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1.高額なマンションが目白押し
福岡県の5分の1程度の面積に、約7百
万人もの人々が生活する香港。大部分の
人々はマンションやアパート住まいで、
中古でも数億円はする一戸建てに住むの
は一握りのお金持ちに限られます。しか
し、集合住宅も決して安くありません。
新築物件が相対的に少ないせいか、不動産屋の店頭では1億円以上する中古マンショ
ンが数多く紹介されています。価格を左右する条件は、地域、品質、部屋からの眺め
(高層かつ海景が人気)
が重視され、建築年数は二の次。日当たりは関係なく、むしろ
香港人は風水判断を重視しています。古くて狭く低品質のマンションが高値で取引さ
れている様は異常とも言えます。高級住宅地の高額物件は、主に香港の富裕層をはじ
め法人が所有しています。自家用に限らず投資として保有しているケースも多く、日
本人や欧米人が賃借して住んでいます。家賃も高く、80㎡の3LDKで月額50万円を
超えるものも珍しくはありません。また、地元香港人が多く住む香港島内や地下鉄沿
線地区の建物でも、人気物件の価格は、3LDKで5千万円を超えています。ただ、政
府供給の公共住宅は50㎡で1∼2千万円程
度と割安なのですが、希望者が多く抽選
となっており、20年間待った人もいます。
2.返還バブルと不動産投機
高い人口密度と経済成長に加え、不動
高級住宅地ミッドレベルのマンション群。ビクトリアピークより臨む
産が投機の対象となった事が住宅価格高
騰の要因と言えます。中国への返還を
控えていた1997年、返還前後の中国関
連ビジネスの加熱への期待を主因とし
て、香港は好景気に沸いていました。
返還バブル経済とも呼ばれたこの時期、
香港不動産市況は天井をつけています。
高級住宅地ハッピーバレーとタイハンロード地区のマンション群遠景。
一方で、この時流にうまく乗った人々がいます。90年以前より自宅を購入していた
一般の香港人達です。彼らは数倍もの値上がりをした自宅を売却し、さらに高級物件
へと買い換えていったのです。公務員やサラリーマンといった普通の人々が高額な住
宅に数多く住んでいるのは、こうした背景があると言えます。
3.
しんせん
に暮らす
現在の不動産市況はやや盛り返したとはいえ、最盛期に比べると約6割の水準まで
値下がりしています。しかし、冒頭に紹介したとおり、香港住宅の値段はそれでも高
く、庶民の悩みであることに違いはありません。ある統計では、高い住宅費用のため
香港の物価は世界3位となっています。お手頃価格の住宅を熱望する人々も多いはず
です。そこで、最近話題になっているのが、電車で1時間と通勤圏内にある
「中国の深
市」に住宅を購入する人々の事です。狭くて眺めも良くないマンションに高いお金を
払うより、少々不便でも環境の良い住宅を望む人が増えているのです。地元紙によれ
ば、
住宅の値段は香港の約5分の1で、既に約8千人が越境通勤中とか。あるコンサル
タントは、今後2年間に約38万
人の香港人が同市での住宅購入を
行うと予想しています。香港人の
逞しさの前には、中国入出境の検
問もかすんでしまうかのようで
す。
香港島南部のリゾート地、レパルスベイのマンション群。