議事録 - 北海道後志総合振興局

廃屋・空き家対策検討会(第2回)議事録
日時:平成23年10月14日(金)13:30~15:30
場所:後志合同庁舎
3階 1 号会議室
【1.開催挨拶】
後志総合振興局小樽建設管理部
鳴海参事より開催の挨拶。
【2.第1回検討会のまとめについて】
事務局より
資料1について説明。
アドバイザーからの補足説明。
名塚氏:
2つほど、前回の内容に補足をしたいと思います。
資料1の1ページ目、「国への要望」の部分ですが、固定資産税に関する問題として建物
が建っていると低減税率が適用されてしまう、それで不要でも建物が残ってしまうという
部分です。この地域でそのような問題があるかはわかりませんが、国レベルで議論されて
いるところでは、問題が提起されています。
住宅用家屋についての固定資産税の低減措置が、住宅の管理放棄を助長しているのでは
ないか、ということです。テレビでご覧になった方もおられるかもしれませんが、横須賀
市が先進的な取組をしています。横須賀市における住宅の管理放棄の要因は、建物が壊れ
てしまっていても土地の上に残っていれば固定資産税が安くなるということで放置されて
いるといわれています。それが老朽家屋の放置につながっているということで、関係する
ところに聞いてみました。
住宅用地の特例については、地方税法の第 349 条の3の2にありまして、税の付加につ
いては各市町村の条例の中に置かなくてはならないので、税条例の中に同じ規定を置いて
いると思いますが、専ら人の居住に供される建物は通常の建物の課税の1/3になるとい
うことで、更にその面積が 200 ㎡以下の小規模住宅用地については1/6まで減じられま
す。
この制度自体は昭和 48 年にできたもので、当初は1/2にするというものだったのです
が、国の住宅政策の中でどんどん改正されていって、現在このようになっています。
現場ではどう取り扱っているのかというと、新築の建物であれば、現地をみて、固定資
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産税基礎額をチェックするわけですが、それ以降については、土地の用途が変わっていな
いかのチェックはありますが、人が住んでいるのか住んでいないのかのチェックはされて
いないのが実情だと思います。
居住の用に供している建物は税が安くなるわけですが、その定義はきちんとされている
のか、というと法律上の定義がされているわけではなくて、社会通念上居住しているとい
うことになるそうです。国からの指針のようなものはないのですか、と聞くと、そういう
ものは存在していないということでした。
自治体によって、
「人の居住の用に供している」の判断は、バラツキがあるということで、
廃屋の状態になったら人の居住に供しているとは言えないので、減税の対象としてない自
治体もあれば、そのままになっていることもある、ということです。
それで、そのことが老朽家屋を放置する原因になっているのかということですが、放置
されるところの土地の価格が必ずしも高額ではない場合も多く、北海道の地方部において
は、あまり影響がないと思われます。
もし、放置する人たちが固定資産税のことを理由にしているのであれば、住居にしてい
るのかのチェックをきちんとして、放置家屋所在地には特例無しの高い税率を適用すると
か、廃屋除去済みの宅地には減免の措置をすることを考えることも可能ではないかと思い
ます。減免が難しいということであれば、補助制度を活用するなどの手法もあるかと思い
ます。
古くなってしまって崩れているような家屋は、本当に家屋なのか、廃棄物だから片付け
てしまった方がいいのではないか、ということがありまして、火事で焼けてしまった家屋
の残存部分については、事業で解体したわけではないので、一般廃棄物ではないかという
ことがあります。自ら解体して、運搬だけ頼んで、一般廃棄物処分場で処分するというも
のです。
廃屋状態のものの判定ですが、10 人の人が見て、廃棄物だ、といったから廃棄物になる、
というものではないということです。持ち主が廃屋について価値があるなどと主張すると
廃棄物としての処分は難しくなります。そうは言いながらも、何人かの専門家が集まって、
廃棄物と認定して取り扱うという仕組みがとれないか、ということです。
以前、例として出しましたが、廃自動車については、素材が鉄ですから、廃棄物ではな
くて資産価値がある、と管理している人が言う限り、廃棄物ではなかったのですが、自動
車リサイクル法が改正になって、使用済みの自動車は廃棄物とみなすことが規定されて(自
動車リサイクル法第 121 条)、廃棄物処理ができるようになったということで、効果が現れ
てきました。法改正がされるまでの間、進んだ自治体がどうやっていたかというと、専門
家が何人か集まって、廃物の認定手続きをとっていました。所有者が何と言おうと、廃物
として扱うことを行っていました。廃棄物法制を完全にクリアしているかというと怪しい
部分もありましたが、そういう手法をとっていた自治体もありました。
