中学生:薬剤師の仕事を体験してみよう

事業実施内容
1.実験型理科学習
実験型理科学習 Ⅰ
アンジェラスシリーズ
中学生:薬剤師の仕事を体験してみよう
高校生:庭園をデザインする
スターシリーズ
中学生:ウインドカーを作ろう
高校生:エネルギー資源と省エネ
ローズシリーズ
中学生:アサリの浄化能力を調べてみよう
高校生:化学実験「発色する化学」
実験型理科学習 Ⅱ
アンジェラスシリーズ
中学生:おいしいチョコレートの作り方
高校生:DNA鑑定実習
スターシリーズ
中学生:抗原抗体反応を利用して血液型を調べる
高校生:危ない薬
~麻薬、覚せい剤、大麻から違法ドラッグまで~
ローズシリーズ
中学生:ショウガやクズから漢方薬『葛根湯』をつくる
高校生:遺伝子の本体であるDNAの分離にトライ
- 5 -
実験型理科学習 Ⅲ
アンジェラスシリーズ
中学生:あなたの血液中にぶどう糖はどれくらいある?
高校生:かぜ薬をつくってみよう!
~解熱・鎮痛薬エテンザミドの合成と確認~
スターシリーズ
中学生:海洋動物の形態観察
高校生:酵素を使っていろいろな食品の糖分を測定しよう
ローズシリーズ
中学生:ミルキークイーンの美味しさに迫る
高校生:バベルの塔はなぜ潰れたか?
ローズシリーズ-Ⅱ
高校生:遺伝子の本体であるDNAの分離にトライ
実験型理科学習 Ⅳ
アンジェラスシリーズ
中学生:パソコンでパズルを解く!
高校生:こころを科学する
~心理実験への招待~
スターシリーズ
中学生:はっぱの科学分析
~植物色素の抽出と観察~
高校生:化学実験「液体窒素・ドライアイスの性質・利用」
ローズシリーズ
中学生:コンクリートのふしぎ
高校生:解熱鎮痛剤って何?
~コンクリートはどうして固まるの~
~アスピリンとアセトアミノフェンの特徴と定性分析~
公開テーマ
中学生:レーザと光の不思議
高校生:薬とサプリメント
~サプリメントは医薬品とどうちがう?~
- 6 -
第 1 回
Science Lab
平成 20 年 6 月 15 日(日)
参加生徒
72 名
引率教員
7名
スケジュール
9:45
福山大学到着
10:00~10:30
Opening Ceremony
10:40~11:40
大学施設見学
11:45~12:45
昼食
13:00~15:00
実験型理科学習Ⅰ
15:00~15:20
アンケート、感想記入
15:30
福山大学出発
連絡誘導係
福山駅:岸田早由利
松永駅:中谷吏菜
アンジェラスシリーズ:中学生
波多江智美、高校生
スターシリーズ:中学生
前濱綾佳、高校生
佐川宏幸
ローズシリーズ:中学生
藤井啓子、高校生
古謝景子
藤原美樹
写真撮影:西尾廣昭、土谷大樹
【実験型理科学習Ⅰ】
アンジェラスシリーズ
中学生:薬剤師の仕事を体験してみよう
担当者:佐藤英治、吉富博則、江藤精二、五郎丸
剛、吉村奈穂子、平田景子
実施場所:薬学部 10 号館 1F クリーンルーム、学生実習室、2F 模擬薬局
補助:石津克紘(薬、院生)、河村茉衣(薬、院生)、吉川麻里子(薬、院生)
高校生:庭園をデザインする
担当者:宮地
功、藤原美樹
実施場所:工学部 7 号館 1F プレゼンテーション室
補助:岡田典子(工、院生)、陣内将人(工、院生)、宮地洋美(工、院生)
- 7 -
スターシリーズ
中学生:ウインドカーを作ろう
担当者:小林正明
実施場所:工学部 32 号館 2F
補助:芦原幸治(工、院生)、大村佳苗(工、大学生)、高森雅祥(工、大学生)
高校生:エネルギー資源と省エネ
担当者:占部逸正、佐川宏幸
実施場所:工学部 3 号館 1F エネルギー系実習室
補助:楠見洋平(工、大学生)、久保佳央(工、大学生)
ローズシリーズ
中学生:アサリの浄化能力を調べてみよう
