7711 7712 7713 7714 7715 7716 7717 7718 7719 7720 7721 7722 7723 7724 7725 7726 7727 7728 7729 7730 7731 7732 7733 7734 7735 7736 7737 7738 7739 7740 7741 7742 7743 7744 7745 7746 7747 7748 7749 7750 トをセットする.具体的な振舞いは以下の通り. 対象イベントフラグのビットパターンは,それまでの値とsetptnで指定した値 のビット毎論理和(C言語の"|")に更新される【NGKI1608】.対象イベントフ ラグの待ち行列にタスクが存在する場合には,待ち解除の条件を満たしたタス クが,待ち行列の前方につながれたものから順に待ち解除される【NGKI1609】. 待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_OKが返る 【NGKI1610】. ただし,対象イベントフラグがTA_CLR属性である場合には,待ち解除の条件を 満たしたタスクを1つ待ち解除した時点で,対象イベントフラグのビットパター ンが0にクリアされるため,他のタスクが待ち解除されることはない. 【使用上の注意】 対象イベントフラグが,TA_WMUL属性であり,TA_CLR属性でない場合,set_flg またはiset_flgにより複数のタスクが待ち解除される場合がある.この場合, サービスコールの処理時間およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除 されるタスクの数に比例して長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される 場合,カーネル内での割込み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. ---------------------------------------------------------------------clr_flg イベントフラグのクリア〔T〕【NGKI1611】 【C言語API】 ER ercd = clr_flg(ID flgid, FLGPTN clrptn) 【パラメータ】 ID flgid FLGPTN clrptn 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象イベントフラグのID番号 クリアするビットパターン(クリアしないビッ トを1,クリアするビットを0とする) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1612】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1613】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1614】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録〔D〕【NGKI1615】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI1616】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)のclrptnで指定したビッ トをクリアする.対象イベントフラグのビットパターンは,それまでの値と 155 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7751 7752 7753 7754 7755 7756 7757 7758 7759 7760 7761 7762 7763 7764 7765 7766 7767 7768 7769 7770 7771 7772 7773 7774 7775 7776 7777 7778 7779 7780 7781 7782 7783 7784 7785 7786 7787 7788 7789 7790 7791 7792 7793 7794 7795 7796 7797 7798 7799 7800 clrptn で指定した値のビット毎論理積(C言語の"&")に更新される 【NGKI1617】. ---------------------------------------------------------------------wai_flg イベントフラグ待ち〔T〕【NGKI1618】 pol_flg イベントフラグ待ち(ポーリング)〔T〕【NGKI1619】 twai_flg イベントフラグ待ち(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1620】 【C言語API】 ER ercd = wai_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn) ER ercd = pol_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn) ER ercd = twai_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn, TMO tmout) 【パラメータ】 ID FLGPTN MODE FLGPTN * TMO flgid waiptn wfmode p_flgptn tmout 【リターンパラメータ】 ER ercd FLGPTN flgptn 対象イベントフラグのID番号 待ちビットパターン 待ちモード 待ち解除時のビットパターンを入れるメモリ領 域へのポインタ タイムアウト時間(twai_flgの場合) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 待ち解除時のビットパターン 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1621】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1622】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(pol_flgを除く)【NGKI1623】 E_NO SPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(pol_flgを除く)【NGKI1624】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1625】 E_PAR パラメータエラー ・waiptnが0【NGKI1626】 ・wfmodeが無効(TWF_ORWまたはTWF_ANDWでない)【NGKI1627】 ・tmoutが無効(twai_flgの場合)【NGKI1628】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録〔D〕【NGKI1629】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1630】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_flgptnが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可され ていない〔P〕【NGKI1631】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・TA_WMUL属性でないイベントフラグで待ちタスクあり【NGKI1632】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(wai_flgを除く)【NGKI1633】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(pol_flgを除く) 156 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7801 7802 7803 7804 7805 7806 7807 7808 7809 7810 7811 7812 7813 7814 7815 7816 7817 7818 7819 7820 7821 7822 7823 7824 7825 7826 7827 7828 7829 7830 7831 7832 7833 7834 7835 7836 7837 7838 7839 7840 7841 7842 7843 7844 7845 7846 7847 7848 7849 7850 E_DLT 【NGKI1634】 待ちオブジェクトの削除または再初期化(pol_flgを除く) 【NGKI1635】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)が,waiptnとwfmodeで 指定した待ち解除の条件を満たすのを待つ.具体的な振舞いは以下の通り. 対象イベントフラグが,waiptnとwfmodeで指定した待ち解除の条件を満たして いる場合には,対象イベントフラグのビットパターンの現在値がp_flgptnが指 すメモリ領域に返される【NGKI1636】.対象イベントフラグがTA_CLR属性であ る場合には,対象イベントフラグのビットパターンが0にクリアされる 【NGKI1637】. 待ち解除の条件を満たしていない場合には,自タスクはイベントフラグ待ち状 態となり,対象イベントフラグの待ち行列につながれる【NGKI1638】. ---------------------------------------------------------------------ini_flg イベントフラグの再初期化〔T〕【NGKI1639】 【C言語API】 ER ercd = ini_flg(ID fl gid) 【パラメータ】 ID flgid 対象イベントフラグのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1640】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1641】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1642】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録〔D〕【NGKI1643】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1644】 【機能】 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)を再初期化する.具体 的な振舞いは以下の通り. 対象イベントフラグのビットパターンは,初期ビットパターンに初期化される 【NGKI1645】.また,対象イベントフラグの待ち行列につながれたタスクは, 待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI1646】.待ち解除され たタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る 157 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7851 7852 7853 7854 7855 7856 7857 7858 7859 7860 7861 7862 7863 7864 7865 7866 7867 7868 7869 7870 7871 7872 7873 7874 7875 7876 7877 7878 7879 7880 7881 7882 7883 7884 7885 7886 7887 7888 7889 7890 7891 7892 7893 7894 7895 7896 7897 7898 7899 7900 【NGKI1647】. 【使用上の注意】 ini_flg により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. イベントフラグを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保つの は,アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_flg イベントフラグの状態参照〔T〕【NGKI1648】 【C言語API】 ER ercd = ref_flg(ID flgid, T_RFLG *pk_rflg) 【パラメータ】 ID flgid T_RFLG * pk_rflg 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象イベントフラグのID番号 イベントフラグの現在状態を入れるパケットへ のポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *イベントフラグの現在状態(パケットの内容) ID wtskid イベントフラグの待ち行列の先頭のタスクのID 番号 uint_t flgptn イベントフラグのビットパターン 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1649】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1650】 E_ID 不正ID番号 ・flgidが有効範囲外【NGKI1651】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象イベントフラグが未登録〔D〕【NGKI1652】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象イベントフラグに対する参照操作が許可されていない 〔P〕【NGKI1653】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rflgが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1654】 【機能】 158 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7901 7902 7903 7904 7905 7906 7907 7908 7909 7910 7911 7912 7913 7914 7915 7916 7917 7918 7919 7920 7921 7922 7923 7924 7925 7926 7927 7928 7929 7930 7931 7932 7933 7934 7935 7936 7937 7938 7939 7940 7941 7942 7943 7944 7945 7946 7947 7948 7949 7950 flgid で指定したイベントフラグ(対象イベントフラグ)の現在状態を参照する. 参照した現在状態は,pk_rflgで指定したパケットに返される【NGKI1655】. 対象イベントフラグの待ち行列にタスクが存在しない場合,wtskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI1656】. 【使用上の注意】 ref_flg はデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_flgを呼び出し,対象イベントフラグの現在状態を参照した 直後に割込みが発生した場合,ref_flgから戻ってきた時には対象イベントフラ グの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.3 データキュー データキューは,1ワードのデータをメッセージとして,FIFO順で送受信するた めの同期・通信オブジェクトである.より大きいサイズのメッセージを送受信 したい場合には,メッセージを置いたメモリ領域へのポインタを1ワードのデー タとして送受信する方法がある.データキューは,データキューIDと呼ぶID番 号によって識別する【NGKI1657】. 各データキューが持つ情報は次の通り【NGKI1658】. ・データキュー属性 ・データキュー管理領域 ・送信待ち行列(データキューへの送信待ち状態のタスクのキュー) ・受信待ち行列(データキューからの受信待ち状態のタスクのキュー) ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) データキュー管理領域は,データキューに送信されたデータを,送信された順 に格納しておくためのメモリ領域である.データキュー生成時に,データキュー 管理領域に格納できるデータ数を0とすることで,データキュー管理領域のサイ ズを0とすることができる【NGKI1659】. 保護機能対応カーネルにおいて,データキュー管理領域は,カーネルの用いる オブジェクト管理領域として扱われる【NGKI1660】. 送信待ち行列は,データキューに対してデータが送信できるまで待っている状 態(データキューへの送信待ち状態)のタスクが,データを送信できる順序で つながれているキューである.また,受信待ち行列は,データキューからデー タが受信できるまで待っている状態(データキューからの受信待ち状態)のタ スクが,データを受信できる順序でつながれているキューである. データキュー属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1661】. TA_TPRI 0x01U 送信待ち行列をタスクの優先度順にする 159 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 7951 7952 7953 7954 7955 7956 7957 7958 7959 7960 7961 7962 7963 7964 7965 7966 7967 7968 7969 7970 7971 7972 7973 7974 7975 7976 7977 7978 7979 7980 7981 7982 7983 7984 7985 7986 7987 7988 7989 7990 7991 7992 7993 7994 7995 7996 7997 7998 7999 8000 TA_TPRI を指定しない場合,送信待ち行列はFIFO順になる【NGKI1662】.受信待 ち行列は,FIFO順に固定されている【NGKI1663】. データキュー機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_DTQID 登録できるデータキューの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたデータキューの数 に一致)【NGKI1664】 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_DTQID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_DTQ データキューの生成〔S〕【NGKI1665】 acre_dtq データキューの生成〔TD〕【NGKI1666】 【静的API】 CRE_DTQ(ID dtqid, { ATR dtqatr, uint_t dtqcnt, void *dtqmb }) 【C言語API】 ER_ID dtqid = acre_dtq(const T_CDTQ *pk_cdtq) 【パラメータ】 ID dtqid T_CDTQ * pk_cdtq 生成するデータキューのID番号(CRE_DTQの場合) データキューの生成情報を入れたパケットへの ポインタ(静的APIを除く) *データキューの生成情報(パケットの内容) ATR dtqatr データキュー属性 uint_t dtqcnt データキュー管理領域に格納できるデータ数 void * dtqmb データキュー管理領域の先頭番地 【リターンパラメータ】 ER_ID dtqid 生成されたデータキューのID番号(正の値)ま たはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1667】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1668】 E_RSATR 予約属性 ・dtqatrが無効【NGKI1669】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI1670】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1671】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1672】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については各カーネルにおける規定の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・dtqcntが負の値〔S〕【NGKI3288】 160 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8001 8002 8003 8004 8005 8006 8007 8008 8009 8010 8011 8012 8013 8014 8015 8016 8017 8018 8019 8020 8021 8022 8023 8024 8025 8026 8027 8028 8029 8030 8031 8032 8033 8034 8035 8036 8037 8038 8039 8040 8041 8042 8043 8044 8045 8046 8047 8048 8049 8050 E_OACV E_MACV E_NOID E_NOMEM E_OBJ ・その他の条件については機能の項を参照 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1673】 メモリアクセス違反 ・pk_cdtqが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1674】 ID 番号不足 ・割り付けられるデータキューIDがない〔sD〕【NGKI1675】 メモリ不足 ・データキュー管理領域が確保できない【NGKI1676】 オブジェクト状態エラー ・dtqidで指定したデータキューが登録済み(CRE_DTQの場合) 【NGKI1677】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したデータキュー生成情報に従って,データキューを生成 する.dtqcntとdtqmbからデータキュー管理領域が設定され,格納されているデー タがない状態に初期化される【NGKI1678】.また,送信待ち行列と受信待ち行 列は,空の状態に初期化される【NGKI1679】. 静的APIにおいては,dtqidはオブジェクト識別名,dtqatrとdtqcntは整数定数 式パラメータ,dtqmbは一般定数式パラメータである【NGKI1680】.コンフィギュ レータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出することができない 【NGKI1681】. dtqmb をNULLとした場合,dtqcntで指定した数のデータを格納できるデータキュー 管理領域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される【NGKI1682】. 〔dtqmbにNULL以外を指定した場合〕 dtqmb にNULL以外を指定した場合,dtqmbを先頭番地とするデータキュー管理領 域は,アプリケーションで確保しておく必要がある【NGKI1683】.データキュー 管理領域をアプリケーションで確保するために,次のマクロを用意している 【NGKI1684】. TSZ_DTQMB(dtqcnt) dtqcnt で指定した数のデータを格納できるデータ キュー管理領域のサイズ(バイト数) TCNT_DTQ MB(dtqcnt) dtqcntで指定した数のデータを格納できるデータ キュー管理領域を確保するために必要なMB_T型の配 列の要素数 これらを用いてデータキュー管理領域を確保する方法は次の通り【NGKI1685】. MB_T < データキュー管理領域の変数名>[TCNT_DTQMB(dtqcnt)]; この時,dtqmbには<データキュー管理領域の変数名>を指定する【NGKI1686】. 161 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8051 8052 8053 8054 8055 8056 8057 8058 8059 8060 8061 8062 8063 8064 8065 8066 8067 8068 8069 8070 8071 8072 8073 8074 8075 8076 8077 8078 8079 8080 8081 8082 8083 8084 8085 8086 8087 8088 8089 8090 8091 8092 8093 8094 8095 8096 8097 8098 8099 8100 この方法に従わず,dtqmbにターゲット定義の制約に合致しない先頭番地を指定 した時には,E_PARエラーとなる【NGKI1687】.また,保護機能対応カーネルに おいて,dtqmbで指定したデータキュー管理領域がカーネル専用のメモリオブジェ クトに含まれない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI1688】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_DTQのみをサポートする【ASPS0130】.また,dtqmbには NULL のみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【ASPS0132】.ただし,動的生成機能拡張パッケージでは,acre_dtqも サポートする【ASPS0133】.acre_dtqに対しては,dtqmbにNULL以外を指定でき ないという制限はない【ASPS0134】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_DTQのみをサポートする【FMPS0119】.また,dtqmbには NULL のみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【FMPS0121】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_DTQのみをサポートする【HRPS0119】.また,dtqmbに はNULLのみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエ ラーとなる【HRPS0121】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様にあわせて,データキュー生成情報の最後のパラメータを, dtq(データキュー領域の先頭番地)から,dtqmb(データキュー管理領域の先 頭番地)に改名した.また,TSZ_DTQをTSZ_DTQMBに改名した. TCNT_DTQMB を新設し,データキュー管理領域をアプリケーションで確保する方 法を規定した. ---------------------------------------------------------------------AID_DTQ 割付け可能なデータキューIDの数の指定〔SD〕【NGKI1689】 【静的API】 AID_DTQ (uint_t nodtq) 【パラメータ】 uint_t nodtq 割付け可能なデータキューIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1690】 E_PAR パラメータエラー ・nodtqが負の値【NGKI3279】 【機能】 162 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8101 8102 8103 8104 8105 8106 8107 8108 8109 8110 8111 8112 8113 8114 8115 8116 8117 8118 8119 8120 8121 8122 8123 8124 8125 8126 8127 8128 8129 8130 8131 8132 8133 8134 8135 8136 8137 8138 8139 8140 8141 8142 8143 8144 8145 8146 8147 8148 8149 8150 nodtq で指定した数のデータキューIDを,データキューを生成するサービスコー ルによって割付け可能なデータキューIDとして確保する【NGKI1691】. nodtq は整数定数式パラメータである【NGKI1692】. ---------------------------------------------------------------------SAC_DTQ データキューのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI1693】 sac_dtq データキューのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI1694】 【静的API】 SAC_DTQ(ID dtqid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_dtq(ID dtqid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID dtqid ACVCT * p_acvct 対象データキューのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1695】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1696】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外〔s〕【NGKI1697】 E_RSATR 予約属性 ・対象データキューが属する保護ドメインの囲みの中に記述 されていない〔S〕【NGKI1698】 ・対象データキューが属するクラスの囲みの中に記述されて いない〔SM〕【NGKI1699】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録【NGKI1700】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI1701】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI1702】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象データキューは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1703】 163 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8151 8152 8153 8154 8155 8156 8157 8158 8159 8160 8161 8162 8163 8164 8165 8166 8167 8168 8169 8170 8171 8172 8173 8174 8175 8176 8177 8178 8179 8180 8181 8182 8183 8184 8185 8186 8187 8188 8189 8190 8191 8192 8193 8194 8195 8196 8197 8198 8199 8200 ・対象データキューに対してアクセス許可ベクタが設定済み〔S〕 【NGKI1704】 【機能】 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)のアクセス許可ベクタ(4 つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI1705】. 静的APIにおいては,dtqidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI1706】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_DTQ,sac_dtqをサポートしない【ASPS0135】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_DTQ,sac_dtqをサポートしない【FMPS0122】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_DTQのみをサポートする【HRPS0122】. ---------------------------------------------------------------------del_dtq データキューの削除〔TD〕【NGKI1707】 【C言語API】 ER ercd = del_dtq(ID dtqid) 【パラメータ】 ID dtqid 対象データキューのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1708】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1709】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1710】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録【NGKI1711】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1712】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象データキューは静的APIで生成された【NGKI1713】 【機能】 164 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8201 8202 8203 8204 8205 8206 8207 8208 8209 8210 8211 8212 8213 8214 8215 8216 8217 8218 8219 8220 8221 8222 8223 8224 8225 8226 8227 8228 8229 8230 8231 8232 8233 8234 8235 8236 8237 8238 8239 8240 8241 8242 8243 8244 8245 8246 8247 8248 8249 8250 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)を削除する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象データキューの登録が解除され,そのデータキューIDが未使用の状態に戻 される【NGKI1714】.また,対象データキューの送信待ち行列と受信待ち行列 につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除 される【NGKI1715】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービス コールからE_DLTエラーが返る【NGKI1716】. データキューの生成時に,データキュー管理領域がカーネルによって確保され た場合は,そのメモリ領域が解放される【NGKI1717】. 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 del_dtq により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_dtqをサポートしない【ASPS0136】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_dtqをサポートする【ASPS0137】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_dtqをサポートしない【FMPS0123】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_dtqをサポートしない【HRPS0123】. ---------------------------------------------------------------------snd_dtq データキューへの送信〔T〕【NGKI1718】 psnd_dtq データキューへの送信(ポーリング)〔T〕【NGKI1719】 ipsnd_dtq データキューへの送信(ポーリング)〔I〕【NGKI1720】 tsnd_dtq データキューへの送信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1721】 【C言語API】 ER ercd = ER ercd = ER ercd = ER ercd = snd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) psnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ipsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) tsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data, TMO tmout) 165 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8251 8252 8253 8254 8255 8256 8257 8258 8259 8260 8261 8262 8263 8264 8265 8266 8267 8268 8269 8270 8271 8272 8273 8274 8275 8276 8277 8278 8279 8280 8281 8282 8283 8284 8285 8286 8287 8288 8289 8290 8291 8292 8293 8294 8295 8296 8297 8298 8299 8300 【パラメータ】 ID dtqid intptr_t data TMO tmout 対象データキューのID番号 送信データ タイムアウト時間(tsnd_dtqの場合) 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(ipsnd_dtqを除く) 【NGKI1722】 ・タスクコンテキストからの呼出し(ipsnd_dtqの場合) 【NGKI1723】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1724】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(snd_dtqとtsnd_dtqの 場合)【NGKI1725】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(snd_dtqとtsnd_dtqの場合)【NGKI1726】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1727】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(tsnd_dtqの場合)【NGKI1728】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録〔D〕【NGKI1729】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する通常操作1が許可されていない (ipsnd_dtqを除く)〔P〕【NGKI1730】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(snd_dtqを除く)【NGKI1731】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(snd_dtqとtsnd_dtq の場合)【NGKI1732】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(snd_dtqとtsnd_dtq の場合)【NGKI1733】 【機能】 dtqidで指定したデータキュー(対象データキュー)に,dataで指定したデータ を送信する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在する場合には,受信待ち行列 の先頭のタスクが,dataで指定したデータを受信し,待ち解除される 【NGKI1734】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1735】. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,データキュー管理領域 にデータを格納するスペースがある場合には,dataで指定したデータが,FIFO 順でデータキュー管理領域に格納される【NGKI1736】. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,データキュー管理領域 にデータを格納するスペースがない場合には,自タスクはデータキューへの送 166 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8301 8302 8303 8304 8305 8306 8307 8308 8309 8310 8311 8312 8313 8314 8315 8316 8317 8318 8319 8320 8321 8322 8323 8324 8325 8326 8327 8328 8329 8330 8331 8332 8333 8334 8335 8336 8337 8338 8339 8340 8341 8342 8343 8344 8345 8346 8347 8348 8349 8350 信待ち状態となり,対象データキューの送信待ち行列につながれる 【NGKI1737】. ---------------------------------------------------------------------fsnd_dtq データキューへの強制送信〔T〕【NGKI1738】 ifsnd_dtq データキューへの強制送信〔I〕【NGKI1739】 【C言語API】 ER ercd = fsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER ercd = ifsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) 【パラメータ】 ID dtqid intptr_t data 対象データキューのID番号 送信データ 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(fsnd_dtqの場合)【NGKI1740】 ・タスクコンテキストからの呼出し(ifsnd_dtqの場合)【NGKI1741】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1742】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1743】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録〔D〕【NGKI1744】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する通常操作1が許可されていない (fsnd_dtqの場合)〔P〕【NGKI1745】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・対象データキューのデータキュー管理領域のサイズが0【NGKI1746】 【機能】 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)に,dataで指定したデータ を強制送信する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在する場合には,受信待ち行列 の先頭のタスクが,dataで指定したデータを受信し,待ち解除される 【NGKI1747】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1748】. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,データキュー管理領域 にデータを格納するスペースがある場合には,dataで指定したデータが,FIFO 順でデータキュー管理領域に格納される【NGKI1749】. 対象データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,データキュー管理領域 にデータを格納するスペースがない場合には,データキュー管理領域の先頭に 格納されたデータを削除し,空いたスペースを用いて,dataで指定したデータ が,FIFO順でデータキュー管理領域に格納される【NGKI1750】. 167 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8351 8352 8353 8354 8355 8356 8357 8358 8359 8360 8361 8362 8363 8364 8365 8366 8367 8368 8369 8370 8371 8372 8373 8374 8375 8376 8377 8378 8379 8380 8381 8382 8383 8384 8385 8386 8387 8388 8389 8390 8391 8392 8393 8394 8395 8396 8397 8398 8399 8400 ---------------------------------------------------------------------rcv_dtq データキューからの受信〔T〕【NGKI1751】 prcv_dtq データキューからの受信(ポーリング)〔T〕【NGKI1752】 trcv_dtq データキューからの受信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1753】 【C言語API】 ER ercd = rcv_dtq(ID dtqid, intptr_t *p_data) ER ercd = prcv_dtq(ID dtqid, intptr_t *p_data) ER ercd = trcv_dtq(ID dtqid, intptr_t *p_data, TMO tmout) 【パラメータ】 ID dtqid intptr_t * p_data TMO tmout 対象データキューのID番号 受信データを入れるメモリ領域へのポインタ タイムアウト時間(trcv_dtqの場合) 【リターンパラメータ】 ER ercd intptr_t data 正常終了(E_OK)またはエラーコード 受信データ 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1754】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1755】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(prcv_dtqを除く) 【NGKI1756】 E_NOS PT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(prcv_dtqを除く)【NGKI1757】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1758】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(trcv_dtqの場合)【NGKI1759】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録〔D〕【NGKI1760】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI1761】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_dataが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1762】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(rcv_dtqを除く)【NGKI1763】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(prcv_dtqを除く) 【NGKI1764】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(prcv_dtqを除く) 【NGKI1765】 【機能】 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)からデータを受信する.デー タの受信に成功した場合,受信したデータはp_dataが指すメモリ領域に返され る【NGKI3421】.具体的な振舞いは以下の通り. 168 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8401 8402 8403 8404 8405 8406 8407 8408 8409 8410 8411 8412 8413 8414 8415 8416 8417 8418 8419 8420 8421 8422 8423 8424 8425 8426 8427 8428 8429 8430 8431 8432 8433 8434 8435 8436 8437 8438 8439 8440 8441 8442 8443 8444 8445 8446 8447 8448 8449 8450 対象データキューのデータキュー管理領域にデータが格納されている場合には, データキュー管理領域の先頭に格納されたデータを受信する【NGKI1766】.ま た,送信待ち行列にタスクが存在する場合には,送信待ち行列の先頭のタスク の送信データが,FIFO順でデータキュー管理領域に格納され,そのタスクは待 ち解除される【NGKI1767】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサー ビスコールからE_OKが返る【NGKI1768】. 対象データキューのデータキュー管理領域にデータが格納されておらず,送信 待ち行列にタスクが存在する場合には,送信待ち行列の先頭のタスクの送信デー タを受信する【NGKI1769】.送信待ち行列の先頭のタスクは,待ち解除される 【NGKI3422】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1770】. 対象データキューのデータキュー管理領域にデータが格納されておらず,送信 待ち行列にタスクが存在しない場合には,自タスクはデータキューからの受信 待ち状態となり,対象データキューの受信待ち行列につながれる【NGKI1771】. ---------------------------------------------------------------------ini_dtq データキューの再初期化〔T〕【NGKI1772】 【C言語API】 ER ercd = ini_dtq(ID dtqid) 【パラメータ】 ID d tqid 対象データキューのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1773】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1774】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1775】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象データキューが未登録〔D〕【NGKI1776】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1777】 【機能】 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)を再初期化する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象データキューのデータキュー管理領域は,格納されているデータがない状 態に初期化される【NGKI1778】.また,対象データキューの送信待ち行列と受 信待ち行列につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の先頭のタスクから順 に待ち解除される【NGKI1779】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となっ 169 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8451 8452 8453 8454 8455 8456 8457 8458 8459 8460 8461 8462 8463 8464 8465 8466 8467 8468 8469 8470 8471 8472 8473 8474 8475 8476 8477 8478 8479 8480 8481 8482 8483 8484 8485 8486 8487 8488 8489 8490 8491 8492 8493 8494 8495 8496 8497 8498 8499 8500 たサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1780】. 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 ini_dtq により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. データキューを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保つのは, アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_dtq データキューの状態参照〔T〕【NGKI1781】 【C言語API】 ER ercd = ref_dtq(ID dtqid, T_RDTQ *pk_rdtq) 【パラメータ】 ID dtqid T_RDTQ * pk_rdtq 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象データキューのID番号 データキューの現在状態を入れるパケットへの ポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *データキューの現在状態(パケットの内容) ID stskid データキューの送信待ち行列の先頭のタスクの ID 番号 ID rtskid データキューの受信待ち行列の先頭のタスクの ID 番号 ui nt_t sdtqcnt データキュー管理領域に格納されているデータ の数 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1782】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1783】 E_ID 不正ID番号 ・dtqidが有効範囲外【NGKI1784】 E_NOEXS オブジェクト未登録 170 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8501 8502 8503 8504 8505 8506 8507 8508 8509 8510 8511 8512 8513 8514 8515 8516 8517 8518 8519 8520 8521 8522 8523 8524 8525 8526 8527 8528 8529 8530 8531 8532 8533 8534 8535 8536 8537 8538 8539 8540 8541 8542 8543 8544 8545 8546 8547 8548 8549 8550 E_OACV E_MACV ・対象データキューが未登録〔D〕【NGKI1785】 オブジェクトアクセス違反 ・対象データキューに対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI1786】 メモリアクセス違反 ・pk_rdtqが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1787】 【機能】 dtqid で指定したデータキュー(対象データキュー)の現在状態を参照する.参 照した現在状態は,pk_rdtqで指定したパケットに返される【NGKI1788】. 対象データキューの送信待ち行列にタスクが存在しない場合,stskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI1789】.また,受信待ち行列にタスクが存在しな い場合,rtskidにはTSK_NONE(=0)が返る【NGKI1790】. 【使用上の注意】 ref_dtq はデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_dtqを呼び出し,対象データキューの現在状態を参照した直 後に割込みが発生した場合,ref_dtqから戻ってきた時には対象データキューの 状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.4 優先度データキュー 優先度データキューは,1ワードのデータをメッセージとして,データの優先度 順で送受信するための同期・通信カーネルオブジェクトである.より大きいサ イズのメッセージを送受信したい場合には,メッセージを置いたメモリ領域へ のポインタを1ワードのデータとして送受信する方法がある.優先度データキュー は,優先度データキューIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI1791】. 各優先度データキューが持つ情報は次の通り【NGKI1792】. ・優先度データキュー属性 ・優先度データキュー管理領域 ・送信待ち行列(優先度データキューへの送信待ち状態のタスクのキュー) ・受信待ち行列(優先度データキューからの受信待ち状態のタスクのキュー) ・送信できるデータ優先度の最大値 ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 優先度データキュー管理領域は,優先度データキューに送信されたデータを, データの優先度順に格納しておくためのメモリ領域である.優先度データキュー 生成時に,優先度データキュー管理領域に格納できるデータ数を0とすることで, 優先度データキュー管理領域のサイズを0とすることができる【NGKI1793】. 保護機能対応カーネルにおいて,優先度データキュー管理領域は,カーネルの 171 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8551 8552 8553 8554 8555 8556 8557 8558 8559 8560 8561 8562 8563 8564 8565 8566 8567 8568 8569 8570 8571 8572 8573 8574 8575 8576 8577 8578 8579 8580 8581 8582 8583 8584 8585 8586 8587 8588 8589 8590 8591 8592 8593 8594 8595 8596 8597 8598 8599 8600 用いるオブジェクト管理領域として扱われる【NGKI1794】. 送信待ち行列は,優先度データキューに対してデータが送信できるまで待って いる状態(優先度データキューへの送信待ち状態)のタスクが,データを送信 できる順序でつながれているキューである.また,受信待ち行列は,優先度デー タキューからデータが受信できるまで待っている状態(優先度データキューか らの受信待ち状態)のタスクが,データを受信できる順序でつながれている キューである. 優先度データキュー属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1795】. TA_TPRI 0x01U 送信待ち行列をタスクの優先度順にする TA_TPRI を指定しない場合,送信待ち行列はFIFO順になる【NGKI1796】.受信待 ち行列は,FIFO順に固定されている【NGKI1797】. 優先度データキュー機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMIN_DPRI TMAX_DPRI データ優先度の最小値(=1) 【NGKI1798】 データ優先度の最大値 TNUM_PDQID 登録できる優先度データキューの数(動的生成対応でな いカーネルでは,静的APIによって登録された優先度デー タキューの数に一致)【NGKI1799】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,データ優先度の最大値(TMAX_DPRI)は16に固定されている 【ASPS0138】.ただし,タスク優先度拡張パッケージでは,TMAX_DPRIを256に 拡張する【ASPS0139】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,データ優先度の最大値(TMAX_DPRI)は16に固定されている 【FMPS0124】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,データ優先度の最大値(TMAX_DPRI)は16に固定されている 【HRPS0124】. 【使用上の注意】 データの優先度が使われるのは,データが優先度データキュー管理領域に格納 される場合のみであり,データを送信するタスクが送信待ち行列につながれて いる間には使われない.そのため,送信待ち行列につながれているタスクが, 優先度データキュー管理領域に格納されているデータよりも高い優先度のデー タを送信しようとしている場合でも,最初に送信されるのは,優先度データ キュー管理領域に格納されているデータである.また,TA_TPRI属性の優先度デー タキューにおいても,送信待ち行列はタスクの優先度順となり,タスクが送信 172 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8601 8602 8603 8604 8605 8606 8607 8608 8609 8610 8611 8612 8613 8614 8615 8616 8617 8618 8619 8620 8621 8622 8623 8624 8625 8626 8627 8628 8629 8630 8631 8632 8633 8634 8635 8636 8637 8638 8639 8640 8641 8642 8643 8644 8645 8646 8647 8648 8649 8650 しようとしているデータの優先度順となるわけではない. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に規定されていない機能である. ---------------------------------------------------------------------CRE_PDQ 優先度データキューの生成〔S〕【NGKI1800】 acre_pdq 優先度データキューの生成〔TD〕【NGKI1801】 【静的API】 CRE_PDQ(ID pdqid, { ATR pdqatr, uint_t pdqcnt, PRI maxdpri, void *pdqmb }) 【C言語API】 ER_ID pdqid = acre_pdq(const T_CPDQ *pk_cpdq) 【パラメータ】 ID T_CPDQ * pdqid pk_cpdq 生成する優先度データキューのID番号(CRE_PDQ の場合) 優先度データキューの生成情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *優先度データキューの生成情報(パケットの内容) ATR pdqatr 優先度データキュー属性 uint_t pdqcnt 優先度データキュー管理領域に格納できるデー タ数 PRI maxdpri 優先度データキューに送信できるデータ優先度 の最大値 void * pdqmb 優先度データキュー管理領域の先頭番地 【リターンパラメータ】 ER_ID pdqid 生成された優先度データキューのID番号(正の 値)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1802】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1803】 E_RSATR 予約属性 ・pdqatrが無効【NGKI1804】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI1805】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1806】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1807】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については各カーネルにおける規定の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・pdqcntが負の値〔S〕【NGKI3289】 ・maxdpriがTMIN_DPRIより小さい,またはTMAX_DPRIより大き い【NGKI1819】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 173 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8651 8652 8653 8654 8655 8656 8657 8658 8659 8660 8661 8662 8663 8664 8665 8666 8667 8668 8669 8670 8671 8672 8673 8674 8675 8676 8677 8678 8679 8680 8681 8682 8683 8684 8685 8686 8687 8688 8689 8690 8691 8692 8693 8694 8695 8696 8697 8698 8699 8700 E_MACV E_NOID E_NOMEM E_OBJ ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI1808】 メモリアクセス違反 ・pk_cpdqが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI1809】 ID 番号不足 ・割り付けられる優先度データキューIDがない〔sD〕【NGKI1810】 メモリ不足 ・優先度データキュー管理領域が確保できない【NGKI1811】 オブジェクト状態エラー ・pdqidで指定した優先度データキューが登録済み(CRE_PDQ の場合)【NGKI1812】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定した優先度データキュー生成情報に従って,優先度データ キューを生成する.pdqcntとpdqmbから優先度データキュー管理領域が設定され, 格納されているデータがない状態に初期化される【NGKI1813】.また,送信待 ち行列と受信待ち行列は,空の状態に初期化される【NGKI1814】. 静的APIにおいては,pdqidはオブジェクト識別名,pdqatr,pdqcnt,maxdpriは 整数定数式パラメータ,pdqmbは一般定数式パラメータである【NGKI1815】.コ ンフィギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出すること ができない【NGKI1816】. pdqmb をNULLとした場合,pdqcntで指定した数のデータを格納できる優先度デー タキュー管理領域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される 【NGKI1817】. 〔pdqmbにNULL以外を指定した場合〕 pdqmb にNULL以外を指定した場合,pdqmbを先頭番地とする優先度データキュー 管理領域は,アプリケーションで確保しておく必要がある【NGKI1820】.優先 度データキュー管理領域をアプリケーションで確保するために,次のマクロを 用意している【NGKI1821】. TSZ_PDQMB(pdqcnt) TCNT_PDQMB(pdqcnt) pdqcnt で指定した数のデータを格納できる優先度デー タキュー管理領域のサイズ(バイト数) pdqcnt で指定した数のデータを格納できる優先度デー タキュー管理領域を確保するために必要なMB_T型の 配列の要素数 これらを用いて優先度データキュー管理領域を確保する方法は次の通り 【NGKI1822】. MB_T < 優先度データキュー管理領域の変数名>[TCNT_PDQMB(pdqcnt)]; この時,pdqmbには<優先度データキュー管理領域の変数名>を指定する 【NGKI1823】. 174 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8701 8702 8703 8704 8705 8706 8707 8708 8709 8710 8711 8712 8713 8714 8715 8716 8717 8718 8719 8720 8721 8722 8723 8724 8725 8726 8727 8728 8729 8730 8731 8732 8733 8734 8735 8736 8737 8738 8739 8740 8741 8742 8743 8744 8745 8746 8747 8748 8749 8750 この方法に従わず,pdqmbにターゲット定義の制約に合致しない先頭番地を指定 した時には,E_PARエラーとなる【NGKI1824】.また,保護機能対応カーネルに いて,pdqmbで指定した優先度データキュー管理領域がカーネル専用のメモリ オブジェクトに含まれない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI1825】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_PDQのみをサポートする【ASPS0140】.また,pdqmbには NULL のみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【ASPS0142】.ただし,動的生成機能拡張パッケージでは,acre_pdqも サポートする【ASPS0143】.acre_pdqに対しては,pdqmbにNULL以外を指定でき ないという制限はない【ASPS0144】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_PDQのみをサポートする【FMPS0125】.また,pdqmbには NULL のみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【FMPS0127】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_PDQのみをサポートする【HRPS0125】.また,pdqmbに はNULLのみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエ ラーとなる【HRPS0127】. ---------------------------------------------------------------------AID_PDQ 割付け可能な優先度データキューIDの数の指定〔SD〕【NGKI1826】 【静的API】 AID_PDQ(uint_t nopdq) 【パラメータ】 uint_t nopdq 割付け可能な優先度データキューIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1827】 E_PAR パラメータエラー ・nopdqが負の値【NGKI3280】 【機能】 nopdq で指定した数の優先度データキューIDを,優先度データキューを生成する サービスコールによって割付け可能な優先度データキューIDとして確保する 【NGKI1828】. nopdq は整数定数式パラメータである【NGKI1829】. ---------------------------------------------------------------------SAC_PDQ 優先度データキューのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI1830】 sac_pdq 優先度データキューのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI1831】 175 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8751 8752 8753 8754 8755 8756 8757 8758 8759 8760 8761 8762 8763 8764 8765 8766 8767 8768 8769 8770 8771 8772 8773 8774 8775 8776 8777 8778 8779 8780 8781 8782 8783 8784 8785 8786 8787 8788 8789 8790 8791 8792 8793 8794 8795 8796 8797 8798 8799 8800 【静的API】 SAC_PDQ(ID pdqid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_pdq(ID pdqid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID pdqid ACVCT * p_acvct 対象優先度データキューのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1832】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1833】 E_ID 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外〔s〕【NGKI1834】 E_RSATR 予約属性 ・対象優先度データキューが属する保護ドメインの囲みの中 に記述されていない〔S〕【NGKI1835】 ・対象優先度データキューが属するクラスの囲みの中に記述 されていない〔SM〕【NGKI1836】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録【NGKI1837】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する管理操作が許可されてい ない〔s〕【NGKI1838】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI1839】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象優先度データキューは静的APIで生成された〔s〕【NGKI1840】 ・対象優先度データキューに対してアクセス許可ベクタが設 定済み〔S〕【NGKI1841】 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)のアクセス許 可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に 176 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8801 8802 8803 8804 8805 8806 8807 8808 8809 8810 8811 8812 8813 8814 8815 8816 8817 8818 8819 8820 8821 8822 8823 8824 8825 8826 8827 8828 8829 8830 8831 8832 8833 8834 8835 8836 8837 8838 8839 8840 8841 8842 8843 8844 8845 8846 8847 8848 8849 8850 設定する【NGKI1842】. 静的APIにおいては,pdqidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI1843】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_PDQ,sac_pdqをサポートしない【ASPS0145】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_PDQ,sac_pdqをサポートしない【FMPS0128】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_PDQのみをサポートする【HRPS0128】. ---------------------------------------------------------------------del_pd q 優先度データキューの削除〔TD〕【NGKI1844】 【C言語API】 ER ercd = del_pdq(ID pdqid) 【パラメータ】 ID pdqid 対象優先度データキューのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1845】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1846】 E_ID 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外【NGKI1847】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録【NGKI1848】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI1849】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象優先度データキューは静的APIで生成された【NGKI1850】 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)を削除する. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象優先度データキューの登録が解除され,その優先度データキューIDが未使 用の状態に戻される【NGKI1851】.また,対象優先度データキューの送信待ち 行列と受信待ち行列につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の先頭のタス 177 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8851 8852 8853 8854 8855 8856 8857 8858 8859 8860 8861 8862 8863 8864 8865 8866 8867 8868 8869 8870 8871 8872 8873 8874 8875 8876 8877 8878 8879 8880 8881 8882 8883 8884 8885 8886 8887 8888 8889 8890 8891 8892 8893 8894 8895 8896 8897 8898 8899 8900 クから順に待ち解除される【NGKI1852】.待ち解除されたタスクには,待ち状 態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1853】. 優先度データキューの生成時に,優先度データキュー管理領域がカーネルによっ て確保された場合は,そのメモリ領域が解放される【NGKI1854】. 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 del_pdq により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_pdqをサポートしない【ASPS0146】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_pdqをサポートする【ASPS0147】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_pdqをサポートしない【FMPS0129】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_pdqをサポートしない【HRPS0129】. ---------------------------------------------------------------------snd_pdq 優先度データキューへの送信〔T〕【NGKI1855】 psnd_pdq 優先度データキューへの送信(ポーリング)〔T〕【NGKI1856】 ipsnd_pdq 優先度データキューへの送信(ポーリング)〔I〕【NGKI1857】 tsnd_pdq 優先度データキューへの送信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1858】 【C言語API】 ER ercd = ER ercd = ER ercd = ER ercd = snd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) psnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) ipsnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) tsnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri, TMO tmout) 【パラメータ】 ID intptr_t PRI TMO pdqid data datapri tmout 対象優先度データキューのID番号 送信データ 送信データの優先度 タイムアウト時間(tsnd_pdqの場合) 【リターンパラメータ】 178 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8901 8902 8903 8904 8905 8906 8907 8908 8909 8910 8911 8912 8913 8914 8915 8916 8917 8918 8919 8920 8921 8922 8923 8924 8925 8926 8927 8928 8929 8930 8931 8932 8933 8934 8935 8936 8937 8938 8939 8940 8941 8942 8943 8944 8945 8946 8947 8948 8949 8950 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(ipsnd_pdqを除く) 【NGKI1859】 ・タスクコンテキストからの呼出し(ipsnd_pdqの場合)【NGKI1860】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1861】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(snd_pdqとtsnd_pdqの 場合)【NGKI1862】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(snd_pdqとtsnd_pdqの場合)【NGKI1863】 E_ID 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外【NGKI1864】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(tsnd_pdqの場合)【NGKI1865】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録〔D〕【NGKI1866】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する通常操作1が許可されてい ない(ipsnd_pdqを除く)〔P〕【NGKI1867】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(snd_pdqを除く)【NGKI1868】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(snd_pdqとtsnd_pdq の場合)【NGKI1869】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(snd_pdqとtsnd_pdq の場合)【NGKI1870】 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)に,dataで指 定したデータを,datapriで指定した優先度で送信する.具体的な振舞いは以下 の通り. 対象優先度データキューの受信待ち行列にタスクが存在する場合には,受信待 ち行列の先頭のタスクが,dataで指定したデータを受信し,待ち解除される 【NGKI1871】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1872】. 対象優先度データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,優先度データ キュー管理領域にデータを格納するスペースがある場合には,dataで指定した データが,datapriで指定したデータの優先度順で優先度データキュー管理領域 に格納される【NGKI1873】. 対象優先度データキューの受信待ち行列にタスクが存在せず,優先度データ キュー管理領域にデータを格納するスペースがない場合には,自タスクは優先 度データキューへの送信待ち状態となり,対象優先度データキューの送信待ち 行列につながれる【NGKI1874】. datapri は,TMIN_DPRI以上で,対象データキューに送信できるデータ優先度の 179 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 8951 8952 8953 8954 8955 8956 8957 8958 8959 8960 8961 8962 8963 8964 8965 8966 8967 8968 8969 8970 8971 8972 8973 8974 8975 8976 8977 8978 8979 8980 8981 8982 8983 8984 8985 8986 8987 8988 8989 8990 8991 8992 8993 8994 8995 8996 8997 8998 8999 9000 最大値以下でなければならない.そうでない場合には,E_PARエラーとなる 【NGKI1876】. ---------------------------------------------------------------------rcv_pdq 優先度データキューからの受信〔T〕【NGKI1877】 prcv_pdq 優先度データキューからの受信(ポーリング)〔T〕【NGKI1878】 trcv_pdq 優先度データキューからの受信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI1879】 【C言語API】 ER ercd = rcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri) ER ercd = prcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri) ER ercd = trcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri, TMO tmout) 【パラメータ】 ID pdqid intptr_t * p_data PRI * p_datapri TMO tmout 【リターンパラメータ】 ER ercd intptr_t data PRI datapri 対象優先度データキューのID番号 受信データを入れるメモリ領域へのポインタ 受信データの優先度を入れるメモリ領域へのポ インタ タイムアウト時間(trcv_pdqの場合) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 受信データ 受信データの優先度 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1880】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1881】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(prcv_pdqを除く)【NGKI1882】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(prcv_pdqを除く)【NGKI1883】 E_ID 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外【NGKI1884】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(trcv_pdqの場合)【NGKI1885】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録〔D〕【NGKI1886】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する通常操作2が許可されてい ない〔P〕【NGKI1887】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_dataが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1888】 ・p_datapriが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可され ていない〔P〕【NGKI1889】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(rcv_pdqを除く)【NGKI1890】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(prcv_pdqを除く) 【NGKI1891】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(prcv_pdqを除く) 【NGKI1892】 180 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9001 9002 9003 9004 9005 9006 9007 9008 9009 9010 9011 9012 9013 9014 9015 9016 9017 9018 9019 9020 9021 9022 9023 9024 9025 9026 9027 9028 9029 9030 9031 9032 9033 9034 9035 9036 9037 9038 9039 9040 9041 9042 9043 9044 9045 9046 9047 9048 9049 9050 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)からデータを 受信する.データの受信に成功した場合,受信したデータはp_dataが指すメモ リ領域に,その優先度はp_datapriが指すメモリ領域に返される【NGKI1894】. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象優先度データキューの優先度データキュー管理領域にデータが格納されて いる場合には,優先度データキュー管理領域の先頭に格納されたデータを受信 する【NGKI1893】.また,送信待ち行列にタスクが存在する場合には,送信待 ち行列の先頭のタスクの送信データが,データの優先度順で優先度データキュー 管理領域に格納され,そのタスクは待ち解除される【NGKI1895】.待ち解除さ れたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_OKが返る 【NGKI1896】. 