i nnovation 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における DNAトポイソメラーゼ I インヒビター カンプトテシンの作用 Lonza Nottingham, Ltd. (Lonza 社) カ ン プト テ シ ン は 中 国 産 の 樹 木 で あ る カ ン レ ン ボ ク ■ 結果 (Camptotheca acuminate)から抽出される物質です。in 細胞膜に障害を受けた細胞から遊離するアデニル酸キナー vitro で濃度依存的にアポトーシスを誘導することが知られて ゼの測定は、細胞溶解を検出する信頼できる方法です。 おり、細胞死の誘導に一般的に利用されています。カンプトテ ToxiLight® BioAssay Kit を用いて測定した各サンプルの シンは、DNA 合成に必須な酵素 DNAトポイソメラーゼ I を阻 データを、ToxiLight® 100 % Lysis Reagent で調製した可 害し、細胞死を誘導します。近年、本物質の誘導体はさまざま 溶化物のデータと比較し、溶解%として示しました(図 1) 。 な癌に対する化学療法剤として期待され、研究されています。 データが示すように、この初代ヒト細胞における細胞溶解 のバックグラウンドレベルは約 27 %でした(培養細胞で ■ 方法 は、通常 5 ∼ 8 %)。カンプトテシン濃度が高いところで 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の培養は、hEGF(組 は、細胞死の著しい増加とともに細胞溶解の濃度依存的な 換えヒト上皮細胞成長因子) 、ヒドロコルチゾン、FBS(ウシ 増加が認められました。 胎児血清) 、VEGF(血管内皮細胞成長因子) 、hFGF-B(組換 細胞死が誘導されると、ATP レベルは劇的に減少します。 えヒト繊維芽細胞成長因子、塩基性) 、へパリン、R3-IGF-1 カンプトテシン各濃度で処理した細胞を ViaLight® Plus (インシュリン様成長因子) 、アスコルビン酸、GA-1000(ゲ BioAssay Kit でアッセイし、各ウェルの ATP レベルを細 ンタマイシン、アンホテリシン-B)を加えた内皮細胞基本 胞生存率マーカーとして評価しました(図 2) 。データが示 培地-2(EBM®-2)を用いて、37 ℃、5 %(v/v)CO2 の条件下 すように、薬剤濃度依存的に ATP レベルが低下しました。 で行った。 図 1 と図 2 の結果を重ねあわせて見ると、カンプトテシン 5 まず、10 cells/ml 濃度の細胞を 96 ウェル組織培養プレー 濃度は細胞の生存率に影響を与えるものの細胞溶解を誘 トおよびチャンバースライドに播種し、一晩培養後、 導するわけではないことがわかります(図 3) 。薬剤濃度が 0 ∼ 5,000 nM の濃度に調製したカンプトテシン(メルク 低いところでは、ATP レベルの減少が示すように実際にア 社(Calbiochem))を添加し、37 ℃、5 %(v/v)CO2 で 24 ポトーシスを起こしていると考えられますが、細胞膜はま 時間培養した。 だインタクトな状態を保っており、アデニル酸キナーゼは 次に、細胞膜障害に伴って遊離するアデニル酸キナーゼを 細胞内に保持されたままです。 ® ToxiLight BioAssay Kit を用いて測定するため、各ウェル カンプトテシン各濃度で処理したチャンバー内の培養細 (100 % lysis control を含む)から 20 µl ずつサンプリング 胞を、2 種類の蛍光色素を用いて細胞の生死を調べる し、新しいルミノメータープレートに移した。ただちに、 LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit を使って評価 100 µlの AKDR(Adenylate Kinase Detection Reagent)を各ウ しました。生細胞は、無蛍光 Calcein AM を強い緑の蛍光 ェルに加え、室温で 5 分保温した後、Berthold Orion ル を発する Calcein に変換するエステラーゼを有しています。 ミノメーターで各ウェルの発光を測定した(1 秒) 。残りの 一方、EthD-1(Ethidium homodimer-a)は、細胞膜障害を サンプルは ViaLight® Plus BioAssay Kit での ATP レベル 受けた細胞に入り込み赤い蛍光を発します(図 4) 。 の測定に使用した。50 µlの Cell Lysis Reagent を各ウェルに 加え、室温で 10 分間保温した。さらに 100 µl の AMR Plus ■ 考察 (ATP Monitoring Reagent Plus)を各ウェルに加えシグナ 以上の結果から、カンプトテシンは正常ヒト臍帯静脈内皮 ルを安定させるために 2 分間保温後、Victor 2 ルミノメー 細胞に対し、濃度依存的に細胞死を誘導することが明らか ターで各ウェルを測定した(1 秒) 。 になりました。ToxiLight® BioAssay Kit と ViaLight® Plus チャンバースライドから培地を取り除き、新しく調製した BioAssay Kit とのバイオルミネッセンス法の組み合わせ ® LIVE / DEAD 染色液(2 µM Calcein AM、4 µM EthD-1 を含 により、1 つのサンプルに対してアデニル酸キナーゼレベ む PBS)を加えた後、室温で 30 分間保温後、蛍光顕微鏡 ルと ATP レベルの評価が可能であり、また、細胞に対する で観察した。 薬剤の効果を蛍光顕微鏡画像としてとらえることもできま した。今回、低濃度のカンプトテシンは細胞の ATP レベ ルに著しい影響を与えましたが、アデニル酸キナーゼ活性 にはあまり影響しませんでした。このことは、細胞は細胞 38 ● BIO VIEW No.55 i nnovation 60000 は、LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit を用い 50000 ることにより蛍光顕微鏡で視覚化できました。 