担当者:北口博隆、高村克美、山岸幸正、藤井啓子
実施場所:生命工学部 16 号館1F 学生実験室Ⅱ
補助:高橋淑瑛(生工、院生)、西澤安也佳(生工、大学生)、村田真保(生工、大学生)
高校生:化学実験「発色する化学」
担当者:町支臣成、日比野
俐、藤岡晴人、岸田早由利、東
修平
実施場所:薬学部 31 号館 1F 学生実習室
補助:石原裕介(薬、大学生)、佐藤智美(薬、大学生)、平田康二郎(薬、大学生)
- 8 -
アンジェラスシリーズ・中学生
薬剤師の仕事を体験してみよう
担当者:
協力学生:
場所:
佐藤英治、吉富博則、江藤精二、五郎丸 剛
吉村奈穂子、平田景子
石津克紘、河村茉衣、吉川麻里子
薬学部 10 号館 1F クリーンルーム、学生実習室
2F 模擬薬局
概要
薬剤師の仕事については多少のイメージはあるものの、具体的にどのような仕事をしているの
か知らない場合が多い。本プログラムでは、薬剤師のさまざまな仕事について概説後、学内施設
(模擬薬局、クリーンルーム、学生実習室)において、
「粉薬を調剤(ちょうざい)してみよう」、
「きっちり手洗いができているか、特殊な薬を使って確認してみよう」、「クリーンルームで点滴
を作ってみよう」の 3 つのテーマを体験した。理系の知識を生かした薬剤師という職種および薬
学分野に対する興味、関心を喚起することが本プログラムの目的である。
第 1 回 Science Lab アンジェラスシリーズ参加中学生と実施担当者
- 9 -
学習内容
(1)実習に関する講義
薬剤師のさまざまな仕事について簡単な講義を行うとともに、本日行う体験学習のメニューを説明
した(写真 1)。
概要:
「薬剤師ってどんな仕事をしているんでしょう?薬剤師は、患者さんのお薬を作るだけではな
くて、いろいろな仕事をしています。今日は、その中から、いくつか体験してみましょう(図 1)。
薬剤師の仕事を体験してみよう
患者さんに注射の方法を
教えよう
粉薬を調剤(ちょうざい)しよう
点滴を作ってみよう
きっちり手洗いをしよう
写真 1
講義風景
図1
今日のメニュー
(2)粉薬を調剤(ちょうざい)してみよう
粉薬(散剤)の調剤について体験学習を行った。処方せんの見方から、薬袋の記入、散剤の秤量、
そして散剤自動分包機の使用等を体験し、薬剤師の基本的業務の一つである調剤を実体験することが
目的である。
処
概要:「病気やケガで病院にかかると、医師が患者さ
方
せ
公費負担者番号
んの状態に合ったお薬を考え、そのお薬を患者さんに出
剤師はまずその処方せんの薬が患者さんに本当に合っ
保 険 者 番 号
公費負担医療
の受給者番号
患者ID
氏
名
5 6 0 3
被保険者証・被保険
者手帳の記号・番号
診療科
内科
中福そあら・212
福山 暁美 (フクヤマ アケミ) 保険医療機関の 広島県福山市学園町1番地
生年月日
H 6年 6月 10日
所在地及び名称
年
齢
14歳 0ヶ月 男・女
電話番号
区
分
084-936-XXXX(代表)
保険医氏名
被保険者・被扶養者
交付年月日 平成20年 6月15日
瀬戸内総合病院
斉藤 英二郎
処方せんの
年
月
日
き交付日を 含め て4 日以内に
保険薬局へ提出してく ださい。
Rp
1) 新ビオフェルミンS細粒
処
2.0 g
1日3回 毎食後 4日分
2)
ハイシープラス
2 錠
1日2回 朝・夕食後 4日分
方
以下余白
模擬処方せん
備
後発医薬品への変更について
考
後発医薬品への変更可
保険医署名
調 剤 年 月 日
保険薬局の所在
地 及 び 名 称
保険薬剤師氏名
写真 2
薬袋の記入
平成
年
日
公費負担者番号
広島県福山市学園町1番地
福山大学モデル薬局
印
図2
- 10 -
月