対象優先度データキューの優先度データキュー管理領域にデータが格納されて おらず,送信待ち行列にタスクが存在する場合には,送信待ち行列の先頭のタ スクの送信データを受信する【NGKI1897】.送信待ち行列の先頭のタスクは, 待ち解除される【NGKI1899】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となった サービスコールからE_OKが返る【NGKI1900】. 対象優先度データキューの優先度データキュー管理領域にデータが格納されて おらず,送信待ち行列にタスクが存在しない場合には,自タスクは優先度デー タキューからの受信待ち状態となり,対象優先度データキューの受信待ち行列 につながれる【NGKI1901】. ---------------------------------------------------------------------ini_pdq 優先度データキューの再初期化〔T〕【NGKI1902】 【C言語API】 ER ercd = ini_pdq(ID pdqid) 【パラメータ】 ID pdqid 対象優先度データキューのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1903】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1904】 E_ID 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外【NGKI1905】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録〔D〕【NGKI1906】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI1907】 181 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9051 9052 9053 9054 9055 9056 9057 9058 9059 9060 9061 9062 9063 9064 9065 9066 9067 9068 9069 9070 9071 9072 9073 9074 9075 9076 9077 9078 9079 9080 9081 9082 9083 9084 9085 9086 9087 9088 9089 9090 9091 9092 9093 9094 9095 9096 9097 9098 9099 9100 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)を再初期化す る.具体的な振舞いは以下の通り. 対象優先度データキューの優先度データキュー管理領域は,格納されているデー タがない状態に初期化される【NGKI1908】.また,対象優先度データキューの 送信待ち行列と受信待ち行列につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の先 頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI1909】.待ち解除されたタスクには, 待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1910】. 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 ini_pdq により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 優先度データキューを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保 つのは,アプリケーションの責任である. ---------------------------------------------------------------------ref_pdq 優先度データキューの状態参照〔T〕【NGKI1911】 【C言語API】 ER ercd = ref_pdq(ID pdqid, T_RPDQ *pk_rpdq) 【パラメータ】 ID pdqid T_RPDQ * pk_rpdq 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象優先度データキューのID番号 優先度データキューの現在状態を入れるパケッ トへのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *優先度データキューの現在状態(パケットの内容) ID stskid 優先度データキューの送信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 ID rtskid 優先度データキューの受信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 uint_t spdqcnt 優先度データキュー管理領域に格納されている データの数 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー 182 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9101 9102 9103 9104 9105 9106 9107 9108 9109 9110 9111 9112 9113 9114 9115 9116 9117 9118 9119 9120 9121 9122 9123 9124 9125 9126 9127 9128 9129 9130 9131 9132 9133 9134 9135 9136 9137 9138 9139 9140 9141 9142 9143 9144 9145 9146 9147 9148 9149 9150 E_ID E_NOEXS E_OACV E_MACV ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1912】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1913】 不正ID番号 ・pdqidが有効範囲外【NGKI1914】 オブジェクト未登録 ・対象優先度データキューが未登録〔D〕【NGKI1915】 オブジェクトアクセス違反 ・対象優先度データキューに対する参照操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI1916】 メモリアクセス違反 ・pk_rpdqが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI1917】 【機能】 pdqid で指定した優先度データキュー(対象優先度データキュー)の現在状態を 参照する.参照した現在状態は,pk_rpdqで指定したパケットに返される 【NGKI1918】. 対象優先度データキューの送信待ち行列にタスクが存在しない場合,stskidに はTSK_NONE(=0)が返る【NGKI1919】.また,受信待ち行列にタスクが存在し ない場合,rtskidにはTSK_NONE(=0)が返る【NGKI1920】. 【使用上の注意】 ref_pdq はデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_pdqを呼び出し,対象優先度データキューの現在状態を参照 した直後に割込みが発生した場合,ref_pdqから戻ってきた時には対象優先度デー タキューの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.5 メールボックス メールボックスは,共有メモリ上に置いたメッセージを,FIFO順またはメッセー ジの優先度順で送受信するための同期・通信オブジェクトである.メールボッ クスは,メールボックスIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI1921】. 各メールボックスが持つ情報は次の通り【NGKI1922】. ・メールボックス属性 ・メッセージキュー ・待ち行列(メールボックスからの受信待ち状態のタスクのキュー) ・送信できるメッセージ優先度の最大値 ・優先度別のメッセージキューヘッダ領域 ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) メッセージキューは,メールボックスに送信されたメッセージを,FIFO順また はメッセージの優先度順につないでおくためのキューである. 待ち行列は,メールボックスからメッセージが受信できるまで待っている状態 183 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9151 9152 9153 9154 9155 9156 9157 9158 9159 9160 9161 9162 9163 9164 9165 9166 9167 9168 9169 9170 9171 9172 9173 9174 9175 9176 9177 9178 9179 9180 9181 9182 9183 9184 9185 9186 9187 9188 9189 9190 9191 9192 9193 9194 9195 9196 9197 9198 9199 9200 (メールボックスからの受信待ち状態)のタスクが,メッセージを受信できる 順序でつながれているキューである. メールボックス属性には,次の属性を指定することができる【NGKI1923】. TA_TPRI TA_MPRI 0x01U 0x02U 待ち行列をタスクの優先度順にする メッセージキューをメッセージの優先度順にする TA_TPRI を指定しない場合,待ち行列はFIFO順になる【NGKI1924】.TA_MPRIを 指定しない場合,メッセージキューはFIFO順になる【NGKI1925】. 優先度別のメッセージキューヘッダ領域は,TA_MPRI属性のメールボックスに対 して,メッセージキューを優先度別に設ける場合に使用する領域である. カーネルは,メールボックスに送信されたメッセージをメッセージキューにつ なぐために,メッセージの先頭のメモリ領域を使用する【NGKI1926】.そのた めアプリケーションは,メールボックスに送信するメッセージの先頭に,カー ネルが利用するためのメッセージヘッダを置かなければならない【NGKI1927】. メッセージヘッダのデータ型として,メールボックス属性にTA_MPRIが指定され ているか否かにより,以下のいずれかを用いる【NGKI1928】. T_MSG T_MSG_PRI TA_MPRI 属性でないメールボックス用のメッセージヘッダ TA_MPRI 属性のメールボックス用のメッセージヘッダ メッセージヘッダの領域は,メッセージがメッセージキューにつながれている 間(すなわち,メールボックスに送信してから受信するまでの間),カーネル によって使用される【NGKI1929】.そのため,メッセージキューにつながれて いるメッセージのメッセージヘッダの領域をアプリケーションが書き換えた場 合や,メッセージキューにつながれているメッセージを再度メールボックスに 送信した場合の動作は保証されない【NGKI1930】. TA_MPRI 属性のメールボックスにメッセージを送信する場合,アプリケーション は,メッセージの優先度を,T_MSG_PRI型のメッセージヘッダ中のmsgpriフィー ルドに設定する【NGKI1931】. 保護機能対応カーネルでは,メールボックス機能はサポートしない【NGKI1932】. メールボックス機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMIN_MPRI TMAX_MPRI メッセージ優先度の最小値(=1) 【NGKI1933】 メッセージ優先度の最大値 TNUM_MBXID 登録できるメールボックスの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたメールボックスの 数に一致)【NGKI1934】 【補足説明】 TOPPERS 新世代カーネルの現時点の実装では,優先度別のメッセージキューヘッ ダ領域は用いていない. 184 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9201 9202 9203 9204 9205 9206 9207 9208 9209 9210 9211 9212 9213 9214 9215 9216 9217 9218 9219 9220 9221 9222 9223 9224 9225 9226 9227 9228 9229 9230 9231 9232 9233 9234 9235 9236 9237 9238 9239 9240 9241 9242 9243 9244 9245 9246 9247 9248 9249 9250 【使用上の注意】 メールボックス機能は,μITRON4.0仕様との互換性のために残した機能であり, 保護機能対応カーネルではサポートしないため,使用することは推奨しない. メールボックス機能は,ほとんどの場合に,データキュー機能または優先度デー タキュー機能を用いて,メッセージを置いたメモリ領域へのポインタを送受信 する方法で置き換えることができる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,メールボックス機能をサポートする【ASPS0147】.メッセー ジ優先度の最大値(TMAX_MPRI)は16に固定されている【ASPS0148】.ただし, タスク優先度拡張パッケージでは,TMAX_MPRIを256に拡張する【ASPS0149】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,メールボックス機能をサポートする【FMPS0130】.メッセー ジ優先度の最大値(TMAX_MPRI)は16に固定されている【FMPS0131】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,メールボックス機能をサポートしない【HRPS0130】. 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_MBXID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_MBX メールボックスの生成〔Sp〕【NGKI1935】 acre_mbx メールボックスの生成〔TpD〕【NGKI1936】 【静的API】 CRE_MBX(ID mbxid, { ATR mbxatr, PRI maxmpri, void *mprihd }) 【C言語API】 ER_ID mbxid = acre_mbx(const T_CMBX *pk_cmbx) 【パラメータ】 ID mbxid T_CMBX * pk_cmbx 生成するメールボックスのID番号(CRE_MBXの場 合) メールボックスの生成情報を入れたパケットへ のポインタ(静的APIを除く) *メールボックスの生成情報(パケットの内容) ATR mbxatr メールボックス属性 PRI maxmpri 優先度メールボックスに送信できるメッセージ 優先度の最大値 void * mprihd 優先度別のメッセージキューヘッダ領域の先頭 番地 185 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9251 9252 9253 9254 9255 9256 9257 9258 9259 9260 9261 9262 9263 9264 9265 9266 9267 9268 9269 9270 9271 9272 9273 9274 9275 9276 9277 9278 9279 9280 9281 9282 9283 9284 9285 9286 9287 9288 9289 9290 9291 9292 9293 9294 9295 9296 9297 9298 9299 9300 【リターンパラメータ】 ER_ID mbxid 生成されたメールボックスのID番号(正の値) またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI1937】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI1938】 E_RSATR 予約属性 ・mbxatrが無効【NGKI1939】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI1940】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI1941】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については各カーネルにおける規定の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・maxmpriがTMIN_MPRIより小さい,またはTMAX_MPRIより大き い【NGKI1951】 E_NOID ID 番号不足 ・割り付けられるメールボックスIDがない〔sD〕【NGKI1942】 E_NOMEM メモリ不足 ・優先度別のメッセージキューヘッダ領域が確保できない 【NGKI1943】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・mbxidで指定したメールボックスが登録済み(CRE_MBXの場 合)【NGKI1944】 【機能】 各パラメータで指定したメールボックス生成情報に従って,メールボックスを 生成する.メッセージキューはつながれているメッセージがない状態に初期化 され,mprihdとmaxmpriから優先度別のメッセージキューヘッダ領域が設定され る【NGKI1945】.また,待ち行列は空の状態に初期化される【NGKI1946】. 静的APIにおいては,mbxidはオブジェクト識別名,mbxatrとmaxmpriは整数定数 式パラメータ,mprihdは一般定数式パラメータである【NGKI1947】.コンフィ ギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出することができ ない【NGKI1948】. mprihd をNULLとした場合,maxmpriの指定に合致したサイズの優先度別のメッセー ジキューヘッダ領域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される 【NGKI1949】. 【未決定事項】 mprihd にNULL以外を指定した場合の扱いについては,この仕様では規定してい ない. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_MBXのみをサポートする【ASPS0150】.また,優先度別 186 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9301 9302 9303 9304 9305 9306 9307 9308 9309 9310 9311 9312 9313 9314 9315 9316 9317 9318 9319 9320 9321 9322 9323 9324 9325 9326 9327 9328 9329 9330 9331 9332 9333 9334 9335 9336 9337 9338 9339 9340 9341 9342 9343 9344 9345 9346 9347 9348 9349 9350 のメッセージキューヘッダ領域は使用しておらず,mprihdにはNULLのみを指定 することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラーとなる 【ASPS0152】.ただし,動的生成機能拡張パッケージでは,acre_mbxもサポー トする【ASPS0153】.acre_mbxに対しても,mprihdにはNULLのみを指定するこ とができる【ASPS0154】.優先度別のメッセージキューヘッダ領域を使用しな いため,E_NOMEMが返ることはない【ASPS0155】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_MBXのみをサポートする【FMPS0132】.また,優先度別 のメッセージキューヘッダ領域は使用しておらず,mprihdにはNULLのみを指定 することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラーとなる 【FMPS0134】.優先度別のメッセージキューヘッダ領域を使用しないため, E_NOMEM が返ることはない【FMPS0135】. ---------------------------------------------------------------------AID_MBX 割付け可能なメールボックスIDの数の指定〔SpD〕【NGKI1952】 【静的API】 AID_MBX(uint_t nombx) 【パラメータ】 uint_t n ombx 割付け可能なメールボックスIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI1953】 E_PAR パラメータエラー ・nombxが負の値【NGKI3281】 【機能】 nombx で指定した数のメールボックスIDを,メールボックスを生成するサービス コールによって割付け可能なメールボックスIDとして確保する【NGKI1954】. nombx は整数定数式パラメータである【NGKI1955】. ---------------------------------------------------------------------del_mbx メールボックスの削除〔TpD〕【NGKI1956】 【C言語API】 ER ercd = del_mbx(ID mbxid) 【パラメータ】 ID mbxid 対象メールボックスのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1957】 187 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9351 9352 9353 9354 9355 9356 9357 9358 9359 9360 9361 9362 9363 9364 9365 9366 9367 9368 9369 9370 9371 9372 9373 9374 9375 9376 9377 9378 9379 9380 9381 9382 9383 9384 9385 9386 9387 9388 9389 9390 9391 9392 9393 9394 9395 9396 9397 9398 9399 9400 E_ID E_NOEXS E_OBJ ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1958】 不正ID番号 ・mbxidが有効範囲外【NGKI1959】 オブジェクト未登録 ・対象メールボックスが未登録【NGKI1960】 オブジェクト状態エラー ・対象メールボックスは静的APIで生成された【NGKI1961】 【機能】 mbxid で指定したメールボックス(対象メールボックス)を削除する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象メールボックスの登録が解除され,そのメールボックスIDが未使用の状態 に戻される【NGKI1962】.また,対象メールボックスの待ち行列につながれた タスクは,待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI1963】.待 ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが 返る【NGKI1964】. メールボックスの生成時に,優先度別のメッセージキューヘッダ領域がカーネ ルによって確保された場合は,そのメモリ領域が解放される【NGKI1965】. 【使用上の注意】 del_mbx により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_mbxをサポートしない【ASPS0156】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_mbxをサポートする【ASPS0157】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_mbxをサポートしない【FMPS0136】. ---------------------------------------------------------------------snd_mbx メールボックスへの送信〔Tp〕【NGKI1966】 【C言語API】 ER ercd = snd_mbx(ID mbxid, T_MSG *pk_msg) 【パラメータ】 ID mbxid T_MSG *pk_msg 対象メールボックスのID番号 送信メッセージの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 188 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9401 9402 9403 9404 9405 9406 9407 9408 9409 9410 9411 9412 9413 9414 9415 9416 9417 9418 9419 9420 9421 9422 9423 9424 9425 9426 9427 9428 9429 9430 9431 9432 9433 9434 9435 9436 9437 9438 9439 9440 9441 9442 9443 9444 9445 9446 9447 9448 9449 9450 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1967】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1968】 E_ID 不正ID番号 ・mbxidが有効範囲外【NGKI1969】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メールボックスが未登録〔D〕【NGKI1970】 【機能】 mbxid で指定したメールボックス(対象メールボックス)に,pk_msgで指定した メッセージを送信する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象メールボックスの待ち行列にタスクが存在する場合には,待ち行列の先頭 のタスクが,pk_msgで指定したメッセージを受信し,待ち解除される 【NGKI1971】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_OKが返る【NGKI1972】. 対象メールボックスの待ち行列にタスクが存在しない場合には,pk_msgで指定 したメッセージが,メールボックス属性のTA_MPRI指定の有無によって指定され る順序で,メッセージキューにつながれる【NGKI1973】. 対象メールボックスがTA_MPRI属性である場合には,pk_msgで指定したメッセー ジの先頭のメッセージヘッダ中のmsgpriフィールドの値が,TMIN_MPRI以上で, 対象メールボックスに送信できるメッセージ優先度の最大値以下でなければな らない.そうでない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI1975】. ---------------------------------------------------------------------rcv_mbx メールボックスからの受信〔Tp〕【NGKI1976】 prcv_mbx メールボックスからの受信(ポーリング)〔Tp〕【NGKI1977】 trcv_mbx メールボックスからの受信(タイムアウト付き)〔Tp〕【NGKI1978】 【C言語API】 ER ercd = rcv_mbx(ID mb xid, T_MSG **ppk_msg) ER ercd = prcv_mbx(ID mbxid, T_MSG **ppk_msg) ER ercd = trcv_mbx(ID mbxid, T_MSG **ppk_msg, TMO tmout) 【パラメータ】 ID mbxid T_MSG * * ppk_msg TMO tmout 【リターンパラメータ】 ER ercd T_MSG * ppk_msg 対象メールボックスのID番号 受信メッセージの先頭番地を入れるメモリ領域 へのポインタ タイムアウト時間(trcv_mbxの場合) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 受信メッセージの先頭番地 【エラーコード】 189 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9451 9452 9453 9454 9455 9456 9457 9458 9459 9460 9461 9462 9463 9464 9465 9466 9467 9468 9469 9470 9471 9472 9473 9474 9475 9476 9477 9478 9479 9480 9481 9482 9483 9484 9485 9486 9487 9488 9489 9490 9491 9492 9493 9494 9495 9496 9497 9498 9499 9500 E_CTX E_NOSPT E_ID E_PAR E_NOEXS E_TMOUT E_RLWAI E_DLT コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1979】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1980】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(prcv_mbxを除く)【NGKI1981】 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(prcv_mbxを除く)【NGKI1982】 不正ID番号 ・mbxidが有効範囲外【NGKI1983】 パラメータエラー ・tmoutが無効(trcv_mbxの場合)【NGKI1984】 オブジェクト未登録 ・対象メールボックスが未登録〔D〕【NGKI1985】 ポーリング失敗またはタイムアウト(rcv_mbxを除く)【NGKI1986】 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(prcv_mbxを除く) 【NGKI1987】 待ちオブジェクトの削除または再初期化(prcv_mbxを除く) 【NGKI1988】 【機能】 mbxid で指定したメールボックス(対象メールボックス)からメッセージを受信 する.受信したメッセージの先頭番地は,ppk_msgで指定したメモリ領域に返さ れる.具体的な振舞いは以下の通り. 対象メールボックスのメッセージキューにメッセージがつながれている場合に は,メッセージキューの先頭につながれたメッセージが取り出され,ppk_msgで 指定したメモリ領域に返される【NGKI1989】. 対象メールボックスのメッセージキューにメッセージがつながれていない場合 には,自タスクはメールボックスからの受信待ち状態となり,対象メールボッ クスの待ち行列につながれる【NGKI1990】. ---------------------------------------------------------------------ini_mbx メールボックスの再初期化〔Tp〕【NGKI1991】 【C言語API】 E R ercd = ini_mbx(ID mbxid) 【パラメータ】 ID mbxid 対象メールボックスのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI1992】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI1993】 E_ID 不正ID番号 ・mbxidが有効範囲外【NGKI1994】 E_NOEXS オブジェクト未登録 190 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9501 9502 9503 9504 9505 9506 9507 9508 9509 9510 9511 9512 9513 9514 9515 9516 9517 9518 9519 9520 9521 9522 9523 9524 9525 9526 9527 9528 9529 9530 9531 9532 9533 9534 9535 9536 9537 9538 9539 9540 9541 9542 9543 9544 9545 9546 9547 9548 9549 9550 ・対象メールボックスが未登録〔D〕【NGKI1995】 【機能】 mbxid で指定したメールボックス(対象メールボックス)を再初期化する.具体 的な振舞いは以下の通り. 対象メールボックスのメールボックス管理領域は,メッセージキューはつなが れているメッセージがない状態に初期化される【NGKI1996】.また,対象メー ルボックスの待ち行列につながれたタスクは,待ち行列の先頭のタスクから順 に待ち解除される【NGKI1997】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となっ たサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI1998】. 【使用上の注意】 ini_mbx により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. メールボックスを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保つのは, アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_mbx メールボックスの状態参照〔Tp〕【NGKI1999】 【C言語API】 ER ercd = ref_mbx(ID mbxid, T_RMBX *pk_rmbx) 【パラメータ】 ID mbxid T_RMBX * pk_rmbx 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象メールボックスのID番号 メールボックスの現在状態を入れるパケットへ のポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *メールボックスの現在状態(パケットの内容) ID wtskid メールボックスの待ち行列の先頭のタスクのID 番号 T_MSG * pk_msg メッセージキューの先頭につながれたメッセー ジの先頭番地 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2000】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2001】 191 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9551 9552 9553 9554 9555 9556 9557 9558 9559 9560 9561 9562 9563 9564 9565 9566 9567 9568 9569 9570 9571 9572 9573 9574 9575 9576 9577 9578 9579 9580 9581 9582 9583 9584 9585 9586 9587 9588 9589 9590 9591 9592 9593 9594 9595 9596 9597 9598 9599 9600 E_ID E_NOEXS 不正ID番号 ・mbxidが有効範囲外【NGKI2002】 オブジェクト未登録 ・対象メールボックスが未登録〔D〕【NGKI2003】 【機能】 mbxid で指定したメールボックス(対象メールボックス)の現在状態を参照する. 参照した現在状態は,pk_rmbxで指定したパケットに返される【NGKI2004】. 対象メールボックスの待ち行列にタスクが存在しない場合,wtskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI2005】.また,メッセージキューにメッセージが つながれていない場合,pk_msgにはNULLが返る【NGKI2006】. 【使用上の注意】 ref_mbxはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_mbxを呼び出し,対象メールボックスの現在状態を参照した 直後に割込みが発生した場合,ref_mbxから戻ってきた時には対象メールボック スの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.6 ミューテックス ミューテックスは,タスク間の排他制御を行うための同期・通信オブジェクト である.タスクは,排他制御区間に入る時にミューテックスをロックし,排他 制御区間を出る時にロック解除する.ミューテックスは,ミューテックスIDと 呼ぶID番号によって識別する【NGKI2007】. ミューテックスは,排他制御に伴う優先度逆転の時間を最小限に抑えるための 優先度上限プロトコル(priority ceiling protocol )をサポートする.ミュー テックス属性により優先度上限ミューテックスであると指定することで,その ミューテックスの操作時に,優先度上限プロトコルに従った現在優先度の制御 が行われる. 各ミューテックスが持つ情報は次の通り【NGKI2008】. ・ミューテックス属性 ・ロック状態(ロックされている状態とロック解除されている状態) ・ミューテックスをロックしているタスク ・待ち行列(ミューテックスのロック待ち状態のタスクのキュー) ・上限優先度(優先度上限ミューテックスの場合) ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 待ち行列は,ミューテックスをロックできるまで待っている状態(ミューテッ クスのロック待ち状態)のタスクが,ミューテックスをロックできる順序でつ ながれているキューである. 192 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9601 9602 9603 9604 9605 9606 9607 9608 9609 9610 9611 9612 9613 9614 9615 9616 9617 9618 9619 9620 9621 9622 9623 9624 9625 9626 9627 9628 9629 9630 9631 9632 9633 9634 9635 9636 9637 9638 9639 9640 9641 9642 9643 9644 9645 9646 9647 9648 9649 9650 上限優先度は,優先度上限ミューテックスに対してのみ有効で,ミューテック スの生成時に,そのミューテックスをロックする可能性のあるタスクのベース 優先度の中で最も高い優先度(または,それより高い優先度)に設定する 【NGKI2009】. ミューテックス属性には,次の属性を指定することができる【NGKI2010】. TA_TPRI 0x01U TA_CEILI NG 0x03U 待ち行列をタスクの優先度順にする 優先度上限ミューテックスとする.待ち行列をタス クの優先度順にする TA_TPRI ,TA_CEILINGのいずれも指定しない場合,待ち行列はFIFO順になる 【NGKI2011】. ミューテックス機能に関連して,各タスクが持つ情報は次の通り【NGKI2012】. ・ロックしているミューテックスのリスト ロックしているミューテックスのリストは,タスクの起動時に空に初期化され る【NGKI2013】. タスクの現在優先度は,そのタスクのベース優先度と,そのタスクがロックし ている優先度上限ミューテックスの優先度上限の中で,最も高い優先度に設定 される【NGKI2014】. ミューテックス機能によりタスクの現在優先度が変化する場合には,次の処理 が行われる.現在優先度を変化させるサービスコールの前後とも,当該タスク が実行できる状態である場合には,同じ優先度のタスクの中で最高優先順位と なる【NGKI2015】.そのサービスコールにより,当該タスクが実行できる状態 に遷移する場合には,同じ優先度のタスクの中で最低優先順位となる 【NGKI2016】.そのサービスコールの後で,当該タスクが待ち状態で,タスク の優先度順の待ち行列につながれている場合には,当該タスクの変更後の現在 優先度に従って,その待ち行列中での順序が変更される【NGKI2017】.待ち行 列中に同じ現在優先度のタスクがある場合には,当該タスクの順序はそれらの 中で最後になる【NGKI2018】. ミューテックス機能に関連して,タスクの終了時に行うべき処理として,タス クがロックしているミューテックスのロック解除がある.タスクの終了時にロッ クしているミューテックスが残っている場合,それらのミューテックスは,ロッ クしたのと逆の順序でロック解除される【NGKI2019】. ミューテックス機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_MTXID 登録できるミューテックスの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたミューテックスの 数に一致)【NGKI2020】 【使用上の注意】 優先度上限プロトコルには,(a) 優先度の低いタスクの排他制御区間に最大1回 193 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9651 9652 9653 9654 9655 9656 9657 9658 9659 9660 9661 9662 9663 9664 9665 9666 9667 9668 9669 9670 9671 9672 9673 9674 9675 9676 9677 9678 9679 9680 9681 9682 9683 9684 9685 9686 9687 9688 9689 9690 9691 9692 9693 9694 9695 9696 9697 9698 9699 9700 しかブロックされない,(b) タスクの実行が開始された以降は優先度の低いタ スクにブロックされないという利点があるが,これは,タスク間の同期に優先 度上限ミューテックスのみを用い,他の方法でタスクのスケジューリングに関 与しない場合に得られる利点である. これらの利点を得るためには,タスクの優先順位の回転やディスパッチの禁止 を行ってはならないことに加えて,優先度上限ミューテックスをロックしたタ スクを待ち状態にしてはならない.特に,優先度上限ミューテックスに対して, タスクがロック待ち状態になる状況に注意が必要である(優先度上限プロトコ ルでは,タスクがミューテックスのロック待ち状態になることはない). 例えば,着目するタスクAと,タスクAよりベース優先度の低いタスクBとタスク C,タスクAよりも高い上限優先度を持った優先度上限ミューテックスがある場 合を考える.タスクAがミューテックスをロックし,タスクBとタスクCがミュー テックスを待っている状況で,タスクAがミューテックスをロック解除すると, タスクBがミューテックスをロックして優先度が上がり,タスクBに切り換わる. さらにタスクBがミューテックスをロック解除すると,タスクCがミューテック スをロックして優先度が上がり,タスクCに切り換わる.タスクAが実行される のは,タスクCがミューテックスをロック解除した後である.この例では,タス クAが実行開始後に,タスクBとタスクCの排他制御区間にブロックされることに なる. 優先度上限ミューテックスに対してタスクがロック待ち状態になる状況を回避 するためには,優先度上限ミューテックスをロックする場合に,待ち状態にな らないploc_mtxを用いるのが安全である. 【補足説明】 この仕様で優先度上限プロトコルと呼んでいる方式は,オリジナルのpriority ceiling protocol とは異なるものである.この仕様の方式は,OSEK/VDX OS仕様 でもpriority ceiling protocol と呼ばれているが,学術論文や他のOSでは, immediate ceiling priority protocol ,priority protection protocol , priority ceiling emulation ,highest locker protocol などと呼ばれている. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ミューテックス機能をサポートしない【ASPS0158】.ただし, ミューテックス機能拡張パッケージを用いると,ミューテックス機能を追加す ることができる【ASPS0159】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ミューテックス機能をサポートしない【FMPS0137】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,ミューテックス機能をサポートする【HRPS0131】. 【未決定事項】 194 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9701 9702 9703 9704 9705 9706 9707 9708 9709 9710 9711 9712 9713 9714 9715 9716 9717 9718 9719 9720 9721 9722 9723 9724 9725 9726 9727 9728 9729 9730 9731 9732 9733 9734 9735 9736 9737 9738 9739 9740 9741 9742 9743 9744 9745 9746 9747 9748 9749 9750 マルチプロセッサにおいては,タスク間の同期に優先度上限ミューテックスの みを用い,他の方法でタスクのスケジューリングに関与しない場合でも,優先 度上限ミューテックスに対してタスクがロック待ち状態になる.マルチプロセッ サ対応カーネルにおける優先度上限ミューテックスの扱いについては,今後の 課題である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様の厳密な優先度制御規則を採用し,簡略化した優先度制御規則 はサポートしていない.また,μITRON4.0仕様でサポートしている優先度継承 プロトコル(priority inheritance protocol )は,現時点ではサポートしてい ない. ミューテックス機能によりタスクの現在優先度が変化する場合の振舞いは, μITRON4.0仕様では実装依存となっているが,この仕様では規定している. TNUM_ MTXIDは,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロであ る. ---------------------------------------------------------------------CRE_MTX ミューテックスの生成〔S〕【NGKI2021】 acre_mtx ミューテックスの生成〔TD〕【NGKI2022】 【静的API】 CRE_MTX(ID mtxid, { ATR mtxatr, PRI ceilpri }) 【C言語API】 ER_ID mtxid = acre_mtx(const T_CMTX *pk_cmtx) 【パラメータ】 ID mtxid T_CMTX * pk_cmtx 生成するミューテックスのID番号(CRE_MTXの 場合) ミューテックスの生成情報を入れたパケット へのポインタ(静的APIを除く) *ミューテックスの生成情報(パケットの内容) ATR mtxatr ミューテックス属性 PRI ceilpri ミューテックスの上限優先度 【リターンパラメータ】 ER_ID mtxid 生成されたミューテックスのID番号(正の値) またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2023】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2024】 E_RSATR 予約属性 ・mtxatrが無効【NGKI2025】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI2026】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2027】 195 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9751 9752 9753 9754 9755 9756 9757 9758 9759 9760 9761 9762 9763 9764 9765 9766 9767 9768 9769 9770 9771 9772 9773 9774 9775 9776 9777 9778 9779 9780 9781 9782 9783 9784 9785 9786 9787 9788 9789 9790 9791 9792 9793 9794 9795 9796 9797 9798 9799 9800 E_PAR E_OACV E_MACV E_NOID E_OBJ ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI2028】 パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2029】 メモリアクセス違反 ・pk_cmtxが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2030】 ID番号不足 ・割り付けられるミューテックスIDがない〔sD〕【NGKI2031】 オブジェクト状態エラー ・mtxidで指定したセマフォが登録済み(CRE_MTXの場合)【NGKI2032】 【機能】 各パラメータで指定したミューテックス生成情報に従って,ミューテックスを 生成する.生成されたミューテックスのロック状態はロックされていない状態 に,待ち行列は空の状態に初期化される【NGKI2033】. 静的APIにおいては,mtxidはオブジェクト識別名,mtxatrとceilpriは整数定数 式パラメータである【NGKI2034】.優先度上限ミューテックス以外の場合には, ceilpri の指定を省略することができる【NGKI2035】. 優先度上限ミューテックスを生成する場合,ceilpriは,TMIN_TPRI以上, TMAX_TPRI 以下でなければならない.そうでない場合には,E_PARエラーとなる 【NGKI2037】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのミューテックス機能拡張パッケージでは,CRE_MTXのみをサポー トする【ASPS0160】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,CRE_MTXのみをサポートする【HRPS0132】. ---------------------------------------------------------------------AID_MTX 割付け可能なミューテックスIDの数の指定〔SD〕【NGKI2038】 【静的API】 AID_MTX(uint_t nomtx) 【パラメータ】 uint_t nomtx 割付け可能なミューテックスIDの数 【エラーコード】 E_RSA TR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI2039】 E_PAR パラメータエラー ・nomtxが負の値【NGKI3282】 196 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9801 9802 9803 9804 9805 9806 9807 9808 9809 9810 9811 9812 9813 9814 9815 9816 9817 9818 9819 9820 9821 9822 9823 9824 9825 9826 9827 9828 9829 9830 9831 9832 9833 9834 9835 9836 9837 9838 9839 9840 9841 9842 9843 9844 9845 9846 9847 9848 9849 9850 【機能】 nomtx で指定した数のミューテックスIDを,ミューテックスを生成するサービス コールによって割付け可能なミューテックスIDとして確保する【NGKI2040】. nomtx は整数定数式パラメータである【NGKI2041】. ---------------------------------------------------------------------SAC_MTX ミューテックスのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI2042】 sac_mtx ミューテックスのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2043】 【静的API】 SAC_MTX(ID mtxid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_mtx(ID mtxid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID mtxid ACVCT * p_acvct 対象ミューテックスのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2044】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2045】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外〔s〕【NGKI2046】 E_RSATR 予約属性 ・対象ミューテックスが属する保護ドメインの囲みの中に記 述されていない〔S〕【NGKI2047】 ・対象ミューテックスが属するクラスの囲みの中に記述され ていない〔SM〕【NGKI2048】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録【NGKI2049】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI2050】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて 197 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9851 9852 9853 9854 9855 9856 9857 9858 9859 9860 9861 9862 9863 9864 9865 9866 9867 9868 9869 9870 9871 9872 9873 9874 9875 9876 9877 9878 9879 9880 9881 9882 9883 9884 9885 9886 9887 9888 9889 9890 9891 9892 9893 9894 9895 9896 9897 9898 9899 9900 E_OBJ いない〔s〕【NGKI2051】 オブジェクト状態エラー ・対象ミューテックスは静的APIで生成された〔s〕【NGKI2052】 ・対象ミューテックスに対してアクセス許可ベクタが設定済 み〔S〕【NGKI2053】 【機能】 mtxid で指定したミューテックス(対象ミューテックス)のアクセス許可ベクタ (4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI2054】. 静的APIにおいては,mtxidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI2055】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのミューテックス機能拡張パッケージでは,SAC_MTX,sac_mtxをサ ポートしない【ASPS0161】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,SAC_MTXのみをサポートする【HRPS0133】. ---------------------------------------------------------------------del_mtx ミューテックスの削除〔TD〕【NGKI2056】 【C言語API】 ER ercd = del_mtx(ID mtxid) 【パラメータ】 ID mtxid 対象ミューテックスのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2057】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2058】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外【NGKI2059】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録【NGKI2060】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2061】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象ミューテックスは静的APIで生成された【NGKI2062】 【機能】 198 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9901 9902 9903 9904 9905 9906 9907 9908 9909 9910 9911 9912 9913 9914 9915 9916 9917 9918 9919 9920 9921 9922 9923 9924 9925 9926 9927 9928 9929 9930 9931 9932 9933 9934 9935 9936 9937 9938 9939 9940 9941 9942 9943 9944 9945 9946 9947 9948 9949 9950 mtxid で指定したミューテックス(対象ミューテックス)を削除する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象ミューテックスの登録が解除され,そのミューテックスIDが未使用の状態 に戻される【NGKI2063】.対象ミューテックスをロックしているタスクがある 場合には,そのタスクがロックしているミューテックスのリストから対象ミュー テックスが削除され,必要な場合にはそのタスクの現在優先度が変更される 【NGKI2064】.また,対象ミューテックスの待ち行列につながれたタスクは, 待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI2065】.待ち解除され たタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る 【NGKI2066】. 【使用上の注意】 対象ミューテックスをロックしているタスクには,ミューテックスが削除され たことが通知されず,そのミューテックスをロック解除する時点でエラーとな る.これが不都合な場合には,ミューテックスをロックした状態で,ミューテッ クスを削除すればよい. del_mtx により複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのミューテックス機能拡張パッケージでは,del_mtxをサポートし ない【ASPS0162】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2 カーネルでは,del_mtxをサポートしない【HRPS0134】. ---------------------------------------------------------------------loc_mtx ミューテックスのロック〔T〕【NGKI2067】 ploc_mtx ミューテックスのロック(ポーリング)〔T〕【NGKI2068】 tloc_mtx ミューテックスのロック(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI2069】 【C言語API】 ER ercd = loc_mtx(ID mtxid) ER ercd = ploc_mtx(ID mtxid) ER ercd = tloc_mtx(ID mtxid, TMO tmout) 【パラメータ】 ID mtxid TMO tmout 対象ミューテックスのID番号 タイムアウト時間(twai_mtxの場合) 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 199 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 9951 9952 9953 9954 9955 9956 9957 9958 9959 9960 9961 9962 9963 9964 9965 9966 9967 9968 9969 9970 9971 9972 9973 9974 9975 9976 9977 9978 9979 9980 9981 9982 9983 9984 9985 9986 9987 9988 9989 9990 9991 9992 9993 9994 9995 9996 9997 9998 9999 10000 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2070】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2071】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(ploc_mtxを除く)【NGKI2072】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(ploc_mtxを除く)【NGKI2073】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外【NGKI2074】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(tloc_mtxの場合)【NGKI2075】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録〔D〕【NGKI2076】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2077】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・条件については機能の項を参照 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(loc_mtxを除く)【NGKI2078】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(ploc_mtxを除く) 【NGKI2079】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(ploc_mtxを除く) 【NGKI2080】 【機能】 mtxid で指定したミューテックス(対象ミューテックス)をロックする.具体的 な振舞いは以下の通り. 対象ミューテックスがロックされていない場合には,自タスクによってロック されている状態になる【NGKI2081】.自タスクがロックしているミューテック スのリストに対象ミューテックスが追加され,必要な場合には自タスクの現在 優先度が変更される【NGKI2082】. 対象ミューテックスが自タスク以外のタスクによってロックされている場合に は,自タスクはミューテックスのロック待ち状態となり,対象ミューテックス の待ち行列につながれる【NGKI2083】. 対象ミューテックスが自タスクによってロックされている場合には,E_ILUSEエ ラーとなる【NGKI2084】.また,対象ミューテックスが優先度上限ミューテッ クスで,その上限優先度より自タスクのベース優先度が高い場合にも, E_ILUSE エラーとなる【NGKI2085】. ---------------------------------------------------------------------unl_mtx ミューテックスのロック解除〔T〕【NGKI2086】 【C言語API】 ER ercd = unl_mtx(ID mtxid) 【パラメータ】 ID mt xid 対象ミューテックスのID番号 200 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10001 10002 10003 10004 10005 10006 10007 10008 10009 10010 10011 10012 10013 10014 10015 10016 10017 10018 10019 10020 10021 10022 10023 10024 10025 10026 10027 10028 10029 10030 10031 10032 10033 10034 10035 10036 10037 10038 10039 10040 10041 10042 10043 10044 10045 10046 10047 10048 10049 10050 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2087】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2088】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外【NGKI2089】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録〔D〕【NGKI2090】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI3273】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・条件については機能の項を参照 【機能】 mtxidで指定したミューテックス(対象ミューテックス)をロック解除する.具 体的な振舞いは以下の通り. まず,自タスクがロックしているミューテックスのリストから対象ミューテッ クスが削除され,必要な場合には自タスクの現在優先度が変更される 【NGKI2091】. 対象ミューテックスの待ち行列にタスクが存在する場合には,待ち行列の先頭 のタスクが待ち解除される【NGKI2092】.対象ミューテックスは,待ち解除さ れたタスクによってロックされている状態になる【NGKI2093】.待ち解除され たタスクがロックしているミューテックスのリストに対象ミューテックスが追 加され,必要な場合にはそのタスクの現在優先度が変更される【NGKI2094】. 待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_OKが返る 【NGKI2095】. 待ち行列にタスクが存在しない場合には,対象ミューテックスはロックされて いない状態になる【NGKI2096】. 対象ミューテックスが自タスクによってロックされていない場合には, E_ILUSEエラーとなる【NGKI2097】. ---------------------------------------------------------------------ini_mtx ミューテックスの再初期化〔T〕【NGKI2098】 【C言語API】 ER ercd = ini_mtx(ID mtxid) 【パラメータ】 ID mtxid 対象ミューテックスのID番号 【リターンパラメータ】 201 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10051 10052 10053 10054 10055 10056 10057 10058 10059 10060 10061 10062 10063 10064 10065 10066 10067 10068 10069 10070 10071 10072 10073 10074 10075 10076 10077 10078 10079 10080 10081 10082 10083 10084 10085 10086 10087 10088 10089 10090 10091 10092 10093 10094 10095 10096 10097 10098 10099 10100 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2099】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2100】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外【NGKI2101】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録〔D〕【NGKI2102】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2103】 【機能】 mtxidで指定したミューテックス(対象ミューテックス)を再初期化する.具体 的な振舞いは以下の通り. 対象ミューテックスのロック状態は,ロックされていない状態に初期化される 【NGKI2104】.対象ミューテックスをロックしているタスクがある場合には, そのタスクがロックしているミューテックスのリストから対象ミューテックス が削除され,必要な場合にはそのタスクの現在優先度が変更される 【NGKI2105】.また,対象ミューテックスの待ち行列につながれたタスクは, 待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI2106】.待ち解除され たタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る 【NGKI2107】. 【使用上の注意】 対象ミューテックスをロックしているタスクには,ミューテックスが再初期化 されたことが通知されず,そのミューテックスをロック解除する時点でエラー となる.これが不都合な場合には,ミューテックスをロックした状態で,ミュー テックスを再初期化すればよい. ini_mtxにより複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. ミューテックスを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保つの は,アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_mtx ミューテックスの状態参照〔T〕【NGKI2108】 【C言語API】 202 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10101 10102 10103 10104 10105 10106 10107 10108 10109 10110 10111 10112 10113 10114 10115 10116 10117 10118 10119 10120 10121 10122 10123 10124 10125 10126 10127 10128 10129 10130 10131 10132 10133 10134 10135 10136 10137 10138 10139 10140 10141 10142 10143 10144 10145 10146 10147 10148 10149 10150 ER ercd = ref_mtx(ID mtxid, T_RMTX *pk_rmtx) 【パラメータ】 ID mtxid T_RMTX * pk_rmtx 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象ミューテックスのID番号 ミューテックスの現在状態を入れるパケットへ のポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *ミューテックスの現在状態(パケットの内容) ID htskid ミューテックスをロックしているタスクのID番号 ID wtskid ミューテックスの待ち行列の先頭のタスクのID 番号 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2109】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2110】 E_ID 不正ID番号 ・mtxidが有効範囲外【NGKI2111】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象ミューテックスが未登録〔D〕【NGKI2112】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象ミューテックスに対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2113】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rmtxが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI2114】 【機能】 mtxidで指定したミューテックス(対象ミューテックス)の現在状態を参照する. 参照した現在状態は,pk_rmtxで指定したパケットに返される. 対象ミューテックスがロックされていない場合,htskidにはTSK_NONE(=0)が 返る【NGKI2115】. 対象ミューテックスの待ち行列にタスクが存在しない場合,wtskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI2116】. 【使用上の注意】 ref_mtxはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_mtxを呼び出し,対象ミューテックスの現在状態を参照した 直後に割込みが発生した場合,ref_mtxから戻ってきた時には対象ミューテック スの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.7 メッセージバッファ 203 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10151 10152 10153 10154 10155 10156 10157 10158 10159 10160 10161 10162 10163 10164 10165 10166 10167 10168 10169 10170 10171 10172 10173 10174 10175 10176 10177 10178 10179 10180 10181 10182 10183 10184 10185 10186 10187 10188 10189 10190 10191 10192 10193 10194 10195 10196 10197 10198 10199 10200 メッセージバッファは,指定した長さのバイト列をメッセージとして,FIFO順 で送受信するための同期・通信オブジェクトである.メッセージバッファは, メッセージバッファIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI3291】. 各メッセージバッファが持つ情報は次の通り【NGKI3292】. ・メッセージバッファ属性 ・最大メッセージサイズ ・メッセージバッファ管理領域 ・送信待ち行列(メッセージバッファへの送信待ち状態のタスクのキュー) ・受信待ち行列(メッセージバッファからの受信待ち状態のタスクのキュー) ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) メッセージバッファ管理領域は,メッセージバッファに送信されたメッセージ を,送信された順に格納しておくためのメモリ領域である.メッセージバッファ 生成時の指定により,メッセージバッファ管理領域のサイズを0とすることがで きる【NGKI3293】. 保護機能対応カーネルにおいて,メッセージバッファ管理領域は,カーネルの 用いるオブジェクト管理領域として扱われる【NGKI3294】. 送信待ち行列は,メッセージバッファに対してメッセージが送信できるまで待っ ている状態(メッセージバッファへの送信待ち状態)のタスクが,メッセージ を送信できる順序でつながれているキューである.また,受信待ち行列は,メッ セージバッファからメッセージが受信できるまで待っている状態(メッセージ バッファからの受信待ち状態)のタスクが,メッセージを受信できる順序でつ ながれているキューである. メッセージバッファ属性には,次の属性を指定することができる【NGKI3295】. TA_TPRI 0x01U 送信待ち行列をタスクの優先度順にする TA_TPRIを指定しない場合,送信待ち行列はFIFO順になる【NGKI3296】.受信待 ち行列は,FIFO順に固定されている【NGKI3297】. メッセージバッファ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_MBFID 登録できるメッセージバッファの数(動的生成対応でな いカーネルでは,静的APIによって登録されたメッセー ジバッファの数に一致)【NGKI3298】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,メッセージバッファ機能をサポートしない【ASPS0202】.た だし,メッセージバッファ機能拡張パッケージを用いると,メッセージバッファ 機能を追加することができる【ASPS0203】. 204 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10201 10202 10203 10204 10205 10206 10207 10208 10209 10210 10211 10212 10213 10214 10215 10216 10217 10218 10219 10220 10221 10222 10223 10224 10225 10226 10227 10228 10229 10230 10231 10232 10233 10234 10235 10236 10237 10238 10239 10240 10241 10242 10243 10244 10245 10246 10247 10248 10249 10250 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,メッセージバッファ機能をサポートしない【FMPS0167】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,メッセージバッファ機能をサポートしない【HRPS0168】. ただし,メッセージバッファ機能拡張パッケージを用いると,メッセージバッ ファ機能を追加することができる【HRPS0169】. 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_MBFID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_MBF メッセージバッファの生成〔S〕【NGKI3299】 acre_mbf メッセージバッファの生成〔TD〕【NGKI3300】 【静的API】 CRE_MBF(ID mbfid, { ATR mbfatr, uint_t maxmsz, SIZE mbfsz , void *mbfmb }) 【C言語API】 ER_ID mbfid = acre_mbf(const T_CMBF *pk_cmbf) 【パラメータ】 ID mbfid T_CMBF * pk_cmbf 生成するメッセージバッファのID番号(CRE_MBF の場合) メッセージバッファの生成情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *メッセージバッファの生成情報(パケットの内容) ATR mbfatr メッセージバッファ属性 uint_t maxmsz メッセージバッファの最大メッセージサイズ(バ イト数) SIZE mbfsz メッセージバッファ管理領域のサイズ(バイト数) void * mbfmb メッセージバッファ管理領域の先頭番地 【リターンパラメータ】 ER_ID mbfid 生成されたメッセージバッファのID番号(正の 値)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3301】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3302】 E_RSATR 予約属性 ・mbfatrが無効【NGKI3303】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI3304】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI3305】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI3306】 E_NOSPT 未サポート機能 205 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10251 10252 10253 10254 10255 10256 10257 10258 10259 10260 10261 10262 10263 10264 10265 10266 10267 10268 10269 10270 10271 10272 10273 10274 10275 10276 10277 10278 10279 10280 10281 10282 10283 10284 10285 10286 10287 10288 10289 10290 10291 10292 10293 10294 10295 10296 10297 10298 10299 10300 E_PAR E_OACV E_MACV E_NOID E_NOMEM E_OBJ ・条件については各カーネルにおける規定の項を参照 パラメータエラー ・maxmszが0以下【NGKI3307】 ・mbfszが負の値〔S〕【NGKI3308】 ・その他の条件については機能の項を参照 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI3309】 メモリアクセス違反 ・pk_cmbfが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI3310】 ID 番号不足 ・割り付けられるメッセージバッファIDがない〔sD〕【NGKI3311】 メモリ不足 ・メッセージバッファ管理領域が確保できない【NGKI3312】 オブジェクト状態エラー ・mbfidで指定したメッセージバッファが登録済み(CRE_MBF の場合)【NGKI3313】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したメッセージバッファ生成情報に従って,メッセージバッ ファを生成する.mbfszとmbfmbからメッセージバッファ管理領域が設定され, 格納されているメッセージがない状態に初期化される【NGKI3314】.また,送 信待ち行列と受信待ち行列は,空の状態に初期化される【NGKI3315】. 静的APIにおいては,mbfidはオブジェクト識別名,mbfatr,maxmsz,mbfszは整 数定数式パラメータ,mbfmbは一般定数式パラメータである【NGKI3316】.コン フィギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出することが できない【NGKI3317】. mbfmbをNULLとした場合,mbfszで指定したサイズのメッセージバッファ管理領 域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される【NGKI3318】. mbfszにターゲット定義の制約に合致しないサイズを指定した時には,ターゲッ ト定義の制約に合致するように大きい方に丸めたサイズで確保される 【NGKI3319】. 〔mbfmbにNULL以外を指定した場合〕 mbfmbにNULL以外を指定した場合,mbfmbとmbfszで指定したメッセージバッファ 管理領域は,アプリケーションで確保しておく必要がある【NGKI3320】.メッ セージバッファ管理領域をアプリケーションで確保するために,次のマクロを 用意している【NGKI3321】. TSZ_MBFMB(msgcnt, msgsz) TCNT_MBFMB( msgcnt, msgsz) msgsz で指定したサイズのメッセージを, msgcnt で指定した数だけ格納できるメッセー ジバッファ管理領域のサイズ(バイト数) msgsz で指定したサイズのメッセージを, msgcnt で指定した数だけ格納できるメッセー 206 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10301 10302 10303 10304 10305 10306 10307 10308 10309 10310 10311 10312 10313 10314 10315 10316 10317 10318 10319 10320 10321 10322 10323 10324 10325 10326 10327 10328 10329 10330 10331 10332 10333 10334 10335 10336 10337 10338 10339 10340 10341 10342 10343 10344 10345 10346 10347 10348 10349 10350 ジバッファ管理領域を確保するために必要 なMB_T型の配列の要素数 これらを用いてメッセージバッファ管理領域を確保する方法は次の通り 【NGKI3322】. MB_T < メッセージバッファ管理領域の変数名>[TCNT_MBFMB(msgcnt, msgsz)]; この時,mbfszにはTSZ_MBFMB(msgcnt, msgsz)を,mbfmbには<メッセージバッファ 管理領域の変数名>を指定する【NGKI3323】. この方法に従わず,mbfmbとmbfszにターゲット定義の制約に合致しない先頭番 地やサイズを指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI3324】.また,保護機 能対応カーネルにおいて,mbfmbとmbfszで指定したメッセージバッファ管理領 域がカーネル専用のメモリオブジェクトに含まれない場合,E_OBJエラーとなる 【NGKI3325】. なお,TSZ_MBFMBは,mbfmbにNULLを指定した場合にも,メッセージバッファ管 理領域のサイズを決めるために用いることができる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,CRE_MBFのみをサ ポートする【ASPS0204】.また,mbfmbにはNULLのみを指定することができる. NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラーとなる【ASPS0205】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,CRE_MBFのみをサ ポートする【HRPS0170】.また,mbfmbにはNULLのみを指定することができる. NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラーとなる【HRPS0171】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様にあわせて,メッセージバッファ生成情報の最後のパラメー タを,mbf(メッセージバッファ領域の先頭番地)から,mbfmb(メッセージバッ ファ管理領域の先頭番地)に改名した.また,TSZ_MBFをTSZ_MBFMBに改名した. TCNT_MBFMB を新設し,メッセージバッファ管理領域をアプリケーションで確保 する方法を規定した. ---------------------------------------------------------------------AID_MBF 割付け可能なメッセージバッファIDの数の指定〔SD〕【NGKI3326】 【静的API】 AID_MBF(uint_t nombf) 【パラメータ】 uint_t nombf 割付け可能なメッセージバッファIDの数 【エラーコード】 207 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10351 10352 10353 10354 10355 10356 10357 10358 10359 10360 10361 10362 10363 10364 10365 10366 10367 10368 10369 10370 10371 10372 10373 10374 10375 10376 10377 10378 10379 10380 10381 10382 10383 10384 10385 10386 10387 10388 10389 10390 10391 10392 10393 10394 10395 10396 10397 10398 10399 10400 E_RSATR E_PAR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI3327】 パラメータエラー ・nombfが負の値【NGKI3328】 【機能】 nombfで指定した数のメッセージバッファIDを,メッセージバッファを生成する サービスコールによって割付け可能なメッセージバッファIDとして確保する 【NGKI3329】. nombfは整数定数式パラメータである【NGKI3330】. ---------------------------------------------------------------------SAC_MBF メッセージバッファのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI3331】 sac_mbf メッセージバッファのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI3332】 【静的API】 SAC_MBF(ID mbfid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_mbf(ID mbfid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID mbfid ACVCT * p_acvct 対象メッセージバッファのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3333】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3334】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外〔s〕【NGKI3335】 E_RSATR 予約属性 ・対象メッセージバッファが属する保護ドメインの囲みの中 に記述されていない〔S〕【NGKI3336】 ・対象メッセージバッファが属するクラスの囲みの中に記述 されていない〔SM〕【NGKI3337】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メッセージバッファが未登録【NGKI3338】 208 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10401 10402 10403 10404 10405 10406 10407 10408 10409 10410 10411 10412 10413 10414 10415 10416 10417 10418 10419 10420 10421 10422 10423 10424 10425 10426 10427 10428 10429 10430 10431 10432 10433 10434 10435 10436 10437 10438 10439 10440 10441 10442 10443 10444 10445 10446 10447 10448 10449 10450 E_OACV E_MACV E_OBJ オブジェクトアクセス違反 ・対象メッセージバッファに対する管理操作が許可されてい ない〔s〕【NGKI3339】 メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI3340】 オブジェクト状態エラー ・対象メッセージバッファは静的APIで生成された〔s〕【NGKI3341】 ・対象メッセージバッファに対してアクセス許可ベクタが設 定済み〔S〕【NGKI3342】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)のアクセス許 可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に 設定する【NGKI3343】. 