March 2009 - フラストレーションが創る新しい物性

NEWS LETTER
科学研究費補助金 特定領域研究
フラストレーションが創る新しい物性
Vol.5
Vol.5 March 2009
目 次
¾
巻頭言
• 川村 光(大阪大学大学院理学研究科)
¾
·································································· 3
研究紹介
• 磁性強誘電体 TbMnO3 における強誘電性とフォノン ············································ 4
梶本 亮一(日本原子力研究開発機構・J-PARCセンター)
• フラストレート系でのベリー位相と分数化 ····························································· 6
初貝 安弘(筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学系)
¾
第 3 回トピカルミーティング
• 会議報告
• プログラム
¾
····················································································································· 8
松平 和之(九州工業大学工学部)、求 幸年(東京大学大学院工学研究科)
····················································································································· 10
トピックス
• S=1/2 擬カゴメ格子磁性体 volborthite の磁気相図とスピンダイナミクス ········ 12
吉田 誠(東京大学物性研究所)
• 三角格子上の古典イジングモデルにおける温故知新 ···································· 14
堀田 知佐(京都産業大学理学部)
• 幾何学的フラストレート系の磁気秩序相におけるスピン分子励起 ·················· 16
富安 啓輔(東北大学大学院理学研究科)
¾
平成 20 年度領域成果報告会
• 会議報告
························································································ 18
廣田 和馬(大阪大学大学院理学研究科)
• プログラム ························································································ 20
¾
物性科学領域横断研究会および凝縮系科学賞
• 会議報告
························································································ 26
有馬 孝尚(東北大学多元物質科学研究所)
• プログラム ························································································ 28
¾
成果論文リスト ················································································································ 35
¾
お知らせ ····························································································································· 41
¾
編集後記 ····························································································································· 42
巻頭言
巻頭言
領域代表
川村光
科学の研究には分野の消長が付きものです。幸いフラストレーション研究は、今まさに興隆
期を迎えていますが、1990年台から2000年台初頭までの一時期、ほとんど省みられない
時代もありました。今回はその辺りの変遷に関して、ごく個人的な観点から書かせていただきた
いと思います。
1970年頃から1980年代の半ばは、フラストレート磁性研究の第1の隆盛期でした。
当時の主たるターゲットは3角格子系で、研究の中心は明らかに我が国にありました(というよ
り欧州や米国では、フラストレーション研究自体がほとんど行われていませんでした)。この時
期の終わり頃自らの研究活動をスタートできたのは、小生の研究者人生にとって大いなる幸運と
するところです。当時、自分でも3角格子でちょっとした仕事が出来たような気になった頃、2
年ほど渡米する機会を得ました。コーネル大学の M.E. Fisher という、臨界現象の権威の先生の
ところです。今だから白状しますが、実は「一丁、アメリカの研究者にもフラストレーションの
面白さを教えてやるか」とばかり、結構意気込んで出掛けたわけです。結果的には、小生の若気
の至りのこの意気込みには、少々ホロ苦い2年間になりました。アメリカは、サバイバルを賭け
た激烈な情報戦・宣伝戦が支配するところで、日本からのポッと出の若造の意気込みが簡単に通
用するようなところではないことが基本ですが、ちょうどその頃高温超伝導体が発見され、もう
何もかも飲み尽くす勢いで物性物理を席巻していった、という事情もあったと思います。それで
も、個人的に知り合った一握りの研究者はフラストレーションに対し偽りの無い興味を示してく
れ、それは小生にとっても大きな財産となりました。しかし何にも増して、アメリカでの生活自
体が、得難い貴重な経験でした。
アメリカは、とにかく広い。独り愛車の中古の
カローラを駆って一日中走っても、周囲の眺めはあ
まり変わらないのです。ふと気がつくと、自分の前
にも後にも、地平線の果てまで一台の車も見えない。
「フラストレーション」も、
「日本発の物理」も、い
や物理学自体も何もかもが、遥かな地平線の果てに
吸い込まれて消えていくようでした。寂莫たる思い
とともに、不思議な開放感がありました。
帰国してみると、我が国でも高温超伝導に端を発した強相関系の研究が一世を風靡しており、
フラストレーションは急速に忘却のかなたへと沈んでいくようでした。小生自身も、何時の日か
のフラストレーションの復活を信じつつも、そんな日が本当に再び来るかどうか、実のところ半
信半疑でした。しかし、皆さんご存知の通り、2000年代の半ば頃からフラストレーションは
力強く甦ってきました。理由はいくつかあると思いますが、1つには強相関分野からの刺激、シ
ナジー効果が大きいと思います。「滅するものは、また生むものでもある」という訳で、学問の
発展というのも、なかなかに奥深いものです。しかも、今我々の眼前に広がっている風景は、確
かに20年前の風景とは全く一変している。豊かな収穫の予感を胸に秘めつつ、豊穣の谷へとゆ
っくりと下りて行きましょう。
研究紹介
磁性強誘電体 TbMnO3 における強誘電性とフォノン
計画研究「スピンフラストレーションと磁気強誘電性」
日本原子力研究開発機構・J-PARC センター
梶本亮一
TbMnO3 はらせん磁気秩序に伴い強誘電性を示し、近年注目されているマルチフ
ェロイック物質の代表例である。本稿では磁性と格子が結合した本系において強
誘電転移に付随した特異なフォノン異常の有無を調べるべく行った、X 線非弾性
散乱による研究の結果について紹介する。
ペロブスカイト型 Mn 酸化物 RMnO3 は R の
スピン秩序が Dzyaloshinskii-Moriya 相互作用
イオン半径が小さいとき(R = Gd、 Tb、 Dy
の逆過程を通じて原子変位(おそらく酸素イ
など)サイン波秩序やらせん秩序の長周期磁
オンの c 軸方向の変位)を生じているという
気秩序を示すが、それは MnO6 八面体の強い
モデルが提唱されている(図 1)[4]。すると、
buckling によって ab 面内における第 2 近接
フォノンの異常が現れる可能性が高いモード
Mn サイト間の反強磁性相互作用が大きくな
は c 軸方向に分極したモード、特に Mn-O-Mn
り、第 1 近接 Mn サイト間の強磁性相互作用
結合の bending モードと予想される。
そこで、
との間にフラストレーションが生じるためと
磁気秩序の変調方向と同じ b*軸に伝搬し、c
考えられている[1]。近年、そのらせん秩序相
軸方向に分極したフォノンの分散関係を測定
において強誘電性及び大きな電気磁気効果が
した。30 meV 以下のエネルギー領域で強誘電
発見され、RMnO3 はいわゆるマルチフェロイ
転移温度 TC の上下の温度で測定した結果が
ック物質の一種として注目されている [2]。
図 2 である。音響モードと光学モードおよび
代表物質の一つである TbMnO3 の場合、TN =
両者の anti-crossing が明瞭に観測されている
42 K 以下でスピンが b 軸方向に向いた縦波の
が、2 つの温度の間にほとんど違いは見られ
サイン波的磁気秩序、TC = 28 K 以下で bc 面
ない。さらに TN の前後でも分散に大きな変化
内で b 軸方向に変調するらせん秩序が現れる
は見られないことも確認した。
[3]。強誘電転移は TC で生じ、c 軸方向に分極
そこで次に Mn-O-Mn 結合の bending モード
した自発電気分極 P が生じる [2]。一般に強
を見つけるためにさらに高いエネルギー領域
誘電転移はΓ点におけるソフト化等のフォノ
まで測定を行った。その結果が図 3 である。
ンの異常を伴うことが多く、特にマルチフェ
ここで 43 meV 付近に見られるピークがその
ロイック物質では磁性と格子が結合した新た
bending モードと考えているが、このピークを
なフォノン異常が期待される。そこで我々は
(a)
TbMnO3 における強誘電転移に伴うフォノン
Mn
異常、特にソフトモードの有無を調べるため
に、フォノンの分散関係の直接観測が可能な
P
O
(b)
X 線非弾性散乱実験を行った。
実験は SPring-8
の BL35XU で行った。
自発電気分極の起源として、キャントした
図 1. TbMnO3 における磁気秩序(黒矢印)、原子位置
(Mn、O)、電気分極(青矢印)のモデル。酸素イオ
ンについては、白丸が変位前、赤丸が変位後の位置を
表す。
研究紹介
体と異なる結果は、TbMnO3 における強誘電
転移の特異性の証左であると考えている。実
際、近年遠赤外分光によって a 軸に分極した
フォノンに磁気秩序に伴う変化が生じること
が報告されており [5]、今後は本研究と同様
の散乱実験によるその詳細な研究が待たれる。
本研究は、佐賀山基(東北大多元研)、佐々
井健蔵(大阪大)、福田竜生(原子力機構)、
筒井智嗣(JASRI)、有馬孝尚(東北大多元研・
理研)、廣田和馬(大阪大)、三井由佳利(東
大物性研)、吉澤英樹(東大物性研)、A.Q.R.
Baron(理研・JASRI)、山崎裕一(東大)、十
図 2. (a),(b) 運動量-エネルギー空間における散乱強度
分布。Bragg 点(0,−2,7)を基準に b*方向に測定した。(a)
は TC より高い温度(35K)、(b)は TC より低い温度(11K)
での結果。
含めてどのスペクトルも顕著な温度変化を示
さなかった。
ォノンの異常が現れやすいと思われる c 軸方
向に分極するフォノンには強誘電転移(およ
び磁気秩序)に伴う変化はほとんど見られな
いことが分かった。こうした一般的な強誘電
Q=(0,0+q,6)
0.40
0.25
(d) q=0.06
0.20
0.30
0.15
0.25
0.10
T=11K
T=35K
[2] T. Kimura et al., Nature (London) 426, 55
(2003).
[3] M. Kenzelmann et al., Phys. Rev. Lett. 95,
087206 (2005).
[4] H. Katsura et al., Phys. Rev. Lett. 95, 057205
Rev. B 73, 094434 (2006).
[5] Y. Takahashi et al., Phys. Rev. Lett. 101,
187201 (2008).
0.05
0.15
(b) q=0.31
0
(e) q=0.19
0.20
0.20
0.15
0.15
0.10
0.10
0.05
0.05
0
(c) q=0.44
0
(f) q=0.31
0.20
0.20
0.15
0.15
0.10
0.10
0.05
0.05
40
45
50 30
35
Energy Transfer (meV)
40
45
Intensity (arb. units)
Intensity (arb. units)
(a) q=0.19
35
[1] T. Kimura et al., Phys. Rev. B 68, 060403(R)
(2005); I. A. Sergienko and E. Dagotto, Phys.
Q=(0,0+q,7)
0.35
0
30
参考文献:
(2003)
以上の結果から、TbMnO3 においては最もフ
0.20
倉好紀(東大)各氏との共同研究です。
0
50
図 3. (0,0,6)および(0,0,7)を基準に b*方向に測定したフ
ォノンのエネルギースペクトル。白丸は TC より高い
温度(35K)、赤丸は TC より低い温度(11K)での結
果。
梶本 亮一
日本原子力研究開発機構
J-PARC センター
研究紹介
フラストレート系でのベリー位相と分数化
筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学系
初貝 安弘
量子的なフラストレート系ではスピンシングレットが重要な構成要素となります。し
かしシングレット対はスピンゼロ、つまりスピンをもたないので磁気的な実験では直接
には決して観測できません。しかし量子化した Z2 ベリー位相をある種の「電荷」として
運びますので、これを「みる」ことで「ないものを直接見る」ことができます。
フラストレーションと量子効果
そこで秩序を持たない量子状態を量子液体
と呼べば、ギャップのある系は典型的かつ自
フラストレーションとはエネルギー的に安
然な量子液体のクラスをつくることになりま
定なスピン構造を矢印のパターンとして描け
す。勿論ギャップレスの量子液体も原理的に
ないこと、つまり局所安定構造が一つにきま
は可能ですが、ギャップレスの励起もしくは
らないことですので、極限的に強くフラスト
系の生のパラメタ-からみて極めて低エネル
レートした系では矢印のパターンで表現でき
ギーの励起の存在を保証する物理的機構が必
るような古典的な秩序は存在しません。
要なはずです。
(スピノン等の実効的フェルミ
ところが量子系ではスピンは矢印としては
粒子のフェルミ面とか・・・難しい!)