印
特に特に記載の ある場合を除
平成
使用期間
ているかをチェックします。
斉藤
すよう処方せん(図 2)という形で指示を出します。薬
ん
(この処方せんは、どの保険薬局でも有効です。)
公 費 負 担 医 療
模擬処方せん
処方せんに問題が無ければ、お薬を入れる袋(薬袋)に患者さんのお名前やお薬ののみ方を記入し
ましょう。お薬ののみ方には食前、食後、ねる前等があります。該当する箇所を丸で囲みましょう(写
真 2)。次に、実際に模擬処方せんに従って粉薬を量りとりましょう。粉薬は 1 回分ずつ量るのではな
く、必要な日数分まとめて量りとります(写真 3)。量りとった粉薬は、のみやすいように自動分包機
で1回分ずつ包装しましょう(写真 4)
。
写真 3
散剤の秤量
写真 4
自動分包機で一包化(散剤)
自動分包機は粉薬以外にも使用できます。錠剤も自動分包
機で 1 回分ずつ包装してみましょう(写真 5)。最後に 1 回
分ずつに包装されたお薬を袋に入れて完成です(写真 6)。
写真 5
分包機で一包化(錠剤)
写真 6
一包化された散剤と薬袋
(3)きっちり手洗いができているか、特殊な薬を使って確認してみよう
病院薬剤師は、患者の輸液(点滴)も無菌的に調製する。この実習では、無菌操作を始める前の手
洗いについて体験学習を行った。本実習の目的は、無菌操作を行うための手洗いがいかに難しいかを
体験するとともに、手洗いにも正しい方法があることを学ぶことである。
- 11 -
概要:「今から点滴を作りますが、その前に手を清潔にしなければなり
ません。普段皆さんも手を洗いますが、本当にきれいに洗えているのでし
ょうか? まず、この特殊な薬を手にまんべんなく塗ってください。その
後、石鹸をつけていつものように洗ってみましょう(写真 7)
。洗い終わ
ったら、この特殊な光を手に当ててみてください(写真 8)。白く光って
いるところは、よく洗えていない場所です(写真 9)
。手洗いには、正し
い手洗いの方法というものがあります。今度は、その方法に従って洗ってみましょう。汚れはちゃん
ととれましたか? 無菌操作をする際には、きっちり手洗いすることが必要です。」
写真 7
写真 9
手を洗ってみよう
白く浮かび上がる汚れ
写真 8
さあ、確認してみよう
写真 10
自分の写真はどれかな
(4)クリーンルームで点滴を作ってみよう
この実習では、全員無塵衣、マスク、手袋、帽子(写真 11)を装着してクリーンルームに入り、輸
液(点滴)作製の説明を受けた(写真 12)。また、希望した生徒は、クリーンベンチ内で実際に点滴
の調製を体験した(写真 13)。この実習の目的は、病院薬剤師がいかに厳密でスキルを要する輸液調
製を行っているのかを体感することである。
概要:
「さあ、いよいよ今からクリーンルームに入って、点滴を作ります。クリーンルームは、外よ
り何百倍もきれいな部屋になっていますので、専用の衣服(無塵衣)を着ないと入れません。そのほ
- 12 -
か、帽子、マスク、手袋も装着します。みんなで、着てみましょう(写真 11)。着替え終わったら、ク
リーンルームに入ります。髪の毛は必ず帽子の中に入れてください。」
写真 11
無塵衣、帽子、マスク、手袋の装着
写真 12
輸液(点滴)作製の説明
一人での着替えは困難であったが、友達同士
で協力し合い、無事準備が完了した。
「それでは、まずお手本を示します。今日は、ビタミン剤の点滴を作ります。注射器など、いろい
ろな器具を使って作りますどのように点滴を作るのかまずは見学してください(写真 12)
。フィルター
や注射器、消毒用エタノールなどを使って、ばい菌が入らないように作らなければなりません。実際
にやってみたい人はいますか?
