発表内容 - 山梨総合研究所

第4回
環境・健康ビジネス研究会
平成 23 年度 7 月 12 日(火)16:30~18:30
山梨総合研究所 6F 会議室
『山梨県内の林業の状況と木質バイオマス利用の方向』
発表者:中桐秀晴
山梨木質バイオマス研究会(山梨県森林環境部県有林課)
【大規模集中型から小規模分散型のエネルギーシステムへ】
今回の震災・原発事故で、他の再生可能エネルギーと同様に木質バイオマス利用に
も注目が集まっています。しかし、
「電気が足りない」
「何で発電をするか」というこ
とが主で、「何にどのようなエネルギーを使っていくのか」という議論は低調です。
日本のエネルギーフローチャートを見ると、石炭、原子力、天然ガス、石油、水力
などから電力に転換されるが発電効率は 40%で、60%は熱として捨ててしまってい
ます。ちなみに日本の1次エネルギーのうち、木質バイオマスエネルギーは1%未満
と欧米に比較して全く活用されていません。また、遠方の発電所から家庭やビルに届
くまでの送電ロスや直流―交流の変換ロスが5%で、元のエネルギー36%しか使われ
ていません。
エネルギーを最終需要から見ると、電気で賄うにはもったいない暖房や温水など低
温熱の需要が、例えば家庭では3割以上を占めていまする。
従って、木質バイオマスが利用可能な地域に於いては、木質バイオマスにより低温
の熱需要に応える仕組みをつくることは、地域の資源利用とエネルギーの無駄を省く
という点から、非常に重要です。
【山梨県の森林資源の特徴と限界】
山梨県の森林率は 78%で全国5位ですが、森林面積は 27 位、森林蓄積は 30 位、
丸太生産量は 40 位、そして丸太消費量は全国 44 位と、県土が小さいために、必ずし
も林業が盛んな地域ではありません。
林業・林産業の盛んな地域では、製材工場の大型化、木材のカスケード利用など効
率的な木質バイオマス利用に向けての各種取り組みが実施されています。
電力会社は RPS 法に対応するため、石炭・木質バイオマス混燃焼に取り組むなど、
大型施設でのバイオマス燃料利用が進みつつあります。
しかし、木材の需要・供給がともに小規模である本県では、大型の製材工場などの
立地は現実的ではありませんし、また発電所への木質バイオマス供給量に難がありま
す。現在「再生可能エネルギー買取制度」が検討されていますが、山梨は既存発電所
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から遠く、輸送費の点からペイすることも難しいと思われます。
【地産地費型のバイオマス利用】
山梨県には、チップ生産者が複数あり、隣県のパルプ工場にチップを供給していま
す。例えば、下水汚泥焼却の助燃剤、ジュース工場のボイラー燃料などの県内の熱需
要に向け、チップ・ペレットの供給拡大していくことが木質バイオマス利用の効果的
な推進策と思われます。
また、本県は富士北麓、八ヶ岳南麓地域など、熱需要の多い高原地域を抱えており、
石油やガスから木質バイオマスへの利用転換を図ることによって林業やバイオマス
関連産業の育成も期待できます。
家庭のエネルギー需要は、産業用や事業用に比べて小さいため、量的な効果は小さ
いと思いますが、木質バイオマス利用は市民や小規模事業者が当事者として関与でき
る分野であるため、社会の意識変化を促す点で、大きな意味があります。家庭につい
ては、意識の高い層をターゲットに薪ストーブ、ペレットストーブ、バイオマスボイ
ラーの普及を進め、市民へのバイオマス利用の浸透を図ることも重要です。
【木質バイオマス利用の推進シナリオ】
木質バイオマス利用を進める上で重要なことは、地域の現状把握ときちんとした需
要と供給のシナリオの想定です。薪やペレットのストーブを普及させることは、市民
レベルでの意識啓発としては効果的ですが、通年を通して一定の規模の木質バイオマ
スの需要を確保するためには、木質バイオマスボイラーの導入が必要です。
当面の具体的な目標としては、今後 3~5 年を目処に既存の熱需用者にバイオマス
ボイラーの導入を促し、林業・林産事業者とエネルギー関係事業者が連係し年間1万
トン程度の木質チップ燃料の供給を行う、またはボイラー設備の維持まで含めた熱供
給を行う“エスコ事業者”を育成する、といったことではないかと思います。
