1 ICTの活⽤ 〜実物投影機〜 北海道⽴教育研究所附属情報処理教育センター http://www.ipec.hokkaido-c.ed.jp/ ICTの活⽤ ○ICTは教科、授業の⽬標を達成させるための道具の⼀つ ICTは、あくまでも教科、授業において、その⽬標を達成させるための道具の⼀つでしかありません。 授業においては、教師によるしっかりとした授業設計を⾏った上で、授業を円滑に進めたり、効果的に 展開したりするためにICTを活⽤することが⼤切です。 ○ICTそのもので、学⼒を向上させることはない ICTは、教師が「⼤きく⾒せたい」「⼦どものイメージを広げさせたい」 「教師による説明や指⽰の時間を短縮させて、⼦どもの活動の時間を多くとり たい」などといった、教師の思いを実現させてくれる道具の⼀つです。 しっかりとした授業設計、学習指導がなされ、その上でICTを効果的に活 ⽤することにより、⼦どもたちに「説明がわかった」「興味・関⼼が⾼まった」 「⾃分の考えが深まった」などと実感させた時に、⼦どもたちの持っている⼒ を伸ばすことができるのです。 単にICTを使っただけでは、学⼒は伸びません。教師の指導⼒の中に組み 込まれることによって、⼦どもたちの学⼒向上につながっていくものです。 2 ICTの活⽤ 3 ○まずはICTを活⽤し、拡⼤投影 ICTで⼤きく投影することは、教師の「発問・指⽰・説明・ノート指導 ・発表・板書」等の教授⾏為を⽀援するツールになります。 しかし、単に⼤きく投影すればよいというわけでなく、「何を」「どう」 映し、「どう話す」のかが重要となってきます。ICT活⽤を含めた、教材 研究が⼤切になってきます。 ここで取り上げる「実物投影機」は、プロジェクタや⼤型ディスプレイと接続し て、簡単に拡⼤投影できるICT機器の⼀つです。 本資料を参考に、各学校において、「実物投影機」の有効活⽤を図っていただけ ればと思います。 実物投影機の活⽤ 4 ⼤きく投影し、視覚的情報を共有!興味・関⼼が⾼まり、児童⽣徒の視線が注⽬! 「ここを⾒て!」 実物投影機を活⽤し、教科書の⽂字、絵、図、表などを教室前⽅に拡⼤提⽰することにより、⼦どもた ちの顔が上がり、視線が集中します。 また、教師が説明する際に、⾔葉にして表現しづらかったこと、 指⽰に時間がかかっていたことなどが、実物投影機で説明したいも のを焦点化し、⼤きく投影することで、「ここを⾒て」という⼀⾔ で、視覚的情報とともに伝えやすくなり、解決されることがありま す。 教師だけが活⽤するわけではありません。⼦どもたちがお互いの ノートに書いてある考えを⼤きく提⽰、共有することもできます。 ⼦どもたちにとって、「わかる」「できる」授業の実現として、 ICT活⽤のはじめの⼀歩として、実物投影機を授業に活⽤してい ただければと思います。 実物投影機の活⽤ 5 実物を!⼿元を!操作を!必要な箇所を!…⼤きく投影!! ⼤きく投影されたものを指し⽰しながら説明! 基礎・基本の定着のために! 児童⽣徒の交流に! 児童⽣徒と同じ教材・教具を提⽰し、共有! 例えば… ・ノート → ⼀度ノートに書いたものを⿊板に書かずとも、⼤きく 投影して交流! 例えば… ・教科書、地図帳、ドリル、ワークシートなどの⼀部を拡 ⼤提⽰(教科全般) ・鉛筆、筆の持ち⽅(国語、教科全般) ・原稿⽤紙やノートの書き⽅、使い⽅(国語、教科全般) ・辞書や辞典の⾒⽅、引き⽅(国語、教科全般) ・分度器、コンパス、定規などの操作(算数・数学) ・作図(算数・数学、図⼯、美術、技術・家庭など) ・ミシンの使い⽅、縫い物、針、包丁などの使い⽅(家庭) ・楽器の奏法(⾳楽) ・理科で使⽤する⽤具操作、実験における⼿順や⽅法(理 科) ・カッターナイフ、彫刻⼑などの使い⽅(図⼯、美術など) …など みんなに⾒られることから、丁寧にノート作りをしよ うという意識が⽣まれる!(ノートの⾒本も知ること ができる!) ⾃分のノートを⾒ながらの説明のため、表現を⼯夫し ようという意識が⽣まれる! ・作品 → ⾃分が⼯夫したところを⼤きく拡⼤して説明!(表現 の⼯夫) …など 実物投影機の活⽤ 実際の授業における例として… 学習の流れ 活⽤⽬的例 学習活⽤例として… 導 ⼊ 想起 前時の学習内容や写真などを拡⼤提⽰し、前時を想起する。 動機付け 絵、図、表、⽂字などを拡⼤提⽰し、他の⼦どもの気付きや⾒⽅などを発表し、 全員で共有する。 教科書やワークシートの⼀部などを拡⼤提⽰し、今から学習することを共有す る。 課題提⽰ 展 開 説明・指⽰ 絵、図、表、⽂字、教具の操作、⼿元の操作及び作業、ワークシートなどを拡 ⼤提⽰し、細かな説明や指⽰を加え、今からおこなうことの共通理解を図る。 交流 ⼦どもの考えが書かれたノートやワークシートなどを拡⼤提⽰し、交流する。 ⽐較 スクリーンに写真やノートなどを並べて⽐較し、様⼦や考えの違いに気付く。 理解の深化 スクリーンに教科書の⼀部、教材、教具などを拡⼤提⽰し、そこに書き込みな がら説明をする。 終 末 振り返り (まとめ) 操作、⼿順、基礎・基本事項などの再確認をする。 教科書、ワークシートなどを拡⼤提⽰し、学習を振り返る。 