体験してみたい人は手を挙げてください。体験したい人は、この部
屋にある「クリーンベンチ」といって、さらに 100 倍きれいな空気が流れる作業台で調製を行います。
大学の先生が後ろに立ってやり方を教えてくれるので安心です(写真 13)。
」
写真 13
クリーンベンチでの実習
- 13 -
(5)中学生からよせられた質問
質問1:手洗いの体験実習についてですが、どのくらいだったらキレイにな
ったといえるのですか?
回答:実習では手洗い後でも汚れが白く浮かび上がりましたよね。まだまだキレイになっていないと
いうことです。ばい菌のついた手で注射は作れません。やはり、
「キレイになった」ということは、こ
の実習で「白いものが浮かび上がらなくなった」ことになります。
(回答:佐藤英治)
質問 2:薬剤師の仕事で大変なことは何ですか?
回答:患者さんの生命に関するお仕事ですので、お薬の間違いは許されません。また、新しい薬がど
んどんでてきますので、薬についての勉強を続けなければなりません。これらは大変ですが、それ以
上にやりがいも感じます。
(回答:佐藤英治)
質問 3:実験するとき、どの動物が一番適しているのですか?
回答:実験にはさまざまな動物を用います。マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サルなど
主に哺乳類が用いられます。実験の目的によって使用する動物が異なりますので、一概にどの動物が
適しているのかはいえません。ただ、マウスやラットは繁殖しやすい、個体差が少ない、小型のため
飼育が容易などの理由で多く用いられています。(回答:佐藤英治)
質問 4:理系に進むにはどのくらい勉強しましたか?
回答:理系の中でも薬学部は比較的難しいとされていますが、今から目標を立てて、毎日コツコツと
勉強すれば、十分薬学部(理系)に進学できると思います。
(回答:五郎丸 剛)
質問 5:調剤というのは、薬を一から作ることはしないのですか?
回答:お薬というのは様々な原材料から化学反応により化合物を変化させて作りますので、基本的に
は工場で作られます。病院や薬局の薬剤師は、お薬を“作る”というよりも、お薬を調剤して、薬や
お薬の量が患者さんに合っているかを確認する大事な役割を持っています。(回答:五郎丸 剛)
- 14 -
質問 6:薬の粉や粒はどうやってできるのですか?
回答:粉末(散剤)は、お薬の成分を乾燥や粉砕等したものをふるいにかけて作ります。また粒(顆
粒剤)は、粉末に結合剤というものを混ぜて固めて粒状にして作ります。粒状にする方法はいろいろ
とあり、方法によって丸い粒や円柱状の粒ができたりします。(回答:五郎丸 剛)
質問 7:薬を量る時、ちょっとでも重さが違うと、量りなおすのですか?
回答:調剤するときには、調剤の基本となる「調剤指針」という本を参考にします。そこには誤差は
2%以内と記されています。つまり、10.0g 量らなければいけないときに、9.8g 未満もしくは 10.2g よ
り多い場合は量り直します。(回答:五郎丸
剛)
質問 8:もし分量を間違えたらどうするのですか?