このような廃物認定の仕組みをとっていく、ということも考えられます。
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補足について以上です。
【3.廃屋・空き家に関する意見交換】(資料2参照)
テーマ1
廃屋・空き家の事例
倶知安町:
今回紹介させていただくのは国道沿い、スキー場のリゾート地内の6つの事例です。
一つ目は、赤井川方面から国道393号線を倶知安方面に来ると、国道脇に、倉庫だと
思われる建物があります。所有者の意向は不明です。夏場は木が生い茂って隠れています
が、これからの季節は国道から丸見えになり、目立ってしまいます。
2 番目ですが、こちらも国道393号線沿いです。平成22年度の段階では、形が残って
いましたが、昨年冬の雪で崩れてしまったものと思われ、がれきとなっており、廃棄物に
近いと思います。
3 番目ですが、こちらも国道393号線沿いです。一部車庫として使われている部分もあ
りますが、大半が崩れています。所有者の意向としては撤去する費用が無い、ということ
で、どうするのかわからない状況です。
4番目ですが、花園リゾートの別荘地の中にある建物で、ホテルとして使われていまし
たが、所有者が外国の方で、今後どうするかの確認はとれていません。この場所であれば、
更地にすれば売れるのではないかと思いますが、売却の動きも見られません。どんどん崩
れているということと、別荘地の中にあるので、景観を壊しているというものです。
5 番目は、ひらふスキー場へ通じている道道沿いです。もとは事務所、店舗として使われ
ていたようです。所有していた会社が倒産したということで、仮差し押さえや抵当権の解
除などがされず、そのままになっています。更に倒産時の混乱に乗じて、第三者が使用し
ていたということもあり、詳しい状況が確認できないので、管財人からの話では、すぐに
は撤去できないと聞いています。固定資産税も未納の状況となっています。このまま放置
が続くと景観上も安全上も問題となってきます。
6番目ですが、国道5号線沿いで、ニセコ町との町境付近にあります。もともとは車庫
とサイロだったのですが、ほとんど崩れています。夏は木が生い茂って隠れていますが、
冬になって草木が枯れてくる頃から、国道から目立つようになります。除却の費用が工面
できないことから放置されていると推測されます。
国道やリゾート地にあることから、観光産業への影響も懸念され、早めの対処が必要と
思われます。
所有者の資金不足について、補助金の対策や、所有者が判明している場合の行政からの
指導をどこまでやれるのかということが問題としてあります。行政の資金投入について、
防災や防犯としての名目でやれるのかという問題もあります。
また、相続放棄、外国人所有など、所有者と連絡をとるのが困難な場合、どのような対
処法があるのかということについてお伺いしたいと思います。
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現在は廃屋にはなっていませんが、外国資本のコンドミニアムの建設が進んでおり、今
回の震災や円高の影響により、売り物件になったまま放置されているような建物もあり、
空き家から廃屋となってしまう場合も懸念されます。空き家を廃屋としない対策も必要と
考えます。
ニセコ町:
ニセコ町では、平成14年度に1件だけ廃屋撤去に補助をしたことがあります。内容を
ご説明しますと、平成14年に、廃屋の周辺の住民の方から、町では廃屋撤去に関する補
助はないか、という相談がありました。廃屋は市街地にあって、屋根が半分ぐらい落ちて
いて、トタンが剥がれそうになっていました。周辺への危険もあり、道道にも面していた
ので、交通の危険にもなるということで町内会から要請がありました。当時それに対する
補助制度はありませんでしたが、検討の上、ニセコ町廃屋撤去促進事業補助要綱というも
のをつくりまして、なんらかの団体が廃屋を撤去する際には、経費の1/3で 20 万円を上
限とする補助を行うこととしました。平成15年度に町内会が撤去したのですが、その内
の 15 万6千円を町が補助したという事例が過去1件だけございます。
このときは、廃屋の所有者が判明していたということ、連絡がとれていたということが
ありますし、本人は撤去ができなかったのですが、町内会が自腹を切ってでも撤去したい
ということで、主体的に廃屋撤去に関わっていた団体が存在したためにスムーズに行えた
ということです。また、所有者が不明で連絡がとれない、全額補助を町に出して欲しいと
か、町に全部を一任されてしまっても、廃屋撤去は難しかったと思います。実際に、今で
も町内に廃屋は存在しており、相談を受けている物件もありますが、所有者が不明という
ことで、手紙を出しても戻ってくる、という状況でして、このような場合どうしたらいい
か、ということで町として困っている状況です。
それと空きビルについての事例です。モイワリゾートタワーズという建物です。モイワ