山梨木質バイオマス研究会では、山梨県内での木質バイオマス利用の取り組みを地
域の将来に繋げていくために、地域関係者が情報共有をする場としての活動を行って
いく予定です。今後とも、皆様のご指導を頂けますようお願い申し上げます。
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『イタリア(とドイツ)におけるバイオマスボイラー等の利用状況、
製品紹介・国内での導入例』
発表者:石川
一
株式会社 ECO テック
【はじめに】
日本では 1970 年代に起きたオイルショックで、石油に代わるエネルギー源として
木質バイオマスを燃料とした熱源機器の開発が進められました。
しかし、原油価格が落ち着くとその後 30 年以上に渡りバイオマス燃焼機器の開発
に手が付けられず、そのままの状態が続きました。
ヨーロッパでは当初から環境意識も高く、オイルショック以降も長年にわたり開発
が続けられ、多くのストーブメーカーが創業し現在では性能・デザイン・コストとも
に高いレベルの製品が製造販売されています。
私は有限会社 丸三タクシーの経営者ですが、20 年ほど前、長野県北佐久郡立科町
でホテル経営をいたしておりました。標高 1600mの高原での営業は年間を通して暖
房器具の必要性があり、暖房等エネルギー効率の経費がホテル経営を行ううえで大き
な支出となることを知りました。
このような経験から欧米製、特にイタリア製のストーブなどに興味を持ち、ドイツ
やイタリア各地の公共施設や製造会社を見学して、様々な製品を目にすることとなり
ました。
日本製品と比較してデザインや熱効率の性能も高く、環境に配慮した再生可能資源
を安全に安心して使える良品を輸入販売する会社を平成 20 年に設立しました。
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現在、ペレットストーブ、ペレットボイラ、ペレタイザー、ペレット燃焼製造機、
太陽熱温水器などを取り扱っていますが、今後、LED 照明器具、太陽光発電装置な
どの販売なども行う予定です。
これに伴い燃焼テストや作動検証、取扱い操作書の翻訳などを行い機器の紹介と、
日本の家庭や事業所などへの適用について今後報告を行う予定です。
■ 取扱機器
ペレットストーブ、ペレットボイラ、ペレット販売、ペレタイザー(ペレット燃料製造機)、
太陽熱温⽔器、
◆ 取扱メーカー
ストーブ
CADEL 社(イタリア)、RED 社(イタリア)、 ピアツェッタ社(イタリア)、
パラツェッティ社(イタリア)
ボイラ
ダレスサンドロ社(イタリア)、コズルサン社(チェコ)
■ 暖房器具部品
CORDIVARI 社(イタリア)、ALA 社(イタリア)
◆ 今後取扱う商品
LED 照明器具、アモルファス太陽光発電装置
【なぜ、イタリア製なのか】
イタリアのペレットストーブメーカーは北イタリアに集中しており、50 社程度あ
るといわれています(大中小企業総数では 80 社あるとも言われています)。
イタリア製ペレットストーブを選ぶ理由は、日本の同等品と比較して品質や性能、
デザインに優れ価格が安いことが挙げられます。では、なぜ日本製品より低価格な製
品を作れるのか?部品パーツを多くのメーカーが共通部品として使っております。例
えば、特定企業で製造される操作基盤、制御回路を多くのストーブメーカーが利用し
ています。燃焼系統やセンサーなどに関する同じ技術を共有することによって、開発
コストが安価になっていますし、一定の規格、性能、品質は確保されています。
特に注目されるのは、煙突、貯湯タンク、熱交換器などの鋼材製品で、大きさと長
さにより分かりやすい価格設定がされ、なかには日本の同等品の 10 分の 1 程度の価
格までコストダウンを可能にしています。
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イタリア製ストーブ、ボイラは、EU 各国からも部品を調達しているため、イタリ
ア製品としてとらえるよりも EU 製品と考えることが出来るでしょう。
ドイツのペレットボイラメーカーでは低価格化を進めるためにトルコなどで部品
等の組立も行っています。現在、ユーロ安もあって、低価格で高品質な製品の量産に
より、日本の消費者が購入しやすくなっています。木質バイオマス燃料利用を普及す
る、けん引役になるのではないでしょうか
