報告書

平成 26・27 年度
文部科学省
支援機器等教材を活用した指導方法充実事業
報告書
大阪市教育委員会
指導部インクルーシブ教育推進担当
はじめに
「発達障害者支援法」が施行され 11 年、特別支援教育が「学校教育法」に位置づけられ
9 年が経過しようとしています。この間、国におきましては、「障害者基本法」の改正(平
成 23 年 8 月)、「障害者差別解消法」の成立(平成 25 年 6 月)等、法の整備が進められ、
平成 26 年 2 月 19 日に「障害者の権利に関する条約」が発効されました。平成 28 年 4 月に
は「障害者差別解消法」が施行され、公的機関においては「合理的配慮」の提供が義務化
されることになりました。
教育分野につきましては、中央教育審議会初等中等教育分科会より「共生社会の形成に
向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」
(平成 24 年
7月)が出されました。ここで示された「障がいのある子どもと障がいのない子どもがで
きるだけ共に学ぶことを目指すべきである」とする基本的な方向性は、本市が長きにわた
り推進してきた「共に学び、共に育ち、共に生きる」という基本方針と同方向であり、今
後、障がいのある児童生徒への支援については、個々の障がいの状況や教育的ニーズ等に
応じて決定される「合理的配慮」の観点を踏まえ、その取組の深化・充実が一層求められ
てまいります。
本市では、全ての学校園において、校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーター
の指名、個別の教育支援計画及び個別の指導計画の作成が 100%の状況となっており、特別
支援教育体制整備が進んできている状況です。
障がいのある児童生徒の学習については、これまでも教員等の創意工夫により障がいの
ある児童生徒のための教材が作成されてまいりました。それらは、児童生徒個々の特性や
障がいの状態等に応じた適切な指導ができるよう考慮され、活用されてきたところです。
文部科学省においては、平成 25 年 5 月に初等中等教育局長のもとに「障害のある児童
生徒の教材の充実に関する検討会」が設置され、障がいのある児童生徒の教材の充実に関
する方策についての検討を行い、平成 25 年 8 月、
「障害のある児童生徒の教材の充実につ
いて(報告)
」を取りまとめられました。これを受けて、平成 26 年度より学校において適
切な支援機器等教材を用いた指導方法に関する実践研究を行う「学習上の支援機器等教材
活用促進事業」が予算化されました。今後は合理的配慮の一環として ICT 等を活用した支
援機器等教材の活用を積極的に促し、効果的な学習支援につなげていくことが求められて
います。
本市では、平成 26 年度、平成 27 年度の 2 年間、文部科学省より「学習上の支援機器等
教材活用促進事業」の「支援機器等教材を活用した指導方法充実事業」を受嘱し、本市が
設置する特別支援学校を中心に研究を行ってまいりました。光陽特別支援学校を拠点校と
し、タブレット端末を活用して、特別支援学校のそれぞれの障がい種にあわせた授業実践
を進めるとともに、多くの教員がタブレット端末を利用し、学習活動に活用できる一助と
なるようリーフレットの刊行や光陽特別支援学校のホームページに実践事例を掲載し、本
市のみならず、その成果を広めています。
本冊子におきましては、2 年間の本事業に係る取組状況、教員アンケートの結果、各特別
支援学校の取組結果を示すとともに、課題等をまとめさせていただきました。本冊子が、
障がいのある全ての児童生徒の教育の充実と推進に活用されることを願っております。
平成 28 年 3 月 大阪市教育委員会事務局
指導部 インクルーシブ教育推進室長
目
次
はじめに
目次
第1章
平成 26 年度の取組について
・・・・・・・・・
1
第2章
平成 27 年度の取組について
・・・・・・・・・
8
第3章 各特別支援学校の取組
1.大阪市立視覚特別支援学校(視覚)
・・・・・・・・・
2.大阪市立聴覚特別支援学校(聴覚)
・・・・・・・・・
3.大阪市立思斉特別支援学校(知的)
・・・・・・・・・
4.大阪市立難波特別支援学校(知的)
・・・・・・・・・
5.大阪市立生野特別支援学校(知的)
・・・・・・・・・
6.大阪市立住之江特別支援学校(知的)
・・・・・・・・・
7.大阪市立西淀川特別支援学校(肢体不自由) ・・・・・・・・・
8.大阪市立平野特別支援学校(肢体不自由)
・・・・・・・・・
9.大阪市立東住吉特別支援学校(肢体不自由・知的)
・・・・・
10.大阪市立東淀川特別支援学校(知的)
・・・・・・・・・
11.大阪市立光陽特別支援学校(肢体不自由・病弱)
・・・・・
14
15
18
19
21
24
26
27
29
33
34
第4章
教職員への質問紙調査について
・・・・・・・・・
39
第5章
教職員へのインタビュー調査について
・・・・・・・・・
49
第6章
まとめ
・・・・・・・・・
53
・・・・・・・・・
57
資
料
①『ワクワク ICT タブレットパソコンを活用した実践例』
②『ワクワク ICT2 初級者(はじめて先生)用タブレット端末入門』
③実践事例 (光陽特別支援学校ホームページ参照)
④アプリ一覧 iPad 編
⑤アプリ一覧 windows タブレット 編
第1章
1
平成 26 年度の取組について
研究概要
(1)研究テーマ
支援機器等を活用した具体的指導内容・指導方法の事例収集及び教材データベースの作成、特
別支援学校のセンター機能を活用した小・中学校の特別支援学級での支援機器等活用した特別支
援教育に関する研究
(2)研究の概要
平成26年度、大阪市立特別支援学校10校にタブレット端末を拠点校から貸し出し、各障
がい種別校ごとに、タブレット端末を中心としたICT機器を活用した指導方法の研究を行っ
た。各特別支援学校に研究アドバイザーを派遣し、授業観察、研究協議、研修会等を各校
で実施した。指導方法充実検討会議を年間7回開催し、各校の実践を報告するとともに指
導方法の検討を行った。
(3)研究の成果及び課題
光陽特別支援学校病弱教育部門では、4病院
8病室を無料通話ソフトで結び、総合的
な学習の時間を活用した取組を行った。病室という環境の中で過ごしている児童生徒にと
って、同年代の児童生徒と話す機会となり、積極的に授業に臨むようになった。視覚特別
支援学校では、会議用アプリを使用し、手元にあるタブレット端末を活用し、弱視の程度
にあわせて、生徒がピンチアウトすることで文字や写真を拡大できるようにするなど、障
がい種ごとに実践を深めた。
研究成果については、平成26年12月に、大阪市学力向上コンフェロンス(対象:大阪市
立学校園長、教職員、PTA)にて、特別支援学校におけるICT機器活用(タブレット端末を
中心に)について報告した。また、各校の事例、80事例を各特別支援学校のHPにアップロ
ードした。平成27年4月にはICT機器活用の実践を簡潔にまとめたパンフレットを市立の全
校園へ配布した。
1
2.詳細報告
(1)目的・目標
光陽特別支援学校を拠点校として、市立特別支援学校 10 校の学習支援を行う教材や障
がい種や学習課題ごとの実践事例等のデータベースを作成するとともに、支援機器を利
用した合理的配慮に関する事例を収集し、その成果を公開する。
(2)児童生徒一人一人の障害の状態や特性等に応じた適切な支援機器等教材の選定方法
及び指導方法の工夫にいて
①平成 26 年度、本事業受嘱により、特別支援学校 10 校に iPad を拠点校(拠点校は 10
台)から4台(東住吉特別支援学校については知肢併置校であるので8台)ずつ貸し
出し、各障がい種でタブレット端末を中心とした ICT 機器を活用した指導方法の研究
を試行した。
②特別支援学校から ICT 担当者を選出し、10 校 12 名の教員が指導方法充実検討会議に参
加した。
③指導方法充実検討会議は、平成 27 年3月までに、7回開催した。必要に応じて、NPO
法人 支援機器普及促進協会高松崇氏や兵庫教育大学大学院学校教育研究科小川修史
氏を招へいして研究に関するアドバイスを受けた。
④高松崇氏や小川修史氏については、アドバイザーとして各特別支援学校の実践を見学
いただくとともに、ICT 機器利用に関わるアドバイス、教員研修、保護者に対する研修
会を開催した。平成 27 年3月までに 14 回実施した。
⑤授業参観後、児童・生徒に応じた機器のフィッティングやアプリの紹介、使用方法に
ついて研修した。
⑥教育委員会指導主事が各特別支援学校を巡回し、各校の実践の進捗を確認するととも
に、研究の方向性に関するアドバイスを行った。
(3)児童生徒一人一人の障害の状態や特性等に応じた適切な支援機器等教材の作成、開
発の充実について
①光陽特別支援学校肢体不自由教育部門では、重力軽減装置を装着し立位の状態で OAK
を活用して、児童生徒が取り組みやすいゲームソフトを使用しながら体幹を整える活
動を行った。
②光陽特別支援学校肢体不自由教育部門では、重度重複の児童生徒に対して、光や音を
出すアプリを使用し、手指の動きに対して画面が反応するという因果関係理解を学習
する活動を行った。
③光陽特別支援学校病弱教育部門では、4病院 8病室を無料通話ソフトで結んで、総
合的な学習の時間を活用した取組を行った。病室という環境の中で過ごしている児童
生徒にとって、他病院に入院している同年代の児童生徒と話す良い機会となり、積極
的に授業に臨むようになった。
④西淀川特別支援学校では、肢体不自由により画面タッチの苦手な児童生徒に対し、各
種スイッチを使用してその操作性に関する記録を蓄積した。
⑤聴覚特別支援学校では、校内サーバーに教科ごとの教材を蓄積し、校内のアクセスポ
イントから、タブレット端末やパソコンに教材をダウンロードできるよう環境設定を
整備した。
⑥視覚特別支援学校では、会議用アプリを使用し、手元にあるタブレット端末を活用し、
弱視の程度にあわせて、生徒がピンチアウトすることで文字や写真を拡大できるよう
2
にした。
⑦東住吉特別支援学校肢体不自由教育部門では、訪問学級在籍の生徒宅と高等部の教室
を通信ソフトで結び、自立活動の学習を行った。
(4)地域の幼・小・中・高等学校等における障害のある児童生徒のための支援機器等教
材に関する指導助言及び成果普及の実施
①平成 26 年 12 月に、大阪市学力向上コンフェロンス(対象:大阪市立各学校園長、教
職員、PTA)にて、特別支援学校における ICT 機器活用(タブレット端末を中心に)に
ついて報告した。
②実践事例のデータベース化として、平成 27 年3月までに各特別支援学校がそれぞれの
ホームページに掲載するともに、光陽特別支援学校からすべての特別支援学校のホー
ムページにリンクを行った。平成 27 年4月には ICT 機器活用の実践を簡潔にまとめた
パンフレットを市立の全校園へ配布、障がいの幼児児童生徒への活用を広げる機会と
なった。
(光陽特別支援学校ホームページより)
(5)その他の取組内容
平成 26 年 10 月、市立特別支援学校 10 校の全教職員対象に、「ICT 機器の活用に関す
るアンケート」調査を実施した。詳細は4章に記述している。図 1-1 に示すように、「タ
ブレット端末を教育活動に活用したい」の質問に対して「たいへん思う」「そう思う」
と答えた割合が 20 代、30 代では 80%を超えているのに対し、50 代は 70%、60 代は 50%
と若年世代と比較し、いわゆるベテラン層の活用意識は低い結果となった。60 代を除く
各世代とも 70%以上がタブレット端末を活用したいと「思う」と答えていることから、
教員にも理解及び活用しやすい内容を選定し、ICT 機器活用を各校で広めていくよう心掛
けた。
3
たいへん
60代
1
思う
15
42
83
30代
72
131
20代
58
116
0%
図 1-1
3
104
57
40代
まったく
11
48
50代
思わない
20%
40%
60%
10
24
13
31
27
80%
年代別・「タブレット端末を教育活動に活用したい」
(6)実施内容の概念図
実施内容の概念図は次の図 1-2 のとおりである。
図 1-2 実施内容の概念図
4
11
3
100%
3.研究の方法
(1)支援機器等教材を活用した指導方法充実検討会議の設置
①構成
No.
