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スピンホール効果
栗原研究室 1G01K055-6
成瀬 徳和
1.はじめに
2次元の半導体内(GaAs等)では電子はスピン軌道相互作用が働く
SIAによる寄与(Structure Inversion Asymmetry) →Rashba項
BIAによる寄与(Bulk Inversion Asymmetry) →Dresselhaus項
電流のと同じくSO相互作用があるときは、電場によってスピンが流れる。
=1
s
J
(
r
)
=
{σ Z (r − ra ), v(r − ra )}
スピンカレント密度は電流と同じように
∑
22 a
と定義される
そしてスピンカレントコンダクティビティは
Σ ij = J is / E j
Clean Limitにおいて Rashbaモデルでのコンダクティビティはe/8πの大きさである。
(J.Sinova et al PRL.92,126603(2004))
2.目的
RashbaとDresselhaus項が両方存在するときのコンダクティビティを
線形応答の公式で求める。また不純物などの緩和時間などを考慮する。
e/8πとどのように関わるか考えたい
3.モデル
H = H 0 + H R + H D + H ' (t )
H 0 = = k / 2m − µ
2
2
H R = λ (σ k y − σ k x )
(Rashba項)・・・SIAによる項
H D = β (σ k x − σ k y )
(Dresselhaus項)・・・BIAによる項
x
x
y
y
H ' (t ) = −1 / cj⋅ Α(t )
(外場)
ic
iqr − iΩ t
A = Ee
Ω
・外場はxy面内に電場がかかっているとき
・RashbaとDresselhaus項はオーダーが等しい
j = −ev
ここで
1 ∂H =k
v=
=
+ xˆ ( βσ x − λσ y ) + yˆ (λσ x − βσ y )
= ∂k
m
カレント密度のフーリエ成分
電流
so
j = jkin + jso
+
j
x
y
=k +
これはSO 項のないときの電流と同じ
j ( q ) = −e∑
(ak −↑ ak +↑ + ak+−↓ ak +↓ )
スピンカレントには寄与しないことがわかる
m
k
−e
+
+
ˆ
(
)
((
)
(
)
jso
x
λ
β
λ
β
q
=
i
+
a
a
+
−
i
+
a
a )
∑
x
k −↑ k +↓
k −↓ k +↑
= k
k± ≡ k ± q / 2
−e
+
+
so
((λ + i β )ak −↑ ak +↓ + (λ − i β )ak −↓ ak +↑ )
j y (q ) = yˆ
∑
= k
kin
スピンカレント密度
= =k z +
J (q ) = ∑ σ αα a p −α a p +α
2 k m
s
線形応答の式を使ってspin conductivityは
R
ij
s
ij
i
j
Σ (q, Ω) = J / E = i
∞
χ (q, Ω)
Ω
[
]
i
R
iΩ(t −t ')
s
j
χij (q, Ω) = −
dte
θ
(
t
−
t
'
)
J
(
q
,
t
),
j
(q, t ' )
i
∫
A= −∞
ハミルトニアンを電子の演算子で表すと
H = H 0 + V so
=2k 2
H0 = ∑
− µ = ∑ ε k (ak+↑ ak ↑ + ak+↓ ak ↓ )
2m
V so = ∑ (λ k y + β k x )σ γδx ak+γ akδ − (λ k x + β k y )σ γδy ak+γ akδ )
= ∑ (λ k y + β k x )(ak+↑ ak ↓ + ak+↓ ak ↑ ) + i (λ k x + β k y )(ak+↑ ak ↓ − ak+↓ ak ↑ )
電子の運動方程式は
∂akγ
1
1
= − ⎡⎣ a k γ , H ⎤⎦ = − H γδ ( p ) a k δ
∂τ
=
=
ε
ε
εF
+
-
k
k
これを対角化すると
0 ⎞⎛ cp+ ⎞
∂ ⎛ cp+ ⎞ −1⎛ε p + V
⎟⎜ ⎟
⎜ ⎟ = ⎜⎜
ε p − V ⎟⎠⎝ cp− ⎠
∂τ ⎝ cp− ⎠ = ⎝ 0
添え字の±はバンドの添え字で表せる
+、-2つのエネルギーバンド
ε pα = ε p ± V
V = p λ2 + β 2 + 2λβ sin 2φ ≡ pf (φ )
δ pp 'δ αβ