スキー場のすぐそばに「甘露の森」というホテルがあるのですが、それと隣接しています。
平成3年に建築された分譲マンションでしたが、売れ行き不振ということで、倒産しまし
て、その後、オーナーが次々と替わり、一度平成15年にホテルとして開業しました。そ
の際に、レストラン、厨房を新しくして、営業を開始したと聞いています。レストランも
評判が良かったそうですが、やはりそのホテルも倒産してしまって、現在オーナーはいま
すが空き家状態で、内部も相当傷んでいるのではないかと思われます。こういった空きビ
ルは規模も大きいので、何らかの形で営業していって欲しいのですが、今の状況ではなか
なか難しいのか、オーナーが思いきってくれない状況にあります。ニセコ町としても、お
願いはしているのですが、現実的には解決されていないということです。
小規模な空き家は、町内に潜在的に存在していると思われ、ずっとシャッターが閉まっ
たままの商店ですとか、軒先が壊れていたりして、このままでは廃屋になってしまう場合
が多く、空き家の活用についても方策を立てていかなければと思っています。
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寿都町:
元は建設会社の事務所だった建物に住宅が隣接していたものです。平成18年に会社が
倒産して、それ以来空き家になっていました。場所は国道沿いで、歩道もあるところです。
比較的交通量も多く、人の通行も多いところです。平成22年の5月に1階部分の外壁が
壊れて、剥がれてきました。雨や風でどんどん外壁が壊れ、平成22年 10 月には、2階部
分まで剥がれた状態になりました。最終的には、今月の3日に、町外の方が購入し、新し
い所有者になっています。この後、新しい所有者が改修するということで一安心となりま
したが、そこまでの経緯は大変な作業がありました。
元の所有者は会社が倒産して、個人としても破産していまして、札幌にいるので、連絡
はとれるのですが、金銭的余裕がないということで、改修等もできずに破損が進んでいっ
たということがあります。函館方面寿都警察と国道の歩道管理者ということで小樽開発建
設部岩内道路事務所と協議し、所有者に顧問弁護士がついているということで、その弁護
士の方と話を進めました。平成22年5月から平成23年の 10 月まで数十回のやりとりを
行いました。
特に苦労した点は、地域住民から、崩れて危険だとの苦情が多く寄せられるので、崩れ
た場合に通行人等に被害があった場合の責任の所在ということで、所有者と弁護士への連
絡を行いました。また、民法の事務管理の規定の中で、町での応急措置も一度は検討した
のですが、完全に改修しなければ、また崩れてきたときの管理責任の問題や、これ以外に
も町内に壁が崩れている物件があるので、他の物件への整合性があったものですから、応
急措置も行えなかったということがあります。
弁護士の方とのやりとりが、時間がかかったりして大変だったということがあります。
また、物件には金融機関の抵当権がついており、金融機関による競売が実施されました
が、買い手がつかず、債権会社に譲渡されました。債権会社でも不動産会社を使って販売
されましたが、当初 300 万円という値段でしたが、壁も崩れている物件ですので、その価
格では買い手がつかず、町としても早く買い手が見つかって欲しいことから、弁護士を通
じて債権会社と価格交渉をしまして、1/3くらいの価格にしてもらい、買い手を見つけ
ることができました。
買い受け者を見つけるのも大変だったのですが、町内の有力者、事業を展開できそうな
民間の会社、建設関係の会社、建設協会を通じて、買い手を探してもらい、最終的に整理
することができました。
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【テーマ1の意見交換】
石川氏:
倶知安町の報告で、相続の時に困っているというお話しがチラッと出ました。
前回、相続についてお話ししていないので、その内容をお話しします。
相続が発生した場合、相続人がわかれば、その方を所有者にできますが、相続人がいな
い、もしくは、相続人はいたが全員が相続放棄した場合は、相続財産管理人の選任という
手続きになり、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。その人を所有者として話をす
ることになりますが、相続財産管理人も廃屋であれば引き取ってもらいたいということに
なるでしょうから、そことの話し合いということになります。
名塚氏:
ニセコ町の事例にあった、地域住民が解体を求めてきたときのケースについて、関係す
る話として、解体した跡地をどうするのかということがよく問題になります。跡地は町内
会で管理をしてくれる、ということになる場合もあります。
例えば、廃屋の所有者が、土地と建物を自治体に寄付するという場合、自治体が建物を
解体するとしても、その後の空き地の管理が自治体としても大変になるわけですが、それ
を町内会に管理してもらうという仕組みの成功例がいくつかあります。もちろん、それに