1
2
3
4
所属・職名
NPO 法人 支援機器普及促進協会 高松 崇
兵庫教育大学大学院学校教育研究科 講師 小川修史
大阪市教育委員会 指導主事
大阪市立特別支援学校 ICT 担当者 12 名
②検討会議開催回数・検討内容
第1回検討会議 ・本事業の趣旨確認
・本事業の方向性について
・今後の予定
第2回検討会議 ・タブレット端末の設定研修 ・アンケート調査の依頼について
第3回検討会議 ・国立特別支援教育総合研究所研修会の報告
・連絡協議会の報告
・各校進捗状況の報告
・今後の予定
第4回検討会議 ・高松養護学校視察報告 ・教職員アンケート結果報告
・教員アンケート結果報告をうけて ・今後の取組について
第5回検討会議 ・パンフレット原稿について ・実践事例のまとめについて
第6回検討会議 ・パンフレット原稿について ・各校からの情報交換
第7回検討会議 ・今年度の反省
・来年度の予定
実施時期
平成 26 年 5 月 26 日
平成 26 年 5 月 26 日
平成 26 年 6 月 18 日
平成 26 年 7 月 23 日
平成 26 年 8 月 8 日
平成 26 年 8 月 18 日
平成 26 年 9 月 10 日
平成 26 年 9 月 20 日
平成 26 年 10 月 6 日
平成 26 年 10 月 9 日
平成 26 年 10 月 23 日
平成 26 年 10 月 29 日
平成 26 年 10 月 29 日
平成 26 年 11 月 11 日
平成 26 年 11 月 12 日
平成 26 年 11 月 13 日
平成 26 年 11 月 19 日
平成 26 年 11 月 27 日
平成 26 年 12 月 6 日
実施内容
高松、小川アドバイザー巡回指導(光陽特支)
第1回指導方法充実検討会議(光陽特支)
指導主事巡回指導(住之江特支)
第2回指導方法充実検討会議
指導主事巡回指導(西淀川特支)
支援機器等の活用のための研究協議会参加
第3回指導方法充実検討会議(光陽特支)
特殊教育学会参加
香川県立高松養護学校視察
指導主事巡回指導(東住吉特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(住之江特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(光陽特支)
第4回指導方法充実検討会議(光陽特支)
指導主事巡回指導(生野特支)
指導主事巡回指導(光陽特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(聴覚特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(西淀川特支)
指導主事巡回指導(思斉特支)
ATAC(京都)参加
5
平成 26 年 12 月 13 日
平成 26 年 12 月 17 日
平成 26 年 12 月 18 日
平成 27 年 1 月 22 日
平成 27 年 1 月 28 日
平成 27 年1月 30 日
平成 27 年 2 月 17 日
平成 27 年 2 月 18 日
平成 27 年 3 月 23 日
平成 27 年 3 月
大阪市学力向上コンフェロンスにおいて、ICT 機器活用に
ついて発表
第5回指導方法充実検討会議(光陽特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(生野特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(平野特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(東住吉特支)
第6回指導方法充実検討会議(光陽特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(難波特支)
高松アドバイザー・指導主事巡回指導(視覚特支)
第7回指導方法充実検討会議(光陽特支)
支援機器活用に関するリーフレット完成
WEB への実践事例のアップロード
(2)専門的な指導員(支援機器等教材アドバイザー)の配置
①支援機器等教材アドバイザー
・NPO 法人 支援機器普及促進協会 高松 崇
・兵庫教育大学大学院学校教育研究科 講師 小川修史
②本事業における活動内容
・ICT 機器活用に関する全般的アドバイス
・支援機器の作成・フィッティングアドバイス
・支援機器並びにアプリ、ソフトの情報提供
・本事業の研究方法、内容への助言
③教職員との連携に係る工夫
・各校の児童生徒の障がい状況等を考え、一斉研修、授業観察後の研修、フィッティン
グ等、個に応じたより具体的な支援がよいのかを事前に把握し、学校の実態に応じた
支援方法を工夫した。
・各校で ICT に機器活用に関する研修を教職員に呼びかけ、気軽に参加できるような体
制を工夫した。
・授業観察を行い、児童生徒の障がいの状況に応じた指導のアドバイスを行った。
・指導観察後、振り返り研修を行い、授業内容について意見交換を行い、具体的な方法
を研修した。
・各学校の障がい状況の実態に応じて初歩的な研修会を実施した。
(3)指定校における校内体制の整備
光陽特別支援学校では、肢体不自由教育部門、病弱教育部門共有の校務分掌に ICT 教
育部を立ち上げ、15 名の教員が ICT 機器の管理運用、研修企画、情報セキュリティの管
理、HP の管理・更新を実施した。検討会議にも、各校の担当者に加え、ICT 教育部のメ
ンバーも会議に出席しており、検討会議終了後、会議録を作成し各学校に発信し情報共
有を行った。
(4)関係機関、保護者等との連携
光陽特別支援学校では、ユニバーサルアクセス機能を搭載したタブレット端末のアク
6
シビリティを研究し、様々な障がいのある児童生徒の個々の実態に応じたコミュニケー
ション能力の育成をめざしている。その一環として、夏季休業中を利用して、親子体験
学習を開催した。身近なおもちゃが手を動かすことで動く、画面にタッチすることで動
物が出てくるなど児童生徒の「動かしたい」という意欲を引き出すツールとして紹介し
た。また、保護者対象にタブレット型パソコンの講習会を実施し、初歩的な操作から児
童生徒の自己決定につながる要素があることを教示した。
4.研究の成果
大阪市立特別支援学校 10 校で、各校の ICT 機器活用状況や教職員の意識なども含め意
見交換する中で、次のような実態が明らかになった。
・個としては活用しているが学校組織全体として活用している学校は数校であった。
・学校にタブレット端末を含め、ICT 機器が少ない状況であった。
・ほとんどの学校で校内のインターネット環境が整っていなかった。
・また、校長会を通じて今回の研究を報告し、各校での機器の整備について検討した。
検討会や各校での研修会を重ねた結果、次のような成果が表れた。
・各校で、タブレット端末に触れる教職員の数も増えた。
・校内でのシステム作りが共有され、良い実践例の取組を行う学校が出てきた。
・同じ障がい種の学校で担当者同士の意見交換が活発になった。
・各校で個人から組織で取組む意識が出てきた。
・担当者間での理解が広がり、各校の取組を発信する機会が増えた。
地域の学校園が障がいのある幼児児童生徒に対して、タブレット端末を学習支援ツー
ルとする支援相談を実施することが今後の課題である。また、アドバイザーからは、「タ
ブレット端末は利用したいが、利用していない」層(なんらかの苦手意識がある教職員)
に対する支援が、活用を促進するための鍵となるとアドバイスを受けた。
リーフレットの作成
平成 26 年 10 月、市立特別支援学校 10 校の全教職員対象に行った「ICT 機器活用に
活用に関するアンケート」調査結果より、特別支援学校に勤務する 8 割を超える教職員
が、「タブレット端末」を使用したいという回答を得た。自由記述の中では、「実践事例
と使用できる無料アプリの紹介がほしい」
「どのようなアプリがあるのかわからない。
『こ
んな使い方をしたい』と思ったときに調べるものがあるといいなと思う」などの意見が
あったので、平成 26 年度各特別支援学校で実際に児童生徒に行った実践研究の成果につ
いてとりまとめ、発達障がいも含めた視覚、聴覚、肢体不自由、知的障がい、病弱の障
がい種で活用できるよう、その使用方法を記したリーフレット(ワクワク ICT)を作成
した。
リーフレット(ワクワク ICT)については、資料に掲載している。
7
第2章
平成 27 年度の取組について
1.研究概要
(1)研究テーマ
支援機器等を活用した具体的指導内容・指導方法の事例収集と教材データベースの作成と特
別支援学校のセンター機能を活用した小・中学校の特別支援学級での支援機器等活用した特別
支援教育に関する研究
(2)研究の概要
大阪市特別支援学校11校にタブレット端末を拠点校から貸し出し、各障がい種でタブレット
端末を中心としたICT機器を活用した指導方法の研究を行った。特別支援学校に研究アドバイザ
ーを派遣し、授業観察、研究協議、研修会等を各校で実施した。指導方法充実検討会議を年間
7回開催し、各校の実践を報告するとともに検討を行った。小学校特別支援学級へICT機器活用
について、支援相談を実施した。
研究報告書、冊子(ワクワクICT2)を作成するとともに、特別支援学校での実践事例につい
ては、光陽特別支援学校ホームページに掲載し広く周知した。
(3)研究の成果及び課題
光陽特別支援学校を拠点校にICT担当者による指導方法充実検討会議を月1回程度開催した。
各特別支援学校はICT担当者を選出し、検討会議に出席し、情報交換、情報共有、研修等を行っ
た。本事業を受嘱するまでは、ICT機器を担当する校務分掌を設置している学校は3校程度であ
ったが、H27年度より、情報教育部や情報教育委員会、ICT担当チームなど校内における組織が
構築された。これによって、タブレット端末をはじめとするICT機器の管理や整備の充実に
向けて、校内で組織的な取組が進むようになった。
すべて特別支援学校において、タブレット端末の校内への導入やタブレット端末に関する専
門家アドバイザーによる教員研修会を開催した。教員アンケート調査においても、回答した教
員全体の85%が「タブレット端末を授業に活用したい」と回答しており、教員のICT機器を活用
したいという意識は大きく上昇した。
特別支援学校のセンター機能として要請のあった学校に対して、ICT機器の授業での活用方法
について相談支援を実施した。また、ICT巡回アドバイザーを小学校に派遣して、特別支援学級
の授業観察等を行い、利用可能なアプリ紹介や大型モニターを使用した提示方法などを特別支
援学級担当教員に助言した。
研究成果については、①研究報告集の作成、②冊子(ワクワクICT2)の作成、③光陽特別支
援学校のホームページに実践事例の掲載を行った。
8
2.詳細報告
(1)目的・目標
光陽特別支援学校を拠点校(事務局)として、大阪市内 11 校(平成 27 年度 4 月よ
り、東淀川特別支援学校が開校)の特別支援学校における、タブレット端末を中心と
する ICT 機器を活用した実践事例やタブレット端末の設定方法・使用方法を示し、デ
ータベースを作成するとともに、その成果を公開する。また、特別支援学校のセンタ
ー機能として、各校の ICT 担当者 14 名と教育委員会指導主事が、積極的に地域の小・
中学校の特別支援学級や通常学級での ICT 機器の導入や課題解決のために、「相談」
「情報提供」「研修」を行っていく。タブレット端末使用に係る冊子と研究成果報告
集を作成し、小・中学校等に広く周知する。
(2)児童生徒一人一人の障害の状態や特性等に応じた適切な支援機器等教材の選定方
法及び指導方法の工夫
①光陽特別支援学校本校にタブレット端末を計 10 台整備し、平成 26 年度購入分と合
わせ、小・中・高等部全教室で利用できる環境設定を行った。タブレット端末は、
病弱教育部門、肢体不自由教育部門をあわせて 22 台整備した。
②校内に ICT 教育部を設置し、ICT 機器管理のほか、授業でのタブレット端末の使い
方を研修会や個別相談を通して校内で情報共有した。
③車いす利用の児童生徒に対しては、ダブルクリップや補助具を活用し、児童生徒に
とって負担の少ない姿勢で長時間、タブレット端末が利用できるよう個別でフィッ
ティングを行った。
④光陽特別支援学校の病弱教育部門で、病院に入院した児童生徒の原籍校とネットで
結んだ共同学習を試行した。
⑤光陽特別支援学校の病弱教育部門の二つの分教室と肢体不自由教育部門の訪問学
級の児童生徒に対応するためにモバイルwifi を整備した。
⑥視覚特別支援学校では、音声検索機能を利用した PC トーカー、Netreader を活用
した授業実践を試みた。
⑦西淀川特別支援学校は、自立活動部を中心にアドバイザーと共に、肢体不自由のあ
る児童生徒に対して各種スイッチの活用とフィッティングについて個別対応を実
施した。
⑧聴覚特別支援学校では、聴覚障がい者用の総合アプリ「ことえら」を授業で活用し
た。中学部体育では、マット運動の様子を動画にとり、各自の動きの確認や評価資
料として活用した。また、運動会で披露するダンスの見本を動画に撮り、練習に活
用した。
⑨光陽特別支援学校の肢体不自由のある児童生徒が機能訓練を意欲的に取り組める
よう、キネクトとプロジェクターを活用し、スロープのある位置を通ると、音が鳴
ったり児童生徒の興味ある画面が現れたりする仕掛けを工夫し取り組んだ。
⑩思斉特別支援学校(知的障がい)では、平成 27 年度から、小学部の教育課程内の
パソコンクラブで iPad での学習を始めた。高等部で、パソコンクラブを新規に発
足させ、iPad を活用し、写真の整理と加工を学習した。
⑪生野特別支援学校(知的障がい)中学部の音楽の授業では、効果的に合唱できる指
導に取り組んだ。教員がカメラ機能を使用して動画を撮影し、撮影した生徒の合唱
シーンを生徒に見せることにより、“自分たちがどのように歌っているか”を確認
できた。
9
(3)児童生徒一人一人の障害の状態や特性等に応じた適切な支援機器等教材の作成、
開発の充実
①光陽特別支援学校の肢体不自由教育部門では、重力軽減装置を装着した状態で ICT
機器を活用して本人の興味関心を広げながら、体のバランスや動きの連動について
研究を進めた。
②光陽特別支援学校に2つある病弱教育部門の分教室と訪問学級、本校の児童生徒を
ネットで結んだ外国語活動、自立活動の授業を行い、集団を意識した活動を取り入
れた。また、退院後すぐには原籍校に通えない生徒の学習支援として遠隔授業にも
取り組んだ。
③言語や表情、しぐさでの意思表示が難しい重度重複障がいの児童生徒の授業への関
心を探るため、パルスオキシメーターと ipad をつなぎ、脈拍や血中酸素濃度で意
識の高低を探り、児童生徒の実態把握につなげる取組を行った。
④大阪市立総合医療センターでは、治療のため個室にいながら分教室での授業が受け
られるよう、分身ロボット(オリヒメ)を活用し授業を行った。
⑤大阪市立大学附属病院内での分教室では、隣接する大学の中庭を利用し、ドローン
(遠隔操縦無人機)を飛ばして地域の状況や植物の観察を行い、ipad にその情報
を取り込み授業に活用した。
(4)地域の幼・小・中・高等学校等における障害のある児童生徒のための支援機器等
教材に関する指導助言及び成果普及の実施
各特別支援学校から、特別支援学校のセンター機能の活用として要請のあった学校
園に対して、ICT 機器の授業での利用についての支援相談に出向いた。時には巡回ア
ドバイザーを派遣して、特別支援学級の授業を観察し、利用可能なアプリ紹介やデジ
タル教材作成に関する基礎知識の伝達、大型モニターを使用した提示など教具として
の活用法を紹介した。
大阪市学力向上コンフェロンスにおいて、小中学校等教員、PTA 関係者を対象に「障
がいのある児童生徒の学習への ICT 機器活用」に関して発表を行った。平成 28 年 3
月に、「ワクワク ICT2(初級者用タブレット端末入門)」と「支援機器等を活用し
た指導方法充実事業成果報告書」を発行し、大阪市内の全学校園に配布した。また、
光陽特別支援学校ホームページ上にデータベースを作成し、2 年間の授業実践を掲載
した。
(5)その他の取組内容
〇光陽特別支援学校
・平成 26 年度・平成 27 年度と夏
季休業を活用し「夏休み保護者・
児童生徒 ICT 機器体験会」を実施
した。ICT 機器(ipad、センサー、
スイッチ、電子黒板、プロジェク
ター等)を、保護者と一緒に、児
童生徒が実際に触れ、支援機器へ
の理解を深めることができた。
また、保護者、児童生徒、学校
教職員間でこれからの支援の在
り方を考える機会を設け、共に学
10
ぶ雰囲気の醸成を図ることができた。
・教職員の授業に役立つアプリ紹介等、授業づくりのサポートのための ICT 通信を
月 1 回発行した。
・教職員の ICT 機器に対する苦手意識を払拭するため、ICT 相談会で教職員のオー
ダーに応じたミニ研修を実施した。
・光陽特別支援学校に比較的近い場所にある小学校の特別支援学級に対して、巡回
アドバイザーと一緒に支援相談を実施し、肢体不自由児、知的障がいのある児童
に対するタブレット端末の活用方法についてアドバイスを行った。
(6)実施内容の概念図
3 研究の方法
(1)支援機器等教材を活用した指導方法充実検討会議の設置
①構成
No.