表現できませんからフラストレーションと両
少々短絡的であることを認め、なお誤解を
立するエネルギー的に安定な状態も原理的に
恐れずにあえて述べれば、量子効果がフラス
は存在可能となります。つまり量子効果は強
トレーションを解消するとき、励起にギャッ
いフラストレーションでさえ完全に解消する
プをもつスピン液体相が量子液体相として実
可能性を持ちます。量子スピン間のシングレ
現することは一つの自然なシナリオです。
ット形成には「フラストレーションは必ずし
も破壊的に働かないこと」がその典型例です。
フラストレーションと量子液体
スピン液体と量子もつれ
このスピン液体の典型例が VBS (Valence
Bond Solid)状態です。”Solid”ですが古典的な
120 度構造、反強磁性、スパイラル構造な
秩序を持たないので液体と表現します。この
ど何らかの局所的な磁気パターン(秩序)形
状態は局所的なシングレット対から構成され
成が物理系に固有の連続対称性(ハミルトニ
ますが、スピンはゼロですので外部磁場には
アンの連続対称性)の自発的破れとして実現
応答しません。シングレット対は簡単な状態
するとき、その秩序パターンを空間的に無限
ではありますが、極めて量子力学的な状態で
にゆっくりと変化させることに伴うゆがみは
す。一方で近年よく話題になる量子情報物理
無限小の励起に対応し、ギャップレスの励起
での「量子もつれ」とはシングレット対がそ
をもたらします。逆にフラストレート極限の
の典型例であることは磁性を専門とする方に
ような局所秩序の非存在は励起にエネルギー
は自明なことと思います。この量子もつれと
ギャップがあることを示唆します。
(あくまで
は「局所的な演算子を対角化する基底
逆で、対偶ではありません。)
↑↓>や|↓↑>のような古典状態)単体では状
((|
研究紹介
態が表現できないこと)を意味します。この
に変化させることに伴う量子干渉効果である
ように考えれば、
「量子もつれを持つ局所量子
ベリー位相を観測量とします。このベリー位
状態から構成された多粒子状態」が一般の量
相は系が時間反転( Si → −Si )に対して不変
子液体、スピン液体の定義であり、量子もつ
であれば、0 かπの 2 通りの値に必ず量子化
れで特徴づけられる局所的な量子状態こそが
。この Z2 ベリー位相
します(Z2 ベリー位相)
その基本構成要素(ある種の基本粒子)であ
をもってフラストレート磁性体の量子的な局
ることとなります。
所秩序変数とするのです[1]。
量子もつれとベリー位相、分数化 1,2
この量子もつれはトポロジカル秩序相、量
子秩序相におけるエッジ状態、分数化
前節までの議論から量子液体の理解のため
(fractionalization)とも直接関係します。局所的
には絵に描けるような古典的描像を捨て局所
な量子もつれにより特徴づけられるバルクの
的な量子状態を秩序変数のかわりに使えばよ
量子液体状態は Z2 ベリー位相により特徴づ
いことになります。この局所的な量子状態を
けられますが、断熱過程を用いて Z2 ベリー位
特徴づけるには上述の量子もつれを用います。
相を直接実験的に観測することは容易ではな
量子もつれは古典的状態の重ね合わせにより
いと思われます。しかし系に不純物もしくは
構成されますのでその相対位相を変化させる
境界等が存在しトポロジカルな摂動が加わる
ことを考え、それに対する系の応答から量子
と特徴的な局在スピン等のエッジ状態とよば
もつれの様子を捉えることとします。具体的
れる局在状態が生成します。これらは容易に
なハイゼンベルグ磁性体の場合にはある場所
観測可能と思われます。これはスピンゼロの
の交換相互作用のみを局所的に次のように変
シングレット対の片割れがスピン 1/2 の実効
更します。
(スピンフリップに位相をつけます)
的局在量子状態として現れることであり分数
S1 ⋅ S2 → (e iθ S1+ ⋅ S2− + e−iθ S1− ⋅ S2+ ) /2 + S1z ⋅ S2z
化と称されることもあります。トポロジカル
この項は次のような Dzyaloshinskii-守谷相互作
な摂動が存在するとバルクには特徴のない量
用を含む次の形にも表せます。
子液体状態が一転して特徴的で固有のエッジ
r
S S + (S S + S S )cos θ + (S1 × S2 ) ⋅ z sin θ
z
1
z
2
x
1
x
2
y
1
y
2
状態を持つのです。これは「バルク-エッジ対
特定の相互作用(リンク)にのみプローブ
応」とよぶ量子液体相の特徴的性質で、逆に
としての摂動をかけてその応答を見ようとい
この「バルク-エッジ対応」に従う量子液体相
うわけです。ただ相手が量子状態そのもので
を「トポロジカル絶縁体」とよぶこともあり
すので観測量としては量子力学の講義で教え
ます。つまり局所的なシングレット対からな
るような「エルミート演算子の期待値」では
るフラストレートした量子磁性体は「トポロ
なく、ある種の局所的なひねり角 θ を断熱的
ジカル絶縁体」と考えられるわけです。
参考文献
[1] Y. Hatsugai, JPSJ 75 123601 (2006)
[2]T. Hirano, H. Katsura, and Y. Hatsugai, Phys.
Rev. B 77, 094431 (2008),I. Maruyama, T. Hirano,
Y. Hatsugai, arXiv:0806.4416, to appear in Phys.
Rev.B, arXiv:0807.2896, M. Arikawa, S. Tanaya, I.
Maruyama and Y. Hatsugai, arXiv:0812.3445
初貝
安弘
筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学系
会議報告
第3回トピカルミーティング
「フラストレーションとスピン液体」報告
第3回トピカルミーティング「フラストレーションとスピン液体」が 2008 年 12 月 22,23 日
に神戸大学百年記念館六甲ホールにて行われた.本特定領域研究の目玉企画であるトピカルミ
ーティングも3回目を迎え、今回のテーマは“スピン液体”である.今回は初めての企画とし
て、特定領域研究「スーパークリーン物質で実現する新しい量子相の物理」との合同セッショ
ンが1日目に設けられ、両特定領域研究における中心的課題のひとつである“スピン液体”の
普遍的性質の解明を目指して、特定領域研究の枠組みを超えた活発な意見交換が行われた.
(前
日まで「スーパークリーン」特定領域の平成 20 年度成果報告会が奈良にて行われていたため、
合同セッションの講演者を含め多数の方々が続
けての参加となった.
)またこれも初めての企画
として、2日目には植村氏(コロンビア大)に
よる特別講演が行われた.2日間ともに午前・
午後のスケジュールにて、口頭発表が 26 件(理
論 10 件、実験 16 件)とポスター発表が 35 件(理
論 18 件、実験 17 件)と理論実験ともにバラン
スの取れたプログラムであり、参加者は一般・
当日参加を含め 96 名と大変盛況であった.
会場となった百年記念館六甲ホールは、音響
効果を含めて設備が大変素晴らしく、また建物
は海を望む六甲の山裾に位置しているため、セ
ッションや議論の合間に神戸港や遠く大阪湾の
対岸などを眺めてリフレッシュすることができ
た.また、最寄り駅から会場までの坂道は、運
動不足になりがちな出張中の身には多少こたえ
たが、セッション前の良い準備運動となった.
さて会議の内容であるが、
“スピン液体”は本
特定領域のメンバーを含む日本の研究者が世界
をリードしているトピックであり、まさに研究
の最先端を知る良い機会となった.まず、今回
初めての試みとして行われた合同セッションで
は、1日目の午前から夕方にわたり各講演時間
が 30 分と十分に割り当てられたこともあって、
各講演者の問題意識が深いレベルで語られ、活
発な議論が展開された.2次元 He、分子性導体、
遷移金属酸化物などの異なる研究対象を通じて
会議報告
スピン液体の本質に迫ろうとする内容は、量・質ともに物理学会のシンポジウムと比肩するも
のが感じられた.今後もこうした企画が重ねられていくことにより、特定領域研究の枠にとら
われない多面的かつ重層的な問題追求がなされていくように思われる.その息吹として、今回
のトピカルミーティングはとても意義深いものであった.
その他のセッションを含めて全体を通してみると、実験研究においては、三角格子、カゴメ
格子、パイロクロア格子を持つ磁性体に関する発表が多く見られた.また、新物質探索も進展
しており、新カゴメ格子磁性体、ハニカム格子(六角格子)磁性体等が報告され今後の展開が
期待される.研究動向としては、ドイツ Brunschweig にて昨年9月に開催された HFM2008 でも
注目を集めていた S=1/2 のカゴメ物質の研究報告が多くなされた.S=1/2 のカゴメ格子系は理
論的にもその基底状態が未だ良く判っていない状況にあるが、印象としては現状のカゴメ物質
はいずれも長所と短所があるようで、結論に至るにはもう少し時間(理想的なモデル物質?良
質な試料?)が必要と思われる.今後も注目のトピックであることは間違いないだろう.また、
植村氏による特別講演では、多岐にわたるフラストレート物質がμSR というプローブから概観
され、スピンゆらぎが幅広く分布するという共通した特徴の重要性が論じられた.理論研究に
おいては、局在スピンモデルに基づいた研究と電子の遍歴性を考慮した研究、現実の物質に即
した研究とモデルの普遍性にフォーカスした研究などがバランス良く配され、
“スピン液体”と
はそもそも何なのか?理論的に、あるいは現実の系としてどこに存在するのか?存在するとし
てその性質はどのようなものなのか?といった根本的な問題に対する議論が有機的に絡み合う
格好の機会となった.問題の難しさを反映してか、休憩時間を使い尽くすほどの活発な議論が
行われるなどして大変な盛り上がりを見せていた.全体を通じて、本特定領域研究の特色であ
る実験家と理論家の高度な連携が随所に見られ、実験・理論両面における現状の確認と問題意
識の整理がなされ、各参加者のモチベーションの高揚につながったように感じられた.
会議運営は神戸大の太田グループらによってパーフェクトになされた.懇親会では 120 分食
べ飲み放題コースのように振舞われ、セッションの熱気をそのままに各所で歓談が続いた.懇
親会の開会挨拶にて福山氏(東大院理、「スーパークリーン」特定領域代表)が、「特定領域研
究は日本独自のシステムであり、
欧州ではこれを見習い導入する
動きがある.特定領域研究のス
タイルが優れた研究成果を生ん
でいる事が評価されていること
の証である.
」とおっしゃってい
た.本特定領域にて素晴らしい
機会を与えられていることを改
めて実感した.
年の暮れも差し迫った2日間という短いスケジュールであったが、内容は凝縮されていて、
より長期間の会議のようにも感じられ、大変有意義な会議であった.
(松平和之、求幸年)
プログラム
12 月 22 日(月)
10:00
開会挨拶
10:10-11:40 座長
10:10
合同 1
太田,川村
網 代 芳 民(京 都 大 学)
福山 寛
東大院理
2 次元ヘリウム3のスピン液体相とフラストレート磁性
10:40
合同 2
常次宏一
東大物性研
スピネル化合物 LiV2O4 におけるスピン・軌道揺らぎの競合
11:10
合同 3
川上則雄
京大院理
2 次元フラストレートハバード模型の量子相転移とスピン
液体相
11:40-13:00
昼食
13:00-14:30 座長
13:00
合同 4
福 山 寛(東 京 大 学)
川村 光
阪大理
13:30
合同 5
中辻
14:00
合同 6
鹿野田一司
14:30-14:50
知
東大物性研
東大院工
休憩
14:50-16:20 座長
14:50
合同 7
松 浦 基 浩(福 井 工 業 大 学)
求 幸年
東大院工
15:20
合同 8
菊池彦光
福井大工
15:50
合同 9
岡本佳比古
東大物性研
16:20-17:50
18:00-20:00
3角格子反強磁性体の新奇ボルテックス秩序 ̶
スピン
ジェル
幾何学的フラストレーションによる非自明な相転移と輸送
現象
ドープされた三角格子モット絶縁体
フラストレート遍歴電子系における相競合と新奇な伝導現象
か ご め 格 子 磁 性 体 ZnxCu4-x(OH)6Cl2 の 磁 気 的 性 質 ;
ZnCu3(OH)6Cl2 の特異性
スピン 1/2 カゴメ銅鉱物のスピン液体状態における特異な
磁化ステップ
ポスター発表
懇親会 @瀧川学術交流会館 1 階 (六甲ホールより徒歩2分)
⑯̶瀧川学術交流会館
⑱̶六甲ホール(現在地)
12 月 23 日(火)
9:00-10:30 座長
9:00
講演 1
9:30
講演 2
9:50
講演 3
10:10
講演 4
10:30-10:50
川 村 光(大 阪 大 学)
植村泰朋
Columbia
University
太田 仁
神戸大分子
フォトセ
吉田 誠
東大物性研
東
正樹
前 川 覚( 京 都 大 学 )
引原俊哉
北大理
11:10
講演 6
真中浩貴
11:30
講演 7
戸塚圭介
鹿児島大理
工
京大基研
最近接・次近接相互作用をもつジグザグ梯子量子スピン鎖の
磁気相図
ランダムネスを伴ったスピン液体・ 固体系 IPA-Cu(ClxBr1-x)3
Possible featureless spin liquid states in high magnetic field
-Magnetization plateaus with fractionalized excitations-
昼食
13:00-14:40 座長
13:00
講演 8
瀧 川 仁(東 京 大 学)
中澤康浩
阪大理
13:20
講演 9
伊藤哲明
13:40
講演 10
萩原政幸
14:00
講演 11
小野田雅重
14:20
講演 12
渡辺真仁
14:40-15:00
フラストレートした S=3/2 ハニカム格子化合物 Bi3Mn4O12(NO3)
休憩
10:50-11:50 座長
10:50
講演 5
11:50-13:00
京大化研
Muon Spin Relaxation Studies of Frustrated Spin Systems:
J1-J2, Kagome, FeAs, and CuO systems
強磁場 ESR から見た S=1/2 カゴメ格子反強磁性体のスピン
ダイナミクス
擬カゴメ格子磁性体 Cu3V2O7(OH)2・2H2O(Volborthite)の NMR
有機系二次元三角格子の熱的性質
京大人間・環
境
阪大極限セ
三角格子有機モット絶縁体 EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2 における
スピン液体状態
二次元三角格子反強磁性体 KFe(MoO4)2 の新奇な磁気秩序
筑波大数理
物質科学
東大物工
三角格子系酸化物における軌道秩序的二重項状態
2 次元量子スピン液体の性質とその起源について
−電子系とヘリウム 3 の系の比較−
休憩
15:00-17:00 座長
15:00
講演 13
太 田 仁(神 戸 大 学)
堀田 知佐
京産大理
三角格子上の電荷のフラストレーション:誘電性と金属性
15:20
講演 14
河野昌仙
物材機構
15:40
講演 15
松平和之
九工大工
16:00
講演 16
小野田繁樹
理研
異方的三角格子反強磁性体における磁場中での粒子描像の
変化
金属絶縁体転移を示すパイロクロア型イリジウム酸化物の
磁性
Pr 系パイロクロア磁性体における量子スピンアイス
16:20
講演 17
冨田崇弘
東大物性研
重い電子系β-YbAlB4 における超伝導とスピン液体性?