回答:分量を間違えると、患者さんに十分効果が現れなかったり、副作用が出たりします。分量を間
違えたら、もう一度量り直します。(回答:五郎丸 剛)
- 15 -
感想
◆中学生アンジェラスシリーズの感想
・やってみたかった実験ばかりだったので良かったです。
・楽しい実験ばっかりだったし、先生の話も分かり易かったです。色々なことに興味が持てまし
た。
・どの実験も初めてやったり、知ったりした事だったので、貴重な体験となりました。次回の実
験では、質問をしてみたいと思いました。
・薬剤師の人がどんなことをするのかがわかりました。自分の手があまりにも汚かったので、こ
れからはもっときれいに洗っていこうと思いました。
・とても楽しかったです。私も今日やったような勉強をして薬剤師になりたいなと思いました。
自分の手の汚さにびっくりしました。今度からはもっときれいに洗いたいと思います。今日、
体験することができてよかったです。
・注射作りの時にちょっと緊張しました。
・薬剤師について、色々なことが分かって、実験も楽しかったです。
・薬の調剤も楽しかったし、注射液を作れてよかったです。手を洗うことがあんなに大変だと思
わなかったです。知らなかった事も知ることができたし、初めての体験ばかりだったので、い
い経験になりました。
・私は初め、理科があまり好きではありませんでした。でも、今日たくさんのことを経験して、
理科にも薬剤師の仕事にも興味を持つことができました。
・よくわかったし、ネズミに触れることができ楽しかったです。注射と手洗いと調剤も楽しかっ
たです。
・手を洗ってバイキンをみたとき、自分の手の汚さにびっくりしました。手の洗い方を見てもう
一度手をしっかり丁寧に洗うと、バイキンはほとんど落ちてて感動しました。すごく楽しかっ
たです。次回の Science Lab も楽しみながら実験やろうと思います。
・今日一日実験をして一番に思ったことは、
「薬剤師の仕事って楽しいな」と思いました。でも、
人の命を預かっていて、とても責任重要な仕事でもあるんだなと思いました。これからはもっ
と理科の分野にも目をむけていきたいです。
・普通ではあまりすることができない実験などができて良かったです。
・クリーンベンチで点滴を作った時、上手だねとほめてもらえて嬉しかったです。
・準備がちゃんとされていてとても楽しかったです。
・福山大学の先生方がとてもよく教えて下さり、とても良かったです。
- 16 -
◆中学生アンジェラスシリーズの感想
つづき
・今回始めてサイエンスラボに参加して、今まで大好きだった理科に、もっと興味をもてるよう
になりました。実験もとても面白かったです。実際に薬剤師さんがどんなことをしているか、
とてもよくわかり、楽しかったです。次のサイエンスラボも楽しみにしています。
・施設の見学や先生達の色んな話を聞けて良かったです。
・普段体験できないことを体験できたり、手洗いができるかなどあまり気にしない事を実際に見
てみたりすることができ、驚きもあり楽しくすることができました。
・実際に薬の調剤の体験ができたので良かったです。
・何回しても楽しいと思いました。今まで以上に理科に興味が持てました。去年教えて頂いた先
生に覚えてもらえていて、嬉しかったです。
・大学には、学校にはない物がたくさんあって面白かったです。薬剤師の仕事に、少し興味がも
てました。とても楽しかったです。
・自分がなりたい職業の資格を持っている人に会えて、色んな話が聞けて良かったです。最後の
石鹸の実験や注射液の実験が楽しかったです。
・注射の液があんなに慎重に使われていることに驚きました。
◆理科担当教員(福山暁の星女子中学・高等学校)の感想
前半の施設見学では、図書館のたくさんの蔵書や、研究センターでの複雑そうな機器や設備を目
にし、研究室の雰囲気を直に感じ、中学・高校との違いに驚いたようです。大学で学ぶことに対す
る憧れを持ったのではないでしょうか。
後半の薬剤師の仕事体験では、着替えてクリーンルームに入り注射液を作ったり、処方箋の書き
方を教わったりと、普段ではできない体験によって、薬剤師という職業の一端に触れ、興味を深め