所属・職名
1
NPO 法人 支援機器普及促進協会
高松 崇
2
兵庫教育大学大学院学校教育研究科 講師 小川修史
3
畿央大学大学院
浅野晃一
4
大阪教育大学大学院
森野宅麻
5
大阪市教育委員会 指導主事
6
大阪市立特別支援学校 ICT 担当者 14 名
②検討会議開催回数・検討内容
月 日
活 動 内 容
平成 27 年 4 月 30 日
第8回指導方法充実検討会議
平成 27 年 5 月 11 日
新森小路小学校への支援活動
平成 27 年 5 月 21 日
菅北小学校への支援活動
5 月~3 月
巡回アドバイザー、ICT担当者、指導主事
小・中学校へ支援相談
平成 27 年 5 月 27 日
第 9 回指導方法充実検討会議
平成 27 年 6 月~7 月
各特別支援学校でインタビュー調査の実施
平成 27 年 6 月 25 日
大阪市学力向上コンフェロンス
11
平成 27 年 6 月 27 日
平成 27 年 7 月 1 日
平成 27 年 7 月 3 日
平成 27 年 7 月 23 日
平成 27 年 7 月 30 日
平成 27 年 8 月 3 日
平成 27 年 8 月 7 日
平成 27 年 8 月 7 日
平成 27 年 8 月 17 日
平成 27 年 9 月 24 日
平成 27 年 10 月 20 日
平成 27 年 11 月 9 日
平成 27 年 11 月 17 日
平成 27 年 11 月 30 日
平成 27 年 12 月 11 日
平成 27 年 12 月 17 日
平成 27 年 12 月 26 日
平成 28 年 1 月 14 日
平成 28 年 1 月 30 日
平成 28 年 2 月 10 日
平成 28 年 3 月 20 日
大阪支援教育コンピューター研究会
指導主事巡回指導
第 10 回指導方法充実検討会議
指導主事巡回指導
アドバイザー・指導主事巡回指導
指導主事巡回指導
情報交換・勉強会・リーフレット等原稿作成
第 11 回指導方法充実検討会議
支援機器等の活用のための研究協議会参加
第 12 回指導方法充実検討会議
作業グループごとの打合せ
第 13 回指導方法充実検討会議
指導主事巡回指導
指導主事巡回指導
第 14 回指導方法充実検討会議
第 15 回指導方法充実検討会議
指導主事巡回指導
大阪支援教育コンピュター研究会
報告書、冊子作成 打合せ
大阪市教育センターフォーラム
報告書、冊子作成 打合せ
支援機器等活用研究協議会
(2)専門的な指導員(支援機器等教材アドバイザー)の配置
①支援機器等教材アドバイザー
・NPO 法人 支援機器普及促進協会
高松 崇
・兵庫教育大学大学院学校教育研究科 講師 小川修史
・畿央大学大学院
浅野 晃一
・大阪教育大学大学院
森野 宅麻
②本事業における活動内容
・ICT 機器活用に関する全般的アドバイス
・支援機器の作成・フィッティングアドバイス
・支援機器並びにアプリ、ソフトの情報提供
・本事業の研究方法、内容への助言
③教職員との連携に係る工夫
・授業観察を行い、児童生徒への指導のためのアドバイスを行った。
・各校の児童生徒の障がい状況等を考え、一斉研修、授業観察後の研修、フィッティン
グ等、個に応じたより具体的な支援がよいのかを事前に把握し、学校の実態に応じた
支援方法を工夫した。
・各校で ICT に機器活用に関する研修を教職員に呼びかけ、気軽に参加できるような体
制を工夫した。
(3)指定校における校内体制の整備
12
光陽特別支援学校では、肢体不自由教育部門、病弱教育部門共有の校務分掌に平成
26 年度より「ICT 教育部」を立ち上げ、15 名の教員が ICT 機器の管理運用、研修企
画、情報セキュリティの管理、HP の管理・更新の任についている。検討会議にも、
各校の担当者に加え、ICT 教育部のメンバーも会議に出席しており、検討会議終了後、
会議録を作成し各学校に発信し情報共有を行った。
平成 27 年度は 18 名に増員し、増配置したタブレット端末の管理運用や事例集を集め
た WEB ページの作成に対応した。
(4)関係機関、保護者等との連携
光陽特別支援学校では、ユニバーサルアクセス機能を搭載したタブレット型パソコ
ンのアクシビリティを研究し、様々な障がいのある児童生徒の個々の実態に応じたコ
ミュニケーション能力の育成をめざしている。その一環として、夏季休業中を利用し
て、ICT 機器活用にかかる親子体験学習を開催した。身近なおもちゃを、手や体の一
部を動かすことで動かせることで、「触ったら動く」という因果関係を理解したり、
「動かしたい」という意欲を引き出したりするツールとして紹介した。また、PTA 保
護者対象にタブレット型パソコンの講習会を実施し、タブレット端末の活用により、
初歩的な操作でも、児童生徒の自己決定につながる要素があることを助言した。
また、本市では、次の機関と連携、協力、助言をいただきながら本事業を行った。
・NPO 法人 支援機器普及促進協会
・大阪教育大学
・兵庫教育大学大学院学校教育研究科
・大阪支援教育コンピューター研究会
4
研究の成果
本事業を受嘱した平成 26 年度当初は、特別支援学校において ICT 機器を個として
は活用しているが学校組織全体として活用している学校は数校であり、特別支援学校
によってはタブレット端末が全くない学校やタブレット端末があっても使用してい
ない状況であった。さらに、学校内のインターネット環境が未整備であり、インター
ネット環境につなげることが困難であった。
ICT 担当者検討会や各校でのタブレット端末等の研修会を重ねた結果、次のような
結果があらわれた。
・授業においてタブレット端末を初めとする ICT 機器を活用する教職員数が増加した。
・校内体制が整い、情報共有がなされ、授業実践を積極的に取り組む教職員が増えた。
・同じ障がい種の学校で担当者同士の意見交換が活発になった。
・各学校において、ICT 機器活用について、個人から組織として取り組む意識が出てき
た。
・担当者間での理解が広がり、各校の取組を発信する機会が増えた。
・ICT に関する研修の必要性を感じる教職員が増えた。
・学校独自予算で、大型モニターや記録保存用ハードディスク、スイッチ、ケーブルな
どの付属品類を購入する学校が増えた。
なお、2年間の成果と課題については、第6章にまとめている。
13
第3章
各特別支援学校の取組
1.大阪市立視覚特別支援学校
(1)学校の概要
大阪府の北部地域を通学とする視覚障がいの幼児・児童・生徒が在籍する特別支援学
校である。明治 33 年の「私立大阪盲唖院」にその歴史は始まり、平成 27 年度で創立 115
年を迎える。幼稚部から高等部専攻科まで設置し、平成 27 年5月1日現在で、105 名の
幼児児童生徒が在籍している。
これまでも、小さな文字を使わない配慮、拡大コピーや、拡大文字を用いた資料の提
供など、見えにくい児童生徒に提供する情報の配慮や点字及び点図資料、また、音声に
よる資料提供など、見えない児童生徒に対する配慮を行ってきた。近年、タブレット端
末をはじめとする様々な ICT 機器の発展にともない、音声機能の活用や拡大鏡としての
ICT 機器の活用など、視覚障がい者が日常生活を送るうえで、有効であることが認められ
てきた。その為、校内の教職員を対象に ICT 機器に興味・関心を持ってもらい、授業で
活用できるよう、情報教育部が中心となり校内研修を実施した。
文部科学省事業で提供を受けた iPad を最大限活用し、特に授業で有効活用できる方法
を実践をしながら検討した。
(2)1年目の取組
5月 2日
情報教育部管理教室・機器について部内研修(プロジェクターと PC、
電子黒板と PC の接続)
7月 4日
LAN ケーブルの配線について部内研修
7月 29 日
聴覚機器・iPad について部内研修
8月 4日
点字プリンタのメンテナンスについて部内研修
8月 29 日
iPad 研修会1(校内全教職員が参加対象
初級編 iPad の基本操作
応用編 RICOH SMART PRESENNTER の活用
12 月 1日
PLEX TALK について部内研修
2月 18 日
iPad 研修会2(校内全教職員が参加対象)
講師:NPO 法人支援機器普及促進協会 高松氏
(3)2年目の取組
5月 1日
PC トーカー、Netreader の基本操作について部内研修
(※校内全教職員が参加対象)
6月 9日
校務 PC 個人連絡・全校掲示板活用法
14
USB ウィルスチェック法
T エディタ文書保存設定方法
6月 25 日
エーデルの基本操作※
7月 7日
図書の貸出し・返却の仕方
サピエ図書館の活用方法
7月 21 日
iPad 研修会1
iPad 基本操作(voice over・色の反転
等)
電子黒板と iPad を繋げよう(有線編)
7月 22 日
iPad 研修会2
Key note 基本操作
ロイロノート基本操作
9月 28 日
PLEX TALK の基本操作
2月 9日
パーキンス掃除方法
(4)成果
平成 26 年度は情報教育部の担当者を中心に、全校教職員に対して研修を実施した。平
成 27 年度も継続して、全校教職員のニーズに合わせた研修を実施した。この2年を通じ
て、ICT に対する興味・関心が高っており、教職員の方から「次は・・・研修をして欲し
い」という声も出てきた。
今後は、子どもの実態に合わせた ICT の活用方法を模索し続けていく必要がある。年
度末までに情報教育部を中心に振り返りを行い、次年度の方向性を決定する予定である。
2.大阪市立聴覚特別支援学校
(1)学校の概要
大阪市域を通学区域とする聴覚障がいのある幼児児童生徒が在籍する特別支援学校で
ある。ICT 機器や補聴器の発達と人工内耳の普及など、聴覚障がいのある子どもたちの環
境は大きく変わりつつある。聴覚特別支援学校は、「子どもたちの豊かな人間性・社会性
の発達を願い、一人一人に応じた教育を行う」という教育方針のもと、4つの目標「障
がいに対する認識を深め、たくましく生きる力を育てる」
「コミュニケーション能力の伸
長を図る」「社会参加に必要な知識と技能の習熟を図り、社会的自立をめざす」「人間尊
重の精神と態度をはぐくむ」を掲げ、聴覚に障がいのある子どもたちに対する特別支援
教育を実施している。また、聴覚障がい特別支援学校のセンター的役割を果たすため、
地域支援や通級指導教室、補聴相談等も行っている。平成 27 年度に創立 115 周年を迎え、
これまでの教育活動を振り返り、今後の聴覚障がい教育のさらなる発展を目ざしている。
15
平成 26 年度は高等部を中心に教材保存用の「教材用ファイルサーバー」を設置、校舎
各階に無線 LAN アクセスポイントを設置し、無線 LAN アクセスポイントを介して、教員
がファイルサーバーから視覚教材を選択し、各教室においてタブレット端末や大型モニ
ターに映し出すシステムを構築した。生徒への情報保障を進めるうえでとても効果的で
あった。
(2)1年目の取組
幼稚部では、これまで ICT 機器を保育で活用する場面が少なく、従来の保育の中でど
のような活用ができるのかの検討を進めた。
小学部では、次の授業で活用した。算数では、計算や図形の学習に活用した。国語や
社会では、調べ学習で様々なことを検索したり、活動の様子を写真に撮り、TVに大き
く映し出したりした。動画教材の活用に関し、本校児童には字幕が必要である。しかし、
インターネット上にある動画は Flash で動くため、対応しているブラウザを使用したが、
スムーズに動かないこともあった。
中学部では、理科と音楽、体育で活用した。理科では、授業の資料のスライドを作成
し、TV に映し出した。音楽では、歌詞を事前登録しておくと歌に合わせ歌詞の色が変わ
るといった、カラオケアプリを使用した。学校の情報教育ネットワークではブロックが
かかってしまうため、別契約のネットワークを利用しての使用となった。体育では、マ
ット運動の様子を動画にとり、各自の動きの確認や評価資料として活用した。また、運
動会で披露するダンスの見本を動画に撮り、練習に活用した。
高等部では、美術や社会において、参考資料を調べることに活用した。本科普通科の
生活応用コースの授業や、体験入学の際にも活用した。
(3)2年目の取組
幼稚部では、作品展での展示制作に関する言葉や写真を幼児たちの指導に活用した。
必要な写真等を事前にフォルダーに入れておいたので、指導時にはスムーズに提示する
ことができた。実物の写真を使うことで、幼児たちにも伝わりやすかった。また、絵本
を写真にとりそれをプロジェクターで拡大して映し出した。大きく映し出すことで、全
員で見ることが容易であり、また一部分を拡大表示することで、さまざまな確認がしや
すかった。アプリの絵本も活用した。この絵本では、絵に動きや音があり幼児たちは楽
しんでいた。
小学部では、遠足の事前指導に活用した。写真を使いわかりやすく説明ができた。普
段の授業では、アプリや動画、ビデオやカメラとして活用した。教科書の絵や写真を事
前に取り込んでおくことで、容易に資料提示でき一部を拡大することもでき便利であっ
た。学習が苦手な児童に対しては、アプリを活用することで勉強に対する意欲を引き出
すことができた。使用したアプリは、漢字、ひらがなのなぞりがき、かたはめ、計算、
16
ピアノなどである。ネットワークに接続しておくことで、インターネットの検索も教室
でできるため、調べ学習や NHK for SCHOOL を活用できた。
中学部では、音楽や体育、学年活動等で活用した。修学旅行では事前指導で行程確認
のスライドや写真を提示した。行き先に関しての調べ学習にも大いに役立った。修学旅
行当日も携帯し、カメラ、ビデオとして活用した。操作も簡単であるため、生徒にも実
際使わせた。撮ったその場で確認でき、生徒たちがとても楽しんでいる様子が多く見ら
れた。授業ではカメラ、ビデオとしての活用が多くあった。運動会での演技指導でも見
本を事前に撮影しておき、繰り返し見ることで指導が進めやすかった。文化祭では中学
部3年生が劇を披露することになっており、その指導では台本の読み合わせや、演技指
導に活用した。セリフを映し出すことで本を持たずに練習でき、生徒たちは、練習がや
りやすかったように感じた。動きも動画撮影でき、自分たちの演技がどう見えるのかそ
の場ですぐに確認できたので、少ない練習時間であったが効率の良い練習ができている
ようだった。
高等部では、調べ学習としてインターネットを活用した。文化祭での展示に必要なこ
とを生徒がそれぞれ調べていた。ネットワークの届く範囲であれば調べられるため、活
用もしやすく作業がスムーズに進められた。授業では、普通教室にはほぼ全教室に40
インチの TV があり、授業での資料の提示に活用している。高等部には、大阪市がんばる
先生支援事業で整備したタブレットもあり、多くの授業で活用されている。大きく TV に
出せるので、タイマーアプリを活用し目で見て時間の確認ができ、聴覚障がいのある生
徒にもわかりやすく時間を計ることができている。
(4)まとめ
今まで活用してこなかった場面で多く活用することができた。実際に使用してみると、
操作も簡単でありとても使いやすかった、子どもたちの集中力が高まった、少しの時間
を有効に活用できたといった意見が多数あった。やはり複雑な操作方法もなく直感で操
作できるところが多くの先生に受け入れられた結果であると思われる。
課題は、本事業のほかに、大阪市教育委員会の「校長経営戦略予算」で、ipad を追加
購入したがタブレット端末や大型モニター、プロジェクターの数の不足、学校ネットワ
ークの不安定さがあげられる。そのため、個人所有のタブレットを活用しているのも多
くみられた。大阪市教育委員会のネットワークでは、ブロックされてしまうページもあ
り、個人のネットワークを活用せざるを得ない時もあった。
ICT 機器で撮影した写真や動画の管理に関し、タブレット端末本体に残さないよう個人
情報を管理していく必要があるほか、教材として作ったファイルや取り込んだ画像など
今後も活用できるものは一括管理できる仕様を今後構築したい。実際授業で行った使用
例を紹介する学習会等も順次計画し、校内での活用拡大を今後も継続して検討していき
たい。
17
3.大阪市立思斉特別支援学校
(1)学校の概要
大阪市旭区にある小学部、中学部、高等部を設置する知的障がいの特別支援学校であ
る。通学区域は、北区、都島区、旭区、城東区(寝屋川以北)
、鶴見区(寝屋川以北)で、
スクールバスが5台運行している。中学部・高等部の中には、徒歩や公共交通機関を利
用して自力通学している生徒もいる。
授業等への ICT 機器活用に関しては、平成 25 年度に支援部が、大阪市事業である「が
んばる先生推進事業」において「特別な支援を要する児童生徒の学習効果とコミュニケ
ーション能力を高めるタブレット端末活用に関する研究」として、小中学校等への地域
支援の中でタブレット端末を使った実践の研究を行い、報告会を行った実績がある。
本事業では、
「タブレット端末には興味はあるが使い方がわからない」先生を対象とし
たミニ校内研修会を開催することにより活用できる教職員の増加をねらう取組を行った。
(2)1年目の取組
ICT 機器を使った支援に関する研修を夏期公開講座と校内研修において行った。
(夏期公開講座)
平成 26 年 8月6日
「障がいのある児童生徒への ICT 機器を使った授業づくりについて」
(校内研修)iPad 連続ミニ講座
平成 26 年 12 月5日
第1回 基本操作編
平成 26 年1月 9日
第2回
見ること(音声読み上げなど)
平成 27 年1月 26 日
第3回
聞くこと(視覚支援・ボイスレコーダーなど)
平成 27 年2月 20 日
第4回
書くこと(音声入力・手書き入力)
平成 27 年3月 10 日
第5回
コミュニケーション(VOCA など)
(3)2年目の取組