静的APIにおいては,mbfidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI3344】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,SAC_MBF, sac_mbfをサポートしない【ASPS0206】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,SAC_MBFのみをサ ポートする【HRPS0172】. ---------------------------------------------------------------------del_mbf メッセージバッファの削除〔TD〕【NGKI3345】 【C言語API】 ER ercd = del_mbf(ID mbfid) 【パラメータ】 ID mbfid 対象メッセージバッファのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3346】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3347】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外【NGKI3348】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メッセージバッファが未登録【NGKI3349】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 209 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10451 10452 10453 10454 10455 10456 10457 10458 10459 10460 10461 10462 10463 10464 10465 10466 10467 10468 10469 10470 10471 10472 10473 10474 10475 10476 10477 10478 10479 10480 10481 10482 10483 10484 10485 10486 10487 10488 10489 10490 10491 10492 10493 10494 10495 10496 10497 10498 10499 10500 E_OBJ ・対象メッセージバッファに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI3350】 オブジェクト状態エラー ・対象メッセージバッファは静的APIで生成された【NGKI3351】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)を削除する. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象メッセージバッファの登録が解除され,そのメッセージバッファIDが未使 用の状態に戻される【NGKI3352】.また,対象メッセージバッファの送信待ち 行列と受信待ち行列につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の先頭のタス クから順に待ち解除される【NGKI3353】.待ち解除されたタスクには,待ち状 態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI3354】. メッセージバッファの生成時に,メッセージバッファ管理領域がカーネルによっ て確保された場合は,そのメモリ領域が解放される【NGKI3355】. 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 del_mbfにより複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,del_mbfをサポー トしない【ASPS0207】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルのメッセージバッファ機能拡張パッケージでは,del_mbfをサポー トしない【HRPS0173】. ---------------------------------------------------------------------snd_mbf メッセージバッファへの送信〔T〕【NGKI3356】 psnd_mbf メッセージバッファへの送信(ポーリング)〔T〕【NGKI3357】 tsnd_mbf メッセージバッファへの送信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI3358】 【C言語API】 ER ercd = snd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint_t msgsz) ER ercd = psnd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint_t msgsz) ER ercd = tsnd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint _t msgsz, TMO tmout) 210 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10501 10502 10503 10504 10505 10506 10507 10508 10509 10510 10511 10512 10513 10514 10515 10516 10517 10518 10519 10520 10521 10522 10523 10524 10525 10526 10527 10528 10529 10530 10531 10532 10533 10534 10535 10536 10537 10538 10539 10540 10541 10542 10543 10544 10545 10546 10547 10548 10549 10550 【パラメータ】 ID void * uint_t TMO mbfid msg msgsz tmout 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象メッセージバッファのID番号 送信メッセージの先頭番地 送信メッセージのサイズ(バイト数) タイムアウト時間(tsnd_mbfの場合) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3359】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3360】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(psnd_mbfを除く) 【NGKI3361】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(psnd_mbfを除く)【NGKI3362】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外【NGKI3363】 E_PAR パラメータエラー ・msgszが有効範囲(0より大きく対象メッセージバッファの 最大メッセージサイズ以下)外【NGKI3364】 ・tmoutが無効(tsnd_mbfの場合)【NGKI3365】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メッセージバッファが未登録〔D〕【NGKI3366】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象メッセージバッファに対する通常操作1が許可されて いない〔P〕【NGKI3367】 E_MACV メモリアクセス違反 ・msgとmsgszが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可さ れていない〔P〕【NGKI3368】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(snd_mbfを除く)【NGKI3369】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(psnd_mbfを除く) 【NGKI3370】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(psnd_mbfを除く) 【NGKI3371】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)に,msgと msgszで指定したメッセージ(送信メッセージ)を送信する.具体的な振舞いは 以下の通り. 対象メッセージバッファの受信待ち行列にタスクが存在する場合には,受信待 ち行列の先頭のタスクが,送信メッセージを受信し,待ち解除される 【NGKI3372】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール から,受信したメッセージのサイズが返る【NGKI3373】. 対象メッセージバッファの受信待ち行列にタスクが存在しない場合で,送信待 211 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10551 10552 10553 10554 10555 10556 10557 10558 10559 10560 10561 10562 10563 10564 10565 10566 10567 10568 10569 10570 10571 10572 10573 10574 10575 10576 10577 10578 10579 10580 10581 10582 10583 10584 10585 10586 10587 10588 10589 10590 10591 10592 10593 10594 10595 10596 10597 10598 10599 10600 ち行列に自タスクより優先してメッセージを送信できるタスクが存在せず,メッ セージバッファ管理領域に送信メッセージを格納するスペースがある場合には, 送信メッセージが,FIFO順でメッセージバッファ管理領域に格納される 【NGKI3374】.ここで,送信待ち行列に自タスクより優先してメッセージを送 信できるタスクが存在するとは,送信待ち行列がFIFO順の場合には送信待ち行 列に何らかのタスクが存在すること,タスクの優先度順の場合には自タスクと 優先度が同じかより高いタスクが存在することを意味する. 対象メッセージバッファの受信待ち行列にタスクが存在しない場合で,送信待 ち行列に自タスクより優先してメッセージを送信できるタスクが存在するか, メッセージバッファ管理領域に送信メッセージを格納するスペースがない場合 には,自タスクはメッセージバッファへの送信待ち状態となり,対象メッセー ジバッファの送信待ち行列につながれる【NGKI3375】. メッセージバッファの送信待ち行列の先頭につながれているタスクが, ter_tskにより強制終了した場合や,rel_wai/irel_waiやタイムアウトにより 待ち解除された場合,新たに送信待ち行列の先頭になったタスクの送信メッセー ジを,メッセージバッファ管理領域に格納できる可能性がある.そのため,こ れらの場合には,メッセージバッファからの受信によりメッセージバッファ管 理領域に空きができた時の処理[NGKI3393][NGKI3394][NGKI3395]と同じ 処理が行われる【NGKI3419】.さらに,送信待ち行列がタスクの優先度順の時 には,chg_priやミューテックスの操作によりタスクの優先度が変化し,送信待 ち行列の先頭につながれているタスクが変わった場合にも,同じ処理が行われ る【NGKI3420】. 【使用上の注意】 送信待ち行列の先頭につながれているタスクの強制終了,待ち解除,優先度変 更に伴う処理で,送信待ち行列につながれていたタスクが複数待ち解除される 場合がある.この時,サービスコールの処理時間およびカーネル内での割込み 禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例して長くなる.特に,多くのタ スクが待ち解除される場合,カーネル内での割込み禁止時間が長くなるため, 注意が必要である. ---------------------------------------------------------------------rcv_mbf メッセージバッファからの受信〔T〕【NGKI3376】 prcv_mbf メッセージバッファからの受信(ポーリング)〔T〕【NGKI3377】 trcv_mbf メッセージバッファからの受信(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI3378】 【C言語API】 ER_UINT msgsz = rcv_mbf(ID mbfid, void *msg) ER_UINT msgsz = prcv_mbf(ID mbfid, void *msg) ER_UINT msgsz = trcv_mbf(ID mbfid, void *msg, TMO tmout) 【パラメータ】 ID mbfid void * msg TMO tmout 対象メッセージバッファのID番号 受信メッセージを入れるメモリ領域の先頭番地 タイムアウト時間(trcv_mbfの場合) 【リターンパラメータ】 ER_UINT msgsz 受信メッセージサイズ(正の値)またはエラー 212 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10601 10602 10603 10604 10605 10606 10607 10608 10609 10610 10611 10612 10613 10614 10615 10616 10617 10618 10619 10620 10621 10622 10623 10624 10625 10626 10627 10628 10629 10630 10631 10632 10633 10634 10635 10636 10637 10638 10639 10640 10641 10642 10643 10644 10645 10646 10647 10648 10649 10650 コード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3379】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3380】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(prcv_mbfを除く) 【NGKI3381】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(prcv_mbfを除く)【NGKI3382】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外【NGKI3383】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(trcv_mbfの場合)【NGKI3384】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メッセージバッファが未登録〔D〕【NGKI3385】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象メッセージバッファに対する通常操作2が許可されてい ない〔P〕【NGKI3386】 E_MACV メモリアクセス違反 ・msgを先頭番地とし,対象メッセージバッファの最大メッセー ジサイズ分のメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI3387】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(rcv_mbfを除く)【NGKI3388】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(prcv_mbfを除く) 【NGKI3389】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(prcv_mbfを除く) 【NGKI3390】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)からメッセー ジを受信する.メッセージの受信に成功した場合,受信したメッセージはmsgを 先頭番地とするメモリ領域に格納され,そのサイズはサービスコールの返値と して返される【NGKI3391】.具体的な振舞いは以下の通り. 対象メッセージバッファのメッセージバッファ管理領域にメッセージが格納さ れている場合には,メッセージバッファ管理領域の先頭に格納されたメッセー ジを受信する【NGKI3392】.また,送信待ち行列にタスクが存在し,メッセー ジバッファ管理領域に送信待ち行列の先頭のタスクの送信メッセージを格納す るスペースがある場合には,送信メッセージがFIFO順でデータキュー管理領域 に格納され,そのタスクは待ち解除される【NGKI3393】.待ち解除されたタス クには,待ち状態となったサービスコールからE_OKが返る【NGKI3394】.この 処理を,送信待ち行列にタスクが存在しなくなるか,メッセージバッファ管理 領域に送信待ち行列の先頭のタスクの送信メッセージを格納するスペースがな くなるまで繰り返す【NGKI3395】. 対象メッセージバッファのメッセージバッファ管理領域にメッセージが格納さ れておらず,送信待ち行列にタスクが存在する場合には,送信待ち行列の先頭 のタスクの送信メッセージを受信する【NGKI3396】.送信待ち行列の先頭のタ 213 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10651 10652 10653 10654 10655 10656 10657 10658 10659 10660 10661 10662 10663 10664 10665 10666 10667 10668 10669 10670 10671 10672 10673 10674 10675 10676 10677 10678 10679 10680 10681 10682 10683 10684 10685 10686 10687 10688 10689 10690 10691 10692 10693 10694 10695 10696 10697 10698 10699 10700 スクは,待ち解除される【NGKI3397】.待ち解除されたタスクには,待ち状態 となったサービスコールからE_OKが返る【NGKI3398】. 対象メッセージバッファのメッセージバッファ管理領域にメッセージが格納さ れておらず,送信待ち行列にタスクが存在しない場合には,自タスクはメッセー ジバッファからの受信待ち状態となり,対象メッセージバッファの受信待ち行 列につながれる【NGKI3399】. 【使用上の注意】 メッセージバッファ管理領域に格納されたメッセージを受信した結果,送信待 ち行列につながれていたタスクが複数待ち解除される場合がある.この時,サー ビスコールの処理時間およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除され るタスクの数に比例して長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合, カーネル内での割込み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. ---------------------------------------------------------------------ini_mbf メッセージバッファの再初期化〔T〕【NGKI3400】 【C言語API】 ER ercd = ini_mbf(ID mbfid) 【パラメータ】 ID mbfid 対象メッセージバッファのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3401】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3402】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外【NGKI3403】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象メッセージバッファが未登録〔D〕【NGKI3404】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象メッセージバッファに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI3405】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)を再初期化す る.具体的な振舞いは以下の通り. 対象メッセージバッファのメッセージバッファ管理領域は,格納されているメッ セージがない状態に初期化される【NGKI3406】.また,対象メッセージバッファ の送信待ち行列と受信待ち行列につながれたタスクは,それぞれの待ち行列の 先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI3407】.待ち解除されたタスクに は,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返る【NGKI3408】. 214 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10701 10702 10703 10704 10705 10706 10707 10708 10709 10710 10711 10712 10713 10714 10715 10716 10717 10718 10719 10720 10721 10722 10723 10724 10725 10726 10727 10728 10729 10730 10731 10732 10733 10734 10735 10736 10737 10738 10739 10740 10741 10742 10743 10744 10745 10746 10747 10748 10749 10750 【補足説明】 送信待ち行列と受信待ち行列の両方にタスクがつながれていることはないため, 別の待ち行列で待っていたタスクの間の待ち解除の順序は,規定する必要がな い. 【使用上の注意】 ini_mbfにより複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. メッセージバッファを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保 つのは,アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_mbf メッセージバッファの状態参照〔T〕【NGKI3409】 【C言語API】 ER ercd = ref_mbf(ID mbfid, T_RMBF *pk_rmbf) 【パラメータ】 ID mbfid T_RMBF * pk_rmbf 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象メッセージバッファのID番号 メッセージバッファの現在状態を入れるパケッ トへのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *メッセージバッファの現在状態(パケットの内容) ID stskid メッセージバッファの送信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 ID rtskid メッセージバッファの受信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 uint_t smbfcnt メッセージバッファ管理領域に格納されている メッセージの数 SIZE fmbfsz メッセージバッファ管理領域中の空き領域のサ イズ 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3410】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3411】 E_ID 不正ID番号 ・mbfidが有効範囲外【NGKI3412】 E_NOEXS オブジェクト未登録 215 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10751 10752 10753 10754 10755 10756 10757 10758 10759 10760 10761 10762 10763 10764 10765 10766 10767 10768 10769 10770 10771 10772 10773 10774 10775 10776 10777 10778 10779 10780 10781 10782 10783 10784 10785 10786 10787 10788 10789 10790 10791 10792 10793 10794 10795 10796 10797 10798 10799 10800 E_OACV E_MACV ・対象メッセージバッファが未登録〔D〕【NGKI3413】 オブジェクトアクセス違反 ・対象メッセージバッファに対する参照操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI3414】 メモリアクセス違反 ・pk_rmbfが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI3415】 【機能】 mbfidで指定したメッセージバッファ(対象メッセージバッファ)の現在状態を 参照する.参照した現在状態は,pk_rmbfで指定したパケットに返される 【NGKI3416】. 対象メッセージバッファの送信待ち行列にタスクが存在しない場合,stskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI3417】.また,受信待ち行列にタスクが存在しな い場合,rtskidにはTSK_NONE(=0)が返る【NGKI3418】. 【使用上の注意】 ref_mbfはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_mbfを呼び出し,対象メッセージバッファの現在状態を参照 した直後に割込みが発生した場合,ref_mbfから戻ってきた時には対象メッセー ジバッファの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.4.8 スピンロック スピンロックは,マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,割込みのマスクと プロセッサ間ロックの取得により,排他制御を行うための同期・通信オブジェ クトである.スピンロックは,スピンロックIDと呼ぶID番号によって識別する 【NGKI2117】. プロセッサ間ロックを取得している間は,CPUロック状態にすることですべての カーネル管理の割込みがマスクされ,ディスパッチが保留される【NGKI2118】. ロックが他のプロセッサに取得されている場合には,ロックが取得できるまで ループによって待つ【NGKI2119】.ロックの取得を待つ間は,CPUロック解除状 態であり,割込みはマスクされない【NGKI2120】.プロセッサ間ロックを取得 し,CPUロック状態に遷移することを,スピンロックを取得するという.また, プロセッサ間ロックを返却し,CPUロック状態を解除することを,スピンロック を返却するという. タスクが取得したスピンロックを返却せずに終了した場合や,タスク例外処理 ルーチン,割込みハンドラ,割込みサービスルーチン,タイムイベントハンド ラが取得したスピンロックを返却せずにリターンした場合には,カーネルによっ てスピンロックが返却される【NGKI2121】.また,スピンロックを取得してい ない状態で発生したCPU例外によって呼び出されたCPU例外ハンドラが,取得し たスピンロックを返却せずにリターンした場合には,カーネルによってスピン ロックが返却される【NGKI2122】.一方,拡張サービスコールからのリターン では,スピンロックは返却されない【NGKI2123】. 216 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10801 10802 10803 10804 10805 10806 10807 10808 10809 10810 10811 10812 10813 10814 10815 10816 10817 10818 10819 10820 10821 10822 10823 10824 10825 10826 10827 10828 10829 10830 10831 10832 10833 10834 10835 10836 10837 10838 10839 10840 10841 10842 10843 10844 10845 10846 10847 10848 10849 10850 各スピンロックが持つ情報は次の通り【NGKI2124】. ・スピンロック属性 ・ロック状態(取得されている状態と取得されていない状態) ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス スピンロック属性に指定できる属性はない【NGKI2125】.そのためスピンロッ ク属性には,TA_NULLを指定しなければならない【NGKI2126】. スピンロック機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_SPNID 登録できるスピンロックの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたスピンロックの数 に一致)【NGKI2127】 【補足説明】 CPUロック状態では,スピンロックを取得するサービスコールを呼び出すことが できないため,スピンロックを取得しているプロセッサが,さらにスピンロッ クを取得することはできない.そのため,1つの処理単位が,複数のスピンロッ クを取得した状態になることはできない. スピンロックを取得した状態でCPU例外が発生した場合,起動されるCPU例外ハ ンドラはカーネル管理外のCPU例外ハンドラであり(xsns_dpn,xsns_xpnとも trueを返す),CPU例外ハンドラ中でiunl_spnを呼び出してスピンロックを返却 しようとした場合の動作は保証されない.保証されないにも関わらずiunl_spn を呼び出した場合には,CPU例外ハンドラからのリターン時に元の状態に戻らな い.これは,CPUロック状態の扱いと一貫していないため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,スピンロック機能をサポートしない【ASPS0163】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,スピンロック機能をサポートする【FMPS0138】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,スピンロック機能をサポートしない【HRPS0135】. 【μITRON4.0仕様との関係】 スピンロック機能は,μITRON4.0仕様に定義されていない機能である. ---------------------------------------------------------------------CRE_SPN スピンロックの生成〔SM〕【NGKI2128】 acre_spn スピンロックの生成〔TMD〕【NGKI2129】 217 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10851 10852 10853 10854 10855 10856 10857 10858 10859 10860 10861 10862 10863 10864 10865 10866 10867 10868 10869 10870 10871 10872 10873 10874 10875 10876 10877 10878 10879 10880 10881 10882 10883 10884 10885 10886 10887 10888 10889 10890 10891 10892 10893 10894 10895 10896 10897 10898 10899 10900 【静的API】 CRE_SPN(ID spnid, { ATR spnatr }) 【C言語API】 ER_ID spnid = acre_spn(const T_CSPN *pk_cspn) 【パラメータ】 ID spnid T_CSPN * pk_cspn 生成するスピンロックのID番号(CRE_SPNの場合) スピンロックの生成情報を入れたパケットへの ポインタ(静的APIを除く) *スピンロックの生成情報(パケットの内容) ATR spnatr スピンロック属性 【リターンパラメータ】 ER_ID spnid 生成されたスピンロックのID番号(正の値)ま たはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2130】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2131】 E_RSATR 予約属性 ・spnatrが無効【NGKI2132】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI2133】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔s〕【NGKI2134】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔S〕【NGKI2135】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2136】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_cspnが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2137】 E_NOID ID 番号不足 ・割り付けられるスピンロックIDがない〔sD〕【NGKI2138】 E_NORES 資源不足 ・条件については機能の項を参照 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・spnidで指定したスピンロックが登録済み(CRE_SPNの場合) 【NGKI2139】 【機能】 各パラメータで指定したスピンロック生成情報に従って,スピンロックを生成 する.生成されたスピンロックのロック状態は,取得されていない状態に初期 化される【NGKI2140】. 静的APIにおいては,spnidはオブジェクト識別名,spnatrは整数定数式パラメー タである【NGKI2141】. 218 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10901 10902 10903 10904 10905 10906 10907 10908 10909 10910 10911 10912 10913 10914 10915 10916 10917 10918 10919 10920 10921 10922 10923 10924 10925 10926 10927 10928 10929 10930 10931 10932 10933 10934 10935 10936 10937 10938 10939 10940 10941 10942 10943 10944 10945 10946 10947 10948 10949 10950 スピンロックをハードウェアによって実現している場合には,ターゲット定義 で,生成できるスピンロックの数に上限がある【NGKI2142】.この上限を超え てスピンロックを生成しようとした場合には,E_NORESエラーとなる 【NGKI2143】. 【補足説明】 スピンロックを動的に生成する場合に,生成できるスピンロックの数の上限は AID_SPNによってチェックされるため,acre_spnでE_NORESエラーが返ることは ない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_SPNのみをサポートする【FMPS0139】. ---------------------------------------------------------------------AID_SPN 割付け可能なスピンロックIDの数の指定〔SMD〕【NGKI2144】 【静的API】 AID_SPN(uint_t nospn) 【パラメータ】 uint_t nospn 割付け可能なスピンロックIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない【NGKI2145】 E_PAR パラメータエラー ・nospnが負の値【NGKI3283】 【機能】 nospnで指定した数のスピンロックIDを,スピンロックを生成するサービスコー ルによって割付け可能なスピンロックIDとして確保する【NGKI2146】. nospnは整数定数式パラメータである【NGKI2147】. ---------------------------------------------------------------------SAC_SPN スピンロックのアクセス許可ベクタの設定〔SPM〕【NGKI2148】 sac_spn スピンロックのアクセス許可ベクタの設定〔TPMD〕【NGKI2149】 【静的API】 SAC_SPN(ID spnid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = s ac_spn(ID spnid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID spnid ACVCT * p_acvct 対象スピンロックのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ 219 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 10951 10952 10953 10954 10955 10956 10957 10958 10959 10960 10961 10962 10963 10964 10965 10966 10967 10968 10969 10970 10971 10972 10973 10974 10975 10976 10977 10978 10979 10980 10981 10982 10983 10984 10985 10986 10987 10988 10989 10990 10991 10992 10993 10994 10995 10996 10997 10998 10999 11000 インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2150】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2151】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外〔s〕【NGKI2152】 E_RSATR 予約属性 ・対象スピンロックが属する保護ドメインの囲みの中に記述 されていない〔S〕【NGKI2153】 ・対象スピンロックが属するクラスの囲みの中に記述されて いない〔S〕【NGKI2154】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録【NGKI2155】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI2156】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI2157】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象スピンロックは静的APIで生成された〔s〕【NGKI2158】 ・対象スピンロックに対してアクセス許可ベクタが設定済み〔S〕 【NGKI2159】 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)のアクセス許可ベクタ(4 つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI2160】. 静的APIにおいては,spnidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI2161】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_SPN,sac_spnをサポートしない【FMPS0140】. ---------------------------------------------------------------------del_spn スピンロックの削除〔TMD〕【NGKI2162】 220 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11001 11002 11003 11004 11005 11006 11007 11008 11009 11010 11011 11012 11013 11014 11015 11016 11017 11018 11019 11020 11021 11022 11023 11024 11025 11026 11027 11028 11029 11030 11031 11032 11033 11034 11035 11036 11037 11038 11039 11040 11041 11042 11043 11044 11045 11046 11047 11048 11049 11050 【C言語API】 ER ercd = del_spn(ID spnid) 【パラメータ】 ID spnid 対象スピンロックのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2163】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2164】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外【NGKI2165】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録【NGKI2166】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2167】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象スピンロックは静的APIで生成された【NGKI2168】 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)を削除する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象スピンロックの登録が解除され,そのスピンロックIDが未使用の状態に戻 される【NGKI2169】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_spnをサポートしない【FMPS0141】. 【未決定事項】 対象スピンロックが取得されている状態の場合の振舞いは,今後の課題である. ---------------------------------------------------------------------loc_spn スピンロックの取得〔TM〕【NGKI2170】 iloc_spn スピンロックの取得〔IM〕【NGKI2171】 【C言語API】 ER ercd = loc_spn(ID spnid) ER ercd = iloc_spn(ID spnid) 【パラメータ】 ID spnid 対象スピンロックのID番号 【リターンパラメータ】 221 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11051 11052 11053 11054 11055 11056 11057 11058 11059 11060 11061 11062 11063 11064 11065 11066 11067 11068 11069 11070 11071 11072 11073 11074 11075 11076 11077 11078 11079 11080 11081 11082 11083 11084 11085 11086 11087 11088 11089 11090 11091 11092 11093 11094 11095 11096 11097 11098 11099 11100 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(loc_spnの場合)【NGKI2172】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iloc_spnの場合)【NGKI2173】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2174】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外【NGKI2175】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録〔D〕【NGKI2176】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する通常操作1が許可されていない (loc_spnの場合)〔P〕【NGKI2177】 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)を取得する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象スピンロックが取得されていない状態である場合には,プロセッサ間ロッ クの取得を試みる【NGKI2178】.ロックが他のプロセッサによって取得されて いる状態である場合や,他のプロセッサがロックの取得に成功した場合には, ロックが返却されるまでループによって待ち,返却されたらロックの取得を試 みる【NGKI2179】.これを,ロックの取得に成功するまで繰り返す 【NGKI2180】. ロックの取得に成功した場合には,スピンロックは取得されている状態になる 【NGKI2181】.また,CPUロックフラグをセットしてCPUロック状態へ遷移し, サービスコールからリターンする【NGKI2182】. なお,複数のプロセッサがロックの取得を待っている時に,どのプロセッサが 最初にロックを取得できるかは,現時点ではターゲット定義とする【NGKI2183】. 【補足説明】 対象スピンロックが,loc_spn/iloc_spnを呼び出したプロセッサによって取得 されている状態である場合には,スピンロックの取得によりCPUロック状態になっ ているため,loc_spn/iloc_spnはE_CTXエラーとなる. プロセッサがロックを取得できる順序を,現時点ではターゲット定義としたが, リアルタイム性保証のためには,(ロックの取得待ちの間に割込みが発生しな い限りは)loc_spn/iloc_spnを呼び出した順序でロックを取得できるとするの が望ましい.ただし,ターゲットハードウェアの制限で,そのような実装がで きるとは限らないため,現時点ではターゲット定義としている. ---------------------------------------------------------------------try_spn スピンロックの取得(ポーリング)〔TM〕【NGKI2184】 itry_spn スピンロックの取得(ポーリング)〔IM〕【NGKI2185】 【C言語API】 222 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11101 11102 11103 11104 11105 11106 11107 11108 11109 11110 11111 11112 11113 11114 11115 11116 11117 11118 11119 11120 11121 11122 11123 11124 11125 11126 11127 11128 11129 11130 11131 11132 11133 11134 11135 11136 11137 11138 11139 11140 11141 11142 11143 11144 11145 11146 11147 11148 11149 11150 ER ercd = try_spn(ID spnid) ER ercd = itry_spn(ID spnid) 【パラメータ】 ID spnid 対象スピンロックのID番号 【リターンパラメータ】 ER e rcd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(try_spnの場合)【NGKI2186】 ・タスクコンテキストからの呼出し(itry_spnの場合)【NGKI2187】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2188】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外【NGKI2189】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録〔D〕【NGKI2190】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する通常操作1が許可されていない (try_spnの場合)〔P〕【NGKI2191】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)の取得を試みる.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象スピンロックが取得されていない状態である場合には,プロセッサ間ロッ クの取得を試みる【NGKI2192】.ロックの取得に成功した場合には,スピンロッ クは取得されている状態になる【NGKI2193】.また,CPUロックフラグをセット してCPUロック状態へ遷移し,サービスコールからリターンする【NGKI2194】. 対象スピンロックが他のプロセッサによって取得されている状態である場合や, ロックの取得に失敗した場合(他のプロセッサがロックの取得に成功した場合) には,E_OBJエラーとする【NGKI2195】. 【使用上の注意】 try_spn/itry_spnを,ロックの取得に成功するまで繰り返し呼び出すことによ りスピンロックを取得する方法は,loc_spn/iloc_spnによりスピンロックを取 得する方法と,プロセッサがロックを取得できる順序が異なる可能性ある. ---------------------------------------------------------------------unl_spn スピンロックの返却〔TM〕【NGKI2196】 iunl_spn スピンロックの返却〔IM〕【NGKI2197】 【C言語API】 ER ercd = unl_spn(ID spnid) ER ercd = iunl_spn(ID spnid) 223 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11151 11152 11153 11154 11155 11156 11157 11158 11159 11160 11161 11162 11163 11164 11165 11166 11167 11168 11169 11170 11171 11172 11173 11174 11175 11176 11177 11178 11179 11180 11181 11182 11183 11184 11185 11186 11187 11188 11189 11190 11191 11192 11193 11194 11195 11196 11197 11198 11199 11200 【パラメータ】 ID spnid 対象スピンロックのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(unl_spnの場合)【NGKI2198】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iunl_spnの場合)【NGKI2199】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外【NGKI2200】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録〔D〕【NGKI2201】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する通常操作1が許可されていない (unl_spnの場合)〔P〕【NGKI2202】 E_ILUSE サービスコール不正使用 ・条件については機能の項を参照 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)を返却する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象スピンロックが,unl_spn/iunl_spnを呼び出したプロセッサによって取得 されている状態である場合には,ロックを返却し,スピンロックを取得されて いない状態とする【NGKI2203】.また,CPUロックフラグをクリアし,CPUロッ ク解除状態へ遷移する【NGKI2204】. 対象スピンロックが,取得されていない状態である場合や,他のプロセッサに よって取得されている状態である場合には,E_ILUSEエラーとなる【NGKI2205】. ---------------------------------------------------------------------ref_spn スピンロックの状態参照〔TM〕【NGKI2206】 【C言語API】 ER ercd = ref_spn(ID spnid, T_RSPN *pk _rspn) 【パラメータ】 ID spnid T_RSPN * pk_rspn 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象スピンロックのID番号 スピンロックの現在状態を入れるパケットへの ポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *スピンロックの現在状態(パケットの内容) STAT spnstat ロック状態 224 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11201 11202 11203 11204 11205 11206 11207 11208 11209 11210 11211 11212 11213 11214 11215 11216 11217 11218 11219 11220 11221 11222 11223 11224 11225 11226 11227 11228 11229 11230 11231 11232 11233 11234 11235 11236 11237 11238 11239 11240 11241 11242 11243 11244 11245 11246 11247 11248 11249 11250 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2207】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2208】 E_ID 不正ID番号 ・spnidが有効範囲外【NGKI2209】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象スピンロックが未登録〔D〕【NGKI2210】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象スピンロックに対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2211】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rspnが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない)〔P〕【NGKI2212】 【機能】 spnidで指定したスピンロック(対象スピンロック)の現在状態を参照する.参 照した現在状態は,pk_rspnで指定したパケットに返される【NGKI2213】. spnstatには,対象スピンロックの現在のロック状態を表す次のいずれかの値が 返される【NGKI2214】. TSPN_UNL TSPN_LOC 0x01U 0x02U 取得されていない状態 取得されている状態 【使用上の注意】 ref_spnはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_spnを呼び出し,対象スピンロックの現在状態を参照した直 後に割込みが発生した場合,ref_spnから戻ってきた時には対象スピンロックの 状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.5 メモリプール管理機能 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,メモリプール管理機能をサポートしない【SSPS0128】. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,可変長メモリプール機能はサポートしないこととした. 【仕様決定の理由】 可変長メモリプール機能をサポートしないこととしたのは,メモリ割付けの処 理時間とフラグメンテーションの発生を考えると,最適なメモリ管理アルゴリ ズムはアプリケーション依存となるため,カーネル内で実現するより,ライブ ラリとして実現する方が適切と考えたためである. 225 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11251 11252 11253 11254 11255 11256 11257 11258 11259 11260 11261 11262 11263 11264 11265 11266 11267 11268 11269 11270 11271 11272 11273 11274 11275 11276 11277 11278 11279 11280 11281 11282 11283 11284 11285 11286 11287 11288 11289 11290 11291 11292 11293 11294 11295 11296 11297 11298 11299 11300 4.5.1 固定長メモリプール 固定長メモリプールは,生成時に決めたサイズのメモリブロック(固定長メモ リブロック)を動的に獲得・返却するための同期・通信オブジェクトである. 固定長メモリプールは,固定長メモリプールIDと呼ぶID番号で識別する 【NGKI2215】. 各固定長メモリプールが持つ情報は次の通り【NGKI2216】. ・固定長メモリプール属性 ・待ち行列(固定長メモリブロックの獲得待ち状態のタスクのキュー) ・固定長メモリプール領域 ・固定長メモリプール管理領域 ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 待ち行列は,固定長メモリブロックが獲得できるまで待っている状態(固定長 メモリブロックの獲得待ち状態)のタスクが,固定長メモリブロックを獲得で きる順序でつながれているキューである. 固定長メモリプール領域は,その中から固定長メモリブロックを割り付けるた めのメモリ領域である. 固定長メモリプール管理領域は,固定長メモリプール領域中の割当て済みの固 定長メモリブロックと未割当てのメモリ領域に関する情報を格納しておくため のメモリ領域である. 保護機能対応カーネルにおいて,固定長メモリプール管理領域は,カーネルの 用いるオブジェクト管理領域として扱われる【NGKI2217】. 固定長メモリプール属性には,次の属性を指定することができる【NGKI2218】. TA_TPRI 0x01U 待ち行列をタスクの優先度順にする TA_TPRIを指定しない場合,待ち行列はFIFO順になる【NGKI2219】. 固定長メモリプール機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_MPFID 登録できる固定長メモリプールの数(動的生成対応でない カーネルでは,静的APIによって登録された固定長メモリ プールの数に一致)【NGKI2220】 【μITRON4.0仕様との関係】 固定長メモリプール領域として確保すべき領域のサイズを返すカーネル構成マ クロ(TSZ_MPF)は廃止した.これは,固定長メモリプール領域をアプリケーショ ンで確保する方法を定めた結果,そのサイズは(blkcnt * ROUND_MPF_T(blksz)) で求めることができるようになったためである. 226 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11301 11302 11303 11304 11305 11306 11307 11308 11309 11310 11311 11312 11313 11314 11315 11316 11317 11318 11319 11320 11321 11322 11323 11324 11325 11326 11327 11328 11329 11330 11331 11332 11333 11334 11335 11336 11337 11338 11339 11340 11341 11342 11343 11344 11345 11346 11347 11348 11349 11350 TNUM_MPFID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_MPF 固定長メモリプールの生成〔S〕【NGKI2221】 acre_mpf 固定長メモリプールの生成〔TD〕【NGKI2222】 【静的API】 CRE_MPF(ID mpfid, { ATR mpfatr, uint_t blkcnt, uint_t blksz, MPF_T *mpf, void * mpfmb }) 【C言語API】 ER_ID mpfid = acre_mpf(const T_CMPF *pk_cmpf) 【パラメータ】 ID mpfid T_CMPF * pk_cmpf 生成する固定長メモリプールのID番号(CRE_MPF の場合) 固定長メモリプールの生成情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *固定長メモリプールの生成情報(パケットの内容) ATR mpfatr 固定長メモリプール属性 uint_t blkcnt 獲得できる固定長メモリブロックの数 uint_t blksz 固定長メモリブロックのサイズ(バイト数) MPF_T * mpf 固定長メモリプール領域の先頭番地 void * mpfmb 固定長メモリプール管理領域の先頭番地 【リターンパラメータ】 ER_ID mpfid 生成された固定長メモリプールのID番号(正の 値)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2223】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2224】 E_RSATR 予約属性 ・mpfatrが無効【NGKI2225】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI2226】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2227】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI2228】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については各カーネルにおける規定の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・blkcntが0以下【NGKI2229】 ・blkszが0以下【NGKI2230】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2231】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_cmpfが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて 227 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11351 11352 11353 11354 11355 11356 11357 11358 11359 11360 11361 11362 11363 11364 11365 11366 11367 11368 11369 11370 11371 11372 11373 11374 11375 11376 11377 11378 11379 11380 11381 11382 11383 11384 11385 11386 11387 11388 11389 11390 11391 11392 11393 11394 11395 11396 11397 11398 11399 11400 E_NOID E_NOMEM E_OBJ いない〔sP〕【NGKI2232】 ID 番号不足 ・割り付けられる固定長メモリプールIDがない〔sD〕【NGKI2233】 メモリ不足 ・固定長メモリプール領域が確保できない【NGKI2234】 ・固定長メモリプール管理領域が確保できない【NGKI2235】 オブジェクト状態エラー ・mpfidで指定した固定長メモリプールが登録済み(CRE_MPF の場合)【NGKI2236】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定した固定長メモリプール生成情報に従って,固定長メモリ プールを生成する.mpf,blkcnt,blkszから固定長メモリプール領域が, mpfmbとblkcntから固定長メモリプール管理領域がそれぞれ設定され,メモリプー ル領域全体が未割当ての状態に初期化される【NGKI2237】.また,待ち行列は 空の状態に初期化される【NGKI2238】. 静的APIにおいては,mpfidはオブジェクト識別名,mpfatr,blkcnt,blkszは整 数定数式パラメータ,mpfとmpfmbは一般定数式パラメータである【NGKI2239】. コンフィギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出するこ とができない【NGKI2240】. mpfをNULLとした場合,blkcntとblkszから決まるサイズの固定長メモリプール 領域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される【NGKI2241】. 保護機能対応カーネルでは,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保さ れる固定長メモリプール領域は,固定長メモリプールと同じ保護ドメインに属 し,固定長メモリプールと同じアクセス許可ベクタを持ったメモリオブジェク ト中に確保される【NGKI2242】. mpfmbをNULLとした場合,blkcntから決まるサイズの固定長メモリプール管理領 域が,コンフィギュレータまたはカーネルにより確保される【NGKI2243】. 〔mpfにNULL以外を指定した場合〕 mpfにNULL以外を指定した場合,mpfを先頭番地とする固定長メモリプール領域 は,アプリケーションで確保しておく必要がある【NGKI2244】.固定長メモリ プール領域をアプリケーションで確保するために,次のデータ型とマクロを用 意している【NGKI2245】. MPF_T 固定長メモリプール領域を確保するためのデータ型 COUNT_MPF_T(blksz) 固定長メモリブロックのサイズがblkszの固定長メモ リプール領域を確保するために,固定長メモリブロッ ク1つあたりに必要なMPF_T型の配列の要素数 要素数COUNT_MPF_T(blksz)のMPF_T型の配列のサイズ (blkszを,MPF_T型のサイズの倍数になるように大き い方に丸めた値) ROUND_MPF_T(blksz) 228 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11401 11402 11403 11404 11405 11406 11407 11408 11409 11410 11411 11412 11413 11414 11415 11416 11417 11418 11419 11420 11421 11422 11423 11424 11425 11426 11427 11428 11429 11430 11431 11432 11433 11434 11435 11436 11437 11438 11439 11440 11441 11442 11443 11444 11445 11446 11447 11448 11449 11450 これらを用いて固定長メモリプール領域を確保する方法は次の通り【NGKI2246】. MPF_T < 固定長メモリプール領域の変数名>[(blkcnt) * COUNT_MPF_T(blksz)]; この時,mpfには<固定長メモリプール領域の変数名>を指定する【NGKI2247】. これ以外の方法で固定長メモリプール領域を確保する場合には,上記の配列と 同じサイズのメモリ領域を確保しなければならない【NGKI2248】.また,その 先頭番地がターゲット定義の制約に合致していなければならない.mpfにターゲッ ト定義の制約に合致しない先頭番地を指定した時には,E_PARエラーとなる 【NGKI2249】. 保護機能対応カーネルでは,アプリケーションで確保する固定長メモリプール 領域は,カーネルに登録されたメモリオブジェクトに含まれていなければなら ない.指定した固定長メモリプール領域が,カーネルに登録されたメモリオブ ジェクトに含まれていない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI2251】. 〔mpfmbにNULL以外を指定した場合〕 mpfmbにNULL以外を指定した場合,mpfmbを先頭番地とする固定長メモリプール 管理領域は,アプリケーションで確保しておく必要がある【NGKI2252】.固定 長メモリプール管理領域をアプリケーションで確保するために,次のマクロを 用意している【NGKI2253】. TSZ_MPFMB(blkcnt) TCNT_MPFMB(blkcnt) blkcnt で指定した数の固定長メモリブロックを管理 することができる固定長メモリプール管理領域のサ イズ(バイト数) blkcnt で指定した数の固定長メモリブロックを管理 することができる固定長メモリプール管理領域を確 保するために必要なMB_T型の配列の要素数 これらを用いて固定長メモリプール管理領域を確保する方法は次の通り 【NGKI2254】. MB_T < 固定長メモリプール管理領域の変数名>[TCNT_MPFMB(blkcnt)]; この時,mpfmbには<固定長メモリプール管理領域の変数名>を指定する 【NGKI2255】. この方法に従わず,mpfmbにターゲット定義の制約に合致しない先頭番地を指定 した時には,E_PARエラーとなる【NGKI2256】.また,保護機能対応カーネルに おいて,mpfmbで指定した固定長メモリプール管理領域がカーネル専用のメモリ オブジェクトに含まれない場合,E_OBJエラーとなる【NGKI2257】. 【補足説明】 保護機能対応カーネルにおいて,固定長メモリプール領域をアプリケーション で確保する場合には,固定長メモリプール領域が属する保護ドメインとアクセ ス権の設定は変更されない.これらを適切に設定することは,アプリケーショ 229 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11451 11452 11453 11454 11455 11456 11457 11458 11459 11460 11461 11462 11463 11464 11465 11466 11467 11468 11469 11470 11471 11472 11473 11474 11475 11476 11477 11478 11479 11480 11481 11482 11483 11484 11485 11486 11487 11488 11489 11490 11491 11492 11493 11494 11495 11496 11497 11498 11499 11500 ンの責任である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_MPFのみをサポートする【ASPS0164】.また,mpfmbには NULLのみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【ASPS0166】.ただし,動的生成機能拡張パッケージでは,acre_mpfも サポートする【ASPS0167】.acre_mpfに対しては,mpfmbにNULL以外を指定でき ないという制限はない【ASPS0168】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_MPFのみをサポートする【FMPS0142】.また,mpfmbには NULLのみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエラー となる【FMPS0144】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,CRE_MPFのみをサポートする【HRPS0136】.また,mpfmbに はNULLのみを指定することができる.NULL以外を指定した場合には,E_NOSPTエ ラーとなる【HRPS0138】. 【μITRON4.0仕様との関係】 mpfのデータ型をMPF_T *に変更した.COUNT_MPF_TとROUND_MPF_Tを新設し,固 定長メモリプール領域をアプリケーションで確保する方法を規定した.また, μITRON4.0/PX仕様にあわせて,固定長メモリプール生成情報に,mpfmbを追加 した. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 TCNT_MPFMB を新設し,固定長メモリプール管理領域をアプリケーションで確保 する方法を規定した. ---------------------------------------------------------------------AID_MPF 割付け可能な固定長メモリプールIDの数の指定〔SD〕【NGKI2258】 【静的API】 AID_MPF(uint_t nompf) 【パラメータ】 uint_t nompf 割付け可能な固定長メモリプールIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI2259】 E_PAR パラメータエラー ・nompfが負の値【NGKI3284】 【機能】 230 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11501 11502 11503 11504 11505 11506 11507 11508 11509 11510 11511 11512 11513 11514 11515 11516 11517 11518 11519 11520 11521 11522 11523 11524 11525 11526 11527 11528 11529 11530 11531 11532 11533 11534 11535 11536 11537 11538 11539 11540 11541 11542 11543 11544 11545 11546 11547 11548 11549 11550 nompfで指定した数の固定長メモリプールIDを,固定長メモリプールを生成する サービスコールによって割付け可能な固定長メモリプールIDとして確保する 【NGKI2260】. nompfは整数定数式パラメータである【NGKI2261】. ---------------------------------------------------------------------SAC_MPF 固定長メモリプールのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI2262】 sac_mpf 固定長メモリプールのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2263】 【静的API】 SAC_MPF(ID mpfid, { ACPTN acptn1, ACPTN a cptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_mpf(ID mpfid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID mpfid ACVCT * p_acvct 対象固定長メモリプールのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2264】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2265】 E_ID 不正ID番号 ・mpfidが有効範囲外〔s〕【NGKI2266】 E_RSATR 予約属性 ・対象固定長メモリプールが属する保護ドメインの囲みの中 に記述されていない〔S〕【NGKI2267】 ・対象固定長メモリプールが属するクラスの囲みの中に記述 されていない〔SM〕【NGKI2268】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録【NGKI2269】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する管理操作が許可されてい ない〔s〕【NGKI2270】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI2271】 E_OBJ オブジェクト状態エラー 231 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11551 11552 11553 11554 11555 11556 11557 11558 11559 11560 11561 11562 11563 11564 11565 11566 11567 11568 11569 11570 11571 11572 11573 11574 11575 11576 11577 11578 11579 11580 11581 11582 11583 11584 11585 11586 11587 11588 11589 11590 11591 11592 11593 11594 11595 11596 11597 11598 11599 11600 ・対象固定長メモリプールは静的APIで生成された〔s〕【NGKI2272】 ・対象固定長メモリプールに対してアクセス許可ベクタが設 定済み〔S〕【NGKI2273】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)のアクセス許 可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に 設定する【NGKI2274】.対象固定長メモリプールの固定長メモリプール領域が コンフィギュレータまたはカーネルにより確保されたものである場合には,固 定長メモリプール領域のアクセス許可ベクタも,各パラメータで指定した値に 設定する【NGKI2275】. 静的APIにおいては,mpfidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI2276】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_MPF,sac_mpfをサポートしない【ASPS0169】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_MPF,sac_mpfをサポートしない【FMPS0145】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,SAC_MPFのみをサポートする【HRPS0139】. ---------------------------------------------------------------------del_mpf 固定長メモリプールの削除〔TD〕【NGKI2277】 【C言語API】 ER ercd = del_mpf(ID mpfid) 【パラメータ】 ID mpfid 対象固定長メモリプールのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2278】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2279】 E_ID 不正ID番号 ・mpfidが有効範囲外【NGKI2280】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録【NGKI2281】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI2282】 232 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11601 11602 11603 11604 11605 11606 11607 11608 11609 11610 11611 11612 11613 11614 11615 11616 11617 11618 11619 11620 11621 11622 11623 11624 11625 11626 11627 11628 11629 11630 11631 11632 11633 11634 11635 11636 11637 11638 11639 11640 11641 11642 11643 11644 11645 11646 11647 11648 11649 11650 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象固定長メモリプールは静的APIで生成された【NGKI2283】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)を削除する. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象固定長メモリプールの登録が解除され,その固定長メモリプールIDが未使 用の状態に戻される【NGKI2284】.また,対象固定長メモリプールの待ち行列 につながれたタスクは,待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される 【NGKI2285】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコール からE_DLTエラーが返る【NGKI2286】. 【使用上の注意】 del_mpfにより複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_mpfをサポートしない【ASPS0170】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_mpfをサポートする【ASPS0171】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_mpfをサポートしない【FMPS0146】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,del_mpfをサポートしない【HRPS0140】. ---------------------------------------------------------------------get_mpf 固定長メモリブロックの獲得〔T〕【NGKI2287】 pget_mpf 固定長メモリブロックの獲得(ポーリング)〔T〕【NGKI2288】 tget_mpf 固定長メモリブロックの獲得(タイムアウト付き)〔T〕【NGKI2289】 【C言語API】 ER ercd = get_mpf(ID mpfid, void **p_blk) ER ercd = pget_mpf(ID mpfid, void **p_blk) ER ercd = tget_mpf(ID mpfid, void **p_blk, TMO tmout) 【パラメータ】 ID mpfid void ** p_blk TMO tmout 対象固定長メモリプールのID番号 獲得した固定長メモリブロックの先頭番地を入 れるメモリ領域へのポインタ タイムアウト時間(twai_mpfの場合) 【リターンパラメータ】 233 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11651 11652 11653 11654 11655 11656 11657 11658 11659 11660 11661 11662 11663 11664 11665 11666 11667 11668 11669 11670 11671 11672 11673 11674 11675 11676 11677 11678 11679 11680 11681 11682 11683 11684 11685 11686 11687 11688 11689 11690 11691 11692 11693 11694 11695 11696 11697 11698 11699 11700 ER void * ercd blk 正常終了(E_OK)またはエラーコード 獲得した固定長メモリブロックの先頭番地 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2290】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2291】 ・ディスパッチ保留状態からの呼出し(pget_mpfを除く) 【NGKI2292】 E_NOSPT 未サポート機能 ・制約タスクからの呼出し(pget_mpfを除く)【NGKI2293】 E_ID 不正ID番号 ・mpfidが有効範囲外【NGKI2294】 E_PAR パラメータエラー ・tmoutが無効(tget_mpfの場合)【NGKI2295】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録〔D〕【NGKI2296】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する通常操作1が許可されてい ない〔P〕【NGKI2297】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_blkが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されてい ない)〔P〕【NGKI2298】 E_TMOUT ポーリング失敗またはタイムアウト(get_mpfを除く)【NGKI2299】 E_RLWAI 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除(pget_mpfを除く) 【NGKI2300】 E_DLT 待ちオブジェクトの削除または再初期化(pget_mpfを除く) 【NGKI2301】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)から固定長メ モリブロックを獲得し,その先頭番地をp_blkが指すメモリ領域に返す.具体的 な振舞いは以下の通り. 対象固定長メモリプールの固定長メモリプール領域の中に,固定長メモリブロッ クを割り付けることのできる未割当てのメモリ領域がある場合には,固定長メ モリブロックが1つ割り付けられ,その先頭番地がblkに返される【NGKI2302】. 未割当てのメモリ領域がない場合には,自タスクは固定長メモリプールの獲得 待ち状態となり,対象固定長メモリプールの待ち行列につながれる【NGKI2303】. ---------------------------------------------------------------------rel_mpf 固定長メモリブロックの返却〔T〕【NGKI2304】 【C言語API】 ER ercd = rel_mpf(ID mpfid, void *blk) 【パラメータ】 ID mpfid void * blk 対象固定長メモリプールのID番号 返却する固定長メモリブロックの先頭番地 234 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11701 11702 11703 11704 11705 11706 11707 11708 11709 11710 11711 11712 11713 11714 11715 11716 11717 11718 11719 11720 11721 11722 11723 11724 11725 11726 11727 11728 11729 11730 11731 11732 11733 11734 11735 11736 11737 11738 11739 11740 11741 11742 11743 11744 11745 11746 11747 11748 11749 11750 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2305】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2306】 E_ID 不正ID番号 ・mpfidが有効範囲外【NGKI2307】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録〔D〕【NGKI2308】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する通常操作2が許可されてい ない〔P〕【NGKI2309】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)に,blkで指 定した固定長メモリブロックを返却する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象固定長メモリプールの待ち行列にタスクが存在する場合には,待ち行列の 先頭のタスクが,blkで指定した固定長メモリブロックを獲得し,待ち解除され る【NGKI2310】.待ち解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコー ルからE_OKが返る【NGKI2311】. 