はその町内会など地域のコミュニティがしっかりしていないと成立しません。また、町内
会自体が認可地縁団体(地方自治法第 206 条の2)のしくみをとって、登記能力を持つこ
とで、空き地の管理を行うことも進められてはいます。もちろん、これは、土地所有者の
合意があって、地域で受け取る体制があって成立することです。
石川先生に一つ質問なのですが、民法の関係(民法第 940 条 1 項)ですが、次の管理者
が決まるまでの間は、相続放棄した人でも管理義務を問えるのではないか、相続放棄した
人は、その間何も責任を負わないのか、ということです。
石川氏:
「処分」と「管理」は明確に分けられています。例えば売却という行為をしてしまえば、
後日相続放棄はできないので、相続放棄を予定している人に、売買や贈与を求めることは
できないのですが、危険性の除去に協力するとか、管理する行為については求めることが
できます。
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農業委員会(舟林氏):
倶知安町の国道393号線沿いにも農家の方の所有と思われる廃屋がありますが、最近
の農業者の高齢化、後継者不足ということが要因としてあります。後継者のいない農地に
ついては、農業委員会であっせん等しまして、地域の農家の方へ売買、賃貸借するなど、
ある程度整理されます。住宅については、当初農地の中に住宅を建てて生活の拠点とされ
ているのですが、高齢になってくると生活の不便さなどから市街地の方に引っ越される方
もいます。また、市街地に住んでいるお子さんのところに行かれるということもあります。
そのようなことから空き家になることがあります。
最近は農業委員会にも年数件程度、農家の空き住宅を探している、農業をしたいという
相談を受けますが、農業委員会でも空き物件の情報を把握しているわけではないので、対
応に困る場合があります。また、農地の取引は農地法の許可基準が厳しく、一般の人の農
業参入は簡単ではありません。ここ数年の倶知安町での一般の方の農業参入の事例はあり
ません。
濱田氏:
今、農地の話がありましたが、現在景観条例制定のお手伝いをしている栗山町でも農家
の方から同じように廃屋の話が出て、その処理の仕方について、今回の議論に参考になり
そうなのでご紹介します。
農地と農家がある場合、その二つを切り離してしまって、売りやすい農地の方をどんど
ん切り売りしてしまうと、宅地と建物だけが残ってしまい、それを廃屋処理として扱うの
はとても大変になってしまいます。農地と建物を一体的に扱う、例えば農地の代金に建物
の処分費用も含めるなどの対応をとっていかないと、外堀の農地が全部他人のものになっ
てしまっているのに、宅地と建物だけがポツンと残ってしまっても処分できなくなってし
まいます。そうならない対応策を考えなくてはならないと思います。例えば解体費に 200
万円かかるとして、その土地代金に 200 万円も含めて、条件をつけて処分するという話を
聞きまして、なるほどと思いました。
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石川氏:
倶知安町の話を聞いていて2点あります。対応方針をどう決めるかの根幹に関わってく
ると思いますが、倶知安町の事例の2番目、これは既に「建物」ではありません。
廃屋とは何か、空き家とは何かの定義を決める必要がありますが、民法上では、不動産
というのは、土地と土地の定着物です。建物は土地の定着物になるのですが、建物とは何
かというと、最低限、屋根と壁があるということになります。それでいくと、屋根、壁が
崩れてしまっている事例の2番目は建物ではない、ということになります。屋根、壁が残
っているものとの線引きをどうするかということはあります。
あと、所有者が判明している場合はどうするか、所有者が不明の場合はどうするのか、
という枠組みになると思いますが、所有者が判明しているが対応困難な事例があるという
パターンもあります。例えば、外国人所有者の場合どうするのか、というお話しがありま
したが、私の知っている事例としては、日本人の所有者で海外に行っていて連絡がつかな
い、という場合があります。この場合も所有者は判明しているが、対応が困難という場合、
こういう場合も類型として考えておく必要があると思います。
テーマ2:空き家バンクの事例
小樽市:
本市は、空き家バンクを始めて2年目ということで、まだ模索している段階です。壁に
当たりながら一個ずつ解決しているような状況です。
状況をご報告させていただくと、現在登録件数が3件となっております。これまでの成
約は5件ほどとなっています。登録件数が少なく、お問い合わせいただいたニーズと合う
ものが少ないということが現在の課題となっています。
市ではその対応として1つ目に、登録の間口を広げるということで、これまではすぐ人
が住める物件ということで築 20 年以内の物件を対象としていましたが、リフォーム物件も