■ ペレットストーブ製造ライン
■ 製品ストックヤード
■ ペレットストーブ燃焼実験室
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なぜ、イタリア製なのか・・・
◇ イタリア製ペレットストーブなのか?選ぶ理由
■ 品質や性能そしてデザインが良く価格が安い
■ 暖房器具として完成度が高かい
■ 部品やパーツ類は多くのメーカーで共通部品が使われている
■ 操作基盤及び制御回路は共通部品が多い(特定1社の基盤が大半を占めている)
■ 鉄鋼材加工技術は現在においても世界でトップレベルにある
■ 材料である鉄鋼材の価格が日本の約10分の1である
■ 価格設定も面積当たりと明確
■ イタリア製と言われていますが、使われている部品はドイツ、オーストリア等、EU圏内にある
製造会社各社が製造コストおさえ部品を上手に調達して低価格な量産を可能にしている。
■ ペレットストーブを生産する会社は北イタリアに集中しており、大小合わせると50社近くある
◇ 日本製のペレットストーブが普及しなかった理由
■ 1990年代に作られたペレットストーブは北米タイプのものをお手本にしていたが、2001年代からは
新潟、福島、長野、岐阜、山形などの中小企業がヨーロッパのペレットストーブを参考に制作をはじめた。
■ しかし着火不良、連続安定燃焼、火力調整、安全性等が暖房器具として満足のできる ペレットストーブ
が市場に普及しなかった。
■ 不完全なものが多く2~3年後に修理が必要となり
デザイン、性能面でヨーロッパ製のものに数年は遅れているようだった。
■ ヨーロッパの再生可能エネルギーを利用した住宅
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【ペレットストーブ等の普及】
平成 20 年、山梨交通(株)が運営する中央自動車道双葉 SA にイタリア製ペレッ
トストーブを納入しましたところ、好評を得て、長野自動車道・梓川 SA 上下線・諏
訪 SA 上下線など各所の SA などに普及してきました。また、近年では、ペレットボ
イラの引き合いが東京の病院などから来ています。
県内では小規模ビニールハウスにボイラではなく、全自動タイマー付ペレットスト
ーブを導入したケースも出てきました。
灯油の代わりに比較的低予算で木質ペレットを利用できます。
■ 南アルプス市内の農場で導入しました。
(12KW
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5 基)
■ 滋賀県 農業加温用ボイラ
■ 京都市 コンパクトペレットボイラ(一般家庭用)
再生可能エネルギーの利用として、面白いシステムはバイオマスと太陽熱を利用し
た熱利用システムで、イタリアのコルディバリ社から出されています。また、木質ペ
レットを燃料としたコジェネシステム発電などの開発も EU 圏内で、国境を越えて研
究開発がなされています。
※ 写真のシステムはカナダで開発中のものです。
これら熱利用システムが日本の家庭でどのように利用可能かどうか?また、欧州で
は公共プールの加温用ボイラなどもありますが、日本の温泉施設などで利用可能かど
うか?これらの機器についても十分に研究検証を行い、普及させていきたいと思いま
す。
再生可能エネルギーの選択肢は多様にあり、気候風土に適した地域エネルギーであ
ればエネルギー効率的であり、コスト的にも有利ですし、災害時における対応も柔軟
に行えると思います。また、地産地消が可能な地域エネルギー資源を利用することで、
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地域経済に貢献できます。
私が山梨で創業したのも、山梨の自然資源の活用を進め、雇用を生み出すことが目
的でした。地域で生産できるものは活用し、良い製品であれば世界と連携する、その
ような方法で再生可能エネルギー産業の一端を担えたらと考えています。
■ ボイラ製造工場
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■ 公共施設や大規模集合住宅用メガ・ボイラ
■ 再生可能エネルギーの利用図
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