6 実物投影機の活⽤ 7 「何を」「どこを」「どう」映し、「どう」話すのか 実物投影機で映し出す際に、単に投影すればよいというわけではありません。映し出す「もの」、その 映し出した「場所」 、カメラの⾓度、そして、教師が発する⾔葉や指し⽰す箇所によって、⾒ている側の ⼦どもたちの印象や受け⽌め⽅が変わってきます。 例えば、単に教科書を投影し、「ここを⾒て!」と教師が発しても、⼦どもたちは「どこを⾒るの?」 となってしまいます。⾒る場所をクローズアップし、指や⾔葉で具体的に指し⽰すことによって、⾒てい る側の理解を得られることになります。 ここを⾒て! …?どこ? 左の画像で、「ここを⾒ て!」だけでは、仮に指を 指して発話したとしても、 余計な情報が多すぎます。 単にスクリーンに投影し、 指⽰・説明があいまいだと ⼦どもたちが混乱する結果 となります。 「今から○ページの上の段△⾏⽬を読 んでもらいます。」「スクリーンを⾒て、 ここから(※その箇所に指で指し⽰しな がら)⼀緒に読みましょう。」「この⾔ 葉の意味は…」などといった教師側のね らいに沿った具体的な指⽰・説明があり、 その指⽰・説明に基づく画像の箇所がク ローズアップされれば、余計な情報が少なくなり、⾒ている側の理解も進むことになります。 読んだり、説明したりしたい箇所以外 に、情報がある場合は、紙などで必要箇 所以外を隠すと、より情報が絞られてよ いです。 ※本⽂中写真 ・「平成25年度 新しい先⽣のために 学校教育の⼿引」(平成25年4⽉ 北海道教育委員会)P.91引⽤ 実物投影機の活⽤ 書き込む 8 隠す 実物投影機を活⽤するに当たって、単に映し出すだけでなく、⼯夫⼀つで書き 込むこともできます。 クリアーファイル 映し出す教科書や地図帳、ノートなどに、透明クリアファイルや透明シートを 被せることによって、書き込むことが可能となります。 書き込む際は、⽔性のボールペンや蛍光ペンなどを使⽤します。書き込んだ線 や⽂字は、ティッシュで簡単に拭き取ることができます。 また、知識を確かめたい、余計な情報を隠し たいなどという時に、付箋紙や紙などで⽂字を 隠し、クリアファイルを被せることにより、紙 の浮きを押さえてから映し出すことも考えられ ます。 ※本⽂中写真 ・「平成25年度 新しい先⽣のために 学校教育の⼿引」(平成25年4⽉ 北海道教育委員会)P.91〜92引⽤ 実物投影機の活⽤ 「静⽌物」だけでなく、「動き」や「場⾯」も投影 実物投影機は、静⽌物を投影するだけでなく、「動き」や「場⾯」を投影することもできま す。 「動き」では、例えば、筆運び、楽器の奏法、コンパスや定規の使い⽅、カッターナイフ、 彫刻⼑、はさみなどの使い⽅などを投影するということが考えられます。ゆっくり動きを⾒せ、 何に注⽬するのか、説明を加えながら⾒せることにより、⼦どもたちの理解を図ることができ ます。 「場⾯」では、例えば、鉛筆や筆の持ち⽅、給⾷配膳、机上整理⽅法、道具箱の整理 ⽅法、模範指導、学習における姿勢、明⽇の予定などを投影することが考えられます。 SDカードなどのメモリカードに記録できる機能が備わった実物投影機であれば、デ ジタルカメラやビデオカメラと同じような機能を持つことになり、その時の「動き」や 「場⾯」を記録しておくことができます。 9 まとめ 10 そこにある実物や事象を⼤きく投影できる実物投影機 実物投影機を活⽤して、⼤きく投影することにより、⼦どもたちは正⾯を向き、視覚的情報 と教師によるわかりやすい⾔葉により、指⽰や説明が通りやすくなります。 また、効率化という⾯で⾔えば、⼦どもに発表させる際に、ノートに書いた ものをさらに⿊板に書かせるのでなく、ノートそのものを投影したり、教科書 の問題をそのまま⿊板に書くのであれば、その問題を投影するとどうでしょう か。⽣み出された時間を、⼀問でも多く問題を解かせたり、漢字や⽤語を覚え たり、⼦どもが考えたり、話し合ったりする活動時間や、知識の確認をするな どの時間に充てることによって、⼦どもたちにとって有効な学習時間となりま す。 実物投影機などのICT機器を有効に活⽤することにより、⼦どもたちの⼒を伸ばすことに つながり、さらに、このような機器を活⽤して、⼦どもたちに発表させる場⾯を多く取り⼊れ、 焦点を絞った発表の⽅法について指導し、他者の発表を⾒聞きする中で、発表のために表現を ⼯夫し始め、説明する⼒が付いてくるものと考えます。 まとめ ICT機器の積極的活⽤を! ICT機器の中でも、実物投影機は、複雑な操作を必要とはしません。誰でも簡単に操作が できるものです。 何よりも実物投影機は、⼦どもたちの表情を⾒ながら操作できます。⼦どもたちの表情の変 化を⾒ながら指導できるので、⼦どもたちのつまずきにも即座に対応ができます。 せっかく機器が導⼊されているのに活⽤しないでは、何の意味もありません。授業の中に取 り⼊れ、活⽤してみることが⼤切です。 導⼊した際には、授業、教科の⽬標を達成させるために、 そして、何よりも⼦どもたちのために、機器の特性をとらえ た上で、最⼤限それを⽣かして授業を進めていただければと 思います。 11
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