対象とするということで、築 40 年までの物件を掲載することとしました。また、2 つ目と
しては、物件の掘り起こしということで、登録可能な空き家を調査して、登録可能な物件
には登録を勧誘していくという作業をしています。
この掘り起こしの方法としては、行政が市内の調査を行い、空き家を見つけてくるとい
う方法と、町内会から、この家は引っ越ししましたよ、というようなリアルタイムの情報
をもらうという方法をとっています。
行政による調査については、過去にも調査を行ったことがありますが、その当時空き家
だったものも、現時点で1/4程度は入居していたということがわかりました。どんどん
情報が変わっていくので、把握するのが大変だという状況です。
町内会からのリアルタイムの情報ということは、町内会自体が情報を把握していないと
いうことと、情報を知っていても本人の承諾がないので、個人情報を出せないということ
があります。このように、リアルタイムな情報による掘り起こしが難しいということがあ
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ります。
所有者への連絡としては、直接お会いしたり、ダイレクトメールで依頼文を送ったりす
るのですが、連絡がとれた何人かは、現在倉庫代わりに使っている、売ったり貸したりを
考えていないということで、バンクの登録まで至っていないということもあります。
空き家の情報の入手方法について、その他良い方法が何かあるかについてのご意見や、
眠っている物件を市場に出すしかけづくりについてアドバイス等をいただければと思いま
す。
【テーマ2の意見交換】
名塚氏:
空き家情報の入手についてです。固定資産税では、家屋の調査と土地の調査があるので
すが、きめ細かく行われているが土地の調査で、用途が変わっていれば土地の課税標準が
変わります。税情報を他のことに使うことはできませんが、空き家状態かどうかというこ
とを共有することはできるのではないかということです。
廃屋・空き家の担当部局の方は大変な思いをされていることが多いのですが、同じ自治
体にいながら縦にしか情報が得られていない。うまく情報を共有できるしくみが必要では
ないかと思います。私が調査したところでは、税務部局では、空き家かどうかについてあ
まり関心を持っていないようでしたが、居住の用に供していないのであれば税の特例をか
けておくわけにはいかないので、そのような税の観点からも、空き家かどうかの情報は必
要ではないかと思います。
濱田氏:
所有者の同意を得るのが難しいというお話しがありましたが、良い事例とか、メリット
があるという実感を得られれば、貸してもいい、と思ってもらえると思います。建築につ
いて素人の方ですと、使い方の具体的イメージを描いて考えるのは難しいと思いますが、
専門家集団である建築士会などがアドバイスなどして、ここに窓があけられますよ、とか
この柱は抜いても大丈夫ですよ、とか、活用のイメージを示してあげると意向も変わって
くると思います。これから空き家バンクの社会実験が具体的に動いてくると需要が喚起さ
れてくる筈ですし、地域に貢献できるということがわかると貸してもいいかな、という気
持ちになると思います。所有者の方には経済的なことだけではなくて、面子(めんつ)や
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プライドなどの部分もあります。お金が欲しいから貸した、売ったと思われたくないとい
うこともある。そういう時に「地域に貢献することですよ」ということを言ってあげると、
それが同意のきっかけになることもある。商店街の空き店舗を活用する時などにも、
「代々
守ってきた店舗をお前が売り払うのか」と言われるのではないかと思って、ぎりぎりまで
手放せないという事が多いのですが、「あなたにご協力をいただくことによって、地域に貢
献できるまちづくりが実現されるのです」ということを言ってあげると少し気が楽になる
というこがありますので、そういうやり方も必要かと思います。
建築士会
榊氏:
今濱田さんがおっしゃったように、今あるものをそのまま使うのではなく、リフォーム、
リサイクルして活用することを考えて行く必要があると思います。今、バンクの実験を行
いつつありますが、小樽市さんのバンクでは、貸す、売る物件の紹介はしていますが、借
りる側、買う側の要望について、ニーズの把握はされているのでしょうか。
ニーズの情報も出ていると、その情報を見た方で物件を所有している人が、そういう物
件を持っているよ、ということもあるのではないかということで、両方の情報をマッチン
グさせることもできるのではないかと考えております。
また、濱田先生がお話しされたように、利用方法や、こういう建物がこういうふうに利
用されているよということも紹介することによって、利用する人も増えてくるのではない
かと、そのように利用してもらえればと思っています。
宅建協会
由井氏:
昨日、小樽の宅建協会のメンバーと話す機会がありまして、小樽の空き家バンクの話を