16:40
終わりに
川村
トピックス
S=1/2 擬カゴメ格子磁性体 volborthite の
磁気相図とスピンダイナミクス
東大物性研
吉田誠
強い幾何学的フラストレーションを有する S=1/2 カゴメ格子の基底状態とはどの
ようなものか?本稿では J1,J22種類の交換相互作用を持つ S=1/2 擬カゴメ格子
磁性体 volborthite について NMR で見た磁気基底状態の性質を紹介する。
S=1/2 カゴメ格子の基底状態は長距離秩序
volborthite 純良粉末試料の比熱・磁化等の
を持たないと理論的に予想されており、スピ
測定では 60mK まで磁気秩序の兆候は見えて
ン液体のような基底状態の実現が期待され盛
おらず、その基底状態への興味が高まってい
んに物質開発が行われている。しかしながら、
る[2]。我々は volborthite の純良粉末試料を用
試料の質、面間の相互作用、理想的カゴメ格
い、40mK の極低温まで 51V-NMR 測定を行っ
子からの歪み等の理由により、未だ S=1/2 カ
た。低磁場(1~4テスラ)において 51V サイ
ゴメ格子の基底状態の性質は実験的に明らか
トの核磁気緩和率 1/T1 の温度変化を測定し
にされていない。本稿で紹介する volborthite
たところ、約1K において 1/T1 は鋭いピーク
(Cu3V2O7(OH)2・2H2O)は下図に示すように
を示し、より低温で
J1, J22種類の交換相互作用を有する歪んだカ
大きく広がった。このことは vorborthite が約
ゴメ格子を形成する物質である[1]。理想的カ
1K である種の反強磁性的状態に転移した
ゴメからのずれはあるものの、J1, J2 の大きさ
ことを示している。しかし、転移点温度以下
にそれほど違いは無いと考えられ、カゴメ格
での 1/T1 は下図に示すように温度の一次に
子特有のフラストレーション効果が期待でき
比例する。
51
V-NMR スペクトルは
る。また、最近、東大物性研・広井研究室の
通常、磁気秩序状態における核磁気緩和は
吉田紘行氏により純良粉末試料が作成され、
2マグノン過程による緩和が支配的と考えら
不純物効果に煩わされることなく極低温の磁
れ、三次元的なマグノン分散を考えると 1/T1
気的性質の研究が可能となっている[2]。
の温度変化は低温では T の3乗に比例するの
J2
J1
B = 1T
B = 2T
B = 4T
B = 4.5T
B = 5T
B = 6T
1/T2 ( B = 1 T)
-1
10000
100
~T
-1
~T
Cu1
Cu2
c 軸方向から見た volborthite の結晶構造。
V はカゴメ面の上下に位置する。
100000
1/T2 (s )
V
1/T1 (s )
1000
10
0.1
1
1.5
1000
10
T (K)
1/T1(*は 1/T2)の温度依存性。
トピックス
が一般的である。マグノンの分散が二次元的
は考えにくい。温度依存性も(1)では説明
である場合は 1/T1 は T に比例し、異常な状態
が難しい。
(2)に関しては、1/T1 は磁場に対
を考えなくても実験データをうまく説明でき
して垂直方向、1/T2 は平行方向の磁気ゆらぎ
るように思われる。ただ、実際の物質には磁
を見るが、最低温で 500 倍に達する定量的差
気異方性が必ず存在し、長距離秩序があれば
異を異方性に押し付けるのは困難である。よ
異方性ギャップを生じ、1/T1 は最低温ではベ
って、1/T2 の結果は低温相で遅いゆらぎが存
キから外れてギャップ的に減衰するはずであ
在することを示唆する結果と考えられる。
る。volborthite の 1/T1 は測定温度範囲内でギ
我々はまた、スペクトルの線幅が増大する
ャップの兆候は全く見えない。0.1K までギャ
温度から相転移温度を決定し、磁場依存性を
ップが見えないほど磁気異方性が小さいとい
見ることにより12テスラまでの磁場-温度
う可能性はあるが、最低温でも何か別のゆら
相図を決定した。4.5 テスラ以上では別の相に
ぎが残っていると考える方が現実的である。
転移する。この相では
51
V スペクトルの形状
最低温で何か大きなゆらぎが残っていると
も変わり、1/T1 も低磁場相とは違った振る舞
いうのは 1/T2 の測定結果からも示唆される。
いを示すので、磁気構造もスピンダイナミク
1/T2 の温度依存性を調べたところ、1K 以上で
スも異なる相である。
は定性的に 1/T1 と同じ温度依存性を示した。
NMR で見た volborthite の基底状態は自発的
ところが、1K 以下では 1/T2 の温度依存性は
局所磁化を持ったある種の反強磁性的な状態
1/T1 と大きく異なり、最低温でも非常に大き
である。しかし、スピンは大きなゆらぎを極
な値を残している。転移後 1/T1 と 1/T2 に大き
低温まで残しており、本当の意味で凍結して
な違いが生じる原因は主に3つ考えられる。
いるか(スピンの自己相関関数が時間無限大
(1)核同士のスピン-スピン緩和。(2)外
で有限値に残るか)はまだわからない。また、
部磁場方向に対する磁気ゆらぎの異方性。
NMR で見えているある種の秩序が長距離の
(3)核のラーマー周波数(~10 MHz)より
空間相関を持っているかどうかも今後調べる
も遅いゆらぎ。
(1)に関しては、スピンエコ
必要がある。
ー法のパルス条件を変えることにより判別が
以上の結果は東大物性研、瀧川仁、吉田紘
可能であり、その結果、
(1)が効いていると
行、岡本佳比古、広井善二各氏との共同研究
により得られたものである。
[1] Z. Hiroi et al,. J. Phys. Soc. Jpn. 70 (2001) 3377.
Magnetic field (T)
14
12
10
8
6
4
2
0
0.0
Intensity (arb. units)
16
Field
induced
(FI) phase
0.28 K 8.5 T
FI phase
[2]H. Yoshida et al., J. Phys. Soc. Jpn. to be published.
0.28 K 1.0 T
Order?
4.2 K 1.0 T Paramagnetic
-0.4 -0.2
0.0 0.2
Δ B (T)
0.4
Order?
Spin glass
0.5
Paramagnetic
1.0
1.5
2.0
2.5
Temperature (K)
磁場-温度相図。内挿図は各相のスペクトル。
内挿図のΔB はハイパーファインシフト。
氏名
所属
吉田誠
東大物性研
トピックス
三角格子上の古典イジングモデルにおける温故知新
京都産業大学理学部
堀田
知佐
最近、異方的三角格子上の古典イジング模型がもつディスオーダー状態の内に、あ
る種のノンローカルな「秩序」が実現することを見出した。スピンの強磁性ボンド
が空間全体に渡り、半ば規則的に熱で揺らぐ、そんな少々特殊な状態を紹介する。
三角格子上の古典イジングモデルは、1950
まず J’>J の場合の基底状態から出発する。縮
年代の古くから厳密解の存在が知られている
退する基底状態のどれをとっても必ず、縦方
[1]。所謂「幾何学的フラストレーション効果」
向(J’ボンド)に沿って上下スピンが交互に
によって秩序の競合が起こり、絶対零度まで
並んだ反強磁性秩序を形成している。一方、J
マクロにエントロピーが残留するディスオー
方向では反強磁性鎖の並び方は任意である。
ダー系の典型である。厳密解が存在するとい
この異方的なディスオーダー状態に強磁性の
うことは、マクロな物理量の振る舞いが一通
J’ボンドを導入して励起状態を作ることを考
りクリアになったということであり、そこに
える。系は異方的2次元なので三角形二つか
何ら残された仕事はないと考えるのがごく一
般的な常識である。しかし、我々は敢えてこ
の系に着目し、フラストレーション効果が何
か既存の枠組での理解を越えた不可思議な現
象を提示する可能性はないか探ってみた。
今回、三角格子の一方向に異方性のある相
互作用を考える。まず絶対零度では、図1の
三種類の基底状態が得られる。J’>J では縦方
向のみに秩序化したストライプ状態、J’=J で
は3副格子構造を基調にした状態、そして
J’<J ではネール秩序である。J’≧J であれば、
図1:異方的三角格子古典イジングモデルの基底状態。●は
上向きスピンの、それ以外は下向きスピンのサイトを表す。
系は絶対零度までセミマクロあるいはマクロ
な縮退を残すディスオーダー状態である。
通常、温度を上げると、系は自由エネルギ
ー F=E-TS を得するために、エントロピーが
高い、より対称性が高い、乱れた状態を好む
ようになる。つまり絶対零度でディスオーダ
ーであれば有限温度で何らかの秩序が出てく
るとは非常に考えにくい。ところが、最近、
我々はこの異方的三角格子上のディスオーダ
ーある有限温度相において、ある種の「秩序」
図2:
(左)菱形(plaquette)のエネルギーによる分類。(右)
を見出した。
基底状態(緑の菱形)に赤い菱形のみを導入した場合に現れ
るノンローカルな励起状態の一例。赤い菱形は隣接する鎖で
は必ず交互に現れる。
トピックス
らなる菱形を単位に考えよう。この菱形上の
が大きなエントロピーの由来である。赤菱形
スピン構造は図2のように全部で16種類あ
同士には 2 点相関がないため、この状態は従
るが、エネルギーによって3種類に分類され
来の見方では単なるディスオーダーである。
る。緑の菱形は基底状態を、赤と青の菱形は
しかし、系全体では赤菱形が緩やかに格子を
励起状態の一部を担う。強磁性ボンドを導入
組んでおり、一か所でもこの格子が乱れる(前
することは緑を赤(励起エネルギー=2(J’-J))
述のルールが破れる)とエネルギーが著しく
か青(=2(J’+J))に置き換えることである。もし
上がる。故にこの状態をノンローカルな「秩
エネルギーが低い励起状態だけ得たければ、
序」と捉えることができる。図3は系がどの
緑を赤だけに置き換えるべきだが、菱形は隣
程度「秩序化」しているか、つまり赤い菱形
り合う4つの菱形とボンドを共有しているた
がどの程度きっちり交互に並んでいるかを示
め、勝手な置き換えは許されない。紙と鉛筆
すパラメタの等高線図である。図中にあるよ
でいくつかの場合について調べてみると、緑
うに J’>J>J’/2 では kBT~J/2 において通常の
を赤だけで置き換えるためには「隣接する鎖
ディスオーダーへのクロスオーバが見られる
にある赤い菱形は、必ず交互になっていなく
(このとき、同時に青い菱形数が~0 から急
てはいけない」というルールが課せられるこ
激に増加する)
。厳密解で得られる比熱は、こ
とがわかってくる。図2にこの状態の一例を
のクロスオーバ温度において一見発散しそう
示した。このルールに従うと、全ての鎖は同
な緩やかな(連続的)極大を示す。これはつ
数の赤い菱形を含む筈である。エントロピー
まり相転移を起こしたいが起こせない、フラ
を転送行列法で計算すると、基底状態~ O(L)
ストレーション由来の現象ともいえよう。興
より大きく、
J’=J での3副格子系の状態~O(N)
味深いことに、J’=J において支配的な3副格
より小さい。つまり、この状態は比較的エン
子ディスオーダー状態や J’<J におけるネール
トロピーが大きく、比較的励起エネルギー(∝
状態もこのノンローカルな「秩序」の一種(赤
(J’-J))が低い。赤い菱形の相対位置が交互で
菱形数~N/3, N の場合)として記述できる。
あれば距離や位置についての制約はないこと
この問題は、従来の統計力学の考え方の網
目をかいくぐった何かを示唆しているとも期
待されるし、また上下スピンを電子の有無に
なぞらえた場合、特殊な誘電性が実現する可
能性を示唆したものとも捉えられる。こうし
た様々な観点から現在も研究を遂行中である。
本研究は青山学院大学の清田哲広氏と古川
信夫教授との共同研究である[2]。
[1]
Wannier, Phys. Rev. 79
(1950) 357;
R. M. F. Houtappel, Physica
図3:異方的三角格子古典イジングモデルの有限温度に
16(1950) 425.