ICT 機器を使った支援に関する研修を、講師に大阪教育大学の金森祐治教授を招き、夏
期公開講座において行った。
(夏期公開講座) 平成 27 年8月5日
「読み書きに困難のある児童生徒のための支援について」
~マルチメディア DAISY 教材の導入と活用を通じて~
(4)まとめ
①電子黒板の活用について
思斉特別支援学校の電子黒板の数は2台である。教員対象に行った ICT アンケート
の結果、平成 26・27 年度ともに約 40%の教員が、電子黒板の利用経験があると回答し
18
ていた。中学部や高等部の生活や合科の授業で定期的に活用している教員もいるが、
全学部においても、校外学習、修学旅行、進路実習などの事前学習や運動会、演劇祭
などの学習の振り返りで活用することが定着してきている。電子黒板は、集団での一
斉学習の場において、児童、生徒たちが理解しやすい教材の提示ができる学習機器と
なっていると思われる。日常的に授業で利用するには、台数が 2 台と少ないことと、
電子黒板が保管されている教室から授業が行われる教室までの移動に時間がかかるこ
となどの理由で、広がりや定着が難しく今後の課題である。
②iPad の活用について
思斉特別支援学校の iPad は、平成 26 年度 19 台、平成 27 年度 23 台と4台増えた。
教員に行った ICT アンケートの結果、平成 26 年度は約 15%、平成 27 年度は、約 20%
の教員が利用経験があると回答しており、平成 26 年度と比べて iPad を利用している
教員は少し増加した。活用方法としては、個別の支援として VOCA の機能を用いて、発
語のない児童が、朝の会で司会をするときに使用したり、行事での挨拶に使用したり
している。授業の中では、アプリを用いて、生活の授業で地図、ひらがなや数の勉強
をしたり、カメラの機能を用いて、美術の授業で作成するものの写真を見せて作るも
ののイメージを持たせたり、家庭科の授業の調理実習で作り方を動画に撮って説明し
たりもしている。授業の中で利用するにあたっては、iPad を電子黒板につないで利用
したり、小集団の場合は iPad を単体利用したりもしている。また、平成 27 年度から、
小学部のパソコンクラブで iPad の利用を始め、高等部においてもパソコンクラブが新
しく発足し、iPad のアプリを活用したり、写真を撮ったりしている。児童、生徒がタ
ブレットの操作に馴れ親しむ機会がさらに増えている。
アンケート結果より、iPad を利用する際に困っていることについては、ネット環境
が十分でないことや、使いたいアプリがすぐにインストールできないこと、使いたい
が知識が不十分であるなどの声が多くあがった。今後の課題としては、ネット環境の
充実、教員が授業で使用しやすく、また授業研究しやすい貸し出し方等の環境整備、
アプリの精選や管理、iPad の操作や iPad を利用した支援や授業の研修の充実が望まれ
る。
4.大阪市立難波特別支援学校
(1)学校の概要
難波特別支援学校は、昭和 34 年創立の知的障がい特別支援学校である。昭和 36 年に
は、全国に先駆けて、現「大阪市立キャリア教育センター」の前身である「大阪市精神
薄弱児職業教育センター」を同校舎内に設置し、施設・設備の利用と教材を集約的に準
19
備するとともに、職業教育を充実させ、知的障がい児の社会的自立を図ってきた。平成
27 年度4月に、校舎を現在地に移転し、それまでの中学部、高等部に加え、小学部を設
置し、全児童生徒数 274 名(平成 27 年5月1日現在)の在籍となった。
小学部から高等部までの一貫したキャリア教育の実施を重点目標とし、高等部では、
コース制(選択授業)の導入により自己肯定感を育む教育実践を行っている。
校舎が移転し、敷地が広くなったことで、講堂、体育館、特別教室等も利用し、各学
部とも体験的活動を取り入れている。児童生徒会活動や放課後の部活動にも、積極的に
取り組む児童生徒を育成することも大切にしている。
(2)1年目の取組
平成 26 年度は、本文部科学省事業に加え、大阪市事業である「がんばる先生支援事業」
にて「知的障がい教育における教員の ICT 活用による授業展開の広がりと学習効果につ
いて」の研究に取り組んだ。平成 26 年度、移転前の旧校舎内の普通教室に無線 LAN の設
備を構築し、タブレット端末や提示用液晶ディスプレイを含めた ICT 活用による授業活
用事例と学習効果についての研究・発表を行った。また、学習アプリの一覧表を作成し、
校内だけでなく、小中学校等にも紹介した。図 3-1 は公開授業発表を行った時の事例で
ある。
図 3-1
iPad を活用した時計の学習
20
(3)2年目の取組
平成 27 年度、高等部教育課程にコース制(選択授業)を導入し、コースの一つとして
「情報コース」を設置した。
コース制の授業は週に4時間あり、高等部の 2・3 年生を対象としている。「情報コー
ス」は 20 名程度の生徒が在籍し、パソコン室と図書室を中心に活動をしている。
パソコン室では、パソコンの基本操作方法を中心として Word での文字入力や Excel での
入力方法と表計算、運動会ポスター作成、なんば祭プログラム作成などを行い、図書室
ではタブレット端末を使ってインターネット検索方法の学習やタブレット端末内に
あるアプリを使っての学習を中心に取り組んだ。
(4)まとめ
学校移転に伴って、無線 LAN によるアクセスポイントの設置場所が不足したことでタ
ブレット端末を使ったインターネット環境が利用できる場所や時間に制限ができた。
利用する機会は平成 26 年度に比べて大幅に減少したが、知的障がいのある児童・生徒
にとって、習得技能が必要なノートパソコンやデスクトップパソコンに比べ、直感的に
操作し、すぐに利用できるタブレット端末の方が、利用頻度も高く、授業に活用する機
会が全校的に増加した。また、インターネットだけでなく豊富なアプリを導入すること
で電子絵本や数や図形の認知学習の授業など、様々な教科で活用されることが多くなっ
てきた。
5.大阪市立生野特別支援学校
(1)学校の概要
生野特別支援学校は大阪市東部の生野区に位置する、昭和 42 年に開校した知的障がい
の特別支援学校である。
平成 24 年度は全児童生徒数 470 名を超える大規模校であったが、
「大阪市立特別支援学校整備計画」に基づき設置された、新校開校に伴って通学区域が
再編され、児童生徒数は適正規模となった。平成 27 年度は、小学部 49 名、中学部 89 名、
高等部 138 名の計 276 名が在籍している。
生野特別支援学校では、児童生徒が個性を発揮し、自立して社会参加できることを学校
目標とし、指導・支援に励み、活力のある元気で明るい学校生活作りを実践している。
(2)1年目の取組
平成 26 年度は、貸与されたタブレット端末の活用について、ICT 担当者が試行錯誤し、
その成果や課題、また ICT に関する情報等を教職員に広めることを中心に取り組んだ。
21
①修学旅行事前指導
小学部6年生では、修学旅行(鈴鹿方面)の事前指導で Google Earth を使用した。初
めに児童が地図上のある地点を立体的な感覚として捉えられるよう「地球→日本→大阪
→学校→自分の家」とズームしたり、ストリートビューで自宅を探したりする学習を行
い、地図への興味・関心が持てるようにした。次に、児童が修学旅行先を探し、学校や
自宅からどれくらい離れているのかを調べ、学校、自宅と修学旅行先との位置関係を理
解した。また、就学旅行では、移動に要した時間と地図上の距離について距離感を感じ
ることができ、体験的な学習に取り組めた。どの児童も興味関心を示し、楽しみながら
操作していた。また、普段は周りの友だちのことに関心を示さない児童が、タブレット
端末を使用して友だちの自宅が映し出されると、興味津々に見ている姿が印象的であっ
た。
②図工
色塗りの見本としてタブレット端末を使用した。タブレット端末に表示した色を見な
がら、「どの色を使うと自分の好きな色をつくれるのか」、
「どの色とどの色の組み合わせ
が良いのか」などを児童が主体的に考え、色に対するイメージの広がりと興味を深める
ことができた。また、運動会の徒競走を題材にした描画では、走っている様子をカメラ
機能で画像として取り込み、画像を見ながら腕や足の曲がり方を観察し、よりリアルに
表現活動ができるよう取り組んだ。
③文字・ことばの学習
興味を引くアプリの画面やサウンドで集中力が持続した。この学習をきっかけに他の
学習に対しても意欲が高まった。
④ICT 機器を活用した研修会の実施
2学期に NPO 支援機器普及促進協会理事長高松崇先生を講師に小学部を対象とした研
修を行った。講師が持参した 20 台ほどの iPad を直接手に取りながら、機器の基本的な
使い方の説明や、たくさんのアプリの紹介等、実践的な研修内容であった。
研修後、小学部では iPad を含む ICT 機器を活用した取組が増えた。例えば、これまで
行事で歌う際には、模造紙に書いてある歌詞を教員が棒等で示し歌唱指導を行っていた
が、新たな取組として大型テレビに、曲に合わせた歌詞を表示するようにした。児童が
より音楽に合わせて歌詞を見やすくより歌いやすくなった。学級活動の中でも Keynote
や YouTube を活用した取組が進んでいる。平成 27 年度に iPad 用のアダプター類が追加
購入されたことで、今後これらの機器を活用した取組が増え、指導方法の一層の改善が
期待されている。
22
(3)2年目の取組
平成 27 年度は、1年目の取組をより校内に広く周知すること、また研修で得た知見を
活かして授業や行事での活用をさらに推進させることに取り組んだ。
①iPad のカメラ機能を使用した音楽の授業
中学部の音楽の授業では、効果的に合唱できる指導に取り組んだ。教員がカメラ機
能を使用して動画を撮影し、撮影した生徒の合唱シーンを生徒たちに見せることによ
り、“自分たちがどのように歌っているか”を確認させた。ポイントとなる箇所をくり
かえし再生して、自分たちの声量や表情等を確認させ、良い点や悪い点を具体的に示
すことで、生徒たちはそれらを意識して歌うことができ、また、美しくそろったハー
モニーを確認することで、自信を持って音楽の授業に参加することができた。
②学習支援によく使用されたアプリ
ア.絵本
イ.ひらがな
ウ.時計
エ.かずの学習
オ.足し算引き算等の計算問題
③行事での活用
運動会のダンスの曲や、文化祭の合唱曲、また劇の効果音をタブレット端末の中に
保存して練習の際に活用した。個人練習では個々の児童生徒がそれぞれ曲を選んで再
生することで、自分に必要なダンスの練習をしたり、劇の動きの確認をしたりするこ
とができた。
(4)まとめ
本事業を受嘱するまでは、校内にタブレット端末が1台もなく、多くの教員が授業で
の活用方法等についてほとんど知識のない状態であった。そこで、まずは ICT 担当者が
さまざまな場面で iPad を活用し、その様子を校内で紹介することや、校内研修会を実施
して具体的な提案をするなどの取組を重ねた結果、教員の意識が少しずつ変わってきた。
2 年目に実施した教員への ICT に関するアンケートでは、「タブレット端末は軽くて持ち
運び易く、機能的にはパソコンとほぼ変わらないことがわかった」「カメラ機能等の使い
方や、幅広い種類のアプリの活用について知りたい」などの声が寄せられ、タブレット
端末に対する理解が進むと同時に、関心も高まっていることが窺えた。
学習以外の場面でも成果が表れた例がある。場面緘黙で自分から学習活動に参加できな
かった生徒が iPad の「数や計算問題のアプリ」に興味を示し、自分から操作し問題を解
くようになった。その生徒はその後ますます学習に対し意欲を持てるようになり、鉛筆
23
での計算問題等にも取り組めるようになった。
今後、継続した取組を進めるにあたり、タブレット端末の必要数の配置等の課題はあ
るが、教員が ICT 機器を活用し指導力の幅を広げることで、生徒の興味関心が広がると
ともに、個々の教育ニーズに対応した取組ができることを学べた 2 年間であった。
6.大阪市立住之江特別支援学校
(1)学校の概要
大阪市立住之江特別支援学校は、大阪市南西部の住之江区にあり、阿倍野区、西成区、
住之江区を通学区域とする知的障がい特別支援学校である。児童・生徒一人一人の自立
と社会参加を実現するため、それぞれの教育的ニーズに適切に対応した教育・支援の実
践に向け取り組んでいる。小学部 25 名、中学部 75 名、高等部 131 名、合計 231 名の児
童生徒が在籍している(平成 27 年5月1日現在)。
(2)1年目の取組
①校内の支援機器を取り巻く環境の充実
住之江特別支援学校は、本事業が始まるまでは、iPad などのタブレット端末を学校
として所有していなかったが、本事業から貸与された iPad4台を校内 ICT 担当者が活
用し、平成 26 年秋頃には、寄付を受けた iPad8台とともに、授業貸出用として管理し、
様々な授業で活用するようになった。
②校内研修会
10 月 23 日、
特定非営利活動法人支援機器普及促進協会理事長
高松崇先生を招聘し、
校内研修会を行った。課業時間中には各学部 1 クラスずつ授業見学をしていただき、
授業で iPad を活用していく上でのアドバイスをいただいた。放課後には、「知的校で
の iPad の活用法」として、希望教員を対象に iPad の活用の仕方やアプリを紹介し、
実際に iPad を触って体験する研修機会を設けた。
③実践
ア
絵本の読み聞かせ
カメラ機能を使って絵本を撮影した映像をテレビにつないで拡大して映し、生徒
たちに見せた。画面が大きく見やすいため、興味を持って絵本を読むことができた。
イ
発表の振り返り
作文の発表をビデオ機能で撮影したものを、大型テレビに映し、発表の仕方、声
24
のトーンについて振り返りを行った。自分自身の姿を見せ、具体的な助言を行うこ
とで、注意すべき点が生徒にとってわかりやすく、ビデオを撮る前と後で一定の改
善が見られた。
ウ
計算ゲームの活用
数学の授業の最後に iPad を使って計算ゲームを行った。生徒たちは iPad にたい
へん興味を持っており、楽しんで学習する様子がみられた。
(3)2年目の取組
①校内の支援機器を取り巻く環境の充実
ア
支援機器の導入
本事業からポケット Wifi、iPad Air1 台が貸与され、校内で活用している。また、
大阪市事業である「校長経営戦略予算」により iPad Air4台とポケット Wi-fi2 台を
購入し、平成 26 年度に導入したものと合わせて 12 台の iPad を授業貸出用として使
えるようになり、1クラス全員が使えるよう整備した。
イ
校内委員会の立ち上げ
小学部より 1 名、中学部より2名、高等部より各学年1名ずつの計 6 名の教員に
よる支援機器等活用研究委員会を立ち上げた。支援機器等の管理・整備、支援機器
等の活用を広めるための研修会などを行った。
②研修会
校内研修会として、「iPad の使い方について(初級編)」を行った。20 名程度の教員
が参加し、活用実践報告や iPad の基本的な使い方についての実習を行った。
平成 27 年7月に地域の小中学校の教員に向けての公開講座「ICT 機器を活用した支
援の方法~入門編~」を行った。地域から 15 名の先生が集まり、住之江特別支援学校
での活用実践報告や iPad の基本的な使い方、アプリの紹介などを行った。
③実践
ア
事前指導への活用
校外学習の事前指導のため、keynote を活用しスライドを作成した。iPad で撮影
した画像・動画がそのまま使えるため、これまでより簡単にスライドを作成するこ
とができた。調理実習の事前指導では iPad で調理方法を動画で撮影し、調理器具の
使い方を視覚的にわかりやすく説明した。
イ
iPad とカードを合わせた指導
25
楽器のイラストをタップするとその楽器の音が鳴るアプリを使用し、同じイラス
トのカードを示して同じものをタップする、マッチング指導に活用した。触ると音
が鳴るため、生徒が興味を持って学習に取り組むことができた。
(4)成果
2年間の事業を通して、iPad が学校に導入されるとともに、支援機器等活用研究委員
会の設置などの環境整備も進み、児童生徒がタブレット端末を活用する環境が整ってき
たことが一番の成果である。研修会の実施等もあり、毎月 10 件~15 件程度の授業でタブ
レット端末が活用されるようになった。
今後、タブレット端末を普段から活用できるような環境づくりをさらに進め、児童生
徒の実態に合った支援を行うためのひとつのツールとして定着することを目ざしたい。
7.大阪市立西淀川特別支援学校
(1)学校の概要
西淀川特別支援学校は昭和 54 年開校の肢体不自由の障がいのある児童・生徒が通学す
る特別支援学校である。小学部、中学部、高等部の3つの学部があり、平成 27 年度は 84
名の児童・生徒が在籍している。 「みんな なかよく あかるく つよく」の校訓のも
と、自立と社会参加に向け、社会に参画する意欲と豊かな心を育てることを学校目標と
して、教育実践に取り組んでいる。
交流および共同学習に重点をおいており、小学部、中学部とも多数の児童生徒が居住
地校交流を行っている。
平成 25 年度には大阪市事業である「がんばる先生支援事業」を受嘱し、児童生徒個々
にあった ICT 機器の使い方を研究を行った。
(2)1年目の取組
本事業を受嘱した前年(平成 25 年)度より、大阪市の事業である「研究支援事業」を
受け、「肢体不自由児の教育を支援する情報機器等の活用」を主題とし、タブレット端末
の活用について、先行研究や教育実践例をもとにしながら、ICT[機器を児童生徒の学習
活動に活用することを研究した。
平成 27 年度は、研究部のプロジェクトと連動して、11 月に NPO 法人支援機器普及促進