聞いてみました。小樽市は、北海道では大きな市ですから、需要が多く、不動産業者も多
いので、業として成り立つものですから、公共の情報を活用しなくても常に物件が動いて
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いる状態とのことでした。
倶知安町、ニセコ町に関しては、業としてなんとか成り立つのですが、本当に空き家バ
ンクが必要なのは、不動産業者のいない町村、いたとしても1社くらいで、情報がほとん
ど無いところ、そういうところは、町村役場を頼って、空き家はないだろうか、という問
い合わせが全国からあるのだと思います。倶知安町、ニセコ町では外国人向けのホームペ
ージを持っている業者もありますから、全世界からネットで検索できるようになっていま
すので、倶知安、ニセコに関しては空き家バンクを見てくれるのかな、という心配があり
ます。そういうものに負けない別のルート、別の方法を創り上げていかなくてはならない
と思っています。
【4.(仮称)後志地域における廃屋・空き家に関する対応方針 構成(案)について】
資料3により、事務局より説明
名塚氏:
事例ごとに対応を検討していくということは、いい方法だと思います。私たちは空き家、
廃屋のことを考えるとき、目の前にあるものをどうするかということだけですと、下を向
いてしまいがちです。このメニューがすべてを網羅しているかどうかは、これから検討し
ていけばいいかと思いますが、このやり方で基本的に良いかと思います。
空き家の適正管理に関する条例は、本当は、きちんと整理して資料を出して説明した方
がいいかなとは思います。
今、いくつかの自治体で、空き家の適正管理に関する条例が制定されています。ちょっ
とブーム的になっているとも言えます。最近の例では所沢市が策定しています。多くは都
市型の自治体で策定されています。
この地域においては、廃屋問題は景観保全というものを保護法益だと捉えて条例を策定
していくことになるのかと思います。景観条例の中で適正管理の部分の条項を持つ、例え
ばニセコ町さんは、そういう条項を持っている。そういう作り方があるかなと思います。
最近策定されている適正管理に関する条例は、空き家・廃屋に関する問題は生活環境へ
の悪影響であるという側面に重点を置いています。長い条例なのかというと、そうではな
くて、10 条くらいです。目的は何にしているかというと、生活環境保全とか、防犯だとか
というものを保護法益にしています。それを、先行事例としてそのままこの地域に持って
きても、あまり使い物にはならないのかなと思います。その他、空き家の適正管理義務だ
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とか、指導権限、監督権限、適正管理への措置命令、命令に従わない場合の氏名公表など
を行っています。
それを読むと、その自治体の一生懸命さは理解できるのですが、そういうようにしてで
きた条例は、個別事例のねらいうち、例えば、この廃屋が問題だから、それを撤去させる
というように、目の前のものしか見えていない。対処療法でしかない、長い時間をかけて
不正管理が働いていくかというと、10 条くらいのものでは、それが見えない。
また、現場の人たちを自縛してしまうということもあります。条例は所管する部、課、
係を決めてしまうので、本来は、地域全体の問題として取り組まなくてはならないのに、
所管部局だけにまかされて、孤立してしまう。条例をつくったばかりに進まなくなってし
まうことがある。そういうことも念頭において、条例化の方向を十分検討する必要があり
ます。この地域における目的は、防犯、生活環境保全ということではなくて、自然景観、
農村景観だとかまちなみ保全、その他プラスアルファなど、広めになるのかな、と思いま
す。目的達成のための方策として、予防対策とか現在必要な対応とか、将来に向けた対応
なども条例に盛り込めればいいと思います。担当課を自縛する条例ではなく、使い物にな
る条例にしていくことが必要だと思います。先行事例の調査をされるときは、与えられて
いる環境の違いを認識して調査されるといいと思います。
濱田氏:
ねらい打ちや対処療法にならないことを視野においた、長期的解決法をここで議論すべ
きだと思います。
今日、管内の廃屋・空き家の実際の現場をみせてもらいましたが、あと 10 年もすると廃
屋の候補ではないか、というものが結構見えてきます。今現在あるものに対処しても、ま
た 5 年、10 年後には、イタチごっこのように発生します。
この問題は、景観サイドだけではなくて、生活設計どうするの、ということまで絡んで
くると思います。例えば、夏の間だけでも・・・と言って農家のおばあちゃんが一人で広
い一軒家に住んで、農作業を生き甲斐として暮らして、その場所を維持しているというよ
うな場合、家族や周りはどう手をさしのべるべきなのか、行政がどうサポートできるのか、
専門家はどうアドバイスできるのか、ということもありますが、結局は個人の生活や価値
観に絡んでくるものですから、なかなか踏み込みにくいということがあります。将来に向