おける「非局所秩序」パラメタの等高線図(古典モンテ
[2] C. Hotta, T. Kiyota,
カルロ計算より)。値が1のとき図2(左)にある状態が
N.Furukawa, in preparation.
完全に実現される。図の下の模式図は J=J’, J‘<J にお
ける状態で、各々、赤い菱形数が N/3,N 個の場合がこれ
らに相当する(N=Nx Ny は格子点数)。
Chisa HOTTA @ Kyoto Sangyo University
トピックス
幾何学的フラストレート系の磁気秩序相におけるスピン分子励起
東北大学大学院理学研究科
富安 啓輔
スピネル物質の中性子非弾性散乱を行い、磁気秩序相のスピン励起状態に著しい幾何
学的フラストレーション効果(スピン分子)が残ることを発見しました。あるエネル
ギーコストを支払うと、フラストレーションは磁気秩序相でも回復するのです。この
スピン分子励起の起源はまだ不明ですが、励起エネルギーが離散的である、分子間相
関は分子内相関と比べて無視できる、そして一物質内に複数モード存在するという特
徴を持っています。今後、様々な物質の磁気秩序相の励起状態を精査することにより、
スピン分子の機構解明やより興味深い現象の発見につながると期待しています。
従来、幾何学的フラストレーションの面白さ
ることにしました。
はスピン系を秩序化させないことにありまし
図は、ZnCr2O4 とほぼ等価なスピン系である
た。追い込まれたスピン系は熱力学第三法則を
MgCr2O4 (J~4.3 meV, S=3/2) の、最低温相におけ
守ろうと必死に秩序化を試み、格子・軌道・電
るスピン励起データです [2]。図(a)に示すよう
荷・位相・カイラリティ・量子効果等に救いを
に、MgCr2O4 においても磁気秩序相で E=4.5, 9.0
求めて新奇な現象を引き出すと期待されるか
meV にスピン励起強度の集中が見られます。単
らです。例えば、スピン相関を直接観測できる
結晶を用いた Constant-E スキャンで得られたこ
中性子散乱実験では、フラストレート物質の常
れらのモードの空間相関が、図(b)と(c)です。複
磁性相においてスピン系は完全に秩序を消失
数のブリルアンゾーンにまたがる幅広い散漫
しているわけではなく、スピン六量体・スピン
散乱パターンが、2つのエネルギーで観測され
七量体・スピンアイス・スピン液体などの特徴
ています。そして、これまでその他の物質の常
的な短距離秩序を形成することが発見/議論
磁性における中性子散乱で得られたモデルを
されてきました。そして磁気秩序は、フラスト
参考に、これらのパターンを最も良く再現する
レーションを解消することで、例えば正三角形
単純なモデルとその中性子散乱強度計算結果
を歪ませる格子歪みによって発生する邪魔者
がそれぞれ図(f)と(d) (スピン六量体)、図(g)と(e)
的存在でした。
(スピン七量体) です。図(b)と(d)、図(c)と(e)が
一方、代表的な幾何学的フラストレート物質
大変良い一致を示しています。
3+
第一共鳴モードであるスピン六量体は
のスピン S=3/2) の磁気秩序相において、エネ
MgCr2O4 や ZnCr2O4 の常磁性相で確認されてお
ルギーE=4.5, 9.0 meV に共鳴的なスピン励起が
り、幾何学的フラストレート系の代名詞的なス
粉末中性子非弾性散乱によって報告されまし
ピン相関です。この事実は、4.5 meV のエネル
た [1]。磁気秩序相のスピン励起と言えば通常
ギーコストを支払えば、格子歪みでフラストレ
はスピン波ですから、発見者自身は散乱実験に
ーションを消失した磁気秩序相にフラストレ
おける粉末平均による効果でスピン波の非分
ーションが動的に回復することを意味します。
散的部分が強調されたのだと解釈しています
第二共鳴モードであるスピン七量体も興味深
(van Hoff 特異点) [1]。それ以降このスピン
く、かつてパイロクロア Tb2Ti2O7 の常磁性相に
である ZnCr2O4 (最近接交換積分 J~4.5 meV, Cr
励起の研究は進んでいません。しかし私たちは、 おいて幾何学的フラストレーションの証拠と
基底状態になくとも励起状態にならば著しい
して提案されたスピンクラスターモデルと同
フラストレーション効果が存在するだろうと
一[3]、かつスピネル AlV2O4 で提案された7量
予想し、この共鳴的スピン励起の空間相関をそ
体一重項モデルの構造単位とも同一[4]です。
の候補として単結晶中性子非弾性散乱で調べ
トピックス
という特徴から、これらのスピン分子が幾何学
的フラストレーションの準粒子(幾何学量子)
なのではないかと提案しています。強相関電子
系が独立な準粒子として扱えるように(フェル
ミ流体近似)、高度にフラストレートしたスピ
ン系も独立な準粒子としてみなせるのかもし
れません。
粉末中性子非弾性散乱の段階ですが、同型物
質 FeCr2O4 や NiCr2O4 の磁気秩序相でも共鳴的
スピン励起を発見したことも付記します [5]。
Fe2+ や Ni2+は Mg2+と異なって磁性イオンかつ
Jahn-Teller イオン(数%の正方晶的格子歪み)
であるため、常識的には Cr3+の作る幾何学的フ
ラストレーションを完全に破壊すると考えら
れますから、私たちにもこの発見は意外でした。
動的な幾何学的フラストレーション効果は欠
陥に対してかなり頑強なのです。
幾何学的フラストレート系における磁気秩
序相の励起状態は、魅力的かつ始まったばかり
の研究です。新物質はもちろんのこと、これま
で常磁性相しか測定されてこなかった多くの
フラストレート物質が再び舞台に登場するに
違いありません。仮説の検証、新たな見方・機
構・現象の発見など、何が隠れているのか楽し
みです。
本内容は、鈴木啓幸、土岐睦、伊藤晋一、松
浦直人、阿曽尚文、平賀晴弘、大山研司、山田
図. MgCr2O4 の T=5 K における中性子非弾性散乱デ
和芳 各氏(敬称略)との共同研究の成果であ
ータとモデルシミュレーション [2]. 粉末 (powder)
り、文責は筆者によるものです。
非弾性散乱データ(a)、単結晶 (sx) 非弾性散乱の hk0
参考文献
ゾーンデータ(b)(c)、hk0 ゾーンのモデルシミュレー
[1] S.-H. Lee et al., PRL 84, 3718 (2000).
ション結果(d)(e)、各スピン分子モデル(f)(g)を示す。
[2] K. Tomiyasu et al., PRL 101, 177401 (2008).
(a)-(e)内の水平の色調は任意強度を表す。
[3] Y. Yasui et al., JPSJ 71, 599 (2002).
では、このようなスピン分子の起源は一体何
なのでしょうか。私たちは、低次元スピン系に
おけるスピンダイマー一重項形成のような格
子変形と、ベンゼン環のような軌道混成やリン
グ内の電荷移動と推測しています。少なくとも、
スピン六量体とスピン七量体の全ての辺が、
Cr3+のもつ dε三重軌道の伸びる方向と一致して
います。さらに私たちは、分子間相関が無視で
きることと離散的エネルギー単位が存在する
[4] Y. Horibe et al., PRL 96, 086406 (2006).
[5] K. Tomiyasu et al.,
JPSJ 77, 124703 (2008).
氏名 富安
啓輔
(とみやす けいすけ)
所属 東北大学大学院
理学研究科物理学専攻
会議報告
「平成 20 年度領域成果報告会」報告会
本特定領域研究の2年目の成果報告会が、平成 21 年 1 月 5 日から 7 日まで東京大学(柏キャ
ンパス)の物性研究所・大講義室にて開催されました。7 つの計画班、今年度採択された 17 件
の公募班から 109 名が参加登録し、さらに評価者の 5 名の先生にもご出席を賜りました。年明
け早々に開かれ、3 日目早朝には初雪に見舞われる場面もありましたが、1 日目 2 日目は 90 名
以上、3 日目も 60 名以上が出席する盛況な会議となりました。
今回は成果報告会ということで、
計画班は 34 名の代表者と班員の全員(本人もしくは、各自が率いる研究グループのメンバー)
が一件以上、公募班は班ごとに一件以上の発表を行うという方針が立てられました。その結果、
一日 12 件ずつ計 36 件の口頭発表(20 分)と、2 日目午後の 56 件のポスター発表が行われまし
た。さらに評価者の先生にもそれぞれ 15 分ずつのコメントをいただきました。
多岐にわたる口頭講演は、あえて班ごとには区分けされず、関連性が高くなるように配列さ
れたプログラムとなっていました。まず、川村光領域代表(阪大理)の開会の挨拶に続いて、
フラストレート系物質に関する 8 件の講演がありました。低次元系・スピネル・パイロクロア
化合物に加えて、ハニカム化合物・遍歴電子系・重い電子系などが紹介され、研究領域がさら
に拡張されていることがよく分かりました。東正樹氏(京大化研)は、S=3/2 ハニカム化合物
Bi3Mn4O12(NO3)が 0.4K まで長距離秩序が存在せず、Weiss 温度との比が TN/θ≤0.0017 と極めて
強いフラストレーションが(NN と NNN の間に)実現している可能性を示唆されていました。
「スピン・電荷・格子複合系における幾何学的フラストレーションと機能」班内での研究協力
で、モンテカルロ計算・中性子散乱・強磁場測定などが進められており、今後の展開が楽しみ
な物質です。上述の講演に登場する物質の多くに共通するのは、磁気相関が比較的もしくはか
なり大きいということです。つまりフラストレート系の研究にも強相関電子系の概念を持ち込
む必要があることを意味しています。プログラムはまさにその点をカバーして、続く講演では、
フラストレートした強相関電子系の理論や金属絶縁体転移などを扱っていました。Coffee Break
での議論もまたこのような報告会での楽しみの一つですが、遠山貴己氏(京大基研)が高いエ
ネルギーまで取り込んだ理論と広い範囲のスペクトロスコピー測定の必要性を話されていたこ
とが印象に残っています。
会議報告
2 日目午前中はフラストレート系における輸送現象、とくに異常ホール効果とカイラル秩序・
カイラルグラス転移に関する話題が中心となりました。昼食をはさんで午後にはポスター発表
が行われました。発表時間は 13:00–15:30 でしたが、前後に昼食と Coffee Break がはさまれてい
たおかげで余裕をもって議論をすることができました。個人的には、私が 20 年ほど前(いつの
間にそんなに経ったのか…)大学院生のときに研究していた二次元三角格子 LiNiO2 の無秩序状
うちがいと
態について、電荷・スピン・軌道秩序相の競合という新しい観点で理論研究をされていた内垣内
洋氏(東大工)に興味を持ちました。平川金四郎先生から数えるとそろそろ四半世紀ですから
かなりの難問題です。内垣内さん頑張ってください。午後後半はリラクサーおよびマルチフェ
ロイクスに関する口頭発表がありました。フラストレーションが局在磁性のなかの限定された
分野として研究されていた頃から考えると信じられないことですが、最近は誘電体の話をして
も聴衆も違和感を感じなくなっているように思います。フラストレーションが物理学のなかで
もとくに普遍性が高い概念の一つであることの証なのかもしれません。2 日目夕刻からは、70
名ほどが参加して、カフェテリアで懇親会が開かれました。お腹をすかせた大学院生が多かっ
たのか、それともフラストレート系の研究者は食欲が旺盛なのか、料理が早いペースでなくな
っていました(写真をとっている隙にお寿司が無くなっていて寂しかったです)
。
3 日目午前中はマルチフェロイクスの典型物質の一つとなった RMn2O5 の分極フロップに関
する野田幸男氏(東北大多元研)から始まりました。続いてフラストレーションと電荷秩序に
よって強誘電性が発現する RFe2O4 系に関する実験と理論の講演があり、その後は午後前半も含
めてフラストレーションの理論に関する講演が続きました。最後はフラストレート有機磁性体
の開発・様々な磁性体の NMR と ESR に関する最近の研究成果が報告されました。最後のセッ
ションでも聴衆が途絶えず活気のある質疑応答が続いていました。
この報告会に参加することは本特定領域に参加するメンバーの義務ですが、そのような義務
感を遙かに超えて、参加者が熱意をもって研究成果を議論し合っていました。フラストレート
系の科学が広がりと深みを増していることを強く感じました。今回の報告会が契機となって開
始される研究の交流も含めて、今後の展開がとても楽しみです。
最後になりますが、参加者の一人として、世話人方々には素晴らしい報告会を開いてくださ
ったことに御礼を申し上げます。
(廣田和馬)
文部科学省・科学研究費補助金・特定領域研究(473)2007-2011 年度
フラストレーションが創る新しい物性
平成20年度領域成果報告会
日時:平成21年1月7日(水)
1月9日(金)
会場:東京大学柏キャンパス物性研究所大講義室 (6 階 A632 室)
プログラム
1 月 7 日(水)
13:00 - 13:10
川村
座長
13:10 - 13:30
W1
光
川村
はじめに
光
陰山洋
京都大学
A01 ウ
二次元遷移金属ハロゲン化物の磁性と構造
13:30 - 13:50
W2
植田浩明
東京大学
A01 ウ
クロムスピネルの磁気転移とスピン-格子相互作用
13:50 - 14:10
W3
香取浩子
理化学研究所
A02 キ
スピネル化合物 GeM2O4(M=Ni,Co,Fe)における磁場相制御