待ち行列にタスクが存在しない場合には,blkで指定した固定長メモリブロック は,対象固定長メモリプールのメモリプール領域に返却される【NGKI2312】. blkが,対象固定長メモリプールから獲得した固定長メモリブロックの先頭番地 でない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2313】. ---------------------------------------------------------------------ini_mpf 固定長メモリプールの再初期化〔T〕【NGKI2314】 【C言語API】 ER ercd = ini_mpf(ID mpfid) 【パラメータ】 ID mpfid 対象固定長メモリプールのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2315】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2316】 E_ID 不正ID番号 235 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11751 11752 11753 11754 11755 11756 11757 11758 11759 11760 11761 11762 11763 11764 11765 11766 11767 11768 11769 11770 11771 11772 11773 11774 11775 11776 11777 11778 11779 11780 11781 11782 11783 11784 11785 11786 11787 11788 11789 11790 11791 11792 11793 11794 11795 11796 11797 11798 11799 11800 E_NOEXS E_OACV ・mpfidが有効範囲外【NGKI2317】 オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録〔D〕【NGKI2318】 オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する管理操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI2319】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)を再初期化す る.具体的な振舞いは以下の通り. 対象固定長メモリプールのメモリプール領域全体が未割当ての状態に初期化さ れる【NGKI2320】.また,対象固定長メモリプールの待ち行列につながれたタ スクは,待ち行列の先頭のタスクから順に待ち解除される【NGKI2321】.待ち 解除されたタスクには,待ち状態となったサービスコールからE_DLTエラーが返 る【NGKI2322】. 【使用上の注意】 ini_mpfにより複数のタスクが待ち解除される場合,サービスコールの処理時間 およびカーネル内での割込み禁止時間が,待ち解除されるタスクの数に比例し て長くなる.特に,多くのタスクが待ち解除される場合,カーネル内での割込 み禁止時間が長くなるため,注意が必要である. 固定長メモリプールを再初期化した場合に,アプリケーションとの整合性を保 つのは,アプリケーションの責任である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_mpf 固定長メモリプールの状態参照〔T〕【NGKI2323】 【C言語API】 ER ercd = ref_mpf(ID mpfid, T_RMPF *pk_rmpf) 【パラメータ】 ID mpfid T_RMPF * pk_rmpf 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象固定長メモリプールのID番号 固定長メモリプールの現在状態を入れるパケッ トへのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *固定長メモリプールの現在状態(パケットの内容) ID wtskid 固定長メモリプールの待ち行列の先頭のタスク のID番号 uint_t fblkcnt 固定長メモリプール領域の空きメモリ領域に割 り付けることができる固定長メモリブロックの 236 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11801 11802 11803 11804 11805 11806 11807 11808 11809 11810 11811 11812 11813 11814 11815 11816 11817 11818 11819 11820 11821 11822 11823 11824 11825 11826 11827 11828 11829 11830 11831 11832 11833 11834 11835 11836 11837 11838 11839 11840 11841 11842 11843 11844 11845 11846 11847 11848 11849 11850 数 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2324】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2325】 E_ID 不正ID番号 ・mpfidが有効範囲外【NGKI2326】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象固定長メモリプールが未登録〔D〕【NGKI2327】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象固定長メモリプールに対する参照操作が許可されてい ない〔P〕【NGKI2328】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rmpfが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない)〔P〕【NGKI2329】 【機能】 mpfidで指定した固定長メモリプール(対象固定長メモリプール)の現在状態を 参照する.参照した現在状態は,pk_rmpfで指定したパケットに返される 【NGKI2330】. 対象固定長メモリプールの待ち行列にタスクが存在しない場合,wtskidには TSK_NONE (=0)が返る【NGKI2331】. 【使用上の注意】 ref_mpfはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_mpfを呼び出し,対象固定長メモリプールの現在状態を参照 した直後に割込みが発生した場合,ref_mpfから戻ってきた時には対象固定長メ モリプールの状態が変化している可能性があるためである. ---------------------------------------------------------------------4.6 時間管理機能 4.6.1 システム時刻管理 システム時刻は,カーネルによって管理され,タイムアウト処理,タスクの遅 延,周期ハンドラの起動,アラームハンドラの起動に使用される時刻を管理す るカーネルオブジェクトである.システム時刻は,符号無しの整数型である SYSTIM型で表され,単位はミリ秒である【NGKI2332】. システム時刻は,カーネルの初期化時に0に初期化される【NGKI2333】.タイム ティックを通知するためのタイマ割込みが発生する毎にカーネルによって更新 され,SYSTIM型で表せる最大値(ULONG_MAX)を超えると0に戻される 【NGKI2334】.タイムティックの周期は,ターゲット定義である【NGKI2335】. また,システム時刻の精度はターゲットに依存する【NGKI2336】. マルチプロセッサ対応でないカーネルと,マルチプロセッサ対応カーネルでグ 237 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11851 11852 11853 11854 11855 11856 11857 11858 11859 11860 11861 11862 11863 11864 11865 11866 11867 11868 11869 11870 11871 11872 11873 11874 11875 11876 11877 11878 11879 11880 11881 11882 11883 11884 11885 11886 11887 11888 11889 11890 11891 11892 11893 11894 11895 11896 11897 11898 11899 11900 ローバルタイマ方式を用いている場合には,システム時刻は,システムに1つの み存在する【NGKI2337】.マルチプロセッサ対応カーネルでローカルタイマ方 式を用いている場合には,システム時刻は,プロセッサ毎に存在する 【NGKI2338】.ローカルタイマ方式とグローバルタイマ方式については, 「2.3.4 マルチプロセッサ対応」の節を参照すること. マルチプロセッサ対応カーネルでローカルタイマ方式を用いている場合には, タイムアウト処理とタスクの遅延処理には,待ち解除されるタスクが割り付け られているプロセッサのシステム時刻が用いられる【NGKI2339】.また,周期 ハンドラとアラームハンドラの起動には,それが割り付けられているプロセッ サのシステム時刻が用いられる【NGKI2340】.これらの処理単位がマイグレー ションする場合には,用いられるシステム時刻も変更される【NGKI2341】.こ の場合にも,イベントの処理が行われるのは,基準時刻から相対時間によって 指定した以上の時間が経過した後となるという規則は維持される【NGKI2342】. 1回のタイムティックの発生により,複数のイベントの処理を行うべき状況になっ た場合,それらの処理の間の処理順序は規定されない【NGKI2343】. 性能評価用システム時刻は,性能評価に使用することを目的とした,システム 時刻よりも精度の高い時刻である.性能評価用システム時刻は,符号無しの整 数型であるSYSUTM型で表され,単位はマイクロ秒である【NGKI2344】.ただし, 実際の精度はターゲットに依存する【NGKI2345】. マルチプロセッサ対応カーネルにおける性能評価用システム時刻の扱いは,ター ゲット定義とする【NGKI2346】. システム時刻管理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TIC_NUME TIC_DENO タイムティックの周期(単位はミリ秒)の分子 タイムティックの周期(単位はミリ秒)の分母 TOPPERS_SUPPORT_GET_UTM 【NGKI2347】 get_utm がサポートされている【NGKI2348】 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,時間管理機能をサポートしない【SSPS0129】. 【使用上の注意】 タイムティックを通知するためのタイマ割込みが長時間マスクされた場合(タ イマ割込みより優先して実行される割込み処理が長時間続けて実行された場合 を含む)や,シミュレーション環境においてシミュレータのプロセスが長時間 スケジュールされなかった場合には,システム時刻が正しく更新されない可能 性があるため,注意が必要である. 【μITRON4.0仕様との関係】 システム時刻を設定するサービスコール(set_tim)を廃止した.また,タイム ティックを供給する機能は,カーネル内に実現することとし,そのためのサー ビスコール(isig_tim)は廃止した. 238 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11901 11902 11903 11904 11905 11906 11907 11908 11909 11910 11911 11912 11913 11914 11915 11916 11917 11918 11919 11920 11921 11922 11923 11924 11925 11926 11927 11928 11929 11930 11931 11932 11933 11934 11935 11936 11937 11938 11939 11940 11941 11942 11943 11944 11945 11946 11947 11948 11949 11950 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 システム時刻のアクセス許可ベクタは廃止し,システム状態のアクセス許可ベ クタで代替することとした.そのため,システム時刻のアクセス許可ベクタを 設定する静的API(SAC_TIM)は廃止した. ---------------------------------------------------------------------get_tim システム時刻の参照〔T〕【NGKI2349】 【C言語API】 ER ercd = get_tim(SYSTIM *p_systim) 【パラメータ】 SYSTIM * p_systim システム時刻を入れるメモリ領域へのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd SYSTIM systim 正常終了(E_OK)またはエラーコード システム時刻の現在値 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2350】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2351】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2352】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_systimが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可され ていない)〔P〕【NGKI2353】 【機能】 システム時刻の現在値を参照する.参照したシステム時刻は,p_systimが指す メモリ領域に返される【NGKI2354】. マルチプロセッサ対応カーネルでローカルタイマ方式を用いている場合には, 自タスクが割り付けられているプロセッサのシステム時刻の現在値を参照する 【NGKI2355】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルでローカルタイマ方式を用いている場合に,他 のプロセッサのシステム時刻の現在値を参照する機能は用意していない. ---------------------------------------------------------------------get_utm 性能評価用システム時刻の参照〔TI〕【NGKI2356】 【C言語API】 ER ercd = get_utm(SYSUTM *p_sysutm) 【パラメータ】 239 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 11951 11952 11953 11954 11955 11956 11957 11958 11959 11960 11961 11962 11963 11964 11965 11966 11967 11968 11969 11970 11971 11972 11973 11974 11975 11976 11977 11978 11979 11980 11981 11982 11983 11984 11985 11986 11987 11988 11989 11990 11991 11992 11993 11994 11995 11996 11997 11998 11999 12000 SYSUTM * p_sysutm 【リターンパラメータ】 ER ercd SYSUTM sysutm 性能評価用システム時刻を入れるメモリ領域へ のポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード 性能評価用システム時刻の現在値 【エラーコード】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_sysutmが指すメモリ領域へ書込みアクセスが許可されて いない)〔P〕【NGKI2357】 【機能】 性能評価用システム時刻の現在値を参照する.参照した性能評価用システム時 刻は,p_sysutmが指すメモリ領域に返される【NGKI2358】. get_utmは,任意の状態から呼び出すことができる【NGKI2359】.タスクコンテ キストからも非タスクコンテキストからも呼び出すことができるし,CPUロック 状態であっても呼び出すことができる. ターゲット定義で,get_utmがサポートされていない場合がある【NGKI2360】. get_utmがサポートされている場合には,TOPPERS_SUPPORT_GET_UTMがマクロ定 義される【NGKI2361】.サポートされていない場合にget_utmを呼び出すと, E_NOSPTエラーが返るか,リンク時にエラーとなる【NGKI2362】. 【使用方法】 get_utmを使用してプログラムの処理時間を計測する場合には,次の手順を取る. 処理時間を計測したいプログラムの実行直前と実行直後に,get_utmを用いて性 能評価用システム時刻を読み出す.その差を求めることで,対象プログラムの 処理時間に,get_utm自身の処理時間を加えたものが得られる. マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,異なるプロセッサで読み出した性 能評価用システム時刻の差を求めることで,処理時間が正しく計測できるとは 限らない. 【使用上の注意】 get_utmは性能評価のための機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない. get_utmは,任意の状態から呼び出すことができるように,全割込みロック状態 を用いて実装されている.そのため,get_utmを用いると,カーネル管理外の割 込みの応答性が低下する. システム時刻が正しく更新されない状況では,get_utmは誤った性能評価用シス テム時刻を返す可能性がある.システム時刻の更新が確実に行われることを保 240 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12001 12002 12003 12004 12005 12006 12007 12008 12009 12010 12011 12012 12013 12014 12015 12016 12017 12018 12019 12020 12021 12022 12023 12024 12025 12026 12027 12028 12029 12030 12031 12032 12033 12034 12035 12036 12037 12038 12039 12040 12041 12042 12043 12044 12045 12046 12047 12048 12049 12050 証できない場合には,get_utmが誤った性能評価用システム時刻を返す可能性を 考慮に入れて使用しなければならない. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------4.6.2 周期ハンドラ 周期ハンドラは,指定した周期で起動されるタイムイベントハンドラである. 周期ハンドラは,周期ハンドラIDと呼ぶID番号によって識別する【NGKI2363】. 各周期ハンドラが持つ情報は次の通り【NGKI2364】. ・周期ハンドラ属性 ・周期ハンドラの動作状態 ・次に周期ハンドラを起動する時刻 ・拡張情報 ・周期ハンドラの先頭番地 ・起動周期 ・起動位相 ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) 周期ハンドラの起動時刻は,後述する基準時刻から,以下の式で求められる相 対時間後である【NGKI2365】. 起動位相+起動周期 (n−1) n=1,2, 周期ハンドラの動作状態は,動作している状態と動作していない状態のいずれ かをとる【NGKI2366】.周期ハンドラを動作している状態にすることを動作開 始,動作していない状態にすることを動作停止という. 周期ハンドラが動作している状態の場合には,周期ハンドラを起動する時刻に なると,周期ハンドラの起動処理が行われる【NGKI2367】.具体的には,拡張 情報をパラメータとして,周期ハンドラが呼び出される【NGKI2368】. 保護機能対応カーネルにおいて,周期ハンドラが属することのできる保護ドメ インは,カーネルドメインに限られる【NGKI2369】. 周期ハンドラ属性には,次の属性を指定することができる【NGKI2370】. TA_STA TA_PHS 0x02U 0x04U 周期ハンドラの生成時に周期ハンドラを動作開始する 周期ハンドラを生成した時刻を基準時刻とする TA_STAを指定しない場合,周期ハンドラの生成直後には,周期ハンドラは動作 していない状態となる【NGKI2371】. 241 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12051 12052 12053 12054 12055 12056 12057 12058 12059 12060 12061 12062 12063 12064 12065 12066 12067 12068 12069 12070 12071 12072 12073 12074 12075 12076 12077 12078 12079 12080 12081 12082 12083 12084 12085 12086 12087 12088 12089 12090 12091 12092 12093 12094 12095 12096 12097 12098 12099 12100 TA_PHSを指定しない場合には,周期ハンドラを動作開始した時刻が,周期ハン ドラを起動する時刻の基準時刻となる【NGKI2372】.TA_PHSを指定した場合に は,周期ハンドラを生成した時刻(静的APIで生成した場合にはカーネルの起動 時刻)が,基準時刻となる【NGKI2373】. 次に周期ハンドラを起動する時刻は,周期ハンドラが動作している状態でのみ 有効で,必要に応じて,カーネルの起動時,周期ハンドラの動作開始時,周期 ハンドラの起動処理時に設定される【NGKI2374】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合には, 周期ハンドラは,システム時刻管理プロセッサのみが割付け可能プロセッサで あるクラスにのみ属することができる【NGKI2375】.すなわち,周期ハンドラ は,システム時刻管理プロセッサによって実行される. C言語による周期ハンドラの記述形式は次の通り【NGKI2376】. void cyclic_handler(intptr_t exinf) { 周期ハンドラ本体 } exinfには,周期ハンドラの拡張情報が渡される【NGKI2377】. 周期ハンドラ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_CYCID 登録できる周期ハンドラの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録された周期ハンドラの数 に一致)【NGKI2378】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,TA_PHS属性の周期ハンドラをサポートしない【ASPS0172】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,TA_PHS属性の周期ハンドラをサポートしない【FMPS0147】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,TA_PHS属性の周期ハンドラをサポートしない【HRPS0141】. 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_CYCID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_CYC 周期ハンドラの生成〔S〕【NGKI2379】 acre_cyc 周期ハンドラの生成〔TD〕【NGKI2380】 【静的API】 CRE_CYC(ID cycid, { ATR cycatr, intptr_t exinf, CYCHDR cychdr, 242 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12101 12102 12103 12104 12105 12106 12107 12108 12109 12110 12111 12112 12113 12114 12115 12116 12117 12118 12119 12120 12121 12122 12123 12124 12125 12126 12127 12128 12129 12130 12131 12132 12133 12134 12135 12136 12137 12138 12139 12140 12141 12142 12143 12144 12145 12146 12147 12148 12149 12150 RELTIM cyctim, RELTIM cycphs }) 【C言語API】 ER_ID cycid = acre_cyc(const T_CCYC *pk_ccyc) 【パラメータ】 ID cycid T_CCYC * pk_ccyc 生成する周期ハンドラのID番号(CRE_CYCの場合) 周期ハンドラの生成情報を入れたパケットへの ポインタ(静的APIを除く) *周期ハンドラの生成情報(パケットの内容) ATR cycatr 周期ハンドラ属性 intptr_t exinf 周期ハンドラの拡張情報 CYCHDR c ychdr 周期ハンドラの先頭番地 RELTIM cyctim 周期ハンドラの起動周期 RELTIM cycphs 周期ハンドラの起動位相 【リターンパラメータ】 ER_ID cycid 生成された周期ハンドラのID番号(正の値)また はエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2381】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2382】 E_RSATR 予約属性 ・cycatrが無効【NGKI2383】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外またはカーネルド メイン以外〔sP〕【NGKI2384】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔SP〕 【NGKI2385】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2386】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI2387】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・cychdrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI2388】 ・cyctimが有効範囲(0より大きくTMAX_RELTIM以下)外【NGKI2397】 ・cycphsが有効範囲(0以上TMAX_RELTIM以下)外【NGKI2399】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2389】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_ccycが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2390】 E_NOID ID 番号不足 ・割り付けられる周期ハンドラIDがない〔sD〕【NGKI2391】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・cycidで指定した周期ハンドラが登録済み(CRE_CYCの場合) 【NGKI2392】 243 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12151 12152 12153 12154 12155 12156 12157 12158 12159 12160 12161 12162 12163 12164 12165 12166 12167 12168 12169 12170 12171 12172 12173 12174 12175 12176 12177 12178 12179 12180 12181 12182 12183 12184 12185 12186 12187 12188 12189 12190 12191 12192 12193 12194 12195 12196 12197 12198 12199 12200 【機能】 各パラメータで指定した周期ハンドラ生成情報に従って,周期ハンドラを生成 する.具体的な振舞いは以下の通り. cycatrにTA_STAを指定した場合,対象周期ハンドラは動作している状態となる 【NGKI2393】.次に周期ハンドラを起動する時刻は,サービスコールを呼び出 した時刻(静的APIの場合はカーネルの起動時刻)から,cycphsで指定した相対 時間後に設定される【NGKI2394】.cycphsにcyctimより大きい値を指定しても よい【NGKI2400】. cycatrにTA_STAを指定しない場合,対象周期ハンドラは動作していない状態に 初期化される【NGKI2395】. 静的APIにおいては,cycidはオブジェクト識別名,cycatr,cyctim,cycphsは 整数定数式パラメータ,exinfとcychdrは一般定数式パラメータである 【NGKI2396】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合で, 生成する周期ハンドラの属するクラスの割付け可能プロセッサが,システム時 刻管理プロセッサのみでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2401】. 【補足説明】 静的APIにおいて,cycatrにTA_STAを,cycphsに0を指定した場合,周期ハンド ラが最初に呼び出されるのは,カーネル起動後最初のタイムティックになる. cycphsに1を指定した場合も同じ振舞いとなるため,静的APIでcycatrにTA_STA が指定されている場合には,cycphsに0を指定することは推奨されず,コンフィ ギュレータが警告メッセージを出力する. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_CYCのみをサポートする【ASPS0173】.ただし,TA_PHS 属性の周期ハンドラはサポートしない【ASPS0174】.動的生成機能拡張パッケー ジでは,acre_cycもサポートする【ASPS0175】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_CYCのみをサポートする【FMPS0148】.ただし,TA_PHS 属性の周期ハンドラはサポートしない【FMPS0149】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,CRE_CYCのみをサポートする【HRPS0142】.ただし, TA_PHS属性の周期ハンドラはサポートしない【HRPS0143】. 【μITRON4.0仕様との関係】 cychdrのデータ型をCYCHDRに変更した.また,cycphsにcyctimより大きい値を 指定した場合の振舞いと,静的APIでcycphsに0を指定した場合の振舞いを規定 244 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12201 12202 12203 12204 12205 12206 12207 12208 12209 12210 12211 12212 12213 12214 12215 12216 12217 12218 12219 12220 12221 12222 12223 12224 12225 12226 12227 12228 12229 12230 12231 12232 12233 12234 12235 12236 12237 12238 12239 12240 12241 12242 12243 12244 12245 12246 12247 12248 12249 12250 した. ---------------------------------------------------------------------AID_CYC 割付け可能な周期ハンドラIDの数の指定〔SD〕【NGKI2402】 【静的API】 AID_CYC(uint_t nocyc) 【パラメータ】 uint_t nocyc 割付け可能な周期ハンドラIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI2403】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI2404】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・nocycが負の値【NGKI3285】 【機能】 nocycで指定した数の周期ハンドラIDを,周期ハンドラを生成するサービスコー ルによって割付け可能な周期ハンドラIDとして確保する【NGKI2405】. nocycは整数定数式パラメータである【NGKI2406】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合で, AID_CYCが属するクラスの割付け可能プロセッサが,システム時刻管理プロセッ サのみでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2407】. ---------------------------------------------------------------------SAC_CYC 周期ハンドラのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI2408】 sac_cyc 周期ハンドラのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2409】 【静的API】 SAC_CYC(ID cycid, { ACPTN acptn1 , ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_cyc(ID cycid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID cycid ACVCT * p_acvct 対象周期ハンドラのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 245 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12251 12252 12253 12254 12255 12256 12257 12258 12259 12260 12261 12262 12263 12264 12265 12266 12267 12268 12269 12270 12271 12272 12273 12274 12275 12276 12277 12278 12279 12280 12281 12282 12283 12284 12285 12286 12287 12288 12289 12290 12291 12292 12293 12294 12295 12296 12297 12298 12299 12300 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2410】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2411】 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外〔s〕【NGKI2412】 E_RSATR 予約属性 ・対象周期ハンドラが属する保護ドメインの囲みの中に記述 されていない〔S〕【NGKI2413】 ・対象周期ハンドラが属するクラスの囲みの中に記述されて いない〔SM〕【NGKI2414】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録【NGKI2415】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI2416】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI2417】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象周期ハンドラは静的APIで生成された〔s〕【NGKI2418】 ・対象周期ハンドラに対してアクセス許可ベクタが設定済み 〔S〕【NGKI2419】 【機能】 cycidで指定した周期ハンドラ(対象周期ハンドラ)のアクセス許可ベクタ(4 つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定する 【NGKI2420】. 静的APIにおいては,cycidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI2421】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_CYC,sac_cycをサポートしない【ASPS0176】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_CYC,sac_cycをサポートしない【FMPS0150】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,SAC_CYCのみをサポートする【HRPS0144】. ---------------------------------------------------------------------del_cyc 周期ハンドラの削除〔TD〕【NGKI2422】 246 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12301 12302 12303 12304 12305 12306 12307 12308 12309 12310 12311 12312 12313 12314 12315 12316 12317 12318 12319 12320 12321 12322 12323 12324 12325 12326 12327 12328 12329 12330 12331 12332 12333 12334 12335 12336 12337 12338 12339 12340 12341 12342 12343 12344 12345 12346 12347 12348 12349 12350 【C言語API】 ER ercd = del_cyc(ID cycid) 【パラメータ】 ID cycid 対象周期ハンドラのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2423】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2424】 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外【NGKI2425】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録【NGKI2426】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する管理操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2427】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象周期ハンドラは静的APIで生成された【NGKI2428】 【機能】 cycidで指定した周期ハンドラ(対象周期ハンドラ)を削除する.具体的な振舞 いは以下の通り. 対象周期ハンドラの登録が解除され,その周期ハンドラIDが未使用の状態に戻 される【NGKI2429】.対象周期ハンドラが動作している状態であった場合には, 動作していない状態にされた後に,登録が解除される【NGKI2430】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_cycをサポートしない【ASPS0177】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_cycをサポートする【ASPS0178】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_cycをサポートしない【FMPS0151】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,del_cycをサポートしない【HRPS0145】. ---------------------------------------------------------------------sta_cyc 周期ハンドラの動作開始〔T〕【NGKI2431】 【C言語API】 ER ercd = sta_cyc(ID cycid) 247 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12351 12352 12353 12354 12355 12356 12357 12358 12359 12360 12361 12362 12363 12364 12365 12366 12367 12368 12369 12370 12371 12372 12373 12374 12375 12376 12377 12378 12379 12380 12381 12382 12383 12384 12385 12386 12387 12388 12389 12390 12391 12392 12393 12394 12395 12396 12397 12398 12399 12400 【パラメータ】 ID cycid 対象周期ハンドラのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2432】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2433】 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外【NGKI2434】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録〔D〕【NGKI2435】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2436】 【機能】 cycidで指定した周期ハンドラ(対象周期ハンドラ)を動作開始する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象周期ハンドラが動作していない状態であれば,対象周期ハンドラは動作し ている状態となる【NGKI2437】.次に周期ハンドラを起動する時刻は, sta_cycを呼び出して以降の最初の起動時刻に設定される【NGKI2438】. 対象周期ハンドラが動作している状態であれば,次に周期ハンドラを起動する 時刻の再設定のみが行われる【NGKI2439】. 【補足説明】 TA_PHS属性でない周期ハンドラの場合,次に周期ハンドラを起動する時刻は, sta_cycを呼び出してから,対象周期ハンドラの起動位相で指定した相対時間後 に設定される. 対象周期ハンドラがTA_PHS属性で,動作している状態であれば,次に周期ハン ドラを起動する時刻は変化しない. 【μITRON4.0仕様との関係】 TA_PHS属性でない周期ハンドラにおいて,sta_cycを呼び出した後,最初に周期 ハンドラが起動される時刻を変更した.μITRON4.0仕様では,sta_cycを呼び出 してから周期ハンドラの起動周期で指定した相対時間後となっているが,この 仕様では,起動位相で指定した相対時間後とした. ---------------------------------------------------------------------msta_cyc 割付けプロセッサ指定での周期ハンドラの動作開始〔TM〕【NGKI2440】 【C言語API】 ER ercd = msta_cyc(ID cycid, ID prcid) 248 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12401 12402 12403 12404 12405 12406 12407 12408 12409 12410 12411 12412 12413 12414 12415 12416 12417 12418 12419 12420 12421 12422 12423 12424 12425 12426 12427 12428 12429 12430 12431 12432 12433 12434 12435 12436 12437 12438 12439 12440 12441 12442 12443 12444 12445 12446 12447 12448 12449 12450 【パラメータ】 ID cycid ID prcid 対象周期ハンドラのID番号 周期ハンドラの割付け対象のプロセッサのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2441】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2442】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外【NGKI2443】 ・prcidが有効範囲外【NGKI2444】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録〔D〕【NGKI2445】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2446】 【機能】 prcidで指定したプロセッサを割付けプロセッサとして,cycidで指定した周期 ハンドラ(対象周期ハンドラ)を動作開始する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象周期ハンドラが動作していない状態であれば,対象周期ハンドラの割付け プロセッサがprcidで指定したプロセッサに変更された後,対象周期ハンドラは 動作している状態となる【NGKI2447】.次に周期ハンドラを起動する時刻は, msta_cyc を呼び出して以降の最初の起動時刻に設定される【NGKI2448】. 対象周期ハンドラが動作している状態であれば,対象周期ハンドラの割付けプ ロセッサがprcidで指定したプロセッサに変更された後,次に周期ハンドラを起 動する時刻の再設定が行われる【NGKI2449】. 対象周期ハンドラが実行中である場合には,割付けプロセッサを変更しても, 実行中の周期ハンドラを実行するプロセッサは変更されない【NGKI2450】.対 象周期ハンドラが変更後の割付けプロセッサで実行されるのは,次に起動され る時からである【NGKI2451】. 対象周期ハンドラの属するクラスの割付け可能プロセッサが,prcidで指定した プロセッサを含んでいない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2452】. prcidにTPRC_INI(=0)を指定すると,対象周期ハンドラの割付けプロセッサ を,それが属するクラスの初期割付けプロセッサとする【NGKI2453】. 249 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12451 12452 12453 12454 12455 12456 12457 12458 12459 12460 12461 12462 12463 12464 12465 12466 12467 12468 12469 12470 12471 12472 12473 12474 12475 12476 12477 12478 12479 12480 12481 12482 12483 12484 12485 12486 12487 12488 12489 12490 12491 12492 12493 12494 12495 12496 12497 12498 12499 12500 グローバルタイマ方式を用いている場合,msta_cycはE_NOSPTを返す 【NGKI2454】. 【補足説明】 TA_PHS属性でない周期ハンドラの場合,次に周期ハンドラを起動する時刻は, msta_cyc を呼び出してから,対象周期ハンドラの起動位相で指定した相対時間 後に設定される. 【使用上の注意】 msta_cycで実行中の周期ハンドラの割付けプロセッサを変更した場合,同じ周 期ハンドラが異なるプロセッサで同時に実行される可能性がある.特に,対象 周期ハンドラの起動位相が0の場合に,注意が必要である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------stp_cyc 周期ハンドラの動作停止〔T〕【NGKI2455】 【C言語API】 ER ercd = stp_cyc(ID cycid) 【パラメータ】 ID cycid 対象周期ハンドラのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2456】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2457】 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外【NGKI2458】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録〔D〕【NGKI2459】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI2460】 【機能】 cycidで指定した周期ハンドラ(対象周期ハンドラ)を動作停止する.具体的な 振舞いは以下の通り. 対象周期ハンドラが動作している状態であれば,動作していない状態になる 【NGKI2461】.対象周期ハンドラが動作していない状態であれば,何も行われ ずに正常終了する【NGKI2462】. 250 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12501 12502 12503 12504 12505 12506 12507 12508 12509 12510 12511 12512 12513 12514 12515 12516 12517 12518 12519 12520 12521 12522 12523 12524 12525 12526 12527 12528 12529 12530 12531 12532 12533 12534 12535 12536 12537 12538 12539 12540 12541 12542 12543 12544 12545 12546 12547 12548 12549 12550 ---------------------------------------------------------------------ref_cyc 周期ハンドラの状態参照〔T〕【NGKI2463】 【C言語API】 ER ercd = ref_cyc(ID cycid, T_RCYC *pk_rcyc) 【パラメータ】 ID cycid T_RCYC * pk_rcyc 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象周期ハンドラのID番号 周期ハンドラの現在状態を入れるパケットへの ポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *周期ハンドラの現在状態(パケットの内容) STAT cycstat 周期ハンドラの動作状態 RELTIM lefttim 次に周期ハンドラを起動する時刻までの相対時間 ID prcid 周期ハンドラの割付けプロセッサのID(マルチプ ロセッサ対応カーネルの場合) 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2464】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2465】 E_ID 不正ID番号 ・cycidが有効範囲外【NGKI2466】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象周期ハンドラが未登録〔D〕【NGKI2467】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象周期ハンドラに対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI2468】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rcycが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない)〔P〕【NGKI2469】 【機能】 cycidで指定した周期ハンドラ(対象周期ハンドラ)の現在状態を参照する.参 照した現在状態は,pk_rcycで指定したパケットに返される【NGKI2470】. cycstatには,対象周期ハンドラの現在の動作状態を表す次のいずれかの値が返 される【NGKI2471】. TCYC_STP TCYC_STA 0x01U 0x02U 周期ハンドラが動作していない状態 周期ハンドラが動作している状態 対象周期ハンドラが動作している状態である場合には,lefttimに,次に周期ハ ンドラ起動する時刻までの相対時間が返される【NGKI2472】.対象周期ハンド ラが動作していない状態である場合には,lefttimの値は保証されない 【NGKI2473】. 251 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12551 12552 12553 12554 12555 12556 12557 12558 12559 12560 12561 12562 12563 12564 12565 12566 12567 12568 12569 12570 12571 12572 12573 12574 12575 12576 12577 12578 12579 12580 12581 12582 12583 12584 12585 12586 12587 12588 12589 12590 12591 12592 12593 12594 12595 12596 12597 12598 12599 12600 マルチプロセッサ対応カーネルでは,prcidに,対象周期ハンドラの割付けプロ セッサのID番号が返される【NGKI2474】. 【使用上の注意】 ref_cycはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_cycを呼び出し,対象周期ハンドラの現在状態を参照した直 後に割込みが発生した場合,ref_cycから戻ってきた時には対象周期ハンドラの 状態が変化している可能性があるためである. 【μITRON4.0仕様との関係】 TCYC_STP とTCYC_STAを値を変更した. ---------------------------------------------------------------------4.6.3 アラームハンドラ アラームハンドラは,指定した相対時間後に起動されるタイムイベントハンド ラである.アラームハンドラは,アラームハンドラIDと呼ぶID番号によって識 別する【NGKI2475】. 各アラームハンドラが持つ情報は次の通り【NGKI2476】. ・アラームハンドラ属性 ・アラームハンドラの動作状態 ・アラームハンドラを起動する時刻 ・拡張情報 ・アラームハンドラの先頭番地 ・アクセス許可ベクタ(保護機能対応カーネルの場合) ・属する保護ドメイン(保護機能対応カーネルの場合) ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) アラームハンドラの動作状態は,動作している状態と動作していない状態のい ずれかをとる【NGKI2477】.アラームハンドラを動作している状態にすること を動作開始,動作していない状態にすることを動作停止という. アラームハンドラを起動する時刻は,アラームハンドラを動作開始する時に設 定される【NGKI2478】. アラームハンドラが動作している状態の場合には,アラームハンドラを起動す る時刻になると,アラームハンドラの起動処理が行われる【NGKI2479】.具体 的には,まず,アラームハンドラが動作していない状態にされる【NGKI2480】. その後に,拡張情報をパラメータとして,アラームハンドラが呼び出される 【NGKI2481】. 保護機能対応カーネルにおいて,アラームハンドラが属することのできる保護 ドメインは,カーネルドメインに限られる【NGKI2482】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合には, 252 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12601 12602 12603 12604 12605 12606 12607 12608 12609 12610 12611 12612 12613 12614 12615 12616 12617 12618 12619 12620 12621 12622 12623 12624 12625 12626 12627 12628 12629 12630 12631 12632 12633 12634 12635 12636 12637 12638 12639 12640 12641 12642 12643 12644 12645 12646 12647 12648 12649 12650 アラームハンドラは,割付け可能プロセッサがシステム時刻管理プロセッサの みであるクラスにのみ属することができる【NGKI2483】.すなわち,アラーム ハンドラは,システム時刻管理プロセッサによって実行される. C言語によるアラームハンドラの記述形式は次の通り【NGKI2484】. void alarm_handler(intptr_t exinf) { アラームハンドラ本体 } exinfには,アラームハンドラの拡張情報が渡される【NGKI2485】. アラームハンドラ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TNUM_ALMID 登録できるアラームハンドラの数(動的生成対応でない カーネルでは,静的APIによって登録されたアラームハン ドラの数に一致)【NGKI2486】 【μITRON4.0仕様との関係】 TNUM_ALMID は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------CRE_ALM アラームハンドラの生成〔S〕【NGKI2487】 acre_alm アラームハンドラの生成〔TD〕【NGKI2488】 【静的API】 CRE_ALM(ID almid, { ATR almatr, intptr_t exinf, ALMHDR almhdr }) 【C言語API】 ER_ID almid = acre_alm(const T_CALM *pk _calm) 【パラメータ】 ID almid T_CALM * pk_calm 生成するアラームハンドラのID番号(CRE_ALM の場合) アラームハンドラの生成情報を入れたパケット へのポインタ(静的APIを除く) *アラームハンドラの生成情報(パケットの内容) ATR almatr アラームハンドラ属性 intptr_t exinf アラームハンドラの拡張情報 ALMHDR almhdr アラームハンドラの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER_ID almid 生成されたアラームハンドラのID番号(正の値) またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2489】 253 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12651 12652 12653 12654 12655 12656 12657 12658 12659 12660 12661 12662 12663 12664 12665 12666 12667 12668 12669 12670 12671 12672 12673 12674 12675 12676 12677 12678 12679 12680 12681 12682 12683 12684 12685 12686 12687 12688 12689 12690 12691 12692 12693 12694 12695 12696 12697 12698 12699 12700 E_RSATR E_PAR E_OACV E_MACV E_NOID E_OBJ ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2490】 予約属性 ・almatrが無効【NGKI2491】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外またはカーネルド メイン以外〔sP〕【NGKI2492】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔SP〕 【NGKI2493】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2494】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI2495】 ・その他の条件については機能の項を参照 パラメータエラー ・almhdrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI2496】 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2497】 メモリアクセス違反 ・pk_calmが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2498】 ID 番号不足 ・割り付けられるアラームハンドラIDがない〔sD〕【NGKI2499】 オブジェクト状態エラー ・almidで指定したアラームハンドラが登録済み(CRE_ALMの 場合)【NGKI2500】 【機能】 各パラメータで指定したアラームハンドラ生成情報に従って,アラームハンド ラを生成する.対象アラームハンドラは,動作していない状態に初期化される 【NGKI2501】. 静的APIにおいては,almidはオブジェクト識別名,almatrは整数定数式パラメー タ,exinfとalmhdrは一般定数式パラメータである【NGKI2502】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合で, 生成するアラームハンドラの属するクラスの割付け可能プロセッサが,システ ム時刻管理プロセッサのみでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2503】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CRE_ALMのみをサポートする【ASPS0179】.ただし,動的生 成機能拡張パッケージでは,acre_almもサポートする【ASPS0180】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CRE_ALMのみをサポートする【FMPS0152】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,CRE_ALMのみをサポートする【HRPS0146】. 254 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12701 12702 12703 12704 12705 12706 12707 12708 12709 12710 12711 12712 12713 12714 12715 12716 12717 12718 12719 12720 12721 12722 12723 12724 12725 12726 12727 12728 12729 12730 12731 12732 12733 12734 12735 12736 12737 12738 12739 12740 12741 12742 12743 12744 12745 12746 12747 12748 12749 12750 【μITRON4.0仕様との関係】 almhdrのデータ型をALMHDRに変更した. ---------------------------------------------------------------------AID_ALM 割付け可能なアラームハンドラIDの数の指定〔SD〕【NGKI2504】 【静的API】 AID_ALM(uint_t noalm) 【パラメータ】 uint_t noalm 割付け可能なアラームハンドラIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI2505】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI2506】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・noalmが負の値【NGKI3286】 【機能】 noalmで指定した数のアラームハンドラIDを,アラームハンドラを生成するサー ビスコールによって割付け可能なアラームハンドラIDとして確保する 【NGKI2507】. noalmは整数定数式パラメータである【NGKI2508】. マルチプロセッサ対応カーネルでグローバルタイマ方式を用いている場合で, AID_ALMが属するクラスの割付け可能プロセッサが,システム時刻管理プロセッ サのみでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2509】. ---------------------------------------------------------------------SAC_ALM アラームハンドラのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI2510】 sac_alm アラームハンドラのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2511】 【静的API】 SAC_ALM(ID almid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_alm(ID almid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID almid ACVCT * p_acvct 対象アラームハンドラのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン 255 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12751 12752 12753 12754 12755 12756 12757 12758 12759 12760 12761 12762 12763 12764 12765 12766 12767 12768 12769 12770 12771 12772 12773 12774 12775 12776 12777 12778 12779 12780 12781 12782 12783 12784 12785 12786 12787 12788 12789 12790 12791 12792 12793 12794 12795 12796 12797 12798 12799 12800 ACPTN ACPTN acptn3 acptn4 【リターンパラメータ】 ER ercd 管理操作のアクセス許可パターン 参照操作のアクセス許可パターン 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2512】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2513】 E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外〔s〕【NGKI2514】 E_RSATR 予約属性 ・対象アラームハンドラが属する保護ドメインの囲みの中に 記述されていない〔S〕【NGKI2515】 ・対象アラームハンドラが属するクラスの囲みの中に記述さ れていない〔SM〕【NGKI2516】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録【NGKI2517】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する管理操作が許可されていな い〔s〕【NGKI2518】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI2519】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象アラームハンドラは静的APIで生成された〔s〕【NGKI2520】 ・対象アラームハンドラに対してアクセス許可ベクタが設定 済み〔S〕【NGKI2521】 【機能】 almidで指定したアラームハンドラ(対象アラームハンドラ)のアクセス許可ベ クタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に設定 する【NGKI2522】. 静的APIにおいては,almidはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI2523】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_ALM,sac_almをサポートしない【ASPS0181】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_ALM,sac_almをサポートしない【FMPS0153】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,SAC_ALMのみをサポートする【HRPS0147】. 256 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12801 12802 12803 12804 12805 12806 12807 12808 12809 12810 12811 12812 12813 12814 12815 12816 12817 12818 12819 12820 12821 12822 12823 12824 12825 12826 12827 12828 12829 12830 12831 12832 12833 12834 12835 12836 12837 12838 12839 12840 12841 12842 12843 12844 12845 12846 12847 12848 12849 12850 ---------------------------------------------------------------------del_alm アラームハンドラの削除〔TD〕【NGKI2524】 【C言語API】 ER ercd = del_alm(ID almid) 【パラメータ】 ID almid 対象アラームハンドラのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2525】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2526】 E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外【NGKI2527】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録【NGKI2528】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する管理操作が許可されていな い〔P〕【NGKI2529】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象アラームハンドラは静的APIで生成された【NGKI2530】 【機能】 almidで指定したアラームハンドラ(対象アラームハンドラ)を削除する.具体 的な振舞いは以下の通り. 対象アラームハンドラの登録が解除され,そのアラームハンドラIDが未使用の 状態に戻される【NGKI2531】.対象アラームハンドラが動作している状態であっ た場合には,登録解除の前に,アラームハンドラが動作していない状態となる 【NGKI2532】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_almをサポートしない【ASPS0182】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_almをサポートする【ASPS0183】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_almをサポートしない【FMPS0154】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,del_almをサポートしない【HRPS0148】. ---------------------------------------------------------------------sta_alm アラームハンドラの動作開始〔T〕【NGKI2533】 257 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12851 12852 12853 12854 12855 12856 12857 12858 12859 12860 12861 12862 12863 12864 12865 12866 12867 12868 12869 12870 12871 12872 12873 12874 12875 12876 12877 12878 12879 12880 12881 12882 12883 12884 12885 12886 12887 12888 12889 12890 12891 12892 12893 12894 12895 12896 12897 12898 12899 12900 ista_alm アラームハンドラの動作開始〔I〕【NGKI2534】 【C言語API】 ER ercd = sta_alm(ID almid, RELTIM almtim) ER ercd = ista_alm(ID almid, RELTIM almtim) 【パラメータ】 ID almid RELTIM almtim 対象アラームハンドラのID番号 アラームハンドラの起動時刻(相対時間) 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(sta_almの場合)【NGKI2535】 ・タスクコンテキストからの呼出し(ista_almの場合)【NGKI2536】 ・CPUロック状態からの呼出し E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外【NGKI2537】 E_PAR パラメータエラー ・almtimがTMAX_RELTIMより大きい【NGKI2538】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録〔D〕【NGKI2539】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する通常操作1が許可されていな い(sta_almの場合)〔P〕【NGKI2540】 【機能】 almidで指定したアラームハンドラ(対象アラームハンドラ)を動作開始する. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象アラームハンドラが動作していない状態であれば,対象アラームハンドラ は動作している状態となる【NGKI2541】.アラームハンドラを起動する時刻は, sta_almを呼び出してから,almtimで指定した相対時間後に設定される 【NGKI2542】. 対象アラームハンドラが動作している状態であれば,アラームハンドラを起動 する時刻の再設定のみが行われる【NGKI2543】. ---------------------------------------------------------------------msta_alm 割付けプロセッサ指定でのアラームハンドラの動作開始〔TM〕【NGKI2544】 imsta_alm 割付けプロセッサ指定でのアラームハンドラの動作開始〔IM〕【NGKI2545】 【C言語API】 ER ercd = msta_alm(ID almid, RELTIM almtim, ID prcid) ER ercd = imsta_alm(ID almid, RELTIM almti m, ID prcid) 【パラメータ】 ID almid 対象アラームハンドラのID番号 258 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12901 12902 12903 12904 12905 12906 12907 12908 12909 12910 12911 12912 12913 12914 12915 12916 12917 12918 12919 12920 12921 12922 12923 12924 12925 12926 12927 12928 12929 12930 12931 12932 12933 12934 12935 12936 12937 12938 12939 12940 12941 12942 12943 12944 12945 12946 12947 12948 12949 12950 RELTIM ID almtim prcid 【リターンパラメータ】 ER ercd アラームハンドラの起動時刻(相対時間) アラームハンドラの割付け対象のプロセッサの ID 番号 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(msta_almの場合) 【NGKI2546】 ・タスクコンテキストからの呼出し(imsta_almの場合)【NGKI2547】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2548】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外【NGKI2549】 ・prcidが有効範囲外【NGKI2550】 E_PAR パラメータエラー ・almtimがTMAX_RELTIMより大きい【NGKI2551】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録〔D〕【NGKI2552】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する通常操作1が許可されていな い(msta_almの場合)〔P〕【NGKI2553】 【機能】 prcidで指定したプロセッサを割付けプロセッサとして,almidで指定したアラー ムハンドラ(対象アラームハンドラ)を動作開始する.具体的な振舞いは以下 の通り. 対象アラームハンドラが動作していない状態であれば,対象アラームハンドラ の割付けプロセッサがprcidで指定したプロセッサに変更された後,対象アラー ムハンドラは動作している状態となる【NGKI2554】.アラームハンドラを起動 する時刻は,msta_almを呼び出してから,almtimで指定した相対時間後に設定 される【NGKI2555】. 対象アラームハンドラが動作している状態であれば,対象アラームハンドラの 割付けプロセッサがprcidで指定したプロセッサに変更された後,アラームハン ドラを起動する時刻の再設定が行われる【NGKI2556】. 対象アラームハンドラが実行中である場合には,割付けプロセッサを変更して も,実行中のアラームハンドラを実行するプロセッサは変更されない 【NGKI2557】.対象アラームハンドラが変更後の割付けプロセッサで実行され るのは,次に起動される時からである【NGKI2558】. 対象アラームハンドラの属するクラスの割付け可能プロセッサが,prcidで指定 したプロセッサを含んでいない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2559】. 259 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 12951 12952 12953 12954 12955 12956 12957 12958 12959 12960 12961 12962 12963 12964 12965 12966 12967 12968 12969 12970 12971 12972 12973 12974 12975 12976 12977 12978 12979 12980 12981 12982 12983 12984 12985 12986 12987 12988 12989 12990 12991 12992 12993 12994 12995 12996 12997 12998 12999 13000 prcidにTPRC_INI(=0)を指定すると,対象アラームハンドラの割付けプロセッ サを,それが属するクラスの初期割付けプロセッサとする【NGKI2560】. グローバルタイマ方式を用いている場合,msta_alm/imsta_almはE_NOSPTを返 す【NGKI2561】. 【使用上の注意】 msta_alm /imsta_almで実行中のアラームハンドラの割付けプロセッサを変更し た場合,同じアラームハンドラが異なるプロセッサで同時に実行される可能性 がある.特に,almtimに0を指定する場合に,注意が必要である. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------stp_alm アラームハンドラの動作停止〔T〕【NGKI2562】 istp_alm アラームハンドラの動作停止〔I〕【NGKI2563】 【C言語API】 ER ercd = stp_alm(ID almid) ER ercd = istp_alm(ID almid) 【パラメータ】 ID almid 対象アラームハンドラのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(stp_almの場合)【NGKI2564】 ・タスクコンテキストからの呼出し(istp_almの場合)【NGKI2565】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2566】 E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外【NGKI2567】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録〔D〕【NGKI2568】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する通常操作2が許可されていな い(stp_almの場合)〔P〕【NGKI2569】 【機能】 almidで指定したアラームハンドラ(対象アラームハンドラ)を動作停止する. 具体的な振舞いは以下の通り. 対象アラームハンドラが動作している状態であれば,動作していない状態とな る【NGKI2570】.対象アラームハンドラが動作していない状態であれば,何も 260 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13001 13002 13003 13004 13005 13006 13007 13008 13009 13010 13011 13012 13013 13014 13015 13016 13017 13018 13019 13020 13021 13022 13023 13024 13025 13026 13027 13028 13029 13030 13031 13032 13033 13034 13035 13036 13037 13038 13039 13040 13041 13042 13043 13044 13045 13046 13047 13048 13049 13050 行われずに正常終了する【NGKI2571】. ---------------------------------------------------------------------ref_alm アラームハンドラの状態参照〔T〕【NGKI2572】 【C言語API】 ER ercd = ref_alm(ID almid, T_RALM *pk_ralm) 【パラメータ】 ID almid T_RALM * pk_ralm 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象アラームハンドラのID番号 アラームハンドラの現在状態を入れるパケット へのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *アラームハンドラの現在状態(パケットの内容) STAT almstat アラームハンドラの動作状態 RELTIM lefttim アラームハンドラを起動する時刻までの相対時間 ID prcid アラームハンドラの割付けプロセッサのID(マル チプロセッサ対応カーネルの場合) 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2573】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2574】 E_ID 不正ID番号 ・almidが有効範囲外【NGKI2575】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象アラームハンドラが未登録〔D〕【NGKI2576】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象アラームハンドラに対する参照操作が許可されていな い〔P〕【NGKI2577】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_ralmが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI2578】 【機能】 almidで指定したアラームハンドラ(対象アラームハンドラ)の現在状態を参照 する.参照した現在状態は,pk_ralmで指定したパケットに返される【NGKI2579】. almstatには,対象アラームハンドラの現在の動作状態を表す次のいずれかの値 が返される【NGKI2580】. TALM_STP TALM_STA 0x01U 0x02U アラームハンドラが動作していない状態 アラームハンドラが動作している状態 対象アラームハンドラが動作している状態である場合には,lefttimに,アラー ムハンドラ起動する時刻までの相対時間が返される【NGKI2581】.対象アラー ムハンドラが動作していない状態である場合には,lefttimの値は保証されない 261 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13051 13052 13053 13054 13055 13056 13057 13058 13059 13060 13061 13062 13063 13064 13065 13066 13067 13068 13069 13070 13071 13072 13073 13074 13075 13076 13077 13078 13079 13080 13081 13082 13083 13084 13085 13086 13087 13088 13089 13090 13091 13092 13093 13094 13095 13096 13097 13098 13099 13100 【NGKI2582】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,prcidに,対象アラームハンドラの割付け プロセッサのID番号が返される【NGKI2583】. 【使用上の注意】 ref_almはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_almを呼び出し,対象アラームハンドラの現在状態を参照し た直後に割込みが発生した場合,ref_almから戻ってきた時には対象アラームハ ンドラの状態が変化している可能性があるためである. 【μITRON4.0仕様との関係】 TALM_STP とTALM_STAを値を変更した. ---------------------------------------------------------------------4.6.4 オーバランハンドラ オーバランハンドラは,タスクが使用したプロセッサ時間が,指定した時間を 超えた場合に起動されるタイムイベントハンドラである.オーバランハンドラ は,システムで1つのみ登録することができる【NGKI2584】. オーバランハンドラ機能に関連して,各タスクが持つ情報は次の通り 【NGKI2585】. ・オーバランハンドラの動作状態 ・残りプロセッサ時間 オーバランハンドラの動作状態は,タスク毎に,動作している状態と動作して いない状態のいずれかをとる【NGKI2586】.残りプロセッサ時間は,オーバラ ンハンドラが動作している状態の時に,タスクが使用できる残りのプロセッサ 時間を表す. オーバランハンドラの動作状態は,タスクの起動時に,動作していない状態に 初期化される【NGKI2587】. 残りプロセッサ時間は,オーバランハンドラが動作している状態でタスクが実 行している間,タスクが使用したプロセッサ時間の分だけ減少する【NGKI2588】. 残りプロセッサ時間が0になると(これをオーバランと呼ぶ),オーバランハン ドラが起動される【NGKI2589】. タスクが使用したプロセッサ時間には,そのタスク自身とタスク例外処理ルー チン,それらから呼び出したサービルコール(拡張サービスコールを含む)の 実行時間を含む【NGKI2590】.一方,タスクの実行中に起動されたカーネル管 理の割込みハンドラ(割込みサービスルーチン,周期ハンドラ,アラームハン ドラ,オーバランハンドラの実行時間を含む)とカーネル管理のCPU例外ハンド ラの実行時間は含まないが,割込みハンドラおよびCPU例外ハンドラの呼出し/ 復帰にかかる時間と,それらの入口処理と出口処理の一部の実行時間は含んで しまう【NGKI2591】.また,タスクの実行中に起動されたカーネル管理外の割 262 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13101 13102 13103 13104 13105 13106 13107 13108 13109 13110 13111 13112 13113 13114 13115 13116 13117 13118 13119 13120 13121 13122 13123 13124 13125 13126 13127 13128 13129 13130 13131 13132 13133 13134 13135 13136 13137 13138 13139 13140 13141 13142 13143 13144 13145 13146 13147 13148 13149 13150 込みハンドラとカーネル管理外のCPU例外ハンドラの実行時間も含む 【NGKI2592】. プロセッサ時間は,符号無しの整数型であるOVRTIM型で表し,単位はマイクロ 秒とする【NGKI2593】.ただし,プロセッサ時間には,OVRTIM型に格納できる 任意の値を指定できるとは限らず,指定できる値にターゲット定義の上限があ る場合がある【NGKI2594】.プロセッサ時間に指定できる最大値は,構成マク ロTMAX_OVRTIMに定義されている【NGKI2595】.また,タスクが使用したプロセッ サ時間の計測精度はターゲットに依存する【NGKI2596】. 保護機能対応カーネルにおいて,オーバランハンドラは,カーネルドメインに 属する【NGKI2597】. ターゲット定義で,オーバランハンドラ機能がサポートされていない場合があ る【NGKI2598】.オーバランハンドラ機能がサポートされている場合には, TOPPERS_SUPPORT_OVRHDR がマクロ定義される【NGKI2599】.サポートされてい ない場合にオーバランハンドラ機能のサービスコールを呼び出すと,E_NOSPTエ ラーが返るか,リンク時にエラーとなる【NGKI2600】. オーバランハンドラ機能に用いるデータ型は次の通り. OVRTIM プロセッサ時間(符号無し整数,単位はマイクロ秒,ulong_t に定義)【NGKI2601】 オーバランハンドラ属性に指定できる属性はない【NGKI2602】.