協会(ATDS)の高松崇先生を講師として招き、授業内でのタブレット端末の活用方法に
ついて研修を行った。児童生徒の個別対応にタブレット端末等のフィッティングについ
てご教示いただいた。また、自立活動部の企画として、
「校内 iPad 自主研修会」を 12 月、
1月、3月に行い、タブレット端末のカメラやビデオ機能の使い方、スイッチ等の連動
26
の仕方、スピーカー等ガジェットの紹介などを行った。
実践事例として、平成 25・26 年度事例とあわせて、13 の授業実践を学校ホームページ
に掲載した。
また本事業の一環として、平成 26 年 8 月に開催された国立特別支援教育総合研究所主
催「支援機器等活用研究協議会」に大阪市代表として参加し、大阪市立特別支援学校の
取り組みのポスター発表を行った。
(3)2年目の取組
本事業のリーフレット制作の一環で本校3名の教員(各学部1名ずつ)にインタビュ
ーを行った。インタビューした教員に対しては、ICT 担当教員がサポートし、タブレット
端末を用いた授業実践を行った。初めてタブレット端末を活用する教員へのサポートと
して、ICT 担当教員がアプリ紹介や過去の実践の紹介、設定の手伝いなどを行った。
こ
れらの取り組みについては、学校ホームページに実践事例として掲載する予定である。
研究部プロジェクトでの高松崇先生を招いての研修会を平成 27 年度も実施し、教科での
iPad の用い方や、子どもの発達課題に応じた用い方などについて、助言をもらった。
「校内 iPad 自主研修会」についても、平成 27 年度も、9月、12 月、2月の計3回実施
した。
(4)まとめ
2年間の本事業の取り組みの中で、iPad は計 11 台整備することができた。また、高等
部1年時に、
就学奨励費制度により iPad 等タブレット端末を購入する生徒も増えてきた。
学校では、順次、スイッチ類、AppleTV、Air プリンターなどの周辺機器も少しずつ整備
しており、学校内で管理している iPad 全台が授業で貸し出される日も増加している。
全学部で、授業や日常生活場面、文化祭などの行事などでの ICT 機器活用事例も徐々に
広がりが感じられ、学校ホームページには、それらを含め計 18 事例を紹介した。
今後は、実践事例を校内に紹介していくとともに、関連する内容の研修会を企画して
いくなどの校内支援体制構築が求められる。また、校内 LAN 環境や iPad 管理用パソコン
などの整備も順次進めていく必要がある。
8.大阪市立平野特別支援学校
(1)学校の概要
平野特別支援学校は昭和 58 年創立の肢体不自由の障がいのある児童・生徒が通学する
特別支援学校である。「一人一人の生命と個性を尊重し、障がいの実態と心身の発達に応
じたきめ細かい教育を行い、豊かな人間性を育み、社会の一員として『強く』『明るく』
27
『元気に』生きる力を育てる」を教育目標とし教育実践に取り組んでいる。
平野特別支援学校では、総合的な学習の時間の活用に重きを置き、小学校・中学部・
高等部の共同学習を推進している。学部を超えた縦割りの学習を通じて、幅広く子ども
同士の関係を広げる機会とし、教員間の指導に関する相互理解を深める機会ともなって
いる。また、隣接小学校とはフェンスの扉1枚で行き来ができる恵まれた環境であり、
年間を通じて昼休みに「ふれあいウェンズデイ」等、小学校と特別支援学校の児童が相
互に学びあう交流及び共同学習を実践している。
(2)1年目の取組
平成 26 年度校内組織として「平野 ICT 担当者会」を設置し、小学部教員2名、中学部
教員3名、高等部教員3名、計8名のメンバーで、校内での ICT 機器研修や機器の管理
等に取り組んだ。情報教育推進委員会との連携も図りながら本事業を推進した。
「平野 ICT 担当者会」には、教員より ICT 機器(特にタブレット端末)の活用に関す
る疑問点が多く寄せられ、職員の ICT 機器への関心が以前より増した。
教員アンケートを実施し、その結果から、ICT に少なからず興味がある教員が大多数を
占めている(65 名中 58 名)ことが分かった。そこで、12 月に全学部でそれぞれのニー
ズに応じた研修会を行った。小学部、中学部では、「タブレット端末の基本的な使い方」
研修を実施した。高等部では、
「タブレット端末でのプレゼンテーションソフトの使い方」
研修を実施した。いずれも好評で「授業に使ってみたい」や「使えそうな気がしてきた」
等のような前向きな感想が多く聞かれる結果となった。
平成 27 年1月 22 日、本事業のアドバイザーである高松崇先生の巡回相談を実施し、
各学部の授業を観察後、希望教員を対象とした「肢体不自由児童生徒における ICT 機器
の活用」のテーマで研修会を実施した。
ICT 機器の管理や購入、研修をより充実させていくために、校内組織の再編を提案し、
委員会組織として事業に取り組むこととした。
(3)2年目の取組
平成 27 年8月の夏期公開講座において高松崇先生を講師として招き、午前中に自校教
職員を対象とした研修会を実施した。また、午後からは、地域校含めタブレット活用に
関心のある地域小中学校等の教員を募り、実際にタブレット端末を触れながら実践事例
を交えた研修会を行なった。研修会後のアンケートでは、
「少しでも活用してみようと思
った」など意欲的な意見が多く挙げられた。
(4)まとめ
本事業を受嘱する以前もタブレット端末を個人で所有、活用している教職員は少なか
らずいたが、本事業受嘱以降は、タブレット端末等の活用が教員に認知され、研修や校
28
内啓発を行うことで、「ICT 機器で何かができるのではないだろうか」という意識が増え
てきている。ICT 機器に対する苦手意識を持つ教職員の割合も、本校の教員アンケート結
果から、平成 26 年度より平成 27 年度の方が減っていた。
タブレット端末等を使っての授業はもちろん、児童生徒に対して活動時間の見通しを
持たせたり、児童生徒の新たな興味関心を高めたりするためのツールとして使用される
ことが多くなった。インターネット環境や周辺機器の設置等の課題は多くあるものの、
職員の意識が ICT 機器の利用に関して少しでも向上したことで、更なる授業での活用に
つなげていきたい。
9.大阪市立東住吉特別支援学校
(1)学校の概要
東住吉特別支援学校は平成 25 年度に大阪市東住吉区に開校した大阪市で初めての肢体
不自由教育部門と知的障がい教育部門を併置した特別支援学校である。それぞれの教育
部門に小学部・中学部・高等部が設置され、368 名の児童生徒が在籍している(平成 27
年5月 1 日現在)。児童生徒の障がいの種別や程度は様々であり、教育課程や配慮すべき
点が異なるため、日々の教育活動は肢体不自由教育部門と知的障がい教育部門別々に行
っている。平成 25 年の開校から試行錯誤を重ねながら教育活動を展開してきており、3
年目にしてそれぞれの教育部門での特色が確立されつつある。
肢体不自由教育部門には小学部、中学部、高等部合わせて 64 名の児童生徒が在籍し、
「各教科による教育課程」、
「下学年による教育課程」、
「知的障がい代替による教育課程」、
「自立活動を主とする教育課程」、そして「訪問による教育課程」のいずれかにおいて学
習を進めている。校区内にある大阪発達総合療育センターに入院している児童生徒への
訪問教育も行われているが、児童生徒数には変化が多い。医療的ケアの必要な児童生徒
も在籍し、学校看護師や保護者と連携しながら学習支援にあたっている。
知的障がい教育部門には、小学部、中学部、高等部合わせて 304 名の児童生徒が在籍
し、すべて「知的障がいによる教育課程」で学習している。障がいの種別や状況は様々
であるので、習熟度や障がいの状況に応じたグループを編成し、指導にあたっている。
また高等部にはコース制が導入されており、生徒の得意なことや興味に合わせて選択で
きる授業を週 1 回実施している。
学校行事は、その目的に応じて合同で行うものと部門別に行うものがある。入学式や
始業式、終業式、修了式、防災訓練や作品展などは合同で実施してきたが、運動会や文
化祭、卒業式などは児童生徒の実態の違いなどから部門別に実施している。しかし、運
動会や文化祭の予行を相互に見学、応援したり、各部門で行う卒業式では、全校児童生
徒が拍手で見送ったり、部門間交流活動を行って同年齢の子どもたちが関わり合う場を
29
設けたりするなど、両部門の児童生徒がお互いの障がいについて理解を深め、共に学び
合える肢・知併設校ならではの取組も行っている。
(2)1年目の取組
①ICT プロジェクトについて
東住吉特別支援学校では、平成 26 年度よりプロジェクトチームを組み、ICT 教育に
関わる取り組みを行ってきた。各部門各学部より1名以上で候補者を募り、情報教育
部からも視聴覚機器や LAN など校内環境の部分で協力が必要との意見があり、総勢 11
名で構成した。プロジェクトメンバーを中心に「タブレット端末の貸し出し管理」「点
検整備」「アプリ整備」「研修企画運営」の4つの係を編制(資料 3-1 参照)し、組織
として取り組んでいる。
プロジェクトの目標として、
ア
iPad を校内で円滑に利用できる環境をつくる。
イ
iPad の操作方法や活用方法を、校内の職員に広める。
ウ
ICT 機器の授業での活用方法を検討し、実践する。
エ
「支援機器等教材を活用した指導方法充実事業」に応じた取組を主導する。
の4つを確認した。
平成 26 年度はプロジェクトチーム内で校内環境の確認、現在の支援機器の整備状況
などの確認を行った。また、10 月に行った教員アンケートの結果において、支援機器
に対する苦手意識を持つ教員が少なからずいたので、教員に iPad がどういった機器で
あるのかを体験してもらうために、
「はじめての iPad」というテーマで、iPad の基本
操作や基本的なアプリの使い方に特化した研修を行った。ベテランの教員を中心に「わ
かりやすかった」「どのように使用すればよいのかわかった」という肯定的な意見を聞
くことができ、校内にあった支援機器に対する抵抗感を減らすことができた。
参加者から積極的なアイデアや意見を募りながら、校内での支援機器にかかるコア
メンバーを構成することができた。ICT 機器活用が教員に次第に認知されてくると ICT
プロジェクトメンバーに少しずつだが相談などもされるようになってきた。年度後半
になると、タブレット端末などの支援機器の台数を整備したこともあり、プロジェク
トメンバー以外の教員も積極的に授業で使用する回数が増えた。
②授業での取組
授業の中で支援機器を活用した取組としては、両部門で大きく分けて3つの報告が
あった。
ア
授業中の提示装置として
カメラアプリを使って撮影した写真や、インターネットの画像から取り込んだ画
像、授業の中での動画撮影した様子を児童生徒に提示する時にタブレット端末が利
30
用されるケースが多かった。タブレット端末では画面が小さいため、10 名程度の児
童生徒が在籍する授業では、iPad を HDMI でつなぎ大型テレビに映し出した。
イ
授業中の補助装置として
時計の学習の際に「Feel Clock」というアプリを使用した。このアプリは今、何
時何分かをアナログ・デジタルの両方で表示している。アナログ時計の位置をデジタ
ルで表示していることで時計の理解を進めることができた。また、時刻の変化をア
ニメーションで表示するため、時計の時間を絵で理解することができた。このアプ
リでは練習問題も付いているために、アナログ時計の問題を解くことも簡単に行う
ことができた。速さの学習では、「キョリ測」というアプリ使って学校から周辺のラ
ンドマークまでの長さを測ることで、実際の距離を調べたり、速さの計算というア
プリを使って距離の計算を動画で見せたりすることで、理解を促すことができた。
ウ
訪問学習の授業として
訪問教育の授業場面でベッドサイドの児童生徒に臥位姿勢のまま提示装置として、
iPad を活用した。補助具を利用して、見やすい角度で提示することができた。また、
本校の授業の様子や行事を動画で撮影をしておき、授業時にその様子を見せること
で学校の雰囲気を伝えることができた。また、肢体不自由教育部門の児童生徒会の
役員選挙において、事前に候補者が演説している様子を録画したものを提示するこ
とで、直接参加することができない児童生徒が投票をする際の参考材料を増やすこ
とができた。
(3)2年目の取組
平成 27 年度、改めて ICT プロジェクトのメンバーを募集し、計 15 名で組織すること
とした。平成 27 年度の ICT プロジェクトの取り組みとしては、平成 26 年度の後半から
支援機器についての校内での認知が広まり使用が増えてきたので、機器使用のルールを
明確化した。貸し出し簿を一目で分かる様にして、借り出しを促すようにした。
高等部において就学奨励費により iPad を購入する際、どのように学校で管理・運用す
るのかについての検討を行った。肢体不自由教育部門と知的障がい教育部門の2部門あ
るので、障がい種別による使用状況が大きく異なるため、すり合わせるための作業に時
間がかかったが、規定を作成することができた。
新たな取組として、「アプリ相談員」
(図 3-2 参照)を始めた。校内で機器が充実して
くると授業内で使用する教員が増えてきた。しかし、あまり得意ではないが使ってみた
いという教員はどのようなアプリがあるのかなどを知らないことが多く、ICT プロジェク
トメンバーにも聞かれることが多くなってきた。そこで、授業でどのようなアプリを使
えばいいかなどを提供できる体制を作らなければいけないのではないかとプロジェクト
31
内で話題にあがった。プロジェクトメンバーの中で候補者を募り、「アプリ相談員」とし
て相談ができるような体制を整えることができた。
東住吉特別支援学校
(校内)
ICT プロジェクト
組織図
事務局
貸し出し
整備・
アプリ
研修企画
管理係
点検係
管理係
運営係
アプリ相談員に対する相談の流れ
授業主担者が「自分の授業に合ったアプリがないか」などをアプリ相談員に相談をする。
↓
アプリ相談員はメンバーを招集し、相談を受けたニーズを伝える。
↓
アプリ相談員はそれぞれでアプリを探し、相談を受けた相談員にアプリを紹介、検索して
みた結果を報告する(2週間以内を目安にする)。
↓
学校のiPad(1~2台)に試験的にそのアプリを取り入れてみて、相談された教職員
に紹介する。
↓
そのアプリを学習や学校生活に取り入れてみた場合は、「その後どうなったか」などの
結果を伝える。
図 3-2
ICT プロジェクト組織図
(4)まとめ
東住吉特別支援学校はプロジェクトチームを組織することによって、障がい種別の違
いを越えていかに現在の環境の中で、より良い支援機器の使い方に取り組めるのかを考
32
えることができた。研修などを計画することによって、全体的な教職員の支援機器に対
する苦手意識を払拭することができた。これからも、様々な場面において支援機器を使
うことによって児童・生徒にとってよりよい学習を提供できる方法を考えていきたい。
10.大阪市立東淀川特別支援学校
(1)学校の概要
東淀川特別支援学校は、平成 27 年4月に開校した知的障がい教育を行う特別支援学校
である。「大阪市立特別支援学校整備計画」により知的障がい特別支援学校の通学区域を
見直し、大阪市立思斉特別支援学校の通学区域のうち、東淀川区、淀川区、西淀川区を
通学区域とする学校として開校した。
東淀川特別支援学校は地域とのつながりを大切にし「共に学び、共に育ち、共に生き
る」教育を進めること、個に応じた指導の充実を図ること、地域における特別支援教育
のセンター的機能を発揮していくことを目標としている。
開校1年目であり、
「マイスクール東淀川」をスローガンに、児童生徒一人一人が「大
好きな私の学校」と思える学校づくりを目ざしている。
(2)1年目の取組
平成 27 年4月開校のため平成 26 年度の取組はない。
(3)2年目の取組
平成 27 年度に開校したため本事業の研究は1年目となる。環境整備が遅れ、iPad の納
入設置が9月末になったため、11 月までの取り組みは、当初予定していたものより遅く
なってしまった。本事業で設置された5台に加え、大阪市事業である「校長経営戦略予
算」で別途 3 台購入し、計 8 台で運用を開始した。
ICT 環境で言えば、パソコン教室の利用率は教員全体のうち 50%を超えており、全て
の学部でパソコンを利用した授業が行われている。
小学部に 2 台、中学部、高等部は各学年に HDMI 入力端子のあるテレビを設置しており、
小学部低学年はノートパソコンとテレビをつないで、朝の会や図工、「ことば」、「かず」
などの授業で ICT 機器を活用し、児童生徒の興味関心を引き出している。小学部高学年
では、ノートパソコンとプロジェクターをつないで、パソコンの手作り算数教材やソー
シャルスキルトレーニング(SST)の学習に利用している。
中学部・高等部でもパソコンとテレビをつないで拡大提示のために利用しており、パ
ソコンの代わりに iPad で代替したいという希望も多い。
管理に関するルール作りを分掌で進めており、より多くの指導場面での活用が進むよう
33
に考えているところである。
平成 27 年 12 月には活用実践のある教員が iPad を使った教材作成をテーマにミニ研修
会を4回シリーズで行い、東淀川特別支援学校の実態に合った活用につなげている。
(4)まとめ
知的障がい特別支援学校でのタブレット端末活用を進めるという方針のもと、平成 27
年度は教員ができることから着手し、有効な事例について情報共有を図るという状況で
あった。平成 28 年度に向けては、機器活用の有効性について評価し、その内容について
ホームページ等で情報発信できるように取り組んでいく。