14:10 - 14:30
W4
山田 裕
新潟大学
A02 公募
CuO ジグザグチェーンの高圧下での物性と結晶構造解析
14:30 - 14:50
W5
鄭
旭光
佐賀大学
A01 公募
遷移金属水酸塩化物 M2(OH)3X シリーズの新奇磁性
14:50 - 15:10
W6
東
正樹
京都大学
A02 キ
フラストレートした S=3/2 ハニカム化合物 Bi3Mn4O12(NO3)
15:10 - 15:40
休憩
座長
15:40 - 16:00
W7
前川
覚
中村裕之
京都大学
A02 エ
遍歴電子フラストレート系としての Mo3Sb7
16:00 - 16:20
W8
小山田 明 京都大学
A01 ア
UNi4B における部分無秩序状態
16:20 - 16:40
W9
服部一匡
東京大学
A02 エ
パイロクロア格子三軌道ハバード模型の低エネルギー有効模型:LiV2O4
16:40 - 17:00
W10
渡辺真仁
東京大学
外部
三角格子上の量子スピン液体とホールドープにより出現する量子流体
相の性質
17:00 - 17:20
W11
勝藤拓郎
早稲田大学
A02 公募
AV10O15(A = Ba,Sr)の金属-絶縁体転移とフラストレーション
17:20 - 17:40
W12
求
幸年
東京大学
A02 キ
三角格子上の強相関電子系におけるスピンフラストレーション,電荷・
スピン・軌道秩序と金属絶縁体転移
17:40 - 17:55
上田和夫
評価コメント
1 月 8 日(木)
座長
9:00 - 9:20
T1
香取浩子
瀧川
仁
東京大学
外部
パイロクロア格子上の遍歴電子系の金属絶縁体転移と磁気基底状態
9:20 - 9:40
T2
中辻
知
東京大学
A02 エ
幾何学的フラストレーションによる異常な磁気伝導と相転移
9:40 - 10:00
T3
紺谷
浩
名古屋大学
A02 公募
Non-collinear 磁気構造に由来する異常ホール効果の理論
10:00 - 10:20
T4
小野田繁樹 理化学研究所
A02 公募
スピン液体におけるスピンカイラリティー:強誘電性と異常ホール効果
10:20 - 10:40
休憩
座長
10:40 - 11:00
T5
川島直輝
井口
敏
東京大学
A01 公募
スピンカイラリティーによる赤外磁気光学カー効果
11:00 - 11:20
T6
川村
光
大阪大学
A01 イ
スピングラスとカイラル秩序
11:20 - 11:40
T7
出口博之
九州工業大学
A01 イ
YBCO 超伝導セラミクスのカイラルグラス転移における電気抵抗
11:40 - 12:00
T8
吉野
元
大阪大学
A01 イ
フラストレートしたジョセフソン接合配列におけるジャミングーガラ
ス転移
12:00 - 13:00
昼食
13:00 - 15:30
PS1-56
15:30 - 15:50
休憩
座長
15:50 - 16:10
T9
ポスター
有馬孝尚
松浦直人
大阪大学
A02 カ
リラクサーにおける pseudospin とフォノンのカップリング
16:10 - 16:30
T10
左右田 稔 大阪大学
A02 カ
マルチフェロイック酸化物 CuCrO2 の中性子散乱研究
16:30 - 16:50
T11
田口康二郎 理化学研究所
A02 公募
Y型六方晶フェライトにおける磁場誘起分極と磁気異方性の効果
16:50 - 17:10
T12
佐賀山基
東北大学
A02 オ
TbMnO3 の自発電気分極回転のメカニズム
17:10 - 17:25
十倉好紀
評価コメント
17:25 - 17:40
高山
一
評価コメント
18:00 - 20:30
懇親会(柏カフェテリア)
1 月 9 日(金)
座長
9:00 - 9:20
F1
廣田和馬
野田幸男
東北大学
A02 オ
次々と見つかる RMn2O5 の分極フロップ
9:20 - 9:40
F2
森
茂生
大阪府立大学
A02 カ
三角格子鉄複合酸化物 RFe2O4 における磁気・誘電特性と電荷秩序構造
9:40 - 10:00
F3
石原純夫
東北大学
A02 オ
フラストレートした電荷秩序系における電気分極と量子揺らぎの効果
10:00 - 10:20
F4
川島直輝
東京大学
A01 ウ
第3近接相互作用のあるハイゼンベルクモデルにおける自発対称性の
破れを伴う1次相転移
10:20 - 10:40
休憩
座長
10:40 - 11:00
F5
常次宏一
坂井
徹
原子力研究開発機構
外部
スピンチューブの量子相転移
11:00 - 11:20
F6
河野昌仙
物質・材料研究機構
A01 公募
異方的三角格子反強磁性体における磁場中での粒子
11:20 - 11:40
F7
初貝安弘
筑波大学
A01 公募
フラストレートした磁性体におけるバルク−エッジ対応
11:40 - 12:00
F8
戸塚圭介
京都大学
A02 公募
強磁場中におけるフラストレート磁性体の磁気構造−マグノン凝縮から
のアプローチ
12:00 - 13:30
昼食
座長
13:30 - 13:50
F9
陰山
洋
細越裕子
大阪府立大学
A01 公募
幾何学的フラストレート有機磁性体の開発
13:50 - 14:10
F10
藤山茂樹
理化学研究所
A01 公募
ハイパーカゴメ Na4Ir3O8 に関する最近の進展
14:10 - 14:30
F11
前川
覚
京都大学
A01 ア
フラストレート磁性体の磁気秩序化とスピン液体の NMR による研究
14:30 - 14:50
F12
太田
仁
神戸大学
A01 ア
S=1/2 カゴメ格子反強磁性体の強磁場 ESR とスピンダイナミクス
14:50 - 15:05
松浦基浩
評価コメント
15:05 - 15:20
網代芳民
評価コメント
15:20 - 15:30
川村
光
おわりに
文部科学省・科学研究費補助金・特定領域研究(473)2007-2011 年度
フラストレーションが創る新しい物性
平成20年度領域成果報告会
ポスター発表
日時:平成21年1月8日(木) 13:00
15:30
会場:東京大学柏キャンパス物性研究所 6 階
PS1
有馬孝尚
東北大学
斜め磁場を用いたらせん磁性強誘電体の電気分極制御
PS2
富田裕介
東京大学
1次元および2次元双極子格子系の臨界現象
PS3
左右田稔
大阪大学
(1-x)BiFeO3-xBaTiO3 におけるリラクサー的誘電性と磁気
秩序の競合
PS4
岡本佳比古
東京大学
スピン 1/2 カゴメ格子反強磁性体 BaCu3V2O8(OH)2 の磁性
PS5
谷口耕治
東北大学
マルチフェロイック MnWO4 における分極フロップ方向の
磁場制御
PS6
松田雅昌
日本原子力研究開発機構
スピネル磁性体 Li(Mn1-xCrx)2O4 の中性子散乱
PS7
中澤康浩
大阪大学
BEDT-TTF, Pd(dmit)2 系有機三角格子の熱容量
PS8
飛田和男
埼玉大学
混合スピンダイヤモンド鎖の理論
PS9
藤本聡
京都大学
フラストレート磁性体における異常スピン・ホール効果
PS10
大和田謙二
日本原子力研究開発機構
PZN-9 PT の誘電率-散漫散乱同時計測
PS11
広井善二
東京大学
2 次元三角格子反強磁性体電気伝導性酸化物 Ag2MnO2 にお
ける特異な相転移
PS12
吉田紘行
東京大学
S=1/2 擬カゴメ格子磁性体 Cu3V2O7(OH)2・2H2O の基底状態に
おける磁化ステップ
PS13
奥西巧一
新潟大学
ジグザグスピン鎖におけるベクトルカイラル秩序
PS14
平石雅俊
総合研究大学院大学
パイロクロア酸化物 Tl2Ru2O7 における金属絶縁体転移と
ハルデン鎖形成
PS15
菊池彦光
福井大学
三角格子反強磁性体の特異な磁気秩序
PS16
東中隆二
首都大学東京
Tb2Ti2O7 の量子スピンアイス状態の探索
PS17
木村尚次郎
大阪大学
クロムスピネル化合物 CdCr2O4 の強磁場 ESR
PS18
大田健雄
東京大学
パイロクロア酸化物 Pr2Ir2O7 のフラストレート金属磁性
の組成依存性
PS19
山口博則
大阪大学
二次元三角格子磁性体 NiGa2S4 の強磁場磁性
PS20
阿部伸行
東北大学
磁性強誘電体における電気磁気ドメイン壁の磁場方位選
択性
PS21
南部雄亮
東京大学
二次元フラストレート磁性体 NiGa2S4 におけるスロースピ
ンダイナミクス
PS22
谷口年史
大阪大学
パイロクロア酸化物 Ca2Ru2O7 の非線形帯磁率
PS23
石田憲二
京都大学
二次元三角格子磁性体の低エネルギー磁気励起
PS24
長谷川邦洋
東京大学
ホーランダイト型酸化物 K2Cr8O16 における金属-絶縁体転
移
PS25
北川健太郎
東京大学
Dy2Ti2O7 ス ピ ン ア イ ス 状 態 に お け る 緩 和 機 構 の
47
Ti-NQR/17O-NMR による研究
PS26
花咲徳亮
岡山大学
電荷フラストレーション物質の輸送特性
PS27
松平和之
九州工業大学
パイロクロア型イリジウム酸化物における金属絶縁体転
移と低温磁性
PS28
吉田
誠
東京大学
S=1/2 擬カゴメ格子磁性体 Volborthite の NMR
PS29
桃井
勉
理化学研究所
Multi-polar liquids and chiral order in the frustrated
ferromagnetic 1D chain
PS30
内垣内 洋
東京大学
三角格子系 ANiO2 における電荷・スピン・軌道秩序相の競
合と金属絶縁体転移
PS31
大久保毅
大阪大学
三角格子ハイゼンベルグ反強磁性体におけるスピンダイ
ナミクスの数値シミュレーションによる解析
PS32
野口祐二
東京大学
PS33
萩原
京都工芸繊維大学
亮
新規ビスマス系リラクサー強誘電体の開発
citrate pyrolysis 前駆体を用いた超伝導弱接合ネットワ
ーク系試料の合成と YBa2Cu4O8 セラミクスのグレイン間秩
序化過程の観測
PS34
益田隆嗣
横浜市立大学
フラストレート磁性体 BaV10O15 の中性子回折
PS35
三澤貴宏
東京大学
三角格子上の異方的ハイゼンベルグ模型におけるカイラ
ル・KT 転移と緩和時間の特異性
PS36
古川俊輔
理化学研究所
一次元スピン 1/2 マルチフェロイクスにおけるカイラリ
ティと量子効果
PS37
肥後友也
東京大学
三角格子系における新しい金属状態の探索
PS38
山地洋平
東京大学
フラストレイト格子上の近藤格子系: 部分近藤一重項の
形成
PS39
奥村宗一郎
大阪大学
Fully Frustrated XY モデルにおけるスピンとカイラリテ
ィの臨界現象
PS40
宮崎 正範
総合研究大学院大学
μSR から見たパイロクロア酸化物 Ca2Ru2O7 の磁気基底状
態
PS41
竹下聡史
高エネルギー加速器研究機構
μSR から見た擬一次元導体β-Na0.33V2O5 の磁気基底状態
PS42
冨田崇弘
東京大学
擬二次元三角格子反強磁性体 FeGa2S4,Fe2Ga2S5 の高圧輸送
現象
PS43
山崎悟志
東京大
二次元三角格子系クロム硫化物における反強磁性転移
PS44
田久保耕
東京大学
NiGa2S4 の角度分解光電子分光
PS45
沼
東京大学
遷移金属パイロクロア弗化物の磁性
承子
PS46
Dao Xuan Viet
Osaka University
The spin-chirality decoupling in the one-dimensional
Heisenberg spin glass with long-range power-law
interactions
PS47
礒部正彦
東京大学
ホーランダイト型バナジウム酸化物 K2V8O16 の金属−絶縁
体転移
PS48
Nguyen Trung Hai
大阪大学
Ordering of the Pyrochlore Heisenberg Antiferromagnet
with
the
Ferromagnetic
Next-Nearest-Neighbor
Interaction
PS49
遠山貴己
京都大学
非等価な一次元鎖における鎖間相互作用の効果
PS50
西山昌秀
京都大学
S=1/2 かごめ格子反強磁性体 Rb2Cu3SnF12 の 19F-NMR
PS51
松尾祥史
大阪府立大学
三角格子系物質 LuFeMO4 (M= Co, Cu)における誘電特性と
局所構造
PS52
尾崎友厚
大阪府立大学
(1-x)BiFeO3−xBaTiO3 の磁気誘電特性と微細構造
PS53
伊藤正行
名古屋大学
NMRで見た三角格子反強磁性体 Ca3Co2O6 と NaCrO2 のス
ピンダイナミクス
PS54
高木英典
東京大学
層状ハニカム格子化合物 Na2IrO3 の磁性とフラストレーシ
ョン
PS55
鈴木隆史
東京大学
シャストリーサザランド格子上 S=1/2XXZ モデルにおける
磁化プラトー
PS56
梶本亮一
日本原子力研究開発機構
デラフォサイト酸化物 CuCr1-xMgxO2, Cu1-yAgyCrO2 における
磁気相関
会議報告
物性科学領域横断研究会「スピンが拓く物性科学の最前線」
および凝縮系科学賞授賞式
2008 年 11 月 29 日(土)から 12 月 1 日(月)にかけて、東京大学で物性科学領域横断研究会が開
かれました。この領域横断研究会の狙いは、物性科学に関係するいくつかの特定領域が合同で
研究会を開くことによって物性科学全体がますます発展することにあります。
「異常量子物質」
領域代表の秋光純先生が提唱して 2007 年度に始まりました。ちなみに、2007 年度は「異常量