そのためオー バランハンドラ属性には,TA_NULLを指定しなければならない【NGKI2603】. C言語によるオーバランハンドラの記述形式は次の通り【NGKI2604】. void overrun_handler(ID tskid, intptr_t exinf) { オーバランハンドラ本体 } tskidにはオーバランを起こしたタスクのID番号が,exinfにはそのタスクの拡 張情報が,それぞれ渡される【NGKI2605】. オーバランハンドラ機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMAX_OVRTIM プロセッサ時間に指定できる最大値【NGKI2606】 TOPPERS_SUPPORT_OVRHDR オーバランハンドラ機能がサポートされて いる【NGKI2607】 【使用上の注意】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,オーバランハンドラが異なるプロセッサ で同時に実行される可能性があるので,注意が必要である. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 263 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13151 13152 13153 13154 13155 13156 13157 13158 13159 13160 13161 13162 13163 13164 13165 13166 13167 13168 13169 13170 13171 13172 13173 13174 13175 13176 13177 13178 13179 13180 13181 13182 13183 13184 13185 13186 13187 13188 13189 13190 13191 13192 13193 13194 13195 13196 13197 13198 13199 13200 ASPカーネルでは,オーバランハンドラをサポートしない【ASPS0184】.ただし, オーバランハンドラ機能拡張パッケージを用いると,オーバランハンドラ機能 を追加することができる【ASPS0185】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,オーバランハンドラをサポートしない【FMPS0155】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,オーバランハンドラをサポートする【HRPS0149】. 【μITRON4.0仕様との関係】 OVRTIMの時間単位は,μITRON4.0仕様では実装定義としていたが,この仕様で はマイクロ秒と規定した. TMAX_OVRTIM は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------DEF_OVR オーバランハンドラの定義〔S〕【NGKI2608】 def_ovr オーバランハンドラの定義〔TD〕【NGKI2609】 【静的API】 DEF_OVR({ ATR ovratr, OVRHDR ovrhdr }) 【C言語API】 ER ercd = def_ovr(const T_DOVR *pk_dovr) 【パラメータ】 T_DOVR * pk_dovr オーバランハンドラの定義情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *オーバランハンドラの定義情報(パケットの内容) ATR ovratr オーバランハンドラ属性 OVRHDR ovrhdr オーバランハンドラの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2610】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2611】 E_RSATR 予約属性 ・ovratrが無効【NGKI2612】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・ovrhdrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI2613】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 264 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13201 13202 13203 13204 13205 13206 13207 13208 13209 13210 13211 13212 13213 13214 13215 13216 13217 13218 13219 13220 13221 13222 13223 13224 13225 13226 13227 13228 13229 13230 13231 13232 13233 13234 13235 13236 13237 13238 13239 13240 13241 13242 13243 13244 13245 13246 13247 13248 13249 13250 E_MACV E_OBJ ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2614】 メモリアクセス違反 ・pk_dovrが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2615】 オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したオーバランハンドラ定義情報に従って,オーバランハ ンドラを定義する【NGKI2616】.ただし,def_ovrにおいてpk_dovrをNULLにし た場合には,オーバランハンドラの定義を解除する【NGKI2617】. 静的APIにおいては,ovratrは整数定数式パラメータ,ovrhdrは一般定数式パラ メータである【NGKI2618】. オーバランハンドラを定義する場合(DEF_OVRの場合およびdef_ovrにおいて pk_dovrをNULL以外にした場合)で,すでにオーバランハンドラが定義されてい る場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI2619】. 保護機能対応カーネルにおいて,DEF_OVRは,カーネルドメインの囲みの中に記 述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI2621】.また,def_ovrでオーバランハンドラを定義する場合には,オー バランハンドラの属する保護ドメインを設定する必要はなく,オーバランハン ドラ属性にTA_DOM(domid)を指定した場合にはE_RSATRエラーとなる【NGKI2622】. ただし,TA_DOM(TDOM_SELF)を指定した場合には,指定が無視され,E_RSATRエ ラーは検出されない【NGKI2623】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,DEF_OVRは,クラスの囲みの外に記述しな ければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2625】.ま た,def_ovrオーバランハンドラを定義する場合には,オーバランハンドラの属 するクラスを設定する必要はなく,オーバランハンドラ属性にTA_CLS(clsid)を 指定した場合にはE_RSATRエラーとなる【NGKI2626】.ただし, TA_CLS(TCLS_SELF)を指定した場合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検 出されない【NGKI2627】. オーバランハンドラの定義を解除する場合(def_ovrにおいてpk_dovrをNULLに した場合)で,オーバランハンドラが定義されていない場合には,E_OBJエラー となる【NGKI2628】. オーバランハンドラの定義を解除すると,オーバランハンドラの動作状態は, すべてのタスクに対して動作していない状態となる【NGKI2629】. 【使用上の注意】 def_ovrによりオーバランハンドラの定義を解除する場合,サービスコールの処 理時間およびカーネル内での割込み禁止時間が,タスクの総数に比例して長く なる.特に,タスクの総数が多い場合,カーネル内での割込み禁止時間が長く なるため,注意が必要である. 265 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13251 13252 13253 13254 13255 13256 13257 13258 13259 13260 13261 13262 13263 13264 13265 13266 13267 13268 13269 13270 13271 13272 13273 13274 13275 13276 13277 13278 13279 13280 13281 13282 13283 13284 13285 13286 13287 13288 13289 13290 13291 13292 13293 13294 13295 13296 13297 13298 13299 13300 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルのオーバランハンドラ機能拡張パッケージでは,DEF_OVRのみをサ ポートする【ASPS0186】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,DEF_OVRのみをサポートする【HRPS0150】. 【μITRON4.0仕様との関係】 ovrhdrのデータ型をOVRHDRに変更した. def_ovrによって定義済みのオーバランハンドラを再定義しようとした場合に, E_OBJエラーとすることにした.オーバランハンドラの定義を変更するには,一 度定義を解除してから,再度定義する必要がある. ---------------------------------------------------------------------sta_ovr オーバランハンドラの動作開始〔T〕【NGKI2630】 ista_ovr オーバランハンドラの動作開始〔I〕【NGKI2631】 【C言語API】 ER ercd = sta_ovr(I D tskid, OVRTIM ovrtim) ER ercd = ista_ovr(ID tskid, OVRTIM ovrtim) 【パラメータ】 ID tskid OVRTIM ovrtim 対象タスクのID番号 対象タスクの残りプロセッサ時間 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(sta_ovrの場合)【NGKI2632】 ・タスクコンテキストからの呼出し(ista_ovrの場合)【NGKI2633】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2634】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI2635】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI2636】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(sta_ovr の場合)〔P〕【NGKI2637】 E_PAR パラメータエラー ・ovrtimが0,またはTMAX_OVRTIMより大きい【NGKI2643】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・オーバランハンドラが定義されていない【NGKI2638】 【機能】 266 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13301 13302 13303 13304 13305 13306 13307 13308 13309 13310 13311 13312 13313 13314 13315 13316 13317 13318 13319 13320 13321 13322 13323 13324 13325 13326 13327 13328 13329 13330 13331 13332 13333 13334 13335 13336 13337 13338 13339 13340 13341 13342 13343 13344 13345 13346 13347 13348 13349 13350 tskidで指定したタスク(対象タスク)に対して,オーバランハンドラの動作を 開始する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象タスクに対するオーバランハンドラの動作状態は,動作している状態とな り,残りプロセッサ時間は,ovrtimに指定した時間に設定される【NGKI2639】. 対象タスクに対してオーバランハンドラが動作している状態であれば,残りプ ロセッサ時間の設定のみが行われる【NGKI2640】. sta_ovrにおいてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI2641】. 【μITRON4.0仕様との関係】 ista_ovr は,μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------stp_ovr オーバランハンドラの動作停止〔T〕【NGKI2644】 istp_ovr オーバランハンドラの動作停止〔I〕【NGKI2645】 【C言語API】 ER ercd = stp_ovr(ID tskid) ER ercd = istp_ovr(ID tskid) 【パラメータ】 ID tskid 対象タスクのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(stp_ovrの場合)【NGKI2646】 ・タスクコンテキストからの呼出し(istp_ovrの場合)【NGKI2647】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2648】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI2649】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI2650】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する通常操作2が許可されていない(stp_ovr の場合)〔P〕【NGKI2651】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・オーバランハンドラが定義されていない【NGKI2652】 【機能】 tskidで指定したタスク(対象タスク)に対して,オーバランハンドラの動作を 停止する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象タスクに対するオーバランハンドラの動作状態は,動作していない状態と 267 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13351 13352 13353 13354 13355 13356 13357 13358 13359 13360 13361 13362 13363 13364 13365 13366 13367 13368 13369 13370 13371 13372 13373 13374 13375 13376 13377 13378 13379 13380 13381 13382 13383 13384 13385 13386 13387 13388 13389 13390 13391 13392 13393 13394 13395 13396 13397 13398 13399 13400 なる【NGKI2653】.対象タスクに対してオーバランハンドラが動作していない 状態であれば,何も行われずに正常終了する【NGKI2654】. stp_ovrにおいてtskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスク となる【NGKI2655】. 【μITRON4.0仕様との関係】 istp_ovr は,μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_ovr オーバランハンドラの状態参照〔T〕【NGKI2656】 【C言語API】 ER ercd = ref_ovr(ID tskid, T_ROVR *pk_rovr) 【パラメータ】 ID tskid T_ROVR * pk_rovr 【リターンパラメータ】 ER ercd 対象タスクのID番号 オーバランハンドラの現在状態を入れるパケッ トへのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード *タスクの現在状態(パケットの内容) STAT ovrstat オーバランハンドラの動作状態 OVRTIM leftotm 残りプロセッサ時間 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2657】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2658】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI2659】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象タスクが未登録〔D〕【NGKI2660】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象タスクに対する参照操作が許可されていない〔P〕【NGKI2661】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_rovrが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI2662】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・オーバランハンドラが定義されていない【NGKI2663】 【機能】 tskidで指定したタスク(対象タスク)に対するオーバランハンドラの現在状態 を参照する.参照した現在状態は,pk_rovrで指定したメモリ領域に返される 【NGKI2664】. ovrstatには,対象タスクに対するオーバランハンドラの動作状態を表す次のい 268 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13401 13402 13403 13404 13405 13406 13407 13408 13409 13410 13411 13412 13413 13414 13415 13416 13417 13418 13419 13420 13421 13422 13423 13424 13425 13426 13427 13428 13429 13430 13431 13432 13433 13434 13435 13436 13437 13438 13439 13440 13441 13442 13443 13444 13445 13446 13447 13448 13449 13450 ずれかの値が返される【NGKI2665】. TOVR_STP TOVR_STA 0x01U 0x02U オーバランハンドラが動作していない状態 オーバランハンドラが動作している状態 対象タスクに対してオーバランハンドラが動作している状態の場合には, leftotmに,オーバランハンドラが起動されるまでの残りプロセッサ時間が返さ れる【NGKI2666】.オーバランハンドラが起動される直前には,leftotmに0が 返される可能性がある【NGKI2667】.オーバランハンドラが動作していない状 態の場合には,leftotmの値は保証されない【NGKI2668】. tskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクが対象タスクとなる 【NGKI2669】. 【使用上の注意】 ref_ovrはデバッグ時向けの機能であり,その他の目的に使用することは推奨し ない.これは,ref_ovrを呼び出し,対象オーバランハンドラの現在状態を参照 した直後に割込みが発生した場合,ref_ovrから戻ってきた時には対象オーバラ ンハンドラの状態が変化している可能性があるためである. 【未決定事項】 マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,対象タスクが,自タスクが割付けら れたプロセッサと異なるプロセッサに割り付けられている場合に,leftotmを参 照できるとするかどうかは,今後の課題である. 【μITRON4.0仕様との関係】 TOVR_STP とTOVR_STAを値を変更した. ---------------------------------------------------------------------4.7 システム状態管理機能 システム状態管理機能は,特定のオブジェクトに関連しないシステムの状態を 変更/参照するための機能である. ---------------------------------------------------------------------SAC_SYS システム状態のアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI2670】 sac_sys システム状態のアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2671】 【静的API】 SAC_SYS({ ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_sys(const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ACVCT * p _acvct アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) 269 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13451 13452 13453 13454 13455 13456 13457 13458 13459 13460 13461 13462 13463 13464 13465 13466 13467 13468 13469 13470 13471 13472 13473 13474 13475 13476 13477 13478 13479 13480 13481 13482 13483 13484 13485 13486 13487 13488 13489 13490 13491 13492 13493 13494 13495 13496 13497 13498 13499 13500 *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2672】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2673】 E_RSATR 予約属性 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔S〕【NGKI2674】 ・クラスの囲みの中に記述されている〔SM〕【NGKI2675】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・カーネルドメイン以外からの呼出し〔s〕【NGKI2676】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・システム状態のアクセス許可ベクタが設定済み〔S〕【NGKI2677】 【機能】 システム状態のアクセス許可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各 パラメータで指定した値に設定する【NGKI2678】. 静的APIにおいては,acptn1 acptn4は整数定数式パラメータである【NGKI2679】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_SYS,sac_sysをサポートしない【ASPS0187】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_SYS,sac_sysをサポートしない【FMPS0156】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,SAC_SYSのみをサポートする【HRPS0151】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,SAC_SYS,sac_sysをサポートしない【SSPS0130】. ---------------------------------------------------------------------rot_rdq タスクの優先順位の回転〔T〕【NGKI2680】 irot_rdq タスクの優先順位の回転〔I〕【NGKI2681】 【C言語API】 ER ercd = rot_rdq(PRI tskpri) 270 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13501 13502 13503 13504 13505 13506 13507 13508 13509 13510 13511 13512 13513 13514 13515 13516 13517 13518 13519 13520 13521 13522 13523 13524 13525 13526 13527 13528 13529 13530 13531 13532 13533 13534 13535 13536 13537 13538 13539 13540 13541 13542 13543 13544 13545 13546 13547 13548 13549 13550 ER ercd = irot_rdq(PRI tskpri) 【パラメータ】 PRI tskpri 【リターンパラメータ】 ER ercd 回転対象の優先度(対象優先度) 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(rot_rdqの場合)【NGKI2682】 ・タスクコンテキストからの呼出し(irot_rdqの場合)【NGKI2683】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2684】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・tskpriが有効範囲外【NGKI2685】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2686】 【機能】 tskpriで指定した優先度(対象優先度)を持つ実行できる状態のタスクの中で, 最も優先順位が高いタスクを,同じ優先度のタスクの中で最も優先順位が低い 状態にする【NGKI2687】.対象優先度を持つ実行できる状態のタスクが無いか 1つのみの場合には,何も行われずに正常終了する【NGKI2688】. rot_rdqにおいて,tskpriにTPRI_SELF(=0)を指定すると,自タスクのベース 優先度が対象優先度となる【NGKI2689】. 対象優先度を持つ実行できる状態のタスクの中で,最も優先順位が高いタスク が制約タスクの場合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI2690】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,rot_rdq,irot_rdqをサポートしない【SSPS0131】. ---------------------------------------------------------------------mrot_rdq プロセッサ指定でのタスクの優先順位の回転〔TM〕【NGKI2691】 imrot_rdq プロセッサ指定でのタスクの優先順位の回転〔IM〕【NGKI2692】 【C言語API】 ER ercd = mrot_rdq(PRI tskpri, ID prcid) ER ercd = imrot_rdq(PRI tskpri, ID prcid) 【パラメータ】 PRI tskpri ID prcid 回転対象の優先度(対象優先度) 優先順位の回転対象とするプロセッサのID番号 【リターンパラメータ】 271 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13551 13552 13553 13554 13555 13556 13557 13558 13559 13560 13561 13562 13563 13564 13565 13566 13567 13568 13569 13570 13571 13572 13573 13574 13575 13576 13577 13578 13579 13580 13581 13582 13583 13584 13585 13586 13587 13588 13589 13590 13591 13592 13593 13594 13595 13596 13597 13598 13599 13600 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(mrot_rdqの場合) 【NGKI2693】 ・タスクコンテキストからの呼出し(imrot_rdqの場合)【NGKI2694】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2695】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_ID 不正ID番号 ・prcidが有効範囲外【NGKI2696】 E_PAR パラメータエラー ・tskpriが有効範囲外【NGKI2697】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2698】 【機能】 prcidで指定したプロセッサに割り付けられており,tskpriで指定した優先度 (対象優先度)を持つ実行できる状態のタスクの中で,最も優先順位が高いタ スクを,同じ優先度のタスクの中で最も優先順位が低い状態にする【NGKI2699】. 対象優先度を持つ実行できる状態のタスクが無いか1つのみの場合には,何も行 われずに正常終了する【NGKI2700】. mrot_rdq において,tskpriにTPRI_SELF(=0)を指定すると,自タスクのベー ス優先度が対象優先度となる【NGKI2701】. prcidで指定したプロセッサに割り付けられており,対象優先度を持つ実行でき る状態のタスクの中で,最も優先順位が高いタスクが制約タスクの場合には, E_NOSPTエラーとなる【NGKI2702】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,mrot_rdq,imrot_rdqをサポートしない【ASPS0188】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,mrot_rdq,imrot_rdqをサポートしない【HRPS0152】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,mrot_rdq,imrot_rdqをサポートしない【SSPS0132】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------get_tid 実行状態のタスクIDの参照〔T〕【NGKI2703】 272 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13601 13602 13603 13604 13605 13606 13607 13608 13609 13610 13611 13612 13613 13614 13615 13616 13617 13618 13619 13620 13621 13622 13623 13624 13625 13626 13627 13628 13629 13630 13631 13632 13633 13634 13635 13636 13637 13638 13639 13640 13641 13642 13643 13644 13645 13646 13647 13648 13649 13650 iget_tid 実行状態のタスクIDの参照〔I〕【NGKI2704】 【C言語API】 ER ercd = get_tid(ID *p_tskid) ER ercd = iget_tid(ID *p_tskid) 【パラメータ】 ID * p_tskid タスクIDを入れるメモリ領域へのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd ID tskid 正常終了(E_OK)またはエラーコード タスクID 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(get_tidの場合)【NGKI2705】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iget_tidの場合)【NGKI2706】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2707】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_tskidが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない〔P〕【NGKI2708】 【機能】 実行状態のタスク(get_tidの場合には自タスク)のID番号を参照する.参照し たタスクIDは,p_tskidが指すメモリ領域に返される【NGKI2709】. iget_tid において,実行状態のタスクがない場合には,TSK_NONE(=0)が返さ れる【NGKI2710】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,サービスコールを呼び出した処理 単位を実行しているプロセッサにおいて実行状態のタスクのID番号を参照する 【NGKI2711】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_tidをサポートしない【SSPS0133】. ---------------------------------------------------------------------get_did 実行状態のタスクが属する保護ドメインIDの参照〔TP〕【NGKI2712】 【C言語API】 ER ercd = get_did(ID *p_domid) 【パラメータ】 ID * p_domid 保護ドメインIDを入れるメモリ領域へのポインタ 【リターンパラメータ】 ER ercd ID domid 正常終了(E_OK)またはエラーコード 保護ドメインID 273 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13651 13652 13653 13654 13655 13656 13657 13658 13659 13660 13661 13662 13663 13664 13665 13666 13667 13668 13669 13670 13671 13672 13673 13674 13675 13676 13677 13678 13679 13680 13681 13682 13683 13684 13685 13686 13687 13688 13689 13690 13691 13692 13693 13694 13695 13696 13697 13698 13699 13700 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2713】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2714】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_domidが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて いない【NGKI2715】 【機能】 実行状態のタスク(自タスク)が属する保護ドメインのID番号を参照する.参 照した保護ドメインIDは,p_domidが指すメモリ領域に返される【NGKI2716】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいては,サービスコールを呼び出した処理 単位を実行しているプロセッサにおいて実行状態のタスクが属する保護ドメイ ンのID番号を参照する【NGKI2717】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,get_didをサポートしない【ASPS0189】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,get_didをサポートしない【FMPS0157】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_didをサポートしない【SSPS0134】. ---------------------------------------------------------------------get_pid 割付けプロセッサのID番号の参照〔TM〕【NGKI2718】 iget_pid 割付けプロセッサのID番号の参照〔IM〕【NGKI2719】 【C言語API】 ER ercd = get_pid(ID *p_prcid) ER ercd = iget_pid(ID *p_prcid) 【パラメータ】 ID * p_prcid 【リターンパラメータ】 ER ercd ID prcid プロセッサIDを入れるメモリ領域へのポインタ 正常終了(E_OK)またはエラーコード プロセッサID 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(get_pidの場合)【NGKI2720】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iget_pidの場合)【NGKI2721】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2722】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_prcidが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可されて 274 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13701 13702 13703 13704 13705 13706 13707 13708 13709 13710 13711 13712 13713 13714 13715 13716 13717 13718 13719 13720 13721 13722 13723 13724 13725 13726 13727 13728 13729 13730 13731 13732 13733 13734 13735 13736 13737 13738 13739 13740 13741 13742 13743 13744 13745 13746 13747 13748 13749 13750 いない〔P〕【NGKI2723】 【機能】 サービスコールを呼び出した処理単位の割付けプロセッサのID番号を参照する. 参照したプロセッサIDは,p_prcidが指すメモリ領域に返される 【NGKI2724】. 【使用上の注意】 タスクは,get_pidを用いて,自タスクの割付けプロセッサを正しく参照できる とは限らない.これは,get_pidを呼び出し,自タスクの割付けプロセッサの ID番号を参照した直後に割込みが発生した場合,get_pidから戻ってきた時には 割付けプロセッサが変化している可能性があるためである. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,get_pid,iget_pidをサポートしない【ASPS0190】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,get_pid,iget_pidをサポートしない【HRPS0153】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_pid,iget_pidをサポートしない【SSPS0135】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------loc_cpu CPU ロック状態への遷移〔T〕【NGKI2725】 iloc_cpu CPUロック状態への遷移〔I〕【NGKI2726】 【C言語API】 ER ercd = loc_cpu() ER ercd = iloc_cpu() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(loc_cpuの場合)【NGKI2727】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iloc_cpuの場合)【NGKI2728】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作2が許可されていない 275 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13751 13752 13753 13754 13755 13756 13757 13758 13759 13760 13761 13762 13763 13764 13765 13766 13767 13768 13769 13770 13771 13772 13773 13774 13775 13776 13777 13778 13779 13780 13781 13782 13783 13784 13785 13786 13787 13788 13789 13790 13791 13792 13793 13794 13795 13796 13797 13798 13799 13800 (loc_cpuの場合)〔P〕【NGKI2729】 【機能】 CPUロックフラグをセットし,CPUロック状態へ遷移する【NGKI2730】.CPUロッ ク状態で呼び出した場合には,何も行われずに正常終了する【NGKI2731】. ---------------------------------------------------------------------unl_cpu CPU ロック状態の解除〔T〕【NGKI2732】 iunl_cpu CPU ロック状態の解除〔I〕【NGKI2733】 【C言語API】 ER ercd = unl_cpu() ER ercd = iunl_cpu() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し(unl_cpuの場合)【NGKI2734】 ・タスクコンテキストからの呼出し(iunl_cpuの場合)【NGKI2735】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作2が許可されていない (unl_cpuの場合)〔P〕【NGKI2736】 【機能】 CPUロックフラグをクリアし,CPUロック解除状態へ遷移する【NGKI2737】. CPUロック解除状態で呼び出した場合には,何も行われずに正常終了する 【NGKI2738】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,unl_cpu/iunl_cpuを呼び出したプロ セッサによって取得されている状態となっているスピンロックがある場合には, unl_cpu/iunl_cpuによってCPUロック解除状態に遷移しない(何も行われずに 正常終了する)【NGKI2739】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,CPUロック解除状態へ遷移した結果,ディ スパッチ保留状態が解除され,ディスパッチが起こる可能性がある.また,保 護機能対応カーネルとマルチプロセッサ対応カーネルでは,タスク例外処理ルー チンの実行が開始される可能性がある. ---------------------------------------------------------------------dis_dsp ディスパッチの禁止〔T〕【NGKI2740】 【C言語API】 ER ercd = dis_dsp() 276 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13801 13802 13803 13804 13805 13806 13807 13808 13809 13810 13811 13812 13813 13814 13815 13816 13817 13818 13819 13820 13821 13822 13823 13824 13825 13826 13827 13828 13829 13830 13831 13832 13833 13834 13835 13836 13837 13838 13839 13840 13841 13842 13843 13844 13845 13846 13847 13848 13849 13850 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2741】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2742】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2743】 【機能】 ディスパッチ禁止フラグをセットし,ディスパッチ禁止状態へ遷移する 【NGKI2744】.ディスパッチ禁止状態で呼び出した場合には,何も行われずに 正常終了する【NGKI2745】. ---------------------------------------------------------------------ena_dsp ディスパッチの許可〔T〕【NGKI2746】 【C言語API】 ER ercd = ena_dsp( ) 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2747】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2748】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作1が許可されていない〔P〕 【NGKI2749】 【機能】 ディスパッチ禁止フラグをクリアし,ディスパッチ許可状態へ遷移する 【NGKI2750】.ディスパッチ許可状態で呼び出した場合には,何も行われずに 正常終了する【NGKI2751】. 【補足説明】 ディスパッチ許可状態へ遷移した結果,ディスパッチ保留状態が解除され,ディ スパッチが起こる可能性がある. 277 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13851 13852 13853 13854 13855 13856 13857 13858 13859 13860 13861 13862 13863 13864 13865 13866 13867 13868 13869 13870 13871 13872 13873 13874 13875 13876 13877 13878 13879 13880 13881 13882 13883 13884 13885 13886 13887 13888 13889 13890 13891 13892 13893 13894 13895 13896 13897 13898 13899 13900 ---------------------------------------------------------------------sns_ctx コンテキストの参照〔TI〕【NGKI2752】 【C言語API】 bool_t state = sns_ctx() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state コンテキスト 【機能】 実行中のコンテキストを参照する.具体的な振舞いは以下の通り. sns_ctxを非タスクコンテキストから呼び出した場合にはtrue,タスクコンテキ ストから呼び出した場合にはfalseが返る【NGKI2753】. ---------------------------------------------------------------------sns_loc CPU ロック状態の参照〔TI〕【NGKI2754】 【C言語API】 bool_t state = sns_loc() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state CPUロックフラグ 【機能】 CPUロックフラグを参照する.具体的な振舞いは以下の通り. sns_locをCPUロック状態で呼び出した場合にはtrue,CPUロック解除状態で呼び 出した場合にはfalseが返る【NGKI2755】. ---------------------------------------------------------------------sns_dsp ディスパッチ禁止状態の参照〔TI〕【NGKI2756】 【C言語API】 bool_t state = sns_dsp() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state ディスパッチ禁止フラグ 【機能】 278 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13901 13902 13903 13904 13905 13906 13907 13908 13909 13910 13911 13912 13913 13914 13915 13916 13917 13918 13919 13920 13921 13922 13923 13924 13925 13926 13927 13928 13929 13930 13931 13932 13933 13934 13935 13936 13937 13938 13939 13940 13941 13942 13943 13944 13945 13946 13947 13948 13949 13950 ディスパッチ禁止フラグを参照する.具体的な振舞いは以下の通り. sns_dspをディスパッチ禁止状態で呼び出した場合にはtrue,ディスパッチ許可 状態で呼び出した場合にはfalseが返る【NGKI2757】. ---------------------------------------------------------------------sns_dpn ディスパッチ保留状態の参照〔TI〕【NGKI2758】 【C言語API】 bool_t state = sns_dpn() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state ディスパッチ保留状態 【機能】 ディスパッチ保留状態であるか否かを参照する.具体的な振舞いは以下の通り. sns_dpnをディスパッチ保留状態で呼び出した場合にはtrue,ディスパッチ保留 状態でない状態で呼び出した場合にはfalseが返る【NGKI2759】. ---------------------------------------------------------------------sns_ker カーネル非動作状態の参照〔TI〕【NGKI2760】 【C言語API】 bool_t state = sns_ker() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 bool_t state カーネル非動作状態 【機能】 カーネルが動作中であるか否かを参照する.具体的な振舞いは以下の通り. sns_kerをカーネルの初期化完了前(初期化ルーチン実行中を含む)または終了 処理開始後(終了処理ルーチン実行中を含む)に呼び出した場合にはtrue,カー ネルの動作中に呼び出した場合にはfalseが返る【NGKI2761】. 【使用方法】 sns_kerは,カーネルが動作している時とそうでない時で,処理内容を変えたい 場合に使用する.sns_kerがtrueを返した場合,他のサービスコールを呼び出す ことはできない.sns_kerがtrueを返す時に他のサービスコールを呼び出した場 合の動作は保証されない. 【使用上の注意】 279 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 13951 13952 13953 13954 13955 13956 13957 13958 13959 13960 13961 13962 13963 13964 13965 13966 13967 13968 13969 13970 13971 13972 13973 13974 13975 13976 13977 13978 13979 13980 13981 13982 13983 13984 13985 13986 13987 13988 13989 13990 13991 13992 13993 13994 13995 13996 13997 13998 13999 14000 どちらの条件でtrueが返るか間違いやすいので注意すること. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ext_ker カーネルの終了〔TI〕【NGKI2762】 【C言語API】 ER ercd = ext_ker() 【パラメータ】 なし 【リターンパラメータ】 ER ercd エラーコード 【エラーコード】 E_SYS システムエラー ・カーネルの誤動作【NGKI2763】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・カーネルドメイン以外からの呼出し〔P〕【NGKI2764】 【機能】 カーネルを終了する.具体的な振舞いについては,「2.9.2 システム終了手順」 の節を参照すること. ext_kerが正常に処理された場合,ext_kerからはリターンしない【NGKI2765】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------ref_sys システムの状態参照〔T〕 【C言語API】 ER ercd = ref_sys(T_RSYS *pk_rsys) ☆未完成 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ref_sysをサポートしない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ref_sysをサポートしない. 280 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14001 14002 14003 14004 14005 14006 14007 14008 14009 14010 14011 14012 14013 14014 14015 14016 14017 14018 14019 14020 14021 14022 14023 14024 14025 14026 14027 14028 14029 14030 14031 14032 14033 14034 14035 14036 14037 14038 14039 14040 14041 14042 14043 14044 14045 14046 14047 14048 14049 14050 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ref_sysをサポートしない. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_sysをサポートしない. ---------------------------------------------------------------------4.8 メモリオブジェクト管理機能 メモリオブジェクト管理機能は,保護機能対応カーネルでのみサポートされる 機能である.保護機能対応でないカーネルでは,メモリオブジェクト管理機能 をサポートしない. 〔メモリリージョン〕 メモリリージョンは,オブジェクトモジュールに含まれるセクションの配置対 象となる同じ性質を持った連続したメモリ領域である.メモリリージョンは, メモリリージョン名によって識別する【NGKI2766】. 各メモリリージョンが持つ情報は次の通り【NGKI2767】. ・先頭番地 ・サイズ ・メモリリージョン属性 メモリリージョンの先頭番地とサイズには,ターゲット定義の制約が課せられ る場合がある【NGKI2768】. メモリリージョン属性には,次の属性を指定することができる【NGKI3256】. TA_NOWRITE 0x01U 書込みアクセス禁止 ターゲットによっては,ターゲット定義のメモリリージョン属性を指定できる 場合がある【NGKI2771】. 標準メモリリージョンとは,ATT_MOD/ATA_MODによって,オブジェクトモジュー ルに含まれる標準のセクションが配置されるメモリリージョンである.標準メ モリリージョンには,標準のセクションの中で,書込みアクセスを行わないも のが配置される標準ROMリージョンと,書込みアクセスを行うものが配置される 標準RAMリージョンが含まれる. マルチプロセッサ対応カーネルでは,ATT_MOD/ATA_MODがクラスの囲みの外に 記述された場合に適用される共通の標準メモリリージョンに加えて,クラス毎 の標準メモリリージョンを定義することができる【NGKI3257】. 標準メモリリージョン(マルチプロセッサ対応カーネルでは,共通の標準メモ リリージョン)は,必ず定義しなければならない.定義しない場合には,コン フィギュレータがエラーを報告する【NGKI3259】. 281 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14051 14052 14053 14054 14055 14056 14057 14058 14059 14060 14061 14062 14063 14064 14065 14066 14067 14068 14069 14070 14071 14072 14073 14074 14075 14076 14077 14078 14079 14080 14081 14082 14083 14084 14085 14086 14087 14088 14089 14090 14091 14092 14093 14094 14095 14096 14097 14098 14099 14100 〔メモリオブジェクト〕 メモリオブジェクトは,保護機能対応カーネルにおいてアクセス保護の対象と する連続したメモリ領域である.メモリオブジェクトは,その先頭番地によっ て識別する【NGKI2772】. 各メモリオブジェクトが持つ情報は次の通り【NGKI2773】. ・先頭番地 ・サイズ ・メモリオブジェクト属性 ・アクセス許可ベクタ ・属する保護ドメイン ・属するクラス(マルチプロセッサ対応カーネルの場合) メモリオブジェクトの先頭番地とサイズには,ターゲット定義の制約が課せら れる【NGKI2774】. メモリオブジェクト属性には,次の属性を指定することができる【NGKI2775】. TA_NOWRITE TA_NOREAD TA_EXEC TA_MEMINI TA_MEMPRSV TA_SDATA TA_UNCACHE TA_IODEV 0x01U 0x02U 0x04U 0x08U 0x10U 0x20U 0x40U 0x80U 書込みアクセス禁止 読出しアクセス禁止 実行アクセス許可 メモリの初期化を行う メモリの初期化を行わない ショートデータ領域に配置 キャッシュ禁止 周辺デバイスの領域 メモリオブジェクトに対して書込みアクセスできるのは,メモリオブジェクト 属性に書込みアクセス禁止(TA_NOWRITE属性)が指定されておらず,アクセス 許可ベクタにより書込みアクセスが許可されている場合である【NGKI2776】. また,読出しアクセスできるのは,メモリオブジェクト属性に読出しアクセス 禁止(TA_NOREAD属性)が指定されておらず,アクセス許可ベクタにより読出し・ 実行アクセスが許可されている場合である【NGKI2777】.実行アクセスできる のは,メモリオブジェクト属性に実行アクセス許可(TA_EXEC属性)が指定され ており,アクセス許可ベクタにより読出し・実行アクセスが許可されている場 合である【NGKI2778】. ただし,ターゲットハードウェアの制約によってこれらの属性を実現できない 場合には,次のように扱われる.書込みアクセス禁止が実現できない場合には, TA_NOWRITE を指定しても無視される【NGKI2779】.また,読出しアクセス禁止 が実現できない場合には,TA_NOREADを指定しても無視される【NGKI2780】.実 行アクセス禁止が実現できない場合には,TA_EXECを指定しなくても実行アクセ ス許可となり,TA_EXECは無視される【NGKI2781】.どのような場合にどの属性 の指定が無視されるかは,ターゲット定義である【NGKI2782】. TA_MEMINI 属性は,システム初期化時に初期化するメモリオブジェクトであるこ とを,TA_MEMPRSV属性は,システム初期化時に初期化を行わないメモリオブジェ 282 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14101 14102 14103 14104 14105 14106 14107 14108 14109 14110 14111 14112 14113 14114 14115 14116 14117 14118 14119 14120 14121 14122 14123 14124 14125 14126 14127 14128 14129 14130 14131 14132 14133 14134 14135 14136 14137 14138 14139 14140 14141 14142 14143 14144 14145 14146 14147 14148 14149 14150 クトであることを示す【NGKI2783】.いずれの属性も指定しない場合,そのメ モリオブジェクトは,システム初期化時にクリア(言い換えると,0に初期化) される【NGKI2784】.TA_MEMINIとTA_MEMPRSVの両方を指定した場合には, E_RSATRエラーとなる【NGKI2785】. TA_NOWRITE が指定されている場合には,TA_MEMINIとTA_MEMPRSVは無視される (指定しても指定しなくても,同じ振舞いとなる)【NGKI2786】. TA_MEMINI 属性を設定したメモリオブジェクトを初期化に用いる初期化データは, 標準ROMリージョン(マルチプロセッサ対応カーネルでは,共通の標準ROMリー ジョン)に配置され,メモリオブジェクトとしては登録されない【NGKI2787】. TA_SDATA 属性は,メモリオブジェクトをショートデータ領域に配置することを 示す【NGKI2788】.具体的な扱いはターゲット定義であるが,ショートデータ 領域がサポートされていないターゲットでは,この属性は無視される 【NGKI2789】.また,ターゲットによっては,TA_NOWRITEを指定した場合に, TA_SDATA が無視される場合がある【NGKI2790】. TA_UNCACHE 属性は,メモリオブジェクトをキャッシュ禁止に設定することを, TA_IODEV 属性は,メモリオブジェクトを周辺デバイスの領域として扱うことを 示す【NGKI2791】.具体的な扱いはターゲット定義であるが,これらの属性を 指定しても意味がないターゲット(例えば,キャッシュを持たないターゲット プロセッサでのTA_UNCACHE)では,これらの属性は無視される【NGKI2792】. 逆に,キャッシュ禁止にできないメモリオブジェクトに対してTA_UNCACHEを指 定した場合や,周辺デバイスの領域として扱うことができないメモリオブジェ クトに対してTA_IODEVを指定した場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2793】. ターゲットによっては,ターゲット定義のメモリオブジェクト属性を指定でき る場合がある【NGKI2794】.ターゲット定義のメモリオブジェクト属性として, 次の属性を予約している【NGKI2795】. TA_WTHROUGH ライトスルーキャッシュを用いる 〔カーネル構成マクロ〕 メモリオブジェクト管理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TOPPERS_SUPPORT_ATT_MOD TOPPERS_SUPPORT_ATT_PMA ATT_MOD /ATA_MODがサポートされている 【NGKI2796】 ATT_PMA /ATA_PMA/att_pmaがサポートさ れている【NGKI2797】 ただし,att_pmaは,動的生成対応カーネルのみでサポートされるAPIであるた め,サポートされているかを判定するには,TOPPERS_SUPPORT_DYNAMIC_CREと TOPPERS_SUPPORT_ATT_PMA の両方が定義されていることをチェックする必要があ る【NGKI2798】. 【補足説明】 メモリオブジェクトが属するクラスは,ATT_MOD/ATA_MODにおいて,標準のセ 283 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14151 14152 14153 14154 14155 14156 14157 14158 14159 14160 14161 14162 14163 14164 14165 14166 14167 14168 14169 14170 14171 14172 14173 14174 14175 14176 14177 14178 14179 14180 14181 14182 14183 14184 14185 14186 14187 14188 14189 14190 14191 14192 14193 14194 14195 14196 14197 14198 14199 14200 クションが配置されるメモリリージョンを決定するためのみに使用される. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,メモリオブジェクト管理機能をサポートしない【ASPS0191】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,メモリオブジェクト管理機能をサポートしない【FMPS0158】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,メモリオブジェクト管理機能をサポートする【HRPS0154】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,メモリオブジェクト管理機能をサポートしない【SSPS0136】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 値が0のメモリオブジェクト属性(TA_RW,TA_CACHE)は,デフォルトの扱いに して廃止した.TA_ROはTA_NOWRITEに改名し,TA_NOREAD,TA_EXEC,TA_MEMINI, TA_MEMPRSV ,TA_IODEVを追加した.また,TA_UNCACHEの値を変更し,ターゲッ ト定義のメモリオブジェクト属性としてTA_WTHROUGHを予約した. メモリリージョンは,μITRON4.0/PX仕様にはない概念である. 【仕様決定の理由】 TA_IODEV 属性を導入したのは,ターゲットプロセッサによっては,周辺デバイ スの領域として扱うためには,キャッシュ禁止に加えて,メモリのアクセス順 序を変更しないことを指定しなければならないためである.メモリのアクセス 順序を変更しないことを指定するメモリオブジェクト属性を,ターゲット定義 で用意してもよいが,それを使うとアプリケーションのポータビリティが下が るため,TA_IODEV属性を用意することにした. ---------------------------------------------------------------------ATT_REG メモリリージョンの登録〔SP〕【NGKI2799】 【静的API】 ATT_REG(" メモリリージョン名", { ATR regatr, void *base, SIZE size }) 【パラメータ】 "メモリリージョン名" ATR regatr void * base SIZE size 登録するメモリリージョンを指定する文字列 メモリリージョン属性 登録するメモリリージョンの先頭番地 登録するメモリリージョンのサイズ(バイト数) 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・regatrが無効【NGKI2800】 284 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14201 14202 14203 14204 14205 14206 14207 14208 14209 14210 14211 14212 14213 14214 14215 14216 14217 14218 14219 14220 14221 14222 14223 14224 14225 14226 14227 14228 14229 14230 14231 14232 14233 14234 14235 14236 14237 14238 14239 14240 14241 14242 14243 14244 14245 14246 14247 14248 14249 14250 E_PAR E_OBJ ・保護ドメインの囲みの中に記述されている【NGKI2814】 ・クラスの囲みの中に記述されている〔M〕【NGKI3260】 パラメータエラー ・sizeが0以下【NGKI2816】 ・その他の条件については機能の項を参照 オブジェクト状態エラー ・登録済みのメモリリージョンの再登録【NGKI2801】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したメモリリージョン登録情報に従って,指定したメモリ リージョンを登録する.具体的な振舞いは以下の通り. baseとsizeで指定したメモリ領域が,メモリリージョンとして登録される 【NGKI2802】.登録されるメモリリージョンには,regatrで指定したメモリリー ジョン属性が設定される【NGKI2803】. メモリリージョン名は文字列パラメータ,regatr,base,sizeは整数定数式パ ラメータである【NGKI2804】. baseやsizeに,ターゲット定義の制約に合致しない先頭番地やサイズを指定し た時には,E_PARエラーとなる【NGKI2815】.登録しようとしたメモリリージョ ンが,登録済みのメモリリージョンとメモリ領域が重なる場合には,E_OBJエラー となる【NGKI2817】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------DEF_SRG 標準メモリリージョンの定義〔SP〕【NGKI3261】 【静的API】 DEF_SRG(" 標準ROMリージョン名", "標準RAMリージョン名") 【パラメータ】 "標準ROMリージョン名" "標準RAMリージョン名" 標準ROMリージョンとするメモリリージョンを 指定する文字列 標準RAMリージョンとするメモリリージョンを 指定する文字列 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・保護ドメインの囲みの中に記述されている【NGKI3262】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・標準メモリリージョンが定義済み【NGKI3263】 ・標準ROMリージョンに指定したメモリリージョンが未登録 【NGKI3264】 ・標準RAMリージョンに指定したメモリリージョンが未登録 【NGKI3272】 285 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14251 14252 14253 14254 14255 14256 14257 14258 14259 14260 14261 14262 14263 14264 14265 14266 14267 14268 14269 14270 14271 14272 14273 14274 14275 14276 14277 14278 14279 14280 14281 14282 14283 14284 14285 14286 14287 14288 14289 14290 14291 14292 14293 14294 14295 14296 14297 14298 14299 14300 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータに従って,標準ROMリージョンと標準RAMリージョンを定義する 【NGKI3265】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,DEF_SRGをクラスの囲みの外に記述すると, 共通の標準ROMリージョンと標準RAMリージョンを定義し,クラスの囲みの中に 記述すると,そのクラスの標準ROMリージョンと標準RAMリージョンを定義する 【NGKI3266】. 標準ROMリージョンは,TA_NOWRITE属性のメモリリージョンでなければならない. 標準ROMリージョンとして指定したメモリリージョンが,TA_NOWRITE属性でない 場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3268】.また,標準RAMリージョンは, TA_NOWRITE属性でないメモリリージョンでなければならない.標準RAMリージョ ンとして指定したメモリリージョンが,TA_NOWRITE属性である場合には, E_OBJエラーとなる【NGKI3270】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------ATT_SEC セクションの登録〔SP〕【NGKI2818】 ATA_SEC セクションの登録(アクセス許可ベクタ付き)〔SP〕【NGKI2819】 【静的API】 ATT_SEC(" セクション名", { ATR mematr, " メモリリージョン名" }) ATA_SEC("セクション名", { ATR mematr, " メモリリージョン名" }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【パラメータ】 "セクション名" ATR mematr "メモリリージョン名" 登録するセクションを指定する文字列 メモリオブジェクト属性 セクションを配置するメモリリージョンを指定 する文字列 *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・mematrが無効【NGKI2820】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー 286 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14301 14302 14303 14304 14305 14306 14307 14308 14309 14310 14311 14312 14313 14314 14315 14316 14317 14318 14319 14320 14321 14322 14323 14324 14325 14326 14327 14328 14329 14330 14331 14332 14333 14334 14335 14336 14337 14338 14339 14340 14341 14342 14343 14344 14345 14346 14347 14348 14349 14350 E_OBJ ・条件については機能の項を参照 オブジェクト状態エラー ・登録済みのセクションの再登録【NGKI2821】 ・指定したメモリリージョンが未登録【NGKI2822】 【機能】 各パラメータで指定した情報に従って,指定したセクションをカーネルに登録 する.具体的な振舞いは以下の通り. 各オブジェクトモジュールに含まれるセクション名で指定したセクションが, メモリリージョン名で指定したメモリリージョンに配置され,メモリオブジェ クトとして登録される【NGKI2823】.登録されるメモリオブジェクトには, mematrで指定したメモリオブジェクト属性が設定される【NGKI2824】. ATA_SECの場合には,登録されるメモリオブジェクトのアクセス許可ベクタ(4 つのアクセス許可パターンの組)が,acptn1 acptn4で指定した値に設定され る【NGKI2825】. 指定したメモリリージョンがTA_NOWRITE属性である場合には,メモリオブジェ クト属性にTA_NOWRITE属性を指定したことになる(TA_NOWRITE属性を指定して も指定しなくても,同じ振舞いとなる)【NGKI2826】. mematrに,TA_MEMINIとTA_MEMPRSVを同時に指定することはできない.指定した 場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2828】. 登録されるメモリオブジェクトと同じ保護ドメインに属し,メモリオブジェク ト属性とアクセス許可ベクタがすべて一致するメモリオブジェクトがある場合 には,1つのメモリオブジェクトにまとめて登録される場合がある【NGKI2829】. セクション名とメモリリージョン名は文字列パラメータ,mematr,acptn1 acptn4は整数定数式パラメータである【NGKI2830】. ターゲット定義で,ATA_SECにより登録できるセクションが属する保護ドメイン や登録できる数に制限がある場合がある【NGKI2831】.この制限に違反した場 合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI2832】. ATT_MOD/ATA_MODがサポートされているターゲットでは,セクション名として, 標準のセクションを指定することはできない.指定した場合には,E_PARエラー となる【NGKI2834】. 保護ドメイン毎の標準セクションは,コンフィギュレータによってカーネルに 登録されるため,ATT_SEC/ATA_SECで登録することはできない.セクション名 として指定した場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2836】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,指定したメモリリージョンがあるク ラス専用のメモリリージョンの場合で,ATT_SEC/ATA_SECをクラスの囲みの外 に記述するか,他のクラスの囲みの中に記述した場合には,E_RSATRエラーとな る【NGKI2837】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 287 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14351 14352 14353 14354 14355 14356 14357 14358 14359 14360 14361 14362 14363 14364 14365 14366 14367 14368 14369 14370 14371 14372 14373 14374 14375 14376 14377 14378 14379 14380 14381 14382 14383 14384 14385 14386 14387 14388 14389 14390 14391 14392 14393 14394 14395 14396 14397 14398 14399 14400 μITRON4.0/PX仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------LNK_SEC セクションの配置〔SP〕【NGKI2838】 【静的API】 LNK_SEC(" セクション名", { "メモリリージョン名" }) 【パラメータ】 "セクション名" "メモリリージョン名" 配置するセクションを指定する文字列 セクションを配置するメモリリージョンを指定 する文字列 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・登録済みのセクションの再登録【NGKI2839】 ・指定したメモリリージョンが未登録【NGKI2840】 【機能】 各オブジェクトモジュールに含まれるセクション名で指定したセクションを, メモリリージョン名で指定したメモリリージョンに配置する【NGKI2841】. セクション名として,標準のセクションや保護ドメイン毎の標準セクションを 指定することはできない.指定した場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2843】. マルチプロセッサ対応カーネルにおいて,指定したメモリリージョンがあるク ラス専用のメモリリージョンの場合で,LNK_SECをクラスの囲みの外に記述する か,他のクラスの囲みの中に記述した場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI2844】. 【使用上の注意】 LNK_SECにより配置されたセクションは,メモリオブジェクトとしてカーネルに 登録されず,メモリ保護が実現できる先頭番地とサイズになるとは限らない. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------ATT_MOD オブジェクトモジュールの登録〔SP〕【NGKI2845】 ATA_MOD オブジェクトモジュールの登録(アクセス許可ベクタ付き)〔SP〕 【NGKI2846】 【静的API】 ATT_MOD(" オブジェクトモジュール名") 288 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14401 14402 14403 14404 14405 14406 14407 14408 14409 14410 14411 14412 14413 14414 14415 14416 14417 14418 14419 14420 14421 14422 14423 14424 14425 14426 14427 14428 14429 14430 14431 14432 14433 14434 14435 14436 14437 14438 14439 14440 14441 14442 14443 14444 14445 14446 14447 14448 14449 14450 ATA_MOD(" オブジェクトモジュール名", { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【パラメータ】 "オブジェクトモジュール名" 登録するオブジェクトモジュールを指 定する文字列 *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・mematrが無効【NGKI2847】 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・登録済みのオブジェクトモジュールの再登録【NGKI2848】 【機能】 各パラメータで指定した情報に従って,指定したオブジェクトモジュールをカー ネルに登録する.具体的な振舞いは以下の通り. オブジェクトモジュール名で指定したオブジェクトモジュールに含まれる標準 のセクションの内,書込みアクセスを行わないセクションは標準ROMリージョン に,書込みアクセスを行うセクションは標準RAMリージョンに配置され,メモリ オブジェクトとして登録される【NGKI2849】.登録されるメモリオブジェクト には,ターゲット定義でセクション毎に定まるメモリオブジェクト属性が設定 される【NGKI2850】.ATA_MODの場合には,登録されるメモリオブジェクトのア クセス許可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)が,acptn1 acptn4で指 定した値に設定される【NGKI2851】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,ATT_MOD/ATA_MODを,クラスの囲みの外 に記述することも,クラスの囲みの中に記述することもできる【NGKI2852】. ATT_MOD/ATA_MODをクラスの囲みの外に記述した場合,標準のセクションは, 共通の標準メモリリージョンに配置される【NGKI2853】.クラスの囲みの中に 記述した場合,そのクラスの標準メモリリージョンが定義されていればそれら のメモリリージョン,定義されていなければ共通の標準メモリリージョンに配 置される【NGKI2854】.ただし,セクションによっては,ターゲット定義で, クラスの標準メモリリージョンが定義されている場合でも,共通の標準メモリ リージョンに配置される場合がある【NGKI3271】. 登録されるメモリオブジェクトと同じ保護ドメインに属し,メモリオブジェク ト属性とアクセス許可ベクタがすべて一致するメモリオブジェクトがある場合 には,1つのメモリオブジェクトにまとめて登録される場合がある【NGKI2855】. オブジェクトモジュール名は文字列パラメータ,acptn1 289 acptn4は整数定数式 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14451 14452 14453 14454 14455 14456 14457 14458 14459 14460 14461 14462 14463 14464 14465 14466 14467 14468 14469 14470 14471 14472 14473 14474 14475 14476 14477 14478 14479 14480 14481 14482 14483 14484 14485 14486 14487 14488 14489 14490 14491 14492 14493 14494 14495 14496 14497 14498 14499 14500 パラメータである【NGKI2856】. ターゲット定義で,ATA_MODにより登録できるオブジェクトモジュールが属する 保護ドメインや登録できる数に制限がある場合がある【NGKI2857】.この制限 に違反した場合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI2858】. ターゲット定義で,ATT_MOD/ATA_MODがサポートされていない場合がある 【NGKI2859】.ATT_MOD/ATA_MODがサポートされている場合には, TOPPERS_SUPPORT_ATT_MOD がマクロ定義される【NGKI2860】.サポートされてい ない場合にATT_MOD/ATA_MODを使用すると,コンフィギュレータがE_NOSPTエラー を報告する【NGKI2861】. 【補足説明】 ATT_MOD/ATA_MODでは,標準のセクション以外は配置・登録されない.標準の セクション以外のセクションを配置・登録するためには,ATT_SEC/ATA_SECを用 いる必要がある. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 オブジェクトモジュールに含まれるセクションの配置場所が,標準ROMリージョ ンと標準RAMリージョンであることを明確化した. ---------------------------------------------------------------------ATT_MEM メモリオブジェクトの登録〔SP〕【NGKI2862】 ATA_MEM メモリオブジェクトの登録(アクセス許可ベクタ付き)〔SP〕【NGKI2863】 att_mem メモリオブジェクトの登録〔TPD〕【NGKI2864】 【静的API】 ATT_MEM({ ATR mematr, void *base, SIZE size }) ATA_MEM({ ATR mematr, void *base, SIZE size }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn 2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = att_mem(const T_AMEM *pk_amem) 【パラメータ】 T_AMEM * pk_amem メモリオブジェクトの登録情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *メモリオブジェクトの登録情報(パケットの内容) ATR mematr メモリオブジェクト属性 void * base 登録するメモリ領域の先頭番地 SIZE size 登録するメモリ領域のサイズ(バイト数) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 290 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14501 14502 14503 14504 14505 14506 14507 14508 14509 14510 14511 14512 14513 14514 14515 14516 14517 14518 14519 14520 14521 14522 14523 14524 14525 14526 14527 14528 14529 14530 14531 14532 14533 14534 14535 14536 14537 14538 14539 14540 14541 14542 14543 14544 14545 14546 14547 14548 14549 14550 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2865】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2866】 E_RSATR 予約属性 ・mematrが無効【NGKI2867】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI2868】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2869】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・sizeが0以下【NGKI2881】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2870】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_amemが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2871】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定したメモリオブジェクト登録情報に従って,メモリオブジェ クトを登録する.具体的な振舞いは以下の通り. baseとsizeで指定したメモリ領域が,メモリオブジェクトとして登録される 【NGKI2872】.登録されるメモリオブジェクトには,mematrで指定したメモリ オブジェクト属性が設定される【NGKI2873】.ATA_MEMの場合には,登録される メモリオブジェクトのアクセス許可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組) が,acptn1 acptn4で指定した値に設定される【NGKI2874】. mematrには,TA_MEMPRSVを指定しなければならず,TA_MEMINIを指定することは できない.TA_MEMPRSVを指定しない場合や,TA_MEMINIを指定した場合には, E_RSATRエラーとなる【NGKI2876】.また,mematrにTA_SDATAを指定することは できない.TA_SDATAを指定した場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI3274】. 静的APIにおいては,mematr,size,acptn1 acptn4は整数定数式パラメータ, baseは一般定数式パラメータである【NGKI2877】. ターゲット定義で,ATT_MEM/ATA_MEMにより登録できるメモリオブジェクトが 属する保護ドメインや登録できる数に制限がある場合がある【NGKI2878】.