グリーン関数は g αβ ( p , p ' , iω ) =
(不純物散乱を考慮してΣを入れた)
i ω − ε α − Σ (i ω )
(α = ± )
0
↑↓の表示から±表示へと演算子を書き直すと
対角化した後の応答関数 (q → 0)
χ
R
xx
(Ω ) = − χ
R
yy
(Ω ) = i / A ∑ k x k y e
k
χ
R
yx
λ
− β 2
π
k yk ye
2m Vk
(Ω ) = i / A ∑
p
χ
R
xy
(Ω ) = − i / A ∑ k x k xe
p
2
λ2 − β
2m Vk
2
R
π
λ2 − β
2m Vk
2
π
(k , Ω )
R
(k , Ω , )
R
(k , Ω )
この式からλ=βのとき
コンダクティビティは0
スピンは流れない
π ( p, iΩ) = 1/ β ∑ {g +0 ( p, iω + iΩ) g −0 ( p, iω ) − g −0 ( p, iω + iΩ) g +0 ( p, iω )}
ω
Σ xx = −Σ yy
Σ xy = −Σ yx
がわかる
以下では不純物の効果は小さいとする(Born近似)
τは電子の緩和時間で、
SOエネルギー
=
フェルミエネルギー
d≡
= / 2τ
εF
直流 Ω → 0
<< 1
π ( k , Ω)
Ω
pF f (φ )
εF
を仮定する
→∫
≡ η << 1
(この条件は実験では成立している)
dε 1dε 2 nF (ε 1 ) − nF (ε 2 )
2
A↑ (ε 1 ) A↓ (ε 2 )
2
2
(2π )
(ε 1 − ε 2 )
A↑ (ε ) ≡
− 2(= / 2τ )
(ε − ε ↑ ) 2 + (= / 2τ ) 2
不純物の効果が十分小さく、デルタ関数のように扱い、
積分がフェルミエネルギー付近でのみ効くと考える
スペクトラル関数
τが大きくなるとδ関数に近づく
d
η
4.結果
⎛η λ = λ p F / ε F ⎞
⎟
⎜
⎜η = β p / ε ⎟
F
F ⎠
⎝ β
d≪η≪1についてSOの最低次までとると
Σ xx = − Σ yy
e
=
8π
Σ xy = − Σ yx =
Clean limit
e
8π
(
(
)
)
⎧ β /λ" λ2 > β 2
⎪
+ O (η 4 d )
(1 − d ) × ⎨
2
2
⎪⎩ − λ / β " β > λ
⎛ λ2 − β 2
η λ2 − η β2 2 ⎞
3
⎜ 2
⎟
−
+
+
(1
)
(
d
d
O
d)
η
2
⎜ λ −β
⎟
6π
⎝
⎠
(N.A.Sinitsyn et al,Phys. Rev.B70,081312による)
Σ xx = −Σ yy
e
=
8π
Σ xy = −Σ yx
e
=
8π
(
(
)
)
⎧ β /λ" λ2 > β 2
⎪
×⎨
2
2
⎪⎩ − λ / β " β > λ
λ2 − β 2
λ2 − β 2
まとめ
・スピンホールコンダクティビティはRashba、Dresselhaus項の
大きさが等しくなるところでe/8πから- e/8πへ階段関数のように
変化する。 ([2]N.A.Sinitsyn et al Phys. Lev. B.70,081312 (2004))
・不純物などの効果は階段関数の高さを低くする役割を果たしている。
不純物効果が大きくなるにつれてカレントは0になると思われる。
また階段を滑らかに崩すだろうと予想される。
・縦成分のコンダクティビティはλ=0、またはβ=0になるに従って
消失していく。([2]N.A.Sinitsyn et al Phys. Lev. B.70,081312 (2004))
課題
・今回の結果は既に文献に出ているので、もっと別の問題を調べたい。
・スピンの密度の空間的変化を扱いたい。
・η~dでの正確な振る舞いはどうか。
5.参考文献
[1]Jairo Sinova et al.Phys. Rev. Lett.92,126603 (2004)
[2]N.A.Sinitsyn et al Phys. Rev. B.70,081312 (2004)
スピンの向きが反転する理由は定性的に考えると
(+Y方向の運動量のスピンについて注目する)
Y
X
:スピンの向き(磁場の向きとみなせる)
電場のないときフェルミ面上でのスピンの向き
(片方のバンドを取り出したもの)
Rashbaが大きい
Dresselhauseが大きい
X軸方向へフェルミ面をシフトさせたとき
スピンの増加する方向はRashba、Dresselhausの大小関係で逆になる