子物質」
、
「スクッテルダイト」
(代表:佐藤英行)、「分子性導体」
(代表:高橋利宏)、
「新量子相の
物理」
(代表:福山寛)の4特定領域の合同で超伝導というキーワードのもとで催されています。
今年度は、2007 年度で終了した「分子性導体」と「スクッテルダイト」に替わって、「強磁場
スピン科学」
(代表:野尻浩之)、および昨年度からスタートした「フラストレート系」、
「ユビキ
タス戦略」
(代表:谷垣勝己)、
「スピン流」(代表:高梨弘毅)が加わって 6 特定領域の合同での開
催となりました。
3 日間の会議は大変意義深いものでした。スピンという共通のキーワードがあり、個々の研
究内容自体にも少なからず共通点があります。特に、
「フラストレート系」領域から見ると、フ
ラストレーションの基本概念が各領域で陰に
陽に意識されていることを改めて認識させら
れました。例えば、
「新量子相の物理」領域の
興味の一つに、乱れのないフラストレート系
がとる極低温での状態があります。これに関
しては、第 3 回トピカルミーティングで合同
セッションが組まれたことからもわかると思
います。「スピン流」領域ではスピン流の生
成・消滅とともに、スピン流をほかの信号に
変換して検出することが研究目的となってい
ますが、スピン流検出の基本学理は、フラス
研究会のトップバッターとして講演を行う川村代表
トレート系のスピンカイラリティの検出法への応用が可能です。
「強磁場スピン科学」は強磁場
測定技術の確立を狙いとした領域であり、その検出技術の具体的な応用対象としてはスピンフ
ラストレート系が多いことはある意味で当然とも言えます。発表でも、強磁場のこのように類
似点がある一方で、工学と理学、物質開発と測定技術など各領域で重点を置くところにはやは
り差異があります。このよう相違点のおかげで、講演を聞いていて新たな発見がいくつもあり
ました。
冒頭にも述べたように、領域横断型の合同会議を企画したのは「異常量子物質」領域代表の
秋光先生です。この領域は規模や研究内容がかなり大きく、そこから芽が出た研究テーマの一
部を他の研究領域(特定研究に限らず)に引き継ぐという役割も果たしてきたように思います。
メンバー的にも、他の 5 特定領域には「異常量子物質」を掛け持ちしている研究者が数多くい
ます。つまり、色々な意味でこの 5 年間に「異常量子物質」が物質科学に果たしてきた役割は
会議報告
大きいと思います。
「異常量子物質」特定領域は今年度で終了します。今後、領域横断研究会の
ような活動が続くという保証はありません。さらに、特定領域研究から新学術領域研究への制
度変更に伴って、かけもちがほとんどなくなります。どういう制度にも良い点と悪い点がある
でしょうが、かけもち組がいなくなることは各領域間のつながりを薄めるほうに作用すること
は否めません。そういう意味では、色々な領域をつなぐ基本概念を看板に掲げる本領域の活動
への期待は大きいかと思います。トピカルミーティングを始めとして、他領域とのつながりを
意識した領域運営を川村代表が続けられることを今後も楽しみにしていますし、もちろん他人
事ではございませんので、できるだけの協力はしていきます。
さて、この領域横断研究会で行われた一つの目玉が凝縮系科学賞の授賞式です。この賞は秋
光純先生と福山秀敏先生が、我が国の物質科学の将来を担う若手を発掘し、物心両面から支援
することを目的として発案されたもので、博士の学位を取得して 8 年以内の若手が対象となり
ます。財団などが全く関与しない大変珍しい賞です。2008 年(第 3 回)の受賞者は実験部門が神
原陽一氏(東工大、JST)、理論部門が古賀昌久氏(京大)でした。
神原さんは、2008 年の物性科学で最も大き
な話題をさらった LaOFeAs 系高温超伝導体
の発見者です。私自身はこの超伝導の噂を初
めて聞いたときに、Fe 化合物が本当に超伝導
になるのかとかなり疑った記憶があります。
それが本当だとわかって大変驚きました。神
原さんの受賞記念講演では、発見にまつわる
面白いエピソードやその後の急速な研究の進
展を聞くことができました。一年足らずのう
ちにものすごいスピードで物質開発と物性解
明が進んでいる様子が分かりました。
一方、古賀さんの受賞理由は直交ダイマースピン系と多軌道モット転移の理論的研究です。
私には理論的な取り扱いの詳細は理解できませ
んでしたが、二つの話題について何を問題とし
てどう取り組みどのような結果が出たのかをわ
かりやすく説明され、さすがとうならせるもの
がありました。ここで、直交ダイマースピン系
の話題は、陰山さんが見出された SrCu2(BO3)2
という物質のフラストレーションを念頭に置い
たものです。今後も、フラストレーションの分
野が、有望な若手の興味を引く話題を次々と発
信し続けるように私たちもがんばろうという気
にさせてくれました。また、本領域の若手メン
バーによる活躍が受賞につながれば良いなと期待しています。
(有馬孝尚)
物性科学領域横断研究会
スピンが拓く物性科学の最前線
2008 年 11 月 29 日(土)—12 月 1 日(月)
東大本郷キャンパス武田ホール
11 月 29 日(土)
13:00-13:10
秋光 純(青山学院大)
はじめに
フラストレーション
座長:野尻浩之
13:10-13:40
川村 光(阪大理)
フラストレーションが創る新しい物性
13:40-14:10
有馬孝尚(東北大多元)
フラストレーションとマルチフェロイック
14:10-14:40
前川 覚(京大人環)
幾何学的フラストレート磁性体の磁気秩序化と量子
スピン液体
14:10-15:00
休憩
強磁場スピン科学
15:00-15:30
座長:川村 光
野尻浩之(東北大金研)
超強磁場スピン科学と中性子回折
15:30-16:00
松田康弘(東大物性研)
遍歴—局在相関系の超強磁場X線 MCD
16:00-16:30
宇治進也(物材機構)
一次元有機導体の強磁場SDW状態
16:30-18:30
ポスター発表(奇数番)
ポスタープログラムは最終ページにあります
-
11 月 30 日(日)
超伝導
座長: 谷垣勝己
10:00-10:30
秋光 純(青山学院大)
異常量子物質と超伝導
10:30-11:00
伊豫 彰(産総研)
酸素欠損型鉄オキシニクタイト LnFeAsO1-y の高圧合
成と超伝導特性
11:00-11:30
永長直人(東大工)
電子相関とスピン軌道相互作用の理論
11:30-12::00
山田和芳(東北大原子分 超伝導と中性子散乱
子機構)
休憩
13:10-14:40 凝縮系科学賞授賞式
13:10-13:40
受賞者発表および表彰
13:40-14:00
神原陽一(科学技術振興 鉄系高温超伝導体の発見
機構 TRIP)
座長:高梨弘毅
14:00-14:20
古 賀 昌 久 氏 ( 京 都 大 学 直交ダイマースピン系および多軌道モット転移の理論
理)
14:20-14:40
的研究
休憩
エキゾチック物質
座長:永長直人
14:40-15:10- 谷垣勝己(東北大原子分 配列ナノ空間を有する新物質科学
子機構)
15:10-15:40
野末泰夫(阪大理)
配列アルカリ金属ナノクラスターのスピンと磁性
15:40-16:10
神谷利夫(東工大)
空間物質におけるスピンと伝導
16:10-18:00
ポスター発表(偶数番)
ポスタープログラムは最終ページにあります
懇親会 18:10-20:00
12 月 1 日(月)
スピントロニクス
座長:寺﨑一郎
10:00-10:30
高梨弘毅(東北大金研)
スピン流の創出と制御
10:30-11:00
田中雅明 (東大工)
半導体スピントロニクス〜材料とデバイス研究の現状
と展望〜
11:00-11:30
斉藤英治(慶応理工)
スピンホール効果を用いたスピン流物性の探索
11:30-12::00
高増正(物材機構)
量子ドットー2 次元電子相関系のコヒーレンス
休憩
スーパークリーン物質
座長:廣田和馬
13:00-13:30
今田正俊(東大工)
スピンが結ぶ電子・ヘリウム・冷却原子
13:30-14:00
石川修六(大阪市大理)
液体 3He のスピン超流動
14:00-14:30
桃井 勉(理研)
リング交換とスピンネマティック状態
14:30-15:00
秋光 純(青山学院大)
おわりに
ポスター発表
P1
有川晃弘
筑波大数理物質
リング交換相互作用を持つスピン梯子系の端状態
P2
桜庭裕弥
東北大金研
ホイスラー合金系ハーフメタル材料を用いた金属三層膜におけ
る層間交換結合と CPP-GMR 特性
P3
平原 徹
東大物理
Bi 超薄膜におけるスピン軌道相互作用と表面状態
P4
江澤雅彦
東大物理工学
Application of Graphene Nanodisk to Spintronic Devices
P5
礒部正彦
東大物性研
ホーランダイト型バナジウム酸化物の金属−絶縁体転移
P6
海老原孝雄
静大理
重い電子系 CeIn3 における強磁場ドハース・ファンアルフェン効果
P7
大野裕三
東北大電気通信研
n-GaAs/AlGaAs 量子井戸構造における核スピンの量子ゲート操
作とその光検出
P8
小野田繁樹
理研
擬一次元マルチフェロイクスにおけるマイクロ波吸収:2−フェイゾ
ンとカイラル・ソリトン
P9
楢原明理
筑波大数理物質
強磁性窒化鉄を用いた TMR 素子の作製と評価
P10
望月 大
東工大理工学
シリカナノ空間へ導入した有機分子の光物性
P11
T. Harianto
筑波大数理物質
強磁性シリサイド Fe3Si を用いたトンネル磁気抵抗構造の作製
P12
宇田川将文
東大工
クラスタ動的平均場近似によるフラストレートした強相関遍歴電
子系の研究
P13
七海裕貴
東大物性研
非磁性細線で観測される Hanle 効果へのオーミック接合した強磁
性端子の影響
P14
大西紘平
東大物性研
超伝導細線におけるスピン注入誘起準粒子の緩和過程
P15
諸田美砂子
東大物性研
遷移金属におけるスピンホール効果の起源の実験的探索
P16
小椎八重 航
理研CMRG
金属絶縁体転移を含む系における励起状態の時間発展
P17
菅 誠一郎
阪大応物
3 成分内部自由度を持つ冷却フェルミ原子気体の有限温度にお
ける相図:カラー超流動状態とトリオン状態の有効モデルによる
解析
P18
中村和磨
東大物理工学
アルカリ金属クラスター内包ゼオライトの低エネルギースピン模
型の第一原理導出
P19
余越伸彦
JST-CRES 産総研
半導体二重ドットにおける断熱的電荷ポンプとスピン状態測定
P20
松下勝義
産総研ナノテク
直流電流を印加した幾何学的閉じ込め磁壁
P21
大鳥博之
筑波大-産総研
強磁性/非磁性/超伝導接合系におけるコンダクタンス振動
P22
坂井 徹
原子力機構量子ビーム
異方的スピンラダー系の磁場誘起スピンネマティック相
P23
宮下 哲
分子研理論・計算分子 異なるバンド幅を持つ 2 軌道ハバード鎖におけるモット絶縁相
科学
P24
為ヶ井 強
東大工
層状強磁性体 Sr4Ru3O10 のメタ磁性転移に伴う磁区構造変化
P25
音 賢一
千葉大理
量子ホール2次元電子系のスピンイメージング
P26
岡 隆史
東大物理
グラフェンにおける光誘起ホール効果
P27
小山岳秀
兵庫県立大 物質理学
超伝導体 Mo3Sb7 の常伝導状態における構造相転移
P28
遠山貴己
京都大基研
鉄-硫黄クラスターの電子状態と磁気的性質
P29
片岡隆史
東大新領域
π-d 系金属錯体分子のキャリアー誘起強磁性に関連する電子
構造
P30
正木 了
神戸大物理
FeSe超伝導体の高圧下Se-NMRによる研究
P31
香取浩子
理研高木磁性研
Sr-Ru-O 系新物質の特異な磁化過程
P32
内垣内 洋
東大物工
三角格子系 ANiO2 (A=Na, Li, Ag) におけるフラストレーションと電
荷・スピン・軌道自由度の競合
P33
宮原 慎
JST=ERATO 十 倉 らせん磁性体における光吸収理論
マルチフェロイック
P34
関 和弘
千葉大理
多体リング交換を含む三角格子 t-J 模型の低エネルギー励起:
グラファイト上の 3He
P35
今中康貴
物材機構 量子ドッ 希薄磁性半導体量子ホール系の強磁場テラヘルツ分光
トセンター
P36
酒巻真粧子
千葉大融合科学
ホランダイト型バナジウム酸化物 K2V8O16 の第一原理電子構造
計算
P37
渡邉 努
東北大物理
電荷秩序型誘電体におけるフラストレーションと量子効果
P38
工藤 春
千葉大理
Antiferromagnetism vs Kondo screening in the 2D periodic
Anderson model: Variational cluster approach
P39
飛田和男
埼玉大理工学
混合スピンダイヤモンド鎖の統計力学
P40
三田村裕幸
東大物性研
MnWO4 のパルス強磁場中誘電分極測定
P41
小山田 明
京大人間環境学
YbAl3C3 のスピンギャップ状態
P42
横井裕之
熊 本 大 マ テ リ ア ル 超強磁場における単層カーボンナノチューブの励起子状態
工学
P43
宇田川眞行
広島大総合科学
ラマン散乱で見るカゴに捕獲され原子の運動
P44
石原純夫
東北大物理
多自由度を有する強相関電子系における光励起状態のダイナミ
クス
P45
西嵜照和
東北大金研
ハイブリットマグネット・冷凍機冷却マグネットを用いた強磁場
STM の開発
P46
高野義彦
物材機構ナノフロン FeSeの超伝導特性
ティア材料
P47
伊藤 豊
京大化学
水2層コバルト酸化物超伝導体 NaxCoO2・yH2O の磁気相図:決
定版?