80 25000 20000 40000 15000 30000 10000 20000 70 % lysis 30000 ViaLight® Plus ToxiLight® 60 10000 50 0 5000 0 40 30 TL RLUs 70000 ていなかったことを示しています。このような細胞の状態 VL RLUs 死に向かってはいたが細胞膜に障害が出る段階には至っ 50 100 250 500 1000 Camptothecin(nM) 2000 5000 0 図 3 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞におけるカンプトテシン濃度の影 響(図 1、図 2 より) 20 10 0 0 50 100 250 500 1000 Camptothecin(nM) 2000 5000 図 1 カンプトテシン各濃度で 24 時間処理した正常ヒト臍帯静脈 内皮細胞の溶解率 ToxiLight® BioAssay Kit および ViaLight® Plus BioAssay Kit での結果を比 較。ViaLight® Plus アッセイで得られた ATP レベル(VL RLUs)は カンプトテ シン濃度依存的に減少する。一方、低濃度のカンプトテシンで細胞から放 出されたアデニル酸キナーゼ(AK、TL RLUs)は、高濃度のカンプトテシン で劇的に増加する AK に比べて相対的に低く、濃度依存的ではない。 ToxiLight® BioAssay Kit の説明書に従ってアッセイを行った。結果は 100 % 溶解サンプルをコントロールとした溶解%として算出した。データは別々 に行った 3 回の実験の平均値を示す(各濃度 6 連で実施) 。 A B C D 80000 70000 Green 60000 RLUs 50000 40000 30000 20000 Red 10000 0 0 50 500 100 250 Camptothecin(nM) 1000 2000 5000 図 2 カンプトテシン各濃度で処理した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞 の ATP レベル ViaLight® Plus BioAssay Kit の説明書に従って ATP レベルを測定した。 データは別々に行った 3 回の実験の平均値を示す(各濃度 6 連で実施) 。 図 4 各濃度のカンプトテシンで処理した正常ヒト臍帯静脈内皮細 胞の生死判別染色 カンプトテシン濃度: A;0 nM、B;500 nM、C;1,000 nM、D;5,000 nM 上段:Calcein 染色、下段:EthD-1 染色 緑色蛍光を発する生細胞は、カンプトテシン濃度が上がるにつれ減少して いる。逆に下段では、薬剤濃度が上がると、赤色蛍光を発する細胞膜障害 を受けた細胞が増加している。 ■ 製品一覧 製品名 製品コード 細胞・培地 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC) CC-2517 正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(プールド) (HUVEC pooled) CC-2519 内皮細胞培地キット-2(2 % FBS) (EGMTM-2 BulletKit®) CC-3162 内皮細胞基本培地-2(無血清) (EBM®-2) CC-3156 内皮細胞添加因子セット-2(EGMTM-2 SingleQuots®) CC-4176 損傷した細胞から遊離するアデニル酸キナーゼの定量に LT07-217 ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit LT17-217 ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-117 ToxiLight® 100 % Lysis Reagent Set LT07-517 細胞内 ATP の検出に ViaLight® Plus Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-221 LT17-221 ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-117 ViaLight® HS Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-211 ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-111 ToxiLight® Non-Destructive Cytotoxicity BioAssay Kit LT07-311 細胞染色用蛍光標識試薬 LIVE/DEAD® Viability/Cytotoxicity Assay Kit PA-3016 (TaKaRa Code) 容量 C2517 C2519 B3162 B3156 B4176 1 1 1 500 1 FL085 FL086 PA000 FL083 500 500 with 10 FL091 FL093 PA000 FL089 FL088 FL087 PA016 価格 Vial Vial Kit ml Set ¥50,000 ¥38,000 ¥20,000 ¥17,000 ¥17,000 tests tests plates ml ¥39,300 ¥82,500 ¥44,200 500 tests 500 tests with plates ¥35,900 ¥82,500 ¥42,200 500 tests 1,000 tests 10,000 tests 1 Kit ¥20,600 ¥37,300 ¥64,900 ¥480,000 ¥60,000 *上記は Lonza 社の製品です。 BIO VIEW No.55 ● 39
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