こ の制限に違反した場合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI2879】. baseやsizeに,ターゲット定義の制約に合致しない先頭番地やサイズを指定し 291 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14551 14552 14553 14554 14555 14556 14557 14558 14559 14560 14561 14562 14563 14564 14565 14566 14567 14568 14569 14570 14571 14572 14573 14574 14575 14576 14577 14578 14579 14580 14581 14582 14583 14584 14585 14586 14587 14588 14589 14590 14591 14592 14593 14594 14595 14596 14597 14598 14599 14600 た時には,E_PARエラーとなる【NGKI2880】.登録しようとしたメモリオブジェ クトが,登録済みのメモリオブジェクトとメモリ領域が重なる場合には, E_OBJエラーとなる【NGKI2882】. 【使用上の注意】 ATT_MEM/ATA_MEMは,メモリ空間にマッピングされたI/O領域にアクセスできる ようにするために使用することを想定した静的APIである.メモリ領域に対して は,ATT_SEC/ATA_SECかATT_MOD/ATA_MODを使用することを推奨する. ATT_MEM/ATA_MEMで登録したメモリオブジェクトのメモリ領域が,ATT_REGで登 録したメモリリージョンと重なっても,直ちにエラーとはならない.ただし, メモリリージョン内に配置されたメモリオブジェクトと,ATT_MEM/ATA_MEMで 登録したメモリオブジェクトのメモリ領域が重なった場合には,E_OBJエラーと なる. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ATT_MEMとATA_MEMのみをサポートする【HRPS0155】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 アクセス許可ベクタを指定してメモリオブジェクトを登録するサービスコール (ata_mem)は廃止した. baseやsizeがターゲット定義の制約に合致しない場合,μITRON4.0/PX仕様では ターゲット定義の制約に合致するようにメモり領域を広げることとしていたが, この仕様ではE_PARエラーとなることとした. ---------------------------------------------------------------------ATT_PMA 物理メモリ領域の登録〔SP〕【NGKI2883】 ATA_PMA 物理メモリ領域の登録(アクセス許可ベクタ付き)〔SP〕【NGKI2884】 att_pma 物理メモリ領域の登録〔TPD〕【NGKI2885】 【静的API】 ATT_PMA({ ATR mematr, void *base, SIZE size, void *paddr }) ATA_PMA({ A TR mematr, void *base, SIZE size, void *paddr }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = att_pma(const T_APMA *pk_apma) 【パラメータ】 T_APMA * pk_apma 物理メモリ領域の登録情報を入れたパケットへ のポインタ(静的APIを除く) *物理メモリ領域の登録情報(パケットの内容) ATR mematr メモリオブジェクト属性 void * base 登録するメモリ領域の先頭番地 SIZE size 登録するメモリ領域のサイズ(バイト数) void * paddr 登録するメモリ領域の物理アドレス空間における 292 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14601 14602 14603 14604 14605 14606 14607 14608 14609 14610 14611 14612 14613 14614 14615 14616 14617 14618 14619 14620 14621 14622 14623 14624 14625 14626 14627 14628 14629 14630 14631 14632 14633 14634 14635 14636 14637 14638 14639 14640 14641 14642 14643 14644 14645 14646 14647 14648 14649 14650 先頭番地 *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2886】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2887】 E_RSATR 予約属性 ・mematrが無効 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外〔sP〕【NGKI2888】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2889】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_NOSPT 未サポート機能 ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・sizeが0以下【NGKI2901】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2890】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_apmaが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2891】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定した物理メモリ領域の登録情報に従って,メモリオブジェ クトを登録する.具体的な振舞いは以下の通り. 物理アドレス空間において先頭番地がpaddr,サイズがsizeのメモリ領域が,論 理アドレス空間においてbaseで指定した番地からアクセスできるように,メモ リオブジェクトとして登録される【NGKI2892】.登録されるメモリオブジェク トには,mematrで指定したメモリオブジェクト属性が設定される【NGKI2893】. ATA_PMAの場合には,登録されるメモリオブジェクトのアクセス許可ベクタ(4 つのアクセス許可パターンの組)が,acptn1 acptn4で指定した値に設定され る【NGKI2894】. mematrには,TA_MEMPRSVを指定しなければならず,TA_MEMINIを指定することは できない.TA_MEMPRSVを指定しない場合や,TA_MEMINIを指定した場合には, E_RSATRエラーとなる【NGKI2896】. 293 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14651 14652 14653 14654 14655 14656 14657 14658 14659 14660 14661 14662 14663 14664 14665 14666 14667 14668 14669 14670 14671 14672 14673 14674 14675 14676 14677 14678 14679 14680 14681 14682 14683 14684 14685 14686 14687 14688 14689 14690 14691 14692 14693 14694 14695 14696 14697 14698 14699 14700 静的APIにおいては,mematr,size,paddr,acptn1 acptn4は整数定数式パラ メータ,baseは一般定数式パラメータである【NGKI2897】. ターゲット定義で,ATT_PMA/ATA_PMAにより登録できるメモリオブジェクトが 属する保護ドメインや登録できる数に制限がある場合がある【NGKI2898】.こ の制限に違反した場合には,E_NOSPTエラーとなる【NGKI2899】. base,size,paddrに,ターゲット定義の制約に合致しない先頭番地やサイズを 指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI2900】.登録しようとしたメモリオ ブジェクトが,登録済みのメモリオブジェクトと論理アドレス空間においてメ モリ領域が重なる場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI2902】. ATT_PMA/ATA_PMA/att_pmaは,MMU(Memory Management Unit )を持つターゲッ トシステムにおいて,ターゲット定義でサポートされる機能である【NGKI2903】. ATT_PMA/ATA_PMA/att_pmaがサポートされている場合には, TOPPERS_SUPPORT_ATT_PMA がマクロ定義される【NGKI2904】.ATT_PMA/ATA_PMA がサポートされていない場合にこれらの静的APIを使用すると,コンフィギュレー タがE_NOSPTエラーを報告する【NGKI2905】.また,att_pmaがサポートされて いない場合にatt_pmaを呼び出すと,E_NOSPTエラーが返るか,リンク時にエラー となる【NGKI2906】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ターゲット定義で,ATT_PMAとATA_PMAのみをサポートする 【HRPS0156】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 μITRON4.0/PX仕様に定義されていない静的APIおよびサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------sac_mem メモリオブジェクトのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI2907】 【C言語API】 ER ercd = sac_mem(const void *base, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 void * base ACVCT * p_acvct メモリオブジェクトの先頭番地 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 294 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14701 14702 14703 14704 14705 14706 14707 14708 14709 14710 14711 14712 14713 14714 14715 14716 14717 14718 14719 14720 14721 14722 14723 14724 14725 14726 14727 14728 14729 14730 14731 14732 14733 14734 14735 14736 14737 14738 14739 14740 14741 14742 14743 14744 14745 14746 14747 14748 14749 14750 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2908】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2909】 E_PAR パラメータエラー ・baseがメモリオブジェクトの先頭番地でない【NGKI2910】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・baseで指定した番地を含むメモリオブジェクトが登録され ていない【NGKI2911】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象メモリオブジェクトに対する管理操作が許可されてい ない【NGKI2912】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない【NGKI2913】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象メモリオブジェクトは静的APIで登録された【NGKI2914】 【機能】 baseで指定したメモリオブジェクト(対象メモリオブジェクト)のアクセス許 可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定した値に 設定する【NGKI2915】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,sac_memをサポートしない【HRPS0157】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 静的APIによって登録したメモリオブジェクトは,アクセス許可ベクタを設定す ることができないこととした. μITRON4.0/PX仕様では,baseはメモリオブジェクトに含まれる番地を指定する ものとしていたが,この仕様では,メモリオブジェクトの先頭番地でなければ ならないものとした. ---------------------------------------------------------------------det_mem メモリオブジェクトの登録解除〔TPD〕【NGKI2916】 【C言語API】 ER ercd = det_mem(const void *base) 【パラメータ】 void * base メモリオブジェクトの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー 295 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14751 14752 14753 14754 14755 14756 14757 14758 14759 14760 14761 14762 14763 14764 14765 14766 14767 14768 14769 14770 14771 14772 14773 14774 14775 14776 14777 14778 14779 14780 14781 14782 14783 14784 14785 14786 14787 14788 14789 14790 14791 14792 14793 14794 14795 14796 14797 14798 14799 14800 E_PAR E_NOEXS E_OACV E_OBJ ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2917】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI2918】 パラメータエラー ・baseがメモリオブジェクトの先頭番地でない【NGKI2919】 オブジェクト未登録 ・baseで指定した番地を含むメモリオブジェクトが登録され ていない【NGKI2920】 オブジェクトアクセス違反 ・対象メモリオブジェクトに対する管理操作が許可されてい ない【NGKI2921】 オブジェクト状態エラー ・対象メモリオブジェクトは静的APIで登録された【NGKI2922】 【機能】 baseで指定したメモリオブジェクト(対象メモリオブジェクト)を登録解除す る【NGKI2923】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,det_memをサポートしない【HRPS0158】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 静的APIによって登録したメモリオブジェクトは,登録を解除することができな いこととした. μITRON4.0/PX仕様では,baseはメモリオブジェクトに含まれる番地を指定する ものとしていたが,この仕様では,メモリオブジェクトの先頭番地でなければ ならないものとした. ---------------------------------------------------------------------prb_mem メモリ領域に対するアクセス権のチェック〔TP〕【NGKI2924】 【C言語API】 ER ercd = prb_mem(const void *base, SIZE size, ID tskid, MODE pmmode) 【パラメータ】 void * SIZE ID MODE base size tskid pmmode 【リターンパラメータ】 ER ercd メモリ領域の先頭番地 メモリ領域のサイズ(バイト数) アクセス元のタスクのID番号 アクセスモード 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI2925】 E_ID 不正ID番号 ・tskidが有効範囲外【NGKI2927】 296 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14801 14802 14803 14804 14805 14806 14807 14808 14809 14810 14811 14812 14813 14814 14815 14816 14817 14818 14819 14820 14821 14822 14823 14824 14825 14826 14827 14828 14829 14830 14831 14832 14833 14834 14835 14836 14837 14838 14839 14840 14841 14842 14843 14844 14845 14846 14847 14848 14849 14850 E_PAR E_NOEXS E_OACV E_MACV E_OBJ パラメータエラー ・sizeが0【NGKI2929】 ・その他の条件については機能の項を参照 オブジェクト未登録 ・baseで指定した番地を含むメモリオブジェクトが登録され ていない【NGKI2930】 オブジェクトアクセス違反 ・対象メモリ領域を含むメモリオブジェクトに対する参照操 作が許可されていない【NGKI2931】 メモリアクセス違反 ・条件については機能の項を参照 オブジェクト状態エラー ・対象メモリ領域がメモリオブジェクトの境界を越えている 【NGKI2932】 【機能】 tskidで指定したタスクから,baseとsizeで指定したメモリ領域(対象メモリ領 域)に対して,pmmodeで指定した種別のアクセスが許可されているかをチェッ クする.アクセスが許可されている場合にE_OK,そうでない場合にE_MACVが返 る【NGKI2933】.tskidで指定したタスクがカーネルドメインに属する場合, E_MACVが返ることはない【NGKI2934】. pmmodeには,TPM_WRITE(=0x01U),TPM_READ(=0x02U),TPM_EXEC(= 0x04U)のいずれか,またはそれらの内のいくつかのビット毎論理和(C言語の "|")を指定することができる【NGKI2935】.TPM_WRITE,TPM_READ,TPM_EXEC を指定した場合には,それぞれ,読出しアクセス,書込みアクセス,実行アク セスが許可されているかをチェックする【NGKI2936】.また,いくつかのビッ ト毎論理和を指定した場合には,それらに対応した種別のアクセスがすべて許 可されているかをチェックする【NGKI2937】.pmmodeにそれ以外の値を指定し た場合には,E_PARエラーとなる【NGKI2938】. tskidにTSK_SELF(=0)を指定すると,自タスクから対象メモリ領域に対して アクセスが許可されているかをチェックする【NGKI2939】. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 アクセスする主体の指定方法を,保護ドメインによる指定(domid)から,タス クによる指定(tskid)に変更した.また,pmmodeに指定できるアクセス種別に TPM_EXEC を追加し,TPM_WRITEとTPM_READの値を入れ換えた.CPUロック状態か らも呼び出せるものとした. 【仕様決定の理由】 prb_memを,CPUロック状態からも呼び出せるものとしたのは,次の理由による. prb_memは,拡張サービスコールの中で,タスクから渡されたポインタが,その タスクからアクセスできる領域であるかを調べるために用いることを想定して いる.拡張サービスコールの中には,CPUロック状態でも呼び出せるものがあり, そのような拡張サービスコールを実現するには,prb_memがCPUロック状態から 呼び出せることが必要である. 297 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14851 14852 14853 14854 14855 14856 14857 14858 14859 14860 14861 14862 14863 14864 14865 14866 14867 14868 14869 14870 14871 14872 14873 14874 14875 14876 14877 14878 14879 14880 14881 14882 14883 14884 14885 14886 14887 14888 14889 14890 14891 14892 14893 14894 14895 14896 14897 14898 14899 14900 なお,prb_memを非タスクコンテキストから呼び出すことはできないが,非タス クコンテキストで実行される処理単位は必ずカーネルドメインに属するために, prb_memを使ってアクセス権を調べる必要がないことから,支障がない. ---------------------------------------------------------------------ref_mem メモリオブジェクトの状態参照〔TP〕 【C言語API】 ER ercd = ref_mem(const void *base, T_RMEM *pk_rmem) ☆未完成 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ref_memをサポートしない. ---------------------------------------------------------------------4.9 割込み管理機能 割込み処理のプログラムは,割込みサービスルーチン(ISR)として実現するこ とを推奨する.割込みサービスルーチンをカーネルに登録する場合には,まず, 割込みサービスルーチンの登録対象となる割込み要求ラインの属性を設定して おく必要がある【NGKI2940】.割込みサービスルーチンは,カーネル内の割込 みハンドラを経由して呼び出される【NGKI2941】. ただし,カーネルが用意する割込みハンドラで対応できないケースに対応する ために,アプリケーションで割込みハンドラを用意することも可能である 【NGKI2942】.この場合にも,割込みハンドラをカーネルに登録する前に,割 込みハンドラの登録対象となる割込みハンドラ番号に対応する割込み要求ライ ンの属性を設定しておく必要がある【NGKI2943】. 割込み要求ラインの属性を設定する際に指定する割込み要求ライン属性には, 次の属性を指定することができる【NGKI2944】. TA_ENAINT TA_EDGE 0x01U 0x02U 割込み要求禁止フラグをクリア エッジトリガ ターゲットによっては,ターゲット定義の割込み要求ライン属性を指定できる 場合がある【NGKI2945】.ターゲット定義の割込み要求ライン属性として,次 の属性を予約している【NGKI2946】. TA_POSEDGE TA_NEGEDGE TA_BOTHEDGE TA_LOWLEVEL TA_HIGHLEVEL TA_BROADCAST ポジティブエッジトリガ ネガティブエッジトリガ 両エッジトリガ ローレベルトリガ ハイレベルトリガ すべてのプロセッサで割込みを処理(マルチプロセッ サ対応カーネルの場合) 割込みサービスルーチンは,カーネルが実行を制御する処理単位である.割込 298 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14901 14902 14903 14904 14905 14906 14907 14908 14909 14910 14911 14912 14913 14914 14915 14916 14917 14918 14919 14920 14921 14922 14923 14924 14925 14926 14927 14928 14929 14930 14931 14932 14933 14934 14935 14936 14937 14938 14939 14940 14941 14942 14943 14944 14945 14946 14947 14948 14949 14950 みサービスルーチンは,割込みサービスルーチンIDと呼ぶID番号によって識別 する【NGKI2947】. 1つの割込み要求ラインに対して複数の割込みサービスルーチンを登録した場合, それらの割込みサービスルーチンは,割込みサービスルーチン優先度の高い順 にすべて呼び出される【NGKI2948】.割込みサービスルーチン優先度が同じ場 合には,登録した順(静的APIにより登録した場合には,割込みサービスルーチ ンを生成するAPIをコンフィギュレーションファイル中に記述した順)で呼び出 される【NGKI2949】. 保護機能対応カーネルにおいて,割込みサービスルーチンが属することのでき る保護ドメインは,カーネルドメインに限られる【NGKI2950】. 割込みサービスルーチン属性に指定できる属性はない【NGKI2951】.そのため 割込みサービスルーチン属性には,TA_NULLを指定しなければならない 【NGKI2952】. C言語による割込みサービスルーチンの記述形式は次の通り【NGKI2953】. void interrupt_service_routine(intptr_t exinf) { 割込みサービスルーチン本体 } exinfには,割込みサービスルーチンの拡張情報が渡される【NGKI2954】. 割込みハンドラは,カーネルが実行を制御する処理単位である.割込みハンド ラは,割込みハンドラ番号と呼ぶオブジェクト番号によって識別する 【NGKI2955】. 保護機能対応カーネルにおいて,割込みハンドラは,カーネルドメインに属す る【NGKI2956】. 割込みハンドラを登録する際に指定する割込みハンドラ属性には,ターゲット 定義で,次の属性を指定することができる【NGKI2957】. TA_NONKERNEL 0x02U カーネル管理外の割込み TA_NONKERNEL を指定しない場合,カーネル管理の割込みとなる【NGKI2958】. また,ターゲットによっては,その他のターゲット定義の割込みハンドラ属性 を指定できる場合がある【NGKI2959】. C言語による割込みハンドラの記述形式は次の通り【NGKI2960】. void interrupt_handler(void) { 割込みハンドラ本体 } 割込み管理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. 299 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 14951 14952 14953 14954 14955 14956 14957 14958 14959 14960 14961 14962 14963 14964 14965 14966 14967 14968 14969 14970 14971 14972 14973 14974 14975 14976 14977 14978 14979 14980 14981 14982 14983 14984 14985 14986 14987 14988 14989 14990 14991 14992 14993 14994 14995 14996 14997 14998 14999 15000 TMIN_INTPRI TMAX_INTPRI 割込み優先度の最小値(最高値) 【NGKI2961】 割込み優先度の最大値(最低値,=-1) TMIN_ISRPRI TMAX_ISRPRI 割込みサービスルーチン優先度の最小値(=1)【NGKI2962】 割込みサービスルーチン優先度の最大値 TOPPERS_SUPPORT_DIS_INT TOPPERS_SUPPORT_ENA_INT dis_intがサポートされている【NGKI2963】 ena_int がサポートされている【NGKI2964】 【使用上の注意】 1つの割込み要求ラインに複数のデバイスからの割込み要求が接続されている場 合に対応するために,割込みサービスルーチンは,それが処理する割込み要求 が発生しているかをチェックし,割込み要求が発生していない場合には何もせ ずにリターンするように実装すべきである. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,割込みサービスルーチン優先度の最大値(=TMAX_ISRPRI) は16に固定されている【ASPS0192】.ただし,タスク優先度拡張パッケージで は,TMAX_ISRPRIを256に拡張する【ASPS0193】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,割込みサービスルーチン優先度の最大値(=TMAX_ISRPRI) は16に固定されている【FMPS0159】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,割込みサービスルーチン優先度の最大値(=TMAX_ISRPRI) は16に固定されている【HRPS0159】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,割込みサービスルーチン優先度の最大値(=TMAX_ISRPRI) は16に固定されている【SSPS0137】. 【μITRON4.0仕様との関係】 割込み要求ラインの属性,割込み優先度,割込みサービスルーチン優先度は, μITRON4.0仕様にない概念であり,TMIN_INTPRI,TMAX_INTPRI,TMIN_ISRPRI, TMAX_ISRPRI は,μITRON4.0仕様に定義のないカーネル構成マクロである.また, TA_NONKERNEL は,μITRON4.0仕様に定義のない割込みハンドラ属性である. ---------------------------------------------------------------------CFG_INT 割込み要求ラインの属性の設定〔S〕【NGKI2965】 cfg_int 割込み要求ラインの属性の設定〔TD〕【NGKI2966】 【静的API】 CFG_INT(INTNO intno, { ATR intatr, PRI intpri }) 300 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15001 15002 15003 15004 15005 15006 15007 15008 15009 15010 15011 15012 15013 15014 15015 15016 15017 15018 15019 15020 15021 15022 15023 15024 15025 15026 15027 15028 15029 15030 15031 15032 15033 15034 15035 15036 15037 15038 15039 15040 15041 15042 15043 15044 15045 15046 15047 15048 15049 15050 【C言語API】 ER ercd = cfg_int(INTNO intno, const T_CINT *pk_cint) 【パラメータ】 INTNO intno T_CINT * pk_cint 割込み番号 割込み要求ラインの属性の設定情報を入れたパ ケットへのポインタ(静的APIを除く) *割込み要求ラインの属性の設定情報(パケットの内容) ATR intatr 割込み要求ライン属性 PRI intpri 割込み優先度 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2967】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2968】 E_RSATR 予約属性 ・intatrが無効【NGKI2969】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI2970】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI2971】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・intnoが有効範囲外【NGKI2972】 ・intpriが有効範囲外【NGKI2973】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI2974】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_cintが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI2975】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象割込み要求ラインに対して属性が設定済み〔S〕【NGKI2976】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 intnoで指定した割込み要求ライン(対象割込み要求ライン)に対して,各パラ メータで指定した属性を設定する【NGKI2977】. 対象割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグは,intatrにTA_ENAINTを指定し た場合にクリアされ,指定しない場合にセットされる【NGKI2978】. 静的APIにおいては,intno,intatr,intpriは整数定数式パラメータである 【NGKI2979】. 301 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15051 15052 15053 15054 15055 15056 15057 15058 15059 15060 15061 15062 15063 15064 15065 15066 15067 15068 15069 15070 15071 15072 15073 15074 15075 15076 15077 15078 15079 15080 15081 15082 15083 15084 15085 15086 15087 15088 15089 15090 15091 15092 15093 15094 15095 15096 15097 15098 15099 15100 cfg_intにおいて,ターゲット定義で,複数の割込み要求ラインの割込み優先度 が連動して設定される場合がある【NGKI2980】. intpriに指定できる値は,基本的には,TMIN_INTPRI以上,TMAX_INTPRI以下の 値である【NGKI2981】.ターゲット定義の拡張で,カーネル管理外の割込み要 求ラインに対しても属性を設定できる場合には,TMIN_INTPRIよりも小さい値を 指定することができる【NGKI2982】.このように拡張されている場合,カーネ ル管理外の割込み要求ラインを対象として,intpriにTMIN_INTPRI以上の値を指 定した場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI2983】.逆に,カーネル管理の割込 み要求ラインを対象として,intpriがTMIN_INTPRIよりも小さい値である場合に も,E_OBJエラーとなる【NGKI2984】. 対象割込み要求ラインに対して,設定できない割込み要求ライン属性をintatr に指定した場合にはE_RSATRエラー,設定できない割込み優先度をintpriに指定 した場合にはE_PARエラーとなる【NGKI2985】.ここで,設定できない割込み要 求ライン属性/割込み優先度には,ターゲット定義の制限によって設定できな い値も含む【NGKI2986】.また,マルチプロセッサ対応カーネルにおいて, cfg_intを呼び出したタスクが割り付けられているプロセッサから,対象割込み 要求ラインの属性を設定できない場合も,これに該当する【NGKI2987】. 保護機能対応カーネルにおいて,CFG_INTは,カーネルドメインの囲みの中に記 述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI2989】.また,cfg_intはカーネルオブジェクトを登録するサービスコー ルではないため,割込み要求ライン属性にTA_DOM(domid)を指定した場合には E_RSATRエラーとなる【NGKI2990】.ただし,TA_DOM(TDOM_SELF)を指定した場 合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検出されない【NGKI2991】. マルチプロセッサ対応カーネルで,CFG_INTの記述が,対象割込み要求ラインに 対して登録された割込みサービスルーチン(または対象割込み番号に対応する 割込みハンドラ番号に対して登録された割込みハンドラ)と異なるクラスの囲 み中にある場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI2992】. 【補足説明】 ターゲット定義の制限によって設定できない割込み要求ライン属性/割込み優 先度は,主にターゲットハードウェアの制限から来るものである.例えば,対 象割込み要求ラインに対して,トリガモードや割込み優先度が固定されていて, 変更できないケースが考えられる. cfg_intにおいて,ターゲット定義で,複数の割込み要求ラインの割込み優先度 が連動して設定されるのは,ターゲットハードウェアの制限により,異なる割 込み要求ラインに対して,同一の割込み優先度しか設定できないケースに対応 するための仕様である.この場合,CFG_INTにおいては,同一の割込み優先度し か設定できない割込み要求ラインに対して異なる割込み優先度を設定した場合 には,E_PARエラーとなる. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,CFG_INTのみをサポートする【ASPS0194】. 302 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15101 15102 15103 15104 15105 15106 15107 15108 15109 15110 15111 15112 15113 15114 15115 15116 15117 15118 15119 15120 15121 15122 15123 15124 15125 15126 15127 15128 15129 15130 15131 15132 15133 15134 15135 15136 15137 15138 15139 15140 15141 15142 15143 15144 15145 15146 15147 15148 15149 15150 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,CFG_INTのみをサポートする【FMPS0160】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,CFG_INTのみをサポートする【HRPS0160】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,CFG_INTのみをサポートする【SSPS0138】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていない静的APIおよびサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------CRE_ISR 割込みサービスルーチンの生成〔S〕【NGKI2993】 ATT_ISR 割込みサービスルーチンの追加〔S〕【NGKI2994】 acre_isr 割込みサービスルーチンの生成〔TD〕【NGKI2995】 【静的API】 CRE_ISR(ID isrid, { ATR isratr, intptr_t exinf, INTNO intno, ISR isr, PRI isrpri }) ATT_ISR({ ATR isratr, intptr_t exinf, INTNO intno, ISR isr, PRI isrpri }) 【C言語API】 ER_ID isrid = acre_isr(const T_CISR *pk_cisr ) 【パラメータ】 ID isrid T_CISR * pk_cisr 対象割込みサービスルーチンのID番号(CRE_ISR の場合) 割込みサービスルーチンの生成情報を入れたパ ケットへのポインタ(静的APIを除く) *割込みサービスルーチンの生成情報(パケットの内容) ATR isratr 割込みサービスルーチン属性 intptr_t exinf 割込みサービスルーチンの拡張情報 INTNO intno 割込みサービスルーチンを登録する割込み番号 ISR isr 割込みサービスルーチンの先頭番地 PRI isrpri 割込みサービスルーチン優先度 【リターンパラメータ】 ER_ID isrid 生成された割込みサービスルーチンのID番号(正 の値)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI2996】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI2997】 E_RSATR 予約属性 303 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15151 15152 15153 15154 15155 15156 15157 15158 15159 15160 15161 15162 15163 15164 15165 15166 15167 15168 15169 15170 15171 15172 15173 15174 15175 15176 15177 15178 15179 15180 15181 15182 15183 15184 15185 15186 15187 15188 15189 15190 15191 15192 15193 15194 15195 15196 15197 15198 15199 15200 E_PAR E_OACV E_MACV E_NOID E_OBJ ・isratrが無効【NGKI2998】 ・属する保護ドメインの指定が有効範囲外またはカーネルド メイン以外〔sP〕【NGKI2999】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔SP〕 【NGKI3000】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI3001】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI3002】 ・その他の条件については機能の項を参照 パラメータエラー ・intnoが有効範囲外【NGKI3003】 ・isrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3004】 ・isrpriが有効範囲外【NGKI3005】 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI3006】 メモリアクセス違反 ・pk_cisrが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI3007】 ID 番号不足 ・割り付けられる割込みサービスルーチンIDがない〔sD〕 【NGKI3008】 オブジェクト状態エラー ・isridで指定した割込みサービスルーチンが登録済み (CRE_ISRの場合)【NGKI3009】 ・その他の条件については機能の項を参照 【機能】 各パラメータで指定した割込みサービスルーチン生成情報に従って,割込みサー ビスルーチンを生成する【NGKI3010】. ATT_ISRによって生成された割込みサービスルーチンは,ID番号を持たない 【NGKI3011】. intnoで指定した割込み要求ラインの属性が設定されていない場合には,E_OBJ エラーとなる【NGKI3012】.また,intnoで指定した割込み番号に対応する割込 みハンドラ番号に対して,割込みハンドラを定義する機能(DEF_INH,def_inh) によって割込みハンドラが定義されている場合にも,E_OBJエラーとなる 【NGKI3013】.さらに,intno でカーネル管理外の割込みを指定した場合にも, E_OBJエラーとなる【NGKI3014】. 静的APIにおいては,isridはオブジェクト識別名,isratr,intno,isrpriは整 数定数式パラメータ,exinfとisrは一般定数式パラメータである【NGKI3015】. マルチプロセッサ対応カーネルで,生成する割込みサービスルーチンの属する クラスの割付け可能プロセッサが,intnoで指定した割込み要求ラインが接続さ れたプロセッサの集合に含まれていない場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI3016】.また,intnoで指定した割込み要求ラインに対して登録済みの割 込みサービスルーチンがある場合に,生成する割込みサービスルーチンがそれ と異なるクラスに属する場合にも,E_RSATRエラーとなる【NGKI3017】.さらに, 304 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15201 15202 15203 15204 15205 15206 15207 15208 15209 15210 15211 15212 15213 15214 15215 15216 15217 15218 15219 15220 15221 15222 15223 15224 15225 15226 15227 15228 15229 15230 15231 15232 15233 15234 15235 15236 15237 15238 15239 15240 15241 15242 15243 15244 15245 15246 15247 15248 15249 15250 ターゲット定義で,割込みサービスルーチンが属することができるクラスに制 限がある場合がある【NGKI3018】.生成する割込みサービスルーチンの属する クラスが,ターゲット定義の制限に合致しない場合にも,E_RSATRエラーとなる 【NGKI3019】. 静的APIにおいて,isrが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか否かは, ターゲット定義である【NGKI3020】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ATT_ISRのみをサポートする.ただし,動的生成機能拡張パッ ケージでは,acre_isrもサポートする【ASPS0195】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ATT_ISRのみをサポートする【FMPS0161】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ATT_ISRのみをサポートする【HRPS0161】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ATT_ISRのみをサポートする【SSPS0139】. 【μITRON4.0仕様との関係】 割込みサービスルーチンの生成情報に,isrpri(割込みサービスルーチンの割 込み優先度)を追加した.CRE_ISRは,μITRON4.0仕様に定義されていない静的 APIである. ---------------------------------------------------------------------AID_ISR 割付け可能な割込みサービスルーチンIDの数の指定〔SD〕【NGKI3021】 【静的API】 AID_ISR(uint_t noisr) 【パラメータ】 uint_t noisr 割付け可能な割込みサービスルーチンIDの数 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI3022】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI3023】 E_PAR パラメータエラー ・noisrが負の値【NGKI3287】 【機能】 noisrで指定した数の割込みサービスルーチンIDを,割込みサービスルーチンを 生成するサービスコールによって割付け可能な割込みサービスルーチンIDとし 305 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15251 15252 15253 15254 15255 15256 15257 15258 15259 15260 15261 15262 15263 15264 15265 15266 15267 15268 15269 15270 15271 15272 15273 15274 15275 15276 15277 15278 15279 15280 15281 15282 15283 15284 15285 15286 15287 15288 15289 15290 15291 15292 15293 15294 15295 15296 15297 15298 15299 15300 て確保する【NGKI3024】. noisrは整数定数式パラメータである【NGKI3025】. ---------------------------------------------------------------------SAC_ISR 割込みサービスルーチンのアクセス許可ベクタの設定〔SP〕【NGKI3026】 sac_isr 割込みサービスルーチンのアクセス許可ベクタの設定〔TPD〕【NGKI3027】 【静的API】 SAC_ISR(ID isrid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 【C言語API】 ER ercd = sac_isr(ID isrid, const ACVCT *p_acvct) 【パラメータ】 ID isrid ACVCT * p_acvct 対象割込みサービスルーチンのID番号 アクセス許可ベクタを入れたパケットへのポ インタ(静的APIを除く) *アクセス許可ベクタ(パケットの内容) ACPTN acptn1 通常操作1のアクセス許可パターン ACPTN acptn2 通常操作2のアクセス許可パターン ACPTN acptn3 管理操作のアクセス許可パターン ACPTN acptn4 参照操作のアクセス許可パターン 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3028】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3029】 E_ID 不正ID番号 ・isridが有効範囲外〔s〕【NGKI3030】 E_RSATR 予約属性 ・対象割込みサービスルーチンが属する保護ドメインの囲み の中に記述されていない〔S〕【NGKI3031】 ・対象割込みサービスルーチンが属するクラスの囲みの中に 記述されていない〔SM〕【NGKI3032】 E_NOEXS オブジェクト未登録 ・対象割込みサービスルーチンが未登録【NGKI3033】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・対象割込みサービスルーチンに対する管理操作が許可され ていない)〔s〕【NGKI3034】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_acvctが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない)〔s〕【NGKI3035】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象割込みサービスルーチンは静的APIで生成された〔s〕 306 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15301 15302 15303 15304 15305 15306 15307 15308 15309 15310 15311 15312 15313 15314 15315 15316 15317 15318 15319 15320 15321 15322 15323 15324 15325 15326 15327 15328 15329 15330 15331 15332 15333 15334 15335 15336 15337 15338 15339 15340 15341 15342 15343 15344 15345 15346 15347 15348 15349 15350 【NGKI3036】 ・対象割込みサービスルーチンに対してアクセス許可ベクタ が設定済み〔S〕【NGKI3037】 【機能】 isridで指定した割込みサービスルーチン(対象割込みサービスルーチン)のア クセス許可ベクタ(4つのアクセス許可パターンの組)を,各パラメータで指定 した値に設定する【NGKI3038】. 静的APIにおいては,isridはオブジェクト識別名,acptn1 式パラメータである【NGKI3039】. acptn4は整数定数 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,SAC_ISR,sac_isrをサポートしない【ASPS0196】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,SAC_ISR,sac_isrをサポートしない【FMPS0162】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,SAC_ISR,sac_isrをサポートしない【HRPS0162】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,SAC_ISR,sac_isrをサポートしない【SSPS0140】. 【未決定事項】 割込みサービスルーチンのアクセス許可ベクタを設けず,システム状態のアク セス許可ベクタでアクセス保護する方法も考えられる. ---------------------------------------------------------------------del_isr 割込みサービスルーチンの削除〔TD〕【NGKI3040】 【C言語API】 ER ercd = del_isr(ID isrid) 【パラメータ】 ID isrid 対象割込みサービスルーチンのID番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3041】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3042】 E_ID 不正ID番号 307 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15351 15352 15353 15354 15355 15356 15357 15358 15359 15360 15361 15362 15363 15364 15365 15366 15367 15368 15369 15370 15371 15372 15373 15374 15375 15376 15377 15378 15379 15380 15381 15382 15383 15384 15385 15386 15387 15388 15389 15390 15391 15392 15393 15394 15395 15396 15397 15398 15399 15400 E_NOEXS E_OACV E_OBJ ・isridが有効範囲外【NGKI3043】 オブジェクト未登録 ・対象割込みサービスルーチンが未登録【NGKI3044】 オブジェクトアクセス違反 ・対象割込みサービスルーチンに対する管理操作が許可され ていない〔P〕【NGKI3045】 オブジェクト状態エラー ・対象割込みサービスルーチンは静的APIで生成された【NGKI3046】 【機能】 isridで指定した割込みサービスルーチン(対象割込みサービスルーチン)を削 除する.具体的な振舞いは以下の通り. 対象割込みサービスルーチンの登録が解除され,その割込みサービスルーチン IDが未使用の状態に戻される【NGKI3047】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,del_isrをサポートしない【ASPS0197】.ただし,動的生成 機能拡張パッケージでは,del_isrをサポートする【ASPS0198】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,del_isrをサポートしない【FMPS0163】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,del_isrをサポートしない【HRPS0163】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,del_isrをサポートしない【SSPS0141】. ---------------------------------------------------------------------ref_isr 割込みサービスルーチンの状態参照〔T〕 【C言語API】 ER ercd = ref_isr(ID isrid, T_RISR *pk_risr) ☆未完成 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ref_isrをサポートしない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ref_isrをサポートしない. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 308 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15401 15402 15403 15404 15405 15406 15407 15408 15409 15410 15411 15412 15413 15414 15415 15416 15417 15418 15419 15420 15421 15422 15423 15424 15425 15426 15427 15428 15429 15430 15431 15432 15433 15434 15435 15436 15437 15438 15439 15440 15441 15442 15443 15444 15445 15446 15447 15448 15449 15450 HRP2カーネルでは,ref_isrをサポートしない. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_isrをサポートしない. ---------------------------------------------------------------------DEF_INH 割込みハンドラの定義〔S〕【NGKI3048】 def_inh 割込みハンドラの定義〔TD〕【NGKI3049】 【静的API】 DEF_INH(INHNO inhno, { ATR inhatr, INTHDR inthdr }) 【C言語API】 ER ercd = def_inh(INHNO inhno, const T_DINH *pk_dinh) 【パラメータ】 INHNO inhno T_DINH * pk_dinh 割込みハンドラ番号 割込みハンドラの定義情報を入れたパケットへ のポインタ(静的APIを除く) *割込みハンドラの定義情報(パケットの内容) ATR inhatr 割込みハンドラ属性 INTHDR i nthdr 割込みハンドラの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3050】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3051】 E_RSATR 予約属性 ・inhatrが無効【NGKI3052】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI3053】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI3054】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・inhnoが有効範囲外【NGKI3055】 ・inthdrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3056】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI3057】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_dinhが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI3058】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 309 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15451 15452 15453 15454 15455 15456 15457 15458 15459 15460 15461 15462 15463 15464 15465 15466 15467 15468 15469 15470 15471 15472 15473 15474 15475 15476 15477 15478 15479 15480 15481 15482 15483 15484 15485 15486 15487 15488 15489 15490 15491 15492 15493 15494 15495 15496 15497 15498 15499 15500 【機能】 inhnoで指定した割込みハンドラ番号(対象割込みハンドラ番号)に対して,各 パラメータで指定した割込みハンドラ定義情報に従って,割込みハンドラを定 義する【NGKI3059】.ただし,def_inhにおいてpk_dinhをNULLにした場合には, 対象割込みハンドラ番号に対する割込みハンドラの定義を解除する【NGKI3060】. 静的APIにおいては,inhnoとinhatrは整数定数式パラメータ,inthdrは一般定 数式パラメータである【NGKI3061】. 割込みハンドラを定義する場合(DEF_INHの場合およびdef_inhにおいて pk_dinhをNULL以外にした場合)には,次のエラーが検出される. 対象割込みハンドラ番号に対応する割込み要求ラインの属性が設定されていな い場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3062】.また,対象割込みハンドラ番号 に対してすでに割込みハンドラが定義されている場合と,対象割込みハンドラ 番号に対応する割込み番号を対象に割込みサービスルーチンが登録されている 場合にも,E_OBJエラーとなる【NGKI3063】. ターゲット定義の拡張で,カーネル管理外の割込みに対しても割込みハンドラ を定義できる場合には,次のエラーが検出される【NGKI3064】.カーネル管理 外の割込みハンドラを対象として,inhatrにTA_NONKERNELを指定しない場合に は,E_OBJエラーとなる【NGKI3065】.逆に,カーネル管理の割込みハンドラを 対象として,inhatrにTA_NONKERNELを指定した場合にも,E_OBJエラーとなる 【NGKI3066】.また,ターゲット定義でカーネル管理外に固定されている割込 みハンドラがある場合には,それを対象割込みハンドラに指定して,inhatrに TA_NONKERNEL を指定しない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI3067】.逆に, ターゲット定義でカーネル管理に固定されている割込みハンドラがある場合に は,それを対象割込みハンドラに指定して,inhatrにTA_NONKERNELを指定した 場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI3068】. 保護機能対応カーネルにおいて,DEF_INHは,カーネルドメインの囲みの中に記 述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI3070】.また,def_inhで割込みハンドラを定義する場合には,割込みハ ンドラの属する保護ドメインを設定する必要はなく,割込みハンドラ属性に TA_DOM(domid)を指定した場合にはE_RSATRエラーとなる【NGKI3071】.ただし, TA_DOM(TDOM_SELF) を指定した場合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検 出されない【NGKI3072】. マルチプロセッサ対応カーネルで,登録する割込みハンドラの属するクラスの 初期割付けプロセッサが,その割込みが要求されるプロセッサでない場合には, E_RSATRエラーとなる【NGKI3073】.また,ターゲット定義で,割込みハンドラ が属することができるクラスに制限がある場合がある【NGKI3074】.登録する 割込みハンドラの属するクラスが,ターゲット定義の制限に合致しない場合に も,E_RSATRエラーとなる【NGKI3075】. 割込みハンドラの定義を解除する場合(def_inhにおいてpk_dinhをNULLにした 場合)で,対象割込みハンドラ番号に対して割込みハンドラが定義されていな い場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3076】.また,対象割込みハンドラ番号 に対して定義された割込みハンドラが,静的APIで定義されたものである場合に 310 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15501 15502 15503 15504 15505 15506 15507 15508 15509 15510 15511 15512 15513 15514 15515 15516 15517 15518 15519 15520 15521 15522 15523 15524 15525 15526 15527 15528 15529 15530 15531 15532 15533 15534 15535 15536 15537 15538 15539 15540 15541 15542 15543 15544 15545 15546 15547 15548 15549 15550 は,ターゲット定義でE_OBJエラーとなる場合がある【NGKI3077】. ターゲット定義で,対象割込みハンドラを定義(または定義解除)できない場 合には,E_PARエラーとなる【NGKI3078】.具体的には,マルチプロセッサ対応 カーネルにおいて,def_inhを呼び出したタスクが割り付けられているプロセッ サから,対象割込みハンドラを定義(または定義解除)できない場合が,これ に該当する【NGKI3079】. 静的APIにおいて,inthdrが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか否か は,ターゲット定義である【NGKI3080】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,DEF_INHのみをサポートする【ASPS0199】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,DEF_INHのみをサポートする【FMPS0164】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,DEF_INHのみをサポートする【HRPS0164】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,DEF_INHのみをサポートする【SSPS0142】. 【μITRON4.0仕様との関係】 inthdrのデータ型をINTHDRに変更した. def_inhによって定義済みの割込みハンドラを再定義しようとした場合に, E_OBJエラーとすることにした.割込みハンドラの定義を変更するには,一度定 義を解除してから,再度定義する必要がある. ---------------------------------------------------------------------dis_int 割込みの禁止〔T〕【NGKI3081】 【C言語API】 ER ercd = dis_int(INTNO intno) 【パラメータ】 INTNO intno 割込み番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3082】 E_NOSPT 未サポートエラー 311 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15551 15552 15553 15554 15555 15556 15557 15558 15559 15560 15561 15562 15563 15564 15565 15566 15567 15568 15569 15570 15571 15572 15573 15574 15575 15576 15577 15578 15579 15580 15581 15582 15583 15584 15585 15586 15587 15588 15589 15590 15591 15592 15593 15594 15595 15596 15597 15598 15599 15600 E_PAR E_OACV E_OBJ ・条件については機能の項を参照 パラメータエラー ・intnoが有効範囲外【NGKI3083】 ・その他の条件については機能の項を参照 オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI3084】 オブジェクト状態エラー ・対象割込み要求ラインに対して割込み要求ライン属性が設 定されていない【NGKI3085】 【機能】 intnoで指定した割込み要求ライン(対象割込み要求ライン)の割込み要求禁止 フラグをセットする【NGKI3086】. ターゲット定義で,対象割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグをセットで きない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI3087】.具体的には,対象割込み要 求ラインに対して割込み要求禁止フラグがサポートされていない場合や,マル チプロセッサ対応カーネルにおいて,dis_intを呼び出したタスクが割り付けら れているプロセッサから,対象割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグが操 作できない場合が,これに該当する【NGKI3088】. ターゲット定義で,割込み要求禁止フラグの振舞いが,この仕様の規定と異な る場合がある【NGKI3089】.特にマルチプロセッサ対応カーネルでは,あるプ ロセッサからdis_intを呼び出して割込み要求禁止フラグをセットしても,他の プロセッサに対しては割込みがマスクされない場合がある【NGKI3090】. ターゲット定義で,dis_intがサポートされていない場合がある【NGKI3091】. dis_intがサポートされている場合には,TOPPERS_SUPPORT_DIS_INTがマクロ定 義される【NGKI3092】.サポートされていない場合にdis_intを呼び出すと, E_NOSPTエラーが返るか,リンク時にエラーとなる【NGKI3093】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様で実装定義としていたintnoの意味を標準化した. CPUロック状態でも呼び出せるものとした. ---------------------------------------------------------------------ena_int 割込みの許可〔T〕【NGKI3094】 【C言語API】 ER ercd = ena_int(INTNO intno) 【パラメータ】 INTNO intno 割込み番号 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 312 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15601 15602 15603 15604 15605 15606 15607 15608 15609 15610 15611 15612 15613 15614 15615 15616 15617 15618 15619 15620 15621 15622 15623 15624 15625 15626 15627 15628 15629 15630 15631 15632 15633 15634 15635 15636 15637 15638 15639 15640 15641 15642 15643 15644 15645 15646 15647 15648 15649 15650 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3095】 E_NOSPT 未サポートエラー ・条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・intnoが有効範囲外【NGKI3096】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI3097】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・対象割込み要求ラインに対して割込み要求ライン属性が設 定されていない【NGKI3098】 【機能】 intnoで指定した割込み要求ライン(対象割込み要求ライン)の割込み要求禁止 フラグをクリアする【NGKI3099】. ターゲット定義で,対象割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグをクリアで きない場合には,E_PARエラーとなる【NGKI3100】.具体的には,対象割込み要 求ラインに対して割込み要求禁止フラグがサポートされていない場合や,マル チプロセッサ対応カーネルにおいて,ena_intを呼び出したタスクが割り付けら れているプロセッサから,対象割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグが操 作できない場合が,これに該当する【NGKI3101】. ターゲット定義で,割込み要求禁止フラグの振舞いが,この仕様の規定と異な る場合がある【NGKI3102】.特にマルチプロセッサ対応カーネルでは,あるプ ロセッサからena_intを呼び出して割込み要求禁止フラグをクリアしても,他の プロセッサに対しては割込みがマスク解除されない場合がある【NGKI3103】. ターゲット定義で,ena_intがサポートされていない場合がある【NGKI3104】. ena_intがサポートされている場合には,TOPPERS_SUPPORT_ENA_INTがマクロ定 義される【NGKI3105】.サポートされていない場合にena_intを呼び出すと, E_NOSPTエラーが返るか,リンク時にエラーとなる【NGKI3106】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様で実装定義としていたintnoの意味を標準化した. CPUロック状態でも呼び出せるものとした. ---------------------------------------------------------------------ref_int 割込み要求ラインの参照〔T〕 【C言語API】 ER ercd = ref_int(INTNO intno, T_RINT *pk_rint) ☆未完成 313 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15651 15652 15653 15654 15655 15656 15657 15658 15659 15660 15661 15662 15663 15664 15665 15666 15667 15668 15669 15670 15671 15672 15673 15674 15675 15676 15677 15678 15679 15680 15681 15682 15683 15684 15685 15686 15687 15688 15689 15690 15691 15692 15693 15694 15695 15696 15697 15698 15699 15700 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ref_intをサポートしない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ref_intをサポートしない. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ref_intをサポートしない. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_intをサポートしない. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------chg_ipm 割込み優先度マスクの変更〔T〕【NGKI3107】 【C言語API】 ER ercd = chg_ipm(PRI intpri) 【パラメータ】 PRI intpri 割込み優先度マスク 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3108】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3109】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する通常操作2が許可されていない〔P〕 【NGKI3110】 【機能】 割込み優先度マスクを,intpriで指定した値に変更する【NGKI3111】. intpriは,TMIN_INTPRI以上,TIPM_ENAALL以下でなければならない.そうでな い場合には,E_PARエラーとなる【NGKI3113】.ただし,ターゲット定義の拡張 として,TMIN_INTPRIよりも小さい値を指定できる場合がある【NGKI3114】. 【補足説明】 314 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15701 15702 15703 15704 15705 15706 15707 15708 15709 15710 15711 15712 15713 15714 15715 15716 15717 15718 15719 15720 15721 15722 15723 15724 15725 15726 15727 15728 15729 15730 15731 15732 15733 15734 15735 15736 15737 15738 15739 15740 15741 15742 15743 15744 15745 15746 15747 15748 15749 15750 割込み優先度マスクをTIPM_ENAALLに変更した場合,ディスパッチ保留状態が解 除され,ディスパッチが起こる可能性がある.また,タスク例外処理ルーチン の実行が開始される可能性がある. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,chg_ipmをサポートしない【SSPS0143】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,サービスコールの名称およびパラメータの名称が実装定 義となっているサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------get_ipm 割込み優先度マスクの参照〔T〕【NGKI3115】 【C言語API】 ER ercd = get_ipm(PRI *p_intpri) 【パラメータ】 PRI * p_intpri 【リターンパラメータ】 ER ercd PRI intpri 割込み優先度マスクを入れるメモリ領域へのポ インタ エラーコード 割込み優先度マスク 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し【NGKI3116】 ・CPUロック状態からの呼出し【NGKI3117】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する参照操作が許可されていない〔P〕 【NGKI3118】 E_MACV メモリアクセス違反 ・p_intpriが指すメモリ領域への書込みアクセスが許可され ていない〔P〕【NGKI3119】 【機能】 割込み優先度マスクの現在値を参照する.参照した割込み優先度マスクは, p_intpri が指すメモリ領域に返される【NGKI3120】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,get_ipmをサポートしない【SSPS0144】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,サービスコールの名称およびパラメータの名称が実装定 315 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15751 15752 15753 15754 15755 15756 15757 15758 15759 15760 15761 15762 15763 15764 15765 15766 15767 15768 15769 15770 15771 15772 15773 15774 15775 15776 15777 15778 15779 15780 15781 15782 15783 15784 15785 15786 15787 15788 15789 15790 15791 15792 15793 15794 15795 15796 15797 15798 15799 15800 義となっているサービスコールである. ---------------------------------------------------------------------4.10 CPU 例外管理機能 CPU例外ハンドラは,カーネルが実行を制御する処理単位である.CPU例外ハン ドラは,CPU例外ハンドラ番号と呼ぶオブジェクト番号によって識別する 【NGKI3121】. 保護機能対応カーネルにおいて,CPU例外ハンドラは,カーネルドメインに属す る【NGKI3122】. CPU例外ハンドラ属性に標準で指定できる属性はないが,ターゲットによっては, ターゲット定義のCPU例外ハンドラ属性を指定できる場合がある【NGKI3123】. ターゲット定義のCPU例外ハンドラ属性として,次の属性を予約している 【NGKI3124】. TA_DIRECT CPU 例外ハンドラを直接呼び出す C言語によるCPU例外ハンドラの記述形式は次の通り【NGKI3125】. void cpu_exception_handler(void *p_excinf) { CPU 例外ハンドラ本体 } p_excinf には,CPU例外の情報を記憶しているメモリ領域の先頭番地が渡される 【NGKI3126】.これは,CPU例外ハンドラ内で,CPU例外発生時の状態を参照す る際に必要となる. ---------------------------------------------------------------------DEF_EXC CPU 例外ハンドラの定義〔S〕【NGKI3127】 def_exc CPU 例外ハンドラの定義〔TD〕【NGKI3128】 【静的API】 DEF_EXC(EXCNO excno, { ATR excatr, EXCHDR exc hdr }) 【C言語API】 ER ercd = def_exc(EXCNO excno, const T_DEXC *pk_dexc) 【パラメータ】 EXCNO excno T_DEXC * pk_dexc CPU 例外ハンドラ番号 CPU 例外ハンドラの定義情報を入れたパケットへ のポインタ(静的APIを除く) *CPU例外ハンドラの定義情報(パケットの内容) ATR excatr CPU 例外ハンドラ属性 EXCHDR exchdr CPU 例外ハンドラの先頭番地 【リターンパラメータ】 ER erc d 正常終了(E_OK)またはエラーコード 316 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15801 15802 15803 15804 15805 15806 15807 15808 15809 15810 15811 15812 15813 15814 15815 15816 15817 15818 15819 15820 15821 15822 15823 15824 15825 15826 15827 15828 15829 15830 15831 15832 15833 15834 15835 15836 15837 15838 15839 15840 15841 15842 15843 15844 15845 15846 15847 15848 15849 15850 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3129】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3130】 E_RSATR 予約属性 ・excatrが無効【NGKI3131】 ・属するクラスの指定が有効範囲外〔sM〕【NGKI3132】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔SM〕【NGKI3133】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・excnoが有効範囲外【NGKI3134】 ・exchdrがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3135】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔sP〕 【NGKI3136】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_dexcが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔sP〕【NGKI3137】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 excnoで指定したCPU例外ハンドラ番号(対象CPU例外ハンドラ番号)に対して, 各パラメータで指定したCPU例外ハンドラ定義情報に従って,CPU例外ハンドラ を定義する【NGKI3138】.ただし,def_excにおいてpk_dexcをNULLにした場合 には,対象CPU例外ハンドラ番号に対するCPU例外ハンドラの定義を解除する 【NGKI3139】. 静的APIにおいては,excnoとexcatrは整数定数式パラメータ,exchdrは一般定 数式パラメータである【NGKI3140】. CPU例外ハンドラを定義する場合(DEF_EXCの場合およびdef_excにおいて pk_dexcをNULL以外にした場合)で,対象CPU例外ハンドラ番号に対してすでに CPU例外ハンドラが定義されている場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3141】. 保護機能対応カーネルにおいて,DEF_EXCは,カーネルドメインの囲みの中に記 述しなければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる 【NGKI3143】.また,def_excでCPU例外ハンドラを定義する場合には,CPU例外 ハンドラの属する保護ドメインを設定する必要はなく,CPU例外ハンドラ属性に TA_DOM(domid) を指定した場合にはE_RSATRエラーとなる【NGKI3144】.ただし, TA_DOM(TDOM_SELF) を指定した場合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検 出されない【NGKI3145】. マルチプロセッサ対応カーネルで,登録するCPU例外ハンドラの属するクラスの 初期割付けプロセッサが,そのCPU例外が発生するプロセッサでない場合には, E_RSATRエラーとなる【NGKI3146】. CPU例外ハンドラの定義を解除する場合(def_excにおいてpk_dexcをNULLにした 317 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15851 15852 15853 15854 15855 15856 15857 15858 15859 15860 15861 15862 15863 15864 15865 15866 15867 15868 15869 15870 15871 15872 15873 15874 15875 15876 15877 15878 15879 15880 15881 15882 15883 15884 15885 15886 15887 15888 15889 15890 15891 15892 15893 15894 15895 15896 15897 15898 15899 15900 場合)で,対象CPU例外ハンドラ番号に対してCPU例外ハンドラが定義されてい ない場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3147】.また,対象CPU例外ハンドラ 番号に対して定義されたCPU例外ハンドラが,静的APIで定義されたものである 場合には,ターゲット定義でE_OBJエラーとなる場合がある【NGKI3148】. 静的APIにおいて,exchdrが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか否か は,ターゲット定義である【NGKI3149】. 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,DEF_EXCのみをサポートする【ASPS0200】. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,DEF_EXCのみをサポートする【FMPS0165】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,DEF_EXCのみをサポートする【HRPS0165】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,DEF_EXCのみをサポートする【SSPS0145】. 【μITRON4.0仕様との関係】 def_excによって,定義済みのCPU例外ハンドラを再定義しようとした場合に, E_OBJエラーとすることにした. ---------------------------------------------------------------------xsns_dpn CPU 例外発生時のディスパッチ保留状態の参照〔TI〕【NGKI3150】 【C言語API】 bool_t stat = xsns_dpn(void *p_excinf) 【パラメータ】 void * p_excinf 【リターンパラメータ】 bool_t state CPU 例外の情報を記憶しているメモリ領域の先頭 番地 ディスパッチ保留状態 【機能】 CPU例外発生時のディスパッチ保留状態を参照する.具体的な振舞いは以下の通 り. 実行中のCPU例外ハンドラの起動原因となったCPU例外が,カーネル管理外の CPU例外でなく,タスクコンテキストで発生し,そのタスクがディスパッチ保留 状態でなかった場合にfalse,そうでない場合にtrueが返る【NGKI3151】. 