P48
義積広幸
京大基研
非等価な一次元鎖における鎖間相互作用の効果
P49
辻 直人
東大物理
光誘起絶縁体金属転移における光学伝導度の理論
P50
土屋敬広
筑 波 大 先 端 学 際 常磁性金属内包フラーレンに基づく超分子系の構築
領域研究センター
P51
木俣 基
物材機構 ナノシス 鉄フタロシアニン伝導体の巨大磁気抵抗
テム機能センター
P52
水上成美
東北大原子分子機 ホイスラー合金薄膜におけるスピンダイナミクスの全光学的検出
構
P53
前島展也
筑波大数理物質
軌道縮退した1次元モット絶縁体における光誘起ダイナミクス
P54
家田淳一
東北大金研
スピンゼーベック効果
P55
佐藤 純
産総研ナノテクノロ 電流狭窄領域に閉じ込められた磁壁による磁気抵抗効果の理
ジー
論的研究
P56
田口 勝久
首都大学東京理工
ベクトルカイラリティ、スピン流による異常ホール効果
P57
北 倫子
阪大応用物理
二軌道ハバード模型における非局所的スピン・軌道揺らぎの効
果
P58
脇本秀一
原子力機構量子ビーム
マルチフェロイック物質 RMn2O5 の磁気カイラリティと分極
P59
内藤 豊
名大理
Cu3(OH)4SeO4 の磁性と誘電性
P60
足立 匡
東北大応用物理
La214 系高温超伝導体における電気抵抗率から見たストライプ
相関に対する磁場効果
P61
樽井康子
名大理
辺共有 1 次元鎖を持つ Li2HfCuO4(S=1/2)の磁気秩序状態
P62
佐藤健二
名大理
ACu2O2 の磁気構造解析 (A=Li, Na)
P63
宮崎亮一
首都大理工
充填スクッテルダイト超伝導体 Pr(Os1-xRux)4Sb12 の比熱測定
P64
甲斐崇宏
名大理
マルチフェロイック物質 Ni3(1-x)T3xV2O8 の H-T 相図
P65
三浦陽子
名大理
スピンギャップを持つ歪んだハニカム格子系 Na3Cu2SbO6 の磁気
励起
P66
川端彩香
名大理
LaFe1-yCoyAsO0.89F0.11 の NMR
P67
川村雄司
名大理
Cu3O8 クラスターを有する Na2Cu3(GeO3)4 のマルチフェロイック性
P68
大成誠一郎
名 大 学 マ テ リ ア ル 多軌道モデルによるグラフェンのスピンホール効果
理工学
P69
小林義明
名大理
コバルト酸化物超伝導体 NaxCoO2.yH2O の電子状態の NQR 周波
数依存性
P70
吉川俊彦
東大物理
二次元 ionic Hubbard 模型の基底状態の相図
P71
求 幸年
東大物理工学
三角格子系 LiVX2(X=O,S,Se)における三量体化と金属絶縁体転
移
P72
求 幸年
東大物理工学
パイロクロア二重交換模型のモンテカルロシミュレーション
P73
萩原政幸
阪大極限量子科学
二次元三角格子反強磁性体 NiGa2S4 の強磁場磁性
P74
川股隆行
理研仁科加速器研 1次元量子スピン系 SrCuO2,Sr2V3O9 におけるスピンによる熱伝導
究センター
P75
茂吉武人
名大理
NaxCoO2・yH2O の超伝導と磁気励起
P76
李 尚哲
名大理
LaFeAsO1-xFx の超伝導 Tc や磁性への Fe サイトドーピング効果
P77
藤田典史
東大工
一次元分子集合体を用いた有機配列空間の構築
P78
石定 惇
阪大産研
シリコン中の単原子空孔がもたらす格子ダイナミクスへの影響
P79
青木勇二
首都大学物理
重い電子超伝導体 PrxOs4Sb12 の Pr サイト欠陥効果
P80
荒木新吾
阪大理
圧力ドーピングにより作成されるゼオライト中のアルカリ金属クラ
スターの磁気秩序
P81
P82
宮武慎也
安井幸夫
阪 大 精 密 科 学 ・ 応 光格子中の3成分内部自由度を持つ冷却フェルミ原子系の量子
用物理
相転移
名大理
CuO2 リボン鎖を持つ LiVCuO4 と PbCuSO4(OH)2 の磁気構造と誘
電特性の相関
P83
前田 惇
阪大工
スピンギャップを持つ一次元電子系の磁場中での臨界的性質カーボンナノチューブの磁場中 NMR 緩和率 -
P84
高島宏和
東大物理
静的近似を超えた汎関数繰り込み群と 2 次元斥力 Hubbard 模型
P85
俣野和明
岡山大自然科学
鉄系超伝導の NMR/NQR による研究
P86
中野岳仁
阪大理
配列ナノ空間に閉じ込められた s 電子による磁気秩序
P87
稲葉謙介
阪 大 精 密 科 学 ・ 応 光格子中の 3 成分内部自由度を持つ冷却フェルミ原子系におけ
用物理
るカラー超流動とトリオン状態:有限温度の解析
IV 族強磁性半導体 GeFe の物性
P88
遠藤裕幸
東大電気系工学
P89
松田和之
首都大学東京理工 セメント超伝導体 C12A7 の核磁気共鳴
学
P90
増渕 覚
東大生研
パルス強磁場を利用した単層・二層グラフェンにおける量子ホー
ル効果の観測
P91
益田隆嗣
横浜市立大国際総 酸素分子により設計された磁性体における中性子散乱
合科学
P92
並木孝洋
首都大学東京理工
P93
稲見俊哉
原子力機構放射光 多段磁化過程を示す TbB4 のパルス強磁場下共鳴 X 線回折実験
科学研究ユニット
As 系充填スクッテルダイト化合物の高圧合成と電子物性
P94
五十嵐睦夫
群馬高専
アルカリ金属吸着ソダライトのNMR特性
P95
藤 秀樹
神戸大理
層状窒化物の NMR による研究
P96
石川文洋
新潟大自然科学
Pr2Ba4Cu7O15-d の超伝導特性と圧力効果
P97
矢田慎介
東大電気系工学
IV 族磁性半導体 GeMn の作製とその物性
P98
上原政智
横浜国立大工
強磁性元素を含むアンチペロブスカイト型化合物の新物質合成
P99
品岡 寛
東大物理工学
乱れたハバード模型におけるソフトハバードギャップ
P100
鳴海康雄
東大物性研
強磁場量子ビーム科学に向けての強磁場発生技術開発
P101
前野悦輝
京大理
導電性三角格子磁性体 PdCrO2 のホール効果
P102
脇田源太
名大理
1 次元量子系の電子相関効果と局所的欠陥
P103
長浜太郎
産総研エレクトロニク MgO バリアを用いた強磁性トンネルトランジスタ
ス
P104
黒田眞司
筑波大物質工学系
磁性半導体における磁性元素の分布と強磁性特性の相関と制
御
P105
勝本信吾
東大物性研
Detection of spin polarization by a side-coupled quantum dot
P106
P. NAMHAI
東大電気系工学
閃亜鉛鉱型 MnAs ナノスケール微粒子を含むトンネル接合にお
ける巨大な磁気抵抗と起電力効果
P107
石田憲二
京大理
P108
境 誠司
原子力機構先端基 グラニュラー構造を有する C60-Co ハイブリッド薄膜の巨大 TMR
礎研究センター
P109
松本吉弘
擬二次元三角格子磁性体 NiGa2S4 における Spin Dynamics
効果
原子力機構先端基 X線光電子分光・X線磁気円二色性測定によるC60-Co薄膜の電
礎研究センター
子・スピン状態解析
P110
森 茂生
大阪府立大工
磁性誘電体 BiFeO3-BaTiO3 の磁気誘電特性とドメイン構造
P111
岡 隆史
東大物理
ゼオライト構造炭素の電子構造
P112
杉山優介
静岡大物理
単結晶CeCu2Ge2の強磁場物性
P113
新田淳作
東北大工
アンチドット格子におけるスピン干渉効果の電界制御
P114
細越裕子
府立大理
S=1ラダーBIP-TENOの圧力・不純物置換効果
P115
堤 喜登美
金沢大自然
擬二次元反強磁性体単結晶Er5Ir4Si10の顕著な結晶場効果の低
温比熱による直接観測
P116
富田裕介
東大物性研
長距離相互作用する系のO(N)モンテカルロシミュレーション法と
2次元双極子格子系の臨界現象
発表論文のリスト
135. “External Magnetic Field Effects on a Distorted Kagome Antiferromagnet”, J.-H.Kim, S.Ji,
S.-H.Lee, B.Lake, T.Yildirim, H.Nojiri, H.Kikuchi, K.Habicht, Y.Qiu, and K.Kiefer: Phys.
Rev. Lett. 101(10), 107201/1-4 (2008).
136. “Numerical evidence of spin-chirality decoupling in the three-dimensional Heisenberg spin
glass model”, D.X. Viet and H. Kawamura: Phys. Rev. Lett. 102, 027202/1-4 (2009).
137. “Vortex jamming in superconductors and granular rheology”, Hajime Yoshino, Tomoaki Nogawa, Bongsoo Kim: New J. Phys. 11, 013010/1-14 (2009).
138. “Longitudinal Spin Density Wave Order in a Quasi-1D Ising-like Quantum Antiferromagnet”,
S. Kimura, M. Matsuda, T. Masuda, S. Hondo, K. Kaneko, N. Metoki, M. Hagiwara, T.
Takeuchi, K. Okunishi, Z. He, K. Kindo, T. Taniyama, and M. Itoh: Phys. Rev. Lett.
101(20), 207201/1-4 (2008).
139. “CaFeO2 : A New Type of Layered Structure with Iron in a Distorted Square Planar Coordination”, C. Tassel, J. M. Pruneda, N. Hayashi, T. Watanabe, A. Kitada, Y. Tsujimoto, H.
Kageyama, K. Yoshimura, M. Takano, M. Nishi, K. Ohoyama, M. Mizumaki, N. Kawamura,
J. Iniguez, and E. Canadell: J. Am. Chem. Soc. 78, 214410/1-10 (2008).
140. “Synthesis, structure, and magnetic properties of the two-dimensional quantum antiferromagnets (CuBr)A2 B3 O10 (A = Ca, Sr, Ba, Pb; B = Nb, Ta) with the 1/3 magnetization
plateau”, Y. Tsujimoto, H. Kageyama, Y. Baba, A. Kitada, T. Yamamoto, Y. Narumi, K.
Kindo, M. Nishi, J.P. Carlo, A.A. Aczel, T.J. Williams, T. Goko, G. M. Luke, Y.J. Uemura,
Y. Ueda, Y. Ajiro, and K. Yoshimura: Phys. Rev. B78(21) (2008) 214410/1-10.
141. “First-Order Transition to Incommensurate Phase with Broken Lattice Rotation Symmetry
in Frustrated Heisenberg Model,”, R. Tamura and N. Kawashima: J. Phys. Soc. Jpn. 77(10)
103002(1-4) (2008).
142. “Room-Temperature Synthesis of Manganese Oxide Monosheets”, K. Kai, Y. Yoshida, H.
Kageyama, G. Saito, T. Ishigaki, Y. Furukawa, and J. Kawamata: J. Am. Chem. Soc. 130,
15938-15943 (2008).
143. “Structural and Electronic Properties of SrFeO2 from First Principles”, J. M. Pruneda, J.