けて地域はこういうことをやっていくのだということをコミュニティに対しても認識して
もらわないと、他人の生活に首をつっこんでくるなということを言われるかもしれません。
長期的な視点に立つということでは、自治体の財政事情と深く関わりがあります。必要と
される財源の面では、資料には現時点で地域づくり総合交付金と書いてあるが、これもい
つまであるかわからない。でも行政施策として一旦始めたものをやめるのはなかなか難し
い。行政としては、予算化して単費でもやりたい、でもはじめると、その先ずっと負担が
増えていくので踏み込めない、ではどうするのか、ということになる。そのような点も視
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野に入れた仕組みにしていくことが必要ですし、先ほど名塚さんがおっしゃったように使
い物になる条例にするということ、石川さんのお力もお借りして法的な担保を確認する、
そして現行の法律が有効でない場合には、「ここをこういうふうに変えてもらえれば解決で
きる」という国への要望を地域からあげていく、といったこと等も含めて、やり遂げるの
は大変ですが、せっかくこのような体制で検討していますので、きちんと整理できれば、
全国的にも良い事例になるのではないかと思います。
石川氏:
資料3の1ページですが、所有者の同意が得られるかどうかという問題と、財源のこと
があって、財源は右側に書いてあります。この整理の仕方として、所有者が判明している
場合と不明の場合にややこだわり過ぎているのではないかと思います。むしろ同意が得ら
れる場合と同意が得られない場合に分けて整理し直すべきではないかと思います。
大規模物件の解体積立金制度ですが、これは条例の内容を構成するものと考えているの
か、分譲マンションの場合は、管理組合の積立金のような、修繕積立金に上乗せのような
ものかと思いますが、果たして条例でできることなのか、というのがあります。こういう
発想は必要なのだと思います。普通のマンションにおいてもこの問題は発生してくるので、
大胆な発想ですが、突き詰めて考えてみなくてはならないなと思います。
条例は制定の範囲ですね、空き家の適正管理に関する条例ということでお考えのようで
すが、どういうことまで条例に含めていくのか、目的は何かということを明確にして、た
たき台をつくっていくという作業になると思います。条例をつくると、所有権の制限とい
うことになり、憲法違反ではないかという議論に必ずなりますので、先進事例をみて、た
だし目的は地域によって違うということで、よくよく考えていかなくてはならないと思い
ます。
【基本方針について(アドバイザーからの提案)】
名塚氏:
後志地域における廃屋・空き家の対応方針の検討に当たって、この地域ですべての自治
体がバラバラではなく一体で考えていくための方向性について、抽象的かもしれませんが、
確認しておくことを提案させていただきます。
廃屋・空き家問題の原因は、地域ごと、案件ごとに多様であることから、即効的な対策
を見いだすことは非常に難しい状況にある、とありますが、廃屋状態になっても撤去費用
が出せないとか、抵当権の付き方が複雑で誰と話をしたらいいのかわからない、とか原因
がバラバラであるということです。
また、建物の管理について、国や自治体がどこまで対応すべきか明確な基準があるもの
ではない、ということです。
後志地域においては、廃屋・空き家問題がもたらす、雄大な自然景観、豊かな地域資源、
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築き上げてきたブランドなど地域資産への影響が認識され、すべての自治体と関係団体が
この問題への対応を検討している、ということで、個々の自治体の問題ではなく、地域全
体の問題として対応を検討している、このような地域が一体となった取組は全国的にもめ
ずらしいものです。後志地域に適応した取組となるよう、課題への共通認識を確認し、対策の方
向性を示すため、基本方針をもってはどうか、という提案です。
全国的にめずらしいというのは、全国的事例としてよく出てくるのは長野県の観光地を
事例にしたものありますが、これも研究レベルでとどまっていて、具体に何かを展開した
ということは聞こえてきてはいません。この地域では課題認識だけではなくて、対応策に
まで入っていくので、そういうことで注目されるということです。
基本方針で、どんなことを考えればいいかということでいくつかあげてみました。
(1)対策の目的
ここの地域における対策の必要性や重点をしっかり定めた方がいいだろうということで
す。そうすれば展開例としては、地域性を活かした対策が出てくるでしょうし、全部を一
遍に解決するということはできないとしても、モデル事業を企画、立案して実施すること
によって、次につなげていくということも、方法としてあると思います。
(2)自治体関係者の連携した取組
対策の広域性とか相互連携、役割分担ということも意識をした方がいいと思います。展