318 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15901 15902 15903 15904 15905 15906 15907 15908 15909 15910 15911 15912 15913 15914 15915 15916 15917 15918 15919 15920 15921 15922 15923 15924 15925 15926 15927 15928 15929 15930 15931 15932 15933 15934 15935 15936 15937 15938 15939 15940 15941 15942 15943 15944 15945 15946 15947 15948 15949 15950 保護機能対応のカーネルにおいて,xsns_dpnをタスクコンテキストから呼び出 した場合には,trueが返る【NGKI3152】. p_excinf には,CPU例外ハンドラに渡されるp_excinfパラメータをそのまま渡す 【NGKI3153】. 【使用方法】 xsns_dpn は,CPU例外ハンドラの中で,どのようなリカバリ処理が可能かを判別 したい場合に使用する.xsns_dpnがfalseを返した場合(trueを返した場合では ないので注意すること),非タスクコンテキスト用のサービスコールを用いて CPU例外を起こしたタスクよりも優先度の高いタスクを起動または待ち解除し, そのタスクでリカバリ処理を行うことができる.ただし,CPU例外を起こしたタ スクが最高優先度の場合には,この方法でリカバリ処理を行うことはできない. 【使用上の注意】 xsns_dpn は,E_CTXエラーを返すことがないために〔TI〕となっているが,CPU 例外ハンドラから呼び出すためのものである.CPU例外ハンドラ以外から呼び出 した場合や,p_excinfに正しい値を渡さなかった場合,xsns_dpnが返す値は意 味を持たない. どちらの条件でtrueが返るか間違いやすいので注意すること. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,xsns_dpnをサポートしない【SSPS0146】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. 【仕様決定の理由】 保護機能対応のカーネルにおいては,xsns_dpnをユーザドメインから呼び出す ことは禁止すべきである.ユーザドメインの実行中は,必ずタスクコンテキス トであるため,xsns_dpnをタスクコンテキストから呼び出した場合に必ずtrue を返す仕様とすることで,xsns_dpnをユーザドメインから呼び出すことを実質 的に禁止している. ---------------------------------------------------------------------xsns_xpn CPU 例外発生時のタスク例外処理保留状態の参照〔TI〕【NGKI3154】 【C言語API】 bool_t stat = xsns_xpn(void *p_excinf) 【パラメータ】 void * p_excinf CPU 例外の情報を記憶しているメモリ領域の先頭 番地 【リターンパラメータ】 319 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 15951 15952 15953 15954 15955 15956 15957 15958 15959 15960 15961 15962 15963 15964 15965 15966 15967 15968 15969 15970 15971 15972 15973 15974 15975 15976 15977 15978 15979 15980 15981 15982 15983 15984 15985 15986 15987 15988 15989 15990 15991 15992 15993 15994 15995 15996 15997 15998 15999 16000 bool_t state タスク例外処理保留状態 【機能】 CPU例外発生時にタスク例外処理ルーチンを実行開始できない状態であったかを 参照する.具体的な振舞いは以下の通り. 実行中のCPU例外ハンドラの起動原因となったCPU例外が,カーネル管理外の CPU例外でなく,タスクコンテキストで発生し,そのタスクがタスク例外処理ルー チンを実行開始できる状態であった場合にfalse,そうでない場合にtrueが返る 【NGKI3155】. 保護機能対応カーネルにおいて,CPU例外が発生したタスクがユーザタスクの場 合には,ユーザスタック領域の残りが少なく,タスク例外処理ルーチンを実行 開始できない(タスク例外処理ルーチンを実行開始しようとすると,タスク例 外実行開始時スタック不正例外が発生する)場合にも,trueを返す【NGKI3156】. 保護機能対応のカーネルにおいて,xsns_xpnをタスクコンテキストから呼び出 した場合には,trueが返る【NGKI3157】. p_excinf には,CPU例外ハンドラに渡されるp_excinfパラメータをそのまま渡す 【NGKI3158】. 【使用方法】 xsns_xpnは,CPU例外ハンドラの中で,どのようなリカバリ処理が可能かを判別 したい場合に使用する.xsns_xpnがfalseを返した場合(trueを返した場合では ないので注意すること),非タスクコンテキスト用のサービスコールを用いて CPU例外を起こしたタスクにタスク例外を要求し,タスク例外処理ルーチンでリ カバリ処理を行うことができる. 【使用上の注意】 xsns_xpn は,E_CTXエラーを返すことがないために〔TI〕となっているが,CPU 例外ハンドラから呼び出すためのものである.CPU例外ハンドラ以外から呼び出 した場合や,p_excinfに正しい値を渡さなかった場合,xsns_xpnが返す値は意 味を持たない. どちらの条件でtrueが返るか間違いやすいので注意すること. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,xsns_xpnをサポートしない【SSPS0147】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていないサービスコールである. 【仕様決定の理由】 320 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16001 16002 16003 16004 16005 16006 16007 16008 16009 16010 16011 16012 16013 16014 16015 16016 16017 16018 16019 16020 16021 16022 16023 16024 16025 16026 16027 16028 16029 16030 16031 16032 16033 16034 16035 16036 16037 16038 16039 16040 16041 16042 16043 16044 16045 16046 16047 16048 16049 16050 保護機能対応のカーネルにおいては,xsns_xpnをユーザドメインから呼び出す ことは禁止すべきである.ユーザドメインの実行中は,必ずタスクコンテキス トであるため,xsns_xpnをタスクコンテキストから呼び出した場合に必ずtrue を返す仕様とすることで,xsns_xpnをユーザドメインから呼び出すことを実質 的に禁止している. ---------------------------------------------------------------------4.11 拡張サービスコール管理機能 拡張サービスコールは,非特権モードで実行される処理単位から,特権モード で実行すべきルーチンを呼び出すための機能である【NGKI3159】.特権モード で実行するルーチンを,拡張サービスコールと呼ぶ.拡張サービスコールは, 特権モードで実行される処理単位からも呼び出すことができる【NGKI3160】. 保護機能対応カーネルにおいて,拡張サービスコールは,カーネルドメインに 属する【NGKI3161】.拡張サービスコールは,それを呼び出す処理単位とは別 の処理単位であり,拡張サービスコールからカーネルオブジェクトをアクセス する場合には,拡張サービスコールがアクセスの主体となる【NGKI3162】.そ のため,拡張サービスコールからは,すべてのカーネルオブジェクトに対して, すべての種別のアクセスを行うことが許可される. 保護機能対応でないカーネルでは,非特権モードと特権モードの区別がないた め,拡張サービスコール管理機能をサポートしない【NGKI3163】. C言語による拡張サービスコールの記述形式は次の通り【NGKI3164】. ER_UINT extended_svc(intptr_t par1, intptr_t par2, intptr_t par3, intptr_t par4, intptr_t par5, ID cdmid) { 拡張サービスコール本体 } cdmidには,拡張サービスコールを呼び出した処理単位が属する保護ドメインの ID番号が渡される【NGKI3165】.すなわち,拡張サービスコールから呼び出し た場合にはTDOM_KERNEL(=-1)が,タスク本体(拡張サービスコールを除く) から呼び出した場合にはそのタスク(自タスク)の属する保護ドメインIDが渡 される. par1 par5には,拡張サービスコールに対するパラメータが渡される 【NGKI3166】. 拡張サービスコール管理機能に関連するカーネル構成マクロは次の通り. TMAX_FNCD 拡張サービスコールの機能番号の最大値(動的生成対応 カーネルでは,登録できる拡張サービスコールの数に一 致)【NGKI3167】 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,拡張サービスコール管理機能をサポートしない【ASPS0201】. 321 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16051 16052 16053 16054 16055 16056 16057 16058 16059 16060 16061 16062 16063 16064 16065 16066 16067 16068 16069 16070 16071 16072 16073 16074 16075 16076 16077 16078 16079 16080 16081 16082 16083 16084 16085 16086 16087 16088 16089 16090 16091 16092 16093 16094 16095 16096 16097 16098 16099 16100 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,拡張サービスコール管理機能をサポートしない【FMPS0166】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,拡張サービスコール管理機能をサポートする【HRPS0166】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,拡張サービスコール管理機能をサポートしない【SSPS0148】. 【未決定事項】 動的生成対応カーネルにおいてTMAX_FNCDを設定する方法については,現時点で は未決定である. 【μITRON4.0仕様との関係】 この仕様では,拡張サービスコールに対するパラメータを,intptr_t型のパラ メータ5個に固定した. 拡張サービスコールに,それを呼び出した処理単位が属する保護ドメインのID 番号を渡す機能を追加した. TMAX_FNCD は,μITRON4.0仕様に規定されていないカーネル構成マクロである. ---------------------------------------------------------------------DEF_SVC 拡張サービスコールの定義〔SP〕【NGKI3168】 def_svc 拡張サービスコールの定義〔TPD〕【NGKI3169】 【静的API】 DEF_SVC(FN fncd, { ATR svcatr, EXTSVC extsvc, SIZE stksz }) 【C言語API】 ER ercd = def_svc(FN fncd, const T_DSVC *pk_dsvc) 【パラメータ】 FN fncd T_DSVC * pk_d svc 拡張サービスコールの機能コード 拡張サービスコールの定義情報を入れたパケッ トへのポインタ(静的APIを除く) *拡張サービスコールの定義情報(パケットの内容) ATR svcatr 拡張サービスコール属性 EXTSVC extsvc 拡張サービスコールの先頭番地 SIZE stksz 拡張サービスコールで使用するスタックサイズ 【リターンパラメータ】 ER ercd 正常終了(E_OK)またはエラーコード 322 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16101 16102 16103 16104 16105 16106 16107 16108 16109 16110 16111 16112 16113 16114 16115 16116 16117 16118 16119 16120 16121 16122 16123 16124 16125 16126 16127 16128 16129 16130 16131 16132 16133 16134 16135 16136 16137 16138 16139 16140 16141 16142 16143 16144 16145 16146 16147 16148 16149 16150 【エラーコード】 E_CTX コンテキストエラー ・非タスクコンテキストからの呼出し〔s〕【NGKI3170】 ・CPUロック状態からの呼出し〔s〕【NGKI3171】 E_RSATR 予約属性 ・svcatrが無効【NGKI3172】 ・その他の条件については機能の項を参照 E_PAR パラメータエラー ・fncdが0または負の値【NGKI3173】 ・fncdがTMAX_FNCDよりも大きい〔s〕【NGKI3174】 ・extsvcがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3175】 ・stkszが負の値〔S〕【NGKI3290】 E_OACV オブジェクトアクセス違反 ・システム状態に対する管理操作が許可されていない〔s〕 【NGKI3176】 E_MACV メモリアクセス違反 ・pk_dsvcが指すメモリ領域への読出しアクセスが許可されて いない〔s〕【NGKI3177】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・条件については機能の項を参照 【機能】 fncdで指定した機能コード(対象機能コード)に対して,各パラメータで指定 した拡張サービスコール定義情報に従って,拡張サービスコールを定義する 【NGKI3178】.ただし,def_svcにおいてpk_dsvcをNULLにした場合には,対象 機能コードに対する拡張サービスコールの定義を解除する【NGKI3179】. 静的APIにおいては,fncd,svcatr,stkszは整数定数式パラメータ,svchdrは 一般定数式パラメータである【NGKI3180】. 拡張サービスコールを定義する場合(DEF_SVCの場合およびdef_svcにおいて pk_dsvcをNULL以外にした場合)で,対象機能コードに対してすでに拡張サービ スコールが定義されている場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3181】. DEF_SVCは,カーネルドメインの囲みの中に記述しなければならない.そうでな い場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI3183】.また,def_svcで拡張サービ スコールを定義する場合には,拡張サービスコールの属する保護ドメインを設 定する必要はなく,拡張サービスコール属性にTA_DOM(domid)を指定した場合に はE_RSATRエラーとなる【NGKI3184】.ただし,TA_DOM(TDOM_SELF)を指定した 場合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検出されない【NGKI3185】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,DEF_SVCは,クラスの囲みの外に記述しな ければならない.そうでない場合には,E_RSATRエラーとなる【NGKI3187】.ま た,def_svcで拡張サービスコールを定義する場合には,拡張サービスコールの 属するクラスを設定する必要はなく,拡張サービスコール属性に TA_CLS(clsid) を指定した場合にはE_RSATRエラーとなる【NGKI3188】.ただし, TA_CLS(TCLS_SELF) を指定した場合には,指定が無視され,E_RSATRエラーは検 出されない【NGKI3189】. 323 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16151 16152 16153 16154 16155 16156 16157 16158 16159 16160 16161 16162 16163 16164 16165 16166 16167 16168 16169 16170 16171 16172 16173 16174 16175 16176 16177 16178 16179 16180 16181 16182 16183 16184 16185 16186 16187 16188 16189 16190 16191 16192 16193 16194 16195 16196 16197 16198 16199 16200 拡張サービスコールの定義を解除する場合(def_svcにおいてpk_dsvcをNULLに した場合)で,対象機能コードに対して拡張サービスコールが定義されていな い場合には,E_OBJエラーとなる【NGKI3190】. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,DEF_SVCのみをサポートする【HRPS0167】. 【μITRON4.0仕様との関係】 拡張サービスコールの定義情報に,stksz(拡張サービスコールで使用するスタッ クサイズ)を追加した. extsvcのデータ型を,EXTSVCに変更した. ---------------------------------------------------------------------cal_svc 拡張サービスコールの呼出し〔TIP〕【NGKI3191】 【C言語API】 ER_UINT ercd = cal_svc(FN fncd, intptr_t par1, intptr_t par2, intptr_t par3, intptr_t par4, intptr_t par5) 【パラメータ】 FN intptr_t intptr_t intptr_t intptr_t intptr_t fncd par1 par2 par3 par4 par5 【リターンパラメータ】 ER_UINT ercd 呼び出す拡張サービスコールの機能コード 拡張サービスコールへの第1パラメータ 拡張サービスコールへの第2パラメータ 拡張サービスコールへの第3パラメータ 拡張サービスコールへの第4パラメータ 拡張サービスコールへの第5パラメータ 正常終了(正の値または0)またはエラーコード 【エラーコード】 E_SYS システムエラー ・条件については機能の項を参照 E_RSFN 予約機能コード ・fncdが0または負の値【NGKI3192】 ・fncdがTMAX_FNCDよりも大きい【NGKI3193】 ・fncdで指定した機能コードに対して拡張サービスコールが 定義されていない【NGKI3194】 E_NOMEM メモリ不足 ・条件については機能の項を参照 *その他,拡張サービスコールが返すエラーコードがそのまま返る. 【機能】 fncdで指定した機能コードの拡張サービスコールを,par1,par2, ,par5を パラメータとして呼び出し,拡張サービスコールの返値を返す【NGKI3195】. また,タスクコンテキストから呼び出した場合には,次のエラーが検出される 324 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16201 16202 16203 16204 16205 16206 16207 16208 16209 16210 16211 16212 16213 16214 16215 16216 16217 16218 16219 16220 16221 16222 16223 16224 16225 16226 16227 16228 16229 16230 16231 16232 16233 16234 16235 16236 16237 16238 16239 16240 16241 16242 16243 16244 16245 16246 16247 16248 16249 16250 【NGKI3196】.スタック(ユーザタスクの場合はシステムスタック)の残り領 域が,拡張サービスコールで使用するスタックサイズよりも小さい場合には, E_NOMEMエラーとなる【NGKI3197】.また,拡張サービスコールのネストレベル が上限(=255)を超える場合には,E_SYSエラーが返る【NGKI3198】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様では,cal_svcでカーネルのサービスコールを呼び出せるかどう かは実装定義としているが,この仕様では,カーネルのサービスコールを呼び 出せないこととした. 拡張サービスコールが呼び出される時に,スタックの残り領域のサイズをチェッ クする機能を追加した. 拡張サービスコールに対するパラメータを,intptr_t型のパラメータ5個に固定 し,cal_svcから返るエラー(E_SYS,E_RSFN,E_NOMEM)について規定した. 【仕様決定の理由】 パラメータの型と数を固定したのは,型チェックを厳密にできるようにし,パ ラメータをコンパイラやコーリングコンベンションによらずに正しく渡せるよ うにするためである. ---------------------------------------------------------------------4.12 システム構成管理機能 システム構成管理機能には,非タスクコンテキスト用スタック領域を設定する 機能,初期化ルーチンと終了処理ルーチンを登録する機能,カーネルのコンフィ ギュレーション情報やバージョン情報を参照する機能が含まれる. 非タスクコンテキスト用スタック領域は,非タスクコンテキストで実行される 処理単位が用いるスタック領域である. 保護機能対応カーネルにおいて,非タスクコンテキスト用のスタック領域は, カーネルの用いるオブジェクト管理領域と同様に扱われる【NGKI3199】. 初期化ルーチンは,カーネルが実行を制御する処理単位で,カーネルの動作開 始の直前に,カーネル非動作状態で実行される【NGKI3200】. 保護機能対応カーネルにおいて,初期化ルーチンは,カーネルドメインに属す る【NGKI3201】. 初期化ルーチン属性に指定できる属性はない【NGKI3202】.そのため初期化ルー チン属性には,TA_NULLを指定しなければならない【NGKI3203】. C言語による初期化ルーチンの記述形式は次の通り【NGKI3204】. void initialization_routine(intptr_t exinf) { 初期化ルーチン本体 325 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16251 16252 16253 16254 16255 16256 16257 16258 16259 16260 16261 16262 16263 16264 16265 16266 16267 16268 16269 16270 16271 16272 16273 16274 16275 16276 16277 16278 16279 16280 16281 16282 16283 16284 16285 16286 16287 16288 16289 16290 16291 16292 16293 16294 16295 16296 16297 16298 16299 16300 } exinfには,初期化ルーチンの拡張情報が渡される【NGKI3205】. 終了処理ルーチンは,カーネルが実行を制御する処理単位で,カーネルの動作 終了の直後に,カーネル非動作状態で実行される【NGKI3206】. 保護機能対応カーネルにおいて,終了処理ルーチンは,カーネルドメインに属 する【NGKI3207】. 終了処理ルーチン属性に指定できる属性はない【NGKI3208】.そのため終了処 理ルーチン属性には,TA_NULLを指定しなければならない【NGKI3209】. C言語による終了処理ルーチンの記述形式は次の通り【NGKI3210】. void termination_routine(intptr_t exinf) { 終了処理ルーチン本体 } exinfには,終了処理ルーチンの拡張情報が渡される【NGKI3211】. 【μITRON4.0仕様との関係】 非タスクコンテキスト用スタック領域の設定と,終了処理ルーチンは, μITRON4.0仕様に規定されていない機能である. ---------------------------------------------------------------------DEF_ICS 非タスクコンテキスト用スタック領域の設定〔S〕【NGKI3212】 【静的API】 DEF_ICS({ SIZE istksz, STK_T *istk }) 【パラメータ】 *非タスクコンテキスト用スタック領域の設定情報 SIZE istksz 非タスクコンテキスト用スタック領域のサイズ (バイト数) STK_T istk 非タスクコンテキスト用スタック領域の先頭番地 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI3213】 ・クラスの囲みの中に記述されていない〔M〕【NGKI3214】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOMEM メモリ不足 ・非タスクコンテキスト用スタック領域が確保できない【NGKI3215】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・非タスクコンテキスト用スタック領域が設定済み【NGKI3216】 ・その他の条件については機能の項を参照 326 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16301 16302 16303 16304 16305 16306 16307 16308 16309 16310 16311 16312 16313 16314 16315 16316 16317 16318 16319 16320 16321 16322 16323 16324 16325 16326 16327 16328 16329 16330 16331 16332 16333 16334 16335 16336 16337 16338 16339 16340 16341 16342 16343 16344 16345 16346 16347 16348 16349 16350 【機能】 各パラメータで指定した非タスクコンテキスト用スタック領域の設定情報に従っ て,非タスクコンテキスト用スタック領域を設定する【NGKI3217】.istkszに 0以下の値を指定した時や,ターゲット定義の最小値よりも小さい値を指定した 時には,E_PARエラーとなる【NGKI3254】. istkszは整数定数式パラメータ,istkは一般定数式パラメータである.コンフィ ギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出することができ ない【NGKI3218】. istkをNULLとした場合,istkszで指定したサイズのスタック領域が,コンフィ ギュレータにより確保される【NGKI3219】.istkszにターゲット定義の制約に 合致しないサイズを指定した時には,ターゲット定義の制約に合致するように 大きい方に丸めたサイズで確保される【NGKI3220】. istkにNULL以外を指定した場合,istkとistkszで指定したスタック領域は,ア プリケーションで確保しておく必要がある【NGKI3221】.スタック領域をアプ リケーションで確保する方法については,「2.15.3 カーネル共通マクロ」の節 を参照すること.その方法に従わず,istkやistkszにターゲット定義の制約に 合致しない先頭番地やサイズを指定した時には,E_PARエラーとなる 【NGKI3222】. 保護機能対応カーネルでは,istkとistkszで指定した非タスクコンテキスト用 のスタック領域がカーネル専用のメモリオブジェクトに含まれない場合, E_OBJエラーとなる【NGKI3223】. DEF_ICSにより非タスクコンテキスト用スタック領域を設定しない場合,ターゲッ ト定義のデフォルトのサイズのスタック領域が,コンフィギュレータにより確 保される【NGKI3224】. マルチプロセッサ対応カーネルでは,非タスクコンテキスト用スタック領域は プロセッサ毎に確保する必要がある【NGKI3225】.DEF_ICSにより設定する非タ スクコンテキスト用スタック領域は,DEF_ICSの記述をその囲みの中に含むクラ スの初期割付けプロセッサが使用する【NGKI3226】.そのプロセッサに対して すでに非タスクコンテキスト用スタック領域が設定されている場合には, E_OBJエラーとなる【NGKI3227】. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,istkにはNULLを指定しなくてはならず,その場合でも,コン フィギュレータは非タスクコンテキスト用のスタック領域を確保しない 【SSPS0149】.これは,SSPカーネルでは,すべての処理単位が共有スタック領 域を使用し,非タスクコンテキストのみが用いるスタック領域を持たないため である.そのため,DEF_ICSの役割は,非タスクコンテキストが用いるスタック 領域のサイズを指定することのみとなる.itskにNULL以外を指定した場合には, E_PARエラーとなる【SSPS0150】. 共有スタック領域の設定方法については,DEF_STKの項を参照すること. 327 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16351 16352 16353 16354 16355 16356 16357 16358 16359 16360 16361 16362 16363 16364 16365 16366 16367 16368 16369 16370 16371 16372 16373 16374 16375 16376 16377 16378 16379 16380 16381 16382 16383 16384 16385 16386 16387 16388 16389 16390 16391 16392 16393 16394 16395 16396 16397 16398 16399 16400 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------DEF_STK 共有スタック領域の設定〔S〕【NGKI3228】 【静的API】 DEF_STK({ SIZE stksz, S TK_T *stk }) 【パラメータ】 *共有スタック領域の設定情報 SIZE stksz 共有スタック領域のサイズ(バイト数) STK_T stk 共有スタック領域の先頭番地 【エラーコード】 E_PAR パラメータエラー ・条件については機能の項を参照 E_NOMEM メモリ不足 ・共有スタック領域が確保できない【NGKI3229】 E_OBJ オブジェクト状態エラー ・共有スタック領域が設定済み 【サポートするカーネル】 DEF_STKは,TOPPERS/SSPカーネルのみがサポートする静的APIである.他のカー ネルは,DEF_STKをサポートしない【NGKI3230】. 【機能】 各パラメータで指定した共有スタック領域の設定情報に従って,共有スタック 領域を設定する【NGKI3231】.stkszに0以下の値を指定した時や,ターゲット 定義の最小値よりも小さい値を指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI3255】. stkszは整数定数式パラメータ,stkは一般定数式パラメータである.コンフィ ギュレータは,静的APIのメモリ不足(E_NOMEM)エラーを検出することができ ない【NGKI3232】. stkをNULLとした場合,stkszで指定したサイズのスタック領域が,コンフィギュ レータにより確保される【NGKI3233】.stkszにターゲット定義の制約に合致し ないサイズを指定した時には,ターゲット定義の制約に合致するように大きい 方に丸めたサイズで確保される【NGKI3234】. stkにNULL以外を指定した場合,stkとstkszで指定したスタック領域は,アプリ ケーションで確保しておく必要がある【NGKI3235】.スタック領域をアプリケー ションで確保する方法については,「2.15.3 カーネル共通マクロ」の節を参照 すること.その方法に従わず,stkやstkszにターゲット定義の制約に合致しな い先頭番地やサイズを指定した時には,E_PARエラーとなる【NGKI3236】. コンフィギュレータは,各タスクのスタック領域のサイズと,非タスクコンテ キスト用のスタック領域のサイズから,共有スタック領域に必要なサイズを計 328 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16401 16402 16403 16404 16405 16406 16407 16408 16409 16410 16411 16412 16413 16414 16415 16416 16417 16418 16419 16420 16421 16422 16423 16424 16425 16426 16427 16428 16429 16430 16431 16432 16433 16434 16435 16436 16437 16438 16439 16440 16441 16442 16443 16444 16445 16446 16447 16448 16449 16450 算する【NGKI3237】.DEF_STKにより共有スタック領域を設定しない場合,必要 なサイズの共有スタック領域が,コンフィギュレータにより確保される 【NGKI3238】. stkszに指定したスタック領域のサイズが,共有スタック領域に必要なサイズよ りも小さい場合,コンフィギュレータは警告メッセージを出力する【NGKI3239】. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------ATT_INI 初期化ルーチンの追加〔S〕【NGKI3240】 【静的API】 ATT_INI({ ATR iniatr, intptr_t exinf, INIRTN inirtn }) 【パラメータ】 *初期化ルーチンの追加情報 ATR iniatr 初期化ルーチン属性 intptr_t exinf 初期化ルーチンの拡張情報 INIRTN inirtn 初期化ルーチンの先頭番地 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・iniatrが無効【NGKI3241】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI3242】 E_PAR パラメータエラー ・inirtnがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3243】 【機能】 各パラメータで指定した初期化ルーチン追加情報に従って,初期化ルーチンを 追加する【NGKI3244】. iniatrは整数定数式パラメータ,exinfとinirtnは一般定数式パラメータである 【NGKI3245】. inirtnが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか否かは,ターゲット定義 である【NGKI3246】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,クラスに属さないグローバル初期化ルー チンはマスタプロセッサで実行され,クラスに属するローカル初期化ルーチン はそのクラスの初期割付けプロセッサにより実行される. ---------------------------------------------------------------------ATT_TER 終了処理ルーチンの追加〔S〕【NGKI3247】 【静的API】 ATT_TER({ ATR teratr, intptr_t exinf, TERRTN terrtn }) 329 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16451 16452 16453 16454 16455 16456 16457 16458 16459 16460 16461 16462 16463 16464 16465 16466 16467 16468 16469 16470 16471 16472 16473 16474 16475 16476 16477 16478 16479 16480 16481 16482 16483 16484 16485 16486 16487 16488 16489 16490 16491 16492 16493 16494 16495 16496 16497 16498 16499 16500 【パラメータ】 *終了処理ルーチンの追加情報 ATR teratr 終了処理ルーチン属性 intptr_t exinf 終了処理ルーチンの拡張情報 TERRTN terrtn 終了処理ルーチンの先頭番地 【エラーコード】 E_RSATR 予約属性 ・teratrが無効【NGKI3248】 ・カーネルドメインの囲みの中に記述されていない〔P〕【NGKI3249】 E_PAR パラメータエラー ・terrtnがプログラムの先頭番地として正しくない【NGKI3250】 【機能】 各パラメータで指定した終了処理ルーチン追加情報に従って,終了処理ルーチ ンを追加する【NGKI3251】. teratrは整数定数式パラメータ,exinfとterrtnは一般定数式パラメータである 【NGKI3252】. terrtnが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか否かは,ターゲット定義 である【NGKI3253】. 【補足説明】 マルチプロセッサ対応カーネルでは,クラスに属さないグローバル終了処理ルー チンはマスタプロセッサで実行され,クラスに属するローカル終了処理ルーチ ンはそのクラスの初期割付けプロセッサにより実行される. 【μITRON4.0仕様との関係】 μITRON4.0仕様に定義されていない静的APIである. ---------------------------------------------------------------------ref_cfg コンフィギュレーション情報の参照〔T〕 【C言語API】 ER ercd = ref_cfg(T_RCFG *pk_rcfg) ☆未完成 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ref_cfgをサポートしない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ref_cfgをサポートしない. 330 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16501 16502 16503 16504 16505 16506 16507 16508 16509 16510 16511 16512 16513 16514 16515 16516 16517 16518 16519 16520 16521 16522 16523 16524 16525 16526 16527 16528 16529 16530 16531 16532 16533 16534 16535 16536 16537 16538 16539 16540 16541 16542 16543 16544 16545 16546 16547 16548 16549 16550 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ref_cfgをサポートしない. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_cfgをサポートしない. ---------------------------------------------------------------------ref_ver バージョン情報の参照〔T〕 【C言語API】 ER ercd = ref_ver(T_RVER *pk_rver) ☆未完成 【TOPPERS/ASPカーネルにおける規定】 ASPカーネルでは,ref_verをサポートしない. 【TOPPERS/FMPカーネルにおける規定】 FMPカーネルでは,ref_verをサポートしない. 【TOPPERS/HRP2カーネルにおける規定】 HRP2カーネルでは,ref_verをサポートしない. 【TOPPERS/SSPカーネルにおける規定】 SSPカーネルでは,ref_verをサポートしない. ---------------------------------------------------------------------- 第5章 リファレンス 5.1 サービスコール一覧 (1) タスク管理機能 ER_ID tskid = acre_tsk(const T_CTSK *pk_ctsk) ER ercd = sac_tsk(ID tskid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_tsk(ID tskid) ER ercd = act_tsk(ID tskid) ER ercd = iact_tsk(ID tskid) ER ercd = mact_tsk(ID tskid, ID prcid) ER ercd = imact_tsk(ID tskid, ID prcid) ER_UINT actcnt = can_act(ID tskid) ER ercd = mig_tsk(ID tskid, ID prcid) ER ercd = ext_tsk() ER ercd = ter_tsk(ID tskid) 331 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔TM〕 〔IM〕 〔T〕 〔TM〕 〔T〕 〔T〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16551 16552 16553 16554 16555 16556 16557 16558 16559 16560 16561 16562 16563 16564 16565 16566 16567 16568 16569 16570 16571 16572 16573 16574 16575 16576 16577 16578 16579 16580 16581 16582 16583 16584 16585 16586 16587 16588 16589 16590 16591 16592 16593 16594 16595 16596 16597 16598 16599 16600 ER ER ER ER ercd ercd ercd ercd = = = = chg_pri(ID tskid, PRI tskpri) get_pri(ID tskid, PRI *p_tskpri) get_inf(intptr_t *p_exinf) ref_tsk(ID tskid, T_RTSK *pk_rtsk) 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 (2) タスク付属同期機能 ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER_UINT ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd ER ercd = slp_tsk() = tslp_tsk(TMO tmout) = wup_tsk(ID tskid) = iwup_tsk(ID tskid) wupcnt = can_wup(ID tskid) = rel_wai(ID tskid) = irel_wai(ID tskid) = sus_tsk(ID tskid) = rsm_tsk(ID tskid) = dis_wai(ID tskid) = idis_wai(ID tskid) = ena_wai(ID tskid) = iena_wai(ID tskid) = dly_tsk(RELTIM dlytim) 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔TP〕 〔IP〕 〔TP〕 〔IP〕 〔T〕 (3) タスク例外処理機能 ER ercd = def_tex(ID tskid, cons t T_DTEX *pk_dtex) ER ercd = ras_tex(ID tskid, TEXPTN rasptn) ER ercd = iras_tex(ID tskid, TEXPTN rasptn) ER ercd = dis_tex() ER ercd = ena_tex() bool_t state = sns_tex() ER ercd = ref_tex(ID tskid, T_RTEX *pk_rtex) 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔TI〕 〔T〕 (4) 同期・通信機能 セマフォ ER_ID semid = acre_sem(const T_CSEM *pk_csem) ER ercd = sac_sem(ID semid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_sem(ID semid) ER ercd = sig_sem(ID semid) ER ercd = isig_sem(ID semid) ER ercd = wai_sem(ID semid) ER ercd = pol_sem(ID semid) ER ercd = twai_sem(ID semid, TMO tmout) ER er cd = ini_sem(ID semid) ER ercd = ref_sem(ID semid, T_RSEM *pk_rsem) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 イベントフラグ ER_ID flgid = acre_flg(const T_CFLG *pk_cflg) 332 〔TD〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16601 16602 16603 16604 16605 16606 16607 16608 16609 16610 16611 16612 16613 16614 16615 16616 16617 16618 16619 16620 16621 16622 16623 16624 16625 16626 16627 16628 16629 16630 16631 16632 16633 16634 16635 16636 16637 16638 16639 16640 16641 16642 16643 16644 16645 16646 16647 16648 16649 16650 ER ER ER ER ER ER ercd ercd ercd ercd ercd ercd = = = = = = ER ercd = ER ercd = ER ercd = ER ercd = sac_flg(ID flgid, const ACVCT *p_acvct) del_flg(ID flgid) set_flg(ID flgid, FLGPTN setptn) iset_flg(ID flgid, FLGPTN setptn) clr_flg(ID flgid, FLGPTN clrptn) wai_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn) pol_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn) t wai_flg(ID flgid, FLGPTN waiptn, MODE wfmode, FLGPTN *p_flgptn, TMO tmout) ini_flg(ID flgid) ref_flg(ID flgid, T_RFLG *pk_rflg) 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 データキュー ER_ID dtqid = acre_dtq(const T_CDTQ *pk_cdtq) ER ercd = sac_dtq(ID dtqid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_dtq(ID dtqid) ER ercd = snd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER ercd = psnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER e rcd = ipsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER ercd = tsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data, TMO tmout) ER ercd = fsnd_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER ercd = ifsn d_dtq(ID dtqid, intptr_t data) ER ercd = rcv_dtq(ID dtqid, intptr_t *p_data) ER ercd = prcv_dtq(ID dtqid, intptr_t *p_data) ER ercd = trcv_dtq(ID dt qid, intptr_t *p_data, TMO tmout) ER ercd = ini_dtq(ID dtqid) ER ercd = ref_dtq(ID dtqid, T_RDTQ *pk_rdtq) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 優先度データキュー ER_ID pdqid = acre_pdq(const T_CPDQ *pk_cpdq) ER ercd = sac_pdq(ID pdqid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_pdq(ID pdqid) ER ercd = snd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) ER ercd = psnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) ER ercd = ipsnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri) ER ercd = tsnd_pdq(ID pdqid, intptr_t data, PRI datapri, TMO tmout) ER ercd = rcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri) ER ercd = prcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri) ER ercd = trcv_pdq(ID pdqid, intptr_t *p_data, PRI *p_datapri, TMO tmout) ER ercd = ini_pdq(ID pdqid) ER ercd = ref_pdq(ID pdqid, T_RPDQ *pk_rpdq) メールボックス 333 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16651 16652 16653 16654 16655 16656 16657 16658 16659 16660 16661 16662 16663 16664 16665 16666 16667 16668 16669 16670 16671 16672 16673 16674 16675 16676 16677 16678 16679 16680 16681 16682 16683 16684 16685 16686 16687 16688 16689 16690 16691 16692 16693 16694 16695 16696 16697 16698 16699 16700 ER_ID mbxid = acre_mbx(const T_CMBX *pk_cmbx) ER er cd = del_mbx(ID mbxid) ER ercd = snd_mbx(ID mbxid, T_MSG *pk_msg) ER ercd = rcv_mbx(ID mbxid, T_MSG **ppk_msg) ER ercd = prcv_mbx(ID mbxid, T_MSG **ppk_msg) ER ercd = trcv_mbx(ID mbxid, T_MSG **ppk_msg, TMO tmout) ER ercd = ini_mbx(ID mbxid) ER ercd = ref_mbx (ID mbxid, T_RMBX *pk_rmbx) 〔TDp〕 〔TDp〕 〔Tp〕 〔Tp〕 〔Tp〕 〔Tp〕 〔Tp〕 〔Tp〕 ミューテックス ER_ID mtxid = acre_mtx(const T_CMTX *pk_cmtx) ER ercd = sac_mtx(ID mtxid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_mtx(ID mtxid) ER ercd = loc_mtx(ID mtxid) ER ercd = ploc_mtx(ID mtxid) ER ercd = tloc_mtx(ID mtxid, TMO tmout) ER ercd = unl_mtx(ID mtxid) ER ercd = ini_mtx(ID mtxid) ER ercd = ref_mtx(ID mtxid, T_RMTX *pk_rmtx) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 メッセージバッファ ER_ID mbfid = acre_mbf(const T_CMBF *pk_cmbf) ER ercd = sac_mbf(ID mbfid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_mbf(ID mbfid) ER ercd = snd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint_t msgsz) ER ercd = psnd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint_t msgsz ) ER ercd = tsnd_mbf(ID mbfid, const void *msg, uint_t msgsz, TMO tmout) ER_UINT msgsz = rcv_mbf(ID mbfid, void *msg) ER_UINT msgsz = prcv_mbf(ID mbfid, void *msg) ER_UINT msgsz = trcv_mbf(ID mbfid, void *msg, TMO tmout) ER ercd = ini_mbf(ID mbfid) ER ercd = ref_mbf(ID mbfid, T_RMBF *pk_rmbf) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 スピンロック ER_ID spnid = acre_spn(const T_CSPN *pk_cspn) ER ercd = sac_spn(ID spnid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_spn(ID spnid) ER ercd = loc_spn(ID spnid) ER ercd = iloc_spn(ID spnid) ER ercd = try_spn(ID spnid) ER ercd = itry_spn(ID spnid) ER ercd = unl_spn(ID spnid) ER ercd = iunl_spn(ID spnid) ER ercd = ref_spn(ID spnid, T_RSPN *pk_rspn) (5) メモリプール管理機能 334 〔TMD〕 〔TPMD〕 〔TMD〕 〔TM〕 〔IM〕 〔TM〕 〔IM〕 〔TM〕 〔IM〕 〔TM〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16701 16702 16703 16704 16705 16706 16707 16708 16709 16710 16711 16712 16713 16714 16715 16716 16717 16718 16719 16720 16721 16722 16723 16724 16725 16726 16727 16728 16729 16730 16731 16732 16733 16734 16735 16736 16737 16738 16739 16740 16741 16742 16743 16744 16745 16746 16747 16748 16749 16750 固定長メモリプール ER_ID mpfid = acre_mpf(const T_CMPF *pk_cmpf) ER ercd = sac_mpf(ID mpfid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_mpf(ID mpfid) ER ercd = get_mpf(ID mpfid, void **p_blk) ER ercd = pget_mpf(ID mpfid, void **p_blk) ER ercd = tget_mpf(ID mpfid, void **p_blk, TMO tmout) ER ercd = rel_mpf(ID mpfid, void *blk) ER ercd = ini_mpf(ID mpfid) ER ercd = ref_mpf(ID mpfid, T_RMPF *pk_rmpf) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 (6) 時間管理機能 システム時刻管理 ER ercd = get_tim(SYSTIM *p_systim) ER ercd = get_utm(SYSUTM *p_sysutm) 〔T〕 〔TI〕 周期ハンドラ ER_ID cycid = acre_cyc(const T_CCYC *pk_ccyc) ER ercd = sac_cyc(ID cycid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_cyc(ID cycid) ER er cd = sta_cyc(ID cycid) ER ercd = msta_cyc(ID cycid, ID prcid) ER ercd = stp_cyc(ID cycid) ER ercd = ref_cyc(ID cycid, T_RCYC *pk_rcyc) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔TM〕 〔T〕 〔T〕 アラームハンドラ ER_ID almid = acre_alm(const T_CALM *pk_calm) ER ercd = sac_alm(ID almid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_alm(ID almid) ER ercd = sta_alm(ID almid, RELTIM almtim) ER ercd = ista_alm(ID almid, RELTIM almtim) ER ercd = msta_alm(ID almid, RELTIM almtim, ID prcid) ER ercd = imsta_alm(ID almid, RELTIM almtim, ID prcid) ER ercd = stp_alm(ID almid) ER ercd = istp_alm(ID almid) ER ercd = ref_alm(ID almid, T_RALM *pk_ralm) 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔TM〕 〔IM〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 オーバランハンドラ ER ER ER ER ER ercd ercd ercd ercd ercd = = = = = def_ovr(const T_DOVR *pk_dovr) sta_ovr(ID tskid, OVRTIM ovrtim) ista_ovr(ID tskid, OVRTIM ovrtim) stp_ovr(ID tskid) istp_ovr(ID tskid) 335 〔TD〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔I〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16751 16752 16753 16754 16755 16756 16757 16758 16759 16760 16761 16762 16763 16764 16765 16766 16767 16768 16769 16770 16771 16772 16773 16774 16775 16776 16777 16778 16779 16780 16781 16782 16783 16784 16785 16786 16787 16788 16789 16790 16791 16792 16793 16794 16795 16796 16797 16798 16799 16800 ER ercd = ref_ovr(ID tskid, T_ROVR *pk_rovr) 〔T〕 (7) システム状態管理機能 ER ercd = sac_sys(const ACVCT *p_acvct) ER ercd = rot_rdq(PRI tskpri) ER ercd = irot_rdq(PRI tskpri) ER ercd = mrot_rdq (PRI tskpri, ID prcid) ER ercd = imrot_rdq(PRI tskpri, ID prcid) ER ercd = get_tid(ID *p_tskid) ER ercd = iget_tid(ID *p_t skid) ER ercd = get_did(ID *p_domid) ER ercd = get_pid(ID *p_prcid) ER ercd = iget_pid(ID *p_prcid) ER ercd = loc_cpu() ER ercd = iloc_cpu() ER ercd = unl_cpu() ER ercd = iunl_cpu() ER ercd = dis_dsp() ER ercd = ena_dsp() bool_t state = sns_ctx() bool_t state = sns_loc() bool_t state = sns_dsp() bool_t state = sns_dpn() bool_t state = sns_ker() ER ercd = ext_ker() ER ercd = ref_sys(T_RSYS *pk_rsys) 〔TPD〕 〔T〕 〔I〕 〔TM〕 〔IM〕 〔T〕 〔I〕 〔TP〕 〔TM〕 〔IM〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔I〕 〔T〕 〔T〕 〔TI〕 〔TI〕 〔TI〕 〔TI〕 〔TI〕 〔TI〕 〔T〕 (8) メモリオブジェクト管理機能 ER ER ER ER ER ercd ercd ercd ercd ercd = = = = = att_mem(const att_pma(const sac_mem(const det_mem(const prb_mem(const T_AMEM *pk_amem) T _AMEM *pk_apma) void *base, const ACVCT *p_acvct) void *base) void *base, SIZE size, ID tskid, MODE pmmode) ER ercd = ref_mem(const void *base, T_RMEM *pk_rmem) 〔TPD〕 〔TPD〕 〔TPD〕 〔TPD〕 〔TP〕 〔TP〕 (9) 割込み管理機能 ER ercd = cfg_int(INTNO intno, const T_CINT *pk_cint) ER_ID isrid = acre_isr(const T_CISR *pk_cisr) ER ercd = sac_isr(ID isrid, const ACVCT *p_acvct) ER ercd = del_isr(ID isrid) ER ercd = ref_isr(ID isrid, T_RISR *pk_risr) ER ercd = def_inh(INHNO inhno, const T_DINH *pk_dinh) ER ercd = dis_in t(INTNO intno) ER ercd = ena_int(INTNO intno) ER ercd = ref_int(INTNO intno, T_RINT *pk_rint) ER ercd = chg_ipm(PRI intp ri) 336 〔TD〕 〔TD〕 〔TPD〕 〔TD〕 〔T〕 〔TD〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 〔T〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16801 16802 16803 16804 16805 16806 16807 16808 16809 16810 16811 16812 16813 16814 16815 16816 16817 16818 16819 16820 16821 16822 16823 16824 16825 16826 16827 16828 16829 16830 16831 16832 16833 16834 16835 16836 16837 16838 16839 16840 16841 16842 16843 16844 16845 16846 16847 16848 16849 16850 ER ercd = get_ipm(PRI *p_intpri) 〔T〕 (10) CPU 例外管理機能 ER ercd = def_exc(EXCNO excno, const T_DEXC *pk_dexc) bool_t stat = xsns_dpn(void *p_excinf) bool_t stat = xsns_xpn(void *p_excinf) 〔TD〕 〔TI〕 〔TI〕 (11) 拡張サービスコール管理機能 ER ercd = def_svc(FN fncd, const T_DSVC *pk_dsvc) 〔TPD〕 ER_UINT ercd = cal_svc(FN fncd, intptr_t par1, intptr_t par2, 〔TIP〕 intptr_t par3, intptr_t par4, intptr_t par5) (12) システム構成管理機能 ER ercd = ref_cfg(T_RCFG *pk_rcfg) ER ercd = ref_ver(T_RVER *pk_rver) 〔T〕 〔T〕 5.2 静的API一覧 (1) タスク管理機能 *保護機能対応でないカーネルの場合 CRE_TSK(ID tskid, { ATR tskatr, intptr_t exinf, TASK task, PRI itskpri, SIZE stksz, STK_T *stk }) *保護機能対応カーネルの場合 CRE_TSK(ID tskid, { ATR tsk atr, intptr_t exinf, TASK task, PRI itskpri, SIZE stksz, STK_T *stk, SIZE sstksz, STK_T *sstk }) ※ sstkszおよびsstkの記述は省略することができる. AID_TSK(uint_t notsk) SAC_TSK(ID tskid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) DEF_EPR(ID tskid, { PRI exepri }) 〔S〕 〔SP〕 〔SD〕 〔SP〕 〔S〕 (2) タスク付属同期機能 なし (3) タスク例外処理機能 DEF_TEX(ID tskid, { ATR texatr, TEXRTN texrtn }) (4) 同期・通信機能 セマフォ 337 〔S〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16851 16852 16853 16854 16855 16856 16857 16858 16859 16860 16861 16862 16863 16864 16865 16866 16867 16868 16869 16870 16871 16872 16873 16874 16875 16876 16877 16878 16879 16880 16881 16882 16883 16884 16885 16886 16887 16888 16889 16890 16891 16892 16893 16894 16895 16896 16897 16898 16899 16900 CRE_SEM(ID semid, { ATR sematr, uint_t isemcnt, uint_t maxsem }) 〔S〕 AID_SEM(uint_t nosem) 〔SD〕 SAC_SEM(ID semid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, 〔SP〕 ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) イベントフラグ CRE_FLG(ID flgid, { ATR flgatr, FLGPTN iflgptn }) AID_FLG(uint_t noflg) SAC_FLG(ID flgid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 データキュー CRE_DTQ(ID dtqid, { ATR dtqatr, uint_t dtqcnt, void *dtqmb }) AID_DTQ(uint_t nodtq) SAC_DTQ(ID dtqid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 優先度データキュー CRE_PDQ(ID pdqid, { ATR pdqatr, uint_t pdqcnt, 〔S〕 PRI maxdpri, void *pdqmb }) AID_PDQ(uint_t nopdq) 〔SD〕 SAC_PDQ(ID pdqid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, 〔SP〕 ACPTN acptn3 , ACPTN acptn4 }) メールボックス CRE_MBX(ID mbxid, { ATR mbxatr, PRI maxmpri, void *mprihd }) AID_MBX(uint_t nombx) 〔Sp〕 〔SpD〕 ミューテックス CRE_MTX(ID mtxid, { ATR mtxatr, PRI ceilpri }) AID_MTX(uint_t nomtx) SAC_MTX(ID mtxid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 メッセージバッファ CRE_MBF(ID mbfid, { ATR mbfatr, uint_t maxmsz, SIZE mbfsz, void *mbfmb }) AID_MBF(uint_t nombf) SAC_MBF(ID mbfid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 スピンロック CRE_SPN(ID spnid, { ATR spnatr }) 338 〔SM〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16901 16902 16903 16904 16905 16906 16907 16908 16909 16910 16911 16912 16913 16914 16915 16916 16917 16918 16919 16920 16921 16922 16923 16924 16925 16926 16927 16928 16929 16930 16931 16932 16933 16934 16935 16936 16937 16938 16939 16940 16941 16942 16943 16944 16945 16946 16947 16948 16949 16950 AID_SPN(uint_t nospn) SAC_SPN(ID spnid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔SMD〕 〔SPM〕 (5) メモリプール管理機能 固定長メモリプール CRE_MPF(ID mpfid, { ATR mpfatr, uint_t blkcnt, uint_ t blksz, MPF_T *mpf, void *mpfmb }) AID_MPF(uint_t nompf) SAC_MPF(ID mpfid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 (6) 時間管理機能 周期ハンドラ CRE_CYC(ID cycid, { ATR cycatr, intptr_t exinf, CYCHDR cychdr, 〔S〕 RELTIM cyctim, RELTIM cycphs }) AID_CYC(uint_t nocyc) 〔SD〕 SAC_CYC(ID cycid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, 〔SP〕 ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) アラームハンドラ CRE_ALM(ID almid, { ATR almatr, intptr_t exinf, ALMHDR almhdr }) 〔S〕 AID_ALM(uint_t noalm) 〔SD〕 SAC_ALM(ID almid, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, 〔SP〕 ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) オーバランハンドラ DEF_OVR({ ATR ovratr, OVRHDR ovrhdr }) 〔S〕 (7) システム状態管理機能 SAC_SYS({ ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔SP〕 (8) メモリオブジェクト管理機能 ATT_REG(" メモリリージョン名", { ATR regatr, void *base, SIZE size }) DEF_SRG(" 標準ROMリージョン名", "標準RAMリージョン名") ATT_SEC ("セクション名", { ATR mematr, " メモリリージョン名" }) ATA_SEC(" セクション名", { ATR mematr, " メモリリージョン名" }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) LNK_SEC(" セクション名", { "メモリリージョン名" }) ATT_MOD(" オブジェクトモジュール名") 339 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 16951 16952 16953 16954 16955 16956 16957 16958 16959 16960 16961 16962 16963 16964 16965 16966 16967 16968 16969 16970 16971 16972 16973 16974 16975 16976 16977 16978 16979 16980 16981 16982 16983 16984 16985 16986 16987 16988 16989 16990 16991 16992 16993 16994 16995 16996 16997 16998 16999 17000 ATA_MOD(" オブジェクトモジュール名", { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) ATT_MEM({ ATR mematr, void *base, SIZE size }) ATA_MEM({ ATR mematr, void *base, SIZE size }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) ATT_PMA({ ATR mematr, void *base, SIZE size, void *paddr }) ATA_PMA({ ATR mematr, void *base, SIZE size, void *paddr }, { ACPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 〔SP〕 (9) 割込み管理機能 CFG_INT(INTNO intno, { ATR intatr, PRI intpri }) CRE_ISR(ID isrid, { ATR isratr, intptr_t exinf, INTNO intno, ISR isr, PRI isrpri }) ATT_ISR( { ATR isratr, intptr_t exinf, INTNO intno, ISR isr, PRI isrpri }) AID_ISR(uint_t noisr) SAC_ISR(ID isrid, { A CPTN acptn1, ACPTN acptn2, ACPTN acptn3, ACPTN acptn4 }) DEF_INH(INHNO inhno, { ATR inhatr, INTHDR inthdr }) 〔S〕 〔S〕 〔S〕 〔SD〕 〔SP〕 〔S〕 (10) CPU 例外管理機能 DEF_EXC(EXCNO excno, { ATR excatr, EXCHDR exchdr }) 〔S〕 (11) 拡張サービスコール管理機能 DEF_SVC(FN fncd, { ATR svcatr, EXTSVC svcrtn, SIZE stksz }) 〔SP〕 (12) システム構成管理機能 DEF_ICS({ DEF_STK({ ATT_INI({ ATT_TER({ SIZE istksz, STK_T *istk }) SIZE stksz, STK_T *stk }) ATR iniatr, intptr_t exinf, INIRTN inirtn }) ATR teratr, intptr_t exinf, TERRTN terrtn }) 5.3 データ型 5.3.1 TOPPERS 共通データ型 int8_t uint8_t int16_t uint16_t int32_t uint32_t int64_t uint64_t int128_t uint128_t 符号付き8ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し8ビット整数(オプション,C99準拠) 符号付き16ビット整数(C99準拠) 符号無し16ビット整数(C99準拠) 符号付き32ビット整数(C99準拠) 符号無し32ビット整数(C99準拠) 符号付き64ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し64ビット整数(オプション,C99準拠) 符号付き128ビット整数(オプション,C99準拠) 符号無し128ビット整数(オプション,C99準拠) 340 〔S〕 〔S〕 〔S〕 〔S〕 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17001 17002 17003 17004 17005 17006 17007 17008 17009 17010 17011 17012 17013 17014 17015 17016 17017 17018 17019 17020 17021 17022 17023 17024 17025 17026 17027 17028 17029 17030 17031 17032 17033 17034 17035 17036 17037 17038 17039 17040 17041 17042 17043 17044 17045 17046 17047 17048 17049 17050 int_least8_t uint_least8_t 8 ビット以上の符号付き整数(C99準拠) int_least8_t 型と同じサイズの符号無し整数(C99準拠) float32_t double64_t IEEE754 準拠の32ビット単精度浮動小数点数(オプション) IEEE754 準拠の64ビット倍精度浮動小数点数(オプション) bool_t int_t uint_t long_t ulong_t 真偽値(trueまたはfalse) 16 ビット以上の符号付き整数 int_t型と同じサイズの符号無し整数 32 ビット以上かつint_t型以上のサイズの符号付き整数 long_t 型と同じサイズの符号無し整数 intptr_t uintptr_t ポインタを格納できるサイズの符号付き整数(C99準拠) intptr_t 型と同じサイズの符号無し整数(C99準拠) FN ER ID ATR STAT MODE PRI SIZE 機能コード(符号付き整数,int_tに定義) エラーコード(符号付き整数,int_tに定義) オブジェクトのID番号(符号付き整数,int_tに定義) オブジェクト属性(符号無し整数,uint_tに定義) オブジェクトの状態(符号無し整数,uint_tに定義) サービスコールの動作モード(符号無し整数,uint_tに定義) 優先度(符号付き整数,int_tに定義) メモリ領域のサイズ(符号無し整数,ポインタを格納できる サイズの符号無し整数型に定義) TMO RELTIM SYSTIM SYSUTM タイムアウト指定(符号付き整数,単位はミリ秒,int_tに定義) 相対時間(符号無し整数,単位はミリ秒,uint_tに定義) システム時刻(符号無し整数,単位はミリ秒,ulong_tに定義) 性能評価用システム時刻(符号無し整数,単位はマイクロ秒, ulong_t に定義) FP プログラムの起動番地(型の定まらない関数ポインタ) ER_BOOL ER_ID エラーコードまたは真偽値(符号付き整数,int_tに定義) エラーコードまたはID番号(符号付き整数,int_tに定義, 負のID番号は格納できない) エラーコードまたは符号無し整数(符号付き整数,int_tに 定義,符号無し整数を格納する場合の有効ビット数はuint_t より1ビット短い) ER_UINT MB_T オブジェクト管理領域を確保するためのデータ型 ACPTN アクセス許可パターン(符号無し32ビット整数,uint32_tに 定義) typedef struct acvct { ACPTN acptn1; ACPTN acptn2; ACPTN acptn3; /* /* /* /* アクセス許可ベクタ */ 通常操作1のアクセス許可パターン */ 通常操作2のアクセス許可パターン */ 管理操作のアクセス許可パターン */ 341 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17051 17052 17053 17054 17055 17056 17057 17058 17059 17060 17061 17062 17063 17064 17065 17066 17067 17068 17069 17070 17071 17072 17073 17074 17075 17076 17077 17078 17079 17080 17081 17082 17083 17084 17085 17086 17087 17088 17089 17090 17091 17092 17093 17094 17095 17096 17097 17098 17099 17100 ACPTN } ACVCT; acptn4; /* 参照操作のアクセス許可パターン */ 5.3.2 カーネルの使用するデータ型 TEXPTN FLGPTN OVRTIM INTNO INHNO EXCNO タスク例外要因のビットパターン(符号無し整数,uint_tに定義) イベントフラグのビットパターン(符号無し整数,uint_tに定義) プロセッサ時間(符号無し整数,単位はマイクロ秒,ulong_tに定義) 割込み番号(符号無し整数,uint_tに定義) 割込みハンドラ番号(符号無し整数,uint_tに定義) CPU 例外ハンドラ番号(符号無し整数,uint_tに定義) TASK TEXRTN CYCHDR ALMHDR OVRHDR ISR INTHDR EXCHDR EXTSVC INIRTN TERRTN タスクのメインルーチン(関数ポインタ) タスク例外処理ルーチン(関数ポインタ) 周期ハンドラ(関数ポインタ) アラームハンドラ(関数ポインタ) オーバランハンドラ(関数ポインタ) 割込みサービスルーチン(関数ポインタ) 割込みハンドラ(関数ポインタ) CPU 例外ハンドラ(関数ポインタ) 拡張サービスコール(関数ポインタ) 初期化ルーチン(関数ポインタ) 終了処理ルーチン(関数ポインタ) STK_T MPF_T スタック領域を確保するためのデータ型 固定長メモリプール領域を確保するためのデータ型 メールボックスのメッセージヘッダ【NGKI4001】 typedef struct t_msg { struct t_msg *pk_next; } T_MSG; メールボックスの優先度付きメッセージヘッダ【NGKI4002】 typedef struct t_msg_pri { T_MSG msgque; PRI msgpri; } T_MSG_PRI; /* メールボックスのメッセージヘッダ */ /* メッセージ優先度 */ 5.3.3 カーネルの使用するパケット形式 (1) タスク管理機能 タスクの生成情報のパケット形式【NGKI4003】 typedef struct t_ctsk { ATR tskatr; intptr_t exinf; TASK task; /* タスク属性 */ /* タスクの拡張情報 */ /* タスクのメインルーチンの先頭番地 */ 342 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17101 17102 17103 17104 17105 17106 17107 17108 17109 17110 17111 17112 17113 17114 17115 17116 17117 17118 17119 17120 17121 17122 17123 17124 17125 17126 17127 17128 17129 17130 17131 17132 17133 17134 17135 17136 17137 17138 17139 17140 17141 17142 17143 17144 17145 17146 17147 17148 17149 17150 PRI itskpri; /* タスクの起動時優先度 */ SIZE stksz; /* タスクのスタック領域のサイズ */ STK_T * stk; /* タスクのスタック領域の先頭番地 */ /* 以下は,保護機能対応カーネルの場合 */ SIZE sstksz; /* タスクのシステムスタック領域のサイズ */ STK_T * sstk; /* タスクのシステムスタック領域の先頭番地 */ } T_CTSK; タスクの現在状態のパケット形式【NGKI4004】 typedef struct t_rtsk { STAT tskstat; /* タスク状態 */ PRI tskpri; /* タスクの現在優先度 */ PRI tskbpri; /* タスクのベース優先度 */ STAT tskwait; /* 待ち要因 */ ID wobjid; /* 待ち対象のオブジェクトのID */ TMO lefttmo; /* タイムアウトするまでの時間 */ uint_t actcnt; /* 起動要求キューイング数 */ uint_t wupcnt; /* 起床要求キューイング数 */ /* 以下は,保護機能対応カーネルの場合 */ bool_t texmsk; /* タスク例外マスク状態か否か */ bool_t waifbd; /* 待ち禁止状態か否か */ uint_t svclevel; /* 拡張サービスコールのネストレベル */ /* 以下は,マルチプロセッサ対応カーネルの場合 */ ID prcid; /* 割付けプロセッサのID */ ID actprc /* 次の起動時の割付けプロセッサのID */ } T_RTSK; (2) タスク付属同期機能 なし (3) タスク例外処理機能 タスク例外処理ルーチンの定義情報のパケット形式【NGKI4005】 typedef struct t_dtex { ATR texatr; TEXRTN texrtn; } T_DTEX; /* タスク例外処理ルーチン属性 */ /* タスク例外処理ルーチンの先頭番地 */ タスク例外処理の現在状態のパケット形式【NGKI4006】 typedef struct t_rtex { STAT texstat; TEXPTN pndptn; } T_RTEX; /* タスク例外処理の状態 */ /* 保留例外要因 */ (4) 同期・通信機能 343 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17151 17152 17153 17154 17155 17156 17157 17158 17159 17160 17161 17162 17163 17164 17165 17166 17167 17168 17169 17170 17171 17172 17173 17174 17175 17176 17177 17178 17179 17180 17181 17182 17183 17184 17185 17186 17187 17188 17189 17190 17191 17192 17193 17194 17195 17196 17197 17198 17199 17200 セマフォの生成情報のパケット形式【NGKI4007】 typedef struct t_csem { ATR sematr; uint_t isemcnt; uint _t maxsem; } T_CSEM; /* セマフォ属性 */ /* セマフォの初期資源数 */ /* セマフォの最大資源数 */ セマフォの現在状態のパケット形式【NGKI4008】 typedef struct t_rsem { ID wtskid; uint_t semcnt; } T_RSEM; /* セマフォの待ち行列の先頭のタスクのID番号 */ /* セマフォの資源数 */ イベントフラグの生成情報のパケット形式【NGKI4009】 typedef struct t_cflg { ATR flgatr; FLGPTN iflgptn; } T_CFLG; /* イベントフラグ属性 */ /* イベントフラグの初期ビットパターン */ イベントフラグの現在状態のパケット形式【NGKI4010】 typedef struct t_rflg { ID wtskid; FLGPTN } T_RFLG; flgptn; /* イベントフラグの待ち行列の先頭のタス クのID番号 */ /* イベントフラグのビットパターン */ データキューの生成情報のパケット形式【NGKI4011】 typedef struct t_cdtq { ATR dtqatr; uint_t dtqcnt; void * dtqmb; } T_CDTQ; /* データキュー属性 */ /* データキュー管理領域に格納できるデータ数 */ /* データキュー管理領域の先頭番地 */ データキューの現在状態のパケット形式【NGKI4012】 