Iniguez, E. Canadell, H. Kageyama, and M. Takano: Phys. Rev. B 78, 115101-1-5 (2008).
144. “Flux growth and magnetic properties of FeVO4 single crystals”, Z. He, J. Yamaura, and Y.
Ueda: J. Solid State Chem. 181(9) (2008) 2346-2349
145. “Neutron diffraction study of layered Ni dioxides: Ag2 NiO2 ”, H. Nozaki, J. Sugiyama, M.
Janoschek, B. Roessli, V. Pomjakushin, L. Keller, H. Yoshida and Z. Hiroi: J. Phys.: Condens. Matter: 20;(10), 104236 (2008).
146. “Fermi surface in the superconducting beta-pyrochlore oxide CsOs2 O6 ”, T. Terashima, S.
Uji, Y. Nagao, J. Yamaura, Z. Hiroi and H. Harima: Phys. Rev. B: 77;(1), 064509 (2008).
147. “High-field electron spin resonance in the two-dimensional triangular-lattice antiferromagnet
NiGa2 S4 ”, H. Yamaguchi, S. Kimura, M. Hagiwara, Y. Nambu, S. Nakatsuji, Y. Maeno, and
K. Kindo: Phys. Rev. B. 78;(18), 180404(R)/1-4 (2008).
148. “Spin Dependent Impurity Effects on the 2D Frustrated Magnetism of NiGa2 S4 ”, Y. Nambu,
S. Nakatsuji, Y. Maeno, E. K. Okudzeto, and J. Y. Chan: Phys. Rev. Lett. 101;(20),
207204/1-4 (2008).
149. “Unconventional spin freezing and fluctuations in the frustrated antiferromagnet NiGa2 S4 ”,
D. E. MacLaughlin, Y. Nambu, S. Nakatsuji, R. H. Heffner, Lei Shu, O. O. Bernal, and K.
Ishida: Phys. Rev. B. 78;(22), 220403(R)/1-4 (2008).
150. “Finite-Temperature Mott Transition in Two-Dimensional Frustrated Hubbard Models”, T.
Ohashi, T. Momoi, H. Tsunetsugu, and N. Kawakami: Prog. Theor. Phys. Suppl. 176;
97-116 (2008).
151. “Strongly Correlated Electrons on Frustrated Lattices”, H. Tsunetsugu, K. Hattori, T.
Ohashi, N. Kawakami, and T. Momoi: J. Phys.: Conference Series 145;, 012015/1-8 (2009).
152. “A Possible Isomorphic Transition in β-pyrochlore Compounds”, K. Hattori and H. Tsunetsugu: J. Phys. Soc. Jpn. 78;(1), 013603/1-4 (2009).
153. “Effective Hamiltonian of three-orbital Hubbard model on pyrochlore lattice: application to
LiV2 O4 ”, K. Hattori and H. Tsunetsugu: Phys. Rev. B 79;, 035115/1-25 (2009).
154. “Topological order and non-Abelian statistics in noncentrosymmetric s-wave superconductors”, S. Fujimoto: Phys. Rev. B 77;, 220501/1-4 (2008).
155. “Colossal Enhancement of Upper Critical Fields in Noncentrosymmetric Heavy Fermion Superconductors near Quantum Criticality: CeRhSi3 and CeIrSi3 ”, Y. Tada, N. Kawakami,
and S. Fujimoto: Phys. Rev. Lett. 101;, 267006/1-4 (2008).
156. “Dimensional Crossover of Low-energy Magnetic Excitation for Delafossite Oxide Cu1−x Agx
CrO2 with a Spin-3/2 Antiferromagnetic Triangular Sublattice”, T. Okuda, T. Kishimoto,
K. Uto, T. Hokazono, Y. Onose, Y. Tokura, R. Kajimoto, and M. Matsuda, J. Phys. Soc.
Jpn. 78, (1) 013604/1-4 (2009).
157. “Electric-Dipole Active Two-Magnon Excitation in ab Spiral Spin Phase of a Ferroelectric
Magnet Gd0.7 Tb0.3 MnO3 ”, N. Kida, Y. Yamasaki, R. Shimano, T. Arima, Y. Tokura, J.
Phys. Soc. Jpn. 77, (12) 123704/1-4 (2008).
158. “Magnetically Controllable CuB2 O4 Phase Retarder”, M. Saito, K. Ishikawa, K. Taniguchi,
T. Arima, Appl. Phys. Express 1, (12) 121302/1-3 (2008).
159. “Control of the Magnetoelectric Domain-Wall Stability by a Magnetic Field in a Multiferroic
MnWO4 , K. Taniguchi, N. Abe, H. Umetsu, H. Aruga Katori, T. Arima, Phys. Rev. Lett.
101, (20) 207205/1-4 (2008).
160. “Dilution effect in correlated electron systems with orbital degeneracy”, Takayoshi Tanaka
and Sumio Ishihara, Phys. Rev. B 79 (3), 035109/1-11 (2009).
161. “Spiral spin structures and origin of the magnetoelectric coupling in YMn2 O5 ”, J.-H. Kim,
S.-H. Lee, S. I. Park, M. Kenzelmann, A. B. Harris, J. Schefer, J.-H. Chung, C. F. Majkrzak,
M. Takeda, S. Wakimoto, S. Y. Park, S-W. Cheong, M. Matsuda, H. Kimura, Y. Noda, and
K. Kakurai, Phys. Rev. B 78 (24) 245115/1-10 (2008).
162. “Molecular Spin Resonance in the Geometrically Frustrated Magnet MgCr2 O4 by Inelastic
Neutron Scattering”, K. Tomiyasu, H. Suzuki, M. Toki, S. Itoh, M. Matsuura, N. Aso, and
K. Yamada: Physical Reveiew Letters, 101, 177401-177404 (2008).
163. “Electric polarization induced by a proper helical magnetic ordering in a delafossite multiferroic CuFe1−x Alx O2 ”, T. Nakajima, S. Mitsuda, S. Kanetsuki, K. Tanaka, K. Fujii, N.
Terada, M. Soda, M. Matsuura, and K. Hirota, Physical Review B, 77, 052401-052404 (2008).
164. “Correlation between Spin Helicity and an Electric Polarization Vector in Quantum-Spin
Chain Magnet LiCu2 O2 ”, S. Seki, Y. Yamasaki, M. Soda, M. Matsuura, K. Hirota, and Y.
Tokura, Physical Review Letters, 100 127201-127204 (2008).
165. “Monte Carlo Study of One-Dimensional Ising Models with Long-Range Interactions”, Yusuke
Tomita: J. Phys. Soc. Jpn. 78(1), 014002/1-7 (2009).
166. “Microstructures related to the ferroelectric properties in BiFeO3 -BaTiO3 ”, S. Kitagawa,
Y. Horibe, K. Yoshii, M. Suzuki, Y. Noguchi, S. Nishihara, Y. Hosokoshi and S. Mori:
Transactions of the Materials Research Society of Japan, Vol. 33, No.1, 27-30 (2008).
167. “Diluted effect on magnetic and dielectric propertiesin charge-ordered ferroelectric LuFe2 O4 ”,
Y.Matsuo, Y.Horibe, K.Yoshii, N.Ikeda, S.Mori: Transactions of the Materials Research
Society of Japan, Vol. 33, No.1, 31-34 (2008).
168. “Giant strain in lead-free (Bi0.5 Na0.5 )TiO3 based single crastals”, S. Teranishi, M. Suzuki,
Y. Noguchi, M. Miyayama, C. Moriyoshi, Y. Kuroiwa, K. Tawa and S. Mori: Applied Physics
Letters 92, 182905 1-3, (2008).
169. “Effect of Oxygen Vacancies on Chrage Ordered Structure in YFe2 O4 ”, S. Mori, S. Shinohara,
Y. Matsuo, K. Yoshii and N. Ikeda: Japanese Journal of Applied Physics, 47 (2008) pp. 75957598.
170. “Magnetic and Dielectric Properties of HoFe2 O4 and R1−x Rx Fe2 O4 ”, K. Yoshii, Y. Yoneda,
D. Maeda, T. Michiuchi, T. Komatsu, N. Ikeda, Y. Matsuo and S. Mori: Japanese Journal
of Applied Physics, 47 (2008) pp. 7599-7602.
171. “Local Structure of BiFeO3 -BaTiO3 Mixture”, Y. Yoneda, K.Yoshii, S. Kohara, S. Kitagawa,
and S. Mori: Japanese Journal of Applied Physics, 47 (2008) pp. 7590-7594
172. “Magnetic and dielectric properties of InFe2 O4 , InFeCuO4 and InGaCuO4 ”, K. Yoshi, N.
Ikeda, Y. Okajima, Y. Yoneda, Y. Matsuo, Y. Horibe and S. Mori: Inorganic Chemistry, 47,
6493-6501 (2008).
173. “Electronic Ferroelectricity from Charge Ordering in RFe2 O4 ”, N. Ikeda, Y. Matsuo, S. Mori
and K. Yoshii: IEEE transactions on ultrasonic, ferroelctrics and frequency control, 55, No.
5, 1043-1045 (2008).
174. “A Perovskite Containing Quadrivalent Iron as a Charge-Disproportionated Ferrimegnet”,
I.Yamada, K. Tanaka, N. Hayashi, S. Shinohara, M. Azuma, S. Mori, S. Muranaka, Y.
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Onoda: J. Phys. Soc. Jpn. 77(12), 12371/1-4 (2008).
お知らせ
◇ Joint European-Japanese Conference:Furstration in Condensed Matter
共催:特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」
ヨーロッパ ESF フラストレーション・ネットワーク
URL:http://frustration-euro-japan-2009.neel.cnrs.fr/
日時:2009 年 5 月 12 日—15 日(12 日は午前開始)
場所:Ecole Normale Supérieure de Lyon (ENL), amphitheatre
組織委員長:Peter Holdsworth(ENL),川村光(大阪大学理学研究科)
組織委員:P. Mendelse (Orsay), R. Moessner (Dresden), B. Canals (Greneble),
加倉井和久(日本原子力研究開発機構)
高木英典(理化学研究所・東京大学新領域創成科学研究科)
会議は領域外部の方々についてもオープンですので、奮って御参加ください。
参加登録・講演申し込みは、現在 WEB 上から受け付けております(登録料:140 euro)
。
申し込み締め切り期限は、3 月 16 日です。
◇ 班員の皆様が受賞等を受けられた場合には、領域ホームページ上で掲載させていた
だいております。
受賞の折には、関連情報を領域代表(kawamura @ ess.sci.osaka-u.ac.jp)と、
ホームページ担当(廣田先生:hirota @ ess.sci.osaka-u.ac.jp、松浦さん:mmatsuura
@ ess.sci.osaka-u.ac.jp) まで、メールでお寄せください。
アメリカの新しい大統領が誕生した翌日から,テネシー州
オークリッジ国立研究所(ORNL)に滞在しました.中性子散乱
実験のためです.300万もの群衆が集まるという予測のあったワ
シントンDC,その郊外の空港での乗り継ぎはうまくいくのか心
配でしたが,実際はスムーズにいきました.ただし,オバマグッ
ズ(Tシャツ,帽子)を身につけた人を多く見ました.私もオバマ
キーホルダーを大学のお土産に大量購入しました.
圧力下の非弾性散乱実験は,バックグラウンドが1分
間に2カウントという厳しいものでした.そのため割と時間
に余裕があり,ORNLやテネシー大の先生にあう機会に
恵まれました.ほぼ全ての人がオバマ氏によせる期待を
口にしていました.テネシー大の江上先生によると,「前
大統領は,忠誠を誓うかどうかが全てで,そこには議論の
余地はなかった.この国は良い意味でも悪い意味でも劇
的に変わるので,科学者の研究環境は今後ずっとよくな
るでしょう」とのことです.
今回,Jaime Hernandez-Bacaさんに実験を手伝ってい
ただきましたが,突然,「京都は大阪に近いのか?」と聞
かれました.始めは何故そんなことを聞かれるのかわから
なかったのですが,昨年,大阪にて川村代表と20年以上
振りの再会を果たされたそうです.お二人に接点があると
は意外でした.当時,JaimeさんがORNLのポスドクのころ,
同時期にポスドクだったBruce Gaulin(現McMaster大)さ
4年前,2歳の息子が作った初めての三角
形.クレヨンをつかって一個できたときとても
喜んでいたのが印象的.次に目をやったとき
には,あっという間に畳の上が三角だらけに.
んが,Fisher研に滞在中の川村代表をORNLに招待されたとのことです.energeticで
enthusiasticなところは20年前も今も全く変わらないそうです.巻頭言では,「ホロ苦い思い出」と
控えめに述べておられますが,きっとアメリカで圧倒的な存在感を発揮されたに違いないと確
信しています.(ただし,Jaimeさん,Bruceさんはそれぞれペルー人,カナダ人です).
陰山 洋
特定領域研究「フラストレーションが創る新しい物性」
ニュースレター Vol.5
2009年3月発行
発行者
川村 光(大阪大学 大学院理学研究科)
編集担当 有馬 孝尚(東北大学 多元物質科学研究所)
陰山 洋(京都大学 大学院理学研究科)
編集協力 宮嵜 史枝(大阪大学 大学院理学研究科)