た生徒もいたことでしょう。また、テーマにそって作られた丁寧な資料があり、生徒たちにも理解
しやすかったと思います。
- 17 -
◆担当者の感想(佐藤英治、五郎丸
剛)
最初の導入講義では、生徒の皆さんは緊張している様子であったが、いざ体験学習に入ると目を
輝かせながら積極的に実習を行った。手洗い実習では、日ごろの手洗いが十分でないこと、輸液の
調製では、いかに厳密な調製が行われていることを体感できたと思う。興味深げに白く光る手の写
真を眺めていた光景が印象深かった。クリーンルームでの体験実習では、最初はその装備に戸惑っ
ていた模様ではあったが、わいわいと楽しげに無塵衣、手袋等の装着が行われた。その後、クリー
ンルームでビタミン剤の調製体験を行った。注射針を怖がる生徒も多いと予想していたため、希望
者のみ体験させるつもりであった。が、意見を聞くと、全員体験希望であった。生徒の好奇心の強
さには驚かされた。
(佐藤英治)
調剤薬局等で散剤の分包品はもらったことがあるかと思いますが、この散剤がどのように調剤さ
れているのかは今まで分からなかったと思います。今回は薬剤師業務の一つとして散剤調剤を体験
して頂きました。処方せんの見方等、理解しにくいところもあったと思いますが、中学生の皆さん
はとても熱心に実習に取り組み、私自身も大変充実した一日となりました。散剤を均等に分割して
包装する自動分包機に大変興味を示していたのがとても印象的でした。今回の体験で薬剤師はお薬
を集める作業以外にも、たくさんの業務があることを理解し、将来の職業の一候補として考えて頂
ければと思います。
(五郎丸 剛)
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アンジェラスシリーズ・高校生
庭園をデザインする
担当者:
協力学生:
場所:
宮地 功、藤原美樹
岡田典子、陣内将人、宮地洋美
工学部 7 号館 1F プレゼンテーション室
概要
工学部は堅い、難しいというイメージの払拭をめざし、取り付きやすく簡単で、楽しみながら
もの造りができるテーマとして、
「グループで、身の回りにあるものを使った庭の模型創り」を取
り上げた。既成の概念にとらわれず、自由な発想で、自分達の思い、イメージを各々のチームが
独自な手法で一つの形に創りあげていくことで、完成までの過程の楽しさ、驚き、完成時の達成
感、充実感を体感できるようなプログラムを考えた。
第 1 回 Science Lab アンジェラスシリーズ参加高校生と実施担当者
- 19 -
学習内容
(1)実習に関する講義
工学 = 数学、理科、物理・・・ ⇒ 難しい、面白くない、わからない ⇒ 興味がない
という工学部に対しての負のイメージ、漠然とした根拠の希薄な苦手意識をもつ学生が非常に増加し、
特に女子学生の中には以前からその傾向が強いように思われる。建築学科は工学部にあっても最も工
学的な要素を含まない科目が数多くあり、その中でも特に工学を感じさせないテーマを選択した。
工学的なものつくりは、まず機能を満足するところからはじまる。建築においても「住宅は住むた
めの機械である」という著明な建築家の言葉もある。住宅は雨風をしのぎ、安全であるという最低限
の機能を満足させる必要はあるが、それに加えて、美しさ、ゆとり、くつろぎ、やさしさ、
・・・とい
う機能、数字に表せない要素が人間としての生活には非常に重要な意味を持っている。
今回は、できる限り工学的な機能を持たせないテーマとして「庭」をとりあげた。庭は何のために
あるのか?庭の用途は?機能は?という問いかけを続ける程、工学的な要素が頭をもたげてくる。こ
れらすべての問いを消し去り、さらに、寸法、縮尺、精度などは全く無視して、イメージ、思い付き、
成りゆき任せで「庭」をつくっていくこととした。
材料、道具は、まず第一に、身の回りにあるものを使うこととし、女子高校生が対象であることを
考慮し、それらのなかでもとくに身近な存在と思われる台所の廻りにあるものを素材としてとりあげ
た。同様に、材料は食材に限定した。いつも目にするもの、食材として頻繁に使用するもの、庭造り
の材料として使用可能なもの、意外な使い方ができそうなもの、それに彼女たちに最も身近なお菓子