11.大阪市立光陽特別支援学校
(1)学校の概要
光陽特別支援学校は昭和 37 年に開校し、肢体不自由のある児童・生徒が通う特別支援
学校として創立 52 年を迎えた。平成 21 年度より、病弱教育を専門に行ってきた大阪市
立貝塚養護学校の閉校に伴い、その機能を移管し病弱教育部門を開設している。また、
平成 24 年度より、大阪市立総合医療センターと大阪市立大学医学部附属病院の院内学級
が大阪市内の小中学校から移管され、本校の分教室として開設された。また、肢体不自
由教育部門と病弱教育部門の両方で、訪問教育も行っている。平成 27 年 5 月 1 日現在の
在籍数は、肢体不自由教育部門が 108 名、病弱教育部門が 36 名である。
両部門とも一人一人のニーズを把握し、自分の思いや気持ちを相手に伝える方法を学
習し、将来、地域社会で自己実現できるよう日々の教育活動を行っている。
(2)1年目の取組
①肢体不自由教育部門
ア
小学部
小学部では、カメラアプリで動画撮影をし、訓練入院等で長期欠席の児童へ、ク
ラスメイトからのメッセージを録画して送ったり、社会体験学習で近所のスーパー
へ行くときの道順を撮影し、テレビ画面とつないで事前学習等を行っている。顔見
知りの先生や風景が画面に映るのを、食い入るように見入っていた。撮影するとき
は「Private Camera」という閲覧するのにパスワードが必要なアプリを使うように
した。
訪問教育では、音楽の授業や行事の様子などを撮影し、少しでも学校の雰囲気を
共有できるようにした。音楽が聞こえると、笑ったり手を動かしたりして表現しよ
うとする姿も見られた。
34
イ
中学部
iPad を各クラスに1台、教科主担用に2台を割り当てることができた。研修とし
て、appleTV と AirMac Express の使用方法の中学部研修を行った。iPad、PC を使用
して電子黒板への拡大表示で毎回授業する教員もあり、ICT 機器の利用頻度が高い。
自立活動や、授業素材としての音楽、映像の利用も多い。使用したい時にストレス
なく使用できる、生徒に必要なアプリをすぐに入れられることを心がけている。
ウ
高等部
AirMac Express が導入されたことでイントラネット環境を気軽に活用することが
できるようになった。校内の無線 LAN が 2 カ月近く停滞していたこともあり、Apple
TV で拡大表示するときは AirMac を併せて使用した。Apple TV の研修を行ったこと
もあり、授業でタブレット端末の活用の際、大型モニターで拡大表示を行う教員が
増えた。
エ
肢体不自由教育部門全体
AirMac Express の導入によって無線環境が整い文化祭での劇において iPad を利用
し、プロジェクターと Wi-Fi 接続した iPad で、生徒の様子を映し出す、またはアプ
リの操作で自己表現するなどの取り組みが、徐々に見られるようになった。
校内無線LANの原因不明のトラブルが解消され、校内の大部分で Wi-Fi 利用が
可能になった。しかし、学校内の利便性を高めるには、拡大表示設備の常設や、設
定手法の周知方法の研究、簡易化など課題がある。
②病弱教育部門
ア
E-Lecture(イーレクチャー)による遠隔授業(iPad・パソコン)に参加
目的:小児がんによる長期入院の子どもたちに病院と病院をつなぐ授業を行う。
チャイルド・ケモ・ハウス(小児がん専門治療施設)楠木医師からの紹介。
日時:平成 26 年9月 26 日(金)午後2:30~3:30
場所:参加者:院内学級や分教室で学習している児童生徒
内容:
「みんなでおしゃれなシューズを考える」ヒューマンアカデミーのデザイナーの方が
担当。入室にはパスワードが必要。デザイン選挙という形式で、選択肢機能で参
加者の投票結果がリアルタイムに表示され、参加しているという実感のあるライ
ブ授業。
35
イ
本校・分教室・訪問学級の交流授業を実施
目的:同じ光陽特別支援学校で学ぶ児童生徒が場所を超えて交流する機会とし、連帯感
を高める。
日時:平成 26 年 10 月9日(木)午後1:45~2:30
場所:本校教室・各病院の教室・病室
参加者:本校、総合医療センター分教室(小・中・ベッドサイド)、市大分教室(当日欠席)、
訪問(国立医療センター・赤十字大阪病院・JCHO 大阪病院)
内容:司会→総合分教室、
ビンゴゲーム→本校
自己紹介(本校・訪問・市大・総合の順で)
ゲーム大会(ビンゴゲーム)全員にビンゴカードを配布し、ゲームを開始する。
8位までの入賞者に賞品を準備。
準備物:iPad・パソコン・WiFi などの必要なものは各部署で用意する。
賞品について、児童生徒の手作りのものなどを考える。
備考:Google ハングアウトを利用するものとする。
事前に通信のための予行を行う。(10月2日(木)午後4時から)
問題点など:病院内で通信がうまくいかないところがあった。
WiFi の数が足りないので、個人の WiFi を使った場所もあった。
(3)2年目の取組
①肢体不自由教育部門
ア
小学部
各学年と訪問学級に 1 台ずつ iPad が割り当てられたことにより、活用頻度があ
がった。自立活動の時間だけでなく、朝の会や学級などでも使用されることが増
えてきた。iPad、PC をプロジェクターやテレビモニターに拡大表示して授業を行
う機会が増えた。活用頻度が上がったことにより容量不足が問題となっており、
必要アプリの定期的な見直しが必要である。また、平成 26 年度より進めていた訪
問学級と本校を「Facetime」でつないでの交流が、病院との連携により今年度初
めて実施することができた。
イ
中学部
平成 27 年度は、昨年度以上に多くの教員が iPad を普段の授業で利用するケー
スがみられた。特に、一斉授業での電子黒板へのミラーリングが一番多く、続い
て音楽の再生(中学部購入の bluetooth スピーカー接続)もよく使われていた。
これらは、iPad 単体での利用形態ではないことから、周辺機器の充実が活用推進
への一つのカギとなっていたと思われる。また、機器の扱いに精通した複数の教
36
員が、積極的にサポートすることにより、これまで活用したくても苦手意識が強
く実行に至らなかった教員も積極的に利用する結果につながった。
ウ
高等部
iPad がよく使用されるケースは VOCA(コミュニケーション手段)、カメラ、イン
ターネットを活用した調べ学習が最も多い。本事業で iPad の台数が増えたことで、
1 日の生活を通して iPad をコミュニケーション手段として使う生徒も現れた。自
立活動主体の教育課程の児童生徒にとって iPad を直に触って操作したり、因果関
係の理解をしたりすることが難しいケースも多く、スイッチやその他の周辺機器
と組み合わせて使われることが多かった。
エ
肢体不自由教育部門全体
肢体不自由部門の文化祭において、ほぼ全ての学部で iPad を利用した生徒の演
技、教員の音響、映像操作が行われた。生徒が舞台上で操作しやすいように、
bluetooth 接続したプレゼンテーションアプリの遠隔操作や、文字の入力、選択に
よりセリフを発表するなど、生徒の実態に寄り添い、工夫されていた。
肢体不自由部門において、生徒自身が iPad を利用するためには、スイッチや無
線接続のキーボード、リモコン等の、フィッティングや加工が必要となり、その
準備は学部単体の限られた人員では難しい部分があったが、本事業を通じて、若
手教員を中心に学部を越えての自主的な改造工作会や、アプリ活用方法の定期的
な相談会の企画、新聞発行など、情報を発信し共有していく機運が高まった。
②病弱教育部門
ア
本校と訪問教育生徒をつなぐ
光陽特別支援学校本校で勤務するネイティブの英語教員と訪問教育の生徒とが
iPad を活用し、遠隔授業を3回実施した。また、平成 26 年度と同様に本校・分教室・
訪問の交流授業を 10 月に中学部、11 月に小学部で実施した。中学部は C-NET 英語教
員による「わたしは誰でしょう?What am I?」クイズを、小学部は絵カードを使用
した外国語活動「ライオンゲーム」を、iPad を使って Google ハングアウト(テレビ会議シス
テム)を活用して実施した。どちらも、病気と闘う仲間が離れた場所で同じ時間に一
緒に活動することにより、連帯感を高めることができた。
イ
分教室
教室(分教室)に登校できない児童生徒の病室と教室(分教室)をつなぐ遠隔授
業を 7 回実施した。また、入院中の児童と原籍校(児童の入院前に通学していた学
校)とをつなぐ遠隔授業も実施した。入院中の学習空白をうめるために分教室で授
37
業を実施しているが、治療等で教室に登校できない時でも、授業に参加できるよう
に工夫した。
平成 27 年度は、退院後すぐに登校できない児童生徒に対する学習支援も実施し、
退院後の自宅療養中の児童生徒への遠隔授業(分教室と自宅をつなぐ授業)を実施
した。総合医療センター分教室では 19 回、市大病院分教室では 36 回実施できた。
このことにより、原籍校へスムーズに復学することができた。
ウ
病弱教育部門全体
平成 27 年度は、
「e ライブラリ」学習支援システムを iPad やパソコンに取り入れ、
治療等で教室に登校できない児童生徒や、訪問教育で積極的に活用している。病弱
部門での ICT 活用は遠隔授業が大きな割合を占めているが、遠隔授業で必要な Wifi
端末の数に限りがあるので、児童生徒全員に遠隔授業を実施することは難しい。ま
た、原籍校との交流は、相手校にも同じ ICT 環境がないと実施できないため、可能
な学校としか実施できない。しかし、遠隔授業や原籍校交流による学習効果は大き
いので、できる限りの支援をこれからも続けていきたいと考えている。
(4)まとめ
光陽特別支援学校では平成 25 年度に、時代に応じた校内組織の改編を行い、校務分掌
として ICT 教育部を設置した。おりしも大阪市教育委員会が「支援機器等教材を活用し
た指導方法充実事業」の研究を受嘱することとなり、光陽特別支援学校が大阪市内の特
別支援学校 11 校の拠点校(事務局)としての役割を担うこととなった。1年目は 14 人、
2年目は 17 人の教員が所属し、毎月の ICT 担当者会に参加、会議の運営を担当した。会
議の運営を担当することにより、拠点校としての役割を意識して取り組むことができた
ことは、大きな成果であった。校内研修や外部の研修へも積極的に参加し、ICT スキルの
習得と他の教員への伝達に努め、校内全体の ICT 活用の普及につながった。今後も、授
業等での効果の分析を続けながら、指導力の向上に努めていきたい。
38
第4章
教職員への質問紙調査について
1.質問紙調査の概要
(1)実施目的
特別支援学校の教員の ICT 機器の活用状況と現状の課題を把握する。
同じ質問項目を平成 26 年度と平成 27 年度に実施することで、本事業の
取り組みの成果、ICT機器活用の普及度を検証する。
(2)実施時期
1回目:平成 26 年 9 月下旬~10 月中旬
2回目:平成 27 年 10 月上旬~10 月中旬
(3)実施方法
質問用紙(A4表裏印刷1枚)による選択肢の回答記入
一部自由記述無記名、ただし、年齢・学部等は回答
各特別支援学校で実施目的説明の後、質問用紙配付
回収は各校で行い、集計作業は光陽特別支援学校が実施
(4)対 象 者
大阪市立特別支援学校全教職員
(管理職を除く、臨時講師を含む)
(5)回答者
平成 26 年度
平成 27 年度
(6)配布用紙
章末に掲載
867 名(回収率 75%)
856 名(回収率 71%)
2.調査結果について
(1)対象の属性について
平成 26 年度時点で、大阪市立特別支援学校は 10 校設置されており、本事業についても
光陽特別支援学校を拠点校に 10 校で取り組んだ。平成 27 年度は、新たに東淀川特別支援
学校(知的障がい校)となにわ高等特別支援学校(知的障がい校)の 2 校が開校となった。
平成 27 年度より、本事業について、東淀川特別支援学校を加えた 11 校で取り組んだ。
質問紙調査の対象は、管理職を除く全教職員であり、臨時講師等も含んでいる。平成 26
年度は、対象者 1151 名中、867 名から、平成 27 年度は、対象者 1212 名中、887 名から回
答を得ることができた。
(2)男女比
対象者の男女比は図 4-1 の示すとおりである。平成 26 年度は 58%、平成 27 年度は 61%
が女性であった。平成 27 年度の特別支援学校で勤務する教職員のうちおよそ6割が女性で
あることから、回答者も特別支援学校の教職員割合を反映した結果となっている。
39
507
平成26年度
360
518
平成27年度
338
平成27年度
平成26年度
女性
518
507
男性
338
360
図 4-1 男女比
(3)学部別人数
教員の学部別状況は、図 4-2 に示すとおりである。高等部の教職員が全体のおよそ 40%
と多い。ついで中学部、小学部、幼稚部という順となっている。なお、調査対象となる特
別支援学校 11 校の内、幼稚部を設置しているのは、視覚特別支援学校と聴覚特別支援学校
の 2 校である。他の 9 校については、小学部から高等部まで設置している。
29
200
平成27年度 26
204
平成26年度
0%
10%
400
232
368
254
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
平成27年度
平成26年度
幼稚部
26
29
小学部
204
200
中学部
254
232
高等部
368
400
幼稚部
小学部
図 4-2 学部別人数
40
中学部
高等部
90%
100%
(4)年代別教職員割合
図 4-3 に示すように、平成 26 年度は 20 代が 23.6%、30 代が 28.6%、40 代が 20.5%、
50 代が 23.9%となっている。平成 27 年度は 20 代が 23.6%、
30 代が 32.0%、40 代が 19.0%、
50 代が 21.8%となっており、調査を行った2回の調査の年代別割合についてはほぼ一致し
ている。
平成26年度
23.6%
平成27年度
23.6%
0%
10%
28.6%
32.0%
20%
30%
20代
19.0%
40%
30代
23.9%
20.5%
50%
40代
60%
50代
70%
21.8%
80%
90%
3.5%
3.5%
100%
60代
図 4-3 年代別教職員割合
(5)障がい種別教員数
90
平成26年度
119
63
平成27年度
0%
104
10%
217
427
450
20%
30%
視覚
40%
聴覚
50%
知的
220
60%
肢体
70%
80%
14
19
90%
100%
病弱
図 4-4 種別教員数
図 4-4 は質問紙調査の回答を得た教職員を障がい種別に示したものである。平成 26 年度
と平成 27 年度とも知的障がい校が一番多い。知的障がい校対象教員は平成 26 年度 427 名
41
であり(全回答者の 49.2%)、平成 27 年度は 450 名(全回答者の 52.5%)であった。肢体
不自由教育校は平成 26 年度 217 名(25.0%)、平成 27 年度 220 名(25.7%)であった。聴
覚障がい校は平成 26 年度 119 名(13.7%)、平成 27 年度 104 名(12.15)であった。視覚
障がい校は平成 26 年度 90 名(10.3%)、平成 27 年度 63 名(7.3%)であった。病弱校は
平成 26 年度 14 名(1.6%)、平成 27 年度 19 名(2.2%)であった。
(6)ICT 機器の使用経験について
図 4-5 は「これまで、授業等で使用したことのある ICT 機器はどれですか?」の質問に
対しての回答である(複数回答可)
。平成 26 年度調査では、パソコン(PC)が第1位であ
り、66.9%の教員が授業等に使用したことがあるという結果であった。第2位はデジタルカ
メラであり、60%以上の教職員が授業等に使用していた。
両年度とも第3位はタブレット端末であり、平成 26 年度は 35.1%であったが、1年後の
平成 27 年 10 月の調査では、その割合が 49.2%まで広がりをみせた。本質問項目に掲載し
た ICT 機器の中で、使用した伸び率が一番高い結果となった。
使用度が高いものから次いで、電子黒板、タイマー、VOCA という結果となった。
パソコンやデジタルカメラの使用率がそれほど増加傾向にないのに対し、タブレット端
末やタイマーの使用率が顕著に伸びた。
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
電子黒板
タブレッ
トPC
PC
デジタル
カメラ
音声ディ
スプレイ
ピンディ
スプレイ
VOCA
タイマー
スイッチ
その他
H26年度
33.9%
33.1%
66.9%
60.9%
4.8%
1.8%
22.0%
26.0%
14.9%
4.0%
H27年度
35.4%
49.2%
66.7%
62.0%
4.3%
0.8%
21.6%
31.5%
14.5%
3.3%
H26年度
H27年度
図 4-5 これまで授業等で使用したことのあるICT機器(複数回答可)
(7)タブレット端末活用意識
図 4-6-1 は「タブレット端末を日々の教育活動に活用したいと思いますか?」に対する回
答を示している。平成 26 年度の「たいへん思う」「思う」と回答した者は 687 名であり、
全体の 79.7%を占める。平成 27 年度は、
「たいへん思う」
「思う」と回答した者が 722 名で
あり、全体の 85.1%を占めており、1年間で 5.4%(35 名)、タブレット端末を教育活動に
活用したい者が増加した。
一方で、