typedef struct t_rdtq { ID stskid; ID rtskid; uint_t sdtqcnt; /* データキューの送信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 */ /* データキューの受信待ち行列の先頭のタ スクのID番号 */ /* データキュー管理領域に格納されている データの数 */ } T_RDTQ; 優先度データキューの生成情報のパケット形式【NGKI4013】 344 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17201 17202 17203 17204 17205 17206 17207 17208 17209 17210 17211 17212 17213 17214 17215 17216 17217 17218 17219 17220 17221 17222 17223 17224 17225 17226 17227 17228 17229 17230 17231 17232 17233 17234 17235 17236 17237 17238 17239 17240 17241 17242 17243 17244 17245 17246 17247 17248 17249 17250 typedef struct t_cpdq { ATR pdqatr; uint_t pdqcnt; PRI void * } T_CPDQ; maxdpri; pdqmb; /* 優先度データキュー属性 */ /* 優先度データキュー管理領域に格納でき るデータ数 */ /* 優先度データキューに送信できるデータ 優先度の最大値 */ /* 優先度データキュー管理領域の先頭番地 */ 優先度データキューの現在状態のパケット形式【NGKI4014】 typedef struct t_rpdq { ID stskid; ID rtskid; uint_t spdqcnt; /* 優先度データキューの送信待ち行列の先 頭のタスクのID番号 */ /* 優先度データキューの受信待ち行列の先 頭のタスクのID番号 */ /* 優先度データキュー管理領域に格納され ているデータの数 */ } T_RPDQ; メールボックスの生成情報のパケット形式【NGKI4015】 typedef struct t_cmbx { ATR mbxatr; PRI maxmpri; void * mprihd; /* メールボックス属性 */ /* 優先度メールボックスに送信できるメッ セージ優先度の最大値 */ /* 優先度別のメッセージキューヘッダ領域 の先頭番地 */ } T_CMBX; メールボックスの現在状態のパケット形式【NGKI4016】 typedef struct t_rmbx { ID wtskid; T_MSG *pk_msg ; /* メールボックスの待ち行列の先頭のタスク のID番号 */ /* メッセージキューの先頭につながれたメッ セージの先頭番地 */ } T_RMBX; ミューテックスの生成情報のパケット形式【NGKI4017】 typedef struct t_cmtx { ATR mtxatr; PRI ceilpri; } T_CMTX; /* ミューテックス属性 */ /* ミューテックスの上限優先度 */ ミューテックスの現在状態のパケット形式【NGKI4018】 typedef struct t_rmtx { 345 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17251 17252 17253 17254 17255 17256 17257 17258 17259 17260 17261 17262 17263 17264 17265 17266 17267 17268 17269 17270 17271 17272 17273 17274 17275 17276 17277 17278 17279 17280 17281 17282 17283 17284 17285 17286 17287 17288 17289 17290 17291 17292 17293 17294 17295 17296 17297 17298 17299 17300 ID htskid; ID wtskid; /* ミューテックスをロックしているタス クのID番号 */ /* ミューテックスの待ち行列の先頭のタ スクのID番号 */ } T_RMTX; メッセージバッファの生成情報のパケット形式【NGKI4037】 typedef struct t_cmbf { ATR mbfatr; uint_t maxmsz; SIZE void * } T_CMBF; mbfsz; mbfmb; /* メッセージバッファ属性 */ /* メッセージバッファの最大メッセージ サイズ(バイト数)*/ /* メッセージバッファ管理領域のサイズ (バイト数)*/ /* メッセージバッファ管理領域の先頭番地 */ メッセージバッファの現在状態のパケット形式【NGKI4038】 typedef struct t_rmbf { ID stskid; /* メッセージバッファの送信待ち行列の先頭の タスクのID番号 */ ID rtskid; /* メッセージバッファの受信待ち行列の先頭の タスクのID番号 */ uint_t smbfcnt; /* メッセージバッファ管理領域に格納されてい るメッセージの数 */ SIZE fmbfsz; /* メッセージバッファ管理領域中の空き領域の サイズ */ } T_RMBF; スピンロックの生成情報のパケット形式【NGKI4019】 typedef struct t_cspn { ATR spnatr; } T_CSPN; /* スピンロック属性 */ スピンロックの現在状態のパケット形式【NGKI4020】 typedef struct t_rspn { STAT spnstat } T_RSPN; /* スピンロックのロック状態 */ (5) メモリプール管理機能 固定長メモリプールの生成情報のパケット形式【NGKI4021】 typedef struct t_cmpf { ATR mpfatr; uint_t blkcnt; uint_t blksz; /* 固定長メモリプール属性 */ /* 獲得できる固定長メモリブロックの数 */ /* 固定長メモリブロックのサイズ */ 346 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17301 17302 17303 17304 17305 17306 17307 17308 17309 17310 17311 17312 17313 17314 17315 17316 17317 17318 17319 17320 17321 17322 17323 17324 17325 17326 17327 17328 17329 17330 17331 17332 17333 17334 17335 17336 17337 17338 17339 17340 17341 17342 17343 17344 17345 17346 17347 17348 17349 17350 MPF_T * void * } T_CMPF; mpf; mpfmb; /* 固定長メモリプール領域の先頭番地 */ /* 固定長メモリプール管理領域の先頭番地 */ 固定長メモリプールの現在状態のパケット形式【NGKI4022】 typedef struct t_rmpf { ID wtskid; uint_t fblkcnt; /* 固定長メモリプールの待ち行列の先頭の タスクのID番号 */ /* 固定長メモリプール領域の空きメモリ領 域に割り付けることができる固定長メモ リブロックの数 */ } T_RMPF; (6) 時間管理機能 周期ハンドラの生成情報のパケット形式【NGKI4023】 typedef struct t_ccyc { ATR cycatr; intptr_t exinf; CYCHDR cychdr; RELTIM cyctim; RELTIM cycphs; } T_CCYC; /* /* /* /* /* 周期ハンドラ属性 */ 周期ハンドラの拡張情報 周期ハンドラの先頭番地 周期ハンドラの起動周期 周期ハンドラの起動位相 */ */ */ */ 周期ハンドラの現在状態のパケット形式【NGKI4024】 typedef struct t_rcyc { STAT cycstat; RELTIM lefttim; /* 周期ハンドラの動作状態 */ /* 次に周期ハンドラを起動する時刻までの 相対時間 */ /* 以下は,マルチプロセッサ対応カーネルの場合 */ ID prcid; /* 割付けプロセッサのID */ } T_RCYC; アラームハンドラの生成情報のパケット形式【NGKI4025】 typedef struct t_calm { ATR almatr; intptr_t exinf; ALMHDR almhdr; } T_CALM; /* アラームハンドラ属性 */ /* アラームハンドラの拡張情報 */ /* アラームハンドラの先頭番地 */ アラームハンドラの現在状態のパケット形式【NGKI4026】 typedef struct t_ralm { STAT almstat; RELTIM lefttim; /* アラームハンドラの動作状態 */ /* アラームハンドラを起動する時刻までの 相対時間 */ 347 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17351 17352 17353 17354 17355 17356 17357 17358 17359 17360 17361 17362 17363 17364 17365 17366 17367 17368 17369 17370 17371 17372 17373 17374 17375 17376 17377 17378 17379 17380 17381 17382 17383 17384 17385 17386 17387 17388 17389 17390 17391 17392 17393 17394 17395 17396 17397 17398 17399 17400 /* 以下は,マルチプロセッサ対応カーネルの場合 */ ID prcid; /* 割付けプロセッサのID */ } T_RALM; オーバランハンドラの定義情報のパケット形式【NGKI4027】 typedef struct t_dovr { ATR ovratr; OVRHDR ovrhdr; } T_DOVR; /* オーバランハンドラ属性 */ /* オーバランハンドラの先頭番地 */ オーバランハンドラの現在状態のパケット形式【NGKI4028】 typedef struct t_rovr { STAT ovrstat; OVRTIM leftotm; } T_ROVR; /* オーバランハンドラの動作状態 */ /* 残りプロセッサ時間 */ (7) システム状態管理機能 システムの現在状態のパケット形式 ☆未完成 (8) メモリオブジェクト管理機能 メモリオブジェクトの登録情報のパケット形式【NGKI4029】 typedef struct t_amem { ATR mematr void * base SIZE size } T_AMEM; /* メモリオブジェクト属性 */ /* 登録するメモリ領域の先頭番地 */ /* 登録するメモリ領域のサイズ(バイト数)*/ 物理メモリ領域の登録情報のパケット形式【NGKI4030】 typedef struct t_apma { ATR mematr void * base SIZE size void * paddr /* /* /* /* メモリオブジェクト属性 */ 登録するメモリ領域の先頭番地 */ 登録するメモリ領域のサイズ(バイト数)*/ 登録するメモリ領域の物理アドレスの先頭 番地 */ } T_APMA; メモリオブジェクトの現在状態のパケット形式 ☆未完成 (9) 割込み管理機能 348 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17401 17402 17403 17404 17405 17406 17407 17408 17409 17410 17411 17412 17413 17414 17415 17416 17417 17418 17419 17420 17421 17422 17423 17424 17425 17426 17427 17428 17429 17430 17431 17432 17433 17434 17435 17436 17437 17438 17439 17440 17441 17442 17443 17444 17445 17446 17447 17448 17449 17450 割込み要求ラインの属性の設定情報のパケット形式【NGKI4031】 typedef struct t_cint { ATR intatr; PRI intpri; } T_CINT; /* 割込み要求ライン属性 */ /* 割込み優先度 */ 割込みサービスルーチンの生成情報のパケット形式【NGKI4032】 typedef struct t_cisr { ATR isratr; intptr_t exinf; INTNO intno; ISR PRI } T_CISR; isr; isrpri; /* 割込みサービスルーチン属性 */ /* 割込みサービスルーチンの拡張情報 */ /* 割込みサービスルーチンを登録する割込 み番号 */ /* 割込みサービスルーチンの先頭番地 */ /* 割込みサービスルーチン優先度 */ 割込みサービスルーチンの現在状態のパケット形式 ☆未完成 割込みハンドラの定義情報のパケット形式【NGKI4033】 typedef struct t_dinh { ATR inhatr; INTHDR inthdr; } T_DINH; /* 割込みハンドラ属性 */ /* 割込みハンドラの先頭番地 */ 割込み要求ラインの現在状態のパケット形式 ☆未完成 (10) CPU 例外管理機能 CPU例外ハンドラの定義情報のパケット形式【NGKI4034】 typedef struct t_dexc { ATR excatr; EXCHDR exchdr; } T_DEXC; /* CPU 例外ハンドラ属性 */ /* CPU 例外ハンドラの先頭番地 */ (11) 拡張サービスコール管理機能 拡張サービスコールの定義情報のパケット形式【NGKI4035】 typedef struct ATR EXTSVC SIZE t_dsvc { svcatr svcrtn stksz /* 拡張サービスコール属性 */ /* 拡張サービスコールの先頭番地 */ /* 拡張サービスコールで使用するスタック 349 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17451 17452 17453 17454 17455 17456 17457 17458 17459 17460 17461 17462 17463 17464 17465 17466 17467 17468 17469 17470 17471 17472 17473 17474 17475 17476 17477 17478 17479 17480 17481 17482 17483 17484 17485 17486 17487 17488 17489 17490 17491 17492 17493 17494 17495 17496 17497 17498 17499 17500 サイズ */ } T_DSVC; (12) システム構成管理機能 コンフィギュレーション情報のパケット形式 ☆未完成 バージョン情報のパケット形式 ☆未完成 5.4 定数とマクロ 5.4.1 TOPPERS共通定数 (1) 一般定数 NULL 無効ポインタ true false 1 0 真 偽 E_OK 0 正常終了 (2) 整数型に格納できる最大値と最小値 INT8_MAX INT8_MIN UINT8_MAX INT16_MAX INT16_MIN UINT16_MAX INT32_MAX INT32_MIN UINT32_MAX INT64_MAX INT64_MIN UINT64_MAX INT128_MAX INT128_MIN UINT128_MAX int8_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int8_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint8_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int16_tに格納できる最大値(C99準拠) int16_t に格納できる最小値(C99準拠) uint16_t に格納できる最大値(C99準拠) int32_t に格納できる最大値(C99準拠) int32_tに格納できる最小値(C99準拠) uint32_t に格納できる最大値(C99準拠) int64_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int64_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint64_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int128_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) int128_t に格納できる最小値(オプション,C99準拠) uint128_t に格納できる最大値(オプション,C99準拠) INT_LEAST8_MAX INT_LEAST8_MIN UINT_LEAST8_MAX INT_MAX INT_MIN UINT_MAX int_least8_tに格納できる最大値(C99準拠) int_least8_t に格納できる最小値(C99準拠) uint_least8_t に格納できる最大値(C99準拠) int_t に格納できる最大値(C90準拠) int_t に格納できる最小値(C90準拠) uint_t に格納できる最大値(C90準拠) 350 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17501 17502 17503 17504 17505 17506 17507 17508 17509 17510 17511 17512 17513 17514 17515 17516 17517 17518 17519 17520 17521 17522 17523 17524 17525 17526 17527 17528 17529 17530 17531 17532 17533 17534 17535 17536 17537 17538 17539 17540 17541 17542 17543 17544 17545 17546 17547 17548 17549 17550 LONG_MAX LONG_MIN ULONG_MAX long_t に格納できる最大値(C90準拠) long_t に格納できる最小値(C90準拠) ulong_t に格納できる最大値(C90準拠) FLOAT32_MIN float32_t に格納できる最小の正規化された正の浮 動小数点数(オプション) float32_t に格納できる表現可能な最大の有限浮動 小数点数(オプション) doub le64_tに格納できる最小の正規化された正の浮 動小数点数(オプション) double64_t に格納できる表現可能な最大の有限浮動 小数点数(オプション) FLOAT32_MAX DOUBLE64_MIN DOUBLE64_MAX (3) 整数型のビット数 CHAR_BIT char型のビット数(C90準拠) (4) オブジェクト属性 TA_NULL 0U オブジェクト属性を指定しない (5) タイムアウト指定 TMO_POL TMO_FEVR TMO_NBLK 0 -1 -2 ポーリング 永久待ち ノンブロッキング (6) アクセス許可パターン TACP_KERNEL TACP_SHARED 0U ~0U カーネルドメインのみにアクセスを許可 すべての保護ドメインにアクセスを許可 5.4.2 TOPPERS 共通マクロ (1) 整数定数を作るマクロ INT8_C(val) UINT8_C(val) INT16_C(val) UINT16_C(val) INT32_C(val) UINT32_C(val) INT64_C(val) UINT64_C(val) INT128_C(val) UINT128_C(val) int_least8_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint_least8_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) int16_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint16_t型の定数を作るマクロ(C99準拠) int32_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) uint32_t 型の定数を作るマクロ(C99準拠) int64_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) uint64_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) int128_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) uint128_t 型の定数を作るマクロ(オプション,C99準拠) UINT_C(val) ULONG_C(val) uint_t 型の定数を作るマクロ ulong_t 型の定数を作るマクロ 351 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17551 17552 17553 17554 17555 17556 17557 17558 17559 17560 17561 17562 17563 17564 17565 17566 17567 17568 17569 17570 17571 17572 17573 17574 17575 17576 17577 17578 17579 17580 17581 17582 17583 17584 17585 17586 17587 17588 17589 17590 17591 17592 17593 17594 17595 17596 17597 17598 17599 17600 (2) 型に関する情報を取り出すためのマクロ offsetof(structure, field) 構造体structure中のフィールドfieldの バイト位置を返すマクロ(C90準拠) alignof(type) 型typeのアラインメント単位を返すマクロ ALIGN_TYPE(addr, type) 番地addrが型typeに対してアラインしてい るかどうかを返すマクロ (3) assert マクロ assert(exp) exp が成立しているかを検査するマクロ(C90準拠) (4) コンパイラの拡張機能のためのマクロ inline Inline asm Asm throw() NoReturn インライン関数 ファイルローカルなインライン関数 インラインアセンブラ インラインアセンブラ(最適化抑止) 例外を発生しない関数 リターンしない関数 (5) エラーコード生成・分解マクロ ERCD(mercd, sercd) メインエラーコードmercdとサブエラーコードsercdか ら,エラーコードを生成するためのマクロ MERCD(ercd) エラーコードercdからメインエラーコードを抽出する ためのマクロ エラーコードercdからサブエラーコードを抽出するた めのマクロ SERCD(ercd) (6) アクセス許可パターン生成マクロ TACP(domid) domid で指定される保護ドメインに属する処理単位の みにアクセスを許可するアクセス許可パターン 5.4.3 カーネル共通定数 (1) オブジェクト属性 TA_TPRI 0x01U タスクの待ち行列をタスクの優先度順に 0 -1 -2 自タスクの属する保護ドメイン カーネルドメイン 無所属(保護ドメインに属さない) (2) 保護ドメインID TDOM_SELF TDOM_KERNEL TDOM_NONE 352 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17601 17602 17603 17604 17605 17606 17607 17608 17609 17610 17611 17612 17613 17614 17615 17616 17617 17618 17619 17620 17621 17622 17623 17624 17625 17626 17627 17628 17629 17630 17631 17632 17633 17634 17635 17636 17637 17638 17639 17640 17641 17642 17643 17644 17645 17646 17647 17648 17649 17650 (3) その他のカーネル共通定数 TCLS_SELF 0 自タスクの属するクラス TPRC_NONE TPRC_INI 0 0 割付けプロセッサの指定がない 初期割付けプロセッサ TSK_SELF TSK_NONE 0 0 自タスク指定 該当するタスクがない TPRI_SELF TPRI_INI 0 0 自タスクのベース優先度の指定 タスクの起動時優先度の指定 TIPM_ENAALL 0 割込み優先度マスク全解除 5.4.4 カーネル共通マクロ (1) オブジェクト属性を作るマクロ TA_DOM(domid) TA_CLS(clsid) domid で指定される保護ドメインに属する clsid で指定されるクラスに属する (2) サービスコールの呼出し方法を指定するマクロ SVC_CALL(svc) svc で指定されるサービスコールを関数呼出しによっ て呼び出すための名称 5.4.5 カーネルの機能毎の定数 (1) タスク管理機能 TA_ACT TA_RSTR TA_FPU 0x02U 0x04U タスクの生成時にタスクを起動する 生成するタスクを制約タスクとする FPUレジスタをコンテキストに含める TTS_RUN TTS_RDY TTS_WAI TTS_SUS TTS_WAS TTS_DMT 0x01U 0x02U 0x04U 0x08U 0x0cU 0x10U 実行状態 実行可能状態 待ち状態 強制待ち状態 二重待ち状態 休止状態 TTW_SLP TTW_DLY TTW_SEM TTW_FLG TTW_SDTQ TTW_RDTQ TTW_SPDQ TTW_RPDQ 0x0001U 0x0002U 0x0004U 0x0008U 0x0010U 0x0020U 0x0100U 0x0200U 起床待ち 時間経過待ち セマフォの資源獲得待ち イベントフラグ待ち データキューへの送信待ち データキューからの受信待ち 優先度データキューへの送信待ち 優先度データキューからの受信待ち 353 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17651 17652 17653 17654 17655 17656 17657 17658 17659 17660 17661 17662 17663 17664 17665 17666 17667 17668 17669 17670 17671 17672 17673 17674 17675 17676 17677 17678 17679 17680 17681 17682 17683 17684 17685 17686 17687 17688 17689 17690 17691 17692 17693 17694 17695 17696 17697 17698 17699 17700 TTW_MBX TTW_MTX TTW_SMBF TTW_RMBF TTW_MPF 0x0040U 0x0080U 0x0400U 0x0800U 0x2000U メールボックスからの受信待ち ミューテックスのロック待ち状態 メッセージバッファへの送信待ち メッセージバッファからの受信待ち 固定長メモリブロックの獲得待ち TA_FPUの値は,ターゲット定義とする. (3) タスク例外処理機能 TTEX_ENA TTEX_DIS 0x01U 0x02U タスク例外処理許可状態 タスク例外処理禁止状態 TA_WMUL TA_CLR 0x 02U 0x04U 複数のタスクが待つのを許す タスクの待ち解除時にイベントフラグをクリアする TWF_ORW TWF_ANDW 0x01U 0x02U イベントフラグのOR待ちモード イベントフラグのAND待ちモード 0x02U メッセージキューをメッセージの優先度順にする 0x01U 0x02U 取得されていない状態 取得されている状態 TA_STA TA_PHS 0x02U 0x04U 周期ハンドラの生成時に周期ハンドラを動作開始する 周期ハンドラを生成した時刻を基準時刻とする TCYC_STP TCYC_STA 0x01U 0x02U 周期ハンドラが動作していない状態 周期ハンドラが動作している状態 0x01U 0x02U アラームハンドラが動作していない状態 アラームハンドラが動作している状態 0x01U オーバランハンドラが動作していない状態 (4) 同期・通信機能 イベントフラグ メールボックス TA_MPRI スピンロック TSPN_UNL TSPN_LOC (6) 時間管理機能 周期ハンドラ アラームハンドラ TALM_STP TALM_STA オーバランハンドラ TOVR_STP 354 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17701 17702 17703 17704 17705 17706 17707 17708 17709 17710 17711 17712 17713 17714 17715 17716 17717 17718 17719 17720 17721 17722 17723 17724 17725 17726 17727 17728 17729 17730 17731 17732 17733 17734 17735 17736 17737 17738 17739 17740 17741 17742 17743 17744 17745 17746 17747 17748 17749 17750 TOVR_STA 0x02U オーバランハンドラが動作している状態 (8) メモリオブジェクト管理機能 TA_NOWRITE TA_NOREAD TA_EXEC TA_MEMINI TA_MEMPRSV TA_SDATA TA_UNCACHE TA_IODEV TA_WTHROUGH 0x01U 0x02U 0x04U 0x08U 0x10U 0x20U 0x40U 0x80U 書込みアクセス禁止 読出しアクセス禁止 実行アクセス許可 メモリの初期化を行う メモリの初期化を行わない ショートデータ領域に配置 キャッシュ禁止 周辺デバイスの領域 ライトスルーキャッシュを用いる TPM_WRITE TPM_READ TPM_EXEC 0x01U 0x02U 0x04U 書込みアクセス権のチェック 読出しアクセス権のチェック 実行アクセス権のチェック TA_WTHROUGH の値は,ターゲット定義とする. (9) 割込み管理機能 TA_ENAINT TA_EDGE TA_POSEDGE TA_NEGEDGE TA_BOTHEDGE TA_LOWLEVEL TA_HIGHLEVEL 0x01U 0x02U 割込み要求禁止フラグをクリア エッジトリガ ポジティブエッジトリガ ネガティブエッジトリガ 両エッジトリガ ローレベルトリガ ハイレベルトリガ TA_NONKERNEL 0x02U カーネル管理外の割込み TA_POSEDGE ,TA_NEGEDGE,TA_BOTHEDGE,TA_LOWLEVEL,TA_HIGHLEVELの値は, ターゲット定義とする. (10) CPU 例外管理機能 TA_DIRECT CPU 例外ハンドラを直接呼び出す TA_DIRECT の値は,ターゲット定義とする. 5.4.6 カーネルの機能毎のマクロ (1) タスク管理機能 COUNT_STK_T(sz) ROUND_STK_T(sz) サイズszのスタック領域を確保するために必要な STK_T 型の配列の要素数 要素数COUNT_STK_T(sz)のSTK_T型の配列のサイズ(sz を,STK_T型のサイズの倍数になるように大きい方に 丸めた値) 355 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17751 17752 17753 17754 17755 17756 17757 17758 17759 17760 17761 17762 17763 17764 17765 17766 17767 17768 17769 17770 17771 17772 17773 17774 17775 17776 17777 17778 17779 17780 17781 17782 17783 17784 17785 17786 17787 17788 17789 17790 17791 17792 17793 17794 17795 17796 17797 17798 17799 17800 (4) 同期・通信機能 TSZ_DTQMB(dtqcnt) TCNT_DTQMB(dtqcnt) TSZ_PDQMB(pdqcnt) TCNT_PDQMB(pdqcnt) dtqcnt で指定した数のデータを格納できるデータ キュー管理領域のサイズ(バイト数) dtqcnt で指定した数のデータを格納できるデータ キュー管理領域を確保するために必要なMB_T型の配 列の要素数 pdqcnt で指定した数のデータを格納できる優先度デー タキュー管理領域のサイズ(バイト数) pdqcnt で指定した数のデータを格納できる優先度デー タキュー管理領域を確保するために必要なMB_T型の 配列の要素数 TSZ_MBFMB(msgcnt, msgsz) TCNT_MBFMB(msgcnt, msgsz) msgsz で指定したサイズのメッセージを, msgcnt で指定した数だけ格納できるメッセー ジバッファ管理領域のサイズ(バイト数) msgsz で指定したサイズのメッセージを, msgcnt で指定した数だけ格納できるメッセー ジバッファ管理領域を確保するために必要 なMB_T型の配列の要素数 (5) メモリプール管理機能 COUNT_MPF_T(blksz) ROUND_MPF_T(blksz) TSZ_MPFMB(blkcnt) TCNT_MPFMB(blkcnt) 固定長メモリブロックのサイズがblkszの固定長メモ リプール領域を確保するために,固定長メモリブロッ ク1つあたりに必要なMPF_T型の配列の要素数を求め るマクロ 要素数COUNT_MPF_T(blksz)のMPF_T型の配列のサイズ (blkszを,MPF_T型のサイズの倍数になるように大き い方に丸めた値) blkcnt で指定した数の固定長メモリブロックを管理 することができる固定長メモリプール管理領域のサ イズ(バイト数) blkcnt で指定した数の固定長メモリブロックを管理 することができる固定長メモリプール管理領域を確 保するために必要なMB_T型の配列の要素数 5.5 構成マクロ 5.5.1 TOPPERS 共通構成マクロ (1) 相対時間の範囲 TMAX_RELTIM 相対時間に指定できる最大値 5.5.2 カーネル共通構成マクロ 356 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17801 17802 17803 17804 17805 17806 17807 17808 17809 17810 17811 17812 17813 17814 17815 17816 17817 17818 17819 17820 17821 17822 17823 17824 17825 17826 17827 17828 17829 17830 17831 17832 17833 17834 17835 17836 17837 17838 17839 17840 17841 17842 17843 17844 17845 17846 17847 17848 17849 17850 (1) サポートする機能 TOPPERS_SUPPORT_PROTECT TOPPERS_SUPPORT_MULTI_PRC TOPPERS_SUPPORT_DYNAMIC_CRE 保護機能対応のカーネル マルチプロセッサ対応のカーネル 動的生成対応のカーネル (2) 優先度の範囲 TMIN_TPRI TMAX_TPRI タスク優先度の最小値(=1) タスク優先度の最大値 (3) プロセッサの数 TNUM_PRCID プロセッサの数 (4) 特殊な役割を持ったプロセッサ TOPPERS_MASTER_PRCID TOPPERS_SYSTIM_PRCID マスタプロセッサのID番号 システム時刻管理プロセッサのID番号 (5) タイマ方式 TOPPERS_SYSTIM_LOCAL TOPPERS_SYSTIM_GLOBAL ローカルタイマ方式の場合にマクロ定義 グローバルタイマ方式の場合にマクロ定義 (6) バージョン情報 TKERNEL_MAKER TKERNEL_PRID TKERNEL_SPVER TKERNEL_PRVER カーネルのメーカコード(=0x0118) カーネルの識別番号 カーネル仕様のバージョン番号 カーネルのバージョン番号 5.5.3 カーネルの機能毎の構成マクロ (1) タスク管理機能 TMAX_ACTCNT タスクの起動要求キューイング数の最大値 TNUM_TSKID 登録できるタスクの数(動的生成対応でないカーネルで は,静的APIによって登録されたタスクの数に一致) (2) タスク付属同期機能 TMAX_WUPCNT タスクの起床要求キューイング数の最大値 (3) タスク例外処理機能 TBIT_TEXPTN タスク例外要因のビット数(TEXPTNの有効ビット数) (4) 同期・通信機能 357 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17851 17852 17853 17854 17855 17856 17857 17858 17859 17860 17861 17862 17863 17864 17865 17866 17867 17868 17869 17870 17871 17872 17873 17874 17875 17876 17877 17878 17879 17880 17881 17882 17883 17884 17885 17886 17887 17888 17889 17890 17891 17892 17893 17894 17895 17896 17897 17898 17899 17900 セマフォ TMAX_MAXSEM セマフォの最大資源数の最大値 TNUM_SEMID 登録できるセマフォの数(動的生成対応でないカーネル では,静的APIによって登録されたセマフォの数に一致) イベントフラグ TBIT_FLGPTN イベントフラグのビット数(FLGPTNの有効ビット数) TNUM_FLGID 登録できるイベントフラグの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたイベントフラグの 数に一致) データキュー TNUM_DTQ ID 登録できるデータキューの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたデータキューの数 に一致) 優先度データキュー TMIN_DPRI TMAX_DPRI データ優先度の最小値(=1) データ優先度の最大値 TNUM_PDQID 登録できる優先度データキューの数(動的生成対応でな いカーネルでは,静的APIによって登録された優先度デー タキューの数に一致) メールボックス TMIN_MPRI TMAX_MPRI メッセージ優先度の最小値(=1) メッセージ優先度の最大値 TNUM_MBXID 登録できるメールボックスの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたメールボックスの 数に一致) ミューテックス TNUM_MTXID 登録できるミューテックスの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたミューテックスの 数に一致) メッセージバッファ TNUM_MBFID 登録できるメッセージバッファの数(動的生成対応でな いカーネルでは,静的APIによって登録されたメッセー 358 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17901 17902 17903 17904 17905 17906 17907 17908 17909 17910 17911 17912 17913 17914 17915 17916 17917 17918 17919 17920 17921 17922 17923 17924 17925 17926 17927 17928 17929 17930 17931 17932 17933 17934 17935 17936 17937 17938 17939 17940 17941 17942 17943 17944 17945 17946 17947 17948 17949 17950 ジバッファの数に一致) スピンロック TNUM_SPNID 登録できるスピンロックの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録されたミューテックスの 数に一致) (5) メモリプール管理機能 固定長メモリプール TNUM_MPFID 登録できる固定長メモリプールの数(動的生成対応でない カーネルでは,静的APIによって登録された固定長メモリ プールの数に一致) (6) 時間管理機能 システム時刻管理 TIC_NUME TIC_DENO タイムティックの周期(単位はミリ秒)の分子 タイムティックの周期(単位はミリ秒)の分母 TOPPERS_SUPPORT_GET_UTM get_utm がサポートされている 周期ハンドラ TNUM_CYCID 登録できる周期ハンドラの数(動的生成対応でないカー ネルでは,静的APIによって登録された周期ハンドラの数 に一致) アラームハンドラ TNUM_ALMID 登録できるアラームハンドラの数(動的生成対応でない カーネルでは,静的APIによって登録されたアラームハン ドラの数に一致) オーバランハンドラ TMAX_OVRTIM プロセッサ時間に指定できる最大値 TOPPERS_SUPPORT_OVR HDR オーバランハンドラ機能がサポートされて いる (7) システム状態管理機能 なし (8) メモリオブジェクト管理機能 359 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 17951 17952 17953 17954 17955 17956 17957 17958 17959 17960 17961 17962 17963 17964 17965 17966 17967 17968 17969 17970 17971 17972 17973 17974 17975 17976 17977 17978 17979 17980 17981 17982 17983 17984 17985 17986 17987 17988 17989 17990 17991 17992 17993 17994 17995 17996 17997 17998 17999 18000 TOPPERS_SUPPORT_ATT_MOD TOPPERS_SUPPORT_ATT_PMA ATT_MOD /ATA_MODがサポートされている ATT_PMA /ATA_PMA/att_pmaがサポートさ れている (9) 割込み管理機能 TMIN_INTPRI TMAX_INTPRI 割込み優先度の最小値(最高値) 割込み優先度の最大値(最低値,=-1) TMIN_ISRPRI TMAX_ISRPRI 割込みサービスルーチン優先度の最小値(=1) 割込みサービスルーチン優先度の最大値 TOPPERS_SUPPORT_DIS_INT TOPPERS_SUPPORT_ENA_INT dis_int がサポートされている ena_int がサポートされている (10) CPU 例外管理機能 なし (11) 拡張サービスコール管理機能 TNUM_FNCD 登録できる拡張サービスコールの数(動的生成対応でな いカーネルでは,静的APIによって登録された拡張サービ スコールの数に一致) (12) システム構成管理機能 なし 5.6 エラーコード一覧 (1) メインエラーコード E_SYS E_NOSPT E_RSFN E_RSATR E_PAR E_ID E_CTX E_MACV E_OACV E_ILUSE E_NOMEM E_NOID E_NORES E_OBJ E_NOEXS E_QOVR E_RLWAI -5 -9 -10 -11 -17 -18 -25 -26 -27 -28 -33 -34 -35 -41 -42 -43 -49 システムエラー 未サポート機能 予約機能コード 予約属性 パラメータエラー 不正ID番号 コンテキストエラー メモリアクセス違反 オブジェクトアクセス違反 サービスコール不正使用 メモリ不足 ID番号不足 資源不足 オブジェクト状態エラー オブジェクト未登録 キューイングオーバフロー 待ち禁止状態または待ち状態の強制解除 360 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18001 18002 18003 18004 18005 18006 18007 18008 18009 18010 18011 18012 18013 18014 18015 18016 18017 18018 18019 18020 18021 18022 18023 18024 18025 18026 18027 18028 18029 18030 18031 18032 18033 18034 18035 18036 18037 18038 18039 18040 18041 18042 18043 18044 18045 18046 18047 18048 18049 18050 E_TMOUT E_DLT E_CLS E_WBLK E_BOVR -50 -51 -52 -57 -58 ポーリング失敗またはタイムアウト 待ちオブジェクトの削除または再初期化 待ちオブジェクトの状態変化 ノンブロッキング受付け バッファオーバフロー 5.7 機能コード一覧【NGKI4036】 --------------------------------------------------------0 -1 -2 -3 --------------------------------------------------------0x01 予約 予約 予約 予約 -0x05 act_tsk iact_tsk can_act ext_tsk -0x09 ter_tsk chg_pri get_pri get_inf -0x0d slp_tsk tslp_tsk wup_tsk iwup_tsk -0x11 can_wup rel_wai irel_wai 予約 -0x15 dis_wai idis_wai ena_wai iena_wai -0x19 sus_tsk rsm_tsk dly_tsk 予約 -0x1d ras_tex iras_tex dis_tex ena_tex -0x21 sns_tex ref_tex 予約 予約 -0x25 sig_sem isig_sem wai_sem pol_sem -0x29 twai_sem 予約 予約 予約 -0x2d set_flg iset_flg clr_flg wai_flg -0x31 pol_flg twai_flg 予約 予約 -0x35 snd_dtq psnd_dtq ipsnd_dtq tsnd_dtq -0x39 fsnd_d tq ifsnd_dtq rcv_dtq prcv_dtq -0x3d trcv_dtq 予約 予約 予約 -0x41 snd_pdq psnd_pdq ipsnd_pdq tsnd_pdq -0x45 rcv_pdq prcv_pdq trcv_pdq 予約 -0x49 snd_mbx rcv_mbx prcv_mbx trcv_mbx -0x4d loc_mtx ploc_mtx tloc_mtx unl_mtx -0x51 snd_mbf psnd_mbf tsnd_mbf rcv_mbf -0x55 prcv_mbf trcv_mbf 予約 予約 -0x59 get_mpf pget_mpf tget_mpf rel_mpf -0x5d get_tim get_utm 予約 ref_ovr -0x61 sta_cyc stp_cyc 予約 予約 -0x65 sta_alm ista_alm stp_alm istp_alm -0x69 sta_ovr ista_ovr stp_ovr istp_ovr -0x6d sac_sys ref_sys rot_rdq irot_rdq -0x71 get_did 予約 get_tid iget_tid -0x75 loc_cpu iloc_cpu unl_cpu iunl_cpu -0x79 dis_dsp ena_dsp sns_ctx sns_loc -0x7d sns_dsp sns_dpn sns_ker ext_ker -0x81 att_mem det_mem sac_mem prb_mem -0x85 ref_mem 予約 att_pma 予約 -0x89 cfg_int dis_int ena_int ref_int -0x8d chg_ipm get_ipm 予約 予約 -0x91 xsns_dpn xsns_xpn 予約 予約 -0x95 ref_cfg ref_ver 予約 予約 -0x99 予約 予約 予約 予約 361 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18051 18052 18053 18054 18055 18056 18057 18058 18059 18060 18061 18062 18063 18064 18065 18066 18067 18068 18069 18070 18071 18072 18073 18074 18075 18076 18077 18078 18079 18080 18081 18082 18083 18084 18085 18086 18087 18088 18089 18090 18091 18092 18093 18094 18095 18096 18097 18098 18099 18100 -0x9d 予約 予約 予約 予約 -0xa1 予約 ini_sem ini_flg ini_dtq -0xa5 ini_pdq ini_mbx ini_mtx ini_mbf -0xa9 ini_mpf 予約 予約 予約 -0xad 予約 予約 予約 予約 -0xb1 ref_tsk ref_sem ref_flg ref_dtq -0xb5 ref_pdq ref_mbx ref_mtx ref_mbf -0xb9 ref_mpf ref_cyc ref_alm re f_isr -0xbd ref_spn 予約 予約 予約 -0xc1 acre_tsk acre_sem acre_flg acre_dtq -0xc5 acre_pdq acre_mbx acre_mtx acre_mbf -0xc9 acre_mpf acre_cyc acre_alm a cre_isr -0xcd acre_spn 予約 予約 予約 -0xd1 del_tsk del_sem del_flg del_dtq -0xd5 del_pdq del_mbx del_mtx del_mbf -0xd9 del_mpf del_cyc del_alm d el_isr -0xdd del_spn 予約 予約 予約 -0xe1 sac_tsk sac_sem sac_flg sac_dtq -0xe5 sac_pdq 予約 sac_mtx sac_mbf -0xe9 sac_mpf sac_cyc sac_alm sac_ isr -0xed sac_spn 予約 予約 予約 -0xf1 def_tex def_ovr def_inh def_exc -0xf5 def_svc 予約 予約 予約 -0xf9 予約 予約 予約 予約 -0xfd 予約 予約 予約 予約 -0x101 mact_tsk imact_tsk mig_tsk 予約 -0x105 msta_cyc 予約 msta_alm imsta_alm -0x109 mrot_rdq imrot_rdq get_pid iget_pid -0x10d 予約 予約 予約 予約 -0x111 loc_spn iloc_spn try_spn itry_spn -0x115 unl_spn iunl_spn 予約 予約 -0x119 予約 予約 予約 予約 -0x11d 予約 予約 予約 予約 -------------------------------------------------------【μITRON4.0仕様との関係】 サービスコールの機能コードを割り当てなおした. 5.8 カーネルオブジェクトに対するアクセスの種別 -----------------------------------------------------------------------オブジェクトの種類 通常操作1 通常操作2 管理操作 参照操作 -----------------------------------------------------------------------メモリオブジェクト 書込み 読出し det_mem ref_mem 実行 sac_mem prb_mem -----------------------------------------------------------------------タスク act_tsk ter_tsk del_tsk get_pri mact_tsk chg_pri sac_tsk ref_tsk can_act rel_wai def_tex ref_tex 362 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18101 18102 18103 18104 18105 18106 18107 18108 18109 18110 18111 18112 18113 18114 18115 18116 18117 18118 18119 18120 18121 18122 18123 18124 18125 18126 18127 18128 18129 18130 18131 18132 18133 18134 18135 18136 18137 18138 18139 18140 18141 18142 18143 18144 18145 18146 18147 18148 18149 18150 mig_tsk wup_tsk can_wup sus_tsk ref_ovr rsm_tsk dis_wai ena_wai ras_tex sta_ovr stp_ovr -----------------------------------------------------------------------セマフォ sig_sem wai_sem del_sem ref_sem pol_sem ini_sem twai_sem sac_sem -----------------------------------------------------------------------イベントフラグ set_flg wai_flg del_flg ref_flg clr_flg pol_flg ini_flg twai_flg sac_flg -----------------------------------------------------------------------データキュー snd_dtq rcv_dtq del_dtq ref_dtq psnd_dtq prcv_dtq ini_dtq tsnd_dtq trcv_dtq sac_dtq fsnd_dtq -----------------------------------------------------------------------優先度データキュー snd_pdq rcv_pdq del_pdq ref_pdq psnd_pdq prcv_pdq ini_pdq tsnd_pdq trcv_pdq sac_pdq -----------------------------------------------------------------------メッセージバッファ snd_mbf rcv_mbf del_mbf ref_mbf psnd_mbf prcv_mbf ini_mbf tsnd_mbf trcv_mbf sac_mbf -----------------------------------------------------------------------ミューテックス loc_mtx del_mtx ref_mtx ploc_mtx ini_mtx tloc_mtx sac_mtx unl_mtx -----------------------------------------------------------------------スピンロック loc_spn del_spn ref_spn try_spn sac_spn unl_spn -----------------------------------------------------------------------固定長メモリプール get_mpf rel_mpf del_mpf ref_mpf pget_mpf ini_mpf tget_mpf sac_mpf -----------------------------------------------------------------------周期ハンドラ sta_cyc stp_cy c del_cyc ref_cyc msta_cyc sac_cyc -----------------------------------------------------------------------アラームハンドラ sta_alm stp_alm del_alm ref_alm msta_alm sac_alm -----------------------------------------------------------------------割込みサービスルーチン del_isr ref_isr sac_isr 363 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18151 18152 18153 18154 18155 18156 18157 18158 18159 18160 18161 18162 18163 18164 18165 18166 18167 18168 18169 18170 18171 18172 18173 18174 18175 18176 18177 18178 18179 18180 18181 18182 18183 18184 18185 18186 18187 18188 18189 18190 18191 18192 18193 18194 18195 18196 18197 18198 18199 18200 -----------------------------------------------------------------------システム状態 rot_rdq loc_cpu acre_yyy get_tim mrot_rdq unl_cpu att_mem get_ipm dis_dsp dis_int att_pma ref_sys ena_dsp ena_int cfg_int ref_int chg_ipm def_inh ref_cfg def_exc ref_ver def_svc def_ovr -----------------------------------------------------------------------すべての保護ドメインから呼び出すことができるサービスコール: ・自タスクへの操作(ext_tsk,get_inf,slp_tsk,tslp_tsk,dly_tsk, dis_tex ,ena_tex) ・タスク例外状態参照(sns_tex) ・性能評価用システム時刻の参照(get_utm) ・システム状態参照(get_tid,get_did,get_pid,sns_ctx,sns_loc, sns_dsp ,sns_dpn,sns_ker) ・CPU例外発生時の状態参照(xsns_dpn,xsns_xpn) ・拡張サービスコールの呼出し(cal_svc) カーネルドメインのみから呼び出すことができるサービスコール: ・システム状態のアクセス許可ベクタの設定(sac_sys) ・カーネルの終了(ext_ker) ・非タスクコンテキスト専用のサービスコール アクセス許可ベクタによるアクセス保護を行わないサービスコール: ・ミューテックスのロック解除(unl_mtx) 【補足説明】 xsns_dpnとxsns_xpnは,エラーコードを返さないために,すべての保護ドメイ ンから呼び出すことができるサービスコールとしているが,タスクコンテキス トから呼び出した場合には必ずtrueが返ることとしており,実質的にはカーネ ルドメインのみから呼び出すことができる. 【μITRON4.0/PX仕様との関係】 get_priは,μITRON4.0/PX仕様ではタスクに対する通常操作1としていたのを, タスクに対する参照操作に変更した.また,get_ipm(μITRON4.0/PX仕様では get_ixx)をシステム状態に対する通常操作2から参照操作に,sac_sysをシステ ム状態に対する管理操作からカーネルドメインのみから呼び出すことができる サービスコールに変更した.システム時刻に対するアクセス許可ベクタは廃止 し,get_timはシステム状態に対する参照操作とした. 【仕様変更の経緯】 364 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18201 18202 18203 18204 18205 18206 18207 18208 18209 18210 18211 18212 18213 18214 18215 18216 18217 18218 18219 18220 18221 18222 18223 18224 18225 18226 18227 18228 18229 18230 18231 18232 18233 18234 18235 18236 18237 18238 18239 18240 18241 18242 18243 18244 18245 18246 18247 18248 18249 18250 この仕様のRelease 1.5以前では,unl_mtxは,アクセス許可ベクタによるアク セス保護を行わないサービスコールとしていた.これは,ミューテックスをロッ クしたタスク以外がunl_mtxを呼び出すとE_ILUSEエラーとなるため,実質的に は対象ミューテックスの通常操作1としてアクセス保護されているとみなすこと ができると考えたためである.しかし,タスクが拡張サービスコールの中で ミューテックスをロックした場合,アクセス許可ベクタではアクセスが許可さ れていないミューテックスをロックすることができる.このようなミューテッ クスのロック解除は,タスクから直接unl_mtxを呼んで行うのではなく,拡張サー ビスコールの中で行うべきと考えられる.そこで,unl_mtxを,対象ミューテッ クスの通常操作1としてアクセス保護する仕様に変更した.なお,HRP2カーネル Release 2.1 以前のバージョンは,古い仕様に従って実装されている. 5.9 ターゲット定義事項一覧 ・割込み優先度の段階数[NGKI0256] ・割込み番号の付与方法[NGKI0272] ・割込みハンドラ番号の付与方法[NGKI0273] ・割込み番号に対応しない割込みハンドラ番号や,割込みハンドラ番号に対応 しない割込み番号を設けるか[NGKI0276] ・受け付けた割込み要求に対して,割込みサービスルーチンも割込みハンドラ も登録していない場合の振舞い[NGKI0249] ・割込み要求禁止フラグがサポートされているか[NGKI0260][NGKI0261] ・割込み要求禁止フラグの振舞いを仕様と異なるものとするか[NGKI0261] ・割込み要求ラインのトリガモードの設定がサポートされているか[NGKI0267] ・割込み要求ラインをエッジトリガに設定する場合に,ポジティブエッジトリ ガかネガティブエッジトリガか両エッジトリガかを設定できるか[NGKI0265] ・割込み要求ラインをレベルトリガに設定する場合に,ローレベルトリガかハ イレベルトリガかを設定できるか[NGKI0266] ・あるプロセッサで割込み要求禁止フラグを動的にセット/クリアしても,他 のプロセッサに対しては割込みがマスク/マスク解除されないものとするか 〔M〕[NGKI0281] ・TMIN_INTPRIを固定するか設定できるようにするかと,設定できるようにする 場合の設定方法[NGKI0288] ・NMI以外にカーネル管理外の割込みを設けるか(設けられるようにするか) [NGKI0289] ・カーネル管理外の割込みハンドラが実行開始される時のシステム状態とコン テキスト,割込みハンドラの終了時に行われる処理,割込みハンドラの記述 365 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18251 18252 18253 18254 18255 18256 18257 18258 18259 18260 18261 18262 18263 18264 18265 18266 18267 18268 18269 18270 18271 18272 18273 18274 18275 18276 18277 18278 18279 18280 18281 18282 18283 18284 18285 18286 18287 18288 18289 18290 18291 18292 18293 18294 18295 18296 18297 18298 18299 18300 方法[NGKI0292] ・カーネル管理外の割込みの設定方法として,3つの方法のいずれを採用するか [NGKI0295] ・カーネル管理外とされた割込みに対して,カーネルのAPIにより割込みハンド ラを登録できるかと,割込み要求ラインの属性を設定できるか[NGKI0297] ・CPU例外ハンドラ番号の付与方法[NGKI0306] ・発生したCPU例外に対して,CPU例外ハンドラを登録していない場合の振舞い [NGKI0314] ・メモリオブジェクトの先頭番地とサイズに対する制約〔P〕[NGKI0070] [NGKI2774] ・コンパイラが出力しないセクションの中で,どれを標準のセクションと扱う か〔P〕[NGKI0113] ・保護ドメイン毎の標準セクションのセクション名を,標準のセクション名と 保護ドメイン名を"_"でつないだものとする仕様を変更するか〔P〕[NGKI0116] ・タスクのユーザスタック領域はそのタスク(とカーネルドメインに属する処 理単位)のみがアクセスできるという仕様を変更するか〔P〕[NGKI0074] ・メモリオブジェクトに対して,通常のメモリアクセスにより,許可されてい ない書込みアクセスまたは読出しアクセス(実行アクセスを含む)を行おう とした場合に,どのCPU例外ハンドラが起動されるか〔P〕[NGKI0411] ・メモリオブジェクトに対して,サービスコールを通じて,許可されていない 書込みアクセスまたは読出しアクセスを行おうとした場合に,サービスコー ルからE_MACVエラーが返るか,メモリアクセス違反ハンドラが起動されるか 〔P〕[NGKI0413] ・メモリアクセス違反ハンドラで,アクセス違反を発生させたアクセスに関す る情報(アクセスした番地,アクセスの種別,アクセスした命令の番地など) を参照する方法〔P〕[NGKI0414] ・メモリオブジェクトの書込みアクセスと読出しアクセス(実行アクセスを含 む)に対して設定できるアクセス許可パターンに対する制限〔P〕[NGKI0417] ・1つの保護ドメインに登録できるメモリオブジェクトの数に対する制限〔P〕 [NGKI0423] ・ユーザスタック領域に対して実行アクセスを行えるか〔P〕[NGKI0440] ・タスクのユーザスタック領域を,そのタスクが属する保護ドメイン全体から アクセスできるものとするか〔P〕[NGKI0441] ・使用できるクラスのID番号とその属性〔M〕[NGKI0107] 366 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18301 18302 18303 18304 18305 18306 18307 18308 18309 18310 18311 18312 18313 18314 18315 18316 18317 18318 18319 18320 18321 18322 18323 18324 18325 18326 18327 18328 18329 18330 18331 18332 18333 18334 18335 18336 18337 18338 18339 18340 18341 18342 18343 18344 18345 18346 18347 18348 18349 18350 ・どのプロセッサをマスタプロセッサとするか〔M〕[NGKI0101] ・ローカルタイマ方式とグローバルタイマ方式のどちらの方式を用いることが できるか〔M〕[NGKI0108] ・グローバルタイマ方式の場合に,どのプロセッサをシステム時刻管理プロセッ サとするか〔M〕[NGKI0111] ・int8_t,uint8_t,int64_t,uint64_t,int128_t,uint128_t,float32_t, double64_tが使用できるか[NGKI0488][NGKI0490] ・ターゲット定義のタスク属性[NGKI1016] ・タスクが用いるスタック領域のサイズの最小値[NGKI1042] ・タスクのシステムスタック領域のサイズの最小値〔P〕[NGKI1044] ・タスクが用いるスタック領域の先頭番地とサイズに対する制約[NGKI1050] [NGKI1056] ・ユーザスタックのスタック領域(ユーザスタック領域)をアプリケーション で確保する方法〔P〕[NGKI1059] ・タスクのシステムスタック領域の先頭番地とサイズに対する制約〔P〕 [NGKI1062][NGKI1065][NGKI1070] ・データキュー管理領域の先頭番地に対する制約[NGKI1687] ・優先度データキュー管理領域の先頭番地に対する制約[NGKI1824] ・メッセージバッファ管理領域の先頭番地とサイズに対する制約[NGKI3319] [NGKI3324] ・生成できるスピンロックの数の上限〔M〕[NGKI2142] ・スピンロックに対して,複数のプロセッサがロックの取得を待っている時に, どのプロセッサが最初にロックを取得できるか〔M〕[NGKI2183] ・固定長メモリプール領域の先頭番地に対する制約[NGKI2249] ・固定長メモリプール管理領域の先頭番地に対する制約[NGKI2256] ・タイムティックの周期[NGKI2335] ・マルチプロセッサ対応カーネルにおける性能評価用システム時刻の扱い〔M〕 [NGKI2346] ・get_utmがサポートされているか[NGKI2360] 367 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18351 18352 18353 18354 18355 18356 18357 18358 18359 18360 18361 18362 18363 18364 18365 18366 18367 18368 18369 18370 18371 18372 18373 18374 18375 18376 18377 18378 18379 18380 18381 18382 18383 18384 18385 18386 18387 18388 18389 18390 18391 18392 18393 18394 18395 18396 18397 18398 18399 18400 ・オーバランハンドラ機能がサポートされているか[NGKI2598] ・オーバランハンドラ機能のプロセッサ時間に指定できる値の上限[NGKI2594] ・ターゲット定義のメモリリージョン属性〔P〕 ・メモリリージョンの先頭番地とサイズに対する制約〔P〕[NGKI2768] ・メモリオブジェクトに対するTA_NOWRITE属性,TA_NOREAD属性,TA_EXEC属性 の内,どのような場合にどの属性の指定が無視されるか〔P〕[NGKI2782] ・ショートデータ領域がサポートされておらず,TA_SDATA属性が無視されるか 〔P〕[NGKI2789] ・TA_NOWRITEを指定した場合に,TA_SDATAが無視されるか〔P〕[NGKI2790] ・TA_UNCACHE属性やTA_IODEV属性を指定しても意味がなく,これらの属性が無 視されるか〔P〕[NGKI2792] ・キャッシュ禁止にできないメモリオブジェクトと周辺デバイスの領域として 扱うことができないメモリオブジェクト〔P〕[NGKI2793] ・ターゲット定義のメモリオブジェクト属性〔P〕[NGKI2794] ・ATA_SECにより登録できるセクションが属する保護ドメインや登録できる数 に対する制限〔P〕[NGKI2831] ・ATT_MOD/ATA_MODがサポートされているか〔P〕[NGKI2859] ・ATT_MOD/ATA_MODにより登録されるセクション毎のメモリオブジェクトに設 定されるメモリオブジェクト属性〔P〕[NGKI2850] ・クラスの囲みの中に記述されたATT_MOD/ATA_MODにおいて,クラスの標準メ モリリージョンが定義されている場合でも,共通の標準メモリリージョンに 配置されるセクション〔PM〕[NGKI3271] ・ATA_MODにより登録できるオブジェクトモジュールが属する保護ドメインや登 録できる数に対する制限〔P〕[NGKI2857] ・ATT_MEM/ATA_MEMにより登録できるメモリオブジェクトが属する保護ドメイ ンや登録できる数に対する制限〔P〕[NGKI2878] ・ATT_MEM/ATA_MEM/att_memにより登録するメモリ領域の先頭番地とサイズに 対する制約〔P〕[NGKI2880] ・ATT_PMA/ATA_PMA/att_pmaがサポートされているか〔P〕[NGKI2903] [HRPS0156] ・ATT_PMA/ATA_PMAにより登録できるメモリオブジェクトが属する保護ドメイ ンや登録できる数に対する制限〔P〕[NGKI2898] 368 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18401 18402 18403 18404 18405 18406 18407 18408 18409 18410 18411 18412 18413 18414 18415 18416 18417 18418 18419 18420 18421 18422 18423 18424 18425 18426 18427 18428 18429 18430 18431 18432 18433 18434 18435 18436 18437 18438 18439 18440 18441 18442 18443 18444 18445 18446 18447 18448 18449 18450 ・ATT_PMA/ATA_PMA/att_pmaにより登録するメモリ領域の先頭番地とサイズ, 物理アドレス空間における先頭番地に対する制約〔P〕[NGKI2900] ・ターゲット定義の割込み要求ライン属性[NGKI2945] ・割込みハンドラ属性にTA_NONKERNELを指定できるか[NGKI2957] ・その他のターゲット定義の割込みハンドラ属性[NGKI2959] ・cfg_intにおいて,複数の割込み要求ラインの割込み優先度が連動して設定さ れるか〔D〕[NGKI2980] ・CFG_INT/cfg_intで,カーネル管理外の割込み要求ラインに対しても属性を 設定できるか[NGKI2982] ・CFG_INT/cfg_intで,各割込み要求ラインに対して設定できる割込み要求ラ イン属性/割込み優先度に対する制限[NGKI2986] ・割込みサービスルーチンが属することができるクラスに対する制限〔M〕 [NGKI3018] ・CRE_ISR/ATT_ISRにおいて,isrが不正である場合にE_PARエラーが検出され るか[NGKI3020] ・DEF_INH/def_inhで,カーネル管理外の割込みに対しても割込みハンドラを 定義できるか[NGKI3064] ・カーネル管理外に固定されている割込みハンドラがあるか[NGKI3067] ・カーネル管理に固定されている割込みハンドラがあるか[NGKI3068] ・割込みハンドラが属することができるクラスに対する制限〔M〕[NGKI3074] ・def_inhで,静的APIで定義された割込みハンドラの定義を解除できるか〔D〕 [NGKI3077] ・DEF_INH/def_inhで割込みハンドラを定義(または定義解除)できない割込 みハンドラ番号[NGKI3078] ・def_inhを呼び出したタスクが割り付けられているプロセッサから定義(また は定義解除)できない割込みハンドラ〔M〕[NGKI3079] ・DEF_INHにおいて,inthdrが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか [NGKI3080] ・dis_intがサポートされているか[NGKI3091] ・dis_intにより,どのような場合に割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグ をセットできないか[NGKI3087] 369 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18451 18452 18453 18454 18455 18456 18457 18458 18459 18460 18461 18462 18463 18464 18465 18466 18467 18468 18469 18470 18471 18472 18473 18474 18475 18476 18477 18478 18479 18480 18481 18482 18483 18484 18485 18486 18487 18488 18489 18490 18491 18492 18493 18494 18495 18496 18497 18498 18499 18500 ・dis_intにおいて,割込み要求禁止フラグの振舞いが,この仕様の規定と異な るか[NGKI3089] ・ena_intがサポートされているか[NGKI3104] ・ena_intにより,どのような場合に割込み要求ラインの割込み要求禁止フラグ をクリアできないか[NGKI3100] ・ena_intにおいて,割込み要求禁止フラグの振舞いが,この仕様の規定と異な るか[NGKI3102] ・chg_ipmにより,割込み優先度マスクをTMIN_INTPRIよりも小さい値に変更で きるか[NGKI3114] ・ターゲット定義のCPU例外ハンドラ属性[NGKI3123] ・def_excで,静的APIで定義されたCPU例外ハンドラの定義を解除できるか〔D〕 [NGKI3148] ・DEF_EXCにおいて,exchdrが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか [NGKI3149] ・非タスクコンテキスト用スタック領域のサイズの最小値[NGKI3254] ・非タスクコンテキスト用スタック領域の先頭番地とサイズに対する制約 [NGKI3220][NGKI3222] ・DEF_ICSにより非タスクコンテキスト用スタック領域を設定しない場合の,非 タスクコンテキスト用スタック領域のデフォルトのサイズ[NGKI3224] ・共有スタック領域のサイズの最小値[NGKI3255] ・共有スタック領域の先頭番地とサイズに対する制約[NGKI3234][NGKI3236] ・ATT_INIにおいて,inirtnが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか [NGKI3246] ・ATT_TERにおいて,terrtnが不正である場合にE_PARエラーが検出されるか [NGKI3253] 5.10 省略名の元になった英語 5.10.1 サービスコールと静的APIの名称の中のxxxの元になった英語 xxx 元になった英語 ---------------------act activate aid automatically assigned ID ata attach with access control vector 370 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18501 18502 18503 18504 18505 18506 18507 18508 18509 18510 18511 18512 18513 18514 18515 18516 18517 18518 18519 18520 18521 18522 18523 18524 18525 18526 18527 18528 18529 18530 18531 18532 18533 18534 18535 18536 18537 18538 18539 18540 18541 18542 18543 18544 18545 18546 18547 18548 18549 18550 att cal can cfg chg clr cre def del det dis dly ena epr ext get ini lnk loc mig pol prb ras rcv ref rel rot rsm sac set sig slp snd sns sta stp sus ter try unl wai wup attach call cancel configure change clear create define delete detach disable delay enable execution priority exit g et initialize link lock migrate poll probe raise receive reference release rotate resume set access control vector set signal sleep send sense start stop suspend terminate try unlock wait wake up 5.10.2 サービスコールと静的APIの名称の中のyyyの元になった英語 yyy 元になった英語 ---------------------act activation alm alarm handler cfg configuration 371 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18551 18552 18553 18554 18555 18556 18557 18558 18559 18560 18561 18562 18563 18564 18565 18566 18567 18568 18569 18570 18571 18572 18573 18574 18575 18576 18577 18578 18579 18580 18581 18582 18583 18584 18585 18586 18587 18588 18589 18590 18591 18592 18593 18594 18595 18596 18597 18598 18599 18600 cpu ctx cyc did dpn dsp dtq exc flg ics inf inh ini int ipm isr ker loc mbf mbx mpf mem mod mtx ovr pdq pid pma pri rdq reg sec sem srg spn stk sys svc ter tex tid tim tsk utm ver wai wup xpn CPU context cyclic handler domain ID dispatch pending dispatch data queue exception eventflag interrupt context stack information interrupt handler initilization interrupt interrupt priority mask interrupt service routine kernel lock message buffer mailbox fixed -sized memory pool memory module mutex overrun handler priority data queue processor ID physical memory area priority ready queue region section semaphore standard memory region spin lock stack system service call termination task exception task ID time task time in micro second version wait wake up exception pending 5.10.3 サービスコールの名称の中のzの元になった英語 372 TOPPERS 新世代カーネル統合仕様書 Release 1.6.0 18601 18602 18603 18604 18605 18606 18607 18608 18609 18610 18611 18612 18613 18614 18615 18616 18617 18618 18619 18620 18621 18622 z 元になった英語 ---------------------a automatic ID assignment f force i interrupt m multiprocessor p poll t timeout x exception 5.11 バージョン履歴 2008年11月19日 2009 年5月8日 2010 年5月10日 2011 年5月5日 2012 年5月16日 2012 年12月19日 2014 年1月16日 Release Release Release Release Release Release Release 1.0.0 1.1.0 1.2.0 1.3.0 1.4.0 1.5.0 1.6.0 最初のリリース FMP カーネルに関する記述が完成 HRP2 カーネルに関する記述が完成 SSPカーネルに関する記述が完成 HRP2 カーネルの仕様変更を反映 以上 373 アプリケーションシステム アプリケーションプログラム システムサービス カーネル システムインタフェースレイヤ プロセッサ, メモリ, タイマ 周辺デバイス 図2-1. 想定するソフトウェア構成 起動された状態 実行できる状態 ディスパッチ 実行可能状態 READY 実行状態 RUNNING プリエンプト 待ち 解除 待ち 広義の待ち状態 待ち状態 WAITING 強制待ち 再開 二重待ち状態 WAITINGSUSPENDED 待ち解除 強制待ち 強制待ち 強制待ち状態 SUSPENDED 再開 起動 強制終了 休止状態 DORMANT 生成 強制終了 終了 削除 未登録状態 NON-EXISTENT 図2-2. タスクの状態遷移 ディスパッチ 実行可能状態 READY ディスパッチ保留 実行状態 RUNNING プリエンプト ディスパッチ 保留解除 実行状態 (ディスパッチ 保留状態) 待ち 待ち解除 待ち状態 WAITING 強制待ち 強制待ち 再開 再開 二重待ち状態 WAITINGSUSPENDED 待ち解除 強制待ち 再開 起動 強制終了 強制待ち 強制待ち状態 SUSPENDED 休止状態 DORMANT 生成 ディスパッチ 保留解除 強制終了 終了 削除 未登録状態 NON-EXISTENT 図2-3. 過渡的な状態も含めたタスクの状態遷移 強制待ち状態 [実行継続中] 割込み要求 …… 割込み要求 割込み番号 (intno) 周辺デバイス 周辺デバイス 割込み要求ライン プロセッサ およびIRC エッジ/ レベル変換 エッジ/ レベル変換 エッジ/ レベル変換 割込み要求 禁止フラグ 割込み要求 禁止フラグ 割込み要求 禁止フラグ 割込み 優先度設定 割込み 優先度設定 割込み 優先度設定 割込み優先度 マスク (IPM) 割込み 優先度比較 割込み 優先度比較 割込み 優先度比較 割込み選択 CPUロック フラグ 全割込みロック フラグ 割込み受付け 割込みハンドラ番号 (inhno) 割込み ハンドラ …… 割込み ハンドラ 割込みサービス ルーチンID (isrid) 割込み ハンドラ マルチプロセッサ対応 カーネルにおいて プロセッサ毎に持つ範囲 割込みサービス ルーチン (ISR) 割込みサービス ルーチン (ISR) 図2-4. TOPPERS標準割込み処理モデルの概念図 割込みハンドラ番号 (inhno) プロセッサ1 プロセッサ2 0x0n…04 0x0n…03 0x0n…02 ローカルIRC 0x0n…01 0x02…04 0x02…03 0x02…02 ローカルIRC 0x02…01 0x01…04 0x01…03 0x01…02 0x0n…02 0x0n…01 0x00…04 0x00…03 0x02…02 0x02…01 0x01…02 0x01…01 割込み番号 (intno) 0x01…01 割込み要求ライン グローバルIRC ローカルIRC プロセッサn 図2-5. マルチプロセッサ対応カーネルにおける割込み番号と割込みハンドラ番号 マスタプロセッサ スレーブプロセッサ スタートアップ モジュールの実行開始 スタートアップ モジュールの実行開始 プロセッサ毎の 初期化処理 プロセッサ毎の 初期化処理 スタートアップ モジュール 共有リソースの 初期化処理 同期 カーネルの 初期化処理へ分岐 カーネルの 初期化処理へ分岐 カーネル自身の初期化と 静的APIの処理 カーネル自身の初期化と 静的APIの処理 同期 グローバル初期化 ルーチンの実行 同期 ローカル初期化 ルーチンの実行 ローカル初期化 ルーチンの実行 同期 カーネル動作状態に 遷移 カーネル動作状態に 遷移 カーネルの動作開始 カーネルの動作開始 図2-6. マルチプロセッサ対応カーネルにおけるシステム初期化の流れ マスタプロセッサ スレーブプロセッサ カーネルを終了させる サービスコールを 呼び出すプロセッサ カーネルを終了させる サービスコールの呼出し カーネル非動作状態に 遷移 他のプロセッサに カーネルの終了を要求 カーネルの 終了処理の開始 カーネルの 終了処理の開始 カーネル非動作状態に 遷移 カーネル非動作状態に 遷移 同期 ローカル終了処理 ルーチンの実行 ローカル終了処理 ルーチンの実行 ローカル終了処理 ルーチンの実行 同期 グローバル終了処理 ルーチンの実行 同期 ターゲットシステム 依存の終了処理 ターゲットシステム 依存の終了処理 ターゲットシステム 依存の終了処理 図2-7. マルチプロセッサ対応カーネルにおけるシステム終了処理の流れ system.cfg システムコンフィギュレー ションファイル cfg1_out.c パラメータ計算用 C言語ファイル コンフィギュレータ (パス1) Cコンパイラ (+関連ツール) cfg1_out.syms cfg1_out.srec パラメータ計算 結果ファイル コンフィギュレータ (パス2) シンボルファイル kernel_cfg.c カーネル 構成・初期化ファイル Cコンパイラ (+関連ツール) kernel_cfg.h カーネル構成・初期化 ヘッダファイル その他のソースファイル, オブジェクトファイル system.srec コンフィギュレータ (パス3) ロードモジュール エラーメッセージ system.syms シンボルファイル ※ファイル名中の斜体の部分は例である. 図2-8. コンフィギュレータの処理モデル cfg1_out.syms cfg1_out.srec コンフィギュレータ (パス2) パラメータ計算 結果ファイル シンボルファイル kernel_cfg.c cfg2_out.ld kernel_mem2.c 仮のメモリ構成・ 初期化ファイル 仮のリンカ スクリプト カーネル 構成・初期化ファイル kernel_cfg.h カーネル構成・初期化 ヘッダファイル Cコンパイラ (+関連ツール) オプション その他のソースファイル, オブジェクトファイル cfg2_out.srec コンフィギュレータ (パス3) 仮のロードモジュール cfg3_out.ld 仮のリンカ スクリプト cfg2_out.syms 仮のシンボルファイル kernel_mem3.c 仮のメモリ構成・ 初期化ファイル Cコンパイラ (+関連ツール) その他のソースファイル, オブジェクトファイル cfg3_out.srec コンフィギュレータ (パス4) 仮のロードモジュール ldscript.ld リンカスクリプト cfg3_out.syms 仮のシンボルファイル kernel_mem.c メモリ構成・ 初期化ファイル Cコンパイラ (+関連ツール) その他のソースファイル, オブジェクトファイル system.srec ロードモジュール system.syms シンボルファイル ※ファイル名中の斜体の部分は例である. 図2-9. 保護機能対応カーネルにおけるコンフィギュレータの処理モデル
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