類を素材として提供した。ほとんどの物は事前に全く手を加えず、店頭に並んでいる状態のまま提供
した。すべての材料が食べられるものをと準備を行った。しかし、接着剤として使用できるものとし
て、事前に、チョコレート、蜂蜜、米、小麦粉、砂糖、クリームなどを試したが、授業時間が短いた
めどうしても即乾性のものである必要があり、やむを得ず接着剤は化学製品を用いた。また模型の土
台はまな板なども考慮したが、重量、金額、取り扱いなどを考慮し、スチレンボードとした。残念で
はあるが、この二点だけは化学製品となった。道具も基本は台所用品とした。スプーン、ナイフ、茶
漉し、小さな擂り鉢、擂り粉木、しゃもじ、お玉、お好み焼き用ヘラなど、一般的に身の回りにある
もの、普段とは大きさの違いで面白そうなもの、意外な使い方ができそうなもの、使って楽しそうな
ものなどを準備した。これらは常に身近にあるものなので、躊躇なく手にして、構えず気軽に取りか
かることができる。この時点で、固さを取り払い、リラックスした状態で作品造りに取りかかること
ができる。また、いつも口にするものが庭造りの材料であり、身近なものが全く別なものに生まれ変
わることで、驚きや意外性が演出され、斬新な発想がうまれる。さらには、グループでの作業である
から、相乗効果としてより大胆なものが形つくられていく。その他陶器の皿、茶碗、ガラスコップな
ども道具として使えるが、諸般の事情により植物素材のコップ、皿を使用した。
講義は、昨年度の卒業設計で製作した建築模型を展示し、簡単な説明を行った。スチレンボード、
アクリル板、鉄、ステンレス、木材など模型材料と専用の道具を用いてつくったものを見せて、模型=
おもちゃという概念ではなく、模型による表現の可能性を実感させた(写真 1)
。
- 20 -
庭についての講義は全く行なわなかった。実際の庭の写真などを見せることで、既成概念にとらわ
れ、自由な発想の発露を遮断し、図面などを見せることで、庭造りの困難さ、複雑さを意識させない
ために、あえて庭についての建築的な講義は行わなかった。また、事前にサンプル模型も準備したが、
建築的な手法で手を加えたものではなく、素材の使い方を示す程度に留めた。
建築模型制作においては、縮尺が非常に重要な意味をもっているが、工学的な要素を排除し、既成
概念にとらわれず、自由な発想で作業をすすめるため、縮尺は考えないこととした。全く先入見なく、
作業をすすめるため、テーマを提示せず、自分の思いをそのまま形に表わす。
徐々に形があらわれていくことで、さらなる新たな発想がうまれ、身近なものが新たなものへと編
赤するという意外性、取り付けることにより想定外の効果がうまれる。大半が偶然性の産物かもしれ
ないが、出来上がっていく中で表現手法の多様性が理解され、自己の中に埋まっているであろう秘め
られた芸術的な能力への驚き、同級生の持つ秘められた能力、才能の発見が重なり、さらなる潜在能
力の発露となり、ものつくりの楽しさ、すばらしさ、協同作業の重要性が実感される。また、ものつ
くりで最上の喜びである出来上がった時の達成感、喜び、充実感が体感される(写真 2-6)。
このように意図して講義、実習を行った。アシスタントの学生も模型づくりに関する技術的な助言
に留め、あくまでも、参加者の思いの最大限の自己表現の場とすることを心掛けた。結果的には、時
間も忘れ、周囲の存在も気にならない程の集中力で、すばらしい作品が完成した(写真 7-10)
。
写真 1
写真 3
建築模型を見学
写真 2
わいわい話し合いは進みます
写真 4
- 21 -
庭園づくりの開始です
ボードに素材をのせていきます
写真 5
皆で相談しながら形を決めます
写真 7
写真 6
写真 8
完成した庭園
完成した庭園
敷きつめられた白い砂がとても綺麗です
池に橋が架けられ、苔は青のりで表現されます
写真 9
細かい作業をしています
完成した庭園
写真 10
池の青色は、かき氷にかけるシロップです
完成した庭園
ハート型の池を中心に展開されています
- 22 -
(2)高校生からよせられた質問
質問:すき間を上手に埋めるためにはどうすれば良いですか?