「思わない」という回答は平成 26 年度が 40 名(4.6%)であったが、平成 27 年
度には 27 名(3.2%)と減少した。
42
238
H26年度
449
272
H27年度
0%
10%
135
450
20%
30%
たいへん
40%
思う
50%
60%
思わない
40
99
70%
80%
27
90%
100%
全く思わない
図 4-6-1 タブレット端末活用意識
図 4-6-2 は平成 27 年度における年代別活用意識を示している。
「タブレット端末を日々の
教育活動に活用したいと思いますか?」という問いに、「たいへん思う」「思う」と答えた
人数が、20 代では全教職員数の 90%を超えている。また、30 代、40 代の教職員について
も 90%近い数値となっている。一方、50 代では 76%、60 代では 62%となり、20 代~40
代に比べるとその意識は低いことが理解できる。この割合は、平成 26 年度も同様であった。
60代
5
50代
13
48
40代
93
85
91
20代
148
70
0%
10%
15
4
25
8
111
20%
30%
たいへん
図 4-6-2 平成 27 年度
12
32
58
30代
1
10
40%
50%
思う
60%
思わない
17
70%
80%
90%
2
100%
全く思わない
年代別タブレット端末活用意識
図 4-6-3 は、平成 27 年度障がい種別タブレット端末活用意識を示している。
病弱校では「たいへん思う」
「思う」と答えた者は 100%であった。
「たいへん思う」
「思う」
と答えた者が 80%を超えているのが、知的障がい校、肢体不自由教育校、聴覚障がい校で
43
あり、視覚障がい校は 74%であった。
全体
272
知的
142
肢体
71
聴覚
35
10%
4
12
32
20%
2
13
54
0
8
11
0%
5
16
125
病弱
16
58
231
13
視覚
27
99
450
30%
40%
たいへん
思う
50%
60%
思わない
70%
80%
90%
100%
まったく
図 4-6-3 平成 27 年度障がい種別タブレット端末活用意識
(8)タブレット端末の活用方法
図 4-7 は「タブレット端末を日々の教育活動に活用したいと思いますか?」の問いに「た
いへん思う」「思う」と回答した者に対して、「具体的にどのような活用をしたいですか、
あるいはしていますか」を尋ねた結果である。
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
教科書
プレゼン
テーション
調べ学習
ノート
VOCA
認知学習
コミュニ
ケーション
その他
H26年度
22.4%
43.5%
41.9%
9.6%
14.1%
55.0%
40.9%
2.4%
H27年度
20.2%
51.1%
46.6%
9.0%
15.2%
56.7%
44.2%
3.5%
図 4-7 活用方法(複数回答可)
「認知学習」の回答が平成 26 年度、27 年度とも高く、平成 27 年度では 56.7%となって
いる。次いで「プレゼンテーション」との回答が多く、平成 27 年度では 51.1%であった。
平成 27 年度では、
「調べ学習」が 46.6%、
「コミュニケーション」場面を伸ばす学習が 44.2%
であった。「教科書」として活用したいという回答は、両年度とも 2 割程度であった。
44
また、「教科書」と「ノート」の項目以外の全ての項目で、平成 26 年度に比べて、平成
27 年度は「活用したい」という回答率が上昇していた。
(9)タブレット端末を活用したい授業
図 4-8 は「タブレット端末を日々の教育活動に活用したいと思いますか?」の問いに「た
いへん思う」「思う」と回答した者に対して、「具体的にどのような授業で活用したいです
か、あるいはしていますか」を尋ねた結果である。
「各教科(各教科等をあわせた指導を含む)」という回答が、平成 26 年度は、63.1%、
平成 27 年度は 67.8%であった。
「自立活動」と答えた者が、平成 26 年度では 53.4%、平成 27 年度は 58.3%であった。
「総合的な学習の時間」との回答は、平成 26 年度は 32.8%、平成 27 年度は 36.7%であっ
た。
「特別活動」と答えたものは、平成 26 年度は 26.2%、平成 27 年度は 31.1%であった。
すべての回答項目で、平成 26 年度と比べ、平成 27 年度は回答率が上昇した。
80.0%
70.0%
60.0%
50.0%
40.0%
30.0%
20.0%
10.0%
0.0%
各教科
自立活動
総合学習
特別活動
H26年度
63.1%
53.4%
32.8%
26.2%
H27年度
67.8%
58.3%
36.7%
31.1%
図 4-8 活用する授業(複数回答可)
(10)使用したいと思わない理由
図 4-9-1 は、「タブレット端末を日々の教育活動に活用したいと思いますか?」の問いに
「思わない」「全く思わない」と回答した者に対して、その理由を尋ねた結果である。「苦
手意識がある」については、平成 26 年度は 71 名であったが、平成 27 年度は 47 名であっ
た。「使い方がわからない」者は、平成 26 年度 81 名、平成 27 年度 57 名であった。「役に
立たないと思う」と答えたのは、平成 26 年度 19 名、平成 27 年度 12 名となった。すべて
の項目について、平成 27 年度の人数が平成 26 年度から減少している。
図 4-9-2 は、平成 27 年度調査における「タブレット端末を使用したいと思わない」理由
を年代別に示したものである。図 4-5 のタブレット端末活用意識の理由を問う質問項目であ
る。
「苦手意識がある」の項目は、20 代、30 代、40 代とも5%以下に対して、50 代は 10.7%、
60 代は 16.7%であった。
「使い方がわからない」の項目では、20 代、30 代、40 代とも5%
以下に対して、50 代は 10.7%、60 代は 23.3%であった。
45
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
人
苦手意識がある
使い方が分からない
役立たないと思う
その他
H26年度
71
81
19
58
H27年度
47
57
12
37
図 4-9-1 使用したいと思わない理由
25.0%
20.0%
15.0%
10.0%
5.0%
0.0%
苦手意識がある
使い方が分からない
役立たないと思う
その他
20代
4.0%
5.4%
1.0%
2.5%
30代
2.9%
4.7%
1.8%
3.3%
40代
3.7%
3.7%
0.6%
4.9%
50代
10.7%
10.7%
1.6%
7.5%
60代
16.7%
23.3%
3.3%
3.3%
図 4-9-2 平成 27 年度
年代別使用したと思わない理由
3.まとめ
図 4-4 で示されたとおり、平成 26 年度と比較して平成 27 年度は授業で ICT 機器の使用
率が向上した。とりわけタブレット端末は、47.1%(平成 27 年度)の教員が使用していた。
タブレット端末の活用意識(図 4-5)においても、平成 27 年度は平成 26 年度と比較して、
意識の向上がみられた。これらは、本事業による2年間の各校での研修、啓発を含めた活
動の一つの成果といえる。
一方で、図 4-6-2 と図 4-9-2 で示されたとおり、50 歳代、60 歳代の教職員については、
1割以上の教職員に「使い方がわからない」「苦手意識がある」などタブレット端末を含む
ICT 機器に抵抗感があることがわかった。指導経験、授
業力は豊富なものの、最新機器の利用に対して、一歩が
踏み出せない教員に対する、働きかけが必要である。
46
参考資料:質問用紙(表面)平成 26 年度用
平成26年9月
特別支援学校教職員 様
支援機器等教材を活用した指導方法充実事業 事務局
ICTに関するアンケートのお願い
本 年 度 、大 阪 市 で は 文 部 科 学 省 の「 支 援 機 器 等 教 材 を 活 用 し た 指 導 方 法 充 実 事 業 」を 受 嘱
し 、市 内 10校 の 特 別 支 援 学 校 に お い て タ ブ レ ッ ト 型 パ ソ コ ン 等 I C T 機 器 を 活 用 し た 指 導 方
法 に つ い て 研 究 を す す め て い ま す 。 つ き ま し て は 、 調査研究の一環として、つぎのアンケートにご
協力いただきますようお願いいたします。
※ICT(Information and Communication Technology)は情報・通信に関する技術の総称
1. あなたの該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(1)性別
1.女性
2.男性
(2)学部
1.幼稚部 2.小学部 3.中学部
(3)職種
1.教諭
2.講師
3.実習助手 4.その他(
(4)年齢
1.20代
2.30代
3.40代
4.50代
5.60代
(5)障がい種 1.視覚
2.聴覚
3.知的
4.肢体
5.病弱
4.高等部
)
2.これまで、授業等で使用したことのあるICT機器についておたずねします。
使用したことがある機器の該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(複数回答可)
1.電子黒板
2.タブレットPC
3.デスクトップ型やノート型PC
4.デジタルカメラ 5.音声ディスプレイ 6.ピンディスプレイ
7.VOCA
8.タイマー
9.各種スイッチ(入力装置)
10.その他(
)
※音声ディスプレイ…音声で読み上げる画面
ピンディスプレイ…点字が出る画面
VOCA…音声コミュニケーション支援機器
3.タブレットPC(iPadなど)の日々の教育活動への活用についておうかがいします。
該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(1) 日々の教育活動にタブレットPC(iPadなど)を使用したいと思いますか。
1.たいへん思う
2.思う
3.思わない
(2)
(3)へ
4.全く思わない
(4)へ
47
質問用紙(裏面)
(1) (1)で、1.たいへん思う
2、思うと 答えた方に質問します。
具体的にどのような活用をしたいですか、あるいはしていますか。
該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(複数回答可)
1.デジタル教科書を入れて使う。
2.プレゼンテーションを支援するための手段として使う。
3.調べ学習として使う。
4.ノートテイクとして使う。
5.VOCAとして使う。
6.認知学習の教材、教具として使う。
7.コミュニケーションツールとして使う。
8.その他(
)
(2) (1)で、1.たいへん思う
2、思うと 答えた方に質問します。
具体的にどのような授業でしたいですか、あるいはしていますか。
該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(複数回答可)
1.各教科(各教科等をあわせ指導を含む)
2.自立活動
3.総合的な学習の時間
4.特別活動
(4)
(1)で3、思わない
4.全く思わない と答えた方に質問します。
理由の該当する番号を選び、右側の□に番号を記入ください。
(複数回答可)
1.自分に苦手意識がある。
2.役に立つと思うが、どう使って良いか分からない。
3.教育活動には役に立たないと思う。
4.その他(
)
4.タブレットPC(iPadなど)の日々の教育活動で使用されている方におうかがいします。
どのようなアプリを頻繁に使用されていますか。
(複数回答可、自由記述)
(
)
5.ICT機器を使用することで、困っていることがあればご記入ください・。
(
)
ご協力有難うございました。
48
月
日までに
へ提出ください。
第5章
教職員へのインタビュー調査について
1.インタビュー調査の概要
(1)実施目的
特別支援学校教職員の ICT 機器(特にタブレット端末)の活用率向上
に資するため、平成 26 年度の成果物であるリーフレット「ワクワクI
CT」の改訂版発行と新Webページ(実践事例を掲載)の作成の問
題点を収集し、新リーフレットと新Webページ作成の一助とするた
め。
平成 27 年6月中旬~7月上旬
(2)実施時期
各校1名~3名の教職員
合計 19 名
ICT 機器の活用について「やってみたいけど、使い方がわからない」
と感じている教職員を各校の ICT 担当者が教職員の中から抽出。
対象者(一部)
(3)実施対象者
A 校 20 代高等部女性。スマホは使うけれど iPad を授業で使っていない。これからは
使っていかないといけないと思っている。
B 校 20 代小学部女性。普段 ICT を使っていない。大型モニターへのつなぎ方に興味。
C 校 30 代男性。普段はガラ携使用。ICT 機械の具体的な使い方を知りたい。
D校
40 代男性。ICT の授業での活用はない。
E 校 20 代男性。授業で iPad を使いたい。インターネットが苦手でできなかった。
F 校 30 代小学部女性。iPad を使った経験はあまりない。カラー印刷のかわりに、カ
ラーの写真教材を見せるために iPad を購入した。Web はまだ見ていない。
(4)実施方法
対象教職員に対して、各校の ICT 担当者がインタビューを実施
インタビューは 30 分~60 分程度
質問者(ICT 担当者)と実施対象者が原則1対1で実施
実施対象者にインタビュー内容を録音することを予め確認
インタビュー後、19 名分の逐語録を作成
意見を集約し、似ている項目ごと分類
整理した項目について、ICT 担当者会議にて検討し、新リーフレット
と新 WEB ページの対象、内容、構成の資料作成を実施
(5)質問項目
●リーフレットに関する質問
①リーフレットの内容は印象に残りましたか。
②印象に残った内容を可能な限り教えてください。
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③リーフレットの情報量はどうでしたか。
④どのような内容が欲しかったですか。
⑤リーフレットの読みやすさはどうでしたか
⑥どんな点が読みにくかったですか。読みやすかったですか。
⑦リーフレットのデザインはどうでいたか。
⑧どんなところを改善したらいいと思いますか。
⑨リーフレットは面白かったですか。
⑩四コマ漫画の形式はどうでしたか。
⑪ICT 機器の初心者の方にとって、わかりやすい内容でしたか。
⑫ICT 初心者の方にとって、興味を引く内容でしたか。
⑬ICT 機器を利用するイメージが湧きましたか。
⑭他の先生にお勧めするには、どのような内容が必要と思いますか。
●web ページに関する質問(実践事例集に関する質問)
①web ページは見ましたか。
②web ページの内容を覚えていますか。
③web ページはどんなところが見やすいですか。
④どんなところが見にくいですか。
⑤実践事例のデザインはわかりやすいですか。
⑥印象に残った事例はありますか。
⑦その事例のどんなところが印象に残りましたか。
⑧実際に自分が指導に利用できそうな事例はありましたか。
⑨ICT 機器を使って、どんなことをしてみたいですか。
⑩どのような ICT 機器の利用の仕方について情報が欲しいですか。
⑪ICT 初心者にとって、事例はわかりやすいものになっていますか。
⑫ICT 初心者の方にとって、興味を引く内容でしたか。
2.調査結果について
(1)リーフレットに関する代表的意見
①肯定的内容
・情報量はちょうどいい。
・こんな実践をやってみようと思った。
・初めてみるアプリもあってわかりやすかった。
・手作り感があっていい。
・4コマ漫画の型式がわかりやすかった。
・興味を引きつける最初の一歩のリーフレットだ。
・視覚や聴覚障がいの方の実践がわかりやすかった。
・初心者にとってはわかりやすかった。
・自立活動の時間に活用したい内容であった。
・見開きのリーフレットで読みやすかった。
・漫画があり、インパクトがあった。
・web ページに誘導しているところが良い。
・3分くらいで目を通すことができた。
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②要望、改善すべき内容
・実践例や使った教員の率直な感想がほしい。
・アプリの使い方などを載せてほしい。
・アプリを紹介してほしい。
・全くの初心者の人にとってはわかりにくい。
・カメラ機能、ビデオ機能の紹介が知りたい。
・運用事例やトラブル回避法が知りたい。
・表紙が楽しそうでないので開きにくかった。
・身体が動きにくい方への使い方を知りたい。
・障がい種(視覚・聴覚・肢体・知的・病弱・発達)別のリーフレットがほしい。
・使用(授業)風景が見られたらいい。
・QR コードの使い方が分からない。
・パターンを増やしてほしい。
インタビューを受けたほとんどの方が、リーフレットの内容量やデザインについて肯定
的な評価であった。一方で、アプリ紹介や実践例を載せてほしいというより実践内容紹介
を求める意見も多数あった。
(2)Web ページについて出てきた意見
①肯定的内容
・実践例がわかりやすく掲載されている。
・実践例は内容が端的でわかりやすかった。
・授業で役立てる方法がある。
・iPad で1日の流れが提示できるものは参考になる。
・困り感の部分が書いているのでわかりやすかった。
・教科の授業で活用できる内容であった。
・興味を引く内容だった。
②要望、改善すべき内容
・字が詰まっていて見にくい。(絵や写真があった方が見やすい)
・学校ごとの統一感がない。
・目次があるとわかりやすい
・アプリの事例がほしい。