開事例の中で条例がありましたが、条例の方向性として、誰がつくるのか、道レベルの話
なのか、各市町村レベルなのか、ということがあります。課題が市町村レベルを越えてい
るということになっていくと、統一条例をつくろう、ということで、尻別川の河川流域の
保全関係については統一条例となっていますが、要は、同じ条例の内容を各自治体が制定
する、そんな方向も考えられるのではないかと思います。
それから、財政負担の方向性としては、長期的な視点の項目かもしれませんが、他の自
治体の対策は、自らの自治体にもプラスになるということです。自らの政策を実施すると
きにも、プラスに応じていくということで、他の自治体にまかせておけばいい、というも
のではないという認識が必要です。財政負担については、その事例を多く抱え込んだとこ
ろが負担していかなくてはならないという状況が生まれてくるのですが、この地域全体で
考えると、お隣の町の先行的な取組は、必ず境界を接している自治体に影響を及ぼしてい
るといえます。その町にお金をあげるということではなくて、自分たちの地域内で対応す
るという考え方を財政負担でできるのではないかと思います。
また、年次計画の調整ですが、エリアごとに良好な計画を持たないと、バラバラやって
もダメだということです。
(3)長期的視点で継続して取り組む
対処療法では下を向いてしまうのですが、長期的な視点を持てば、少しは上を向いてい
けるということで、廃屋・空き家化する要因に対する予測の対応の仕組みをしっかり考え
ていく必要があると思います。
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他地域の事例を収集・評価して、事業選択の可能性を検討していく、ということで、失
敗事例のデータベースをたくさん持つよりも、成功した事例のデータベースを参考にする
ということがいいと思います。また、自分達の実施事例を評価していくということ、それ
は全国に発信するということだと思います。
このようなことをアドバイザーからの提案としてまとめてみました。よその地域の人が
勝手なことを言っているな、と思われるかもしれませんが、この地域が注目されているの
は、このような長期的な総合的な対策をできる地域ということで注目されていると思いま
すので、そのようなことを整理して、共通認識を持ってやっていかれるといいと思います。
濱田氏:
地域の広域性についてお話ししますと、後志では、7町村で広域の景観指針をつくった
ときに出た話として、「地域のブランドイメージについては、運命共同体であって、どこか
がうまくいかないと全体もうまくいかない」ということをお互いに意識し合いながら、力
を合わせてやっていくこと、これが、この地域の特徴ではないかと思います。その中で、
「自
分のまちだけ」という意識では出なかった発想や解決策が出てくれば、有意義なものにな
ると思います。これだけのメンバーで、幅広い専門アドバイザーがいますので、この地域
でできなければ、他の地域ではできないというぐらいの責任感と、やれば本当に解決でき
るということを信じながらやっていくことができればいいなと思います。
ニセコ運輸
古谷氏:
空き家や廃屋の対策として、対応方針案が示されましたが、第一にやらなくてはならな
いことは、今あるものを何とかしなくてはならないということで、それと同時に、今後そ
ういうものが出ないように、また出たときにどう対応していくか、という二本立て、三本
立てで考えていく必要があると思います。私は、解体、撤去を商売としているので、でき
れば解体、撤去が増えてくれるといいのですが、活用されて最後の最後に解体しなければ
ならない、というときに我々の商売になる、というのが社会の役に立つことなのかなと思
います。ですから、まだまだ使えるのに解体するのはもったいないな、と思うものもたく
さんありますし、これはもうゴミだよね、というものが野ざらしになっている場合もあり
ます。この会を機会にそういうことが少なくなればと思います。
また、条例については、実際には活用した事例がないものもあるのではないかと思いま
す。条例を策定するのであれば、それがしっかりと活用されるようなものになればいいな
と思います。
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【5.しりべし空き家バンク社会実験について】
事務局より、資料4-1、4-2にて説明。
【6.その他】
事務局:
先ほど説明した、対応方針
構成(案)については、本日頂きました内容を盛り込みま
して、次回検討会において、対応方針(案)として、ご報告をさせていただきます。
対応方針(案)の作成まで、時間がございますので、後ほどでも意見がございましたら、
事務局までお寄せいただければと思います。
以上をもちまして、第2回廃屋・空き家対策検討会を終了いたします。
ありがとうございました。
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