回答:すき間の大きさにもよりますが、少しの隙間であれば、水で湿らせた小麦粉を詰める方法があ
ります。片栗粉だと固まらないのでうまくいかないようです。(回答:宮地 功)
- 23 -
感想
◆高校生アンジェラスシリーズの感想
・楽しくできたのでよかったです。
・デザインとかは初めてだったけど、うまくできてよかったです。
・食べ物で何かをするということが新鮮でとても楽しかったです。
・卒業生が作った作品のようにうまく出来なかったけど、みんなで楽しく作れて良かったです。
・また、模型にリベンジしたいです。
・最初はちゃんと出来るか心配だったけど、やっていると、どんどん楽しくなってきて、とても
良い経験が出来たと思います。
・いろんな食べ物などで、形を考えるのが難しかったです。
・いろんなハプニングがあったけど楽しくできました。
・身近な物でここまで出来たことにすごくびっくりしました。そしてとても楽しかったです。
ありがとうございました。
・最初はできるか不安だったけど、やってみたら、とってもおもしろくて来て良かったと思いま
した。
・おもしろかったのでよかったです。
・同じグループの人といろいろ話しながらやったりして楽しかったです。
・すごく楽しかったです。建築ってもっと難しいものを作るものだと思ってたのに、今回はお菓
子を使って作らせてもらったのでとても作りやすかったし、いろんなものを組み立てることに
興味がもてました。
・時間がなくて少ししかできなかったけど、楽しくできました。
・おかしを使って作るのはとても興味がわいて楽しんで取り組むことができました。楽しんです
る実験はとても身に付くと思いました。
・今日はとても楽しかったです。いろんなものでさまざまなものを作れたのが良かったです。
・とっても楽しかったけど、もっと時間がほしかったです。
・はやく考えれば良かったと思いました。なかなか思いつかなくてきちんと完成できなかったの
が残念でした。
・みんなで協力してできて、楽しく作ることができました。
・食べ物だけでここまでできて、とてもびっくりしたし、先生と作ったのですが、先生の意外
な一面を見れてよかったです。
- 24 -
◆理科担当教員(福山暁の星女子中学・高等学校)の感想
前半は、施設見学と研究室見学、後半は、「庭園をデザインする」というテーマで体験実習をさ
せて頂きました。4,5 人の班に分かれ、構想から製作まで、メンバーで意見を出し合いながら、B4
版大の基盤上に、庭園のジオラマを造っていきました。材料は、粉砂糖、黒砂糖、青海苔、マカロニ、
スパゲッティ、寒天などの食材でした。
日本庭園風のものや洋風のものあるいは自由な発想でできたユニークな夢の庭園などバラエティ
ーにとんだものができ上がりました。日本庭園製作グループでは、寒天で池の水を表現したり、その
中には魚(いりこ)を泳がせたり、また、黒砂糖で石を、青海苔で苔を表現するなど、工夫を凝らし
ていました。楽しい実習で時間の経過も忘れて実習に熱心に取り組んでいました。ありがとうござ
いました。
◆担当者の感想(宮地
功、藤原美樹)
今回は、工学部についての負のイメージの払拭と、物づくりの楽しさを伝えることを主眼とした。
全く規制のない自由な物つくりということで、ごく一部には多少の戸惑いもあったが、ほとんどは
スタートの合図ももどかしく、我々が驚く程の勢いで作業が進んだ。ほとんどのチームが池をつく
ったのは予想外であったが、非常に楽しく、騒がしく、自由な雰囲気で、時間を忘れて庭造りがお
こなわれた。すばらしい作品ができあがり、参加者の達成感と満足感が感じられ、当初のテーマが
ある程度達成されたように思う。
(宮地 功)
「庭園をデザインする」というテーマは、ひとりひとりの生徒さんがもつ庭園のイメージをカタ
チにする作業です。素材となる食材を選び、配置を決め、少しずつ仕上げていきました。
庭園をデザインする場合、その周囲を壁で囲い、その囲われた庭園が、外とは切り離されたひと
つの別空間をなしているヨーロッパやイスラムなどに多いデザイン手法があります。それに対して、
境界が曖昧で、周囲が連続的につながる借景などを利用した日本的なデザインがあります。
生徒さんたちによって完成された庭園は、ヨーロッパ風の庭園や日本庭園などであり、どれもす
ばらしい出来栄えです。短い作業時間でしたが、風が吹き、鳥の鳴声が聞こえてきそうな庭園が完
成し、高校生の感性の柔軟さに驚きました。(藤原美樹)
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