・児童、生徒の実態と機器の解説が知りたい。
・障がい種別をわかりやすくした方がいい。
・教科ごとの実践事例が欲しい。
・iPad のアクセシビリティが知りたい。
・写真を集めて iPad で提示する方法を知りたい。
・動画があるとさらにわかりやすい。
・アイコンがあっても実際にどう繋がっているかわからない。
・タブレットで見たものをプリントするにはどうしたらいいか。
・光陽の Web ページから見たが、リンクがわからなかった。
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(3)その他の意見
インタビューした方の中で、リーフレットや Web ページ以外に ICT 機器使用に関して発
言された意見の中で、本事業に関わる内容について列挙した。
・ICT に関して訪問して教職員に指導して貰うとか相談する窓口があればいい。
・QR コードは学校間の校務支援パソコンでは見られない。
・ICT 機器と教育に精通しているスーパーバイザーが各校を巡回して欲しい。
3.まとめ
インタビュー調査の結果をもとに、ICT 担当者会議において話し合いを行いリーフレッ
ト作成と Web ページ作成にかかる方向性を次のとおり見出した。
(1)リーフレットについて
①教職員への ICT 機器使用に関する動機づけ(インセンティブ)を与えること。
「これまでの授業に、より幅を持たせることができる」「今までに出来なかったことがで
きた」「感覚的に操作ができる」などを印象的に伝える。
①分量はおおむね見やすく参考になるという意見がほとんどを占めていた。パターンを増
やして欲しい、具体例を載せてほしいという意見もあったが、具体例を載せれば、リー
フレットのページ数、文字数が多くなり、結果、手に取って見ないこともなる。リーフ
レットについては、Web ページへと誘導する入口の一つとしてとらえて編集することと
する。
②4コマ漫画については、肯定的な意見が多かった。字だけでは見る気が起きないという
意見が多数見受けられた。4コマ漫画内の字が多くて読みにくいことには改善の余地が
ある。実際にタブレット端末の写真を使ってほしい(アプリの操作画面)とか、使って
いる様子を載せてほしいなど意見があり、参考とする。
③「ICT が苦手である」
、「やったことないけど、使ってみたい」という人に対して参考に
なったという意見がもらえるようなリーフレット作りを考える必要がある。そのため、
より深く知りたい人は web ページに誘導できるように工夫する。
(2)Web ページについて
①Web ページについては、ポータルページを作ること。
現状、各特別支援学校で作成し、光陽特別支援学校が各校にリンクをはっているが、利
用者の立場では検索しにくい、使いにくい、また各校がそれぞれの提示の仕方をしてい
るので、統一感がなくて見にくいという意見が多く出ていたので、光陽特別支援学校に
ポータルページを作成し、実践事例を整理していく。
②実践事例の用紙はわかりやすいという意見が多かった。活動している場面がわかるよう
な写真や絵があると理解しやすい。
③Web ページを充実させていくため、使用方法や設定方法など動画があるとわかりやすい。
インタビューの中で、「使用場面が見たい」「研修をしてほしい」といった内容の意見が
多数あった。設定や大型モニターへのつなぎ方については、web ページ内で確認できる
ようにする。
④「簡単にできますって書いているけど、それって簡単じゃない」という意見があった。
使用する際の注意点や、初心者が陥りやすいことをまとめた ICT 用語集などを web ペー
ジで作成する。
52
第6章
まとめ
1.成果
(1)校内組織による研修体制、管理体制の整備
本事業を受嘱したことで、光陽特別支援学校を拠点校に ICT 担当者会議を月1回程度開
催した。各特別支援学校から選出された ICT 担当者は、担当者会議に出席し、情報交換、
情報共有、研修等を行った。本事業を受嘱するまでは、ICT 機器を担当する校務分掌を設
置している学校は3校程度であったが、平成 27 年度より、情報教育部や情報教育委員会、
ICT 担当チームなど校内における組織が構築された。これによって、タブレット端末をは
じめとする ICT 機器の管理や整備の充実に向けて、校内で組織的な取組が進むようになっ
た。
また、夏季・冬季休業期間中にタブレット端末に関する研修会を開催した。4校は保護
者向けにもタブレット端末活用に関する研修会を開催し、重度の障がいのある児童生徒へ
のコミュニケーション手段としての活用や障がいの状況にあわせた機器のフィッティング
など、保護者に対する個別相談を実施する学校もあった。
(2)教職員の ICT 機器にかかる意識の向上
すべて特別支援学校において、タブレット端末の校内への導入やタブレット端末に関す
る専門家アドバイザーによる教員研修会を開催した。教職員アンケート調査においても、
回答した教員全体の 85%が「タブレット端末を授業に活用したい」と思っている状況と
なり、教員の ICT 機器を活用したいという意識は大きく上昇した。2年間の事業により、
各校において少なくとも1回はタブレット端末の活用研修を実施しており、ICT 担当教
職員がタブレット端末活用に関するミニ研修会も複数回実施して、授業で実践できる事
例等を紹介するなど、教員のニーズに応えることができた。
(3)拠点校を中心とした特別支援学校のネットワーク構築
拠点校に毎月1回程度担当者が集まることで、担当者同士が校内体制の情報を共有化で
き、ICT 機器の貸出、活用したアプリ情報の交換、研修会情報の情報交換等が頻繁に行わ
れ、必要な時には学校間のメーリングリストで情報共有するなど、担当者間のネットワー
クが構築された。事業2年目には、冊子作成グループと WEB 作成グループに分かれて、各
自メールやクラウドを利用し、2年間の成果をまとめることができた。
光陽特別支援学校では、定期的に ICT 通信を発行しており、メーリングリストによって
ICT 担当にも配付した。本事業終了後も、ICT 機器活用の実践は継続予定であり、今後の
学校間連携のあり方についても積極的に検討していく。
(4)専門家からのアドバイス
平成 26 年度から、NPO 法人支援機器普及促進協会高松崇先生と兵庫教育大学の小川修
史先生を研究アドバイザーとして招聘し、ICT 担当者による指導方法充実検討会議や特別
支援学校でのタブレット活用にかかる研修会に参加いただいた。高松先生からは最新の ICT
機器に関する情報提供とタブレット端末使用に関して陥りやすい失敗事例、児童生徒が成
功体験を感じることができた成功事例を毎回ご報告いただいた。小川先生からは、ICT 機
器活用に関する基本的な考え方と研究方法・研究内容に関するご示唆をいただいた。
陥りやすい失敗事例として「アプリで教えようとする」
「アプリで遊ばせようとする」
「授
業中すべての時間タブレット端末を使用している」など具体的な例をあげ指導いただいた。
53
同時に、最終的には、カメラ機能、ビデオ機能、音声読み上げ機能を活用する方法が基礎
基本であり、既存の機能の重要性について示唆をいただいた。
また、小川先生からご提供いただいたクラウド環境を使って、メールでは送信できない
情報や冊子作成、報告書作成資料をクラウドにアップロードすることで、作業効率を大幅
に向上させることができた。
(5)小学校との連携
各特別支援学校から、特別支援学校のセンター機能として要請のあった学校に対して、
ICT 機器の授業での活用方法について相談支援を実施した。また、巡回アドバイザーを小
学校に派遣して、特別支援学級の授業を観察し、利用可能なアプリ紹介や大型モニターを
使用した提示方法などを特別支援学級担当教員に助言した。アドバイザーが当初は、授業
前の ICT 機器の準備や機器操作の手伝いをすることもあったが、教員も次第に機器利用に
慣れ、タブレット端末を活用できなかった教員が、漢字検定に備えたオリジナル問題を作
成アプリで自作するなど、活用範囲を広げることができた。さらに興味を示した教員の中
には、アドバイザーから、デジタル教材作成に関する基礎知識について指導を受ける者も
いた。
(6)保護者との協力・連携
平成 26 年度から就学奨励費による ICT 機器購入にかかる補助金が支出されるようになり、
拠点校の光陽特別支援学校では、高等部1年生の教育課程に ICT 機器活用を位置づけ、タ
ブレット端末を購入した。肢体不自由特別支援学校4校を中心に、高等部1年生にタブレ
ット端末を購入し、授業で活用する動きが広がってきた。また、保護者への研修会を実施
することで、タブレット端末活用の目的、利便性、学習効果、利用方法について、理解を
促すことができた。
(7)WEB による授業実践の周知
本事業における特別支援学校の ICT 機器を活用した授業実践事例については、光陽特別
支援学校のホームページに掲載した。ホームページでは、実践事例を「機能別」「教科別」
「障がい種別」で分類しているほか、タブレット端末の初期設定方法やよくある質問コー
ナーを整備した。実践事例については、特別支援学校教員のほか、本市の小・中学校特別
支援学級教員が数多く閲覧している。
2.課題
(1)インターネット環境の整備
本市の特別支援学校においては、各教室における無線環境は整備されておらず、各特別
支援学校においては公費により wifi 端末をリースするなどの対応をしてきた。教員アンケ
ートの中にも wifi 環境が限定的であるとか wifi 端末の台数の少なさ、LAN 環境整備の課題
があった。本事業により、各特別支援学校に wifi 端末を整備し、特別教室も含めすべての
教室においてタブレット端末がインターネットに接続されたが、児童生徒にタブレット端
末を活用した合理的配慮を提供するためにも、基礎的環境整備としての無線 LAN 環境の整
備が課題となる。なお、特別支援学校の大阪府への移管に伴い、平成 28 年度より、普通教
室等にも LAN 環境が整備された。
54
(2)教職員への理解啓発
教職員の中には少なからず、タブレット端末を一部の児童生徒だけが活用することに違
和感がある者もおり、ICT 機器の授業での活用について十分には理解できているとはいえ
ない。本事業の成果として平成 27 年度「ワクワク ICT2―初級者用タブレット端末入門―」
を作成し、特別支援学校、小中学校等に配布し、広く ICT 機器活用を促す予定であるが、
引き続き、特別支援学校のセンター機能として連携していくことが必要である。
また、ICT 機器を十分に活用できるよう、教育センター等で基礎から応用編まで多様な
教職員ニーズに応える研修を準備する必要がある。
(3)大型電子黒板や大型モニターの整備
本事業をとおして、タブレット端末は個別課題の取組場面や、個別の進度に合わせて授
業を展開する場面では有効であったが、タブレット端末で作成した児童生徒の作品や児童
生徒にタブレット端末の画面を提示する時には、画面が小さいため、大型電子黒板や大型
モニターが欠かせないことを指摘された。
特別支援学校や小中学校の特別支援学級においては、少人数での学習が実施されている
が、タブレット端末では視線がタブレットに端末に集中するため、児童生徒に一斉指示す
る際には、大型モニターが効果的であった。
本市においては、大型電子黒板が各特別支援学校に1台は整備されているが、複数教室
で使用することが困難な状況であり、複数設置している学校については、これまで各校に
配当された公費から購入している状況である。平成 28 年度より、大阪市の小・中学校にお
いては普通教室に大型モニターが段階的に整備される予定であり、本事業での成果が小・
中学校においても有効利用されることが望まれる。
(4)小・中学校との連携
平成 28 年度から本市では、市内全小・中学校に 40 台ずつタブレット端末が整備され、
大型モニター、プロジェクターも段階的に全小・中学校の普通教室に整備されることとな
る。すでにモデル校として実践研究を進めてきた学校はあるものの、今後、特別支援学校
のセンター機能として、活用方法の事例提示や指導助言、機器のフィッティングの支援、
機器貸出などを活用する機会が増加することが見込まれる。平成 28 年度より大阪市立特別
支援学校は、大阪府に移管されるが、通学区域は大阪市であることから、支援の必要な児
童生徒への ICT 機器活用については、今後とも特別支援学校のセンター機能を活用し、小・
中学校との連携が一層進むことが望まれる。
(5)保護者、関係者との連携
タブレット端末をはじめとする ICT 機器は、これまでの児童生徒の学習方法や学習形態
を変えており、特に障がいのある児童生徒にとって ICT 機器は、時にはコミュニケーショ
ン表出の手段となっている。学校生活だけでなく、家庭生活や職業体験の場でも効果的に
利用できることから、保護者に対して PTA 研修会の機会や学校通信を通して、その有効性
について理解を求めることも学校、教育委員会が今後努めていかなければならない。
(6)ICT 支援員の整備、ICT 教員加配の配置
障がいのある児童生徒にとって、ICT 機器の活用は不可欠となっている。例えば、内
言語はあるが言葉で相手に伝えることのできない児童生徒の場合のコミュニケーショ
ンツールとして、また、ノートテークとして、録音として、遠く離れた友だちと同じ学
習をする機器として等々、様々な活用方法がある。しかし、それらをツールとして活用
55
するには一定の ICT に関する知識と技術が必要であり、「こんな授業をしたい」と思っ
ても、なかなか実践に結び付けることが難しいのが現状である。校内に ICT 機器に関す
る支援員を配置し、相談できる体制を構築することにより、技術的な面でのサポート、
一人一人の実態に応じた合理的配慮(授業方法、授業内容、教材等の工夫)の研究や提供
もできると思われる。
※大阪市立特別支援学校は、平成 28 年4月1日より大阪府に移管する。
なお、学校名については、次のように変更する。本事業における支援機器活用に関する
実践事例を掲載した WEB ページは、「大阪市立光陽特別支援学校」ホームページから「大
阪府立光陽支援学校」ホームページに移動する。
平成 28 年 3 月 31 日まで
平成 28 年 4 月1日より
移管後の名称
*変更箇所に下線
移管前の名称
大阪市立視覚特別支援学校
大阪府立大阪北視覚支援学校
大阪市立聴覚特別支援学校
大阪府立中央聴覚支援学校
大阪市立思斉特別支援学校
大阪府立思斉支援学校
大阪市立難波特別支援学校
大阪府立難波支援学校
大阪市立生野特別支援学校
大阪府立生野支援学校
大阪市立住之江特別支援学校
大阪府立住之江支援学校
大阪市立光陽特別支援学校
大阪府立光陽支援学校
大阪市立西淀川特別支援学校
大阪府立西淀川支援学校
大阪市立平野特別支援学校
大阪府立平野支援学校
大阪市立東住吉特別支援学校
大阪府立東住吉支援学校
大阪市立東淀川特別支援学校
大阪府立東淀川支援学校
大阪市立なにわ高等特別支援学校
大阪府立なにわ高等支援学校
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資
料
①『ワクワク ICT タブレットパソコンを活用した実践例』
②『ワクワク ICT2
③実践事例
初級者(はじめて先生)用タブレット端末入門』
(光陽特別支援学校ホームページ参照)
④アプリ一覧
iPad 編
⑤アプリ一覧
windows タブレット 編
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①『ワクワク ICT タブレットパソコンを活用した実践例』 平成 27 年3月作成
58
59
②『ワクワク ICT2
初級者(はじめて先生)用タブレット端末入門』
平成 28 年3月作成
60
61
62
63
③実践事例
(光陽特別支援学校ホームページに掲載)
実践例を
①機能別
②教科別
③障がい種別
にカテゴリー化しています。
初期設定の方法も
掲載しています。
平成 28 年4月から
は、ここから検索し
てください。
64
iPad
65
編
66
67
68
69
70
71
72
73
Windows タブレット 編
74
75
76
77
78
79
80
アプリ一覧作成については、アドバイザー
浅野晃一さんと森野宅麻さんによる。
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研究体制
大阪市 ICT 担当者会議メンバー
柳川 敏美 光陽特別支援学校 校長
押井 泰子 光陽特別支援学校 教頭
坂部 大介 光陽特別支援学校
岡本 一恵 光陽特別支援学校
藤原 優子 視覚特別支援学校
池口 晴子 視覚特別支援学校
綿谷 彰人 視覚特別支援学校
堀野 篤
聴覚特別支援学校
山田 誠
難波特別支援学校
大原 忠雄 難波特別支援学校
石塚 由紀 生野特別支援学校
荒木 千年 生野特別支援学校
岡本 佑美 住之江特別支援学校
浅野 雄大 西淀川特別支援学校
丸田 公司 平野特別支援学校
吉尾 泰孝 東住吉特別支援学校
中村 亮
東住吉特別支援学校
澤井 真理 思斉特別支援学校
小野 威夫 東淀川特別支援学校
光陽特別支援学校 ICT 教育部
平岡 昌樹 大阪市教育委員会事務局指導部インクルーシブ教育推進担当
研究協力アドバイザー
高松
小川
浅野
森野
崇
修史
晃一
宅麻
NPO 法人 支援機器普及促進協会
兵庫教育大学大学院学校教育研究科
畿央大学 大学院
大阪教育大学 大学院
講師
平成 28 年 3 月 発行
大阪市教育員会事務局
指導部 インクルーシブ教育推進担当
Tel 06-6237-1009
Fax 06-6237-1023
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